「リチウム」の版間の差分
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[[イオン化傾向]]が大きく、[[酸化還元電位]]は全元素中で最も低い -3.040 Vであるが、水との反応性はアルカリ金属中では最も穏かである。それでも多量のリチウムと水が反応すると発火する。 |
[[イオン化傾向]]が大きく、[[酸化還元電位]]は全元素中で最も低い -3.040 Vであるが、水との反応性はアルカリ金属中では最も穏かである。それでも多量のリチウムと水が反応すると発火する。 |
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=== 同位体 === |
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天然に存在するリチウムは<sup>6</sup>Liおよび<sup>7</sup>Liの2つの安定[[同位体]]からなっており、その[[天然存在比]]は<sup>7</sup>Liが92.5 %と大半を占めている<ref name=krebs/><ref name=emsley/><ref name=isotopesproject>{{cite web|url=http://ie.lbl.gov/education/parent/Li_iso.htm |title=Isotopes of Lithium|accessdate=2008-04-21|publisher=Berkeley National Laboratory, The Isotopes Project}}</ref>。この2つの天然同位体の両方は、リチウムの次に軽い元素である[[ヘリウム]]および次に重い元素である[[ベリリウム]]と比較して[[核子]]に対する{{仮リンク|原子核結合エネルギー|en|Nuclear binding energy}}が例外的に低く、これは安定な軽元素の中でリチウムだけが[[核分裂反応]]を通じて正味のエネルギーを生じさせることができるということを意味している。2つのリチウム天然同位体は[[重水素]]および[[ヘリウム3]]以外のどんな安定核種よりも核子あたりの結合エネルギーが低い<ref name=bind>[[:File:Binding energy curve - common isotopes.svg]] shows binding energies of stable nuclides graphically; the source of the data-set is given in the figure background.</ref>。この結果として、リチウムは太陽系において原子番号32番までの元素の内25番目の存在量であり、リチウムは原子量が非常に軽いにもかかわらず一般的な元素ではない<ref name="Lodders2003">Numerical data from: {{doi | 10.1086/375492 }} Graphed at [[:File:SolarSystemAbundances.jpg]]</ref>。 |
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埋蔵量は塩湖かん水として1866万トン、鉱石として1050万トンと見積もられている。これは電気自動車などに需要が急増したとしても可採年数400年以上と十分な量である。リチウムは最も軽い金属元素なので、地球的な長時間のうちに海水中と地殻上部を循環し続け、乾いた塩湖の底には必ず豊富なリチウム資源が存在する。量的には全く枯渇する心配はない。ただし単一産地で需要のほとんどを生産するという、偏在性と独占的供給による、商業的な需要ギャップが懸念される<ref>[http://premium.nikkeibp.co.jp/em/column/torii/56/index.shtml 鳥井弘之の『ニュースの深層』「EV時代」のキーマテリアル リチウム資源の将来を探る『ECO JAPAN』日経BP社、2009年8月6日公開]</ref><ref>[http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/09_21.html リチウムの資源と需給-Lithium Supply & Markets Conference 2009(LSM’09)参加報告- JOGMEC 2009年4月23日公開]</ref>。現在、確認埋蔵量で一、二を争うボリビアの資源は全く開発されていない(推定埋蔵量、推定需要ともに各種存在する)。 |
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リチウムは8つの[[放射性同位体]]が明らかにされており、比較的[[半減期]]の長いものとして半減期838ミリ秒の<sup>8</sup>Liおよび半減期178ミリ秒の<sup>9</sup>Liがある。他の全ての放射性同位体は半減期8.6ミリ秒以下である。最も半減期の短いものは<sup>4</sup>Liであり、それは[[陽子放出]]によって崩壊し、その半減期は7.6×10<sup>-23</sup>秒である<ref name=nuclidetable>{{cite web|url=http://www.nndc.bnl.gov/chart/reCenter.jsp?z=104&n=158|title=Interactive Chart of Nuclides|publisher=Brookhaven National Laboratory|author=Sonzogni, Alejandro|location=National Nuclear Data Center|accessdate=2008-06-06}}</ref>。[[エキゾチック原子核]]である<sup>11</sup>Liは[[中性子ハロー]]を示すことが知られている。[[リチウム3|<sup>3</sup>Li]]は、存在が確認されている中で、[[水素|<sup>1</sup>H]]以外で唯一陽子のみで構成された原子核を持つ。 |
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使用済み製品からのリチウムのリサイクルについては、現状ではその技術がなく、経済性が見込まれないため進んでいない<ref>[http://www.jogmec.go.jp/mric_web/jouhou/material/2007/Li.pdf JOGMEC 28 リチウム(Li)]</ref>。 |
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<sup>7</sup>Liは[[ビッグバン原子核合成]]において生成された{{仮リンク|原生核種|en|Primordial nuclide}}の1つである。少量の<sup>6</sup>Liおよび<sup>7</sup>Liは[[恒星内元素合成]]において生産されるが、生産される速度と同程度の速さで{{仮リンク|リチウム燃焼|en|Lithium burning|label=燃焼}}されると考えられている<ref>{{Cite journal|title=Lithium Isotopic Abundances in Metal-poor Halo Stars |year=2006|journal=The Astrophysical Journal|doi = 10.1086/503538|volume=644|page=229|author=Asplund, M.|bibcode=2006ApJ...644..229A|arxiv = astro-ph/0510636|display-authors=1|last2=Lambert|first2=David L.|last3=Nissen|first3=Poul Erik|last4=Primas|first4=Francesca|last5=Smith|first5=Verne V. }}</ref>。<sup>6</sup>Liおよび<sup>7</sup>Liはより重い元素が[[宇宙線による核破砕]]を受けることによっても少量が付加的に生成され、初期の太陽系での<sup>7</sup>Beおよび<sup>10</sup>Beの放射性崩壊によっても生成される<ref>{{Cite journal|url=http://sims.ess.ucla.edu/PDF/Chaussidon_et_al_Geochim%20Cosmochim_2006a.pdf |doi=10.1016/j.gca.2005.08.016 |first1=M. |last1=Chaussidon |first2=F. |last2=Robert |first3=K.D. |last3=McKeegan |journal=Geochimica et Cosmochimica Acta |volume=70 |issue=1|year=2006 |pages=224–245 |title=Li and B isotopic variations in an Allende CAI: Evidence for the in situ decay of short-lived <sup>10</sup>Be and for the possible presence of the short−lived nuclide <sup>7</sup>Be in the early solar system|bibcode=2006GeCoA..70..224C}}</ref>。<sup>7</sup>Liはまた[[炭素星]]においても生成される<ref>{{Cite journal|title=Episodic lithium production by extra-mixing in red giants |bibcode=2000A&A...358L..49D |first1=P. A. |last1=Denissenkov |first2=A. |last2=Weiss |journal=Astronomy and Astrophysics |volume=358 |pages=L49–L52 |year=2000|arxiv = astro-ph/0005356 }}</ref>。 |
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=== 海水リチウムの抽出 === |
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海水中には2300億トンのリチウムが溶けており、事実上無限の埋蔵量を有する。海水リチウムを抽出するプラントが日本を中心に稼動しており、現状よりさらに低コストで採集できるようになれば、リチウムを国内自給できる可能性がある<ref name="20040417-47news">[http://www.47news.jp/CN/200404/CN2004041701000022.html 海水からリチウムを抽出 佐賀でプラント本格稼働]</ref>。 |
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リチウムの同位体は鉱物の形成や化学的[[沈殿]]、[[代謝]]、[[イオン交換]]などの多様な自然のプロセスによって分離される。リチウムイオンは粘土鉱物の八面体サイトにおいて[[マグネシウム]]や[[鉄]]の代替となり、そこでは<sup>6</sup>Liは<sup>7</sup>Liより優先して取り込まれるため、その結果[[岩石]]の変質や超濾過の過程において軽い同位体が濃縮される。{{仮リンク|レーザー分離法|en|Atomic vapor laser isotope separation}}として知られる方法はリチウム同位体の分離に用いることができる<ref>{{Cite book| page=330| url=http://www.opticsjournal.com/tla.htm| title = Tunable Laser Applications| author = [[F. J. Duarte|Duarte, F. J]]| publisher= CRC Press| year = 2009| isbn=1-4200-6009-0}}</ref>。 |
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== 用途 == |
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リチウムは大気中では容易に酸化され、単体金属として存在することは難しい。このため、単体の金属材料として利用されることよりも、軽量[[合金]]に用いたり、強力な[[還元剤]]または[[有機リチウム化合物]]の原料として用いられることが多い。リチウムは延性に欠けるので、試薬のリチウムワイヤーは1 %程度のナトリウムを添加した合金である。 |
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[[酸化還元電位]]が低く、[[原子量]]が小さいため、[[電池]][[電極]]とすれば[[起電力]]が高くエネルギー密度の大きい電池ができる。通常3 V出力の[[一次電池]]([[リチウム電池]]、負極に使用)、[[二次電池]]([[リチウムイオン二次電池]]、リチウムイオンを使用)として利用される。 |
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[[アルミニウム]]にリチウムを数%含有させた[[合金]]は軽さと強度の両方を兼ね備え、特に航空宇宙の分野でしばしば使用されるが、[[リサイクル]]性に難があるため航空宇宙の分野以外では普及していない。 |
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[[同位体]]の内、<sup>6</sup>Li は[[核融合発電]]および[[水素爆弾]]において、[[核融合]]反応の材料である[[三重水素]]を生成するために使用される。 |
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== 化合物 == |
== 化合物 == |
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医療用として炭酸リチウムが[[躁病]]および[[躁うつ病]]の躁状態の患者に処方される。また、[[うつ病]]や躁うつ病のうつ状態の患者に、[[抗うつ薬]]を補助するために応用的に処方される場合も多い。この場合、治療上有効とされる血中濃度と、[[中毒]]に陥る濃度との範囲が狭いため定期的に[[血液検査]]を行い適切な血中濃度に保たれているかを確認しなければならない。もっとも、医師が処方した通りに患者が正しく服用している限り危険な状態になることは少ないとされている。 |
医療用として炭酸リチウムが[[躁病]]および[[躁うつ病]]の躁状態の患者に処方される。また、[[うつ病]]や躁うつ病のうつ状態の患者に、[[抗うつ薬]]を補助するために応用的に処方される場合も多い。この場合、治療上有効とされる血中濃度と、[[中毒]]に陥る濃度との範囲が狭いため定期的に[[血液検査]]を行い適切な血中濃度に保たれているかを確認しなければならない。もっとも、医師が処方した通りに患者が正しく服用している限り危険な状態になることは少ないとされている。 |
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== 同位体 == |
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天然に存在するリチウムは<sup>6</sup>Liおよび<sup>7</sup>Liの2つの安定[[同位体]]からなっており、その[[天然存在比]]は<sup>7</sup>Liが92.5 %と大半を占めている<ref name=krebs/><ref name=emsley/><ref name=isotopesproject>{{cite web|url=http://ie.lbl.gov/education/parent/Li_iso.htm |title=Isotopes of Lithium|accessdate=2008-04-21|publisher=Berkeley National Laboratory, The Isotopes Project}}</ref>。この2つの天然同位体の両方は、リチウムの次に軽い元素である[[ヘリウム]]および次に重い元素である[[ベリリウム]]と比較して[[核子]]に対する{{仮リンク|原子核結合エネルギー|en|Nuclear binding energy}}が例外的に低く、これは安定な軽元素の中でリチウムだけが[[核分裂反応]]を通じて正味のエネルギーを生じさせることができるということを意味している。2つのリチウム天然同位体は[[重水素]]および[[ヘリウム3]]以外のどんな安定核種よりも核子あたりの結合エネルギーが低い<ref name=bind>[[:File:Binding energy curve - common isotopes.svg]] shows binding energies of stable nuclides graphically; the source of the data-set is given in the figure background.</ref>。この結果として、リチウムは太陽系において原子番号32番までの元素の内25番目の存在量であり、リチウムは原子量が非常に軽いにもかかわらず一般的な元素ではない<ref name="Lodders2003">Numerical data from: {{cite doi | 10.1086/375492 }} Graphed at [[:File:SolarSystemAbundances.jpg]]</ref>。 |
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リチウムは8つの[[放射性同位体]]が明らかにされており、比較的[[半減期]]の長いものとして半減期838ミリ秒の<sup>8</sup>Liおよび半減期178ミリ秒の<sup>9</sup>Liがある。他の全ての放射性同位体は半減期8.6ミリ秒以下である。最も半減期の短いものは<sup>4</sup>Liであり、それは[[陽子放出]]によって崩壊し、その半減期は7.6×10<sup>-23</sup>秒である<ref name=nuclidetable>{{cite web|url=http://www.nndc.bnl.gov/chart/reCenter.jsp?z=104&n=158|title=Interactive Chart of Nuclides|publisher=Brookhaven National Laboratory|author=Sonzogni, Alejandro|location=National Nuclear Data Center|accessdate=2008-06-06}}</ref>。[[エキゾチック原子核]]である<sup>11</sup>Liは[[中性子ハロー]]を示すことが知られている。[[リチウム3|<sup>3</sup>Li]]は、存在が確認されている中で、[[水素|<sup>1</sup>H]]以外で唯一陽子のみで構成された原子核を持つ。 |
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<sup>7</sup>Liは[[ビッグバン原子核合成]]において生成された{{仮リンク|原生核種|en|Primordial nuclide}}の1つである。少量の<sup>6</sup>Liおよび<sup>7</sup>Liは[[恒星内元素合成]]において生産されるが、生産される速度と同程度の速さで{{仮リンク|リチウム燃焼|en|Lithium burning|label=燃焼}}されると考えられている<ref>{{Cite journal|title=Lithium Isotopic Abundances in Metal-poor Halo Stars |year=2006|journal=The Astrophysical Journal|doi = 10.1086/503538|volume=644|page=229|author=Asplund, M.|bibcode=2006ApJ...644..229A|arxiv = astro-ph/0510636|display-authors=1|last2=Lambert|first2=David L.|last3=Nissen|first3=Poul Erik|last4=Primas|first4=Francesca|last5=Smith|first5=Verne V. }}</ref>。<sup>6</sup>Liおよび<sup>7</sup>Liはより重い元素が[[宇宙線による核破砕]]を受けることによっても少量が付加的に生成され、初期の太陽系での<sup>7</sup>Beおよび<sup>10</sup>Beの放射性崩壊によっても生成される<ref>{{Cite journal|url=http://sims.ess.ucla.edu/PDF/Chaussidon_et_al_Geochim%20Cosmochim_2006a.pdf |doi=10.1016/j.gca.2005.08.016 |first1=M. |last1=Chaussidon |first2=F. |last2=Robert |first3=K.D. |last3=McKeegan |journal=Geochimica et Cosmochimica Acta |volume=70 |issue=1|year=2006 |pages=224–245 |title=Li and B isotopic variations in an Allende CAI: Evidence for the in situ decay of short-lived <sup>10</sup>Be and for the possible presence of the short−lived nuclide <sup>7</sup>Be in the early solar system|bibcode=2006GeCoA..70..224C}}</ref>。<sup>7</sup>Liはまた[[炭素星]]においても生成される<ref>{{Cite journal|title=Episodic lithium production by extra-mixing in red giants |bibcode=2000A&A...358L..49D |first1=P. A. |last1=Denissenkov |first2=A. |last2=Weiss |journal=Astronomy and Astrophysics |volume=358 |pages=L49–L52 |year=2000|arxiv = astro-ph/0005356 }}</ref>。 |
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リチウムの同位体は鉱物の形成や化学的[[沈殿]]、[[代謝]]、[[イオン交換]]などの多様な自然のプロセスによって分離される。リチウムイオンは粘土鉱物の八面体サイトにおいて[[マグネシウム]]や[[鉄]]の代替となり、そこでは<sup>6</sup>Liは<sup>7</sup>Liより優先して取り込まれるため、その結果[[岩石]]の変質や超濾過の過程において軽い同位体が濃縮される。{{仮リンク|レーザー分離法|en|Atomic vapor laser isotope separation}}として知られる方法はリチウム同位体の分離に用いることができる<ref>{{Cite book| page=330| url=http://www.opticsjournal.com/tla.htm| title = Tunable Laser Applications| author = [[F. J. Duarte|Duarte, F. J]]| publisher= CRC Press| year = 2009| isbn=1-4200-6009-0}}</ref>。 |
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ref name="Lodders2003">Numerical data from: {{cite doi | 10.1086/375492 }} Graphed at [[:File:SolarSystemAbundances.jpg]] |
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== 歴史 == |
== 歴史 == |
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[[ファイル:Arfwedson Johan A.jpg|thumb|1817にリチウムを発見したヨアン・オーガスト・アルフェドソン]] |
[[ファイル:Arfwedson Johan A.jpg|thumb|1817にリチウムを発見したヨアン・オーガスト・アルフェドソン]] |
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[[1800年]]、[[ブラジル]]の化学者{{仮リンク|ジョゼ・ボニファシオ・デ・アンドラーダ・エ・シルヴァ|en|José Bonifácio de Andrada}}によって[[スウェーデン]]の{{仮リンク|ウート島|en|Utö, Sweden}}の鉱山からリチウムを含有した |
[[1800年]]、[[ブラジル]]の化学者{{仮リンク|ジョゼ・ボニファシオ・デ・アンドラーダ・エ・シルヴァ|en|José Bonifácio de Andrada}}によって[[スウェーデン]]の{{仮リンク|ウート島|en|Utö, Sweden}}の鉱山からリチウムを含有した[[葉長石]] (LiAlSi<sub>4</sub>O<sub>10</sub>) が発見された<ref name=mindat>{{citation | url = http://www.mindat.org/min-3171.html | title = Petalite Mineral Information | accessdate = 10 August 2009}}</ref><ref name=webelementshistory>{{citation | url = http://www.webelements.com/lithium/history.html | title = Lithium:Historical information | accessdate = 10 August 2009}}</ref><ref name=discovery>{{citation | title = Discovery of the Elements | last = Weeks | first = Mary | year = 2003 | page = 124 | publisher = Kessinger Publishing | location = Whitefish, Montana, United States | isbn = 0766138720 | url = http://books.google.com/?id=SJIk9BPdNWcC | accessdate = 10 August 2009}}</ref>。葉長石の発見から17年後の[[1817年]]、当時[[イェンス・ベルセリウス]]の研究室で働いていた[[ヨアン・オーガスト・アルフェドソン]]が葉長石の分析から新しい元素の存在を発見した<ref name=berzelius>{{citation | url = http://www.chemeddl.org/collections/ptl/ptl/chemists/bios/arfwedson.html | title = Johan August Arfwedson | accessdate = 10 August 2009 | work = Periodic Table Live!}}</ref><ref name=uwis>{{citation | url = http://genchem.chem.wisc.edu/lab/PTL/PTL/BIOS/arfwdson.htm | archiveurl = http://web.archive.org/web/20080605152857/http://genchem.chem.wisc.edu/lab/PTL/PTL/BIOS/arfwdson.htm | archivedate = 2008-06-05 | title = Johan Arfwedson | accessdate = 10 August 2009}}</ref><ref name=vanderkrogt>{{citation | publisher = Elementymology & Elements Multidict | title = Lithium | first = Peter | last = van der Krogt | url = http://elements.vanderkrogt.net/element.php?sym=Li | accessdate = 2010-10-05}}</ref>。この元素は[[ナトリウム]]や[[カリウム]]に似た化合物を形成したが、ナトリウムやカリウムの[[炭酸塩]]および[[水酸化物]]が水に対する溶解度および塩基性の高い物質であることと対照的に、[[炭酸リチウム]]および[[水酸化リチウム]]の水に対する溶解度や塩基性は低かった<ref name=compounds>{{citation | url = http://www.chemguide.co.uk/inorganic/group1/compounds.html | title = Compounds of the Group 1 Elements | accessdate = 10 August 2009 | last = Clark | first = Jim | year = 2005}}</ref>。ベルセリウスは、植物の灰から発見されたカリウムや動物の血液中に多く含まれていたナトリウムとは対照的に、リチウムが鉱石の中から発見されたことから、この塩基性の材料に[[ギリシア語]]で「石」を意味する {{lang|el|λιθoς}} (lithos) より「lithion / lithina」と名付け、その材料中の金属を「リチウム (lithium)」と名付けた<ref name=krebs>{{citation | last = Krebs | first = Robert E. | year = 2006 | title = The History and Use of Our Earth's Chemical Elements: A Reference Guide | publisher = Greenwood Press | location = Westport, Conn. | isbn = 0-313-33438-2}}</ref><ref name=webelementshistory/><ref name=vanderkrogt/>。 |
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後に、アルフェドソンは[[リシア輝石]]や[[リチア雲母]]にもリチウムが含まれていることを示した<ref name=webelementshistory/>。[[1818年]]、クリスティアン・グメリンはリチウム塩類が深紅色の[[炎色反応]]を示すことを初めて言及した<ref name=webelementshistory/>。しかし、アルフェドソンとグメリンはリチウム塩類から単体のリチウム金属を単離しようとしたが成功しなかった<ref name=webelementshistory/><ref name=vanderkrogt/><ref name="eote">{{citation | year = 2004 |title = Encyclopedia of the Elements: Technical Data – History – Processing – Applications | publisher = Wiley | isbn = 978-3527306664 | pages = 287–300 | author = Per Enghag}}</ref>。[[1821年]]、ウィリアム・トマス・ブランドは、以前に[[ハンフリー・デービー]]が同じアルカリ金属類のナトリウムおよびカリウムの単体金属を得るのに利用した[[電気分解]]によって、[[酸化リチウム]]よりリチウムの単体金属を得た<ref name=emsley>{{citation | last = Emsley | first = John | title = Nature's Building Blocks | publisher = Oxford University Press | location = Oxford | year = 2001 | isbn = 0198503415}}</ref><ref name="eote" /><ref>{{citation | publisher = Royal Institution of Great Britain | journal = The Quarterly Journal of Science and the Arts | volume = 5 | title = The Quarterly journal of science and the arts | year = 1818 | page = 338 | format = PDF | accessdate = 2010-10-05 | url = http://books.google.com/?id=D_4WAAAAYAAJ}}</ref><ref>{{citation | url = http://www.diracdelta.co.uk/science/source/t/i/timeline/source.html | title = Timeline science and engineering | publisher = DiracDelta Science & Engineering Encyclopedia | accessdate = 2008-09-18}}</ref>。ブランドはまた、[[塩化リチウム]]のようないくつかの純粋なリチウム塩類の分析から、リチア(酸化リチウム)がおよそ55 %の金属リチウムを含んでいると見積もり、リチウムの[[原子量]]をおよそ9.8 g/molであると推定した(現在の値は6.94 g/mol)<ref>{{citation | url = http://books.google.com/?id=zkIAAAAAYAAJ | first1 = William Thomas | last1 = Brande | first2 = William James | last2 = MacNeven | title = A manual of chemistry | year = 1821 | page = 191 | accessdate = 2010-10-08}}</ref>。[[1855年]]、[[ローベルト・ブンゼン]]およびアウグストゥス・マーティセンによって塩化リチウムの[[電気分解]]から大量の金属リチウムが生成された<ref name=webelementshistory/>。[[1923年]]から始まった、[[ドイツ]]の企業であるメタルゲゼルシャフト社による、塩化リチウムおよび[[塩化カリウム]]の混合液を電気分解させて金属リチウムを得る工業的生産法は、その後のリチウムの商業生産へとつながる発見となった<ref name=webelementshistory/><ref>{{citation | url = http://www.echeat.com/essay.php?t=29195 | title = Analysis of the Element Lithium | first = Thomas | last = Green | date =2006-06-11 | publisher = echeat}}</ref>。 |
後に、アルフェドソンは[[リシア輝石]]や[[リチア雲母]]にもリチウムが含まれていることを示した<ref name=webelementshistory/>。[[1818年]]、クリスティアン・グメリンはリチウム塩類が深紅色の[[炎色反応]]を示すことを初めて言及した<ref name=webelementshistory/>。しかし、アルフェドソンとグメリンはリチウム塩類から単体のリチウム金属を単離しようとしたが成功しなかった<ref name=webelementshistory/><ref name=vanderkrogt/><ref name="eote">{{citation | year = 2004 |title = Encyclopedia of the Elements: Technical Data – History – Processing – Applications | publisher = Wiley | isbn = 978-3527306664 | pages = 287–300 | author = Per Enghag}}</ref>。[[1821年]]、ウィリアム・トマス・ブランドは、以前に[[ハンフリー・デービー]]が同じアルカリ金属類のナトリウムおよびカリウムの単体金属を得るのに利用した[[電気分解]]によって、[[酸化リチウム]]よりリチウムの単体金属を得た<ref name=emsley>{{citation | last = Emsley | first = John | title = Nature's Building Blocks | publisher = Oxford University Press | location = Oxford | year = 2001 | isbn = 0198503415}}</ref><ref name="eote" /><ref>{{citation | publisher = Royal Institution of Great Britain | journal = The Quarterly Journal of Science and the Arts | volume = 5 | title = The Quarterly journal of science and the arts | year = 1818 | page = 338 | format = PDF | accessdate = 2010-10-05 | url = http://books.google.com/?id=D_4WAAAAYAAJ}}</ref><ref>{{citation | url = http://www.diracdelta.co.uk/science/source/t/i/timeline/source.html | title = Timeline science and engineering | publisher = DiracDelta Science & Engineering Encyclopedia | accessdate = 2008-09-18}}</ref>。ブランドはまた、[[塩化リチウム]]のようないくつかの純粋なリチウム塩類の分析から、リチア(酸化リチウム)がおよそ55 %の金属リチウムを含んでいると見積もり、リチウムの[[原子量]]をおよそ9.8 g/molであると推定した(現在の値は6.94 g/mol)<ref>{{citation | url = http://books.google.com/?id=zkIAAAAAYAAJ | first1 = William Thomas | last1 = Brande | first2 = William James | last2 = MacNeven | title = A manual of chemistry | year = 1821 | page = 191 | accessdate = 2010-10-08}}</ref>。[[1855年]]、[[ローベルト・ブンゼン]]およびアウグストゥス・マーティセンによって塩化リチウムの[[電気分解]]から大量の金属リチウムが生成された<ref name=webelementshistory/>。[[1923年]]から始まった、[[ドイツ]]の企業であるメタルゲゼルシャフト社による、塩化リチウムおよび[[塩化カリウム]]の混合液を電気分解させて金属リチウムを得る工業的生産法は、その後のリチウムの商業生産へとつながる発見となった<ref name=webelementshistory/><ref>{{citation | url = http://www.echeat.com/essay.php?t=29195 | title = Analysis of the Element Lithium | first = Thomas | last = Green | date =2006-06-11 | publisher = echeat}}</ref>。 |
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リチウムは[[ガラス]]の[[融点]]を降下させるのに用いられ、また、[[ホール・エルー法]]における[[酸化アルミニウム]]の溶解性の改善のためにも用いられた<ref name="ciuz2003">{{citation | doi = 10.1002/ciuz.200300264 | title = Lithium und seine Verbindungen – Industrielle, medizinische und wissenschaftliche Bedeutung | year = 2003 | last1 = Deberitz | first1 = JüRgen | first2 = Gernot | journal = Chemie in unserer Zeit | volume = 37 | page = 258 | last2 = Boche}}</ref><ref name="ciuz2003">{{citation | doi = 10.1002/ciuz.19850190505 | title = Lithium – wie es nicht im Lehrbuch steht | year = 1985 | last1 = Bauer | first1 = Richard | journal = Chemie in unserer Zeit | volume = 19 | page = 167}}</ref>。[[1990年代]]中旬までは、この2つの用途がリチウム市場を支配していた。核兵器開発競争の終了後リチウムの需要は減少し、[[アメリカ合衆国エネルギー省]]が備蓄していたリチウムの一般市場への売却はリチウムの価格をさらに押し下げた<ref name="USGSCR1994"/>。しかし1990年代半ばになると、いくつかの会社において、地下や鉱山より採掘されたリチウム原料を用いるよりもより安価な[[塩水]]からのリチウムの抽出を始めた。これによって多くの鉱山は閉山するか、[[ペグマタイト]]などの他の採算が取れる鉱石のみに絞っての採掘に移行した。例えば、アメリカの[[ノースカロライナ州]]、キングスマウンテン近郊の鉱山は、[[21世紀]]になる前に閉山した。[[リチウムイオン電池]]の用途はリチウムの需要を増やしており、[[2007年]]にはリチウムの主要な用途となった<ref name="USGSYB1994">{{citation | url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/lithium/myb1-2007-lithi.pdf | title = Minerals Yearbook 2007 : Lithium | publisher = United States Geological Survey | accessdate = 2010-11-03 | year = 1994 | first = Joyce A. | last = Ober}}</ref>。[[2000年代]]までのリチウム電池におけるリチウム需要の急増によって、新たな会社はリチウム需要を満たすために塩水抽出によるリチウム生産能力の増強に努めている<ref name="IMR">{{citation | first = Jessica Elzea | last = Kogel | title = Industrial minerals & rocks: commodities, markets, and uses | isbn = 9780873352338 | page = 599 | url = http://books.google.com/?id=zNicdkuulE4C&pg=PA600&lpg=PAPA599 | chapter = Lithium | year = 2006 | publisher = Society for Mining, Metallurgy, and Exploration | location = Littleton, Colo.}})</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.com/books?id=8erDL_DnsgAC&pg=PA339 | title = Encyclopedia of Chemical Processing and Design: Volume 28 – Lactic Acid to Magnesium Supply-Demand Relationships | publisher = M. Dekker | author = McKetta, John J. | date = 2007-07-18 | accessdate = 2010-09-29 | isbn = 9780824724788}}</ref>。 |
リチウムは[[ガラス]]の[[融点]]を降下させるのに用いられ、また、[[ホール・エルー法]]における[[酸化アルミニウム]]の溶解性の改善のためにも用いられた<ref name="ciuz2003">{{citation | doi = 10.1002/ciuz.200300264 | title = Lithium und seine Verbindungen – Industrielle, medizinische und wissenschaftliche Bedeutung | year = 2003 | last1 = Deberitz | first1 = JüRgen | first2 = Gernot | journal = Chemie in unserer Zeit | volume = 37 | page = 258 | last2 = Boche}}</ref><ref name="ciuz2003">{{citation | doi = 10.1002/ciuz.19850190505 | title = Lithium – wie es nicht im Lehrbuch steht | year = 1985 | last1 = Bauer | first1 = Richard | journal = Chemie in unserer Zeit | volume = 19 | page = 167}}</ref>。[[1990年代]]中旬までは、この2つの用途がリチウム市場を支配していた。核兵器開発競争の終了後リチウムの需要は減少し、[[アメリカ合衆国エネルギー省]]が備蓄していたリチウムの一般市場への売却はリチウムの価格をさらに押し下げた<ref name="USGSCR1994"/>。しかし1990年代半ばになると、いくつかの会社において、地下や鉱山より採掘されたリチウム原料を用いるよりもより安価な[[塩水]]からのリチウムの抽出を始めた。これによって多くの鉱山は閉山するか、[[ペグマタイト]]などの他の採算が取れる鉱石のみに絞っての採掘に移行した。例えば、アメリカの[[ノースカロライナ州]]、キングスマウンテン近郊の鉱山は、[[21世紀]]になる前に閉山した。[[リチウムイオン電池]]の用途はリチウムの需要を増やしており、[[2007年]]にはリチウムの主要な用途となった<ref name="USGSYB1994">{{citation | url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/lithium/myb1-2007-lithi.pdf | title = Minerals Yearbook 2007 : Lithium | publisher = United States Geological Survey | accessdate = 2010-11-03 | year = 1994 | first = Joyce A. | last = Ober}}</ref>。[[2000年代]]までのリチウム電池におけるリチウム需要の急増によって、新たな会社はリチウム需要を満たすために塩水抽出によるリチウム生産能力の増強に努めている<ref name="IMR">{{citation | first = Jessica Elzea | last = Kogel | title = Industrial minerals & rocks: commodities, markets, and uses | isbn = 9780873352338 | page = 599 | url = http://books.google.com/?id=zNicdkuulE4C&pg=PA600&lpg=PAPA599 | chapter = Lithium | year = 2006 | publisher = Society for Mining, Metallurgy, and Exploration | location = Littleton, Colo.}})</ref><ref>{{citation | url = http://books.google.com/books?id=8erDL_DnsgAC&pg=PA339 | title = Encyclopedia of Chemical Processing and Design: Volume 28 – Lactic Acid to Magnesium Supply-Demand Relationships | publisher = M. Dekker | author = McKetta, John J. | date = 2007-07-18 | accessdate = 2010-09-29 | isbn = 9780824724788}}</ref>。 |
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== 存在 == |
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[[File:Elemental abundances.svg|thumb|350px|[[地殻]]中のリチウムの存在量は原子数においておおよそ[[塩素]]]と同程度である。]] |
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=== 宇宙 === |
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{{main|元素合成}} |
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リチウムは[[ビッグバン]]によって合成された3つの元素のうちの1つであり、[[ビッグバン原子核合成]]において<sup>6</sup>Liおよび<sup>7</sup>Liの2つの安定同位体が合成された<ref>{{cite journal | bibcode= 1985ARA&A..23..319B | title= Big bang nucleosynthesis – Theories and observations | author1= Boesgaard | first1= A. M. | last2= Steigman | first2= G. | volume= 23 | year= 1985 | page= 319 | journal= IN: Annual review of astronomy and astrophysics. Volume 23 (A86-14507 04–90). Palo Alto | doi= 10.1146/annurev.aa.23.090185.001535}}</ref>。ビッグバン原子核合成によって生成する原子の量は[[光子]]と[[バリオン]]の存在比に依存しているためリチウムの存在量は理論的に予測することが可能であるはずだが、それによって求められたリチウムの理論量と実際の観測によるリチウムの存在量との間には矛盾が生じていた。しかしながら、2013年6月にAstronomy and Astrophysics(天文学および天体物理学)において発表された[[ケンブリッジ大学]]のKarin Lindらのグループによる論文において、[[ハワイ]]の[[W・M・ケック天文台]]にある世界最大級の望遠鏡「ケックI」を使い、洗練された理論モデルを用い強力なスーパーコンピューターでデータ解析を行うことで、リチウムの存在量がビッグバン原子核合成における理論量と矛盾しない事が示された<ref>{{Cite web|url=http://keckobservatory.org/news/international_team_on_keck_observatory_strengthens_big_bang_theory|title=International Team on Keck Observatory Strengthens Big Bang Theory|date=2013-06-05|publisher=W・M・ケック天文台|accessdate=2013-06-15}}</ref>。 |
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リチウムは[[水素]]、[[ヘリウム]]と共にビッグバンによって合成された初めの元素の1つであるが、リチウムおよび[[ベリリウム]]と[[ホウ素]]は他の近い原子番号の元素と比較してその存在量は著しく小さい。これは、リチウムが低温で核反応を起こすため消費されやすく、かつリチウムが生成されるような核反応が少ないことの結果である<ref name=wesleyan>{{cite web|url=http://www.astro.wesleyan.edu/~bill/courses/astr231/wes_only/element_abundances.pdf |archiveurl=http://web.archive.org/web/20060901133923/http://www.astro.wesleyan.edu/~bill/courses/astr231/wes_only/element_abundances.pdf |archivedate=1 September 2006 |title=Element Abundances |accessdate=2009-11-17}}</ref>。 |
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リチウムは[[準恒星]]である[[褐色矮星]]や、特定の特異な橙色の星において見られる。リチウムは温度が低く小さな褐色矮星に存在するが、より温度の高い[[赤色矮星]]では核反応によって消費されてリチウムが存在しないため、[[太陽]]よりも小さなこれら2つを識別するためにリチウムの存在を確認する「リチウム・テスト」と呼ばれる方法が利用される<ref name=emsley/><ref>{{cite web|url=http://www.universetoday.com/24593/brown-dwarf/|archiveurl=http://web.archive.org/web/20110225032434/http://www.universetoday.com/24593/brown-dwarf/|archivedate=2011-02-25|title=Brown Dwarf |accessdate=2009-11-17 |last=Cain |first=Fraser |publisher=Universe Today}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www-int.stsci.edu/~inr/ldwarf3.html |title=L Dwarf Classification|accessdate=2013-03-06 | first =Neill | last = Reid | date = 2002-03-10}}</ref>。ケンタウルス座X-4のような橙色の星からもまたリチウムが検出される。これらの星は[[中性子星]]や[[ブラックホール]]のようなより大きな天体を周回しており、水素やヘリウムよりも重いリチウムが重力によって星の表面へと引かれるためリチウムが観測されるのだと考えられる<ref name=emsley/>。 |
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=== 地上 === |
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{|class="wikitable sortable" style="float:right; margin:5px; font-size: 90%;" |
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|+リチウム生産量(鉱石ベース、2011年) および可採埋蔵量(単位:トン)<ref name="minerals.usgs.gov">U.S. Geological Survey, 2012, [http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/lithium/ commodity summaries] 2011: U.S. Geological Survey</ref> |
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|- |
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! 国 |
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! 生産量 |
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! 可採埋蔵量<ref group=note name=res/> |
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|- |
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|{{flag|アルゼンチン}} |
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| 3,200 |
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| 850,000 |
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|- |
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|{{flag|オーストラリア}} |
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| 9,260 |
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| 970,000 |
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|- |
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|{{flag|ブラジル}} |
|||
| 160 |
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| 64,000 |
|||
|- |
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|{{flag|カナダ}} (2010) |
|||
| 480 |
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| 180,000 |
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|- |
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|{{flag|チリ}} |
|||
| 12,600 |
|||
| 7,500,000 |
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|- |
|||
|{{flag|中華人民共和国}} |
|||
| 5,200 |
|||
| 3,500,000 |
|||
|- |
|||
|{{flag|ポルトガル}} |
|||
| 820 |
|||
| 10,000 |
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|- |
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|{{flag|ジンバブエ}} |
|||
| 470 |
|||
| 23,000 |
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|- |
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| '''世界計''' |
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| '''34,000''' |
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| '''13,000,000''' |
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|} |
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リチウムは地球上に広く分布しているが、非常に高い反応性のために単体としては存在していない<ref name=krebs>{{Cite book|last = Krebs|first = Robert E.|year = 2006|title = The History and Use of Our Earth's Chemical Elements: A Reference Guide|publisher = Greenwood Press|location = Westport, Conn.|isbn = 0-313-33438-2}}</ref>。海水に含まれるリチウムの総量は非常に多く2300億トンと推定されており、その濃度は0.14から0.24 ppmもしくは[[モル濃度]]で25 μmol/L<ref>{{cite web|url=http://www.springerlink.com/content/y621101m3567jku1/ |title=Extraction of metals from sea water|year=1984|publisher=Springer Berlin Heidelberg|accessdate=2013-06-6}}</ref>と比較的安定した濃度で存在している<ref>{{cite web|url=http://www.ioes.saga-u.ac.jp/ioes-study/li/lithium/occurence.html |archiveurl=http://web.archive.org/web/20090502142924/http://www.ioes.saga-u.ac.jp/ioes-study/li/lithium/occurence.html |archivedate=2009-05-02 |title=Lithium Occurrence|accessdate=2009-03-13|publisher=Institute of Ocean Energy, Saga University, Japan}}</ref><ref name=enc/>。[[熱水噴出孔]]ではより高濃度にリチウムが存在しており、その濃度は7 ppmに達する<ref name=enc/>。 |
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地殻中のリチウム濃度は重量濃度でおよそ20から70 ppmに渡ると見積もられており<ref name=krebs>{{Cite book|last = Krebs|first = Robert E.|year = 2006|title = The History and Use of Our Earth's Chemical Elements: A Reference Guide|publisher = Greenwood Press|location = Westport, Conn.|isbn = 0-313-33438-2}}</ref>、地殻中で25番目に多く存在する元素である<ref>{{Cite book|title=Handbook of Environmental Isotope Geochemistry Volume 1|author=Mark Baskaran|year=2011|page=42|publisher=Springer|isbn=3642106374}}</ref>。リチウムは[[火成岩]]を構成する非主要な元素であり、その濃度は[[花崗岩]]が最大である。リチウム鉱物である[[リシア輝石]]や[[葉長石]]を含有する[[ペグマタイト]]もまた多くリチウムを含んでおり、リチウム源として最も多く商業利用されている<ref name="kamienski">{{Cite book|first = Conrad W. |last = Kamienski, McDonald, Daniel P.; Stark, Marshall W.; Papcun, John R.|chapter =Lithium and lithium compounds|title =Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology|publisher = John Wiley & Sons, Inc.| year = 2004|doi =10.1002/0471238961.1209200811011309.a01.pub2}}</ref>。もう一つの重要なリチウム鉱物に[[リチア雲母]]がある<ref>{{cite book|title=Shriver & Atkins' Inorganic Chemistry|edition=5|publisher=W. H. Freeman and Company|place= New York|year= 2010|page=296|isbn=0199236178|author=Atkins, Peter }}</ref>。新しいリチウム源としては{{仮リンク|ヘクトライト|en|hectorite}}粘土があり、アメリカのWestern Lithium Corporation社によって活発に資源開発されている<ref>{{Cite journal|author= Moores, S.|title= Between a rock and a salt lake|journal= Industrial Minerals|date= June 2007|page=58|volume=477}}</ref>。リチウムは水分蒸発量の多い乾燥した地域の塩湖などにおいて非常に長い時間をかけて濃縮され、鉱床を形成することも知られている<ref>{{Cite web|title=リチウム資源-ウユニ塩湖-|url=http://unit.aist.go.jp/georesenv/result/green-report/report10/p73.pdf|page=2|publisher=産業技術総合研究所|accessdate=2013-06-16}}</ref>。世界最大のリチウム埋蔵量を有すると推定されている[[ボリビア]]の[[ウユニ]]塩原<ref name=kyoto/>や、世界のリチウム埋蔵量の27 %が埋蔵されている[[チリ]]の[[アタカマ塩原]]<ref name=Forbes>{{cite news|url=http://www.forbes.com/forbes/2008/1124/034.html|title=The Saudi Arabia of Lithium|work=[[Forbes]]|author=Brendan I. Koerner|date=2008-10-30|accessdate=2011-05-12}} ''Published on Forbes Magazine dated November 24, 2008''.</ref>などもそのような乾燥した塩湖である。 |
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リチウム埋蔵量<ref group=note name=res>[http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/mcs/2011/mcsapp2011.pdf Apendixes]. USGSの定義によれば、埋蔵量 (reserve base) とは「実績ある技術および現在の経済状況の想定を超えて、将来において経済的に利用可能となるような潜在的可能性を有している資源をも含有したものを示す。埋蔵量には、現在経済的に利用可能なもの(可採埋蔵量、reserves)、準経済的なもの(準埋蔵量、marginal reserves)および経済的に採算の取れないもの(非経済的埋蔵量、subeconomic resources)が含まれる。」</ref>が最も多い場所のうちの一つとして[[ボリビア]]の[[ウユニ]]塩原があり、その埋蔵量は540万トンと見積もられている。[[アメリカ地質調査所]]の2010年の推定によると最大の可採埋蔵量を有する国は[[チリ]]の750万トンであり<ref>Clarke, G.M. and Harben, P.W., "Lithium Availability Wall Map". Published June 2009. Referenced at [http://www.lithiumalliance.org/about-lithium/lithium-sources/85-broad-based-lithium-reserves International Lithium Alliance]</ref>、チリは生産量も8800トンと世界最大である<ref name="minerals.usgs.gov"/>。他の主要なリチウム産出国としては、[[オーストラリア]]、[[アルゼンチン]]、[[中国]]が含まれる<ref name="minerals.usgs.gov"/><ref>{{cite web|url=http://www.meridian-int-res.com/Projects/Lithium_Microscope.pdf |title=The Trouble with Lithium 2 |format=PDF|work=Meridian International Research |year=2008 |accessdate=2010-09-29}}</ref>。 |
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2010年6月、[[ニューヨークタイムズ]]は、アメリカの地質学者が[[アフガニスタン]]西部の干上がった[[塩湖]]跡にリチウムを含む巨大な堆積物が存在していると考え地質調査を行っていると報じた。アメリカ国防総省は、「彼らの初期の分析結果によれば、[[ガズニー州]]のある場所には現在知られている中で世界最大のリチウム埋蔵量を有するボリビアのそれと同程度に大きなリチウム鉱床が存在する可能性が示されている」と述べた<ref>{{cite news|url=http://www.nytimes.com/2010/06/14/world/asia/14minerals.html?pagewanted=1&hp|title=U.S. Identifies Vast Riches of Minerals in Afghanistan|accessdate=2010-06-13|work=The New York Times|first=James|last=Risen|date=2010-06-13}}</ref>。これらの予想は主に[[ソ連]]によって収集された1979年から1989年頃の古いデータに基いており、アメリカ地質調査所のAfghanistan Minerals Projectの長であるスティーブン・ペータースは、過去2年間にアフガニスタンで行ったアメリカ地質調査所の関与したどのような新しい鉱物の測量においても確認されておらず、「我々はいかなるリチウムの発見も承知していない」と述べた<ref>{{cite news| url=http://business.timesonline.co.uk/tol/business/industry_sectors/natural_resources/article7149696.ece|location=London|work=The Times |title=Taleban zones mineral riches may rival Saudi Arabia says Pentagon|first1=Jeremy|last1=Page|first2=Michael|last2=Evans|date=2010-06-15}}</ref>。 |
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=== 生体 === |
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リチウムは多数の植物、プランクトンおよび無脊椎生物において痕跡量存在しており、その濃度は69から5760 ppb(10億分の1)である。脊椎動物中のリチウム濃度は先述のものよりもわずかに低く、ほとんど全ての脊椎動物の体組織および体液中には21から763 ppbのリチウムが含まれている<ref name=enc/>。水棲生物はリチウムを[[生物濃縮]]する<ref>{{cite journal|last1=Chassard-Bouchaud |first1=C| last2=Galle|first2=P|last3=Escaig|first3=F|last4=Miyawaki|first4=M|title=Bioaccumulation of lithium by marine organisms in European, American, and Asian coastal zones: microanalytic study using secondary ion emission|journal=Comptes rendus de l'Academie des sciences. Serie III, Sciences de la vie|volume=299|issue=18|pages=719–24|year=1984|pmid=6440674}}</ref>。これらの生物においてリチウムがどのような生物学的役割を有しているかは知られていないが<ref name=enc>{{cite web|url=http://www.enclabs.com/lithium.html|accessdate=2010-10-15|title=Some Facts about Lithium|publisher=ENC Labs}}</ref>、にもかかわらず哺乳類の栄養学的な研究によりリチウムの健康に対する重要性が示されており、必須微量元素として1 mg/dayのRDA(一日に摂取すべき栄養量)が提言されている<ref>{{Cite journal|pmid=11838882|year=2002|last1=Schrauzer|first1=GN|title=Lithium: Occurrence, dietary intakes, nutritional essentiality|volume=21|issue=1|pages=14–21|journal=Journal of the American College of Nutrition}}</ref>。2011年に報告された日本における観察研究によると、飲料水中に含まれる天然由来のリチウムが人間の寿命を増やす可能性が示唆されている<ref>{{cite journal|doi=10.1007/s00394-011-0171-x|title=Low-dose lithium uptake promotes longevity in humans and metazoans|journal=European Journal of Nutrition|year=2011|last1=Zarse|first1=Kim|last2=Terao|first2=Takeshi|last3=Tian|first3=Jing|last4=Iwata|first4=Noboru|last5=Ishii|first5=Nobuyoshi|last6=Ristow|first6=Michael|volume=50|issue=5|pages=387–9|pmid=21301855|pmc=3151375}}</ref>。 |
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== 生産 == |
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リチウムの生産量は[[第二次世界大戦]]後に大きく増加した。リチウムはペグマタイトなどの火成岩中から他の元素と分離され、もしくは鉱泉や[[塩水溜まり]](塩湖かん水)、堆積塩などから抽出される。金属リチウムは55 %の[[塩化リチウム]]と45 %の[[塩化カリウム]]の混合物を450{{℃}}で溶融塩として電解することによって生産される<ref>{{Greenwood&Earnshaw2nd|page=73}}</ref>。金属リチウムの価格は1998年時点で95 [[アメリカ合衆国|USドル]]/kg(43 USドル/[[ポンド (質量)|ポンド]])であった<ref name="ober">{{cite web|url=http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/lithium/450798.pdf |title=Lithium|accessdate = 2007-08-19|last=Ober |first=Joyce A |format=PDF |pages = 77–78| publisher=[[United States Geological Survey]]}}</ref>。 |
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アメリカ地質調査所の推定によるリチウムの可採埋蔵量は1300万トンである<ref name="minerals.usgs.gov"/>。それは南米のアンデス山脈沿いに多く見られ、リチウムの主要生産国としてチリやアルゼンチンが挙げられる。両国はリチウムを塩湖かん水から生産しており、アメリカでも[[ネバダ州]]にあるシルバーピーク鉱山の塩湖かん水からリチウムを産出している<ref name=CRC>{{Cite book| author = Hammond, C. R. |title = The Elements, in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition| publisher =CRC press| year = 2000| isbn = 0-8493-0481-4}}</ref>。世界の既知の埋蔵量の内の半数近くをアンデス山脈の中央東部に位置する[[ボリビア]]が占めているが、この資源の開発はあまり進展しておらず、2013年2月に日本とボリビアの共同でリチウムの抽出試験が開始されたばかりである<ref name=kyoto>{{Cite web|url=http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20130223000074|title=ボリビアでリチウム抽出本格化 日本が実験|date=2012-02-23|publisher=京都新聞|accessdate=2013-06-16}}</ref>。 |
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一方で、リチウム鉱石からのリチウム生産は主にオーストラリアやジンバブエなどで行われている<ref name="minerals.usgs.gov"/>。オーストラリアではペグマタイトから[[タンタル]]を生成する際の副生物として回収されており<ref name=JOGMEC>{{Cite web|title=オーストラリアの投資環境調査|year=2005|url=http://mric.jogmec.go.jp/public/report/2006-12/ausall.pdf|page=25|publisher=石油天然ガス・金属鉱物資源機構|accessdate=2013-06-18}}</ref>、世界3位の生産量を占めている<ref name="minerals.usgs.gov"/>。鉱石としてのリチウム資源はアメリカが全埋蔵量の47 %を有しているが<ref>{{Cite web|title=リチウムの資源と需給-Lithium Supply & Markets Conference 2009(LSM’09)参加報告-|url=http://mric.jogmec.go.jp/public/current/09_21.html|year=2009|publisher=石油天然ガス・金属鉱物資源機構|accessdate=2013-06-18}}</ref>、2010年の時点ではアメリカで稼働中のリチウム鉱山は塩湖かん水を利用するシルバーピーク鉱山のみであり、リチウム鉱石の採掘は行われていない<ref>{{Cite web|url=http://www.jogmec.go.jp/news/release/release0266.html|title=米国ネバダ州でリチウムの共同探鉱契約を締結|year=2010|publisher=石油天然ガス・金属鉱物資源機構|accessdate=2013-06-18}}</ref>。 |
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潜在的なリチウムの資源回収源として地熱井戸が挙げられる。地熱井戸では高温の水のような地熱流体の移動を介して地表に熱エネルギーを伝達するが<ref name="bourcier">Parker, Ann. [https://www.llnl.gov/str/JanFeb05/Bourcier.html Mining Geothermal Resources]. Lawrence Livermore National Laboratory</ref>、そのような地熱流体に含まれるリチウムを単純な濾過技術によって回収することが可能であり、これは既に現場実証されている<ref name="Simbol">Patel, P. (2011-11-16) [http://www.technologyreview.com/news/426131/startup-to-capture-lithium-from-geothermal-plants/ Startup to Capture Lithium from Geothermal Plants]. technologyreview.com</ref>。環境保護に関するコストは主に既存の地熱井戸操業に関するそれであるため、相対的な環境面の影響は肯定的である<ref name="NYT">Wald, M. (2011-09-28) [http://www.nytimes.com/2011/09/28/business/energy-environment/simbol-materials-plans-to-extract-lithium-from-geothermal-plants.html?_r=1 Start-Up in California Plans to Capture Lithium, and Market Share]. The New York Times</ref>。 |
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[[世界金融危機 (2007年-)|世界金融危機]]後、産業界において[[炭酸リチウム]]の市場規模縮小が広がったため、[[ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ]] (SQM) のようなリチウムの主要供給者は、リチウム資源開発者の新規参入を考慮し、さらに市場でのその立場を守るために設定価格を20 %低下させた<ref>{{cite web|url=http://www.prnewswire.com/news-releases/sqm-announces-new-lithium-prices-62933122.html |title=SQM Announces New Lithium Prices – SANTIAGO, Chile, Sept. 30 /PRNewswire-FirstCall/ |publisher=Prnewswire.com |date=2009-09-30 |accessdate=2013-05-01}}</ref>。2012年にはリチウム需要の増加に伴い市場規模は拡大している。2012年の[[ビジネスウィーク]]の記事は、「億万長者であるフリオ・ポンセが支配する"SQM"、ヘンリー・クラビスの[[コールバーグ・クラビス・ロバーツ]]社に支援されたロックウッド、フィラデルフィアに拠点を置くFMC社」などの既存企業によるリチウム市場の寡占を概説した。リチウム電池の需要が年におよそ25 %ずつ増加しており全体のリチウム需要を4から5 %ほど押し上げているため、世界的なリチウムの消費量は2012年の15万トンから2020年には30万トンにまで急増する可能性がある<ref>{{cite web|last=Riseborough |first=Jesse |url=http://www.businessweek.com/news/2012-06-19/ipad-boom-strains-lithium-supplies-after-prices-triple |title=IPad Boom Strains Lithium Supplies After Prices Triple |publisher=Businessweek |date= |accessdate=2013-05-01}}</ref>。 |
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[[ローレンス・バークレー国立研究所]]と[[カリフォルニア大学バークレー校]]による2011年の研究によると、現在推定されているリチウムの埋蔵量からは10億台[[オーダー (物理学)|オーダー]]もの40 [[キロワット時]]の[[リチウムイオン二次電池]]を製造可能であると見積もられ、リチウム埋蔵量の問題は電気自動車向けの大規模なバッテリー製造の律速因子とは成り得ないことが示された<ref>{{cite web|url=http://www.greencarcongress.com/2011/06/albertus-20110617.html|title=Study finds resource constraints should not be a limiting factor for large-scale EV battery production|publisher=[[Green Car Congress]]|date=2011-06-17|accessdate=2011-06-17}}</ref>。[[ミシガン大学]]および[[フォード・モーター]]社が2011年に行ったもう一つの研究によると、2100年までのリチウム需要を支えるのに十分なリチウム資源が存在することが示され、そこにはリチウムを広範囲に必要とする[[ハイブリッドカー|ハイブリッド電気自動車]]や[[プラグインハイブリッドカー]]、[[バッテリー式電動輸送機器]]などの用途が含まれている。この研究では世界中のリチウム埋蔵量を3900万トンと見積もり、90年間の全リチウム需要を経済成長に関するシナリオとリサイクル率に応じて1200から2000万トンと分析している<ref>{{cite web|url=http://www.greencarcongress.com/2011/08/lithium-20110803.html|title=University of Michigan and Ford researchers see plentiful lithium resources for electric vehicles|publisher=[[Green Car Congress]]|date=2011-08-03|accessdate=2011-08-11}}</ref>。しかしながら、単一産地で需要のほとんどを生産するという資源の偏在性および、先述の独占的な少数の供給企業による市場の寡占という問題があるため、商業的な需要ギャップが懸念されている<ref>[http://premium.nikkeibp.co.jp/em/column/torii/56/index.shtml 鳥井弘之の『ニュースの深層』「EV時代」のキーマテリアル リチウム資源の将来を探る『ECO JAPAN』日経BP社、2009年8月6日公開]</ref><ref>[http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/09_21.html リチウムの資源と需給-Lithium Supply & Markets Conference 2009(LSM’09)参加報告- JOGMEC 2009年4月23日公開]</ref>。使用済み製品からのリチウムのリサイクルについては、現状ではその技術がなく、経済性が見込まれないため進んでいない<ref>[http://www.jogmec.go.jp/mric_web/jouhou/material/2007/Li.pdf JOGMEC 28 リチウム(Li)]</ref>。 |
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=== 海水リチウムの抽出 === |
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海水中には2300億トンのリチウムが溶けており、事実上無限の埋蔵量を有する。海水中のリチウム濃度は他の元素と比べて比較的高いため採算ラインのボーダー上にあり、効率的な回収方法が開発されれば経済的に実用可能になる可能性がある<ref>{{Cite journal|author=近藤正聡、吉塚和治|title=海水からのリチウム回収|year=2011|journal=J. Plasma Fusion Res.|volume=87|issue=12|url=http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2011_12/jspf2011_12-795.pdf|accessdate=2013-06-18}}</ref>。2004年には海水リチウムを抽出するためのパイロットプラントが日本の佐賀大学海洋エネルギーセンターで稼働を開始し<ref name="20040417-47news">[http://www.47news.jp/CN/200404/CN2004041701000022.html 海水からリチウムを抽出 佐賀でプラント本格稼働]</ref>、150日間で192 gの塩化リチウムが海水から回収された<ref name=ion>{{Cite journal|author=吉塚和治|title=海水からの実用的リチウム回収|year=2012|journal=日本イオン交換学会誌|volume=23|issue=3|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaie/23/3/23_59/_pdf|accessdate=2013-06-18}}</ref>。このプラントは火力発電所などが取水した海水を2次利用することを想定し、ポンプで汲み上げた海水から吸着剤を用いてリチウムを回収する方式が採用されている。これは、100万kW級の規模の発電所を想定した場合1基当たり年間700トンの塩化リチウムを回収できる計算になるが、吸着剤由来のマンガンの溶出や、回収コストが従来法の20倍かかるなど、実用化にはまだ課題が残っている<ref name=ion/>。 |
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== 用途 == |
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リチウムは大気中では容易に酸化され、単体金属として存在することは難しい。このため、単体の金属材料として利用されることよりも、軽量[[合金]]に用いたり、強力な[[還元剤]]または[[有機リチウム化合物]]の原料として用いられることが多い。リチウムは延性に欠けるので、試薬のリチウムワイヤーは1 %程度のナトリウムを添加した合金である。 |
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[[酸化還元電位]]が低く、[[原子量]]が小さいため、[[電池]][[電極]]とすれば[[起電力]]が高くエネルギー密度の大きい電池ができる。通常3 V出力の[[一次電池]]([[リチウム電池]]、負極に使用)、[[二次電池]]([[リチウムイオン二次電池]]、リチウムイオンを使用)として利用される。 |
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[[アルミニウム]]にリチウムを数%含有させた[[合金]]は軽さと強度の両方を兼ね備え、特に航空宇宙の分野でしばしば使用されるが、[[リサイクル]]性に難があるため航空宇宙の分野以外では普及していない。 |
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[[同位体]]の内、<sup>6</sup>Li は[[核融合発電]]および[[水素爆弾]]において、[[核融合]]反応の材料である[[三重水素]]を生成するために使用される。 |
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== 危険性 == |
== 危険性 == |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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=== 註釈 === |
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=== 出典 === |
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2013年6月21日 (金) 14:25時点における版
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外見 | |||||||||||||||||||
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銀白色の金属 | |||||||||||||||||||
一般特性 | |||||||||||||||||||
名称, 記号, 番号 | リチウム, Li, 3 | ||||||||||||||||||
分類 | アルカリ金属 | ||||||||||||||||||
族, 周期, ブロック | 1, 2, s | ||||||||||||||||||
原子量 | 6.941(2) | ||||||||||||||||||
電子配置 | [He] 2s1 | ||||||||||||||||||
電子殻 | 2, 1(画像) | ||||||||||||||||||
物理特性 | |||||||||||||||||||
色 | 銀白色 | ||||||||||||||||||
相 | 固体 | ||||||||||||||||||
密度(室温付近) | 0.534 g/cm3 | ||||||||||||||||||
融点での液体密度 | 0.512 g/cm3 | ||||||||||||||||||
融点 | 453.69 K, 180.54 °C, 356.97 °F | ||||||||||||||||||
沸点 | 1615 K, 1342 °C, 2448 °F | ||||||||||||||||||
臨界点 | 3223 K, 67 MPa | ||||||||||||||||||
融解熱 | 3.00 kJ/mol | ||||||||||||||||||
蒸発熱 | 147.1 kJ/mol | ||||||||||||||||||
熱容量 | (25 °C) 24.860 J/(mol·K) | ||||||||||||||||||
蒸気圧 | |||||||||||||||||||
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原子特性 | |||||||||||||||||||
酸化数 | 1, -1 (強塩基性酸化物) | ||||||||||||||||||
電気陰性度 | 0.98(ポーリングの値) | ||||||||||||||||||
イオン化エネルギー | 第1: 520.2 kJ/mol | ||||||||||||||||||
第2: 7298.1 kJ/mol | |||||||||||||||||||
第3: 11815.0 kJ/mol | |||||||||||||||||||
原子半径 | 152 pm | ||||||||||||||||||
共有結合半径 | 128±7 pm | ||||||||||||||||||
ファンデルワールス半径 | 182 pm | ||||||||||||||||||
その他 | |||||||||||||||||||
結晶構造 | 体心立方格子構造 | ||||||||||||||||||
磁性 | 常磁性 | ||||||||||||||||||
電気抵抗率 | (20 °C) 92.8Ω⋅m | ||||||||||||||||||
熱伝導率 | (300 K) 84.8 W/(m⋅K) | ||||||||||||||||||
熱膨張率 | (25 °C) 46 μm/(m⋅K) | ||||||||||||||||||
音の伝わる速さ (微細ロッド) |
(20 °C) 6000 m/s | ||||||||||||||||||
ヤング率 | 4.9 GPa | ||||||||||||||||||
剛性率 | 4.2 GPa | ||||||||||||||||||
体積弾性率 | 11 GPa | ||||||||||||||||||
モース硬度 | 0.6 | ||||||||||||||||||
CAS登録番号 | 7439-93-2 | ||||||||||||||||||
主な同位体 | |||||||||||||||||||
詳細はリチウムの同位体を参照 | |||||||||||||||||||
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リチウム (新ラテン語: lithium[1], 英: lithium) は原子番号3の元素。元素記号はLi。アルカリ金属元素の一つ。
元素名はギリシャ語で「石」を意味する lithos に由来する。1817年にヨアン・オーガスト・アルフェドソンがペタル石の分析によって発見した。
性質
物理的性質
常温常圧では銀白色の柔らかい金属で、ナトリウムより硬い。常温で安定な結晶構造は体心立方格子 (BCC)。融点は180 °C、沸点は1330 °C(沸点は異なる実験値あり)であり、その融点および沸点はアルカリ金属元素の中で最も高い[2]。また0.534という比重は全金属元素の中で最も軽く、水より軽い3つの金属元素のうちの1つ(残りの2つはナトリウムおよびカリウム)でもある[3]。また、3,582 J/(kg・K)という比熱容量は全固体元素中最大である[4]。その比熱容量の高さから、リチウムは伝熱用途において冷却材としてしばしば利用される[5]。
リチウムの熱膨張率はアルミニウムの2倍、鉄のほぼ4倍である[6]。常圧、400 μK以下の条件で超伝導となり[7]、20 GPaという高圧条件下においては9 K以上というより高い温度で超伝導となる[8]。
炎色反応においてリチウムおよびその化合物は深紅色の炎色を呈する。主な輝線は波長670.8 nmの赤色のスペクトル線であり、他に610.4 nm(橙色)、460.3 nm(青色)などにスペクトル線が見られる[9]。
リチウムは70 K以下の温度で、ナトリウムと同じようにマルテンサイト変態を起こす。4.2 Kで菱面体晶を取り、より高い温度で面心立方晶となり、それから体心立方晶となる。液体ヘリウムを用いて4 Kまで冷却すると菱面体晶が最も支配的となる[10]。高圧条件下においては、複数の同素体の形を取ることが報告されている[11]。また、80 ギガパスカル(約80万気圧)程度の高圧下で金属から半導体に相転移する[12]。
化学的性質
同じアルカリ金属のナトリウム、カリウムと比べて反応性は劣り、イオン半径が小さいため電荷/半径比がアルカリ金属としては高く、化合物の化学的性質は、アルカリ土類金属、特にマグネシウムと類似する[13]。乾いた空気中ではほとんど変化しないが、水分があると常温でも窒素と反応し窒化リチウム (Li3N) を生ずる。また、熱すると燃焼して酸化リチウム (Li2O) になる。このため金属リチウムはアルゴン雰囲気下で取り扱う必要がある。ただし燃焼により酸化物を生成する挙動は他のアルカリ金属が空気中で燃焼した場合、過酸化物や超酸化物を生成するのとは対照的である[13]。
イオン化傾向が大きく、酸化還元電位は全元素中で最も低い -3.040 Vであるが、水との反応性はアルカリ金属中では最も穏かである。それでも多量のリチウムと水が反応すると発火する。
同位体
天然に存在するリチウムは6Liおよび7Liの2つの安定同位体からなっており、その天然存在比は7Liが92.5 %と大半を占めている[3][14][15]。この2つの天然同位体の両方は、リチウムの次に軽い元素であるヘリウムおよび次に重い元素であるベリリウムと比較して核子に対する原子核結合エネルギーが例外的に低く、これは安定な軽元素の中でリチウムだけが核分裂反応を通じて正味のエネルギーを生じさせることができるということを意味している。2つのリチウム天然同位体は重水素およびヘリウム3以外のどんな安定核種よりも核子あたりの結合エネルギーが低い[16]。この結果として、リチウムは太陽系において原子番号32番までの元素の内25番目の存在量であり、リチウムは原子量が非常に軽いにもかかわらず一般的な元素ではない[17]。
リチウムは8つの放射性同位体が明らかにされており、比較的半減期の長いものとして半減期838ミリ秒の8Liおよび半減期178ミリ秒の9Liがある。他の全ての放射性同位体は半減期8.6ミリ秒以下である。最も半減期の短いものは4Liであり、それは陽子放出によって崩壊し、その半減期は7.6×10-23秒である[18]。エキゾチック原子核である11Liは中性子ハローを示すことが知られている。3Liは、存在が確認されている中で、1H以外で唯一陽子のみで構成された原子核を持つ。
7Liはビッグバン原子核合成において生成された原生核種の1つである。少量の6Liおよび7Liは恒星内元素合成において生産されるが、生産される速度と同程度の速さで燃焼されると考えられている[19]。6Liおよび7Liはより重い元素が宇宙線による核破砕を受けることによっても少量が付加的に生成され、初期の太陽系での7Beおよび10Beの放射性崩壊によっても生成される[20]。7Liはまた炭素星においても生成される[21]。
リチウムの同位体は鉱物の形成や化学的沈殿、代謝、イオン交換などの多様な自然のプロセスによって分離される。リチウムイオンは粘土鉱物の八面体サイトにおいてマグネシウムや鉄の代替となり、そこでは6Liは7Liより優先して取り込まれるため、その結果岩石の変質や超濾過の過程において軽い同位体が濃縮される。レーザー分離法として知られる方法はリチウム同位体の分離に用いることができる[22]。
化合物
代表的なリチウムの化合物として、以下のものが知られている。
- フッ化リチウム (LiF)
- 塩化リチウム (LiCl)
- 臭化リチウム (LiBr)
- ヨウ化リチウム (LiI)
- 水酸化リチウム (LiOH) - 強塩基
- ヘキサフルオロリン酸リチウム (LiPF6) - リチウムイオン二次電池の電解質
- ニオブ酸リチウム (LiNbO3)
- n-ブチルリチウム (C4H9Li)
炭酸リチウムは結晶化耐熱ガラス(パイロセラム)、テレビのブラウン管、陶磁器の釉(うわぐすり)として利用され、水酸化リチウムが添加されたグリースが自動車・農機具・機械工具などの潤滑剤として市販されている。
医療用として炭酸リチウムが躁病および躁うつ病の躁状態の患者に処方される。また、うつ病や躁うつ病のうつ状態の患者に、抗うつ薬を補助するために応用的に処方される場合も多い。この場合、治療上有効とされる血中濃度と、中毒に陥る濃度との範囲が狭いため定期的に血液検査を行い適切な血中濃度に保たれているかを確認しなければならない。もっとも、医師が処方した通りに患者が正しく服用している限り危険な状態になることは少ないとされている。
歴史
1800年、ブラジルの化学者ジョゼ・ボニファシオ・デ・アンドラーダ・エ・シルヴァによってスウェーデンのウート島の鉱山からリチウムを含有した葉長石 (LiAlSi4O10) が発見された[23][24][25]。葉長石の発見から17年後の1817年、当時イェンス・ベルセリウスの研究室で働いていたヨアン・オーガスト・アルフェドソンが葉長石の分析から新しい元素の存在を発見した[26][27][28]。この元素はナトリウムやカリウムに似た化合物を形成したが、ナトリウムやカリウムの炭酸塩および水酸化物が水に対する溶解度および塩基性の高い物質であることと対照的に、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムの水に対する溶解度や塩基性は低かった[29]。ベルセリウスは、植物の灰から発見されたカリウムや動物の血液中に多く含まれていたナトリウムとは対照的に、リチウムが鉱石の中から発見されたことから、この塩基性の材料にギリシア語で「石」を意味する λιθoς (lithos) より「lithion / lithina」と名付け、その材料中の金属を「リチウム (lithium)」と名付けた[3][24][28]。
後に、アルフェドソンはリシア輝石やリチア雲母にもリチウムが含まれていることを示した[24]。1818年、クリスティアン・グメリンはリチウム塩類が深紅色の炎色反応を示すことを初めて言及した[24]。しかし、アルフェドソンとグメリンはリチウム塩類から単体のリチウム金属を単離しようとしたが成功しなかった[24][28][30]。1821年、ウィリアム・トマス・ブランドは、以前にハンフリー・デービーが同じアルカリ金属類のナトリウムおよびカリウムの単体金属を得るのに利用した電気分解によって、酸化リチウムよりリチウムの単体金属を得た[14][30][31][32]。ブランドはまた、塩化リチウムのようないくつかの純粋なリチウム塩類の分析から、リチア(酸化リチウム)がおよそ55 %の金属リチウムを含んでいると見積もり、リチウムの原子量をおよそ9.8 g/molであると推定した(現在の値は6.94 g/mol)[33]。1855年、ローベルト・ブンゼンおよびアウグストゥス・マーティセンによって塩化リチウムの電気分解から大量の金属リチウムが生成された[24]。1923年から始まった、ドイツの企業であるメタルゲゼルシャフト社による、塩化リチウムおよび塩化カリウムの混合液を電気分解させて金属リチウムを得る工業的生産法は、その後のリチウムの商業生産へとつながる発見となった[24][34]。
リチウムの生産とその用途は、歴史的にいくつかの急激な変換点を経験してきた。リチウムの初めての主要な用途は、第二次世界大戦およびその直後の期間における、航空機のエンジンやそれに類似した用途のための高温グリースであった。この小さな市場の大部分は、アメリカ合衆国のいくつかの小規模な鉱工業によって支えられていた。リチウムの需要は、冷戦下の水素爆弾製造によって劇的に増加した。リチウム6およびリチウム7に中性子を照射することでトリチウムの生産が行われ、このような単独でのトリチウム生産に役立つのみならず、重水素化リチウムの形で水素爆弾内の固体核融合燃料にも用いられた。1950年代後半から1980年代中期の期間、アメリカはリチウムの主要な生産者となった。最終的には、42,000トンの水酸化リチウムが備蓄されていた。備蓄されていたリチウム中のリチウム6は、その75 %が減損されていた[35]。
リチウムはガラスの融点を降下させるのに用いられ、また、ホール・エルー法における酸化アルミニウムの溶解性の改善のためにも用いられた[36][36]。1990年代中旬までは、この2つの用途がリチウム市場を支配していた。核兵器開発競争の終了後リチウムの需要は減少し、アメリカ合衆国エネルギー省が備蓄していたリチウムの一般市場への売却はリチウムの価格をさらに押し下げた[35]。しかし1990年代半ばになると、いくつかの会社において、地下や鉱山より採掘されたリチウム原料を用いるよりもより安価な塩水からのリチウムの抽出を始めた。これによって多くの鉱山は閉山するか、ペグマタイトなどの他の採算が取れる鉱石のみに絞っての採掘に移行した。例えば、アメリカのノースカロライナ州、キングスマウンテン近郊の鉱山は、21世紀になる前に閉山した。リチウムイオン電池の用途はリチウムの需要を増やしており、2007年にはリチウムの主要な用途となった[37]。2000年代までのリチウム電池におけるリチウム需要の急増によって、新たな会社はリチウム需要を満たすために塩水抽出によるリチウム生産能力の増強に努めている[38][39]。
存在
宇宙
リチウムはビッグバンによって合成された3つの元素のうちの1つであり、ビッグバン原子核合成において6Liおよび7Liの2つの安定同位体が合成された[40]。ビッグバン原子核合成によって生成する原子の量は光子とバリオンの存在比に依存しているためリチウムの存在量は理論的に予測することが可能であるはずだが、それによって求められたリチウムの理論量と実際の観測によるリチウムの存在量との間には矛盾が生じていた。しかしながら、2013年6月にAstronomy and Astrophysics(天文学および天体物理学)において発表されたケンブリッジ大学のKarin Lindらのグループによる論文において、ハワイのW・M・ケック天文台にある世界最大級の望遠鏡「ケックI」を使い、洗練された理論モデルを用い強力なスーパーコンピューターでデータ解析を行うことで、リチウムの存在量がビッグバン原子核合成における理論量と矛盾しない事が示された[41]。
リチウムは水素、ヘリウムと共にビッグバンによって合成された初めの元素の1つであるが、リチウムおよびベリリウムとホウ素は他の近い原子番号の元素と比較してその存在量は著しく小さい。これは、リチウムが低温で核反応を起こすため消費されやすく、かつリチウムが生成されるような核反応が少ないことの結果である[42]。
リチウムは準恒星である褐色矮星や、特定の特異な橙色の星において見られる。リチウムは温度が低く小さな褐色矮星に存在するが、より温度の高い赤色矮星では核反応によって消費されてリチウムが存在しないため、太陽よりも小さなこれら2つを識別するためにリチウムの存在を確認する「リチウム・テスト」と呼ばれる方法が利用される[14][43][44]。ケンタウルス座X-4のような橙色の星からもまたリチウムが検出される。これらの星は中性子星やブラックホールのようなより大きな天体を周回しており、水素やヘリウムよりも重いリチウムが重力によって星の表面へと引かれるためリチウムが観測されるのだと考えられる[14]。
地上
国 | 生産量 | 可採埋蔵量[note 1] |
---|---|---|
アルゼンチン | 3,200 | 850,000 |
オーストラリア | 9,260 | 970,000 |
ブラジル | 160 | 64,000 |
カナダ (2010) | 480 | 180,000 |
チリ | 12,600 | 7,500,000 |
中華人民共和国 | 5,200 | 3,500,000 |
ポルトガル | 820 | 10,000 |
ジンバブエ | 470 | 23,000 |
世界計 | 34,000 | 13,000,000 |
リチウムは地球上に広く分布しているが、非常に高い反応性のために単体としては存在していない[3]。海水に含まれるリチウムの総量は非常に多く2300億トンと推定されており、その濃度は0.14から0.24 ppmもしくはモル濃度で25 μmol/L[46]と比較的安定した濃度で存在している[47][48]。熱水噴出孔ではより高濃度にリチウムが存在しており、その濃度は7 ppmに達する[48]。
地殻中のリチウム濃度は重量濃度でおよそ20から70 ppmに渡ると見積もられており[3]、地殻中で25番目に多く存在する元素である[49]。リチウムは火成岩を構成する非主要な元素であり、その濃度は花崗岩が最大である。リチウム鉱物であるリシア輝石や葉長石を含有するペグマタイトもまた多くリチウムを含んでおり、リチウム源として最も多く商業利用されている[50]。もう一つの重要なリチウム鉱物にリチア雲母がある[51]。新しいリチウム源としてはヘクトライト粘土があり、アメリカのWestern Lithium Corporation社によって活発に資源開発されている[52]。リチウムは水分蒸発量の多い乾燥した地域の塩湖などにおいて非常に長い時間をかけて濃縮され、鉱床を形成することも知られている[53]。世界最大のリチウム埋蔵量を有すると推定されているボリビアのウユニ塩原[54]や、世界のリチウム埋蔵量の27 %が埋蔵されているチリのアタカマ塩原[55]などもそのような乾燥した塩湖である。
リチウム埋蔵量[note 1]が最も多い場所のうちの一つとしてボリビアのウユニ塩原があり、その埋蔵量は540万トンと見積もられている。アメリカ地質調査所の2010年の推定によると最大の可採埋蔵量を有する国はチリの750万トンであり[56]、チリは生産量も8800トンと世界最大である[45]。他の主要なリチウム産出国としては、オーストラリア、アルゼンチン、中国が含まれる[45][57]。
2010年6月、ニューヨークタイムズは、アメリカの地質学者がアフガニスタン西部の干上がった塩湖跡にリチウムを含む巨大な堆積物が存在していると考え地質調査を行っていると報じた。アメリカ国防総省は、「彼らの初期の分析結果によれば、ガズニー州のある場所には現在知られている中で世界最大のリチウム埋蔵量を有するボリビアのそれと同程度に大きなリチウム鉱床が存在する可能性が示されている」と述べた[58]。これらの予想は主にソ連によって収集された1979年から1989年頃の古いデータに基いており、アメリカ地質調査所のAfghanistan Minerals Projectの長であるスティーブン・ペータースは、過去2年間にアフガニスタンで行ったアメリカ地質調査所の関与したどのような新しい鉱物の測量においても確認されておらず、「我々はいかなるリチウムの発見も承知していない」と述べた[59]。
生体
リチウムは多数の植物、プランクトンおよび無脊椎生物において痕跡量存在しており、その濃度は69から5760 ppb(10億分の1)である。脊椎動物中のリチウム濃度は先述のものよりもわずかに低く、ほとんど全ての脊椎動物の体組織および体液中には21から763 ppbのリチウムが含まれている[48]。水棲生物はリチウムを生物濃縮する[60]。これらの生物においてリチウムがどのような生物学的役割を有しているかは知られていないが[48]、にもかかわらず哺乳類の栄養学的な研究によりリチウムの健康に対する重要性が示されており、必須微量元素として1 mg/dayのRDA(一日に摂取すべき栄養量)が提言されている[61]。2011年に報告された日本における観察研究によると、飲料水中に含まれる天然由来のリチウムが人間の寿命を増やす可能性が示唆されている[62]。
生産
リチウムの生産量は第二次世界大戦後に大きく増加した。リチウムはペグマタイトなどの火成岩中から他の元素と分離され、もしくは鉱泉や塩水溜まり(塩湖かん水)、堆積塩などから抽出される。金属リチウムは55 %の塩化リチウムと45 %の塩化カリウムの混合物を450°Cで溶融塩として電解することによって生産される[63]。金属リチウムの価格は1998年時点で95 USドル/kg(43 USドル/ポンド)であった[64]。
アメリカ地質調査所の推定によるリチウムの可採埋蔵量は1300万トンである[45]。それは南米のアンデス山脈沿いに多く見られ、リチウムの主要生産国としてチリやアルゼンチンが挙げられる。両国はリチウムを塩湖かん水から生産しており、アメリカでもネバダ州にあるシルバーピーク鉱山の塩湖かん水からリチウムを産出している[5]。世界の既知の埋蔵量の内の半数近くをアンデス山脈の中央東部に位置するボリビアが占めているが、この資源の開発はあまり進展しておらず、2013年2月に日本とボリビアの共同でリチウムの抽出試験が開始されたばかりである[54]。
一方で、リチウム鉱石からのリチウム生産は主にオーストラリアやジンバブエなどで行われている[45]。オーストラリアではペグマタイトからタンタルを生成する際の副生物として回収されており[65]、世界3位の生産量を占めている[45]。鉱石としてのリチウム資源はアメリカが全埋蔵量の47 %を有しているが[66]、2010年の時点ではアメリカで稼働中のリチウム鉱山は塩湖かん水を利用するシルバーピーク鉱山のみであり、リチウム鉱石の採掘は行われていない[67]。
潜在的なリチウムの資源回収源として地熱井戸が挙げられる。地熱井戸では高温の水のような地熱流体の移動を介して地表に熱エネルギーを伝達するが[68]、そのような地熱流体に含まれるリチウムを単純な濾過技術によって回収することが可能であり、これは既に現場実証されている[69]。環境保護に関するコストは主に既存の地熱井戸操業に関するそれであるため、相対的な環境面の影響は肯定的である[70]。
世界金融危機後、産業界において炭酸リチウムの市場規模縮小が広がったため、ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ (SQM) のようなリチウムの主要供給者は、リチウム資源開発者の新規参入を考慮し、さらに市場でのその立場を守るために設定価格を20 %低下させた[71]。2012年にはリチウム需要の増加に伴い市場規模は拡大している。2012年のビジネスウィークの記事は、「億万長者であるフリオ・ポンセが支配する"SQM"、ヘンリー・クラビスのコールバーグ・クラビス・ロバーツ社に支援されたロックウッド、フィラデルフィアに拠点を置くFMC社」などの既存企業によるリチウム市場の寡占を概説した。リチウム電池の需要が年におよそ25 %ずつ増加しており全体のリチウム需要を4から5 %ほど押し上げているため、世界的なリチウムの消費量は2012年の15万トンから2020年には30万トンにまで急増する可能性がある[72]。
ローレンス・バークレー国立研究所とカリフォルニア大学バークレー校による2011年の研究によると、現在推定されているリチウムの埋蔵量からは10億台オーダーもの40 キロワット時のリチウムイオン二次電池を製造可能であると見積もられ、リチウム埋蔵量の問題は電気自動車向けの大規模なバッテリー製造の律速因子とは成り得ないことが示された[73]。ミシガン大学およびフォード・モーター社が2011年に行ったもう一つの研究によると、2100年までのリチウム需要を支えるのに十分なリチウム資源が存在することが示され、そこにはリチウムを広範囲に必要とするハイブリッド電気自動車やプラグインハイブリッドカー、バッテリー式電動輸送機器などの用途が含まれている。この研究では世界中のリチウム埋蔵量を3900万トンと見積もり、90年間の全リチウム需要を経済成長に関するシナリオとリサイクル率に応じて1200から2000万トンと分析している[74]。しかしながら、単一産地で需要のほとんどを生産するという資源の偏在性および、先述の独占的な少数の供給企業による市場の寡占という問題があるため、商業的な需要ギャップが懸念されている[75][76]。使用済み製品からのリチウムのリサイクルについては、現状ではその技術がなく、経済性が見込まれないため進んでいない[77]。
海水リチウムの抽出
海水中には2300億トンのリチウムが溶けており、事実上無限の埋蔵量を有する。海水中のリチウム濃度は他の元素と比べて比較的高いため採算ラインのボーダー上にあり、効率的な回収方法が開発されれば経済的に実用可能になる可能性がある[78]。2004年には海水リチウムを抽出するためのパイロットプラントが日本の佐賀大学海洋エネルギーセンターで稼働を開始し[79]、150日間で192 gの塩化リチウムが海水から回収された[80]。このプラントは火力発電所などが取水した海水を2次利用することを想定し、ポンプで汲み上げた海水から吸着剤を用いてリチウムを回収する方式が採用されている。これは、100万kW級の規模の発電所を想定した場合1基当たり年間700トンの塩化リチウムを回収できる計算になるが、吸着剤由来のマンガンの溶出や、回収コストが従来法の20倍かかるなど、実用化にはまだ課題が残っている[80]。
用途
リチウムは大気中では容易に酸化され、単体金属として存在することは難しい。このため、単体の金属材料として利用されることよりも、軽量合金に用いたり、強力な還元剤または有機リチウム化合物の原料として用いられることが多い。リチウムは延性に欠けるので、試薬のリチウムワイヤーは1 %程度のナトリウムを添加した合金である。
酸化還元電位が低く、原子量が小さいため、電池電極とすれば起電力が高くエネルギー密度の大きい電池ができる。通常3 V出力の一次電池(リチウム電池、負極に使用)、二次電池(リチウムイオン二次電池、リチウムイオンを使用)として利用される。
アルミニウムにリチウムを数%含有させた合金は軽さと強度の両方を兼ね備え、特に航空宇宙の分野でしばしば使用されるが、リサイクル性に難があるため航空宇宙の分野以外では普及していない。
同位体の内、6Li は核融合発電および水素爆弾において、核融合反応の材料である三重水素を生成するために使用される。
危険性
NFPA 704 |
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金属リチウムに対するファイア・ダイアモンド表示 |
リチウムは腐食性を有しており、身体へのあらゆる接触を避けることが求められる[81]。リチウムは水と激しく反応する禁水性の物質であり、安全のためにナフサのような非反応性の化合物中に保管される[82]。粉末状のリチウムもしくは、多くの場合塩基性であるリチウム化合物を吸入すると鼻や喉が刺激され、一方でより高濃度のリチウム(化合物)に曝されると肺水腫を引き起こすことがある[81]。
妊娠第1三半期の間にリチウムを摂取した女性の産む子供において、エブスタイン奇形が発生するリスクが増加するという忠告があった[83]。
規制
一般の消費者にとって最も容易に利用できるリチウム源はリチウム電池であり、いくつかの管轄区域においてリチウム電池の販売が制限されている。リチウムは、アルカリ金属を無水の液体アンモニアに溶解させた溶液を用いて還元反応を行うバーチ還元によって、プソイドエフェドリンおよびエフェドリンを覚醒剤のメタンフェタミンに還元させるために用いることができる[84][85]。
大部分のリチウム電池は短絡によって非常に急速に放電して過熱し、それによって爆発の可能性に繋がることがあるため(熱暴走)、運送や積荷に関して、特に航空機のような特定の輸送機関を用いることが禁止されている場合がある。大部分の消費者向けのリチウム電池はこの種の事故を防ぐために、熱の過負荷から保護する回路が内蔵されているか、もしくは本質的に短絡時に流れる電流を制限するような設計がされている。自然発生的な熱暴走に至る内部短絡は、電池の製造欠陥もしくは損傷のために発現することが知られていた[86][87]。
脚注
註釈
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関連項目
外部リンク
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