「フェミニズム」の版間の差分
→関連項目: 内容追加 タグ: モバイル編集 モバイルウェブ編集 改良版モバイル編集 |
Gynaecocracy (会話 | 投稿記録) 重複削除と記述整理。グロス1990、荒井2022によって加筆。 |
||
(3人の利用者による、間の15版が非表示) | |||
4行目: | 4行目: | ||
{{Feminism sidebar}} |
{{Feminism sidebar}} |
||
{{Women in society sidebar}} |
{{Women in society sidebar}} |
||
'''フェミニズム'''({{Lang-en|feminism}})とは、女性解放思想、およびこの思想に基づく社会運動の総称である<ref name=":0" />。[[政治]]制度、[[文化]]慣習、社会動向などのもとに生じる[[性別]]による格差や[[性差別]]に影響されず、男女が[[平等]]な[[権利]]を行使できる社会の実現を目的とする思想または運動である<ref>{{Cite book|title=Globalization and feminist activism|url=https://www.worldcat.org/oclc/62342167|publisher=حRowman & Littlefield|date=2006|location=Lanham, Md.|isbn=074253782X|oclc=62342167|first=Hawkesworth, M. E.,|last=1952-}}</ref><ref>{{Cite book|title=What is feminism? : an introduction to feminist theory|url=https://www.worldcat.org/oclc/731677122|publisher=Thousand Oaks, Calif.|date=1999|location=London|isbn=9781446210420|oclc=731677122|first=Beasley,|last=Chris.}}</ref>。[[男女同権|男女同権主義]]に基づく、女権拡張主義、女性[[尊重]]主義ともいう<ref name=":0">{{Cite book|title=岩波 女性学事典|date=|year=2002|publisher=[[岩波書店]]|editor=[[井上輝子]], [[上野千鶴子]], [[江原由美子]], [[大沢真理]], [[加納実紀代]]}}</ref><ref name=":1">{{Kotobank|フェミニズム|2=}}</ref>。 |
|||
'''フェミニズム'''は、政治的・経済的・個人的・社会的な面におけるジェンダーの平等を確立することを目指す、一連の社会運動と思想のことである{{sfn|Lengermann|Niebrugge|2010|p=223}}<ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Mendus |first1=Susan |editor1-last=Honderich |editor1-first=Ted |title=The Oxford Companion to Philosophy |date=2005 |orig-date=1995 |publisher=Oxford University Press|pages=291–294 |chapter=Feminism |edition=2nd|isbn=978-0-19-926479-7 }}</ref><ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Hawkesworth | first=Mary E.|title=Globalization and Feminist Activism |year=2006|publisher=Rowman & Littlefield |pages=25–27 |isbn=978-0-7425-3783-5}}</ref><ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Beasley |first=Chris |title=What Is Feminism? |year=1999|publisher=Sage |location=New York |pages=3–11 |isbn=978-0-7619-6335-6}}</ref>{{Efn|ほか、[[男女同権|男女同権主義]]に基づく、女権拡張主義、女性[[尊重]]主義などと呼ばれることもある<ref>{{Cite book ja |title=岩波 女性学事典|year=2002|publisher=[[岩波書店]]|editor=[[井上輝子]], [[上野千鶴子]], [[江原由美子]], [[大沢真理]], [[加納実紀代]]}}{{page needed|date=2024-10-16}}</ref>。フェミニズムの推進者や同調者のことを「'''フェミニスト'''」と呼称する<ref>{{Cite web|和書|title=フェミニスト / Feministに関する最新記事 |url=https://www.vogue.co.jp/tag/feminist |website=Vogue Japan |accessdate=2022-01-17 }}</ref>。}}。フェミニズムは、現代の社会が[[家父長制]]を基礎とし、男性の視点を優先し、女性が不当な扱いを受けていると主張する<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Gamble|first=Sarah|url=https://books.google.com/books?id=JKAUXu9vpn0C|title=The Routledge Companion to Feminism and Postfeminism |date=2001 |publisher=Routledge |isbn=978-0-415-24310-0 |pages=VII |chapter=Introduction|orig-date=1998}}</ref>。フェミニズムは、女性の自由と平等についての思想として始まったが、現代では女性のためだけの思想にはとどまらず、男女という二分的なカテゴリーの自明性を問い直すことで、多様な性のあり方にも射程を広げてきた{{Sfn|中澤|2020|pp=2-3}}。 |
|||
第二波以降のフェミニズムは大きく分類すると、最長歴史かつ「フェミニズム」の原型ともなった[[リベラル・フェミニズム]](自由主義フェミニズム)、それを批判して女性差別の原因を[[資本主義社会]]だとする[[マルクス主義フェミニズム]]、原因を資本主義や諸制度ではなく、身体性差で男性自体が抑圧者と批判した[[ラディカル・フェミニズム]](急進的フェミニズム)の3大潮流に分類される<ref name=":4">{{Cite web|和書|title=【女性】フェミニズムの第2の波と「ジェンダー」の発見(三成美保) |url=https://ch-gender.jp/wp/?page_id=171 |website=比較ジェンダー史研究会 |access-date=2023-01-02 }}</ref><ref name=":5">{{Cite journal|和書|author=岡野八代 |date=2017-03 |url=https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000015378 |title=継続する第二波フェミニズム理論 : リベラリズムとの対抗へ |journal=同志社アメリカ研究 |ISSN=0420-0918 |publisher=同志社大学アメリカ研究所 |volume=53 |pages=103-124 |doi=10.14988/pa.2017.0000015378 |id={{CRID|1390853649845022848}}}}</ref><ref name=":6">{{Cite journal|和書|author=ホーン川嶋瑤子 |date=2000-03 |url=https://hdl.handle.net/10083/51554 |title=フェミニズム理論の現在 : アメリカでの展開を中心に |journal=ジェンダー研究 : お茶の水女子大学ジェンダー研究センター年報 |ISSN=13450638 |publisher=お茶の水女子大学ジェンダー研究センター |volume=3 |pages=43-66 |id={{CRID|1050282677924958720}} |hdl=10083/51554}}</ref><ref>{{Cite journal|和書|author=松久玲子 |date=2001-08 |url=https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000008139 |title=1920年代のメキシコにおけるフェミニズム運動 ― メキシコ革命と婦人参政権運動のはざまで ― |journal=社会科学 |ISSN=0419-6759 |publisher=同志社大学人文科学研究所 |volume=67 |pages=1-19 |doi=10.14988/pa.2017.0000008139 |id={{CRID|1390572174865032576}}}}</ref>。これら3大潮流以外にも多様なフェミニズムが展開しており<ref name=":4"/>、社会学者の[[上野千鶴子]]は「フェミニストが一枚岩でいるよりも、多様性があるほうがずっといい」と述べている<ref>{{Cite web|和書|title=上野千鶴子さん「野蛮な靴と思って何が悪い?フェミも多様なの」 |url=https://mirror.asahi.com/article/12881204 |website=かがみよかがみ |access-date=2023-02-22 }}</ref>。 |
|||
フェミニズム運動は、特に18世紀以降に形成された、女性であることは男性であることよりも不利な立場にあるという認識を共有する行動・問いかけ・要求の複合体としてとらえらえる{{Sfn|デラップ|2023|pp=10-14}}。フェミニストは、[[レイプ]]・[[性的虐待]]・望まない妊娠といった暴力や、[[女性の権利]]の制限([[親権]]・土地所有権・[[参政権]]・強制労働・医療アクセスなど)、女性の貧困、学歴の差などを問題化し、改善・変革を要求してきた{{Sfn|デラップ|2023|pp=10-14}}。フェミニズム運動は、特に西洋社会において、さまざまな女性の権利を改善するための主要な原動力になってきたとしてほぼ普遍的に評価されている{{sfn|Messer-Davidow|2002}}。 |
|||
フェミニズムの対置概念は[[マスキュリズム]](男性解放運動、[[メンズリブ]])。フェミニズムの推進者や同調者は「フェミニスト」という<ref>{{Cite web|和書|title=フェミニスト / Feministに関する最新記事 |url=https://www.vogue.co.jp/tag/feminist |website=Vogue Japan |accessdate=2022-01-17 |first=Condé |last=Nast}}</ref>。 |
|||
長年にわたる運動の展開の中で、フェミニズムの中にも異なる視点や立場が生まれ、特に「[[リベラル・フェミニズム]]」「[[社会主義婦人解放論|社会主義フェミニズム]]」「[[ラディカル・フェミニズム]]」が三大潮流とされる{{Sfn|三成|2023}}。リベラル・フェミニズムは、法・文化などでのジェンダー平等を求め、性別によって異なる扱いを受けない個人の権利を追求する{{Sfn|三成|2023}}。社会主義フェミニズムは、女性抑圧の根源を資本主義に求め、平等達成のためには体制変革が必要とし、他の非抑圧集団との連携も重視する{{Sfn|三成|2023}}。ラディカル・フェミニズムは、あらゆる抑圧の根源に男性支配があるとし、男女の分離を唱え、「女性」という集団の独自性を強調する{{Sfn|三成|2023}}。 |
|||
== 概要 == |
|||
著作家の[[クリスティーヌ・ド・ピザン]]のように、個人としての活動は[[中世]]から存在したが、思想体系・社会運動としてのフェミニズムは、18世紀の欧州において[[封建主義|封建的・絶対主義]]的国家体制の解体と近代社会の実現を目指す[[市民革命]]の一環として起こった<ref>{{Cite web|和書|title=クリスティーヌ・ド・ピザン:中世の作家で初期のフェミニスト |url=https://www.greelane.com/ja/文系/歴史と文化/christine-de-pizan-biography-4172171 |website=クリスティーヌ・ド・ピザン:中世の作家で初期のフェミニスト |date=2019-08-09 |access-date=2022-09-01 |language=ja}}</ref>。1789年の[[フランス革命]]が広く女性の権利運動の始まりとしてみなされた。 |
|||
20世紀後半以降、従来のフェミニズム運動が、[[白人]]・[[中流階級]]の[[異性愛者]]や[[シスジェンダー]]の視点に偏重する(「[[ホワイト・フェミニズム]]」{{Sfn|シュラー|2023|pp=14-17}}「[[トランス排除的ラディカルフェミニスト|トランス排除的ラディカルフェミニズム]]」{{Sfn|藤高|2022|p=141}})として批判され、「{{仮リンク|ブラック・フェミニズム|en|black feminism}}」や「[[インターセクショナリティ|インターセクショナル・フェミニズム]]」などが生まれた{{Sfn|藤高|2022|pp=126-129}}。これらのフェミニズムでは、「女性たち」の経験を性差別の文脈だけに回収せず、人種・階級・民族・地域などの要素と交差的にとらえることが重要とされる{{Sfn|藤高|2022|pp=126-129}} 。他にも多様なフェミニズムが展開し、社会学者の[[上野千鶴子]]は「フェミニストが一枚岩でいるよりも、多様性があるほうがずっといい」と述べる<ref>{{Cite web|和書|title=上野千鶴子さん「野蛮な靴と思って何が悪い?フェミも多様なの」 |url=https://mirror.asahi.com/article/12881204 |website=かがみよかがみ |access-date=2023-02-22 }}</ref>。 |
|||
===フェミニズムの登場(リベラルフェミニズム)=== |
|||
まず第一波フェミニズム(他のフェミニズムの登場以降に[[リベラル・フェミニズム|リベラルフェミニズム]]と呼ばれる)として、19世紀から20世紀前半までの中産階級の女性の精神的自立と経済的自立、教育・職業の機会均等、[[女性参政権]]運動を中心とする法的男女平等を求めるから始まったされる<ref name=":1" /><ref>{{Cite journal|last=Richards|first=Anna|last2=Weedon|first2=Chris|date=2008-07-01|title=Gender, Feminism, and Fiction in Germany, 1840-1914|url=https://doi.org/10.2307/20467993|journal=The Modern Language Review|volume=103|issue=3|pages=896|publisher=Modern Humanities Research Association|doi=10.2307/20467993|issn=0026-7937}}</ref><ref name=":2" />。19世紀の運動や文化に大きく影響を与え、19世紀後半から20世紀、特に第一次世界大戦の間に、多くの国で[[女性参政権]]が認められた。[[ニュージーランド]]では、[[女性参政権|婦人参政権]]論者ケイト・シェパードの助けによって、[[1893年]]に最も早く女性参政権が認められている(なお、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で認められたのは[[1920年]]、また[[日本]]では[[1945年]]である)。 |
|||
また、フェミニズムの主張は主に女性の権利に焦点を当てるものの、伝統的な家父長制のあり方は男性にも有害であるという考え方から、フェミニズムの目的には男性解放も含まれると主張されることもある{{sfn|フックス|2020|p=109}}。一方、フェミニズムが男性蔑視を助長し、女性の利益を男性の上に置くと主張し、特にラディカル・フェミニズムの立場が男性にも女性にも有害であると批判する者もいる{{Sfn|Sommers|1995|p=320}}。 |
|||
=== リベラルフェミニズムへの批判と第二波以降 === |
|||
その後、1960年代から第二波フェミニズムとして、「文化・社会に深く根を張る意識や習慣による性差別と闘い、主に[[性別役割分業]]の廃絶、性と[[生殖]]における[[自己決定権]]など」を主張した運動が展開された<ref name=":0" />。1970年時点の欧米では、妻は就業に夫の許可が必要と法的に定められており、離婚を困難にしている現行の離婚法、中絶の合法化など<ref>{{Cite web|和書|title=フェミニズムの過去・現在・未来:東京新聞 TOKYO Web |url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/53888 |website=東京新聞 TOKYO Web |accessdate=2022-01-20 }}</ref>を含めた社会習慣・意識に根ざす性差別との闘いを中心としていた。その中で歴史的・文化的構築物である[[ジェンダー]]の概念を中心に様々な潮流を生み、さらに、異なる文化的・社会的立場から批判、再解釈、再構築されている。より詳細には様々な思想的立場があり、従来の法的平等を求める'''リベラル・フェミニズム'''がある。それを甘いと批判し、女性差別の背景を資本主義社会だとする[[マルクス主義フェミニズム]]が登場した。二大潮流であったが、更には3つ目として、女性の抑圧の根源を女性の「身体」と「性」を男性支配が支配していること、男性という存在自体に起因するものとみなす[[ラディカル・フェミニズム]]がある。これら3つがフェミニズムの主流な潮流となっている<ref name=":4" /><ref name=":5" /><ref name=":6" />。3大潮流以外にもエコロジーにも目を置いた[[エコロジカル・フェミニズム]]など多様な少数の潮流がある。また、「フェミニズム」が人種的多数派の女性中心主義・[[中産階級]]・[[エリート主義]]で一部のエリート女性が男性と対等になっていたことを反省点として踏まえる者は、[[人種]]、[[階級]]、[[年齢]]、[[国籍]]、[[宗教]]、[[性的指向]]などの文化的・社会的要素を考慮する<ref name=":2">{{Cite journal|和書|author=栗原涼子 |title=ニューヨークにおけるラディカルフェミニズムの運動と思想 |journal=学苑 |ISSN=13480103 |publisher=昭和女子大学近代文化研究所 |year=2010 |month=may |volume=835 |pages=76-88 |naid=110007817338 |url=http://id.nii.ac.jp/1203/00004825/}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=モヤモヤしたときにパワーをくれる、フェミニズム関連の本とポッドキャスト[Ruru Ruriko ピンク76] |url=https://telling.asahi.com/article/14445384 |website=telling朝日 |accessdate=2022-01-20 }}</ref>。 |
|||
== 歴史 == |
|||
=== ソ連崩壊・冷戦終結以降 === |
|||
{{main|フェミニズムの歴史}} |
|||
冷戦終結により、女性差別の原因を「資本主義」とするマルクス主義フェミニズム<ref name=":4" />は急激に衰退したため、フェミニスト間同士の対立の中ではラディカルフェミニストとリベラル・フェミニストによるモノが主流となっている。ラディカルフェミニストの[[小倉千加子]]は、近代の枠組みを認める「保守」とリベラル・フェミニズムを例え、近代の枠組みを認めない「破壊」とラディカル・フェミニズムを例えており、2002年の著書でリベラルフェミニズムは衰退し、ラディカルフェミニズムが勝ったと述べている<ref name=":7">『ザ・フェミニズム』,p94、p113 、p132、著:上野千鶴子,小倉千加子 、2002年3月</ref>。一方で、リベラル・フェミニストは、男性を敵視するラディカルフェミニストの過激な言動が、女性の多数派を占める[[ノンポリ]]女性が「フェミニズム」への[[忌避]]を起こす原因となっていると批判している<ref>「迷走フェミニズム: これでいいのか女と男」p16, [[エリザベット・バダンテール]],2006年6月</ref>。 |
|||
=== 由来 === |
|||
2000年代に入ってからは、[[インターネット]]や[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]上でのフェミニズム運動も普及し始めている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/568/ |title=女性差別 わたしの視点① フェミニズムの立場から ~名古屋市立大学准教授・菊地夏野さんに聞く~ |date=2021-12-19 |publisher=NHK |accessdate=2022-05-10}}</ref>。その具体例として、[[#MeToo]]や[[Time's Up]]、[[KuToo|#KuToo]]などの運動が展開されてきた。一方で、フェミニストになりすまして[[炎上 (ネット用語)|炎上]]を誘発する行為が横行していると指摘されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://gendai.media/articles/-/82627?page=6 |title=知識人「言論男社会」の深すぎる闇…「呉座勇一事件」の背景にあったもの |date=2021-05-27 |website=現代ビジネス |accessdate=2022-05-10}}</ref>。なりすましの具体例としては[[青識亜論#フェミニストなりすましアカウントの運用]]が知られている。 |
|||
{{main|フランスにおけるフェミニズム}} |
|||
「近代フェミニズムの母」「ブリテン最初のフェミニスト」などと呼ばれるのが[[メアリ・ウルストンクラフト]]で、1792年に『[[女性の権利の擁護]]』という著書を発表し、教育の男女平等・女性の経済的自立・女性の政治参加、制度面の男女平等を主張した<ref>{{Cite journal ja |author=梅垣千尋|title=ウルストンクラフトのフェミニズム : 理性・徳・知識における平等|year=2019|journal=青山學院女子短期大學紀要|volume=73|doi=10.34321/21156 |pages=1}}</ref>。また、同時期の[[フランス革命]]の際に、[[ニコラ・ド・コンドルセ]]が女性の市民権・参政権を主張している<ref>{{Cite journal ja |author=武藤健一|year=|date=1994-07-01|title=コンドルセの女性参政権論 : 「女性の市民権の承認について」を中心に|url=https://doi.org/10.15057/12326|journal=一橋論叢|volume=112|issue=1|page=|pages=152-169|publisher=[[一橋大学]]}}</ref>。 |
|||
「フェミニズム」という言葉の出自については諸説ある。ユートピア社会主義者でフランスの哲学者の[[シャルル・フーリエ]]が1837年に「フェミニズム(féminisme)」という言葉を作ったとされるが、著作にはその痕跡がない<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last=Goldstein|first=Leslie F.|year=1982|title=Early Feminist Themes in French Utopian Socialism: The St.-Simonians And Fourier|journal=Journal of the History of Ideas|volume=43|issue=1|pages=91–108|doi=10.2307/2709162|jstor=2709162}}</ref><ref>{{Cite web |date=1997-09-02 |orig-date= |title=Féminisme : Appelation D'origine - Vacarme |url=https://vacarme.org/article1154.html |access-date=2024-08-07 |website=vacarme.org |language=French}}</ref>。「フェミニズム」という言葉の初出は1871年のフランスの医学論文で、ある男性が結核の苦しみにより「女性的な特性」を持つようになったという文脈で用いられている{{Sfn|Fayolle|2018}}。この用法から着想を得て、1872年の[[アレクサンドル・デュマ・フィス]]のエッセイで、女性の権利を支持する男性を指して「フェミニスト」の語が使われた{{Sfn|Fayolle|2018}}{{Efn|ただ、これらの例で「フェミニスト」は否定的な意味で使われており、社会の[[性別役割分業]]に従わず、[[性差別]]に異議を唱える女性を「性の混乱」として批判する意味合いが込められていた{{Sfn|Fayolle|2018}}。}}。ここからフェミニズムの概念が広がり、1872年にオランダ<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Grever|first=Maria|title=Strijd Tegen De Stilte. Johanna Naber (1859–1941) En De Vrouwenstem in Geschiedenis|publisher=Hilversum Verloren|year=1994|isbn=90-6550-395-1|pages=31|language=Dutch|chapter=Dutch feminist pioneer Mina Kruseman in a letter to Alexandre Dumas}}</ref>、1890年代にイギリス、そして1910年にアメリカ合衆国で広まった<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last=Offen|first=Karen|title=Sur L'origine Des Mots 'Féminisme' Et 'Féministe'|journal=Revue d'histoire moderne et contemporaine |year=1987|volume=34|issue=3|pages=492–96|jstor=20529317|doi=10.3406/rhmc.1987.1421}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last=Cott|first=Nancy F.|title=The Grounding of Modern Feminism|location=New Haven|publisher=Yale University Press|year=1987|page=[https://archive.org/details/groundingofmoder00cott/page/13 13]|isbn=978-0-300-04228-3|url=https://archive.org/details/groundingofmoder00cott/page/13}}</ref>。『オックスフォード英語辞典』は、この意味で英語で最初に使われたのは1895年とする<ref>{{cite encyclopedia |df=ja |dictionary=Oxford English Dictionary |title=Feminism |url=http://www.oed.com/view/Entry/69192 |edition=3rd |year=2012 |publisher=Oxford University Press |url-access=subscription|quote=Advocacy of equality of the sexes and the establishment of the political, social, and economic rights of the female sex; the movement associated with this.}}</ref>。 |
|||
== 歴史 == |
|||
{{See also|フェミニズムの歴史}} |
|||
=== 4つの波 === |
|||
[[ファイル:Woman suffrage headquarters in Upper Euclid Avenue, Cleveland.jpg|thumb|240px|1912年、アメリカ合衆国で女性参政権を求める運動]] |
|||
現代の西洋のフェミニスト運動は、4つの波(wave)に分けられる<ref name="Humm">{{Cite book|last=Humm|first=Maggie|title=The Dictionary of Feminist Theory|publisher=Columbus: Ohio State University Press|year=1995|isbn=978-0133553895|pages=251}}</ref><ref name="Walker1992">{{cite magazine|last=Walker|first=Rebecca|date=January–February 1992|title=Becoming the Third Wave|pages=39–41|magazine=[[Ms. (magazine)|Ms.]]}}</ref><ref name="Chamberlain2017">{{cite book|last=Chamberlain|first=Prudence|title=The Feminist Fourth Wave: Affective Temporality|url=https://books.google.com/books?id=8AIkDwAAQBAJ|year=2017|publisher=Springer|location=Cham|isbn=978-3-319-53682-8}}</ref>。 |
|||
歴史的な時期や文化・国によって、フェミニストは異なる要因・目標から活動してきた。西洋のフェミニスト歷史家の多くは、女性の権利を獲得するための運動は、その運動が自らを「フェミニズム」と称していなくとも、すべてフェミニズムとみなすべきであるとする<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Lerner |first=Gerda |title=The Creation of Feminist Consciousness From the Middle Ages to Eighteen-Seventy |url=https://archive.org/details/creationoffemini00gerd |url-access=registration |publisher=Oxford University Press |year=1993 | pages=[https://archive.org/details/creationoffemini00gerd/page/n12 1]–20}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last=Walters |first=Margaret |title=Feminism: A Very Short Introduction |publisher=Oxford University |year=2005 |isbn=978-0-19-280510-2 |pages=[https://archive.org/details/feminismveryshor00walt/page/1 1–176] |url=https://archive.org/details/feminismveryshor00walt/page/1 }}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Kinnaird |first1=Joan |first2=Mary |last2=Astell |chapter=Inspired by ideas (1668–1731) |editor1-last=Spender |editor1-first=Dale |title=There's Always Been a Women's Movement |chapter-url=https://archive.org/details/theresalwaysbeen00spenrich |chapter-url-access=registration |publisher=Pandora Press |location=London |year=1983 |pages=29–|isbn=9780863580024 }}</ref>。一方で、「フェミニズム」の語は現代のフェミニズム運動とその後継に限定すべきだと主張する学者もおり、その場合、早期の運動は「{{仮リンク|プロトフェミニズム|en|Protofeminism}}」と呼ばれて区別される<ref>{{Cite journal2 |df=ja |first1=Eileen Hunt |last1=Botting |first2=Sarah L. |last2=Houser |year=2006 |title='Drawing the Line of Equality': Hannah Mather Crocker on Women's Rights |journal=American Political Science Review |volume=100 |issue=2 |pages=265–78 |jstor=27644349 |doi=10.1017/S0003055406062150|s2cid=144730126 }}</ref>。 |
|||
[[第一波フェミニズム|第1の波]]は、19世紀から20世紀初頭の[[女性参政権運動]]であり、女性の投票権を促進した。[[第一波フェミニズム|第2の波]]である[[ウーマン・リブ|女性解放運動]](ウーマン・リブ運動)は、1960年代に始まり、女性の法的な平等と社会的な平等を求めるキャンペーンが行われた。1992年頃には、個性と多様性に焦点を当てることを特徴とする[[第三波フェミニズム|第3の波]]が見られた<ref name="Suffragettes to Grrls">{{cite book|last1=Krolokke|first1=Charlotte|first2=Anne Scott|last2=Sorensen|title=Gender Communication Theories and Analyses: From Silence to Performance|year=2005|publisher=Sage|isbn=978-0-7619-2918-5|page=24|chapter=Three Waves of Feminism: From Suffragettes to Grrls}}</ref>。さらに、2012年頃から[[第四波フェミニズム|第4の波]]<ref name=":3">{{Cite web |title=feminism - The fourth wave of feminism {{!}} Britannica |url=https://www.britannica.com/topic/feminism/The-fourth-wave-of-feminism |access-date=29 November 2021 |website=www.britannica.com}}</ref>が始まったと考える人もいる<ref name=":3" />。第四波フェミニズムは、[[ソーシャルメディア]]を利用して[[セクシャルハラスメント]]、[[女性に対する暴力]]、{{Ill|レイプ文化|en|rape culture}}などと戦うもので、最も有名なのが[[#MeToo|Me Too運動]]である<ref>{{Cite web |authors=The Editors of Encyclopaedia Britannica |title=Feminism: The Fourth Wave |url=https://www.britannica.com/explore/100women/issues/feminism-the-fourth-wave/ |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20190804075911/https://www.britannica.com/explore/100women/issues/feminism-the-fourth-wave/ |archive-date=4 August 2019 |access-date=21 May 2019 |website=[[Encyclopedia Britannica]]}}</ref>。 |
|||
ただし、こうしてイギリス・フランス・アメリカなどの白人市民をフェミニズムの最初の発信地としてみなすことは、グローバルな視点に欠けているという批判もあり、元奴隷の詩人[[フィリス・ホイートリー]]、エジプトのラシード女性会議(1799年)、[[シエラレオネ]]での世帯主全員(三分の一は女性)の投票権成立(1792年)などをフェミニズムの起点として挙げるべきという主張もある{{Sfn|デラップ|2023|pp=23-27}}。 |
|||
=== 第一波フェミニズム === |
|||
{{Main|{{ill|第一波フェミニズム|en|First-wave feminism|preserve=1}}}}{{See also|[[フランスにおけるフェミニズム]]}}フェミニズムの起源は市民革命、とりわけ、18世紀末の[[フランス]]に遡る<ref>{{Cite web|和書|title=捻じ曲げられた「ジェンダー」 (1/2)|url=https://www.toibito.com/column/social-science/sociology/3006/2 |website=トイビト |date=2021-05-19 |access-date=2022-09-19 }}</ref>。1789年に[[フランス革命]]により「[[人間と市民の権利の宣言]]」(フランス人権宣言)が採決されたが、この「人間」とは「男性」のことであり、男性にのみ権利を与えることに対して女性が抗議し、女性の権利を求める運動が欧州各地に広がった。これがフェミニズムの誕生とされる。ただし、ジロンド派の指導者[[ニコラ・ド・コンドルセ]]がすでに1787年に執筆した論文「ニューヘイヴンのあるブルジョワからヴァージニアの一市民への手紙」<ref>Condorcet, « [https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k417228 Lettres d’un bourgeois de New-Haven à un citoyen de Virginie sur l’inutilité de partager le pouvoir législatif entre plusieurs corps] ». ''Œuvres de Condorcet'' publiées par A. Condorcet O’Connor et M. F. Arago, tome neuvième, Paris, Firmin Didot Frères, 1847.</ref>および1790年の「[https://fr.wikisource.org/wiki/Sur_l%E2%80%99admission_des_femmes_au_droit_de_cit%C3%A9 女性の市民権の承認について]」において女性に参政権を与えるべきであると主張しており、[[マクシミリアン・ロベスピエール|ロベスピエール]]のようにフェミニズムに敵対的な態度をとった者が多いなかで、コンドルセは唯一、フランスのフェミニズム史上、重要な地位を与えられている<ref>{{Cite journal|和書|author=武藤健一|year=|date=1994-07-01|title=コンドルセの女性参政権論 : 「女性の市民権の承認につ いて」を中心に|url=https://doi.org/10.15057/12326|journal=一橋論叢|volume=112|issue=1|page=|pages=152-169|publisher=[[一橋大学]]}}</ref>。同じくジロンド派を支持した女性作家[[オランプ・ド・グージュ]]は、[[1791年憲法]]で女性の権利が無視されたことに対して、同年、『女性および女性市民の権利宣言』を発表した。イギリスの代表的なフェミニズム作家[[メアリ・ウルストンクラフト]]がフェミニズム運動の先駆ともいえる『[[女性の権利の擁護]]』を執筆したのは翌1792年である<ref name="Esther"> |
|||
{{Cite book|和書 |
|||
|author=エステル・フリードマン |
|||
|translator=西山惠美・安川悦子 |
|||
|year=2005 |
|||
|title=フェミニズムの歴史と女性の未来-後戻りさせない |
|||
|publisher=[[明石書店]] |
|||
|isbn=4750320595 |
|||
}}</ref>。こうした運動は反対に遭いながらも、徐々に欧州全体に浸透していった。 |
|||
=== 区分 === |
|||
19世紀半ばになると、女性参政権を求める運動がヨーロッパやアメリカにおいて盛んになっていった。この女性参政権運動の起源となったのは[[1848年]]にアメリカ・[[ニューヨーク州]]の西部にある[[セネカフォールズ (ニューヨーク州)|セネカフォールズ]]において、エリザベス・キャディ・スタントンと[[ルクレシア・モット]]によってセネカフォールズ会議が開催され、その要求の一つに女性参政権が盛り込まれたことである<ref>{{Cite web|和書|author=在日アメリカ合衆国大使館|title=第5章「西への拡大と各地域の特徴」|work=米国の歴史の概要|url=https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/3478/|accessdate=2022-01-06|archivedate=2015-05-14|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150514032837/http://aboutusa.japan.usembassy.gov/j/jusaj-ushist5.html}}</ref>。 |
|||
特に西洋におけるフェミニズム運動の歴史は、いくつかの「波」に分けられる<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Humm|first=Maggie|title=The Dictionary of Feminist Theory|publisher=Columbus: Ohio State University Press|year=1995|isbn=978-0133553895|pages=251}}</ref>。第一波は、19世紀から20世紀初頭の女性参政権運動([[サフラジェット]])である。第二波は、1960年代に始まった[[女性解放運動]]で、女性の法的・社会的平等を訴えた。第三波は、1992年前後に名乗られるようになり、個人の自由と多様性に焦点を当てた<ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Krolokke |first1=Charlotte |first2=Anne Scott |last2=Sorensen |title=Gender Communication Theories and Analyses: From Silence to Performance |year=2005 |publisher=Sage |isbn=978-0-7619-2918-5 |page=24 |chapter=Three Waves of Feminism: From Suffragettes to Grrls}}</ref>。さらに、2012年頃から、第四波の存在が主張され始めた<ref>{{Cite web|title=Feminism - The Fourth Wave of Feminism |url=https://www.britannica.com/topic/feminism/The-fourth-wave-of-feminism|access-date=2021-11-29|website=Britannica }}</ref>。第四波は、SNSを用いてセクハラや女性への暴力、レイプカルチャーと戦うことを特徴とし、その代表的な例が[[#MeToo|#MeToo運動]]である<ref>{{Cite web|title=Feminism: The Fourth Wave|url=https://www.britannica.com/explore/100women/issues/feminism-the-fourth-wave/|url-status=dead|archive-url=https://web.archive.org/web/20190804075911/https://www.britannica.com/explore/100women/issues/feminism-the-fourth-wave/|archive-date=2019-08-04|access-date=2019-05-21|website=Encyclopedia Britannica}}</ref>。 |
|||
=== 19世紀から20世紀初頭(第一波フェミニズム) === |
|||
1848年はまた、フランスにおいても、[[プロレタリアート]]主体の[[1848年のフランス革命|二月革命]]によって成立した臨時政府のもとで、[[社会主義]]([[アンリ・ド・サン=シモン|サン=シモン]]主義、[[シャルル・フーリエ|フーリエ]]主義)のフェミニストを中心とする「1848年の女性たち」の運動が起こった年であり、この運動を牽引したのが[[ウジェニー・ニボワイエ]]と彼女が創刊した機関誌『{{仮リンク|女性の声|fr|La Voix des femmes (France)}}』である<ref>{{Cite web|title=1848 : la révolution des femmes|url=https://www.lhistoire.fr/1848-la-révolution-des-femmes|website=www.lhistoire.fr|accessdate=2019-07-09|language=fr}}</ref>。 |
|||
{{Main|第一波フェミニズム}} |
|||
第一波フェミニズムは、19世紀から20世紀初頭にかけて活動し、イギリス・アメリカでは女性の平等な契約・結婚・育児・財産権の促進に焦点を当てた。もともとイギリスでは、{{仮リンク|1839年未成年者監護法|en|Custody of Infants Act 1839}}によって、女性に初めて子どもを監護する権利が与えられた<ref>{{cite book2 |df=ja|last=Wroath|first=John|title=Until They Are Seven, The Origins of Women's Legal Rights|year=1998|publisher=Waterside Press|isbn=1-872870-57-0|url=https://archive.org/details/untiltheyareseve00wroa}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja|last=Mitchell|first=L. G.|title=Lord Melbourne, 1779–1848|year=1997|publisher=Oxford University Press}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja|last=Perkins|first=Jane Gray|url=https://archive.org/details/bub_gb_FJBpAAAAMAAJ|title=The Life of the Honourable Mrs. Norton|year=1909|publisher=John Murray}}</ref>。他にも、{{仮リンク|1870年有夫女財産法|en|Married Women's Property Act 1870}}などが制定され{{Efn|1870年有夫女財産法は、妻の財産法上の地位を、直接・一般的に規定した最初の法律であるとされる<ref>{{Cite journal ja |author=坂本圭右|title=夫婦別産制の現代的意義とその機能--イギリス法における別産原理の生成とその展開とを顧みて-1-|journal=中京法学|volume=1-1|p=193-226|year=1966}}</ref>。}}、これが他のイギリス領でもモデルとなり、1897年までに他のオーストラリア植民地で同様の法が成立した。こうして、19世紀の終わり頃、フェミニズム運動は主に政治的権力の獲得、特に女性参政権の確立に向けられ、他にも女性のセクシュアリティや[[リプロダクティブ・ヘルス・ライツ]]、経済的権利のために活動した{{Sfn|Freedman|2003|p=464}}。 |
|||
18世紀以前は一部の上流階級を除いて、女性は男性と等しく[[農業|農作業]]・[[商業|商]]・[[家内制手工業|手工業]]などの労働に就いていたが(戦後の高度経済成長期の日本の地方では、都会で[[専業主婦]]が広まってからも女性が農業や漁業などの労働に従事していたように)、[[産業革命]]の影響で労働に就いていた中流階級の女性は専業主婦となる事が多かった。20世紀には「結婚して子供を持つ郊外住宅の主婦」が女性の憧れの的とされた。この背景には戦中に若い男性がいない為に工場で労働に従事していた女性を家庭に入れようとするアメリカ政府の[[プロパガンダ]]があった<ref name="Esther" />。日本も例外ではなく、戦中は男性不足のため若い女性は工場で[[軍需産業]]などの労働に就いていたが、戦後はアメリカ型の専業主婦となることが幸福と思う者が、特に日本女性には多かった。しかし、家庭に戻った女性の中には結婚し子供を育てるだけの人生に不満を持つ者もいた。米国における第二波フェミニズム([[ウーマン・リブ|ウーマンリブ運動]])の引き金となった『新しい女の創造』の著者[[ベティ・フリーダン]]は同書で当時の女性の心境を語っている。 |
|||
最初に女性参政権が実現したのは、1893年にイギリス植民地の[[ニュージーランド]]である。これに続き、1894年に南オーストラリアで、1902年にオーストラリア全土で女性参政権が認められた<ref>{{cite web |url=http://www.elections.org.nz/votes-women |title=Votes for Women Electoral Commission |publisher=Elections New Zealand |date=13 April 2005 |access-date=2013-03-31 |archive-url=https://web.archive.org/web/20130914135838/http://www.elections.org.nz/votes-women |archive-date=2013-09-14 |url-status=dead }}</ref><ref>{{cite web |url=http://www.aec.gov.au/Elections/Australian_Electoral_History/wright.htm|title=Women and the Right to Vote in Australia|publisher=Australian Electoral Commission |date=2011-01-28 |access-date=2013-04-26}}</ref>。 |
|||
{{quotation|郊外住宅の主婦、これは若いアメリカの女性が夢に見る姿であり、また、世界中の女性がうらやんでいる姿だといわれている。 しかし、郊外住宅の主婦たちは、密かに悩みと戦っていた。ベッドを片付け、買い物に出かけ、子供の世話をして、 1日が終わって夫の傍らに身を横たえたとき、『これだけの生活?』と自分に問うのを怖がっていた<ref>{{Cite book|和書|title=新しい女性の創造|date=|year=2004|publisher=[[大和書房]]|author=ベティ・フリーダン|translator=[[三浦富美子]]}}</ref>。}} |
|||
イギリスでは、[[サフラジェット]]や{{仮リンク|婦人参政権協会全国同盟|en|National Union of Women's Suffrage Societies}}(NUWSS)が女性の投票権を求めて活動し、1918年に30歳以上で財産を持つ女性に投票権が認められ、1928年にはこの権利が21歳以上のすべての女性に拡大された<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Phillips, Melanie |title=The Ascent of Woman: A History of the Suffragette Movement and the Ideas Behind It |year=2004 |publisher=Abacus |location=London |isbn=978-0-349-11660-0 |pages=1–370}}</ref>。 |
|||
=== 第二波フェミニズム === |
|||
[[File:Sekai-1967-May-1.jpg|thumb|240px|女性団体によるベトナム反戦運動(1967年、ニューヨーク)]] |
|||
{{Main|{{ill|第二波フェミニズム|en|Second-wave feminism|preserve=1}}}}{{See also|[[:Category:第二波フェミニズム]]}} |
|||
こうした状況にあって、[[20世紀]]西欧の女性解放思想の草分けとなったのが、[[1949年]]に出版された[[シモーヌ・ド・ボーヴォワール]]の『[[第二の性]]』である。ボーヴォワールは本書で[[実存主義]]の立場から、本質的な「主体」としての男性に対する女性の「他者性」という概念を提示し、女性の「他者」としてのアイデンティティや根源的[[疎外]]が、一方において女性の身体、とりわけその[[生産能力|生殖能力]]から生じ、他方において出産・育児といった歴史的な[[分業]]から生じると論じた。『第二の性』の冒頭に掲げられた「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という言葉は、こうした歴史的・社会的・文化的構築物としての「女」を表わす。本書は[[1950年代]]から60年代にかけて、主に[[中産階級]]の若い女性に強い影響を与え、自立を促すことになった。とりわけ米国では、『第二の性』に影響を受けた[[ケイト・ミレット]]やベティ・フリーダンらの活動から、[[第二波フェミニズム]]が生まれることになった。 |
|||
アメリカでは、奴隷制廃止運動に従事していた[[ルクレシア・モット]]、[[エリザベス・キャディ・スタントン]]、[[スーザン・B・アンソニー]]らが女性参政権を推進した。その背景には、男女が神の前で平等であるとする[[クエーカー]]の教えの影響があった<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Ruether|first=Rosemary Radford|title=Women and Redemption: A Theological History|publisher=Fortress Press|location=Minneapolis|isbn=978-0-8006-9816-4|pages=112–118, 136–39|edition=2nd|year=2012}}</ref>。アメリカにおける第一波フェミニズムは、1919年の[[アメリカ合衆国憲法修正第19条]]によって女性の全国的な選挙権の承認がなされたことで終結したとされ、「第一波」という語は第二波フェミニズムという言葉が使われ始めた後に遡って名付けられたものである{{Sfn|Freedman|2003|p=464}}<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Flexner |first=Eleanor |title=Century of Struggle: The Woman's Rights Movement in the United States |publisher=The Belknap Press |year=1996 |isbn=978-0-674-10653-6 |pages=[https://archive.org/details/century_fle_1996_00_7206/page/ xxviii–xxx] |url=https://archive.org/details/century_fle_1996_00_7206/page/ }}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last=Wheeler |first=Marjorie W. |title=One Woman, One Vote: Rediscovering the Woman Suffrage Movement |year=1995 |publisher=NewSage Press |location=Troutdale, OR |isbn=978-0-939165-26-1 |page=[https://archive.org/details/onewomanonevoter00spru/page/127 127] |url=https://archive.org/details/onewomanonevoter00spru/page/127 }}</ref>。 |
|||
1960年代後半から1970年代前半にかけて女性解放運動(米国の[[ウーマン・リブ|ウーマン・リブ運動]]、フランスの[[女性解放運動 (フランス)|女性解放運動]] (MLF) など)が世界中に広まり、ニューヨーク、パリなど各地で数十万規模の[[デモ活動|デモ]]が発生した。この運動により後に多くの国で女性の労働の自由が認められるようになった<ref name="Esther"/>。これを境にフェミニズムはほとんどの国で政治、文化、宗教、医療といったあらゆる分野で取り入れられるようになる。 |
|||
ドイツでは、[[クララ・ツェトキン]]といったフェミニストが、社会主義を通して機会均等や女性参政権を実現するために活動した。彼女は1891年から1917年まで[[ドイツ社会民主党]]の女性新聞の編集を務め、1907年には新設された女性局のリーダーとなり、ドイツにおける社会主義フェミニズムの発展に寄与した。「国際女性デー」の提唱をしたことでも知られる<ref>{{Cite journal2 |df=ja |jstor = 3180144|title = On the Socialist Origins of International Women's Day|last1 = Kaplan|first1 = Temma|journal = Feminist Studies|year = 1985|volume = 11|issue = 1|pages = 163–171|doi = 10.2307/3180144}}</ref><ref>{{cite web |title=History of International Women's Day |url= https://www.un.org/womenwatch/feature/iwd/history.html |publisher= United Nations |access-date=2012-05-26}}</ref> 。 |
|||
女性解放運動は女性を拘束しているとする[[家族]]や男女の[[性別役割分業|性別役割分担]]、つくられた「女らしさ」、更にはこの上に位置する政治・経済・社会・文化の総体を批判の対象にしていた。日本でも1970年代に各地でウーマン・リブの集会が開かれ運動の拠点も作られた。またこの頃、[[経口避妊薬|ピル]]解禁を要求する、榎美沙子が代表の「[[中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合|中ピ連]]」が結成された。 |
|||
{{main|中国におけるフェミニズム|中国の女性史}} |
|||
ウーマン・リブ運動の高揚を受けた[[国際連合]]は、1972年の第27回[[国際連合総会|国連総会]]で1975年を[[国際婦人年]]と決議し、メキシコで[[世界女性会議]](1975年)を開催して「[[世界行動計画]]」を発表した。続いてコペンハーゲン会議(1980年)、ナイロビ会議(1985年)、北京会議(1995年)などが開催された。 |
|||
中国では、[[新文化運動]]の時期に、伝統的な[[儒教]]規範を改変し、一夫一婦の小家族制の中で女性は伝統的抑圧から解放されると主張されたが、実際には女性は「新良妻賢母」の家庭内役割を求められた{{Sfn|江上|2023a|pp=158-59}}。これに対して、[[良妻賢母]]主義への反発、恋愛と結婚の分離、婚姻制度の撤廃などを唱えるアナキストも現れた{{Sfn|江上|2023a|pp=158-59}}。その一人である[[何殷震]]は、ジェンダーの区別が文化的・経済的生活を通して身体・労働・権力から結び付けられて生まれると指摘した{{Sfn|デラップ|2023|p=96}}。1930年代、[[中国共産党]]の勢力下では、女性選挙権の導入・女性大学の開設などがなされたが、[[毛沢東]]の[[整風運動]]によって否定され、[[丁玲]]などはこうした旧来的なジェンダー観を批判した{{Sfn|江上|2023b|pp=180-181}}。中華人民共和国成立後は、階級解放されたことによって女性解放もなされたという主張がなされることが多かったが、女性の賃金は低く、家庭内での負担も女性が負うという状況は変わらなかった{{Sfn|江上|2023b|pp=180-181}}。 |
|||
{{see also|イスラームと女性|イランにおける女性の人権}} |
|||
一方、理論面においても、以下のように、その思想的立場から様々な潮流を生み、人種、階級、年齢、国籍、宗教、性的指向などの異なる文化的・社会的立場から次々と批判的な読み解きが行われている。 |
|||
アラブ地域では、エジプトやアラブの「フェミニズムの父」とされる{{仮リンク|カーシム・アミーン|en|Qasim Amin}}が1899年に『女性の解放』を著し、男女の間の本質的な平等を求め、そのための社会改革を主張した{{Sfn|後藤|2024|pp=285-291}}。アミーンは、西洋の思想を受けながら、男性と同じ地位を得ることは女性の権利であると述べ、これをイスラームの解釈や実践を通じて提案した{{Sfn|後藤|2024|pp=292-293}}。エジプトで初めて「フェミニスト」という言葉が公に使われたのは、1923年、{{仮リンク|フーダ・シャーラーウィー|en|Hoda Shaarawi}}が{{仮リンク|エジプト人フェミニスト団体連盟|en|Egyptian Feminist Union}}を設立した時であるとされ、この組織はエジプトの女性が男性と同等の政治的・社会的権利を得ることを目標に据えた{{Sfn|後藤|2024|pp=286-287}}。また、イランでは、1905年の[[イラン立憲革命]]がイランのフェミニズム運動のきっかけとなり、教育・結婚・キャリア・法的権利の平等を目指した<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Ettehadieh |first=Mansoureh |year=2004 |chapter=The Origins and Development of the Women's Movement in Iran, 1906–41 |chapter-url=https://books.google.com/books?id=tLRgXf_e_CEC&pg=PA85 |pages=85–106 |title=Women in Iran from 1800 to the Islamic Republic |editor1-first=Lois |editor1-last=Beck |editor2-first=Guity |editor2-last=Nashat |publisher=University of Illinois Press |isbn=978-0-252-07189-8}}</ref>。 |
|||
この時期に女性参政権が実現した背景には、第一次世界大戦が[[国家総力戦]]であり、それまで私的領域にとどめ置かれていた女性の労働力が必要になったという背景がある{{Sfn|江原|2022|pp=30-31}}。多くの指導者が、女性を工場労働や公共交通の運転員などに駆り出すため、女性動員と引き換えに女性参政権の実現を約束した{{Sfn|江原|2022|pp=30-31}}。戦時中の女性の職業参加の増大や、戦後の女性参政権の実現は、実質的な男女平等をもたらすと期待されていたが、実際にはそうはならず、むしろ家庭性が強化されて戦前に得たものすら失ったという見方もある{{Sfn|江原|2022|pp=31-32}}。 |
|||
==== 1970年代以降 ==== |
|||
{{未検証|section=1|date=2008年2月}} |
|||
当初は主に欧米で運動が進められ、男女の法的権利の同等(女性が男性と同様に参政権を持つことなど)を求めていたが、それが実現された後、20世紀後半の運動において、文化における[[性差別]]の克服が取り込まれ、[[伝統]]的な女性概念による束縛からの「女性による人間解放主義」と定義された。70年代のイギリスでは、左派系の女性たちがLWLW(ロンドン・ウィメンズ・リベレーション・ワークショップ)を結成した<ref>Setch, Eve (2002). "The Face of Metropolitan Feminism: The London Women's Liberation Workshop, 1969-79". Twentieth Century British History. 13 (2): 171-190. {{doi|10.1093/tcbh/13.2.171}}.</ref>。 |
|||
<gallery widths="180px" heights="180px"> |
|||
1970年代以降の第二波フェミニズムでは、同性愛者であった[[ミシェル・フーコー]]らによる、男性[[同性愛]]者や[[性的指向]]についての研究の成果を取り込み、[[ジェンダー]]への関心や、LGBTなど[[セクシュアル・マイノリティ]]の扱いにまで視点を広げた。一方でフェミニストとセクシュアル・マイノリティにはそれぞれに立場に違いがあるため、例えば[[トランス排除的ラディカルフェミニスト]]と[[トランス女性]]の間で対立や論争も発生した。 |
|||
Zetkin luxemburg1910.jpg|[[クララ・ツェトキン]](左)と[[ローザ・ルクセンブルク]](右)。1910年1月。ツェトキンは[[国際女性デー]]の発起人の一人。 |
|||
Feminist Suffrage Parade in New York City, 1912.jpeg|フェミニストによる参政権パレード。1912年。ニューヨーク。 |
|||
Articles by and photo of Charlotte Perkins Gilman in 1916.jpg|[[シャーロット・パーキンス・ギルマン]]がアトランタ・コンスティチューション誌にてフェミニズムについて執筆。1916年12月10日。 |
|||
Emmeline Pankhurst addresses crowd.jpg|[[エメリン・パンクハースト]]がイギリスとアメリカで講演を行う。1913年。ニューヨーク。 |
|||
Wilhelmina Drucker IMG0020.tif|オランダの{{仮リンク|ウィルヘルミナ・ドルッカー|en|Wilhelmina Drucker}}(1847–1925)は、女性参政権と平等な権利を求め、成功を収めた。 |
|||
Louise Weiss.jpg|[[ルイーズ・ワイス]]と他のパリの[[サフラジェット]]。1935年。新聞の見出しには「フランス女性は投票しなければならない」と書かれている。 |
|||
File:Photograph of American Women Replacing Men Fighting in Europe - NARA - 535769.tif|ヨーロッパで男性の代わりに闘うアメリカ人女性。1945年。 |
|||
</gallery> |
|||
=== 20世紀中頃 === |
|||
フェミニズムは過去、現在の社会関係においての社会理論と政治的慣習の組み合わせであり、主に女性の被抑圧的な体験によって動機付けされた束縛からの解放を目指すものである。一般的には、フェミニズムは性別的不平等論を含み、より具体的には、女性権利の新たな獲得と利益の向上を含む。 |
|||
夫が妻を支配する形式の家族法の改革も、フェミニスト運動の焦点の一つであった。20世紀にはイギリス・アメリカで妻は夫の庇護下とする法律は廃止されていたが、多くのヨーロッパの国々では、結婚した女性の権利は依然として非常に限られていた。たとえばフランスでは、1965年まで、既婚女性が夫の許可なく働く権利を持っていなかった<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Guillaumin|first=Colette|year=1994 |title=Racism, Sexism, Power, And Ideology |pages=193–95}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last=Meltzer |first=Françoise |year=1995 |title=Hot Property: The Stakes and Claims of Literary Originality |page=88}}</ref>。また、フェミニストは、夫が妻にレイプする場合を例外扱いする強姦法を廃止することにも取り組んだ<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Allison |first=Julie A. |year=1995 |title=Rape: The Misunderstood Crime |page=89}}</ref>。 |
|||
1960年代後半から1970年代前半にかけて、女性解放運動(米国の[[ウーマン・リブ|ウーマン・リブ運動]]、[[女性解放運動 (フランス)|フランスの女性解放運動]] (MLF) など)が世界中に広まり、ニューヨーク、パリなど各地で数十万規模の[[デモ活動|デモ]]が発生した。この運動により、後に多くの国で女性の労働の自由が徐々に認められるようになった{{Sfn|フリードマン|2005}}。1970年代には、レイプ、[[セクシュアル・ハラスメント]]、[[ドメスティック・バイオレンス]]{{Efn|ドメスティック・バイオレンスという言葉は、暴力が妻だけではなく、恋人・子供やその他の親族にも及ぶことを示すために新しく作られた言葉である{{Sfn|デラップ|2023|pp=154-155}}。}}などから女性の安全を確保する[[シェルター]]や避難所も作られるようになった{{Sfn|デラップ|2023|pp=154-155}}。 |
|||
フェミニストが論じるのは、[[ジェンダー]]、そして[[性別|性]]でさえもが、社会的、政治的、経済的な理由によって[[不平等]]に構築されているのではないか、という問題である。 政治的に活動するフェミニストが主張するのは、[[女性参政権]]、賃金格差の是正、選択的[[夫婦別姓|婚姻男女別姓]]、出産の[[自己決定権]]などの問題である。 |
|||
{{main|日本のフェミニズム|日本の女性解放運動}} |
|||
多くのフェミニストは、女性に関する様々な社会問題が、男性優位の社会構造から生じ、または[[家父長制]]が[[無意識]]に前提視されていることから生じていると主張している。また、女性間の差異を考慮に入れれば、たとえば「[[黒人]]」「女性」というように、二重、三重に抑圧されていると捉えることができるため、フェミニズムを複合的な抑圧の集成理論として、また相互に影響する多くの解放運動の流れの一つとして捉えることもできる、と主張している。 |
|||
日本では、戦前から選挙権獲得運動を推進していた[[市川房枝]]などの女性運動家によって{{Efn|日本では、1878年の上町町議会の区会議員選挙で、[[楠瀬喜多]]が、[[戸主]]として納税しているのに女性という理由でだから選挙権がないことに対して抗議した。これにより、1880年、日本で初めて、上町町議会で戸主に限定した女性参政権が認められた。しかし4年後、日本政府は区町村会法を改訂し、区町村会は規則制定権を持たなくなり、再び選挙から女性は排除された<ref>入江春行『与謝野晶子とその時代 女性解放と歌人の人生』、新日本出版社、2003年</ref>。}}、終戦直後に「戦後対策婦人委員会」が組織され、日本政府と[[連合国軍最高司令官総司令部|GHQ]]に対して婦人参政権と政治的権利を要求した。その後も「[[主婦連合会]](主婦連)」など、女性が担い手となった政治結社がいくつも作られたが、この時期の組織は食糧獲得や物価高騰への抵抗など、生活を再建させる上での[[主婦]]や[[母]]という性別役割を完全に果たすたことが動機である「婦人」の組織が主であった{{sfn|天野|2006|pp=303-312}}。 |
|||
エジプトでは、1952年革命で[[ガマール・アブドゥル=ナーセル]]が政権を握ると、女性参政権の付与などを行ったが、典型的な{{仮リンク|国家フェミニズム|en|State feminism}}であり、リベラル・フェミニズムの掲げた女性運動は抑圧した{{Sfn|長沢|2023|pp=200-201}}。アラブを代表するフェミニスト作家の[[ナワル・エル・サーダウィ]]は、ナセールの改革によって女性の高等教育の道が開かれたことは評価しながらも、アラブ社会における家父長制の残存に対して厳しく批判している{{Sfn|長沢|2023|pp=200-201}}。一部の活動家は、[[イスラム教]]の枠組みの中から女性の平等を求める新しいフェミニズム運動「{{仮リンク|イスラム教フェミニズム|en|Islamic feminism}}」を提唱した<ref>{{cite web|title=Islamic Feminism Means Justice to Women|url=http://www.milligazette.com/Archives/2004/16-31Jan04-Print-Edition/1631200425.htm|url-status=live|archive-url=https://web.archive.org/web/20130821055118/https://www.milligazette.com/Archives/2004/16-31Jan04-Print-Edition/1631200425.htm|archive-date=21 August 2013|access-date=2013-08-31|website=The Mili Gazette}}</ref>。 |
|||
フェミニズムの議論は[[妊娠中絶]]、[[避妊]]、出産前のケア、[[育児休暇]]、[[セクハラ]]、[[ドメスティックバイオレンス]]、[[強姦]]、[[近親相姦]]、[[女性器切除|女子割礼]]問題なども対象とする。 |
|||
ラテンアメリカでは、ニカラグアなどの国々で、革命によって女性の地位に変化がもたらされた。サンディニスタ革命の際にフェミニズムの思想が女性の生活水準の向上に貢献したが、社会的・思想的な変革には至らなかった<ref>{{Cite book2 |df=ja |last1=Parpart |first1=Jane L. |last2=Connelly |first2=M. Patricia |last3=Connelly |first3=Patricia |last4=Barriteau |first4=V. Eudine |last5=Barriteau |first5=Eudine |title=Theoretical Perspectives on Gender and Development |location=Ottawa, Canada |publisher=International Development Research Centre |year=2000 |isbn=978-0-88936-910-8 |page=215}}</ref>。 |
|||
==== リベラル・フェミニズム ==== |
|||
{{Main|リベラル・フェミニズム}} |
|||
一般に[[個人主義]]的でリベラル・左派的な傾向を持つ。男女平等は法的手段を通して実現可能で、集団としての男性と闘う必要はないと主張する。[[ジェンダー・ステレオタイプ]]、女性蔑視のほか、女性の仕事に対する低賃金、妊娠中絶に関する制限などを男女不平等の原因と考える。ナオミ・ウルフらが代表格である。 |
|||
==== 第二派フェミニズム ==== |
|||
*1791年、『女性および女性市民の権利宣言』(オランプ・ド・グージュ) |
|||
[[第二波フェミニズム]]では、女性の文化的な不平等と政治的な不平等を密接に関連付いたものとみなし、女性個人の生活は深く政治化されたものであると理解するように女性に促した。第二波の象徴となったスローガン「[[個人的なことは政治的なこと]]」は、フェミニスト活動家で作家の{{仮リンク|キャロル・ハニッシュ|en|Carol Hanisch}}によって広められた{{Sfn|Echols|1989}}<ref>{{cite web |url=http://scholar.alexanderstreet.com/pages/viewpage.action?pageId=2259 |title=Hanisch, New Intro to 'The Personal Is Political' – Second Wave and Beyond |access-date=2008-06-08 |last=Hanisch |first=Carol |date=1 January 2006 |website=The Personal Is Political |archive-url=https://web.archive.org/web/20080515014413/http://scholar.alexanderstreet.com/pages/viewpage.action?pageId=2259 |archive-date=2008-05-15}}</ref>。第二派の主な主張は二つあり、一つ目は実質的平等の確立と、その実現のための固定的性別役割の廃止である{{Sfn|江原|2022|pp=30-31}}。その背景には、第一波で法的平等がある程度達成されたものの、結局女性は家事・育児負担を求められ、社会的活動や職業参加ができないという問題があった{{Sfn|江原|2022|pp=30-31}}。二つ目は[[リプロダクティブ・ヘルス・ライツ]]の確立であり、その背景には女性が[[性暴力]]に苦しんでいたことがあった{{Sfn|江原|2022|pp=30-31}}。第二波は1960年代初頭から始まって現在に至るまで続いており、第三波フェミニズムと共存している{{Sfn|Freedman|2003|p=464}}。 |
|||
*1792年、『女性の権利の擁護』(メアリ・ウルストンクラフト) |
|||
*1869年、『女性の隷従』([[ジョン・スチュアート・ミル]]) |
|||
*2007年、『ポルノグラフィ防衛論』([[ナディーン・ストロッセン]]) |
|||
アメリカにおける第二波フェミニズムの始まりのきっかけと広く認識されるのが、1963年、[[ベティ・フリーダン]]の『新しい女性の創造』であり、本書はアメリカの中産階級女性の不満を代弁したものである<ref>{{Cite news2 |df=ja |last=Fox |first=Margalit |date=5 February 2006|title=Betty Friedan, Who Ignited Cause in 'Feminine Mystique,' Dies at 85|newspaper=The New York Times|url=https://www.nytimes.com/2006/02/05/us/betty-friedan-who-ignited-cause-in-feminine-mystique-dies-at-85.html|url-status=live|access-date=2017-02-19|archive-url=https://web.archive.org/web/20211124045206/https://www.nytimes.com/2006/02/05/us/betty-friedan-who-ignited-cause-in-feminine-mystique-dies-at-85.html|archive-date=2021-11-24}}</ref>。フリーダンは以下のように述べている。 |
|||
==== マルクス主義フェミニズム ==== |
|||
{{Main|マルクス主義フェミニズム}} |
|||
マルクス主義フェミニズム<ref>{{Cite web|和書|url=http://dicc.kais.kyoto-u.ac.jp/KGRAP/archive/rutsubo/Rutsubo1/R1matsuda.html|title=フェミニズムと環境問題について|accessdate=2016-08-21|author=松田史生|date=1996-06|work=興味のるつぼ第1号|publisher=京大農薬ゼミ|archiveurl=https://web.archive.org/web/20150509235421/http://dicc.kais.kyoto-u.ac.jp/KGRAP/archive/rutsubo/Rutsubo1/R1matsuda.html|archivedate=2015-05-09}}</ref>は、[[資本主義]]が女性を抑圧する原因だと考える。資本制的生産様式では男女不平等は決定しているとみなし、女性を解放する方法として資本主義の解体に焦点を合わせる。 |
|||
{{quotation|郊外住宅の主婦、これは若いアメリカの女性が夢に見る姿であり、また、世界中の女性がうらやんでいる姿だといわれている。 しかし、郊外住宅の主婦たちは、密かに悩みと戦っていた。ベッドを片付け、買い物に出かけ、子供の世話をして、 1日が終わって夫の傍らに身を横たえたとき、『これだけの生活?』と自分に問うのを怖がっていた<ref>{{Cite book ja |title=新しい女性の創造|date=|year=2004|publisher=[[大和書房]]|author=ベティ・フリーダン|translator=[[三浦富美子]]}}</ref>。}} |
|||
*1972年、『家事労働に賃金を』([[マリアローザ・ダラ・コスタ]]) |
|||
*1978年、『沈黙』([[ティリー・オルセン]]) |
|||
*1984年、『家事労働と資本主義』({{仮リンク|クラウディア・フォン・ヴェールホーフ|de|Claudia von Werlhof}}) |
|||
*1984年、『なにが女性の主要な敵なのか ― ラディカル・唯物論的分析』([[クリスティーヌ・デルフィ]]) |
|||
また、1970年、オーストラリアの作家[[ジャーメイン・グリア]]は『[[去勢された女]]』を出版し、世界的なベストセラーとなり、離婚率の上昇を引き起こしたと報じられた。グリアは、女性は男性による女性嫌悪を知らないままに、自分自身に憎しみを向けており、また女性が主婦・母親という役割の中で活力を失い抑圧されていると主張した<ref>{{cite web|url=https://www.theguardian.com/books/2014/jan/26/germaine-greer-female-eunuch-feminists-influence|title=What Germaine Greer and The Female Eunuch Mean to Me|work=The Guardian|date=January 26, 2014|accessdate=2023-01-16}}</ref><ref>{{cite web|url=https://theconversation.com/friday-essay-the-female-eunuch-at-50-germaine-greers-fearless-feminist-masterpiece-147437|title=Friday Essay: The Female Eunuch at 50, Germaine Greer's Fearless, Feminist Masterpiece|work=The Conversation|date=October 9, 2020|accessdate=2023-01-16}}</ref>。 |
|||
==== セックス・ポジティブ・フェミニズム ==== |
|||
{{Main|セックス・ポジティブ・フェミニズム}} |
|||
1960年代後半から1970年代にかけてのウーマンリブの運動の中では、当時のフェミニズムが白人・中産階級・異性愛者のものになっており、[[同性愛嫌悪]]({{仮リンク|ラベンダー色の脅威|en|Lavender Menace}}{{Sfn|工藤|2022|p=41}})があることや、人種差別の問題を取り上げないことから批判されることもあった<ref>{{Cite book ja |chapter=ウーマンリブ|author=吉原令子|title=論点・ジェンダー史学|editor=山口みどり|publisher=ミネルヴァ書房|year=2023|ISBN=9784623093502|pages=218-219 }}</ref>。 |
|||
==== ラディカル・フェミニズム ==== |
|||
{{Main|ラディカル・フェミニズム}} |
|||
1970年代に米国で誕生。公的領域のみならず家庭や男女の関係までも含む私的領域まで急進的な姿勢で問い直すことを主とする。右派と左派が存在する。ラデイカルと呼ぶよりも、保守・右派的な傾向もあり、[[ポルノグラフィー]]に対する法的規制運動に熱心である。ポルノグラフィ撲滅運動は、純潔思想からポルノグラフィを糾弾している保守系議員やキリスト教原理主義団体といった反フェミニズム・アンチ[[ジェンダーフリー]]勢力と考え方が一致しており、批判の対象となっている。過激なポルノ規制派のアンドレア・ドウォーキンは、ポルノ弾圧の目的のため、保守派の男女や右派フェミニストとも交流し、リベラルのナオミ・ウルフから批判された<ref>http://arlindo-correia.com/a_dworkin.html</ref>。 |
|||
日本においては、第二波フェミニズム([[ウーマン・リブ|ウーマンリブ運動]])以降の女性運動家は、それ以前の性別役割に基づく婦人運動を「男に認められたい女」の組織として批判した{{sfn|天野|2006|pp=303-312}}。特に1960年代の[[安保闘争]]以降、女性が政治運動に参加する中で、主婦や母といった性別役割分業への疑問や葛藤が表面化し始めた{{sfn|天野|2006|pp=303-312}}。こうした問題は1970年代のリブ運動の到来とともに明らかとなり、特に[[1975年]]の国際婦人年は大きな契機となり、女性であるがゆえに免れない不利な状況を克服するための諸問題を打破するため、公的な場への女性の登用を目的として41の女性団体が共同行動を起こした<ref>{{Cite web|和書|author=よりみちこ|title=1位は7万6千円も違う!男女の賃金格差が激しい職業トップ10|work=仕事|publisher=Suzie|date=2015-04-09|url=http://suzie-news.jp/archives/6525|accessdate=2016-08-21|archivedate=2016-03-01|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160301232211/http://suzie-news.jp/archives/6525}}</ref><ref name="gakujutu2014">[https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t193-5.pdf 提言 男女共同参画社会の形成に向けた民法改正] [[日本学術会議]]</ref>。 |
|||
*1970年、『性の政治学』([[ケイト・ミレット]]) |
|||
*1970年、『性の弁証法』([[シュラミス・ファイアストーン]]) |
|||
*1970年、『シスターフッド(女性同士の連帯)は力強い』([[ロビン・モーガン]]編) |
|||
*1976年、『ポルノグラフィー ― 女を所有する男たち』([[アンドレア・ドウォーキン]]) |
|||
*1978年、『ガイン/エコロジー』([[メアリ・デイリー]]) |
|||
*1980年、「強制的異性愛とレズビアン存在」([[アドリエンヌ・リッチ]]) |
|||
*2003年、『ポルノグラフィと売買春』([[キャサリン・マッキノン]]) |
|||
第二派フェミニズムに対する批判として、[[ナンシー・フレイザー]]は、差異やアイデンティティを重視する第二派の動向が、[[新自由主義]]の宗教・生命観・性規範観を前面化する戦略にはまり、グローバリゼーションによる格差拡大と女性の貧困化を見過ごしたという{{Sfn|江原|2022|p=68}}。フレイザーによれば、フェミニズムは、ジェンダーの解放が参加型民主主義や社会的連帯と同時に実現する世界と、女性に男性同様の自立のための資源を増やすという能力主義的達成を可能にするという二つの方向性を持つものだが、第二派以後は後者に引き付けられていったと分析する{{Sfn|江原|2022|p=69}}。 |
|||
==== エコロジカル・フェミニズム ==== |
|||
{{Main|エコフェミニズム}} |
|||
[[エコフェミニズム]]とも。男性による自然支配と女性支配を同根と定め、自然保護の立場から戦争、女性への暴力、女性支配、先住民への差別、環境破壊に反対する。 |
|||
=== 20世紀後半から21世紀初頭 === |
|||
「エコフェミニズム」という言葉の生みの親とされる[[フランソワーズ・ドボンヌ]]は、1978年にエコロジー・フェミニズム協会を設立。この運動は、当時、フランスではほとんど反響を呼ばず、オーストラリアや米国において引き継がれ、大きな広がりを見せることになった<ref>{{Cite news|title=Françoise d'Eaubonne, une figure du féminisme français|date=2005-08-05|url=https://www.lemonde.fr/disparitions/article/2005/08/05/francoise-d-eaubonne-une-figure-du-feminisme-francais_677960_3382.html|accessdate=2019-01-11|language=fr|work=Le Monde.fr}}</ref>。<!--フェミニズムの影響はほとんど全ての分野に及び、[[自然保護]]・[[エコロジー]]の分野にも影響を与えた。--> |
|||
==== 第三波フェミニズム ==== |
|||
{{main|第三波フェミニズム}} |
|||
[[File:Lozu mont oct8 bellhooooooooks.png|thumb|right|upright=0.8|[[ベル・フックス]](1952–2021)]] |
|||
第三波フェミニズムは、1990年代初頭にワシントン州オリンピアで誕生した[[ライオット・ガール]]というフェミニストの[[パンク (サブカルチャー)|パンク・サブカルチャー]]の出現と<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Piepmeier|first=Alison|title=Girl Zines: Making Media, Doing Feminism|publisher=New York University Press|year=2009|isbn=9780814767733|location=New York|page=45}}</ref><ref>{{cite web|last1=Feliciano|first1=Steve|date=19 June 2013|title=The Riot Grrrl Movement|url=http://www.nypl.org/blog/2013/06/19/riot-grrrl-movement|url-status=live|archive-url=https://web.archive.org/web/20130918002826/https://www.nypl.org/blog/2013/06/19/riot-grrrl-movement|archive-date=2013-09-18|publisher=New York Public Library|accessdate=2024-10-16}}</ref>、1991年に[[アニタ・ヒル]]がアメリカ合衆国最高裁判所判事の[[クラレンス・トーマス]]にセクハラを受けたと証言した事件に触発されて生じた。「第三波」という言葉は、{{仮リンク|レベッカ・ウォーカー|en|Rebecca Walker}}がトーマスの事件に対する反応として「Becoming the Third Wave(第三波になる)」という記事を書いたことに由来する{{Sfn|Walker|1992}}<ref>{{cite book2 |df=ja |title=Manifesta: Young Women, Feminism, And the Future |last1=Baumgardner |first1=Jennifer |last2=Richards |first2=Amy |year=2000 |publisher=[[Farrar, Straus and Giroux]] |location=New York |isbn=978-0-374-52622-1 |page=[https://archive.org/details/manifestayoungwo00baum/page/77 77] |url=https://archive.org/details/manifestayoungwo00baum/page/77 }}</ref>。ウォーカーは次のように書いた。 |
|||
*1974年、『フェミニズムか、死か (''Le Féminisme ou la mort'')』(フランソワーズ・ドボンヌ)- 本書でエコフェミニズムを提唱。 |
|||
*1978年、『女性と自然』(スーザン・グリフィン) |
|||
*1980年、『自然の死』(キャロリン・マーチャント;団まりなほか訳 1985 工作舎 ISBN 4-87502-109-7) |
|||
*1994年、『フェミニズムと[[エコロジー]]』(青木やよひ) |
|||
{{blockquote|私はこの文章をすべての女性、特に私の世代の女性への訴えとして書く。トーマスを承認することは、私にとってそうであったように、闘いがまだ終わっていないことを思い出させるものである。こうして女性の経験を無視することが、あなたの怒りを呼び起こす。その怒りを政治的な力に変えてほしい。私たちのために働かない者には投票するな。私たちの自由を優先しない者とは性交渉をせず、食事を共にせず、養うな。私はポストフェミニズムのフェミニストではない。私は第三波だ{{Sfn|Walker|1992}}。}} |
|||
=== 第三波フェミニズム === |
|||
{{Main|[[第三波フェミニズム]]}} |
|||
また、第三波フェミニズムは、第二波が提唱する「女性らしさ」の本質主義的な定義に異議を唱えること(またはそれを避けること)を目指した。第三波のフェミニストは、第二波の「女性らしさ」の定義が、上流・中流階級の白人女性の経験に偏重していると主張する。第三波では、「ミクロ・ポリティクス」に焦点を当て、何が女性にとって良いことであるかを探る第二波の枠組みに挑戦し、ジェンダーとセクシュアリティについて[[ポスト構造主義]]的な解釈を採用する傾向があった{{Sfn|Freedman|2003|p=464}}{{Sfn|Gillis|2007|pp=xxviii, 275–76}}{{Sfn|Faludi|1992}}<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Henry |first=Astrid |url=https://archive.org/details/notmymotherssist0000henr/page/1/mode/2up |title=Not My Mother's Sister: Generational Conflict and Third-Wave Feminism |publisher=Indiana University Press |year=2004 |isbn=978-0-253-21713-4 |location=Bloomington |pages=1–288 |url-access=registration}}</ref>。第二波に根ざした多くの有色人種のフェミニスト(例:{{仮リンク|グロリア・アンサルドゥーア|en|Gloria Anzaldúa}}、[[ベル・フックス]]、{{仮リンク|チェラ・サンドバル|en|Chela Sandoval}}、{{仮リンク|チェリー・モラガ|en|Cherríe Moraga}}、[[オードリー・ロード]]、{{仮リンク|マキシーン・ホン・キングストン|en|Maxine Hong Kingston}})は、フェミニズム思想の中での人種に関する主体性を考慮することを問題提起した{{Sfn|Gillis|2007|pp=xxviii, 275–76}}{{Sfn|Walker|1983|p=397}}。 |
|||
==== ポスト・フェミニズム(バックラッシュ) ==== |
|||
ポスト・フェミニズムとは第三波のフェミニズムに対する批判として生まれた複数の見解を指す。明確には[[反フェミニズム|アンチ・フェミニズム]]ではないが一波と二波の確立した女性の権利を肯定するとともに三波の立場を総じて批判する集団で構成された。1980年に現れバックラッシュと表現された集団が使い出した言葉である。[[上野千鶴子]]の書籍を、図書館から排除させようとする動きなどが存在した。 |
|||
==== |
==== 第四波フェミニズム ==== |
||
{{main|第四波フェミニズム}} |
|||
{{節スタブ}} |
|||
[[File:Iruñeko bortxaketaren auzia 5.jpg|thumb|2018年、ラ・マナダ性的暴行事件に対する抗議。パンプローナ。]] |
|||
2000年代に入ってから、[[インターネット]]や[[ソーシャル・ネットワーキング・サービス|SNS]]上でのフェミニズム運動も普及し始めた<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/568/ |title=女性差別 わたしの視点① フェミニズムの立場から ~名古屋市立大学准教授・菊地夏野さんに聞く~ |date=2021-12-19 |publisher=NHK |accessdate=2022-05-10}}</ref>。第四波フェミニズムは、第三波フェミニズムから発展し、2012年頃からフェミニズムへの関心が再興したことと、ソーシャルメディアの利用が広がったことから出現した{{Sfn|Cochrane|2013}}<ref>{{Cite web|title=Feminism: A Fourth Wave? {{!}} The Political Studies Association (PSA)|url=https://www.psa.ac.uk/psa/news/feminism-fourth-wave|access-date=2021-11-29|website=Feminism: A fourth wave? {{!}} The Political Studies Association (PSA)}}</ref>。プルーデンス・チェンバレンによれば、第四波は、女性のための正義と、女性に対する性的嫌がらせや暴力への反対に焦点が当てられている{{sfn|Chamberlain|2017|p=115}}。キラ・コクランによると、第四波フェミニズムは「テクノロジーによって定義される」とされ、Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、Tumblr、Feministingなどを用いて、[[ミソジニー]]に挑み、ジェンダー平等を推進することが特徴である{{Sfn|Cochrane|2013}}<ref>{{Cite news2 |df=ja |last=Solomon|first=Deborah|date=13 November 2009|title=The Blogger and Author on the Life of Women Online|work=The New York Times Magazine|url=https://www.nytimes.com/2009/11/15/magazine/15fob-q4-t.html|url-status=live|access-date=2016-03-16|archive-url=https://web.archive.org/web/20180501082226/http://www.nytimes.com/2009/11/15/magazine/15fob-q4-t.html?_r=3|archive-date=2018-05-01}}</ref><ref>{{Cite web|last=Zerbisias|first=Antonia|date=16 September 2015|title=Feminism's Fourth Wave Is the Shitlist|url=https://nowtoronto.com/news/feminisms-fourth-wave-is-the-shitlist/|url-status=live|archive-url=https://web.archive.org/web/20200817170127/https://nowtoronto.com/feminisms-fourth-wave-is-the-shitlist|archive-date=2020-08-17|access-date=2016-04-21|website=NOW Toronto}}</ref>。 |
|||
=== 第四波フェミニズム === |
|||
{{Main|{{ill|第四波フェミニズム|en|fourth-wave feminism|preserve=1}}}} |
|||
[[File:Women's March on Washington (32593123745).jpg|thumb|left|ウィメンズ・マーチ。ワシントンD.C.]] |
|||
==== ツイッター・フェミニズム ==== |
|||
{{main|ツイフェミ}} |
|||
<!--(=== その他のフェミニズムの潮流 === |
|||
*精神分析派フェミニズム |
|||
*[[レズビアン・フェミニズム]] |
|||
*[[アナキスト・フェミニズム]] (アナルカ・フェミニズム [[:en:Anarcha-feminism|Anarcha-feminism (英語版)]]) |
|||
*[[ラディカル・フェミニズム]]:右派と左派が存在 |
|||
*[[ポストモダン・フェミニズム]] |
|||
*[[ブラック・フェミニズム]] |
|||
*[[社会主義フェミニズム]] |
|||
*[[カルチュラル・フェミニズム]] |
|||
*現象学的フェミニズム |
|||
*[[ポストコロニアル・フェミニズム]] |
|||
*ダーウィニアン・フェミニズム |
|||
--> |
|||
第四波フェミニストが注目する問題には、路上や職場でのハラスメント、キャンパス内の性的暴行、レイプカルチャーが含まれる。運動のきっかけとなった事件としては、2012年の[[ジミー・サヴィル]]の性加害告発、[[2012年インド集団強姦事件]]、2014年の[[ビル・コスビー]]の性加害告発、[[2014年アイラビスタ銃乱射事件]]、2016年の{{仮リンク|ジャン・ゴメシ|en|Bill Cosby}}の裁判、2017年の[[ハーヴェイ・ワインスタイン]]に対する告発とそれに続く「[[ワインスタイン効果]]」がある{{Sfn|Chamberlain|2017|pp=114–115}}<ref>{{Cite news2 |df=ja |url=http://www.huffingtonpost.ca/kelsey-matheson/you-said-metoo-now-what-are-we-going-to-do-about-it_a_23246129/ |title=You Said #MeToo. Now What Are We Going To Do About It? |last= Matheson |first=Kelsey |date=17 October 2017 |publisher=The Huffington Post |accessdate=2024-10-14}}</ref>。第四波の運動には、「{{仮リンク|エブリデイ・セクシズム・プロジェクト|en|Everyday Sexism Project}}」、「{{仮リンク|ノー・モア・ページスリー|en|No More Page 3}}」、「{{仮リンク|ストップ・ビルド・セクシズム|en|Stop Bild Sexism}}」、{{仮リンク|マットレス・パフォーマンス|en|Mattress Performance (Carry That Weight)}}、[[フリー・ザ・ニップル]]、2017年・2018年の[[ウィメンズ・マーチ]]、[[#MeToo|#MeToo運動]]などがある<ref>{{Cite magazine2 |df=ja |last1=Zacharek |first1=Stephanie |last2=Dockterman |first2=Eliana |last3=Sweetland Edwards |first3=Haley |date=6 December 2017 |title=TIME Person of the Year 2017: The Silence Breakers |url=https://time.com/time-person-of-the-year-2017-silence-breakers/ |access-date=2024-09-26 |magazine=Time |language=en-us}}</ref>。一方、#MeToo運動が、国家の強制力に信を置く傾向があり、監獄主義的な方向性を持っていることを指摘するフェミニストもいる{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=238―239}}。 |
|||
=== 日本 === |
|||
{{See also|日本のフェミニズム}} |
|||
==== 明治維新からの女性解放政策 ==== |
|||
[[明治維新]]からは女性解放政策が打ち出されたが、反発も起こり十年ほどで急速にしぼんでしまう。 |
|||
[[File:8M Paraná 2019 13.jpg|thumb|right|国際女性デーのストライキ、アルゼンチン・パラナ、2019年]] |
|||
==== 推進政策 ==== |
|||
==== ポストフェミニズム ==== |
|||
* [[1869年]]、[[関所]]を女性が自由に通行できるようになる。また、津田真一郎([[津田真道]])という刑法官が女子売買の禁止の建白書を政府に提出。 |
|||
「{{仮リンク|ポストフェミニズム|en|Postfeminism}}」という用語は、1980年代以降のフェミニズムに対するさまざまな見解を表すために使われている。ポストフェミニズムは「反フェミニズム」ではないが、第二波の目標は達成されたと考える一方で、第三波・第四波の目標には批判的である。ポストフェミニズムという言葉は、当初は第二波フェミニズムへの反発を示すために使われたが、現在では、第二波に批判的アプローチを取るさまざまな理論を指す{{Sfn|Wright|2000}}。一部のポストフェミニストは、フェミニズムは現代社会においてもはや必要ないと考える<ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Abbott |first1=Pamela |last2=Tyler |first2=Melissa |last3=Wallace |first3=Claire |title=An Introduction to Sociology: Feminist Perspectives |date=2005 |publisher=Routledge |isbn=978-1-134-38245-3 |page=[https://books.google.com/books?id=PPp7dfrNTroC&q=no+longer+relevant xi] |edition=3rd}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Mateo–Gomez |first1=Tatiana |editor1-last=Richter |editor1-first=William L. |title=Approaches to Political Thought |date=2009 |publisher=Rowman & Littlefield |isbn=978-1-4616-3656-4 |page=[https://books.google.com/books?id=mQn-AAAAQBAJ&q=feminism+no+longer+relevant 279] |chapter=Feminist Criticism}}</ref>。{{仮リンク|アメリア・ジョーンズ|en|Amelia Jones}}は、1980年代から1990年代に現れたポストフェミニストのテキストは、第二波フェミニズムを単一的に描いていると批判する<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Jones |first=Amelia |chapter=Postfeminism, Feminist Pleasures, and Embodied Theories of Art |title=New Feminist Criticism: Art, Identity, Action |editor1-first=Joana |editor1-last=Frueh |editor2-first=Cassandra L. |editor2-last=Langer |editor3-first=Arlene |editor3-last=Raven |location=New York |publisher=HarperCollins |year=1994 |pages=16–41, 20}}</ref>。ドロシー・チュンは、ポストフェミニズムの名のもとに、フェミニストは「ジェンダー平等がすでに達成された」にもかかわらず依然として男女平等の要求を続ける存在として揶揄されていると述べる。チュンによれば、「多くのフェミニストは、権利と平等の議論が今や自分に対して使われていることに不安を表明している」という<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Chunn|first=Dorothy E.|chapter-url=https://books.google.com/books?id=ASc568aunFoC&q=Take+It+Easy+Girls%22:+Feminism,+Equality,+and+Social+Change+in+the+Media&pg=PA31|title=Reaction and Resistance: Feminism, Law, And Social Change|date=1 November 2011|publisher=UBC Press|isbn=978-0-7748-4036-1|editor-last=Chunn|editor-first=Dorothy E.|location=|pages=31|chapter="Take It Easy Girls": Feminism, Equality, and Social Change in the Media (2007)|editor-last2=Boyd|editor-first2=Susan|editor-last3=Lessard|editor-first3=Hester}}</ref>。 |
|||
* [[1871年]]、[[津田梅子]](当時、満六歳:最年少)ら、五人の少女が、[[岩倉使節団]]で、米国へ留学する。 |
|||
* [[1872年]]、[[芸妓]]と[[娼妓]]の無条件解放が布告される([[公娼制度]]は残された)。[[女学校]]が設立される。 |
|||
* [[1873年]]、妻からも[[離婚]]訴訟ができるようになる。女子伝習所(女子のための[[職業訓練所]])が開設される。 |
|||
* [[1874年]]、[[東京女子師範学校]]が設立される。 |
|||
== 運動とイデオロギー・立場 == |
|||
==== 反発政策 ==== |
|||
長年にわたって、多くの{{仮リンク|フェミニズム運動とイデオロギー|en|Feminist movements and ideologies}}が発展してきた。フェミニズム思想の流派は、リベラル・ラディカル・社会主義(マルクス主義)の三大潮流に分けられることが多い。そして20世紀後半以降には、新しい形態のフェミニズムも登場した{{Sfn|三成|2023}}。 |
|||
* 1874年以降{{仮リンク|スイスの女性参政権|de|Frauenstimmrecht_in_der_Schweiz|preserve=1|label=スイスで女性参政権の要求}}が高まりつつあったが、これを検討した1976年のスイスの法律書は、[[武者小路実世]]らにより[[武者小路実世#エピソード|女性参政権を否定する内容に誤訳]]され『国会議員選挙論』(1879年)として伝えられた{{efn|スイスでは1874年に女性運動が組織化されたが、1886年には女性の法学者エミリー・ケンピン=スピリが、まだ法曹団体への参加を認められなかった。}}。 |
|||
* [[1885年]]、第一次[[伊藤博文]]内閣の[[文部大臣]][[森有礼]]が「良妻賢母教育」こそ国是とすべきであると声明。翌年それに基づく「生徒教導方要項」を全国の女学校と高等女学校に配る。 |
|||
* [[大日本帝国憲法]]において[[女性参政権]]が成立しなかった。 |
|||
* [[1890年]]7月公布の「[[集会及政治結社法]]」にて女性の政治活動を禁止。女子は政談演説を聴きに行くことも禁じられ、戸外で三人以上集まる時は警察に届けなければならなくなった。 |
|||
=== リベラル・フェミニズム === |
|||
==== 日本初の女性参政権 ==== |
|||
[[File:Elizabeth Stanton.jpg|thumb|[[エリザベス・キャディ・スタントン]]。19世紀リベラル・フェミニズムの重要人物。]] |
|||
[[1878年]](明治11年)、区会議員選挙で[[楠瀬喜多]]という一人の婦人が、[[戸主]]として納税しているのに、女だから選挙権がないことに対し[[高知県]]に対して抗議した。しかし県には受け入れてもらえず、喜多は内務省に訴えた。そして[[1880年]](明治13年)9月20日、日本で初めて(戸主に限定されていたが)女性参政権が認められた。その後、隣の[[小高坂村]]でも同様の条項が実現した。 |
|||
[[リベラル・フェミニズム]]は、改革派・主流派、またブルジョワ・フェミニズム<ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Voet |first1=Rian |title=Feminism and Citizenship |date=1998 |publisher=SAGE |isbn=1-4462-2804-5 |page=25|chapter=Categorizations of feminism}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last=Lindsey |first=Linda L. |date=2015 |title=Gender Roles: A Sociological Perspective |publisher= Routledge |page=17 |isbn=978-1-317-34808-5}}</ref>などの名前でも知られており、19世紀の第一波フェミニズムから生じ、19世紀のリベラリズムや[[進歩主義]]と結びついている。リベラル・フェミニズムは、リベラル民主主義の枠組みの中で、社会構造を根本的に変えることではなく、政治的・法的な改革を通して男女平等を追求し、主流社会の構造に女性を統合することを目指した<ref>{{cite web |last1=West |first1=Rebecca |title=Kinds of Feminism |url=https://www.uah.edu/woolf/feminism_kinds.htm |publisher=University of Alabama in Huntsville|accessdate=2024-10-16}}</ref>。19世紀から20世紀初頭にかけて、リベラル・フェミニズムは特に女性の参政権と教育へのアクセスに焦点を当てていた<ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Marilley |first1=Suzanne M. |title=Woman Suffrage and the Origins of Liberal Feminism in the United States, 1820–1920 |date=1996 |publisher=Harvard University Press |isbn=0-674-95465-3}}{{page needed|date=2024-10-16}}</ref>。 |
|||
この当時、世界で女性参政権を認められていた地域は[[アメリカ合衆国]]の[[ワイオミング準州]]や英領サウスオーストラリアやピトケアン諸島といったごく一部であったので、この動きは女性参政権を実現したものとしては世界で数例目となった。しかし4年後の[[1884年]](明治14年)、日本政府は「[[区町村会法]]」を改訂し、規則制定権を区町村会から取り上げたため、町村会議員選挙から女性は排除された<ref>参考文献 2003年04 『与謝野晶子とその時代 女性解放と歌人の人生』入江春行著、新日本出版社 |
|||
より やや簡易化 また、[[女性参政権]]から一部転載</ref>。 |
|||
なお、リベラル・フェミニズムは非常に広範な用語で、多くの現代の分派や様々なフェミニズムを含み、歴史的にリベラルとされる分派には、{{仮リンク|平等派フェミニズム|en|equality feminism}}・[[差異派フェミニズム]]・[[エクイティ・フェミニズム]]・[[個人主義的フェミニズム]]・{{仮リンク|国家フェミニズム|en|state feminism}}などの形態がある<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last=Griffiths |first=Morwenna |date=April 1995 |title=Making a Difference: Feminism, Post-Modernism And the Methodology of Educational Research |url=http://doi.wiley.com/10.1080/0141192950210207 |journal=British Educational Research Journal |language=en |volume=21 |issue=2 |pages=219–235 |doi=10.1080/0141192950210207 |issn=0141-1926}}</ref>。 |
|||
==== 女性解放運動家の登場 ==== |
|||
政府の反発政策に対して[[平塚らいてう|平塚雷鳥]]ら[[女性解放運動]]家が誕生し、政治的要求を正面に掲げた最初の婦人団体である「[[新婦人協会]]」もできる。女性に不利な法律の削除運動、女性の参政権獲得運動などがさかんになる。完全な女性参政権の獲得という大目標の達成には至らなかったが、女性の[[集会の自由]]を阻んでいた[[新婦人協会#治安警察法第五条改正運動|治安警察法第5条2項の改正]](1922年・大正11)や、女性が[[弁護士]]になる事を可能とする、婦人弁護士制度制定(弁護士法改正、1933年・昭和8)等、女性の政治的・社会的権利獲得の面でいくつかの重要な成果をあげた。 |
|||
*『[[青鞜]]』運動 |
|||
*[[母性保護論争]]([[平塚らいてう|平塚雷鳥]]、[[与謝野晶子]]、[[山川菊栄]]) |
|||
古典的な意味での「リベラル・フェミニズム」が現れた理由としては、リベラルな民主主義が普遍的な平等を唱える中で、(特に法律や公的領域へのアクセスにおいて)ジェンダーによる排除があることを明らかにすることで、リベラリズムに対する内在的な批判を行うことにあったとされる。そしてこの古典的なリベラル・フェミニズムは、新自由主義の秩序と調和する現代の新自由主義フェミニズムとは別物として理解するべきという主張もある<ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi = 10.1080/09502386.2013.857361|title = The Rise of Neoliberal Feminism|journal = Cultural Studies|volume = 28|issue = 3|pages = 418–437|year = 2014|last1 = Rottenberg|first1 = Catherine|s2cid = 144882102|url = http://revistas.ucm.es/index.php/INFE/article/view/54954}}</ref>。 |
|||
==== 戦後の女性解放運動 ==== |
|||
戦前から選挙権獲得運動を推進していた市川房枝などの女性運動家によって、終戦から10日後の1945年8月25日に「戦後対策婦人委員会」が組織され、日本政府と[[連合国軍最高司令官総司令部|GHQ]]に対して婦人参政権と政治的権利を要求した。その後も「[[主婦連合会]](主婦連)」など、女性が担い手となった政治結社がいくつも作られたが、この時期の組織は食糧獲得や物価高騰への抵抗など、生活を再建させる上での[[主婦]]や[[母]]という性別役割を完全に果たすたことが動機である「婦人」たちの組織だった{{sfn|天野|2006|pp=303-312}}。 |
|||
ノルウェーの元最高裁判事で、ノルウェー女性権利協会の元会長の{{仮リンク|カリン・マリア・ブルゼリウス|en|Karin Maria Bruzelius}}は、リベラル・フェミニズムを「現実的で冷静、実践的なフェミニズム」と表現する<ref>{{cite web |title=Hvem Vi Er |url=http://kvinnesak.no/om/ |publisher=Norwegian Association for Women's Rights|access-date=2020-10-28}}</ref>。一方で、リベラル・フェミニズムは、現行の社会構造に異議を唱えない「主流」(すなわち中産階級)の女性によって採用されがちで、平等に焦点を当てたリベラル・フェミニズムが「デフォルト」の形態のフェミニズムであるとみなされる傾向にあると指摘されることもある<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Zhang |first1=Y. |last2=Rios |first2=K. |title=Understanding Perceptions of Radical and Liberal Feminists: The Nuanced Roles of Warmth and Competence |journal=Sex Roles|date=2021 |volume=86 |issue=3–4 |pages=143–158 |doi=10.1007/s11199-021-01257-y|s2cid=243479502 }}</ref>。リベラルから発展したフェミニズムの中には、相対的には保守的であると評されるものもある。特に[[個人主義的フェミニズム]]は、個人を自己の所有者とみなし、それゆえに強制的な干渉からの自由を享受する権利を有すると考える点で、この傾向が顕著である<ref>{{cite web|url=http://plato.stanford.edu/entries/feminism-liberal/#ClasCri |title=Liberal Feminism |website=Stanford Encyclopedia of Philosophy|publisher=Metaphysics Research Lab, Stanford University |date=2018 |accessdate=2024-10-16}}</ref>。 |
|||
こうした性別役割に基づく婦人運動は第二波フェミニズム([[ウーマン・リブ|ウーマンリブ運動]])以降の女性運動家からは、「男に認められたい女」の組織として全面否定された{{sfn|天野|2006|pp=303-312}}。しかし、「女・子ども」の言い分と切り捨てられる文化風土に対して、女性が自律的な活動をする上で「母」の観念は強力な[[エートス]]となりえた。 |
|||
=== ラディカル・フェミニズム === |
|||
1960年代の[[安保闘争]]以降、女性が政治運動に参加する中で、主婦や母といった性別役割分業への疑問や葛藤が表面化し始めた{{sfn|天野|2006|pp=303-312}}。それは1970年代のリブ運動の到来とともに一挙に明らかとなった。なかでも、[[1975年]]の国際婦人年は大きな契機となり、女性であるがゆえに免れない不利な状況を克服するための諸問題を打破するために、公的な場への女性の登用を目的として41の女性団体が共同行動を起こした<ref>{{Cite web|和書|author=よりみちこ|title=1位は7万6千円も違う!男女の賃金格差が激しい職業トップ10|work=仕事|publisher=Suzie|date=2015-04-09|url=http://suzie-news.jp/archives/6525|accessdate=2016-08-21|archivedate=2016-03-01|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160301232211/http://suzie-news.jp/archives/6525}}</ref><ref name="gakujutu2014">[https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t193-5.pdf 提言 男女共同参画社会の形成に向けた民法改正] [[日本学術会議]]</ref>。 |
|||
[[File:Feminism symbol.svg|upright|thumb|right|ラディカル・フェミニズムのシンボル。ヴィーナスと掲げた拳を合わせたもの。]] |
|||
[[ラディカル・フェミニズム]]は、第二波フェミニズムから生じた。ラディカル・フェミニズムは、あらゆる抑圧の根源に性抑圧があり、その抑圧者は男性で、男女の利害は敵対すると考えることが多い{{Sfn|三成|2023}}。また、女性抑圧の文化は世界中において程度の差こそあれ同じもので、女性であればその抑圧の経験から国を越えて理解し合えるとも主張される{{Sfn|デラップ|2023|p=106}}。そして男女の分離を唱え、「女性」という集団の独自の意義を強調しようとした{{Sfn|三成|2023}}。たとえば、1969年にニューヨークで結成された{{仮リンク|ザ・フェミニスツ|en|The Feminists}}では、{{仮リンク|分離主義フェミニズム|en|Separatist feminism|label=分離主義}}・禁欲主義が提唱され、男性支配を終わらせるために、女性は男性との性行為や結婚を拒むべきとされた{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=107-8}}。ここから、フェミニストは政治的にレズビアンを実践しなければならないという主張([[政治的レズビアン主義]])もなされるようになった{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=110-111}}。 |
|||
== フェミニズムの影響 == |
|||
[[File:National Women's Patry picketing the White House.jpg|thumb|right|250px|[[1917年]]、「[[大統領]]、私たち女性は[[自由]]を手に入れるためにいったいどれだけ待たなければいけないのか」と書かれたプラカードを持ちながら、全米女性党(NWP)の党員が[[ホワイトハウス]]にて抗議活動を実施した。]] |
|||
フェミニズム運動は、女性が家庭外で働くこと、そして女性が積極的に政治に参加する上で重要な役割を果たしている。また、職場やその他日常における性的[[嫌がらせ]]を問題化する、セクシャルハラスメントの概念(詳しくは[[セクシャルハラスメント]]の項を参照)の成立にも影響を及ぼした。フェミニズム運動によって社会状況に変化がもたらされたり、具体的な制度が成立した例としては、以下のようなものが挙げられる。 |
|||
{{seealso|ウィミンズ・ランド}} |
|||
=== 女性の政治参加 === |
|||
19世紀末期から[[女性参政権]]を求める運動が高まり、[[1893年]]の[[ニュージーランド]]<ref>「オセアニアを知る事典」平凡社 p206 1990年8月21日初版第1刷</ref>(被選挙権は1919年から)を皮切りに、世界各国で女性参政権が認められるようになった。日本では1925年に男性のみの普通選挙が実現しているが、これより以前から女性参政権を求める婦人運動も活発化していた。戦後、新選挙法が制定され、女性の参政権が認められている。 |
|||
この立場に対して、[[ベル・フックス]]は、性差別的な意識や行動を支えている集団には、男性だけではなく女性も含まれているのだから、「女性は多かれ少なかれ男性支配の犠牲者だから連帯できるはず」という考え方は砂上の楼閣であると述べる{{Sfn|フックス|2000|p=15-16}}。また、生物学的に女性で、性自認も女性だけがいる空間こそが危害や暴力と無縁で安全なスペースであると主張する分離主義{{Sfn|シュラー|2023|pp=276-277}}は、トランスジェンダー差別につながるとして他のフェミニストから批判されている{{Sfn|シュラー|2023|pp=300-302}}{{Sfn|工藤|2022|p=42}}。 |
|||
1970年代以降、フェミニズムによって女性議員の数は大幅に増加した。世界各国では女性議員は通常2割程度存在し、2000年から2005年度までの[[列国議会同盟|IPU]]の調査によれば、地域別でみると[[欧州連合|EU]]の31.0%がトップ、[[南北アメリカ]]18.4%、[[アジア]]15.5%、サハラ以南アフリカ14.9%、[[アラブ諸国]]6.0%となっている<ref>[https://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-03-05/06_01.html 日本共産党「女性国会議員―世界で15%超える」『しんぶん赤旗』2005年3月5日]</ref>。世界で最も女性議員の議会に占める割合が高い国家はアフリカの[[ルワンダ]]であり、[[2013年]]における女性議員の割合は56.3%と半数を超えている<ref>https://www.nikkei.com/article/DGXNASGU04003_Y3A500C1SHA000/ 「ルワンダの奇跡 崩れる慣習、可能性開く」(Wの未来 世界を動かす(4)) 日本経済新聞 2013年5月13日 2015年5月26日閲覧</ref>。なお、日本における[[2015年]]の[[衆議院]]の女性議員割合は9.5%であり、[[先進国]]中では最も低い水準となっている<ref>https://web.archive.org/web/20150526191738/http://www.sankei.com/world/news/150305/wor1503050043-n1.html 「女性議員比率 日本9・5%で113位 なお先進国で最低水準」 産経ニュース 2015年3月5日 2015年5月26日閲覧</ref>。 |
|||
また、女性の抑圧を家父長制によるものとして普遍化した結果、奴隷化・階級差別・人種差別などによって排除されている女性がフェミニズム運動から疎外されたとして批判されることもあった{{Sfn|デラップ|2023|p=106}}。{{仮リンク|アミア・スリニヴァサン|en|Amia Srinivasan}}は、フェミニズムが[[インターセクショナリティ]]に向かうにつれて、男性と性行為したり結婚しているからといって、その女性が家父長制を内面化しているとは限らないという考え方が広まったと述べる{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=114-115}}。 |
|||
[[ノルウェー]]、[[スウェーデン]]や[[ドイツ]]、[[イギリス]]の社会民主主義政党では1981年に[[クォータ制]]が導入され、政治家のほぼ半数が女性である。 |
|||
=== |
=== 社会主義フェミニズム === |
||
[[File:Emma Goldman seated.jpg|upright|thumb|[[エマ・ゴールドマン]]。労働運動家。アナーカ・フェミニスト。]] |
|||
日本では、[[1933年]]に弁護士の性別要件が削除されて女性の弁護士への道が開かれ、[[1940年]]には初の女性弁護士が誕生<ref>https://web.archive.org/web/20211119111948/http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/books/data/hakusyo_tokusyu2008_01.pdf 「男女共同参画と弁護士」日本弁護士連合会 2015年5月26日閲覧</ref>。女性の職業選択の面で重要な成果を挙げた。1972年には[[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|男女雇用機会均等法]]の前身である勤労婦人福祉法が成立した。同法は1986年に改名、1999年に大幅に改正され、雇用上の女性の権利、[[育児休業]]の権利、企業に対する[[セクシャルハラスメント]]防止配慮義務などが課せられた。 |
|||
唯物主義のフェミニズムは、西洋の[[マルクス主義]]思想から発展し、イデオロギーと女性との関係に焦点を当て、資本主義批判に関わる様々な運動に影響を与えてきた<ref>{{Cite book2 |df=ja |last1= Hennessy |first1= Rosemary |first2=Chrys |last2=Ingraham |title=Materialist Feminism: A Reader in Class, Difference, And Women's Lives |location= London |publisher=Routledge | pages=1–13 |isbn=978-0-415-91634-9 |year=1997}}</ref>。[[マルクス主義フェミニズム]]は、資本主義が女性の抑圧の根本的な要因で、家庭生活や雇用における女性差別は資本主義的なイデオロギーの影響であると主張する<ref>{{Cite book2 |df=ja |author=Bottomore, T.B. |title=A Dictionary of Marxist Thought |publisher=Wiley-Blackwell | page=215 |isbn=978-0-631-18082-1 |year=1991}}</ref>。[[社会主義婦人解放論|社会主義フェミニズム]]は、女性解放は経済的、また文化的な抑圧の両方を終わらせることによってのみ達成されると主張する点で、マルクス主義フェミニズムと区別される<ref>{{cite web |url=http://www.feministezine.com/feminist/modern/Socialist-Feminism.html |title=What Is Socialist Feminism? |author=Barbara Ehrenreich |publisher=feministezine.com |date=1976|access-date=2011-12-03}}</ref>。そして体制変革が平等達成のために必要であると考えられ、他の非抑圧集団と連帯することを重視する{{Sfn|三成|2023}}。1977年、ロンドンで開かれた全英女性解放運動会議で、ラディカル・フェミニストは、女性抑圧の基盤にあるのは資本主義ではなく男性による暴力であるとして社会主義フェミニズムを批判し、これ以後この対立は深まっていった{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=112-113}}。 |
|||
また、[[ポリティカル・コレクトネス]]の観点から、性別が特定されたイメージを持つ職業名を男女両者に使用できる語へと変える動きもある。例えば、「スチュワーデス」→「[[客室乗務員]]」、「看護婦・看護士」→「[[看護師]]」、英語圏では「{{lang|en|fireman}}」→「{{lang|en|fire fighter}}」、「{{lang|en|policeman}}」→「{{lang|en|police officer}}」、「{{lang|en|stewardess}}」→「{{lang|en|flight attendent}}」などの言い換えが行われている。この背景には、男女が同じ職業に就くようになってきたことと、男女を同じ呼称とすることで性別による賃金格差などの差別をなくそうという意図がある。 |
|||
また、{{仮リンク|アナーカ・フェミニズム|en|Anarcha-feminism}}は、国家に対する[[階級闘争]]と[[アナキズム]]こそが、無意識的な階層を生み出す家父長制と戦うために必要であると主張する<ref name="farrow">{{Cite book2 |df=ja |last=Dunbar-Ortiz |first=Roxanne |title=Quiet Rumours |publisher=AK Press |isbn=978-1-902593-40-1 |year=2002 |pages=11–13}}</ref>。 |
|||
賃金格差については、日本は先進国で最下位レベルであり、正社員であっても女性は男性の75%ほどの賃金となっている<ref>{{Cite web|和書|title=主要先進国で日本の「男女間賃金格差」は最下位!いまだに“女だから稼げない”っておかしくない?|url=https://woman-type.jp/wt/feature/15744|website=Woman type[ウーマンタイプ] |accessdate=2020-05-13}}</ref>。原因としては、女性の管理職の少なさや就職時の差別等もあげられる。例えば、2014年の新卒採用において、総合職で採用された学生のうち女子学生は20%であり、労働機会は平等とは言えない現状がある<ref>{{Cite web|和書|title=平成26年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況<速報版>を公表します |url=https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000089473.html |website=www.mhlw.go.jp |accessdate=2020-05-13}}</ref>。 |
|||
=== その他のフェミニズムと立場 === |
|||
[[ジェンダー・エンパワーメント指数]](GEM指数)によると、日本は他の先進諸国と比較して男女平等政策に遅れを取っている。一方で、GEM指数等の基準は一面的なものにすぎず、女性を一括りにしてその幸福感をはかる基準とするには不適切であると指摘されることがある。例えば、企業や団体の[[管理職]]に従事するよりも家庭で[[子育て]]に専念できるほうが幸福と考え、専業主婦となることを志向する女性が多ければ、GEM指数は低くなる。このため、女性の労働者化のみを基準に政策を進めることは、すべての女性(特に、家庭での育児を中心に考えている女性、激務を望まない女性など)の意見を反映していないという批判である。こうした批判に対する反論として、フェミニズムの目的は「女性」というだけで労働において差別や不利益を受けることをなくすことであって、専業主婦の女性を働かせようとしている訳ではないという指摘もある<ref>山下悦子著『女を幸せにしない「男女共同参画社会」』洋泉社</ref><ref>{{Cite web|和書|title=私のフェミニズム<上> 北原みのりさん 性差別に鈍感になった平成 女性たちもっと怒っていい|url=https://www.nishinippon.co.jp/item/n/521524/|website=西日本新聞ニュース|accessdate=2020-05-13}}</ref>。 |
|||
==== エコフェミニズム ==== |
|||
[[エコフェミニズム]]は、男性による自然支配と女性支配を同根と定め、自然保護の立場から戦争、女性への暴力、女性支配、先住民への差別、環境破壊に反対する。「エコフェミニズム」という言葉の生みの親とされる[[フランソワーズ・ドボンヌ]]は、1978年にエコロジー・フェミニズム協会を設立した。この運動は、当時、フランスではほとんど反響を呼ばず、オーストラリアや米国において引き継がれ、大きな広がりを見せることになった<ref>{{Cite news2 |df=ja |title=Françoise d'Eaubonne, une figure du féminisme français|date=2005-08-05|url=https://www.lemonde.fr/disparitions/article/2005/08/05/francoise-d-eaubonne-une-figure-du-feminisme-francais_677960_3382.html|accessdate=2019-01-11|language=fr|work=Le Monde.fr}}</ref>。 |
|||
==== ブラック・フェミニズムとポストコロニアル・フェミニズム ==== |
|||
=== 教育 === |
|||
[[File:Kimberlé Crenshaw (40901215153).jpg|thumb|キンバリー・クレンショー。]] |
|||
第二次世界大戦前の教育制度上、女性の大学進学を難しくしていたのは旧制中学、旧制高等学校が女子の入学を認めなかったことで、旧制中学に対応する高等女学校はあったが、大学に進むコースとしては、女子師範学校などを卒業するという必要があった。3つの帝国大学、2つの官立大学などが女性の入学を認めていたが女性の学生は少なかった。学生の改革によって、戦後、女子の大学進学数は男性に追いつくペースで年々増加し、平成16年度に[[短大]]を含めると48.7%の女性が大学へと進学している。男子は47.8%([[男女共同参画社会|男女共同参画]]局調べ)であり、女子の方が進学率が高くなっている。女子の短大進学率は平成7年の24.6%をピークに15年度には13.9%と激減している。他国の例としては[[アメリカ合衆国|米国]]の女性の大学進学率は男子を上回り、女子学生への学位授与数が全体の54%を占め、英国、北欧でも同様の女子優位が起きている。 |
|||
{{see also|インターセクショナリティ}} |
|||
フェミニズム運動やその理論の発展は、大部分で西欧・北米の中産階級の白人女性によって主導されてきたと指摘されることがあった{{Sfn|Walker|1983|p=397}}{{Sfn|Hill Collins|2000|p=308-335}}{{Sfn|Narayan|1997|pp=20–28, 113, 161–87}}。これに対して、他の人種の女性などは、代替となるフェミニズムを提唱してきた{{Sfn|Hill Collins|2000|p=308-335}}。 |
|||
一方で、[[2018年に発覚した医学部不正入試問題]]のように、女子生徒を入学試験において不利に扱う問題は依然として残っている。 |
|||
1960年代後半のフェミニズム運動の中で、{{仮リンク|フランシス・ビール|en|Frances M. Beal}}は、黒人差別・女性差別の二重の危険を指摘し、{{仮リンク|ブラック・フェミニズム|en|Black feminism}}の構築が進展した{{Sfn|デラップ|2023|pp=107-111}}。ビールは、黒人女性解放同盟を設立、これはのちに{{仮リンク|第三世界女性同盟|en|Third World Women's Alliance}}へと発展し、人種主義・帝国主義・性差別主義などの抑圧の複数の原因に着目した{{Sfn|デラップ|2023|pp=107-111}}。この考えから、[[キンバリー・クレンショー]]によって「[[インターセクショナリティ]]」の概念が提唱され、相互に作用する複数の抑圧に着目され、人種・階級・ジェンダー・能力などによる排除に同時に取り組む運動が志向されるようになった{{Sfn|デラップ|2023|pp=107-111}}。ここから階級・人種・国境を越えた共闘の方法を探る{{仮リンク|ポストコロニアル・フェミニズム|en|Postcolonial feminism}}や、ジェンダーの差異だけに還元されないさまざまな差異を探る試みである[[クィア理論]]も現れた{{Sfn|藤高|2022|pp=134-140}}。 |
|||
=== 宗教 === |
|||
{{Main|[[:Category:宗教と女性]]}} |
|||
[[カトリック教会]]では女性は司祭には[[叙階]]されない。しかし近年ではフェミニズムによって[[聖公会]]等の他の教派には女性司祭が誕生するなど、徐々に男性と同等の権利を獲得しつつある局面もある。しかしながらこうした状況に反発する保守派が形成されてもいる。イスラム教では、女性が男性を導くことができるかどうかという討論が起きている。 |
|||
<!-- |
|||
また、キリスト教圏やイスラム教圏などにおいて一般的であった男女の役割分担に基づく結婚制度を否定したことから、それが男女の異なりに基づく異性愛絶対主義の否定につながり、同性愛者の権利の獲得を有利にしたという主張がされることもある。 |
|||
この傾向は、1960年代のアメリカの公民権運動や、アフリカ・カリブ海・ラテンアメリカ・東南アジアにおける西欧の植民地主義の終焉とともに加速し、発展途上国や元植民地出身の女性、あるいは有色人種や様々な民族、また貧困に苦しむ女性から、新たなフェミニズムが提唱された{{Sfn|Narayan|1997|pp=20–28, 113, 161–87}}。たとえば、{{仮リンク|ウーマニズム|en|Womanism}}は、初期のフェミニズム運動が白人中産階級を主として構成されていたことを背景に生まれた<ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1086/494200 |title=Womanism: The Dynamics of the Contemporary Black Female Novel in English |year=1985 |last1=Ogunyemi |first1=Chikwenye Okonjo |journal=Signs: Journal of Women in Culture and Society|volume=11 |issue=1 |pages=63–80 |jstor=3174287|s2cid=143836306 }}</ref><ref>{{Cite book2 |df=ja |author=Kolawole, Mary Ebun Modupe |title=Womanism and African Consciousness |year=1997 |publisher=Africa World Press |location=Trenton, N.J. |isbn=978-0-86543-540-7 |page=216}}</ref>{{Sfn|Walker|1983|p=397}}。こうしたフェミニズムは、{{仮リンク|第三世界フェミニズム|en|Third-world feminism}}や{{仮リンク|先住民フェミニズム|en|indigenous feminism}}{{Sfn|Narayan|1997|pp=20–28, 113, 161–87}}、{{仮リンク|アフリカン・フェミニズム|en|African feminism}}<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Obianuju Acholonu |first=Catherine |title=Motherism: The Afrocentric Alternative to Feminism |year=1995 |publisher=Afa Publ. |isbn=978-978-31997-1-2 |page=144}}</ref>などと密接に関わる。 |
|||
しかし、男女の性役割の否定、女性の自立という政治的立場から[[結婚]]制度を否定する立場をとる者も多いフェミニストと、純粋に自らの性的指向を社会的に認知してほしいとして求め、同性間の結婚をも法的に認めるよう運動を行ってきた同性愛者では、その立場も、目指したことも基本的に異なる。多くの同性愛者は、フェミニズム運動とは異なる立場で独自に運動を展開してきた。したがって、同性愛者の権利獲得におけるフェミニズムの影響は、限定的なものである。なお、2006年1月、欧州議会が「[[ホモフォビア]]」に対する共同決議案を採決し、同性愛に対するあらゆる差別は人種差別と同様であると定められた。現在では社会的に隠蔽されていた同性愛者が露出し、1995年のハーバード大学による調査では、男性の6.2%、女性の3.6%が同性愛者という結果が出た--> |
|||
==== トランスフェミニズム ==== |
|||
[[自由主義神学]]には、[[人工妊娠中絶]]を女性の権利とする主張がある<ref> |
|||
第二派フェミニズムにおいては、{{仮リンク|ジャニス・レイモンド|en|Janice Raymond}}のように本質主義の立場から反トランスジェンダーの立場に立つフェミニストもいたが、[[トランスジェンダー]]に肯定的な立場を取るフェミニストも多くおり、第二派の中で重要な役割を担ったトランスジェンダーもいる{{Sfn|藤高|2022|pp=140-147}}。第三波以降は、トランスジェンダーの権利のための闘いは、{{仮リンク|インターセクショナル・フェミニズム|en|intersectional feminism}}の不可欠な部分であるとみなされることが多く{{Sfn|Grady|2018}}。第四波フェミニズムでも同様に、トランスジェンダーを包括することが多い{{Sfn|Grady|2018}}。フェミニズムの中にはトランスジェンダーを肯定的にとらえる言説の蓄積があり({{仮リンク|トランスフェミニズム|en|trans feminism}})、たとえば[[竹村和子]]は、トランスセクシュアルに、現存の性規範を攪乱する新しい身体性があることを見出している{{Sfn|藤高|2022|pp=140-147}}。また、{{仮リンク|全米女性機構|en|National Organization for Women}}会長の{{仮リンク|テリー・オニール|en|Terry O'Neill (feminist)}}は、[[トランスフォビア|トランスジェンダー嫌悪]]との闘いはフェミニズムの問題であるとし<ref>{{cite web |title=Why Transphobia Is a Feminist Issue |date=2014-09-08 |url=https://now.org/blog/why-transphobia-is-a-feminist-issue/ |publisher=National Organization for Women |access-date=2021-11-24}}</ref>、全米女性機構は「トランス女性は女性であり、トランス少女は少女である」という立場を表明している<ref>{{cite web |title=NOW Celebrates International Transgender Day of Visibility |date=2021-03-31 |url=https://now.org/media-center/press-release/now-celebrates-transgender-day-of-visibility/ |publisher=National Organization for Women|access-date=2021-11-24}}</ref>。複数の研究では、「フェミニスト」を自認する人々の方が、そうでない人々よりも、トランスジェンダーの人々を受け入れる傾向が強いとされている<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Platt |first1=Lisa F. |last2=Szoka |first2=Spring L. |title=Endorsement of Feminist Beliefs, Openness, And Mindful Acceptance as Predictors of Decreased Transphobia |journal=Journal of Homosexuality |date=28 January 2021 |volume=68 |issue=2 |pages=185–202 |doi=10.1080/00918369.2019.1651109 |pmid=31411935 |s2cid=199663381 }}</ref><ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Conlin |first1=Sarah E. |last2=Douglass |first2=Richard P. |last3=Moscardini |first3=Emma H. |title=Predicting Transphobia Among Cisgender Women and Men: The Roles of Feminist Identification and Gender Conformity |journal=Journal of Gay & Lesbian Mental Health |date=2 January 2021 |volume=25 |issue=1 |pages=5–19 |doi=10.1080/19359705.2020.1780535 |s2cid=225798026 }}</ref><ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Brassel |first1=Sheila T. |last2=Anderson |first2=Veanne N. |title=Who Thinks Outside the Gender Box? Feminism, Gender Self-Esteem, And Attitudes Toward Trans People |journal=Sex Roles |date=April 2020 |volume=82 |issue=7–8 |pages=447–462 |doi=10.1007/s11199-019-01066-4 |s2cid=198663918 }}</ref>。こうした議論の2000年前後の担い手に、{{仮リンク|サンディ・ストーン|en|Sandy Stone (artist)}}、[[マーシャ・P・ジョンソン]]、{{仮リンク|シルヴィア・リヴェラ|en|Sylvia Rivera}}らがいる{{Sfn|シュラー|2023|p=300}}。 |
|||
{{Cite book|和書 |
|||
|author=ジャネット・K・ボールズ |
|||
|coauthors=ダイアン・ロング・ホーヴェラー |
|||
|translator=[[水田珠枝]]・鵜殿えりか・安川悦子 |
|||
|year=2000 |
|||
|title=フェミニズム歴史事典 |
|||
|publisher=[[明石書店]] |
|||
|isbn=9784750313252 |
|||
}}</ref><ref> |
|||
{{Cite book|和書 |
|||
|author1=大貫隆|authorlink1=大貫隆|author2=宮本久雄|authorlink2=宮本久雄|author3=名取四郎|author4=百瀬文晃|year=2002 |
|||
|title=[[岩波キリスト教辞典]] |
|||
|publisher=[[岩波書店]] |
|||
|isbn=400080202X |
|||
}}</ref>。 |
|||
[[トランス排除的ラディカルフェミニスト|トランス排除的ラディカルフェミニズム]]として知られるイデオロギーは、[[ジェンダー・アイデンティティ]]とトランスジェンダーの権利という概念に批判的で、「[[性的特徴]]がジェンダーを決定するものである」または「性的特徴はジェンダー・アイデンティティの重要性を超える」という立場をとる<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Zanghellini |first1=Aleardo |title=Philosophical Problems With the Gender-Critical Feminist Argument Against Trans Inclusion |journal=SAGE Open |date=April 2020 |volume=10 |issue=2 |pages=215824402092702 |doi=10.1177/2158244020927029 |s2cid=219733494 |url=https://centaur.reading.ac.uk/90937/4/2158244020927029.pdf |archive-url=https://web.archive.org/web/20201103214816/http://centaur.reading.ac.uk/90937/4/2158244020927029.pdf |archive-date=2020-11-03 |url-status=live }}</ref><ref>{{Cite news2 |df=ja |date=2021-06-05|title=A Backlash Against Gender Ideology Is Starting in Universities|work=Economist|url=https://www.economist.com/international/2021/06/05/a-backlash-against-gender-ideology-is-starting-in-universities|access-date=2021-06-06}}</ref><ref>{{Cite web|title=Woman Accused of Transphobia Wins Landmark Employment Case|url=https://www.heraldscotland.com/news/19362788.maya-forstater-wins-landmark-employment-case-gender-critical-beliefs/|first=Tom|last=Gordon|access-date=2021-06-10|website=HeraldScotland|date=10 June 2021 }}</ref>。そして、生物学的二元論の立場を取り、抑圧するのは常に男性、抑圧されるのは常に女性で、男性がいないという条件でしか女性の解放はあり得ないと説く{{Sfn|シュラー|2023|pp=275-276}}。これらの見解は、他の多くのフェミニストからトランス嫌悪的であると批判されている<ref>{{cite web |url=https://theoutline.com/post/6536/british-feminists-media-transphobic |title=Why Is British Media So Transphobic? |last1=Miller |first1=Edie |date=5 November 2018 |publisher=The Outline |access-date=2019-05-03 |archive-date=2019-10-19 |archive-url=https://web.archive.org/web/20191019192628/https://theoutline.com/post/6536/british-feminists-media-transphobic |url-status=live }}</ref><ref>{{Cite news2 |df=ja |last1=Dalbey |first1=Alex |title=TERF Wars: Why Trans-Exclusionary Radical Feminists Have No Place in Feminism |url=https://www.dailydot.com/irl/terf-meaning/ |access-date=2019-01-27 |work=Daily Dot |date=2018-08-12 |archive-date=2019-01-28|archive-url=https://web.archive.org/web/20190128082722/https://www.dailydot.com/irl/terf-meaning/ |url-status=live }}</ref><ref>{{Cite news2 |df=ja |last=Dastagir |first=Alia |url=https://www.usatoday.com/story/news/2017/03/16/feminism-glossary-lexicon-language/99120600/ |title=A Feminist Glossary Because We Didn't All Major in Gender Studies |work=USA Today |date=2017-03-16 |access-date=2019-04-24 |archive-date=2019-07-20|archive-url=https://web.archive.org/web/20190720073940/https://www.usatoday.com/story/news/2017/03/16/feminism-glossary-lexicon-language/99120600/ |url-status=live }}</ref><ref>{{Cite news2 |df=ja |url=https://www.nytimes.com/2019/02/07/opinion/terf-trans-women-britain.html|title=Opinion {{!}} How British Feminism Became Anti-Trans|last=Lewis|first=Sophie|date=7 February 2019|work=The New York Times|access-date=2019-05-05|issn=0362-4331|archive-date=2019-11-15|archive-url=https://web.archive.org/web/20191115191351/https://www.nytimes.com/2019/02/07/opinion/terf-trans-women-britain.html|url-status=live}}</ref><ref>{{Cite web|last=Taylor|first=Jeff|date=2017-10-23|title=The Christian Right's New Strategy: Divide and Conquer the LGBT Community|url=https://www.lgbtqnation.com/2017/10/christian-rights-new-strategy-divide-conquer-lgbt-community/|url-status=live|archive-url=https://web.archive.org/web/20190922155851/https://www.lgbtqnation.com/2017/10/christian-rights-new-strategy-divide-conquer-lgbt-community/|archive-date=2019-09-22|access-date=2019-05-09|website=www.lgbtqnation.com}}</ref>{{Sfn|工藤|2022|p=42}}。 |
|||
=== 性意識と性規範 === |
|||
性意識や性規範などの社会的なジェンダーに関する認識もフェミニズムにおいて研究されている。女性は男性に比べ、素肌の露出に対する社会的な規範が厳しい。特に大きな違いとして、女性は[[乳房]]や[[乳首]]は衣服で隠すべきであるという規範が多くの地域で存在する。近年では「乳首は[[性器]]ではない。どうして女だけが、乳首を隠さなければならないのか?」との問題が定義され、女性が男性同様に上半身を露出する権利を訴える「フリー・ニップル運動」がアメリカを中心に盛んになっている。2016年8月28日、<Go Topless(ゴー・トップレス)>という上半身露出の権利に関する催事が行なわれ[[アメリカ]]や[[南アフリカ]]、[[韓国]]、[[ペルー]]、[[イギリス]]など世界各国で老若男女が自身の胸部をさらけ出す形で催事のパレードに参加している<ref>{{Cite web|和書|url=http://rocketnews24.com/2016/09/01/793746/|title=去る8月28日は「女性がお胸をさらけ出す日」だった! 女性だけが乳首を隠さなければならない風潮に疑問を投げかける日『ゴー・トップレス・デー』|publisher=ロケットニュース24|date=2016-09-01|accessdate=2016-09-13}}</ref>。また、インスタグラムなどのSNSにおいて、女性の乳首だけが検閲の対象となっている事について抗議が行われている<ref>{{Cite web|和書|title=女性の乳首はNGで男性の乳首はOK?Instagramの謎|url=https://www.buzzfeed.com/jp/bfjapan/instagram-nipples|website=BuzzFeed Japan|accessdate=2020-11-16|first=Daniela|last=Cadena|publisher=|date=2017-01-29}}</ref>。 |
|||
== |
== 理論・概念 == |
||
{{main|en:Feminist theory}} |
|||
{{観点|section=1|date=2023年10月}} |
|||
[[右派]]などの批判 |
|||
*[[旧統一教会]]関連団体である[[国際勝共連合]]はフェミニズムを[[共産主義]]の亜種である「[[文化的マルクス主義陰謀論|文化共産主義]]」として批判している。同団体はフェミニストも文化共産主義の尖兵として批判の対象としており、その主要任務は[[ジェンダーフリー]]といった政策で[[資本主義]]の文化基盤を破壊したり、「自然な家族」の解体や、[[妊娠中絶]]などの普遍化の推進であるとされる。フェミニストは国連創設時に[[エレノア・ルーズベルト]]が[[国連人権委員会]]委員長に就任し「[[世界人権宣言]]」を起草し、国連の人権委員会や関連期間の事務局に多数送り込まれ、文化共産主義の隠れ蓑になってきたと同団体は主張する。また、勝共連合は[[地方自治]]も家族解体策を自治体に導入させる仕組みとして敵視している。そこでは首長や議長を操れる協議会を設置し、そこに文化共産主義者が公募市民として入り込み、条例作りや補助金給付先を誘導するとされる。勝共連合は[[NPO]]や[[NGO]]も敵視しており、それは左翼人権団体が委員会に名を連ね、左翼人権政策を行政に押し付けることが可能になるとされるからである<ref name="世界思想201312">『世界思想』2013年12月号、世界思想出版 pp. 6-16</ref><ref>『世界思想』2007年4月号、世界思想出版 pp. 6-16</ref><ref>『世界思想』2008年5月号、世界思想出版 pp. 28-29</ref>。また、勝共連合は文化共産主義を主導する頭目として、[[参議院議員]]の[[福島瑞穂]]を名指しで批判している<ref name="世界思想201312"/>。 |
|||
フェミニスト理論で探求されるテーマとして、差別・ステレオタイプ・[[性的対象化]]・抑圧・家父長制などがある{{Sfn|Chodorow|1989}}{{Sfn|Gilligan|1977}}。 |
|||
=== 家父長制 === |
|||
その他 |
|||
[[File:"Female Muslims- The tsar, beys and khans took your rights away" – Azeri, Baku, 1921 (Mardjani).jpg|thumb|upright=0.8|「ムスリムの女性よ。皇帝・ベイ・ハーンがあなたの権利を奪った」- [[アゼルバイジャン]]で発行されたソビエトのポスター、1921年。]] |
|||
*ノンフィクションライターの[[中村淳彦]]は風俗が貧困女性たちの砦になっている、現代日本の現実を挙げ[安全に健康に働ける」ために「性風俗を職業として認めてほしい」と考えている風俗嬢たちの意見を著書「日本の風俗嬢」等で取り上げているが、そこで障壁となるのが「男性たちに性奴隷として働かされている風俗嬢を救済しなくては」と提唱するフェミニストたちの意見あるが、そういった日本の現状や貧困女性・風俗嬢たちの置かれてる現実を見ない、フェミニストたちの思考や言動が風俗嬢を苦しめている現実を指摘<ref>風俗嬢の立場を追い詰めているのはフェミニズム思考? https://dot.asahi.com/articles/-/18334?device=smartphone&page=1 「風俗嬢は性感染症や妊娠のリスク・客からの[[ストーカー]]被害など命に関わる問題に日々直面しています。そのような問題が目前にあっても、フェミニストたちは、現実的な対策を提示するのではなく、性風俗を職業として認めないという理想論に終始しがちです。皮肉なことに、女性の味方であるはずのフェミニズム的思考が、逆に風俗嬢達を追い詰めている」 </ref>2015年に中村は不況や学費の高騰などにより[[女子大生]]を始めとする若者たちが性を売る仕事に就かざるを得ない現状を描いた2015年の著書『女子大生[[風俗嬢]] 若者貧困大国・日本のリアル』<ref>[[LITERA]](リテラ) 学費のために[[ソープ]]で働く[[慶大生]]、売り専に走る男子学生も…カラダを売るしかない「貧困[[大学生]]」が急増中 https://lite-ra.com/2015/11/post-1648.html</ref>において若者の貧困だけでなく風俗嬢や中年女性の貧困、[[ブラック労働]]や[[イジメ]]・[[セクハラ]]が横行する[[介護業界]]の現実を描いた描いた章などで、風俗が貧困女性たちを救っている側面を指摘した際に、「あるフェミニスト団体が風俗嬢に一方的に同情し、さかんに人手不足が叫ばれている介護業界への転職を勧めている」のを目撃し、無知で上から目線なフェミニストたちに呆れた事を書いた<ref>『女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル』([[朝日新書]]/ )141p-168p5章「風俗はセーフティネットか」」の167p-168p「イジメやパワハラ、脱法労働が蔓延している介護業界の実態を知る筆者としては表面的な綺麗事と自分たちの理想しかないフェミニスト団体の思考と発言にあきれ果てた」</ref>。 |
|||
*社会学者の[[宮台真司]]は「クソフェミ」発言で賛否を呼んだが、[[加藤浩次]]&[[安藤優子]]司会の[[ユーチューブ]]番組で、その真意を語り、別にフェミニストに批判的なわけでなくて、一部にフェミニストの振りをした差別主義者がいる現状を指摘し、[[巨乳]]表現などを「自分の快・不快」で「女性全般の問題」にすり替えて「セクシー表現は女性全員が嫌がっている」というすり替えを行う自称フェミニスト(クソフェミ)に対し宮台は「てめえの快不快に公共性はない」と発言、また番組では18-30歳の世代の約40パーセントが「フェミニストが嫌いだ」というデータもあると指摘しフェミニストたちへの嫌悪感が強まっている現実を指摘<ref>「"自称フェミニスト"には差別主義者がいる」宮台真司、安藤優子、加藤浩次と語るフェミニズムに嫌悪感が広がる理由 https://www.youtube.com/watch?v=x_tiQtkBVjI 6:58ころと、8・20以降</ref>、宮台は前述の中村と同じくフェミニストの風俗嬢やAV女優などの性風俗産業、AV新法の態度などにも触れ、当事者たちの話も聞かずに「彼女たちは全員、被害者だ!」とステレオタイプを張ることを差別であるとして、そういったフェミニストを「クソフェミ」と定義した<ref>宮台真司が語る「クソフェミ」発言の真意 https://www.youtube.com/watch?v=mLWFKizUbJM</ref>。また宮台はフェミニスト[[柴田英里]]と対談し「クソフェミ」批判を行った<ref>宮台真司×柴田英里 対談『クソフェミへの退場勧告 ~性表現とジェンダーのゆくえ~』第4回 ライブ配信【7月22日(土) 19時】開催 https://presswalker.jp/press/17672</ref>。 |
|||
*柴田英里は[[実話BUNKAタブー]]のインタビューで[[太田啓子]]の著書「これからの男の子たちへ」を「男性性を加害性と安易に結びつけ過ぎてる」と批判<ref>https://bunkaonline.jp/archives/263/2</ref>。 |
|||
*[[ドイツ]]の[[哲学者]]の[[ニーチェ]]はフェミニズム(女性の解放)に批判的であり、「女性は政治に口を出すべきでない」「男女平等は悪質なフィクション、男と女に性差はある」「女性は女性の解放により、女性特有の魅力を失い、女性の男性化が進んでしまった」と指摘し、「政治などは男に任せるべきである。女性という高貴な生き物は、権力闘争などの醜い面がある政治にいくべきでない」と、女性は男性よりも高貴な生き物であるとの指摘をし、ニーチェ研究でも知られる[[適菜収]]も著書で紹介した<ref>ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒 (講談社+α新書) 新書 – 2012/4/20</ref>また適菜は[[呉智英]]との対談本「愚民文明の暴走」でも「「フェミニズム」は[[反知性主義]]である」と評している<ref>https://gendai.media/articles/-/40056?page=6</ref>。 |
|||
[[家父長制]]とは、男性の権威者を中心に組織された社会制度であり、この制度では、父親が女性・子供・財産に対して権威を持つ。これは男性支配・男性特権の制度であり、女性が従属することを強いる<ref>{{cite encyclopedia |df=ja |title=Encyclopedia of Sex and Gender |year=2007 |publisher=Macmillan Reference |location=Detroit, Mich.}}</ref>。フェミニズムの多くは、家父長制は女性にとって抑圧的で不平等な社会制度であるとする。キャロル・ペイトマンは、家父長制における「男性性」と「女性性」の区別は、自由と服従という政治的な相違であると主張する<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Pateman|first=Carole|url=https://books.google.com/books?id=cJM6AwAAQBAJ|title=The Sexual Contract|date=25 March 2014|publisher=John Wiley & Sons|isbn=978-0-7456-8035-4|location=|pages=207}}</ref>。 |
|||
==著名なフェミニスト== |
|||
*[[アリアナ・グランデ]] |
|||
「家父長制」という用語を浸透させたのは、ドイツの社会主義者の[[アウグスト・ベーベル]]である。ベーヘルは男性による女性抑圧と私有財産・労働の占有の発生を説明する概念として、家父長制という言葉を用いた{{Sfn|デラップ|2023|pp=85-86}}。ベーヘルは、家父長制は個人としての男性に責任があるのではなく、社会の構造的特徴としてとらえ、特に労働階級の女性との連帯を模索した{{Sfn|デラップ|2023|pp=85-86}}。 |
|||
*[[ルイーズ・アルブール]] |
|||
*[[キャサリン・マッキノン]] |
|||
フェミニズム理論において、家父長制の概念は、男性が女性に対して優位性を再生産し、行使するための社会的メカニズムの全てを含むとされる。主なフェミニズム理論は、家父長制を社会的な構築物として捉え、その現れを明らかにし、批判的に分析することで克服できると考える<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Tickner, Ann J.|chapter=Patriarchy|title=Routledge Encyclopedia of International Political Economy: Entries PZ|publisher=Taylor & Francis|year=2001|isbn=978-0-415-24352-0|pages=1197–1198|chapter-url=https://books.google.com/books?id=lSmU3aXWIAYC&pg=PA1197}}</ref>。一方で、家父長制という概念が政治的に利用され、たとえば「イスラム教は家父長制社会であるから、女性を守るために闘わなければならない」といったレトリックで、欧米のフェミニスト団体が中東への侵略を支持することがあった{{Sfn|デラップ|2023|pp=116-118}}。こうしたレトリックは、イスラム教内部のフェミニズム運動の存在を見落としているとして他のフェミニストによって批判されている{{Sfn|デラップ|2023|pp=116-118}}。 |
|||
*[[アンドレア・ドウォーキン]] |
|||
{{seealso|ピンクウォッシング (LGBT)}} |
|||
*[[ベル・フックス]] |
|||
*[[メアリ・ウルストンクラフト]] |
|||
=== スタンドポイント理論 === |
|||
*[[オランプ・ド・グージュ]] |
|||
{{仮リンク|スタンドポイント理論|en|Standpoint theory}}は、個人の社会的立場がその人の知識に影響を与えるということを論じるフェミニズム理論である。この観点は、従来の科学が「客観的」であるという見方を拒否し、過去の研究や理論が女性やフェミニズム運動を重要でないものと扱ってきたと主張する<ref>{{Cite web|title = standpoint theory {{!}} feminism|url = https://www.britannica.com/topic/standpoint-theory|website = Encyclopædia Britannica|access-date = 2016-02-10}}</ref>。1980年代以降、スタンドポイント・フェミニズムは、フェミニズム運動は国際的な問題(強姦・近親相姦・売春など)と、文化特有の問題(アフリカやアラブ社会の一部にある[[女性器切除]]や、先進国における[[ガラスの天井]]の問題など)に対処すべきであると主張した。これにより、ジェンダー不平等が人種差別・同性愛嫌悪・階級差別・植民地主義などとどのように交わるかを「支配のマトリクス」として理解することができるようになる{{Sfn|Hill Collins|2000|p=308–335}}<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Harding |first=Sandra |title=The Feminist Standpoint Theory Reader: Intellectual and Political Controversies |year=2003 |publisher=Routledge |location=London |isbn=978-0-415-94501-1 |pages=1–16, 67–80}}</ref>。 |
|||
*[[ガートルード・スタイン]] |
|||
*{{ill2|キャロライン・ペレス|en|Caroline Criado Perez}}<ref>{{Cite web|和書|url=https://iphone-mania.jp/news-228101/|title=「大きすぎるiPhoneは女性差別」著名フェミニストたちがAppleを批判|accessdate=2020/03/04|publisher=}}</ref> |
|||
=== 社会構築物としてのジェンダー・セックス === |
|||
*[[グロリア・スタイネム]] |
|||
{{see also|性別とジェンダーの区別|ジェンダー・トラブル}} |
|||
*[[ジュディス・バトラー]] |
|||
*[[ジャスティン・トルドー]] |
|||
[[シモーヌ・ド・ボーヴォワール]]は、1949年に『[[第二の性]]』を出版し、マルクス主義の方法論と実存主義の視点からフェミニズムに取り組み<ref>{{cite web |last=Bergoffen |first=Debra |title=Simone De Beauvoir |date=16 August 2010 |orig-date=17 August 2004 |publisher=Metaphysics Research Lab, CSLI, Stanford University |url=http://plato.stanford.edu/entries/beauvoir/ |access-date=2011-12-04}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last=Whelehan |first=Imelda |title=Modern Feminist Thought: From the Second Wave to 'Post-Feminism' |url=https://archive.org/details/modernfeministth0000whel |url-access=registration |year=1995 |publisher=Edinburgh University Press |location=Edinburgh |isbn=978-0-7486-0621-4 |pages=[https://archive.org/details/modernfeministth0000whel/page/25 25–43]}}</ref>、従来は自然的・本質的な「女性性」があるかのように語られてきたが、こうした女性性は実は社会的・経済的・文化的な条件の中で、社会制度・規範とともに現れてくるものであると指摘した{{Sfn|中澤|2020|pp=4-5}}。 |
|||
*[[シモーヌ・ド・ボーヴォワール]] |
|||
*[[ベティ・フリーダン]] |
|||
20世紀後半に入ると、多くのフェミニストがジェンダーは社会的に構築されている({{仮リンク|社会構築物としてのジェンダー|en|Social construction of gender}})と主張し始めた<ref>{{Cite journal2 |df=ja | last1 = West | first1 = Candace | last2 = Zimmerman | first2 = Don H. | title = Doing gender | journal = Gender & Society | volume = 1 | issue = 2 | pages = 125–151 | doi = 10.1177/0891243287001002002 | jstor = 189945 | date = June 1987 | s2cid = 220519301 }} [https://campus.fsu.edu/bbcswebdav/institution/academic/social_sciences/sociology/Reading%20Lists/Social%20Psych%20Prelim%20Readings/IV.%20Structures%20and%20Inequalities/1987%20West%20Zimmerman%20-%20Doing%20Gender.pdf Pdf.]</ref>。ここでは、女性の経験を文化や歴史にわたって一般化することは不可能だと考えられる<ref>{{cite book2 |df=ja | last = Benhabib | first = Seyla | chapter = From identity politics to social feminism: a plea for the Nineties | chapter-url = https://books.google.com/books?id=ldmUEPvayQMC&pg=PA27 | editor-last1 = Melzer | editor-first1 = Arthur M. | editor-last2 = Weinberger | editor-first2 = Jerry | editor-last3 = Zinman | editor-first3 = M. Richard | title = Politics at the Turn of the Century | pages = 27–41 | publisher = Rowman & Littlefield | location = Lanham, Maryland | year = 2001 | isbn = 978-0-8476-9446-4 }}</ref>。{{仮リンク|ポスト構造主義フェミニズム|en|Post-structural feminism}}は、[[ポスト構造主義]]や[[脱構築]]の哲学に依拠し、ジェンダーの概念は言説を通じて社会的・文化的に作り出されると主張する<ref>{{cite book2 |df=ja | last = Randall | first = Vicky | chapter = Feminism | editor-last1 = Marsh | editor-first1 = David | editor-last2 = Stoker | editor-first2 = Gerry | title = Theory and methods in political science | page = 116 | publisher = Palgrave Macmillan | location = Basingstoke | year = 2010 | edition = 3rd | isbn = 978-0-230-57627-8 }}</ref>。{{仮リンク|パメラ・アボット|en|Pamela Abbott}}は、ポストモダン的なアプローチは「単に男性と女性の視点だけでなく、複数の真実の存在」を強調していると述べる<ref>{{cite book2 |df=ja | last = Yeatman | first = Anna | chapter = The epistemological politics of postmodern feminist theorizing | chapter-url = https://books.google.com/books?id=3W3QES9zwdsC&pg=PA15 | title = Postmodern Revisionings of the Political | pages = [https://archive.org/details/postmodernrevisi0000yeat/page/15 15–22] | publisher = Routledge | location = New York | year = 1994 | isbn = 978-0-415-90198-7 | url = https://archive.org/details/postmodernrevisi0000yeat/page/15 }}</ref>。 |
|||
*[[アリス・ウォーカー]] |
|||
*[[テイラー・スウィフト]] |
|||
さらに、[[ジュディス・バトラー]]は、生物学的な[[セックス]]と文化的に構築された[[ジェンダー]]という枠組みに対する構造的な批判を試みた{{Sfn|バトラー|1999|pp=27-29}}。バトラーによれば、自然的・本質的なセックスという観念は、政治的・社会的な目的から科学言説によって構築されたもので{{Sfn|バトラー|1999|pp=27-29}}、ジェンダーはセックスを「前-言説的」にするための装置であり、セックスとジェンダーはどちらも社会的に構築されたものとする{{Sfn|バトラー|1999|pp=27-29}}。この背景には、生物学・精神分析学の研究の進展によって、人間が生物的に必ずしも男女に二分されるわけではないと明らかにされたこともある{{Sfn|三成|2023}}。バトラーの学説は、フェミニズムの新時代を告げたものとされる{{Sfn|三成|2023}}。 |
|||
*[[シュラミス・ファイアストーン]] |
|||
*[[ジョン・スチュアート・ミル]] |
|||
=== フェミニズムとセクシュアリティ === |
|||
*[[ナオミ・クライン]] |
|||
{{Main|en:Feminist views on sexuality}} |
|||
*[[マイリー・サイラス]] |
|||
*[[エマ・ワトソン]]<ref>{{Cite web |url=https://www.youtube.com/watch?v=c9SUAcNlVQ4 |title=Emma Watson to United Nations: I'm a feminist - YouTube |accessdate=2019年1月26日 }}</ref> |
|||
フェミニズムのセクシュアリティに対する見解は、時期や文化によって異なり、いくつかの方向性がある。特にフェミニストの間で論争の的となってきたのは、[[性産業]]、メディアにおける性的な表現、男性優位の状況下での性行為の同意の問題などである。これらの論争は1970年代後半から1980年代の「[[フェミニスト・セックス戦争]]」として知られ、反ポルノ運動と[[セックス・ポジティブ・フェミニズム]]が対立し、フェミニズム運動の一部が分裂した{{Sfn|Duggan|1995|pp=1-14}}{{Sfn|Hansen|1990}}{{Sfn|Gerhard|2001}}{{Sfn|Leidholdt|1990}}{{Sfn|Vance|1989}}。 |
|||
*[[平塚らいてう]] |
|||
*[[管野スガ]] |
|||
==== 性風俗産業 ==== |
|||
*[[与謝野晶子]] |
|||
{{main|en:feminist views on pornography}} |
|||
*[[山川菊栄]] |
|||
*[[市川房枝]] |
|||
[[性風俗産業]]に対するフェミニズムの立場は多岐にわたる。たとえば、個人主義フェミニストは、成人女性には自由に性的行為に同意する権利があり、自ら選んだ方法で働き、稼ぐ権利を持つべきだとして、性産業の存在を支持する傾向にある<ref>{{Cite web |url=https://www.libertarianism.org/topics/sex-work |access-date=2023-08-31 |website=Libertarianism.org |title=Sex Work }}</ref>。また、[[台湾のフェミニズム]]においては、性産業へのフェミニストの立場が二分され、性産業を批判するフェミニストは、性産業は男性の性的欲望を正当化し、女性のセクシュアリティの商品化・家父長制の強化をもたらす女性搾取であるとして批判した{{Sfn|福永|2017|pp=109-110}}。一方で、労働としての[[セックスワーク]]の保障を要求するフェミニストは、女性には身体と欲望についての自主権があり、身体の商品化は労働の商品化と同じで、批判されるべきは劣悪な労働環境であると主張し、セックスワークを抑圧することはセックスワーカーをより劣悪な環境に追い込むだけだと批判する{{Sfn|福永|2017|pp=109-110}}{{Sfn|黄|2007|p=15}}。 |
|||
*[[鈴木裕子 (女性史研究家)]] |
|||
*[[上野千鶴子]]<ref name=":7" /> |
|||
{{see also|フェミニスト・ポルノグラフィ}} |
|||
*[[小倉千加子]]<ref name=":7" /> |
|||
[[ポルノ]]に対するフェミニストの見解も多様で、ポルノを女性に対する暴力の一形態として非難するものから、ポルノの一部をフェミニズムの表現手段や正当な職業と捉えるものまである{{Sfn|Duggan|1995|pp=1-14}}{{Sfn|Hansen|1990}}{{Sfn|Gerhard|2001}}{{Sfn|Leidholdt|1990}}{{Sfn|Vance|1989}}。近年は、ポルノにおいて、異性愛主義・レイシスト的・健常者主義的なエロスの基準から離れた、多様な性の表象を目指すべきという議論もなされている{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=95―99}}。 |
|||
*[[太田啓子]] |
|||
*[[加納実紀代]] |
|||
==== 女性の性的自己決定権の肯定 ==== |
|||
*[[千田有紀]] |
|||
{{See also|en:My body, my choice}} |
|||
*[[福島瑞穂]] |
|||
*[[美尾浩子]] |
|||
フェミニズムにおいて、女性の性的欲望をどうとらえるかという問題はよく議論の俎上に上げられてきた。たとえば、アンチ・セックス・フェミニストと呼ばれるグループはセックスに禁欲的な態度を取り、女性の性的欲望の実在性は強く主張するものの、異性愛の枠外の欲望の正当性に対しては関心を払わず、レズビアンが非難されることもあった{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=107―111}}。これに対し、1970年ごろには政治的選択としてのレズビアン(レズビアニズム)が唱えられ、レズビアンの実践が男性支配を終わらせる方法だと説かれることもあった{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=107―111}}。1980年代になると、[[エレン・ウィリス]]によって[[セックス・ポジティブ・フェミニズム]]の考え方が提唱され、従来のフェミニズムは男性が性行為を求め、女性が従属するという保守的な考え方を強化していると説き、性行為における女性の主体性が強調された{{Sfn|スリニヴァサン|2023|pp=113―114}}。 |
|||
== フェミニズムと学問 == |
|||
フェミニズムの理論家は、ジェンダーに関する問題を考察するため、さまざまな学問分野で理論を発展させてきた{{Sfn|Chodorow|1989}}{{Sfn|Gilligan|1977}}。その対象は、人類学・社会学・経済学・女性学・文学批評<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Zajko, Vanda |author2=Leonard, Miriam |title=Laughing With Medusa: Classical Myth and Feminist Thought |year=2006 |publisher=Oxford University Press |location=Oxford |isbn=978-0-19-927438-3 |page=445}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Howe |first1=Mica |last2=Aguiar |first2=Sarah Appleton |title=He Said, She Says: An RSVP To the Male Text |year=2001 |publisher=Fairleigh Dickinson University Press |location=Madison, NJ |isbn=978-0-8386-3915-3 |page=292}}</ref>、美術史<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Pollock|first=Griselda|url=https://books.google.com/books?id=uKHpAAAAMAAJ|title=Encounters in the Virtual Feminist Museum: Time, Space and the Archive|date=2007|publisher=Routledge|isbn=978-0-415-41374-9}}{{page needed|date=2024-10-16}}</ref>、精神分析<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Ettinger, Bracha |author2=Judith Butler |author3=Brian Massumi |author4=Griselda Pollock |title=The Matrixial Borderspace |year=2006 |publisher=University of Minnesota Press |location=Minneapolis |isbn=978-0-8166-3587-0 |page=245 }}</ref>、[[フェミニスト哲学|哲学]]<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Brabeck |first=Mary |url=http://content.apa.org/books/10245-001 |title=Shaping the future of feminist psychology: Education, research, and practice. |last2=Brown |first2=Laura |date=1997 |publisher=American Psychological Association |isbn=978-1-55798-448-7 |editor-last=Worell |editor-first=Judith |location=Washington |pages=15–35 |chapter=Feminist Theory and Psychological Practice. |doi=10.1037/10245-001 |access-date=2021-01-22 |editor-last2=Johnson |editor-first2=Norine G.}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |author=Florence, Penny |author2=Foster, Nicola |title=Differential Aesthetics: Art Practices, Philosophy and Feminist Understandings |year=2001 |publisher=Ashgate |location=Aldershot, Hants, England |isbn=978-0-7546-1493-7 |page=360}}</ref>など、さまざまな分野の研究を含む。20世紀後半にかけて、高等教育が拡大する中で、フェミニズムは学問の一分野として定着している{{Sfn|デラップ|2023|p=35}}。 |
|||
=== フェミニズム文学批評 === |
|||
文学批評の分野では、{{仮リンク|エレイン・ショウォーター|en|Elaine Showalter}}がフェミニスト理論の発展を三つの段階に分類した。最初の段階が「フェミニスト批評」で、ここではフェミニストの読者が文学的現象の背後にあるイデオロギーを検討する。次の段階が「ガイノクリティシズム」で、ここでは女性がテキストの意味を生産する存在となる。最後の段階が「ジェンダー理論」で、ここではセクシュアリティ・ジェンダーのシステムが持つイデオロギーの刻印と文学的効果を探る<ref>{{cite book2 |df=ja |last1=Showalter |first1=Elaine |editor1-first=M. |editor1-last=Jacobus |title=Women Writing About Women |year=1979 |publisher=Croom Helm |isbn=978-0-85664-745-1 |pages=[https://archive.org/details/womenwritingwrit0000unse/page/25 25–36] |chapter=Towards a Feminist Poetics |chapter-url=https://archive.org/details/womenwritingwrit0000unse/page/25 }}</ref>。 |
|||
フェミニスト文学批評家の[[エレーヌ・シクスー]]は、女性に対して男根中心的な形式を越え、自らの身体や欲望について書き、言語における男性中心主義から抜け出すように述べた{{Sfn|デラップ|2023|pp=104-105}}。また、[[ジュリア・クリステヴァ]]は、子供が言語を取得する以前に、母親との間に女性的・詩的な言葉を持つと主張した{{Sfn|デラップ|2023|pp=104-105}}。一方で、「女性的書き言葉」を想定することは女らしさに関する本質主義的な見方に基づくという批判も存在する{{Sfn|デラップ|2023|pp=104-105}}。 |
|||
=== フェミニスト法学 === |
|||
{{仮リンク|フェミニスト法学|en|Feminist legal theory}}は、女性と法律の関係を検討する法学の一分野で、過去の女性に対する法的・社会的偏見と、女性の法的権利の向上のための問いを扱う<ref>{{cite book2 |df=ja |year=2014 |editor-last=Garner |editor-first=Bryan |title=Black's Law Dictionary |edition=10th |location=St. Paul, Minn. |publisher=Thomson Reuters |page=985 |isbn=978-0-314-61300-4 }}</ref>。現代の法学者は通常、法律は性別に依存しない普遍的なものであるという理想を維持するためのプロセスとみなすが、フェミニスト法学者は、このアプローチが女性の価値観や法的利益、また女性が経験するかもしれない障害を見落としていると主張する<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Minda |first=Gary |year=1995 |title=Postmodern Legal Movements: Law and Jurisprudence at Century's End |publisher=New York University Press |location=N.Y.C. |isbn=978-0-8147-5510-5 |pages=129–30 |quote=Feminist legal scholars, despite their differences, appear united in claiming that 'masculine' jurisprudence ... fails to acknowledge, let alone respond to, the interests, values, fears, and harms experienced by women.}}</ref>。 |
|||
=== フェミニズムと宗教 === |
|||
[[File:US Navy 080123-N-3385W-028 Cmdr. Adrienne Simmons, medical provider for Provincial Reconstruction Team Khost and only woman on the team, speaks at the groundbreaking ceremony for a women's mosque and park in downtown Khost City.jpg|thumb|2008年、[[アフガニスタン]]にて、エイドリアン・シモンズ司令官が、唯一の女性のための[[モスク]]の開所式で演説を行う様子。これは[[パシュトゥーン人|パシュトゥーン]]における女性の権利向上の象徴とされる。]] |
|||
歴史上、宗教によって女性の服装や礼拝が支配されることがあり、ユダヤ教に抗議して無神論者になったフェミニスト(例:[[アーネスティン・ローズ]])がいるように、フェミニズムは宗教への抵抗であると表現されることもある{{Sfn|デラップ|2023|pp=147-149}}。一方で、宗教信仰を守りつつ、フェミニズム運動に従事してきたフェミニストもいる{{Sfn|デラップ|2023|pp=147-149}}。 |
|||
{{仮リンク|キリスト教フェミニズム|en|Christian feminism}}には、大きく二つの類型がある。一つ目は、従来の聖書解釈や教義がいかに男性中心主義・異性愛主義であったとしても、キリスト教の本質はフェミニズムの視点と合致すると考え、そのための再解釈を試みる方向性である{{Sfn|工藤|2022|pp=46-47}}。ここから、従来の理解とは異なるキリスト教の「本質」を語ることに力を入れる論者や、従来の伝統的な解釈を批判することに力を入れる論者がいる{{Sfn|工藤|2022|pp=46-47}}。二つ目は、キリスト教、あるいはキリスト教信仰の「本質」を前提とせず、それ自体を脱構築していく立場であり、再解釈や実践の反復としてのパフォーマティヴな側面を重視する方向性である{{Sfn|工藤|2022|pp=46-47}}。フェミニスト神学も、フェミニズム運動と同様、当初はアメリカの白人女性が中心的な担い手であったが、1970年代以後、黒人女性による{{仮リンク|ウーマニスト神学|en|Womanist theology}}、ヒスパニック女性によるムヘリスタ神学など、そしてアジアなど世界各国での女性神学に広がり、さまざまな女性の経験を射程に入れるようになった{{Sfn|工藤|2022|p=44}}。 |
|||
{{main|イスラームと女性}} |
|||
{{仮リンク|イスラム教フェミニズム|en|Islamic feminism}}は、イスラムの枠組みに基づき、女性の権利・男女平等・社会的正義を主張する。ここでは[[コーラン]]における平等の教えが強調され、コーラン・[[ハディース]]・[[シャリーア]]を通して、イスラム教の家父長的な解釈に疑問を投げかけ、より平等で公正な社会の創造を目指す<ref>{{cite web2 |df=ja |url=http://www.feministezine.com/feminist/international/Islamic-Feminism-01.html|title=Islamic Feminism: What's in a Name?|author=Badran, Margot |access-date=2015-12-17 |date=January 17-23, 2002}}</ref>。これはイスラムに根ざした運動ではあるが、その先駆者は世俗的で、西洋のフェミニズムの議論も利用しており、イスラムフェミニズムは世界的フェミニズム運動の一部として認識している<ref>{{cite web2|df=ja |url=http://www.feminismeislamic.org/eng/index.htm|publisher=feminismeislamic.org |author=Catalonian Islamic Board |title=II International Congress on Islamic Feminism|access-date=2008-07-09 |date=October 24-27, 2008|archive-url=https://web.archive.org/web/20070114144940/http://www.feminismeislamic.org/eng/index.htm|archive-date=2007-01-14}}</ref>。 |
|||
{{仮リンク|仏教フェミニズム|en|Buddhist feminism}}は、1986年に[[真宗大谷派]]において「女性差別を考えるおんなたちの会」が始まり、仏教内部からのフェミニズム運動の先駆けとなったように、特に第二波以後に発展した<ref>{{Cite journal ja|title=仏教における女性研究の変遷 : 仏典の研究から実態の研究へ|journal=現代社会研究科論集 : 京都女子大学大学院現代社会研究科紀要|volume=16|year=2022|author=荒井美月|crid=1050573803642137856}}</ref>。仏教徒でフェミニストの{{仮リンク|リタ・グロス|en|Rita Gross}}は、仏教の法は本来は解放的で、女性差別から自由なものであるが、男性優位の制度によって女性差別が生じたと主張する<ref>{{Cite journal ja|title=法に性別なし - 仏教における性と解放 -|journal=大谷大学真宗総合研究所研究所紀要|number=7|year=1990|author=リタ・グロス|translator=安冨信哉|crid=1050581766258778240}}</ref>。 |
|||
=== フェミニスト現象学 === |
|||
[[フェミニスト現象学]]は、現象学の方法論を用い、主流の現象学に欠けていた女性の経験を考察の中心に据えるものとして始まった{{Sfn|中澤|2020|pp=2-3}}。現在では、女性の経験に限定せず、さまざまな性的存在の経験や、マイノリティの経験について、当事者の視点から探求することを主とする{{Sfn|中澤|2020|pp=2-3}}。 |
|||
現象学は、一人称の日常的な語りから出発するもので、日常では忘れ去られている原初的な経験を呼び起こし、そこから世界との関わり方を明らかにする{{Sfn|中澤|2020|pp=2-3}}。フェミニスト現象学は、その経験に現れるジェンダー構造にアプローチし、その個人が生きている社会の規範や制度の問題を開示することを目指している{{Sfn|中澤|2020|pp=9-10}}。 |
|||
=== 科学とフェミニズム === |
|||
{{main|フェミニスト認識論}} |
|||
科学に対するフェミニストの研究は、科学や学術機関における権力の不平等がどのように生み出され、維持されるかを明らかにすることを目的とする{{Sfn|Lindlof|2002|p=357}}。たとえば、[[サンドラ・ハーディング]]は、フェミニズムによる道徳・政治に関する洞察が、社会科学や生物学における、ジェンダー・セックスと社会・自然の間の関係についての従来の説明に対して、批判的な問いを投げかけたと述べる<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Harding, Sandra|editor=Nancy Tuana|year=1989|title=Feminism & Science|chapter=Is There a Feminist Method|chapter-url=https://books.google.com/books?id=gQQkAvU4S1oC&pg=PA17|publisher=Indiana University Press|isbn=978-0-253-20525-4|page=[https://archive.org/details/feminismscience0000unse/page/17 17]|url=https://archive.org/details/feminismscience0000unse/page/17}}</ref>。{{仮リンク|ルース・ハバード|en|Ruth Hubbard}}や{{仮リンク|エブリン・フォックス・ケラー|en|Evelyn Fox Keller}}といったフェミニスト批評家は、従来の科学言説が男性視点に偏っているとして批判する<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Hubbard, Ruth|year=1990|title=The Politics of Women's Biology|publisher=Rutgers University Press|isbn=978-0-8135-1490-1|page=[https://archive.org/details/politicsofwomens00hubb/page/16 16]|url=https://archive.org/details/politicsofwomens00hubb/page/16}}</ref>。 |
|||
リン・ハンキンソン・ネルソンは、フェミニスト認識論は、男性と女性の経験の間に根本的な違いを発見し、女性の経験を情報源として取り入れ、女性の経験を省略したり、誤って記述したり、過小評価したりすることの帰結を明らかにすることを重視すると述べる<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Hankinson Nelson, Lynn|year=1990|title=Who Knows: From Quine To a Feminist Empiricism|publisher=Temple University Press|isbn=978-0-87722-647-5|page=[https://archive.org/details/whoknowsfromquin0000nels/page/30 30]|url=https://archive.org/details/whoknowsfromquin0000nels/page/30}}</ref>。一方、フェミニスト認識論は、社会的・政治的な価値観がその発見に影響を与えるとして批判されることもある<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Hankinson Nelson, Lynn |year=1997|title=Feminism, Science, And the Philosophy of Science |publisher=Springer|isbn=978-0-7923-4611-1|page=61}}</ref>。例えば、[[スーザン・ハーク]]は、フェミニスト認識論が女性の思考に関するステレオタイプ(直感的で感情的であるなど)を強化するリスクがあると指摘し、{{仮リンク|ミーラ・ナンダ|en|Meera Nanda}}も、こうした視点が女性を従来のジェンダー・ロールに閉じ込め、家父長制を正当化することになりかねないと警告する<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Cortina |first1=L. M. |last2=Curtin |first2=N. |last3=Stewart |first3=A. J. |year=2012 |title=Where Is Social Structure in Personality Research? A Feminist Analysis of Publication Trends |journal=Psychology of Women Quarterly |volume=36 |issue=3 |pages=259–73 |doi=10.1177/0361684312448056|s2cid=13065637 }}</ref>。 |
|||
==== 生物学とジェンダー ==== |
|||
現代のフェミニズムは、ジェンダーが生物学的に定まっているとする本質主義的な見解({{仮リンク|ジェンダー本質主義|en|Gender essentialism}})に異議を唱えている<ref>{{cite book2 |df=ja |last=Code |first=Lorraine |title=Encyclopedia of Feminist Theories |publisher=Taylor & Francis |year=2000 |isbn=978-0-415-13274-9 |page=[https://archive.org/details/encyclopediaoffe0000unse/page/89 89] |url=https://archive.org/details/encyclopediaoffe0000unse/page/89 }}</ref><ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Bem |first=Sandra L. |title=The lenses of gender: transforming the debate on sexual inequality |date=1993 |publisher=Yale University Press |isbn=978-0-300-05676-1 |location=New Haven |pages=6}}</ref>。たとえば、{{仮リンク|アン・ファウスト・スターリング|en|Anne Fausto-Sterling}}の『ジェンダーの神話』は、「男性ホルモンは攻撃性・競争性を高める」といった従来の生物学で主張されてきた性質は、実は社会的状況によって左右されるものであると指摘する{{Sfn|スターリング|1990|pp=186-193}}。そして、科学は時代や場所といった(政治介入を含めた)社会条件から切り離すことはできず、過去の生物学が男性の視点に偏っていたことを指摘した{{Sfn|スターリング|1990|pp=311-320}}。 |
|||
==== フェミニスト心理学 ==== |
|||
{{仮リンク|フェミニスト心理学|en|Feminist psychology}}は、心理学の研究における男性中心主義を批判する形で登場した。従来の研究では男性のみが被験者として研究され、男性の視点のみが研究対象とされていたが、女性が心理学の博士号を取得するようになると、女性とその問題が研究対象として導入された。フェミニスト心理学は、社会的文脈・生活体験・質的分析を重視する<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last1=Worell|first1=Judith|title=Feminism in Psychology: Revolution or Evolution?|journal=The Annals of the American Academy of Political and Social Science|date=September 2000|volume=571|pages=183–96|url=http://www.utsc.utoronto.ca/~pchsiung/summer/SCMEDIA/Worell.pdf |archive-url=https://web.archive.org/web/20140714173114/http://www.utsc.utoronto.ca/~pchsiung/summer/SCMEDIA/Worell.pdf |archive-date=2014-07-14 |url-status=live|access-date=2024-07-12|doi=10.1177/0002716200571001013|jstor=1049142}}</ref>。 |
|||
== 文化 == |
|||
{{main|en:Feminism in culture}} |
|||
=== デザイン === |
|||
[[インダストリアルデザイン]]・[[グラフィックデザイン]]・[[ファッションデザイン]]といった分野には、フェミニストの長い活動の歴史がある。これらの活動では、美、DIY、フェミニンなどのアプローチや、コミュニティベースのプロジェクトといったテーマが探求されてきた<ref>{{Cite book2 |df=ja |last1=Prochner|first1=Isabel| title=Feminist Contributions to Industrial Design and Design for Sustainability Theories and Practices |date=2019 |url=https://papyrus.bib.umontreal.ca/xmlui/handle/1866/21680}}{{page needed|date=2024-10-16}}</ref>。近年の研究では、インダストリアルデザインにおけるフェミニストの視点が、どのようにポジティブな変化を促し、デザインの中での不平等を特定して社会的に持続可能で草の根のデザインの解決策を導くかが探求されている<ref>{{Cite conference |df=ja |last1=Prochner |first1=Isabel |last2=Marchand |first2=Anne |date=2018-06-28 |title=Learning from Feminist Critiques of and Recommendations for Industrial Design |url=https://dl.designresearchsociety.org/drs-conference-papers/drs2018/researchpapers/54 |conference=DRS2018: Catalyst |volume=2 |doi=10.21606/drs.2018.355 |isbn=9781912294275 |chapter=Learning from Feminist Critiques of and Recommendations for Industrial Design |s2cid=150913753 |chapter-url=https://doi.org/10.21606/drs.2018.355}}</ref>。 |
|||
=== ビジネス === |
|||
フェミニストの活動家は、書店・法律事務所・医療施設・出版社・信用組合・ホテル・バーといった様々な{{仮リンク|フェミニストビジネス|en|Feminist businesses}}を立ち上げてきた{{Sfn|デラップ|2023|pp=140-146}}。これらのビジネスは、1970年代、1980年代、1990年代の第二波・第三波フェミニズムの一環として発展してきた{{sfn|Echols|1989|pp=269–278}}。これらの試みの中では、資本主義的な市場の内部でできるフェミニズム的なエンパワメントには限界があることの指摘がなされることもあった{{Sfn|デラップ|2023|pp=140-146}}。 |
|||
=== 視覚芸術 === |
|||
[[フェミニズムアート運動]]は、フェミニズムの発展にともない、1960年代に始まり、1970年代を通じて盛んになったもので、「戦後において最も影響力のあった国際的な運動」と称され、「過去40年間にわたるアート制作とアート批評において、最も広い変革をもたらした」とされることもある<ref name=Gopnik>{{Cite news2 |df=ja |url=https://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/04/20/AR2007042000400.html |title=What Is Feminist Art? |author=Blake Gopnik |date=2007-04-22 |newspaper=The Washington Post |access-date=2011-12-03}}</ref>。視覚芸術へのフェミニストのアプローチは、{{仮リンク|サイバーフェミニズム|en|cyberfeminism}}や[[ポストヒューマン]]の動きによって近年発展し、現代の女性アーティストがジェンダー・ソーシャルメディア・身体性といった概念に対する主張を明らかにしている<ref>{{Cite journal2 |df=ja | last=Ferrando | first=Francesca |title = A feminist genealogy of posthuman aesthetics in the visual arts|year = 2016 | journal = Palgrave Communications|volume=2| pages=16011 |number=16011|doi=10.1057/palcomms.2016.11|doi-access=free}}</ref>。 |
|||
また、従来は男性向けとされた[[コンピュータゲーム]]も、近年はフェミニズムの影響を受けており、女性が活躍する作品や、女性差別や人種差別を扱う作品、[[性的少数者]]が登場する作品なども増えている{{Sfn|近藤|2024|p=7}}。近藤銀河は、ゲームをプレイすることは、ゲーム世界でのジェンダー・ロールの規範に乗って行動することであり、その規範の実践とその失敗を通して、規範の外にある生の可能性を見い出せると指摘する{{Sfn|近藤|2024|pp=10-11}}。 |
|||
=== 文学 === |
|||
[[File:Butler signing.jpg|thumb|[[オクティヴィア・E・バトラー]]。フェミニストSF作家。]] |
|||
フェミニズムは、フェミニストの小説・ノンフィクション・詩などを生み出し、女性の書き手に対する新たな関心を引き起こした{{Sfn|Blain|1990|vii–x}}。女性の著作に対して関心が広がった背景には、文学における「正典」が拡張されたことがあり、ポストコロニアル文学・ゲイやレズビアンの文学・有色人種の著作・労働者の著作、また他の周縁化されてきた集団の創作物への関心が高まったことにより、「文学」とされる範囲が大幅に拡大し、それまで「文学」とされなかった児童文学・日記・書簡・旅行記も現在では学術的な関心の対象となっている{{Sfn|Blain|1990|vii–x}}<ref>{{cite book2 |df=ja |editor1-last=Buck |editor1-first=Claire |title=The Bloomsbury Guide to Women's Literature |publisher=Prentice Hall |year=1992 |page=vix}}</ref><ref>{{cite book2 |df=ja |last=Salzman |first=Paul |chapter=Introduction |title=Early Modern Women's Writing |publisher=Oxford UP |year=2000 |pages=ix–x}}</ref>。 |
|||
エリース・レイ・ヘルフォードによれば、[[サイエンス・フィクション]]とファンタジーは、特に理論と実践の橋渡しとして、フェミニズム思想において重要な役割を果たしている<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Helford, Elyce Rae |editor-first=Gary |editor-last=Westfahl |title=The Greenwood Encyclopedia of Science Fiction and Fantasy |chapter=Feminist Science Fiction |year=2005 |publisher=Greenwood Press |isbn=978-0-300-04854-4 |pages=[https://archive.org/details/feministcompanio00blai/page/289 289–291] |chapter-url=https://archive.org/details/feministcompanio00blai/page/289 }}</ref>。特に[[フェミニストSF]]は、ジェンダーを理解する際の社会的構築の役割を探るために、大学レベルで教えられることがある<ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1207/s15328023top1703_17 |title=Using Science Fiction to Teach the Psychology of Sex and Gender |year=1990 |last1=Lips |first1=Hilary M. |journal=Teaching of Psychology |volume=17 |issue=3 |pages=197–98|s2cid=145519594 }}</ref>。 |
|||
[[File:Roswitha of Gandersheim.jpg|thumb|[[ロスヴィータ]]。ドイツ語圏初の女性作家、初の女性歴史家、初のフェミニスト劇作家<ref>{{Cite web|url=https://www.encyclopedia.com/women/encyclopedias-almanacs-transcripts-and-maps/hrotsvitha-gandersheim-c-935-1001|title=Hrotsvitha of Gandersheim (C. 935–1001) | Encyclopedia.com|website=www.encyclopedia.com|accessdate=2024-07-31}}</ref>。]] |
|||
フェミニズムに関するノンフィクションは、女性の生の経験における懸念を表現する上で重要な役割を果たしてきた。たとえば、[[マヤ・アンジェロウ]]の『歌え、翔べない鳥たちよ』は、アメリカで育った黒人女性が経験する特有の人種差別や性差別を表現し、大きな影響を与えた<ref>{{Cite web|url=https://feminisminindia.com/2018/08/10/i-know-why-the-caged-bird-sings-review-maya-angelou/|title=I Know Why The Caged Bird Sings: Angelou's Quest to Truth and Power|last=Shah|first=Mahvish|date=2018|website=Feminism in India|accessdate=2024-10-16}}</ref>。さらに、多くのフェミニズム運動は、詩をフェミニズムの思想を公衆に伝える手段として取り入れ、詩集やアンソロジー、公開朗読を通じてその思想を伝えてきた<ref>{{Cite web|url=https://www.poetryfoundation.org/articles/144696/a-change-of-world|title=A Change of World|last=Poetry Foundation|date=29 November 2018|website=Poetry Foundation|accessdate=2024-10-16}}</ref>。 |
|||
また、過去に書かれた女性の作品は、女性がかつてどのように生きていたかを語り、彼女が持っていた力や、彼女がコミュニティに与えた影響を示すために、フェミニズムの中で活用されている<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last=Case|first=Sue-Ellen|date=December 1983|title=Re-Viewing Hrotsvit|journal=Theatre Journal|volume=35|issue=4|pages=533–542|doi=10.2307/3207334|jstor=3207334}}</ref>。たとえば、女性文学の歴史において重要な人物とされるのが、ドイツの女性詩人の[[ロスヴィータ]](935–973)で、中世において女性の視点から女性の生活に言及した数少ない書き手の一人である<ref>{{Cite journal2 |df=ja |last=Frankforter|first=A. Daniel|date=February 1979|title=Hroswitha of Gandersheim and the Destiny of Women|journal=The Historian|volume=41|issue=2|pages=295–314|doi=10.1111/j.1540-6563.1979.tb00548.x|issn=0018-2370}}</ref>。 |
|||
=== 音楽 === |
|||
[[File:Billie Holiday, Downbeat, New York, N.Y., ca. Feb. 1947 (William P. Gottlieb 04251).jpg|thumb|right|upright=0.9|1947年、ニューヨーク。アメリカ人ジャズシンガー・ソングライターの[[ビリー・ホリデイ]]。]] |
|||
女性音楽は、女性によって作られ、女性のために、そして女性について歌われた音楽を指す{{sfn|Lont|1992|p=242}}。このジャンルは、第二波フェミニズムの音楽的な表現として<ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1525/jams.2001.54.3.692 |title=Girls with Guitars and Other Strange Stories |year=2001 |last1=Peraino |first1=Judith A. |journal=Journal of the American Musicological Society |volume=54 |issue=3 |pages=692–709 |url=http://business.highbeam.com/437059/article-1G1-86048837/girls-guitars-and-other-strange-stories|archive-url=https://web.archive.org/web/20121108161237/http://business.highbeam.com/437059/article-1G1-86048837/girls-guitars-and-other-strange-stories|url-status=dead|archive-date=2012-11-08}}</ref>、また労働運動・公民権運動・平和運動の一環として生まれた{{sfn|Mosbacher|2002}}。この運動は、{{仮リンク|クリス・ウィリアムソン|en|Cris Williamson}}、{{仮リンク|メグ・クリスチャン|en|Meg Christian}}、{{仮リンク|マーギー・アダム|en|Margie Adam}}などのレズビアン、{{仮リンク|バーニス・ジョンソン・リーガン|en|Bernice Johnson Reagon}}といったアフリカ系アメリカ人の女性活動家、そして平和活動家の{{仮リンク|ホリー・ニア|en|Holly Near}}によって始められた{{sfn|Mosbacher|2002}}。加えて、女性音楽は、演奏者にとどまらず、スタジオミュージシャン・プロデューサー・サウンドエンジニア・プロモーター・フェス主催者など、音楽業界全体にわたる女性の活躍を含む{{sfn|Lont|1992|p=242}}。 |
|||
1970年代、[[音楽学]]の中で女性作曲家や演奏家が発見され、フェミニズムの視点から音楽の「正典」・ジャンル・時代区分などの概念が見直され始め、伝統的な音楽史において女性音楽家がどのように位置づけられるべきかという問いが投げかけられるようになった{{sfn|Beard|2005}}。1980年代には、フェミニズムは[[音楽学]]の主要な関心対象となった{{sfn|Beard|2005}}。1980年代から1990年代にかけてこの流れは続き、{{仮リンク|スーザン・マクレアリー|en|Susan McClary}}、{{仮リンク|マーシャ・シトロン|en|Marcia Citron}}などの音楽学者が、音楽において女性が周縁化された文化的理由を考察し始めた{{sfn|Beard|2005}}。ここでは、ジェンダー化された言説としての「音楽」、プロフェッショナリズム、女性音楽の受容、音楽制作の場の検討、女性の資産や教育との関係、女性アイデンティティに関連する大衆音楽研究、音楽分析における家父長的な思想、そしてジェンダーと差異の概念などが検討された{{sfn|Beard|2005}}。 |
|||
=== 映画 === |
|||
{{main|フェミニスト映画理論}} |
|||
[[File:Faten Hamama 1962.jpg|thumb|272x272px|[[ファーティン・ハママ]] (1931–2015)。エジプト映画の伝説。中東やアフリカの多くの女性に影響を与えた<ref>{{Cite web |title=Women's Activism NYC |url=https://www.womensactivism.nyc/stories/9713 |access-date=2023-12-15 |website=www.womensactivism.nyc}}</ref><ref>{{Cite web |date=2019-05-27 |title=Remembering Films by Faten Hamama Championing Women's Rights {{!}} Egyptian Streets |url=https://egyptianstreets.com/2019/05/27/remembering-4-films-by-faten-hamama-championing-womens-rights/ |access-date=2023-12-15 |language=en-US}}</ref>。]] |
|||
フェミニスト映画は、フェミニストの視点を主張・描写するもので、1960年代後半から1970年代初頭にかけてのフェミニスト映画理論の発展とともに台頭した{{sfn|Hayward|2006|p=134-135}}。1960年代、政治的議論や性解放の中で急進化した女性は、しかし急進主義が女性にとって実質的な変化をもたらさなかったことを受けて、主流の映画がどのように女性を描いているかを分析することに取り組んだ{{sfn|Hayward|2006|p=134-135}}。1972年、アメリカとイギリスで最初のフェミニスト映画祭が開催され、最初のフェミニスト映画雑誌「Women & Film」が創刊された。この時期の先駆者には、{{仮リンク|クレア・ジョンストン|en|Claire Johnston (film theorist)}}や{{仮リンク|ローラ・マルヴィ|en|Laura Mulvey}}が含まれ、エディンバラ映画祭で女性向けイベントを組織した<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Erens|first=Patricia Brett|title=Issues in Feminist Film Criticism|publisher=Wiley & Sons|year=1991|isbn=9780253206107|pages=270}}</ref>。 |
|||
フェミニスト映画の制作には、二つの異なるアプローチがあるとされる。一つは「[[脱構築]]」で、主流の映画の慣例を分析し解体することを狙い、観客と主流の映画の関係を変えることを目指す。もう一つは、「フェミニスト・カウンターカルチャー」で、これは女性的な表現を実体化し、女性特有の映画言語を探求するものである<ref>{{cite book2 |df=ja |editor1-last=Kuhn |editor1-first=A. |editor2-last=Radstone |editor2-first=S. |title=Women's Companion to International Film |url=https://archive.org/details/womenscompaniont00kuhn |url-access=registration |publisher=Virago |year=1990 |page=[https://archive.org/details/womenscompaniont00kuhn/page/153 153]|isbn=9781853810817 }}</ref>。 |
|||
== 政治 == |
|||
[[File:Rose Cohen IMG 0437 1024.jpg|thumb|upright=0.75|{{仮リンク|ローズ・コーエン (フェミニスト)|en|Rose Cohen (feminist)|label=ローズ・コーエン}}。イギリス出身のサフラジスト。1937年にスターリンの[[大粛清]]で処刑された。]] |
|||
フェミニズムは、20世紀の主要な政治運動と複雑な相互作用を持っていた。 |
|||
=== 社会主義 === |
|||
19世紀後半以降、社会主義と連携するフェミニストがいる一方で、社会主義イデオロギーは女性の権利に対する配慮が不十分であると批判するフェミニストもいた。1907年、シュトゥットガルトで{{仮リンク|国際社会主義女性会議|en|International Socialist Women's Conferences}}が開かれ、参政権は階級闘争の道具であると説明された。[[クララ・ツェトキン]]は、女性問題の根本的な解決を可能にする唯一の社会主義的秩序を築くために、女性参政権が必要であると説いた{{sfn|Duby|1994|p=600}}<ref>{{cite book2 |df=ja |author=Badia, Gilbert |title=Zetkin. Femminista Senza Frontiere |year=1994 |publisher=University of Michigan. |isbn=978-88-85378-53-7 |page=320}}</ref>。また、イギリスでは、女性運動は[[労働党 (イギリス)|労働党]]と連携した。[[スペイン内戦]]では、[[ドロレス・イバルリ]]が[[スペイン共産党]]を率い、女性の平等な権利を支持したが、前線での戦闘には反対したため、アナーカ・フェミニストの{{仮リンク|ムヘレス・リブレス|en|Mujeres Libres}}と対立した<ref>{{Cite book2 |df=ja |author=Ibárruri, Dolores |title=Speeches & Articles, 1936–1938 |year=1938 |publisher=University of Michigan |page=263}}</ref>。 |
|||
20世紀初頭のアイルランドのフェミニストに、[[サフラジェット]]で{{仮リンク|アイルランド共和主義|en|Irish Republicanism}}・社会主義の立場をとる[[コンスタンツ・マルキエビッチ]]がいる。彼女は1918年、イギリス庶民院で初めて選出された女性となったが、{{仮リンク|自制主義|en|abstentionism}}から議席には就かなかった<ref>{{cite web|url=http://www.irishresistancebooks.com/internment/intern6.htm|title=Internment – Women Internees 1916–1973|author=John McGuffin|year=1973| access-date = 2009-03-22}}</ref>。彼女は1916年の[[イースター蜂起]]の際、アイルランド指導者[[ジェームズ・コノリー]]によって率いられた[[アイルランド市民軍]]の指揮官でもあった<ref>{{cite web|last1=Bunbury|first1=Turtle|title=Dorothea Findlater – One Hundred Years On|url=http://www.turtlebunbury.com/interviews/interviews_misc/interviews_misc_dorotheafindlater.html|access-date=2016-01-05|quote=Perhaps the most awkward arrest Wheeler made was Countess Markievicz, his wife's first cousin.}}</ref>。 |
|||
=== ファシズム === |
|||
[[File:Feministas en lucha anti Pinochet (de Kena Lorenzini).jpg|thumb|チリのフェミニストが[[アウグスト・ピノチェト]]政権に抗議する様子。]] |
|||
ファシズムのジェンダー観は、兵士としての男性・母親としての女性を強調することが多く、家父長制に従属する良妻賢母が理想的な女性とされ、女性の政治参加や家庭外労働は制限された{{Sfn|山手|p=176}}。こうした観念は、伝統的なカトリック教会の価値観とも合致するものであった{{Sfn|山手|p=176}}。[[ファシスト・マニフェスト]]には女性参政権実現が盛り込まれており、1922年にムッソリーニのファシズム政権が成立した後、1925年に一部の女性に選挙権が認められたが、すぐに廃止され、実現したのはファシズム崩壊後の1946年であった{{Sfn|山手|p=176}}。 |
|||
{{see also|ナチスの女性政策}} |
|||
シプリアン・ブラマイレスは、フェミニストの中には[[アドルフ・ヒトラー]]の台頭に反対した者もいたが、フェミニズムとナチス運動の関係は複雑だと述べている。ナチスは家父長制社会と女性の役割を賛美しながらも、女性の雇用の平等を認めるとも主張した{{sfn|Blamires|2006|pp=232-233}}。しかし、ヒトラーとムッソリーニはフェミニズムに反対すると宣言し{{sfn|Blamires|2006|pp=232-233}}、1933年にナチズムがドイツで台頭して以降、それ以前にフェミニストが勝ち取った政治的権利や経済的機会は失われた{{sfn|Duby|1994|p=600}}。ジョルジュ・デュビらは、ファシズム社会は実際には階層的で、男性の力を強調し、女性は従属的な地位に置かれたと記す{{sfn|Duby|1994|p=600}}。ブラマイレスはまた、1960年代以降のネオファシズムはフェミニズムに敵対的で、女性が「従来の役割」を受け入れるべきだと主張するとも述べる{{sfn|Blamires|2006|pp=232-233}}。 |
|||
=== 公民権運動と反人種差別 === |
|||
1849年、アメリカのセネカフォールズ会議で[[エリザベス・キャディ・スタントン]]が女性参政権獲得に向けた演説をした際、[[奴隷解放運動]]を行っていた[[フレデリック・ダグラス]]はこれに賛同する演説を行うなど、黒人の参政権獲得と女性の参政権獲得の運動が協力関係にある時期もあった{{Sfn|シュラー|2023|pp=30-32}}。しかし、南北戦争後、黒人男性に選挙権が与えられたものの、女性には選挙権がないままであったことに対し、スタントンは「黒人の投票権か、それとも白人女性の投票権か」という主張から白人男性に訴えかけ、徐々に人種差別的な主張に傾いていった{{Sfn|シュラー|2023|pp=35-36}}。これに対して、{{仮リンク|フランシス・E・W・ハーパー|en|Frances Ellen Watkins Harper}}は白人女性の特権性を指摘し、スタントンの議論は性差別だけに着目し人種差別を矮小化しているとして批判した{{Sfn|シュラー|2023|pp=37-39}}。このハーパーの批判は、後に[[インターセクショナリティ]]の考え方に発展していくこととなった{{Sfn|シュラー|2023|pp=37-39}}。 |
|||
=== 新自由主義 === |
|||
[[新自由主義]]は、特に[[グローバルサウス]]において、女性労働力に対する多大な悪影響を与えているとして、フェミニスト理論から批判されている{{Sfn|Peterson|2014|p=177}}。非工業化国の女性の経験を分析すると、近代化政策によって有害な影響がもたらされることがあり、これは開発がすべての人々に利益をもたらすという典型的な主張を反証するものである{{Sfn|Peterson|2014|p=175}}。 |
|||
新自由主義の支持者は、女性の労働力参加を増やすことで経済的進歩が加速すると主張するが、フェミニスト批評家は、女性の参加だけでジェンダー平等が進むわけではないと批判する{{sfn|Elias|2014|pp=186–198}}。新自由主義は、女性的とされる労働を低く評価し、男性・男性性の構造的な優位を作るため、家庭や職場における女性従属という重要な問題に対応していないとされる{{Sfn|Peterson|2014|p=176}}。グローバルサウスにおける雇用者は、女性的労働において、要求が少なく、従順で低賃金を受け入れる労働者を求める{{Sfn|Peterson|2014|p=180}}。また、雇用者は女性を「副収入を得る者」とみなすことで、賃金を低くし、訓練や昇進を怠ることを正当化することが多い{{sfn|Elias|2014|p=189}}。 |
|||
== 社会への影響 == |
|||
[[File:CEDAW Participation.svg|thumb|upright=2|[[女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約]]への参加国。 {{legend|#00aa00|署名・批准}}{{legend|#008000|加入または継承}}{{legend|#008080|条約を遵守する未承認国家}}{{legend|#eeee00|署名のみ}}{{legend|#ff1111|未署名}}]] |
|||
フェミニズム運動は、社会に多くの変化をもたらした。これには、女性参政権の獲得、教育へのより広いアクセス、男性と比較してより平等な賃金、離婚訴訟を起こす権利、妊娠に関する個別の決定を行う権利(避妊や中絶へのアクセスを含む)、そして財産を所有する権利が含まれる{{sfn|Messer-Davidow|2002}}。特に第二波フェミニズムによって、[[性別役割分業]]等の性差別の撤廃や、女性の性と身体の自己決定権が掲げられて運動がなされ、国連の[[世界女性会議]]・[[女性差別撤廃条約]]などの成果が上がったが、現代にも性差別は根強く存在している{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。[[江原由美子]]は、第二波以後のフェミニズムによって起きた社会の変化と、変化が滞っている点について、2022年時点の大きな傾向を以下のようにまとめている。 |
|||
# 各国での性別役割分業意識が変革された。性別役割分業意識が比較的高いとされる日本においても、「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という考え方に反対する人が多数派となった{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
# 各国で女性の大学進学率が高くなり、女性が上回る国もある{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
# 女性の就業率は各国で上昇したが、国によって差が大きい{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
# 管理職女性比率・女性賃金率も上昇傾向にあるが、国によって差が大きい([[男女の賃金差]])。男性と全く同じレベルの管理職女性比率・女性賃金率を実現した国はない{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}{{Efn|日本の賃金格差は、先進国で最下位レベルで、正社員女性は男性の75%ほどの賃金である<ref>{{Cite web|和書|title=主要先進国で日本の「男女間賃金格差」は最下位!いまだに“女だから稼げない”っておかしくない?|url=https://woman-type.jp/wt/feature/15744|website=Woman type[ウーマンタイプ] |accessdate=2020-05-13}}</ref>。また、2014年の新卒採用において、総合職で採用された学生のうち女子学生は20%であった<ref>{{Cite web|和書|title=平成26年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況<速報版>を公表します |url=https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000089473.html |website=www.mhlw.go.jp |accessdate=2020-05-13}}</ref>。}}。 |
|||
# 女性の政治参加率も上昇傾向だが、国によって大きな差があり、特に日本は低い{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}{{Efn|日本における[[2015年]]の[[衆議院]]の女性議員割合は9.5%であり、[[先進国]]中では最も低い水準となっている<ref>https://web.archive.org/web/20150526191738/http://www.sankei.com/world/news/150305/wor1503050043-n1.html 「女性議員比率 日本9・5%で113位 なお先進国で最低水準」 産経ニュース 2015年3月5日 2015年5月26日閲覧</ref>。なお、2000年から2005年度までの[[列国議会同盟|IPU]]の調査によれば、地域別でみると[[欧州連合|EU]]の31.0%がトップ、[[南北アメリカ]]18.4%、[[アジア]]15.5%、サハラ以南アフリカ14.9%、[[アラブ諸国]]6.0%となっている<ref>[https://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-03-05/06_01.html 日本共産党「女性国会議員―世界で15%超える」『しんぶん赤旗』2005年3月5日]</ref>。}}。 |
|||
# 男性の家事負担・育児分担の割合も上昇傾向だが、国によって差が大きい{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
# 女性の人権については、悪化している国としてアフガニスタン・南スーダン・シリアがある{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
# [[女性に対する暴力|女性への性暴力件数]]については、日本では減少の傾向は見い出せない{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
# 性的マイノリティへの差別や人権侵害も多く、同性愛が犯罪とされる国は76か国あり、メディアでの偏見も蔓延している{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
以上を踏まえて、江原は、ジェンダー平等はいまだに実現していないが、社会調査の結果からジェンダー平等の実現を望む人が多くいることは確かで、フェミニズムは現代も必要とされていると述べる{{Sfn|江原|2022|pp=14-17}}。 |
|||
=== 言語 === |
|||
{{仮リンク|ジェンダー・ニュートラルな言語|en|Gender-neutral language}}を支持する人々は、性別特有の言語の使用がしばしば男性の優越を暗示し、不平等な社会状態を反映すると主張する<ref>{{Cite book2 |df=ja |last1=Miller |first1=Casey |last2=Swift |first2=Kate |year=1988 |title=The Handbook of Nonsexist Writing |url=https://archive.org/details/handbookofnonsex00millrich |url-access=registration |publisher=Harper & Row |location=N.Y.C. |isbn=978-0-06-181602-4 |pages=[https://archive.org/details/handbookofnonsex00millrich/page/45 45], 64, 66}}</ref>。たとえば、『The Handbook of English Linguistics』は、男性代名詞や、性別特有の職業名は、英語の言語慣習が歴史的に男性を人類の典型として扱ってきた例であるとする<ref>{{cite book2 |df=ja |year=2006 |editor1-last=Aarts |editor1-first=Bas |editor2-last=McMahon |editor2-first=April |title=The Handbook of English Linguistics |location=Malden, Mass. |publisher=Blackwell |isbn=978-1-4051-1382-3}}{{page needed|date=2024-10-16}}</ref>。 |
|||
== 社会の反応 == |
|||
フェミニズムに対して、さまざまな人々が反応しており、その支持者と批判者には男女ともに含まれている。アメリカの大学生の間では、男女ともにフェミニストを自称するよりも、フェミニズムの理念を支持する傾向が強い<ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1111/j.1471-6402.2004.00159.x |title=Disavowing Social Identities: What It Means When Women Say, 'I'm Not a Feminist, But ...' |year=2004 |last1=Zucker |first1=Alyssa N. |journal=Psychology of Women Quarterly |volume=28 |issue=4 |pages=423–35|s2cid=144528255 }}</ref><ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1023/A:1007044802798 |year=2000 |last1=Burn |first1=Shawn Meghan |last2=Aboud |first2=Roger |last3=Moyles |first3=Carey |title=The Relationship Between Gender Social Identity and Support for Feminism |journal=Sex Roles |volume=42 |issue=11/12 |pages=1081–89|s2cid=17743495 }}</ref><ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1007/BF00289954 |title=New Wave or Second Stage? Attitudes of College Women Toward Feminism |year=1987 |last1=Renzetti |first1=Claire M. |journal=Sex Roles |volume=16 |issue=5–6 |pages=265–77|s2cid=144101128 }}</ref>。アメリカのメディアはフェミニズムを否定的に描写する傾向があり、フェミニストは「一般女性の日常的な仕事やレジャー活動と結びつくことが少ない」とされる<ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1111/j.1460-2466.2002.tb02540.x |title=The Framing of Feminists and Feminism in News and Public Affairs Programs in U.S. Electronic Media |year=2002 |last1=Lind |first1=Rebecca Ann |last2=Salo |first2=Colleen |journal=Journal of Communication |volume=52 |pages=211–28}}</ref><ref>{{Cite journal2 |df=ja |doi=10.1111/j.1471-6402.2007.00348.x |title=Effects of Stereotypes About Feminists on Feminist Self-Identification |year=2007 |last1=Roy |first1=Robin E. |last2=Weibust |first2=Kristin S. |last3=Miller |first3=Carol T. |journal=Psychology of Women Quarterly |volume=31 |issue=2 |pages=146–56|s2cid=145716135 }}</ref>。しかし、最近の研究によると、自らフェミニストを名乗る人々やさまざまな形態のフェミニズムに関する議論に触れることで、自分自身もフェミニズムに共感を持つようになる人が増えていることが示されている<ref>{{Cite journal2 |df=ja | last1 = Moradi | first1 = B. | last2 = Martin | first2 = A. | last3 = Brewster | first3 = M. E. | year = 2012 | title = Disarming the threat to feminist identification: An application of personal construct theory to measurement and intervention | journal = Psychology of Women Quarterly | volume = 36 | issue = 2| pages = 197–209 | doi = 10.1177/0361684312440959 | s2cid = 145166218 }}</ref>。 |
|||
=== 男性と男性性 === |
|||
フェミニズム理論は、男性性の社会的構築と、それがジェンダー平等の目標に及ぼす影響を分析してきた。ここでは、男性性が社会的に構築されることによって、男性が攻撃性や競争と結びつけられ、家父長制的で不平等なジェンダー関係を強化するとされ、フェミニズムによって問題視される{{sfn|Faludi|1992}}<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Tong |first=Rosemarie Putnam |title=Feminist Thought: A More Comprehensive Introduction |location=Boulder, Colo. |publisher=Westview Press |edition=2nd |year=1998 |isbn=978-0-8133-3295-6 |page=70}}</ref>。フェミニズム理論によれば、家父長的な文化は、男性の「可能な男性性の形態」を制限し、結果的にその人生の選択肢を狭めている{{sfn|Gardiner|2002|pp=96, 153}}。 |
|||
フェミニズムにおける男性の参加は、一般的にはフェミニストによって奨励され、ジェンダー平等を社会全体で達成するための重要な戦略とみなされる{{sfn|フックス|2020|pp=29-30}}。過去にはフェミニストになれるのは女性だけだと主張されることもあったが、歴史的に見ると、男性もフェミニストとして積極的に活動し、影響を及ぼしてきた{{Sfn|デラップ|2023|pp=62-63}}。現在のフェミニズム理論と男性性研究において広く承認されているのは、男女が協力してフェミニズムの大目標を達成すべきというものである{{sfn|Gardiner|2002|pp=96, 153}}。 |
|||
=== プロフェミニズム === |
|||
{{仮リンク|プロフェミニズム|en|Pro-feminism}}とは、支持者自身がフェミニスト運動の一員であることを明らかにせずに、フェミニズムを支持することである。この用語は、主にフェミニズムを積極的に支持する男性に対して使われることが多い。プロフェミニストの男性の活動には、学校での少年や若い男性への暴力防止教育、職場でのセクハラに関するワークショップの提供、地域教育キャンペーンの実施、そして暴力を行う男性へのカウンセリングが含まれ、フェミニストや女性支援サービスと協力して行われることもある<ref>{{Cite book2 |df=ja |last1=Lingard |first1=Bob |last2=Douglas |first2=Peter |title=Men Engaging Feminisms: Pro-Feminism, Backlashes and Schooling |year=1999 |publisher=Open University Press |location=Buckingham, England |isbn=978-0-335-19818-4 |page=192}}</ref>。 |
|||
=== 反フェミニズムとフェミニズム批判 === |
|||
[[反フェミニズム]]とは、フェミニズムに対して部分的または全体的に反対することである<ref>{{Cite book2 |df=ja |last1=Simpson |first1=John A. |title=The Oxford English Dictionary |last2=Weiner |first2=Edmund S.C. |publisher=Clarendon Press Oxford University Press |year=1989 |isbn=978-0-19-861186-8 |editor-last=Simpson |editor-first=John A. |edition=2nd |location=Oxford New York |chapter=Anti-feminist |editor-last2=Weiner |editor-first2=Edmund S. C. }}{{page needed|date=2024-10-16}}</ref>。19世紀には、反フェミニズムは主に女性参政権への反対に焦点を当てていた。後に、高等教育機関への女性の進出に反対する者は、教育が女性にとって過度の身体的負担であると主張した。他のアンチフェミニストは、女性の労働市場への進出や労働組合への参加、陪審員への選出、避妊や性的自己決定権の取得に反対した<ref>{{cite book2 |df=ja |chapter-url=https://books.google.com/books?id=jWj5OBvTh1IC&pg=PA35 |chapter=Antifeminism |first=Michael |last=Kimmel | editor-last1 = Kimmel | editor-first1 = Michael | editor-last2 = Aronson | editor-first2 = Amy | title = Men and Masculinities a Social, Cultural, and Historical Encyclopedia | pages = 35–37 | publisher = ABC-CLIO | location = Santa Barbara, California | year = 2004 | isbn = 978-1-57607-774-0 }}</ref>。 |
|||
反フェミニズムの立場を取る理由としては、伝統的な価値観や宗教的信念に反するからという場合がある。例えば、離婚や未婚の女性を受け入れることが有害であるとか、男性と女性は本質的に異なるから社会における[[ジェンダー・ロール]]を維持すべきだと主張されることがある<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Lukas |first=Carrie |chapter-url=https://archive.org/details/politicallyincor0000luka/page/75 |title=The politically incorrect guide to women, sex, and feminism |publisher=Regency Publishing |year=2006 |isbn=978-1-59698-003-7 |editor-last=Lukas |editor-first=Carrie |location=Washington, DC Lanham, Maryland |page=[https://archive.org/details/politicallyincor0000luka/page/75 75] |chapter=Marriage: happier ever after }}</ref><ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Kassian |first=Mary |title=The feminist <del>mystique</del> mistake: the radical impact of feminism on church and culture |publisher=Crossway Books |year=2005 |isbn=978-1-58134-570-4 |editor-last=Kassian |editor-first=Mary |edition=2nd |location=Wheaton, Illinois |page=10 |chapter=Introduction: the tsunami of feminism}}</ref>。他にも、女性の労働・政治への進出や参政権によって、男性支配が弱まることに反対する人もいる<ref>{{Cite news2 |df=ja |last=Gottfried |first=Paul |title=The Trouble with Feminism |url=https://www.lewrockwell.com/2001/04/paul-gottfried/the-trouble-with-feminism/ | work = LewRockwell.com |publisher= Lew Rockwell |date= 21 April 2001 |access-date=2006-09-30}}</ref><ref>{{Cite book2 |df=ja |last=al-Qaradawi |first=Yusuf |title=Islamism: a documentary and reference guide |publisher=Greenwood Press |year=2008 |isbn=978-0-313-33856-4 |editor-last=Calvert |editor-first=John |location=Westport, Conn |page=62 |chapter=Women and family in Islamist discourses: 'When Islam prohibits something, it closes all the avenues of approach to it'}}</ref>。ダフネ・パタイと{{仮リンク|ノレッタ・コルトジェ|en|Noretta Koertge}}は、「反フェミニズム」という言葉が、フェミニズムに関する学術的議論を黙らせるために使われていると主張する<ref>{{Cite book2 |df=ja |last=Patai |first=Daphne |title=Professing feminism: education and indoctrination in women's studies |publisher=Lexington Books |year=2003 |isbn=978-0-7391-0455-2 |editor-last=Patai |editor-first=Daphne |location=Lanham, Maryland |pages=278–79 |chapter=Policing the academy: {{'}}''Anti-feminist intellectual harassment''{{'}} |editor-last2=Koertge |editor-first2=Noretta}}</ref><ref>{{Cite journal2 |df=ja | last = Danowitz Sagaria | first = Mary Ann | title = Review: Reviewed Work: ''Antifeminism in the Academy'' by Vévé Clark, Shirley Nelson Garner, Margaret Higonnet, Ketu H. Katrak | journal = The Journal of Higher Education | volume = 70 | issue = 1 | pages = 110–12 | doi = 10.2307/2649121 | jstor = 2649121 | date = January 1999 }}</ref>。 |
|||
== 脚注 == |
== 脚注 == |
||
=== 注釈 === |
|||
{{脚注ヘルプ}} |
|||
{{Notelist|30em}} |
|||
;注釈 |
|||
{{notelist}} |
|||
=== 出典 === |
|||
<references group="注釈" /> |
|||
{{Reflist|20em}} |
|||
;出典 |
|||
{{Reflist|3}} |
|||
== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
||
=== 英語文献 === |
|||
* {{Cite book ja-jp|和書 |author=天野正子|authorlink=天野正子|title = 結衆・結社の日本史 |year = 2006 |chapter = 「婦人」から「女性」へ、そして「おんな=女」の結社へ |series = 結社の世界史 |publisher = 山川出版社 |editor=福田アジオ|editor-link=福田アジオ|isbn = 4-634-44410-0 |ref = harv }} |
|||
* {{Cite journal2 |df=ja |last=Gilligan |first=Carol |year=1977 |title=In a Different Voice: Women's Conceptions of Self and of Morality |journal=Harvard Educational Review |volume=47 |issue=4 |pages=481–517 |url=http://hepg.org/her-home/issues/harvard-educational-review-volume-47,-issue-4/herarticle/women-s-conceptions-of-self-and-of-morality_917 |access-date=2008-06-08 |doi=10.17763/haer.47.4.g6167429416hg5l0 |s2cid=146763094 |archive-date=2021-01-09 |archive-url=https://web.archive.org/web/20210109134048/https://www.hepg.org/her-home/issues/harvard-educational-review-volume-47,-issue-4/herarticle/women-s-conceptions-of-self-and-of-morality_917 |url-status=dead | issn = 0017-8055|ref={{Sfnref|Gilligan|1977}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = [[上野千鶴子]] |title = 家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平 |date = 2009年5月 |publisher = [[岩波書店]] |isbn = 978-4006002169 |series = [[岩波現代文庫]] }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |author=Walker, Alice |title=In Search of Our Mothers' Gardens: Womanist Prose |year=1983 |publisher=Harcourt Brace Jovanovich |location=San Diego |isbn=978-0-15-144525-7 |page=[https://archive.org/details/insearchofourmot00walk/page/397 397] |ref={{Sfnref|Walker|1983}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = 有限責任事業組合フリーターズフリー編 |title = フェミニズムはだれのもの?―フリーターズフリー対談集 |date = 2010年4月 |publisher = [[人文書院]] |isbn = 978-4409240861 }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Echols |first=Alice |title=Daring to Be Bad: Radical Feminism in America, 1967–1975 |year=1989 |publisher=University of Minnesota Press |location=Minneapolis |isbn=978-0-8166-1787-6 |url-access=registration |url=https://archive.org/details/daringtobebadrad0000echo |ref={{Sfnref|Echols|1989}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = [[上野千鶴子]] |title = 差異の政治学 新版 |date = 2015年11月 |publisher = 岩波書店 |isbn = 978-4006003340 |series = 岩波現代文庫 }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |author=Vance, Carole S. |title=Pleasure and Danger: Exploring Female Sexuality |year=1989 |publisher=Thorsons Publishers|isbn=978-0-04-440593-1 |ref={{Sfnref|Vance|1989}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = [[小川たまか]] |title = 「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。 |date = 2018年7月 |publisher = [[タバブックス]] |isbn = 978-4907053260 }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |author=Chodorow, Nancy |title=Feminism and Psychoanalytic Theory |year=1989 |publisher=Yale University Press |location=New Haven, Conn. |isbn=978-0-300-05116-2 |url=https://archive.org/details/feminismpsychoan00chod_0 |ref={{Sfnref|Chodorow|1989}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = [[上野千鶴子]] |title = 女ぎらい |date = 2018年10月 |publisher = [[朝日新聞出版]] |isbn = 978-4022619433 |series = [[朝日文庫]] }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Leidholdt |first1=Dorchen |last2=Raymond |first2=Janice G. |title=The Sexual Liberals and the Attack On Feminism |year=1990 |publisher=Pergamon Press |location=New York |isbn=978-0-08-037457-4 |ref={{Sfnref|Leidholdt|1990}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = [[チョ・ナムジュ]]、[[斎藤真理子]](翻訳) |title = 82年生まれ、キム・ジヨン |date = 2018年12月 |publisher = [[筑摩書房]] |isbn = 978-4480832115 }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |author=Blain, Virginia |author2=Clements, Patricia |author3=Grundy, Isobel |title=The Feminist Companion to Literature in English: Women Writers from the Middle Ages to the Present |year=1990 |publisher=Yale University Press |location=New Haven |isbn=978-0-300-04854-4 |url=https://archive.org/details/feministcompanio00blai/page/ |ref={{Sfnref|Blain|1990}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = [[栗田隆子]] |title = ぼそぼそ声のフェミニズム |date = 2019年5月 |publisher = [[作品社]] |isbn = 978-4861827518 }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Hansen |first1=Karen Tranberg |last2=Philipson |first2=Ilene J. |title=Women, Class, And the Feminist Imagination: A Socialist-Feminist Reader |year=1990 |publisher=Temple University Press |location=Philadelphia |isbn=978-0-87722-630-7 |url-access=registration |url=https://archive.org/details/womenclassfemini0000unse |ref={{Sfnref|Hansen|1990}} }} |
|||
*{{Cite |和書 |author = [[北村紗衣]] |title = お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門 |date = 2019年6月 |publisher = [[書肆侃侃房]] |isbn = 978-4863853652 }} |
|||
* {{Cite magazine2 |df=ja | last1 = Walker| first1 = Rebecca| title = Becoming the Third Wave| magazine = Ms. | pages = 39–41| issn = 0047-8318| oclc = 194419734| date = January 1992| url = http://www.msmagazine.com/spring2002/BecomingThirdWaveRebeccaWalker.pdf| access-date = 2018-02-21| archive-url = https://web.archive.org/web/20170115202333/http://www.msmagazine.com/spring2002/BecomingThirdWaveRebeccaWalker.pdf| archive-date = 2017-01-15| url-status=dead |ref={{Sfnref|Walker|1992}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Faludi |first=Susan |title=Backlash: The Undeclared War Against Women |year=1992 |publisher=Vintage |location=London |isbn=978-0-09-922271-2 |ref={{Sfnref|Faludi|1992}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Lont |first1=Cynthia |chapter=Women's Music: No Longer a Small Private Party |editor1-first=Reebee |editor1-last=Garofalo |title=Rockin' the Boat: Mass Music & Mass Movements |chapter-url=https://archive.org/details/rockinboatmassmu00garof |chapter-url-access=registration |location=Cambridge, Massachusetts |publisher=South End Press |year=1992 |isbn=978-0-89608-427-8 |ref={{Sfnref|Lont|1992}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Duby |first1=Georges |last2=Perrot |first2=Michelle |last3=Schmitt Pantel |first3=Pauline |title=A History of Women in the West |year=1994 |publisher=Belknap Press of Harvard University Press |location=Cambridge, Massachusetts |isbn=978-0-674-40369-7 |url=https://archive.org/details/historyofwomenin00gold/page/600 |ref={{Sfnref|Duby|1994}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |author1=Duggan, Lisa |author2=Hunter, Nan D. |title=Sex Wars: Sexual Dissent and Political Culture |year=1995 |publisher=Routledge |location=New York |isbn=978-0-415-91036-1 |url=https://archive.org/details/sexwarssexualdis0000dugg/page/1 |ref={{Sfnref|Duggan|1995}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Sommers |first=Christina Hoff |title=Who Stole Feminism? How Women Have Betrayed Women |year=1995 |publisher=Simon & Schuster |location=New York |isbn=978-0-684-80156-8 |page=[https://archive.org/details/whostolefeminism00chri/page/320 320] |ref={{Sfnref|Sommers|1995}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Levy |first=Peter |year=1998 |title=The Civil Rights Movement |publisher=Greenwood Press |location=Westport, Conn. |isbn=978-0-313-29854-7 |url=https://archive.org/details/civilrightsmovem00levy |ref={{Sfnref|Levy|1998}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Hill Collins |first=P. |title=Black Feminist Thought: Knowledge, Consciousness, And the Politics of Empowerment |url=https://archive.org/details/blackfeministtho0000coll |url-access=registration |location=New York |publisher=Routledge |year=2000 |pages=[https://archive.org/details/blackfeministtho0000coll/page/n308 308–335 |ref={{Sfnref|Hill Collins|2000}} }} |
|||
* {{Cite journal2 |df=ja |last=Weedon |first=Chris |title=Key Issues in Postcolonial Feminism: A Western Perspective |year=2002 |url=http://www.genderforum.org/issues/genderealisations/key-issues-in-postcolonial-feminism-a-western-perspective/ |journal=Gender Forum |issue=1 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20131203002056/http://www.genderforum.org/issues/genderealisations/key-issues-in-postcolonial-feminism-a-western-perspective/ |archive-date=2013-12-03 |ref={{Sfnref|Weedon|2002}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |author=Freedman, Estelle B. |title=No Turning Back: The History of Feminism and the Future of Women |year=2003 |publisher=Ballantine Books |isbn=978-0-345-45053-1 |page=[https://archive.org/details/noturningbackhis00free/page/464 464] |url=https://archive.org/details/noturningbackhis00free/page/464 |ref={{Sfnref|Freedman|2003}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Narayan |first=Uma |title=Dislocating Cultures: Identities, Traditions, And Third-World Feminism |year=1997 |publisher=Routledge |location=New York |isbn=978-0-415-91418-5 |pages=20–28, 113, 161–87 |ref={{Sfnref|Narayan|1997}} }} |
|||
* {{Cite news2 |df=ja |last=Cochrane|first=Kira|date=10 December 2013|title=The Fourth Wave of Feminism: Meet the Rebel Women|newspaper=The Guardian|url=https://www.theguardian.com/world/2013/dec/10/fourth-wave-feminism-rebel-women|url-status=live|archive-url=https://web.archive.org/web/20131210221939/https://www.theguardian.com/world/2013/dec/10/fourth-wave-feminism-rebel-women|archive-date=2013-12-10 |ref={{Sfnref|Cochrane|2013}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Wright |first=Elizabeth |title=Lacan and Postfeminism (Postmodern Encounters) |year=2000 |publisher=Totem Books |isbn=978-1-84046-182-4 |ref={{Sfnref|Wright|2000}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |author=Gerhard, Jane F. |title=Desiring Revolution: Second-Wave Feminism and the Rewriting of American Sexual Thought, 1920 to 1982 |year=2001 |publisher=Columbia University Press |location=New York |isbn=978-0-231-11204-8 |ref={{Sfnref|Gerhard|2001}} }} |
|||
* {{Cite AV media |df=ja |title=Radical Harmonies|last=Mosbacher|first=Dee|publisher=Woman Vision|year=2002|location=San Francisco, CA|oclc=53071762 |ref={{Sfnref|Mosbacher|2002}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja | last1 = Lindlof | first1 = Thomas R. | last2 = Taylor | first2 = Bryan C. | title = Qualitative Communication Research Methods | url = https://archive.org/details/qualitativecommu00lind | url-access = registration | publisher = Sage Publications | location = Thousand Oaks, Calif | year = 2002 | isbn = 978-0-7619-2493-7 |ref={{Sfnref|Lindlof|2002}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Messer-Davidow |first=Ellen |title=Disciplining Feminism: From Social Activism to Academic Discourse |year=2002 |publisher=Duke University Press |location=Durham, NC |isbn=978-0-8223-2843-8 |ref={{Sfnref|Messer-Davidow|2002}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Beard |first1=David |title=Musicology: The Key Concepts |last2=Gloag |first2=Kenneth |publisher=Routledge |year=2005 |isbn=978-0-415-31692-7 |series=Routledge key guides |location=London and New York: Routledge |ref={{Sfnref|Beard|2005}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Hayward|first=Susan|title=Cinema Studies – The Key Concepts|publisher=Routledge|year=2006|edition=3rd|ref={{Sfnref|Hayward|2006}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |title=World Fascism: A Historical Encyclopedia |last=Blamires |first=Cyprian |volume=1 |publisher=ABC-CLIO |isbn=978-1-57607-940-9 |year=2006 |ref={{Sfnref|Blamires|2006}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Gardiner |first1=Judith Kegan |title=Masculinity Studies and Feminist Theory |publisher=Columbia University Press |year=2002 |isbn=978-0-231-12278-8 |ref={{Sfnref|Gardiner|2002}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Gillis |first1=Stacy |last2=Howie |first2=Gillian |last3=Munford |first3=Rebecca |title=Third Wave Feminism: A Critical Exploration |year=2007 |publisher=Palgrave Macmillan |location=Basingstoke |isbn=978-0-230-52174-2 |ref={{Sfnref|Gillis|2007}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last1=Elias |first1=Juanita |last2=Ferguson |first2=Lucy |year=2014 |chapter=Production, Employment, and Consumption |editor-last=Shepherd | editor-first=Laura J. |title=Gender Matters in Global Politics |chapter-url=https://books.google.com/books?id=C2AKBAAAQBAJ&pg=PT291 |publisher=Routledge |isbn=978-1-134-75259-1 |ref={{Sfnref|Elias|2014}} }} |
|||
* {{Cite book2 |df=ja |last=Peterson |first=V. Spike |year=2014 |chapter=International/Global Political Economy |editor-last=Shepherd | editor-first=Laura J. |title=Gender Matters in Global Politics |chapter-url=https://books.google.com/books?id=C2AKBAAAQBAJ&pg=PT291 |edition=2 |publisher=Routledge|isbn=978-1-134-75259-1 |ref={{Sfnref|Peterson|2014}} }} |
|||
* {{Cite journal2 |df=ja |last=Fayolle |first=Caroline |date=2018-06-17 |title=Des Corps « Monstres ». Historique Du Stigmate Féministe |url=http://journals.openedition.org/glad/1034 |journal=GLAD! |issue=4 |doi=10.4000/glad.1034 |issn=2551-0819|doi-access=free |ref={{Sfnref|Fayolle|2018}} }} |
|||
* {{Cite news2 |df=ja |last=Grady |first=Constance |url=https://www.vox.com/2018/3/20/16955588/feminism-waves-explained-first-second-third-fourth |title=The Waves of Feminism, And Why People Keep Fighting over Them, Explained |work=Vox |date=20 June 2018 |access-date=2019-04-26 |archive-date=2019-04-05 |archive-url=https://web.archive.org/web/20190405172242/https://www.vox.com/2018/3/20/16955588/feminism-waves-explained-first-second-third-fourth |url-status=live |ref={{Sfnref|Grady|2018}} }} |
|||
=== 日本語文献 === |
|||
* {{Cite book ja|author=アン・ファウスト=スターリング|title=ジェンダーの神話 : 「性差の科学」の偏見とトリック|translator1=池上千寿子|translator2=根岸悦子|publisher=工作舎|year=1990|ISBN=4875021674|ref={{Sfnref|スターリング|1990}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=ジェンダー・トラブル : フェミニズムとアイデンティティの攪乱|author=ジュディス・バトラー|translator=竹村和子|publisher=青土社|year=1999|ISBN=4791757033|ref={{Sfnref|バトラー|1999}} }} |
|||
* {{Cite book ja |author=エステル・フリードマン|translator=西山惠美・安川悦子|year=2005|title=フェミニズムの歴史と女性の未来-後戻りさせない|publisher=[[明石書店]]|isbn=4750320595|ref={{Sfnref|フリードマン|2005}} }} |
|||
* {{Cite book ja |chapter=台湾におけるフェミニズム的性解放運動の展開|title=ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア|editor=瀬地山角|author=福永玄弥|year=2017|publisher=勁草書房|isbn=9784326602988| ref={{Sfnref|福永|2017}} }} |
|||
* {{Cite journal ja |title=台湾女性運動の軌跡 : 売春児童保護運動から「妓権」労働運動へ|journal=技術マネジメント研究|volume=6|author=黄齡萱|year=2007|publisher=横浜国立大学技術マネジメント研究学会|issn=13473042|url=https://ynu.repo.nii.ac.jp/records/5043 |ref={{Sfnref|黄|2007}} }} |
|||
* {{Cite book ja |author=天野正子|title = 結衆・結社の日本史 |year = 2006 |chapter = 「婦人」から「女性」へ、そして「おんな=女」の結社へ |series = 結社の世界史 |publisher = 山川出版社 |editor=福田アジオ|isbn = 4-634-44410-0 |ref = {{Sfnref|天野|2006}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=フェミニズムはみんなのもの : 情熱の政治学|author=ベル・フックス|translator=堀田碧|publisher=エトセトラブックス|year=2020|isbn=978-4909910080 |ref={{Sfnref|フックス|2020}} }} |
|||
* {{Cite book ja |editor1=稲原美苗|editor2=川崎唯史|editor3=中澤瞳|editor4=宮原優|title=フェミニスト現象学入門 : 経験から「普通」を問い直す|publisher=ナカニシヤ出版|year=2020|chapter=フェミニスト現象学とは何か|author=中澤瞳|ISBN=9784779514265|ref={{Sfnref|中澤|2020}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=「トラブル」としてのフェミニズム : 「とり乱させない抑圧」に抗して|author=藤高和輝|publisher=青土社|year=2022|ISBN=9784791774432 |ref={{Sfnref|藤高|2022}} }} |
|||
* {{Cite book ja |author=江原由美子|title=持続するフェミニズムのために : グローバリゼーションと「第二の近代」を生き抜く理論へ|publisher=有斐閣|year=2022 |ISBN=9784641174788|ref={{Sfnref|江原|2022}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=クィア神学の挑戦 : クィア、フェミニズム、キリスト教|author=工藤万里江|publisher=新教出版社|year=2022|ISBN=9784400324935|ref={{Sfnref|工藤|2022}} }} |
|||
* {{Cite book ja|title=フェミニズムズ : グローバル・ヒストリー|author=ルーシー・デラップ|translator=幾島幸子|publisher=明石書店|year=2023|ISBN=9784750356402|ref={{Sfnref|デラップ|2023}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=ホワイト・フェミニズムを解体する : インターセクショナル・フェミニズムによる対抗史|author=カイラ・シュラー|translator1=飯野由里子|translator2=川副智子|publisher=明石書店|year=2023|isbn=9784750354835 |ref={{Sfnref|シュラー|2023}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=セックスする権利|author=アミア・スリニヴァサン|translator=山田文|publisher=勁草書房|year=2023|ISBN=9784326654390 |ref={{Sfnref|スリニヴァサン|2023}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=論点・ジェンダー史学|editor=山口みどり|publisher=ミネルヴァ書房|year=2023|ISBN=9784623093502}} |
|||
** {{Cite book ja |chapter=コラム19 イタリア|author=山手昌樹|title=論点・ジェンダー史学|publisher=ミネルヴァ書房|year=2023|ref={{Sfnref|山手|2023}} }} |
|||
** {{Cite book ja |chapter=アラブ社会主義とフェミニズム|author=長沢栄治|title=論点・ジェンダー史学|publisher=ミネルヴァ書房|year=2023|ref={{Sfnref|長沢|2023}} }} |
|||
** {{Cite book ja |chapter=愛・性と近代家族|author=江上幸子|title=論点・ジェンダー史学|publisher=ミネルヴァ書房|year=2023|ref={{Sfnref|江上|2023a}} }} |
|||
** {{Cite book ja |chapter=中国共産党根拠地の「女性解放」|author=江上幸子|title=論点・ジェンダー史学|publisher=ミネルヴァ書房|year=2023|ref={{Sfnref|江上|2023b}} }} |
|||
* {{Cite web|和書|author=三成美保|title=【女性】フェミニズムの第2の波と「ジェンダー」の発見 |url=https://ch-gender.jp/wp/?page_id=171 |website=比較ジェンダー史研究会 |access-date=2024-10-02|archive-url=https://web.archive.org/web/20240720220654/https://ch-gender.jp/wp/?page_id=171|archive-date=2024-07-20|ref={{Sfnref|三成|2023}} }} |
|||
* {{Cite book ja |author=近藤銀河|title=フェミニスト、ゲームやってる|publisher=晶文社|year=2024|ISBN=9784794974204|ref={{Sfnref|近藤|2024}} }} |
|||
* {{Cite book ja |title=アラブの女性解放論|author=カースィム・アミーン|translator=岡崎弘樹・後藤絵美|publisher=法政大学出版局|year=2024|ISBN=9784588011696}} |
|||
** {{Cite book ja |title=アラブの女性解放論|chapter=解説1 カースィム・アミーンとエジプトのフェミニズム|author=後藤絵美|year=2024|ref={{Sfnref|後藤|2024}} }} |
|||
== 関連文献 == |
|||
* {{Cite book ja |author = [[上野千鶴子]] |title = 家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平 |date = 2009年5月 |publisher = [[岩波書店]] |isbn = 978-4006002169 |series = [[岩波現代文庫]] }} |
|||
* {{Cite book ja |author = 有限責任事業組合フリーターズフリー編 |title = フェミニズムはだれのもの?―フリーターズフリー対談集 |date = 2010年4月 |publisher = [[人文書院]] |isbn = 978-4409240861 }} |
|||
* {{Cite book ja |author = 上野千鶴子 |title = 差異の政治学 新版 |date = 2015年11月 |publisher = 岩波書店 |isbn = 978-4006003340 |series = 岩波現代文庫 }} |
|||
* {{Cite book ja |title=ベル・フックスの「フェミニズム理論」 : 周辺から中心へ|author=ベル・フックス|translator=野崎佐和・毛塚翠|publisher=あけび書房|year=2017|isbn=978-4871541541}} |
|||
* {{Cite book ja |author = [[小川たまか]] |title = 「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。 |date = 2018年7月 |publisher = [[タバブックス]] |isbn = 978-4907053260 }} |
|||
* {{Cite book ja |author = 上野千鶴子 |title = 女ぎらい |date = 2018年10月 |publisher = [[朝日新聞出版]] |isbn = 978-4022619433 |series = [[朝日文庫]] }} |
|||
* {{Cite book ja |author = [[チョ・ナムジュ]]、[[斎藤真理子]](翻訳) |title = 82年生まれ、キム・ジヨン |date = 2018年12月 |publisher = [[筑摩書房]] |isbn = 978-4480832115 }} |
|||
* {{Cite book ja |author = [[栗田隆子]] |title = ぼそぼそ声のフェミニズム |date = 2019年5月 |publisher = [[作品社]] |isbn = 978-4861827518 }} |
|||
* {{Cite book ja |author = [[北村紗衣]] |title = お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門 |date = 2019年6月 |publisher = [[書肆侃侃房]] |isbn = 978-4863853652 }} |
|||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
||
{{Div col}} |
{{Div col}} |
||
*[[マスキュリズム]] |
* [[マスキュリズム]] |
||
*[[ |
* [[女性学]]/[[男性学]] |
||
* [[女性史]] |
|||
*[[プロチョイス]]/[[中絶]] |
|||
* [[フェミニズムの歴史]] |
|||
*[[女性学]]/[[男性学]] |
|||
** [[ウーマン・リブ]]/[[メンズリブ]] |
|||
*[[女性史]] |
|||
** [[世界女性会議]] |
|||
*[[ミソジニー]]/[[ミサンドリー]]-[[:en:Womad (website)]] |
|||
*[[女性 |
** [[国際女性デー]] |
||
*[[ |
* [[フェミニスト哲学]] |
||
* [[フェミニスト経済学]] |
|||
*[[積極的差別是正措置]]/[[アファーマティブ・アクション]] |
|||
* [[フェミニスト地理学]] |
|||
*[[世界女性会議]] |
|||
* [[プロチョイス]]/[[中絶]] |
|||
*[[国際女性デー]] |
|||
* [[アファーマティブ・アクション]](積極的差別是正措置) |
|||
*[[働く女性]] |
|||
*[[ |
* [[働く女性]] |
||
*[[ジェンダーフリー|ジェンダー平等]] |
* [[ジェンダーフリー|ジェンダー平等]] |
||
*[[性役割]] |
* [[性役割]] |
||
* [[ジェンダーバイオレンス]] |
|||
*[[#MeToo]]/[[KuToo|#KuToo]] |
|||
** [[ミソジニー]]/[[ミサンドリー]] |
|||
*[[セクシャルハラスメント]]/[[パワーハラスメント]] |
|||
*[[性 |
** [[女性差別]]/[[男性差別]] |
||
*[[ |
** [[セクシャルハラスメント]] |
||
* [[性的少数者]]/[[LGBT]]/[[トランスジェンダー]] |
|||
*[[:en:White feather|白い羽根運動]] |
|||
* [[ウィキペディアにおけるジェンダーバイアス]] |
|||
*[[FEMEN]] - [[ウクライナ]]のフェミニズム団体 |
|||
* {{intitle|フェミニズム}} |
|||
**[[フェミニズムの歴史]] |
|||
**[[リベラル・フェミニズム]]/[[女性参政権]] |
|||
**[[ラディカル・フェミニズム]]/[[差異派フェミニズム]] |
|||
**[[マルクス主義フェミニズム]] |
|||
**[[反フェミニズム]] |
|||
**[[ホワイト・フェミニズム]] |
|||
**[[全国フェミニスト議員連盟]] |
|||
**[[中国におけるフェミニズム]] |
|||
**[[台湾のフェミニズム]] |
|||
**[[フェミニズム・アート]] |
|||
**[[プッシー・ライオット]] - [[ロシア]]のフェミニズム・パンク・ロック集団 |
|||
**[[フェミニスト・ポルノグラフィ]] |
|||
{{Div col end}} |
{{Div col end}} |
||
2024年10月31日 (木) 04:35時点における版
フェミニズム |
---|
社会における女性 |
---|
フェミニズムは、政治的・経済的・個人的・社会的な面におけるジェンダーの平等を確立することを目指す、一連の社会運動と思想のことである[1][2][3][4][注釈 1]。フェミニズムは、現代の社会が家父長制を基礎とし、男性の視点を優先し、女性が不当な扱いを受けていると主張する[7]。フェミニズムは、女性の自由と平等についての思想として始まったが、現代では女性のためだけの思想にはとどまらず、男女という二分的なカテゴリーの自明性を問い直すことで、多様な性のあり方にも射程を広げてきた[8]。
フェミニズム運動は、特に18世紀以降に形成された、女性であることは男性であることよりも不利な立場にあるという認識を共有する行動・問いかけ・要求の複合体としてとらえらえる[9]。フェミニストは、レイプ・性的虐待・望まない妊娠といった暴力や、女性の権利の制限(親権・土地所有権・参政権・強制労働・医療アクセスなど)、女性の貧困、学歴の差などを問題化し、改善・変革を要求してきた[9]。フェミニズム運動は、特に西洋社会において、さまざまな女性の権利を改善するための主要な原動力になってきたとしてほぼ普遍的に評価されている[10]。
長年にわたる運動の展開の中で、フェミニズムの中にも異なる視点や立場が生まれ、特に「リベラル・フェミニズム」「社会主義フェミニズム」「ラディカル・フェミニズム」が三大潮流とされる[11]。リベラル・フェミニズムは、法・文化などでのジェンダー平等を求め、性別によって異なる扱いを受けない個人の権利を追求する[11]。社会主義フェミニズムは、女性抑圧の根源を資本主義に求め、平等達成のためには体制変革が必要とし、他の非抑圧集団との連携も重視する[11]。ラディカル・フェミニズムは、あらゆる抑圧の根源に男性支配があるとし、男女の分離を唱え、「女性」という集団の独自性を強調する[11]。
20世紀後半以降、従来のフェミニズム運動が、白人・中流階級の異性愛者やシスジェンダーの視点に偏重する(「ホワイト・フェミニズム」[12]「トランス排除的ラディカルフェミニズム」[13])として批判され、「ブラック・フェミニズム」や「インターセクショナル・フェミニズム」などが生まれた[14]。これらのフェミニズムでは、「女性たち」の経験を性差別の文脈だけに回収せず、人種・階級・民族・地域などの要素と交差的にとらえることが重要とされる[14] 。他にも多様なフェミニズムが展開し、社会学者の上野千鶴子は「フェミニストが一枚岩でいるよりも、多様性があるほうがずっといい」と述べる[15]。
また、フェミニズムの主張は主に女性の権利に焦点を当てるものの、伝統的な家父長制のあり方は男性にも有害であるという考え方から、フェミニズムの目的には男性解放も含まれると主張されることもある[16]。一方、フェミニズムが男性蔑視を助長し、女性の利益を男性の上に置くと主張し、特にラディカル・フェミニズムの立場が男性にも女性にも有害であると批判する者もいる[17]。
歴史
由来
「近代フェミニズムの母」「ブリテン最初のフェミニスト」などと呼ばれるのがメアリ・ウルストンクラフトで、1792年に『女性の権利の擁護』という著書を発表し、教育の男女平等・女性の経済的自立・女性の政治参加、制度面の男女平等を主張した[18]。また、同時期のフランス革命の際に、ニコラ・ド・コンドルセが女性の市民権・参政権を主張している[19]。
「フェミニズム」という言葉の出自については諸説ある。ユートピア社会主義者でフランスの哲学者のシャルル・フーリエが1837年に「フェミニズム(féminisme)」という言葉を作ったとされるが、著作にはその痕跡がない[20][21]。「フェミニズム」という言葉の初出は1871年のフランスの医学論文で、ある男性が結核の苦しみにより「女性的な特性」を持つようになったという文脈で用いられている[22]。この用法から着想を得て、1872年のアレクサンドル・デュマ・フィスのエッセイで、女性の権利を支持する男性を指して「フェミニスト」の語が使われた[22][注釈 2]。ここからフェミニズムの概念が広がり、1872年にオランダ[23]、1890年代にイギリス、そして1910年にアメリカ合衆国で広まった[24][25]。『オックスフォード英語辞典』は、この意味で英語で最初に使われたのは1895年とする[26]。
歴史的な時期や文化・国によって、フェミニストは異なる要因・目標から活動してきた。西洋のフェミニスト歷史家の多くは、女性の権利を獲得するための運動は、その運動が自らを「フェミニズム」と称していなくとも、すべてフェミニズムとみなすべきであるとする[27][28][29]。一方で、「フェミニズム」の語は現代のフェミニズム運動とその後継に限定すべきだと主張する学者もおり、その場合、早期の運動は「プロトフェミニズム」と呼ばれて区別される[30]。
ただし、こうしてイギリス・フランス・アメリカなどの白人市民をフェミニズムの最初の発信地としてみなすことは、グローバルな視点に欠けているという批判もあり、元奴隷の詩人フィリス・ホイートリー、エジプトのラシード女性会議(1799年)、シエラレオネでの世帯主全員(三分の一は女性)の投票権成立(1792年)などをフェミニズムの起点として挙げるべきという主張もある[31]。
区分
特に西洋におけるフェミニズム運動の歴史は、いくつかの「波」に分けられる[32]。第一波は、19世紀から20世紀初頭の女性参政権運動(サフラジェット)である。第二波は、1960年代に始まった女性解放運動で、女性の法的・社会的平等を訴えた。第三波は、1992年前後に名乗られるようになり、個人の自由と多様性に焦点を当てた[33]。さらに、2012年頃から、第四波の存在が主張され始めた[34]。第四波は、SNSを用いてセクハラや女性への暴力、レイプカルチャーと戦うことを特徴とし、その代表的な例が#MeToo運動である[35]。
19世紀から20世紀初頭(第一波フェミニズム)
第一波フェミニズムは、19世紀から20世紀初頭にかけて活動し、イギリス・アメリカでは女性の平等な契約・結婚・育児・財産権の促進に焦点を当てた。もともとイギリスでは、1839年未成年者監護法によって、女性に初めて子どもを監護する権利が与えられた[36][37][38]。他にも、1870年有夫女財産法などが制定され[注釈 3]、これが他のイギリス領でもモデルとなり、1897年までに他のオーストラリア植民地で同様の法が成立した。こうして、19世紀の終わり頃、フェミニズム運動は主に政治的権力の獲得、特に女性参政権の確立に向けられ、他にも女性のセクシュアリティやリプロダクティブ・ヘルス・ライツ、経済的権利のために活動した[40]。
最初に女性参政権が実現したのは、1893年にイギリス植民地のニュージーランドである。これに続き、1894年に南オーストラリアで、1902年にオーストラリア全土で女性参政権が認められた[41][42]。
イギリスでは、サフラジェットや婦人参政権協会全国同盟(NUWSS)が女性の投票権を求めて活動し、1918年に30歳以上で財産を持つ女性に投票権が認められ、1928年にはこの権利が21歳以上のすべての女性に拡大された[43]。
アメリカでは、奴隷制廃止運動に従事していたルクレシア・モット、エリザベス・キャディ・スタントン、スーザン・B・アンソニーらが女性参政権を推進した。その背景には、男女が神の前で平等であるとするクエーカーの教えの影響があった[44]。アメリカにおける第一波フェミニズムは、1919年のアメリカ合衆国憲法修正第19条によって女性の全国的な選挙権の承認がなされたことで終結したとされ、「第一波」という語は第二波フェミニズムという言葉が使われ始めた後に遡って名付けられたものである[40][45][46]。
ドイツでは、クララ・ツェトキンといったフェミニストが、社会主義を通して機会均等や女性参政権を実現するために活動した。彼女は1891年から1917年までドイツ社会民主党の女性新聞の編集を務め、1907年には新設された女性局のリーダーとなり、ドイツにおける社会主義フェミニズムの発展に寄与した。「国際女性デー」の提唱をしたことでも知られる[47][48] 。
中国では、新文化運動の時期に、伝統的な儒教規範を改変し、一夫一婦の小家族制の中で女性は伝統的抑圧から解放されると主張されたが、実際には女性は「新良妻賢母」の家庭内役割を求められた[49]。これに対して、良妻賢母主義への反発、恋愛と結婚の分離、婚姻制度の撤廃などを唱えるアナキストも現れた[49]。その一人である何殷震は、ジェンダーの区別が文化的・経済的生活を通して身体・労働・権力から結び付けられて生まれると指摘した[50]。1930年代、中国共産党の勢力下では、女性選挙権の導入・女性大学の開設などがなされたが、毛沢東の整風運動によって否定され、丁玲などはこうした旧来的なジェンダー観を批判した[51]。中華人民共和国成立後は、階級解放されたことによって女性解放もなされたという主張がなされることが多かったが、女性の賃金は低く、家庭内での負担も女性が負うという状況は変わらなかった[51]。
アラブ地域では、エジプトやアラブの「フェミニズムの父」とされるカーシム・アミーンが1899年に『女性の解放』を著し、男女の間の本質的な平等を求め、そのための社会改革を主張した[52]。アミーンは、西洋の思想を受けながら、男性と同じ地位を得ることは女性の権利であると述べ、これをイスラームの解釈や実践を通じて提案した[53]。エジプトで初めて「フェミニスト」という言葉が公に使われたのは、1923年、フーダ・シャーラーウィーがエジプト人フェミニスト団体連盟を設立した時であるとされ、この組織はエジプトの女性が男性と同等の政治的・社会的権利を得ることを目標に据えた[54]。また、イランでは、1905年のイラン立憲革命がイランのフェミニズム運動のきっかけとなり、教育・結婚・キャリア・法的権利の平等を目指した[55]。
この時期に女性参政権が実現した背景には、第一次世界大戦が国家総力戦であり、それまで私的領域にとどめ置かれていた女性の労働力が必要になったという背景がある[56]。多くの指導者が、女性を工場労働や公共交通の運転員などに駆り出すため、女性動員と引き換えに女性参政権の実現を約束した[56]。戦時中の女性の職業参加の増大や、戦後の女性参政権の実現は、実質的な男女平等をもたらすと期待されていたが、実際にはそうはならず、むしろ家庭性が強化されて戦前に得たものすら失ったという見方もある[57]。
-
フェミニストによる参政権パレード。1912年。ニューヨーク。
-
シャーロット・パーキンス・ギルマンがアトランタ・コンスティチューション誌にてフェミニズムについて執筆。1916年12月10日。
-
エメリン・パンクハーストがイギリスとアメリカで講演を行う。1913年。ニューヨーク。
-
オランダのウィルヘルミナ・ドルッカー(1847–1925)は、女性参政権と平等な権利を求め、成功を収めた。
-
ヨーロッパで男性の代わりに闘うアメリカ人女性。1945年。
20世紀中頃
夫が妻を支配する形式の家族法の改革も、フェミニスト運動の焦点の一つであった。20世紀にはイギリス・アメリカで妻は夫の庇護下とする法律は廃止されていたが、多くのヨーロッパの国々では、結婚した女性の権利は依然として非常に限られていた。たとえばフランスでは、1965年まで、既婚女性が夫の許可なく働く権利を持っていなかった[58][59]。また、フェミニストは、夫が妻にレイプする場合を例外扱いする強姦法を廃止することにも取り組んだ[60]。
1960年代後半から1970年代前半にかけて、女性解放運動(米国のウーマン・リブ運動、フランスの女性解放運動 (MLF) など)が世界中に広まり、ニューヨーク、パリなど各地で数十万規模のデモが発生した。この運動により、後に多くの国で女性の労働の自由が徐々に認められるようになった[61]。1970年代には、レイプ、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンス[注釈 4]などから女性の安全を確保するシェルターや避難所も作られるようになった[62]。
日本では、戦前から選挙権獲得運動を推進していた市川房枝などの女性運動家によって[注釈 5]、終戦直後に「戦後対策婦人委員会」が組織され、日本政府とGHQに対して婦人参政権と政治的権利を要求した。その後も「主婦連合会(主婦連)」など、女性が担い手となった政治結社がいくつも作られたが、この時期の組織は食糧獲得や物価高騰への抵抗など、生活を再建させる上での主婦や母という性別役割を完全に果たすたことが動機である「婦人」の組織が主であった[64]。
エジプトでは、1952年革命でガマール・アブドゥル=ナーセルが政権を握ると、女性参政権の付与などを行ったが、典型的な国家フェミニズムであり、リベラル・フェミニズムの掲げた女性運動は抑圧した[65]。アラブを代表するフェミニスト作家のナワル・エル・サーダウィは、ナセールの改革によって女性の高等教育の道が開かれたことは評価しながらも、アラブ社会における家父長制の残存に対して厳しく批判している[65]。一部の活動家は、イスラム教の枠組みの中から女性の平等を求める新しいフェミニズム運動「イスラム教フェミニズム」を提唱した[66]。
ラテンアメリカでは、ニカラグアなどの国々で、革命によって女性の地位に変化がもたらされた。サンディニスタ革命の際にフェミニズムの思想が女性の生活水準の向上に貢献したが、社会的・思想的な変革には至らなかった[67]。
第二派フェミニズム
第二波フェミニズムでは、女性の文化的な不平等と政治的な不平等を密接に関連付いたものとみなし、女性個人の生活は深く政治化されたものであると理解するように女性に促した。第二波の象徴となったスローガン「個人的なことは政治的なこと」は、フェミニスト活動家で作家のキャロル・ハニッシュによって広められた[68][69]。第二派の主な主張は二つあり、一つ目は実質的平等の確立と、その実現のための固定的性別役割の廃止である[56]。その背景には、第一波で法的平等がある程度達成されたものの、結局女性は家事・育児負担を求められ、社会的活動や職業参加ができないという問題があった[56]。二つ目はリプロダクティブ・ヘルス・ライツの確立であり、その背景には女性が性暴力に苦しんでいたことがあった[56]。第二波は1960年代初頭から始まって現在に至るまで続いており、第三波フェミニズムと共存している[40]。
アメリカにおける第二波フェミニズムの始まりのきっかけと広く認識されるのが、1963年、ベティ・フリーダンの『新しい女性の創造』であり、本書はアメリカの中産階級女性の不満を代弁したものである[70]。フリーダンは以下のように述べている。
郊外住宅の主婦、これは若いアメリカの女性が夢に見る姿であり、また、世界中の女性がうらやんでいる姿だといわれている。 しかし、郊外住宅の主婦たちは、密かに悩みと戦っていた。ベッドを片付け、買い物に出かけ、子供の世話をして、 1日が終わって夫の傍らに身を横たえたとき、『これだけの生活?』と自分に問うのを怖がっていた[71]。
また、1970年、オーストラリアの作家ジャーメイン・グリアは『去勢された女』を出版し、世界的なベストセラーとなり、離婚率の上昇を引き起こしたと報じられた。グリアは、女性は男性による女性嫌悪を知らないままに、自分自身に憎しみを向けており、また女性が主婦・母親という役割の中で活力を失い抑圧されていると主張した[72][73]。
1960年代後半から1970年代にかけてのウーマンリブの運動の中では、当時のフェミニズムが白人・中産階級・異性愛者のものになっており、同性愛嫌悪(ラベンダー色の脅威[74])があることや、人種差別の問題を取り上げないことから批判されることもあった[75]。
日本においては、第二波フェミニズム(ウーマンリブ運動)以降の女性運動家は、それ以前の性別役割に基づく婦人運動を「男に認められたい女」の組織として批判した[64]。特に1960年代の安保闘争以降、女性が政治運動に参加する中で、主婦や母といった性別役割分業への疑問や葛藤が表面化し始めた[64]。こうした問題は1970年代のリブ運動の到来とともに明らかとなり、特に1975年の国際婦人年は大きな契機となり、女性であるがゆえに免れない不利な状況を克服するための諸問題を打破するため、公的な場への女性の登用を目的として41の女性団体が共同行動を起こした[76][77]。
第二派フェミニズムに対する批判として、ナンシー・フレイザーは、差異やアイデンティティを重視する第二派の動向が、新自由主義の宗教・生命観・性規範観を前面化する戦略にはまり、グローバリゼーションによる格差拡大と女性の貧困化を見過ごしたという[78]。フレイザーによれば、フェミニズムは、ジェンダーの解放が参加型民主主義や社会的連帯と同時に実現する世界と、女性に男性同様の自立のための資源を増やすという能力主義的達成を可能にするという二つの方向性を持つものだが、第二派以後は後者に引き付けられていったと分析する[79]。
20世紀後半から21世紀初頭
第三波フェミニズム
第三波フェミニズムは、1990年代初頭にワシントン州オリンピアで誕生したライオット・ガールというフェミニストのパンク・サブカルチャーの出現と[80][81]、1991年にアニタ・ヒルがアメリカ合衆国最高裁判所判事のクラレンス・トーマスにセクハラを受けたと証言した事件に触発されて生じた。「第三波」という言葉は、レベッカ・ウォーカーがトーマスの事件に対する反応として「Becoming the Third Wave(第三波になる)」という記事を書いたことに由来する[82][83]。ウォーカーは次のように書いた。
私はこの文章をすべての女性、特に私の世代の女性への訴えとして書く。トーマスを承認することは、私にとってそうであったように、闘いがまだ終わっていないことを思い出させるものである。こうして女性の経験を無視することが、あなたの怒りを呼び起こす。その怒りを政治的な力に変えてほしい。私たちのために働かない者には投票するな。私たちの自由を優先しない者とは性交渉をせず、食事を共にせず、養うな。私はポストフェミニズムのフェミニストではない。私は第三波だ[82]。
また、第三波フェミニズムは、第二波が提唱する「女性らしさ」の本質主義的な定義に異議を唱えること(またはそれを避けること)を目指した。第三波のフェミニストは、第二波の「女性らしさ」の定義が、上流・中流階級の白人女性の経験に偏重していると主張する。第三波では、「ミクロ・ポリティクス」に焦点を当て、何が女性にとって良いことであるかを探る第二波の枠組みに挑戦し、ジェンダーとセクシュアリティについてポスト構造主義的な解釈を採用する傾向があった[40][84][85][86]。第二波に根ざした多くの有色人種のフェミニスト(例:グロリア・アンサルドゥーア、ベル・フックス、チェラ・サンドバル、チェリー・モラガ、オードリー・ロード、マキシーン・ホン・キングストン)は、フェミニズム思想の中での人種に関する主体性を考慮することを問題提起した[84][87]。
第四波フェミニズム
2000年代に入ってから、インターネットやSNS上でのフェミニズム運動も普及し始めた[88]。第四波フェミニズムは、第三波フェミニズムから発展し、2012年頃からフェミニズムへの関心が再興したことと、ソーシャルメディアの利用が広がったことから出現した[89][90]。プルーデンス・チェンバレンによれば、第四波は、女性のための正義と、女性に対する性的嫌がらせや暴力への反対に焦点が当てられている[91]。キラ・コクランによると、第四波フェミニズムは「テクノロジーによって定義される」とされ、Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、Tumblr、Feministingなどを用いて、ミソジニーに挑み、ジェンダー平等を推進することが特徴である[89][92][93]。
第四波フェミニストが注目する問題には、路上や職場でのハラスメント、キャンパス内の性的暴行、レイプカルチャーが含まれる。運動のきっかけとなった事件としては、2012年のジミー・サヴィルの性加害告発、2012年インド集団強姦事件、2014年のビル・コスビーの性加害告発、2014年アイラビスタ銃乱射事件、2016年のジャン・ゴメシの裁判、2017年のハーヴェイ・ワインスタインに対する告発とそれに続く「ワインスタイン効果」がある[94][95]。第四波の運動には、「エブリデイ・セクシズム・プロジェクト」、「ノー・モア・ページスリー」、「ストップ・ビルド・セクシズム」、マットレス・パフォーマンス、フリー・ザ・ニップル、2017年・2018年のウィメンズ・マーチ、#MeToo運動などがある[96]。一方、#MeToo運動が、国家の強制力に信を置く傾向があり、監獄主義的な方向性を持っていることを指摘するフェミニストもいる[97]。
ポストフェミニズム
「ポストフェミニズム」という用語は、1980年代以降のフェミニズムに対するさまざまな見解を表すために使われている。ポストフェミニズムは「反フェミニズム」ではないが、第二波の目標は達成されたと考える一方で、第三波・第四波の目標には批判的である。ポストフェミニズムという言葉は、当初は第二波フェミニズムへの反発を示すために使われたが、現在では、第二波に批判的アプローチを取るさまざまな理論を指す[98]。一部のポストフェミニストは、フェミニズムは現代社会においてもはや必要ないと考える[99][100]。アメリア・ジョーンズは、1980年代から1990年代に現れたポストフェミニストのテキストは、第二波フェミニズムを単一的に描いていると批判する[101]。ドロシー・チュンは、ポストフェミニズムの名のもとに、フェミニストは「ジェンダー平等がすでに達成された」にもかかわらず依然として男女平等の要求を続ける存在として揶揄されていると述べる。チュンによれば、「多くのフェミニストは、権利と平等の議論が今や自分に対して使われていることに不安を表明している」という[102]。
運動とイデオロギー・立場
長年にわたって、多くのフェミニズム運動とイデオロギーが発展してきた。フェミニズム思想の流派は、リベラル・ラディカル・社会主義(マルクス主義)の三大潮流に分けられることが多い。そして20世紀後半以降には、新しい形態のフェミニズムも登場した[11]。
リベラル・フェミニズム
リベラル・フェミニズムは、改革派・主流派、またブルジョワ・フェミニズム[103][104]などの名前でも知られており、19世紀の第一波フェミニズムから生じ、19世紀のリベラリズムや進歩主義と結びついている。リベラル・フェミニズムは、リベラル民主主義の枠組みの中で、社会構造を根本的に変えることではなく、政治的・法的な改革を通して男女平等を追求し、主流社会の構造に女性を統合することを目指した[105]。19世紀から20世紀初頭にかけて、リベラル・フェミニズムは特に女性の参政権と教育へのアクセスに焦点を当てていた[106]。
なお、リベラル・フェミニズムは非常に広範な用語で、多くの現代の分派や様々なフェミニズムを含み、歴史的にリベラルとされる分派には、平等派フェミニズム・差異派フェミニズム・エクイティ・フェミニズム・個人主義的フェミニズム・国家フェミニズムなどの形態がある[107]。
古典的な意味での「リベラル・フェミニズム」が現れた理由としては、リベラルな民主主義が普遍的な平等を唱える中で、(特に法律や公的領域へのアクセスにおいて)ジェンダーによる排除があることを明らかにすることで、リベラリズムに対する内在的な批判を行うことにあったとされる。そしてこの古典的なリベラル・フェミニズムは、新自由主義の秩序と調和する現代の新自由主義フェミニズムとは別物として理解するべきという主張もある[108]。
ノルウェーの元最高裁判事で、ノルウェー女性権利協会の元会長のカリン・マリア・ブルゼリウスは、リベラル・フェミニズムを「現実的で冷静、実践的なフェミニズム」と表現する[109]。一方で、リベラル・フェミニズムは、現行の社会構造に異議を唱えない「主流」(すなわち中産階級)の女性によって採用されがちで、平等に焦点を当てたリベラル・フェミニズムが「デフォルト」の形態のフェミニズムであるとみなされる傾向にあると指摘されることもある[110]。リベラルから発展したフェミニズムの中には、相対的には保守的であると評されるものもある。特に個人主義的フェミニズムは、個人を自己の所有者とみなし、それゆえに強制的な干渉からの自由を享受する権利を有すると考える点で、この傾向が顕著である[111]。
ラディカル・フェミニズム
ラディカル・フェミニズムは、第二波フェミニズムから生じた。ラディカル・フェミニズムは、あらゆる抑圧の根源に性抑圧があり、その抑圧者は男性で、男女の利害は敵対すると考えることが多い[11]。また、女性抑圧の文化は世界中において程度の差こそあれ同じもので、女性であればその抑圧の経験から国を越えて理解し合えるとも主張される[112]。そして男女の分離を唱え、「女性」という集団の独自の意義を強調しようとした[11]。たとえば、1969年にニューヨークで結成されたザ・フェミニスツでは、分離主義・禁欲主義が提唱され、男性支配を終わらせるために、女性は男性との性行為や結婚を拒むべきとされた[113]。ここから、フェミニストは政治的にレズビアンを実践しなければならないという主張(政治的レズビアン主義)もなされるようになった[114]。
この立場に対して、ベル・フックスは、性差別的な意識や行動を支えている集団には、男性だけではなく女性も含まれているのだから、「女性は多かれ少なかれ男性支配の犠牲者だから連帯できるはず」という考え方は砂上の楼閣であると述べる[115]。また、生物学的に女性で、性自認も女性だけがいる空間こそが危害や暴力と無縁で安全なスペースであると主張する分離主義[116]は、トランスジェンダー差別につながるとして他のフェミニストから批判されている[117][118]。
また、女性の抑圧を家父長制によるものとして普遍化した結果、奴隷化・階級差別・人種差別などによって排除されている女性がフェミニズム運動から疎外されたとして批判されることもあった[112]。アミア・スリニヴァサンは、フェミニズムがインターセクショナリティに向かうにつれて、男性と性行為したり結婚しているからといって、その女性が家父長制を内面化しているとは限らないという考え方が広まったと述べる[119]。
社会主義フェミニズム
唯物主義のフェミニズムは、西洋のマルクス主義思想から発展し、イデオロギーと女性との関係に焦点を当て、資本主義批判に関わる様々な運動に影響を与えてきた[120]。マルクス主義フェミニズムは、資本主義が女性の抑圧の根本的な要因で、家庭生活や雇用における女性差別は資本主義的なイデオロギーの影響であると主張する[121]。社会主義フェミニズムは、女性解放は経済的、また文化的な抑圧の両方を終わらせることによってのみ達成されると主張する点で、マルクス主義フェミニズムと区別される[122]。そして体制変革が平等達成のために必要であると考えられ、他の非抑圧集団と連帯することを重視する[11]。1977年、ロンドンで開かれた全英女性解放運動会議で、ラディカル・フェミニストは、女性抑圧の基盤にあるのは資本主義ではなく男性による暴力であるとして社会主義フェミニズムを批判し、これ以後この対立は深まっていった[123]。
また、アナーカ・フェミニズムは、国家に対する階級闘争とアナキズムこそが、無意識的な階層を生み出す家父長制と戦うために必要であると主張する[124]。
その他のフェミニズムと立場
エコフェミニズム
エコフェミニズムは、男性による自然支配と女性支配を同根と定め、自然保護の立場から戦争、女性への暴力、女性支配、先住民への差別、環境破壊に反対する。「エコフェミニズム」という言葉の生みの親とされるフランソワーズ・ドボンヌは、1978年にエコロジー・フェミニズム協会を設立した。この運動は、当時、フランスではほとんど反響を呼ばず、オーストラリアや米国において引き継がれ、大きな広がりを見せることになった[125]。
ブラック・フェミニズムとポストコロニアル・フェミニズム
フェミニズム運動やその理論の発展は、大部分で西欧・北米の中産階級の白人女性によって主導されてきたと指摘されることがあった[87][126][127]。これに対して、他の人種の女性などは、代替となるフェミニズムを提唱してきた[126]。
1960年代後半のフェミニズム運動の中で、フランシス・ビールは、黒人差別・女性差別の二重の危険を指摘し、ブラック・フェミニズムの構築が進展した[128]。ビールは、黒人女性解放同盟を設立、これはのちに第三世界女性同盟へと発展し、人種主義・帝国主義・性差別主義などの抑圧の複数の原因に着目した[128]。この考えから、キンバリー・クレンショーによって「インターセクショナリティ」の概念が提唱され、相互に作用する複数の抑圧に着目され、人種・階級・ジェンダー・能力などによる排除に同時に取り組む運動が志向されるようになった[128]。ここから階級・人種・国境を越えた共闘の方法を探るポストコロニアル・フェミニズムや、ジェンダーの差異だけに還元されないさまざまな差異を探る試みであるクィア理論も現れた[129]。
この傾向は、1960年代のアメリカの公民権運動や、アフリカ・カリブ海・ラテンアメリカ・東南アジアにおける西欧の植民地主義の終焉とともに加速し、発展途上国や元植民地出身の女性、あるいは有色人種や様々な民族、また貧困に苦しむ女性から、新たなフェミニズムが提唱された[127]。たとえば、ウーマニズムは、初期のフェミニズム運動が白人中産階級を主として構成されていたことを背景に生まれた[130][131][87]。こうしたフェミニズムは、第三世界フェミニズムや先住民フェミニズム[127]、アフリカン・フェミニズム[132]などと密接に関わる。
トランスフェミニズム
第二派フェミニズムにおいては、ジャニス・レイモンドのように本質主義の立場から反トランスジェンダーの立場に立つフェミニストもいたが、トランスジェンダーに肯定的な立場を取るフェミニストも多くおり、第二派の中で重要な役割を担ったトランスジェンダーもいる[133]。第三波以降は、トランスジェンダーの権利のための闘いは、インターセクショナル・フェミニズムの不可欠な部分であるとみなされることが多く[134]。第四波フェミニズムでも同様に、トランスジェンダーを包括することが多い[134]。フェミニズムの中にはトランスジェンダーを肯定的にとらえる言説の蓄積があり(トランスフェミニズム)、たとえば竹村和子は、トランスセクシュアルに、現存の性規範を攪乱する新しい身体性があることを見出している[133]。また、全米女性機構会長のテリー・オニールは、トランスジェンダー嫌悪との闘いはフェミニズムの問題であるとし[135]、全米女性機構は「トランス女性は女性であり、トランス少女は少女である」という立場を表明している[136]。複数の研究では、「フェミニスト」を自認する人々の方が、そうでない人々よりも、トランスジェンダーの人々を受け入れる傾向が強いとされている[137][138][139]。こうした議論の2000年前後の担い手に、サンディ・ストーン、マーシャ・P・ジョンソン、シルヴィア・リヴェラらがいる[140]。
トランス排除的ラディカルフェミニズムとして知られるイデオロギーは、ジェンダー・アイデンティティとトランスジェンダーの権利という概念に批判的で、「性的特徴がジェンダーを決定するものである」または「性的特徴はジェンダー・アイデンティティの重要性を超える」という立場をとる[141][142][143]。そして、生物学的二元論の立場を取り、抑圧するのは常に男性、抑圧されるのは常に女性で、男性がいないという条件でしか女性の解放はあり得ないと説く[144]。これらの見解は、他の多くのフェミニストからトランス嫌悪的であると批判されている[145][146][147][148][149][118]。
理論・概念
フェミニスト理論で探求されるテーマとして、差別・ステレオタイプ・性的対象化・抑圧・家父長制などがある[150][151]。
家父長制
家父長制とは、男性の権威者を中心に組織された社会制度であり、この制度では、父親が女性・子供・財産に対して権威を持つ。これは男性支配・男性特権の制度であり、女性が従属することを強いる[152]。フェミニズムの多くは、家父長制は女性にとって抑圧的で不平等な社会制度であるとする。キャロル・ペイトマンは、家父長制における「男性性」と「女性性」の区別は、自由と服従という政治的な相違であると主張する[153]。
「家父長制」という用語を浸透させたのは、ドイツの社会主義者のアウグスト・ベーベルである。ベーヘルは男性による女性抑圧と私有財産・労働の占有の発生を説明する概念として、家父長制という言葉を用いた[154]。ベーヘルは、家父長制は個人としての男性に責任があるのではなく、社会の構造的特徴としてとらえ、特に労働階級の女性との連帯を模索した[154]。
フェミニズム理論において、家父長制の概念は、男性が女性に対して優位性を再生産し、行使するための社会的メカニズムの全てを含むとされる。主なフェミニズム理論は、家父長制を社会的な構築物として捉え、その現れを明らかにし、批判的に分析することで克服できると考える[155]。一方で、家父長制という概念が政治的に利用され、たとえば「イスラム教は家父長制社会であるから、女性を守るために闘わなければならない」といったレトリックで、欧米のフェミニスト団体が中東への侵略を支持することがあった[156]。こうしたレトリックは、イスラム教内部のフェミニズム運動の存在を見落としているとして他のフェミニストによって批判されている[156]。
スタンドポイント理論
スタンドポイント理論は、個人の社会的立場がその人の知識に影響を与えるということを論じるフェミニズム理論である。この観点は、従来の科学が「客観的」であるという見方を拒否し、過去の研究や理論が女性やフェミニズム運動を重要でないものと扱ってきたと主張する[157]。1980年代以降、スタンドポイント・フェミニズムは、フェミニズム運動は国際的な問題(強姦・近親相姦・売春など)と、文化特有の問題(アフリカやアラブ社会の一部にある女性器切除や、先進国におけるガラスの天井の問題など)に対処すべきであると主張した。これにより、ジェンダー不平等が人種差別・同性愛嫌悪・階級差別・植民地主義などとどのように交わるかを「支配のマトリクス」として理解することができるようになる[158][159]。
社会構築物としてのジェンダー・セックス
シモーヌ・ド・ボーヴォワールは、1949年に『第二の性』を出版し、マルクス主義の方法論と実存主義の視点からフェミニズムに取り組み[160][161]、従来は自然的・本質的な「女性性」があるかのように語られてきたが、こうした女性性は実は社会的・経済的・文化的な条件の中で、社会制度・規範とともに現れてくるものであると指摘した[162]。
20世紀後半に入ると、多くのフェミニストがジェンダーは社会的に構築されている(社会構築物としてのジェンダー)と主張し始めた[163]。ここでは、女性の経験を文化や歴史にわたって一般化することは不可能だと考えられる[164]。ポスト構造主義フェミニズムは、ポスト構造主義や脱構築の哲学に依拠し、ジェンダーの概念は言説を通じて社会的・文化的に作り出されると主張する[165]。パメラ・アボットは、ポストモダン的なアプローチは「単に男性と女性の視点だけでなく、複数の真実の存在」を強調していると述べる[166]。
さらに、ジュディス・バトラーは、生物学的なセックスと文化的に構築されたジェンダーという枠組みに対する構造的な批判を試みた[167]。バトラーによれば、自然的・本質的なセックスという観念は、政治的・社会的な目的から科学言説によって構築されたもので[167]、ジェンダーはセックスを「前-言説的」にするための装置であり、セックスとジェンダーはどちらも社会的に構築されたものとする[167]。この背景には、生物学・精神分析学の研究の進展によって、人間が生物的に必ずしも男女に二分されるわけではないと明らかにされたこともある[11]。バトラーの学説は、フェミニズムの新時代を告げたものとされる[11]。
フェミニズムとセクシュアリティ
フェミニズムのセクシュアリティに対する見解は、時期や文化によって異なり、いくつかの方向性がある。特にフェミニストの間で論争の的となってきたのは、性産業、メディアにおける性的な表現、男性優位の状況下での性行為の同意の問題などである。これらの論争は1970年代後半から1980年代の「フェミニスト・セックス戦争」として知られ、反ポルノ運動とセックス・ポジティブ・フェミニズムが対立し、フェミニズム運動の一部が分裂した[168][169][170][171][172]。
性風俗産業
性風俗産業に対するフェミニズムの立場は多岐にわたる。たとえば、個人主義フェミニストは、成人女性には自由に性的行為に同意する権利があり、自ら選んだ方法で働き、稼ぐ権利を持つべきだとして、性産業の存在を支持する傾向にある[173]。また、台湾のフェミニズムにおいては、性産業へのフェミニストの立場が二分され、性産業を批判するフェミニストは、性産業は男性の性的欲望を正当化し、女性のセクシュアリティの商品化・家父長制の強化をもたらす女性搾取であるとして批判した[174]。一方で、労働としてのセックスワークの保障を要求するフェミニストは、女性には身体と欲望についての自主権があり、身体の商品化は労働の商品化と同じで、批判されるべきは劣悪な労働環境であると主張し、セックスワークを抑圧することはセックスワーカーをより劣悪な環境に追い込むだけだと批判する[174][175]。
ポルノに対するフェミニストの見解も多様で、ポルノを女性に対する暴力の一形態として非難するものから、ポルノの一部をフェミニズムの表現手段や正当な職業と捉えるものまである[168][169][170][171][172]。近年は、ポルノにおいて、異性愛主義・レイシスト的・健常者主義的なエロスの基準から離れた、多様な性の表象を目指すべきという議論もなされている[176]。
女性の性的自己決定権の肯定
フェミニズムにおいて、女性の性的欲望をどうとらえるかという問題はよく議論の俎上に上げられてきた。たとえば、アンチ・セックス・フェミニストと呼ばれるグループはセックスに禁欲的な態度を取り、女性の性的欲望の実在性は強く主張するものの、異性愛の枠外の欲望の正当性に対しては関心を払わず、レズビアンが非難されることもあった[177]。これに対し、1970年ごろには政治的選択としてのレズビアン(レズビアニズム)が唱えられ、レズビアンの実践が男性支配を終わらせる方法だと説かれることもあった[177]。1980年代になると、エレン・ウィリスによってセックス・ポジティブ・フェミニズムの考え方が提唱され、従来のフェミニズムは男性が性行為を求め、女性が従属するという保守的な考え方を強化していると説き、性行為における女性の主体性が強調された[178]。
フェミニズムと学問
フェミニズムの理論家は、ジェンダーに関する問題を考察するため、さまざまな学問分野で理論を発展させてきた[150][151]。その対象は、人類学・社会学・経済学・女性学・文学批評[179][180]、美術史[181]、精神分析[182]、哲学[183][184]など、さまざまな分野の研究を含む。20世紀後半にかけて、高等教育が拡大する中で、フェミニズムは学問の一分野として定着している[185]。
フェミニズム文学批評
文学批評の分野では、エレイン・ショウォーターがフェミニスト理論の発展を三つの段階に分類した。最初の段階が「フェミニスト批評」で、ここではフェミニストの読者が文学的現象の背後にあるイデオロギーを検討する。次の段階が「ガイノクリティシズム」で、ここでは女性がテキストの意味を生産する存在となる。最後の段階が「ジェンダー理論」で、ここではセクシュアリティ・ジェンダーのシステムが持つイデオロギーの刻印と文学的効果を探る[186]。
フェミニスト文学批評家のエレーヌ・シクスーは、女性に対して男根中心的な形式を越え、自らの身体や欲望について書き、言語における男性中心主義から抜け出すように述べた[187]。また、ジュリア・クリステヴァは、子供が言語を取得する以前に、母親との間に女性的・詩的な言葉を持つと主張した[187]。一方で、「女性的書き言葉」を想定することは女らしさに関する本質主義的な見方に基づくという批判も存在する[187]。
フェミニスト法学
フェミニスト法学は、女性と法律の関係を検討する法学の一分野で、過去の女性に対する法的・社会的偏見と、女性の法的権利の向上のための問いを扱う[188]。現代の法学者は通常、法律は性別に依存しない普遍的なものであるという理想を維持するためのプロセスとみなすが、フェミニスト法学者は、このアプローチが女性の価値観や法的利益、また女性が経験するかもしれない障害を見落としていると主張する[189]。
フェミニズムと宗教
歴史上、宗教によって女性の服装や礼拝が支配されることがあり、ユダヤ教に抗議して無神論者になったフェミニスト(例:アーネスティン・ローズ)がいるように、フェミニズムは宗教への抵抗であると表現されることもある[190]。一方で、宗教信仰を守りつつ、フェミニズム運動に従事してきたフェミニストもいる[190]。
キリスト教フェミニズムには、大きく二つの類型がある。一つ目は、従来の聖書解釈や教義がいかに男性中心主義・異性愛主義であったとしても、キリスト教の本質はフェミニズムの視点と合致すると考え、そのための再解釈を試みる方向性である[191]。ここから、従来の理解とは異なるキリスト教の「本質」を語ることに力を入れる論者や、従来の伝統的な解釈を批判することに力を入れる論者がいる[191]。二つ目は、キリスト教、あるいはキリスト教信仰の「本質」を前提とせず、それ自体を脱構築していく立場であり、再解釈や実践の反復としてのパフォーマティヴな側面を重視する方向性である[191]。フェミニスト神学も、フェミニズム運動と同様、当初はアメリカの白人女性が中心的な担い手であったが、1970年代以後、黒人女性によるウーマニスト神学、ヒスパニック女性によるムヘリスタ神学など、そしてアジアなど世界各国での女性神学に広がり、さまざまな女性の経験を射程に入れるようになった[192]。
イスラム教フェミニズムは、イスラムの枠組みに基づき、女性の権利・男女平等・社会的正義を主張する。ここではコーランにおける平等の教えが強調され、コーラン・ハディース・シャリーアを通して、イスラム教の家父長的な解釈に疑問を投げかけ、より平等で公正な社会の創造を目指す[193]。これはイスラムに根ざした運動ではあるが、その先駆者は世俗的で、西洋のフェミニズムの議論も利用しており、イスラムフェミニズムは世界的フェミニズム運動の一部として認識している[194]。
仏教フェミニズムは、1986年に真宗大谷派において「女性差別を考えるおんなたちの会」が始まり、仏教内部からのフェミニズム運動の先駆けとなったように、特に第二波以後に発展した[195]。仏教徒でフェミニストのリタ・グロスは、仏教の法は本来は解放的で、女性差別から自由なものであるが、男性優位の制度によって女性差別が生じたと主張する[196]。
フェミニスト現象学
フェミニスト現象学は、現象学の方法論を用い、主流の現象学に欠けていた女性の経験を考察の中心に据えるものとして始まった[8]。現在では、女性の経験に限定せず、さまざまな性的存在の経験や、マイノリティの経験について、当事者の視点から探求することを主とする[8]。
現象学は、一人称の日常的な語りから出発するもので、日常では忘れ去られている原初的な経験を呼び起こし、そこから世界との関わり方を明らかにする[8]。フェミニスト現象学は、その経験に現れるジェンダー構造にアプローチし、その個人が生きている社会の規範や制度の問題を開示することを目指している[197]。
科学とフェミニズム
科学に対するフェミニストの研究は、科学や学術機関における権力の不平等がどのように生み出され、維持されるかを明らかにすることを目的とする[198]。たとえば、サンドラ・ハーディングは、フェミニズムによる道徳・政治に関する洞察が、社会科学や生物学における、ジェンダー・セックスと社会・自然の間の関係についての従来の説明に対して、批判的な問いを投げかけたと述べる[199]。ルース・ハバードやエブリン・フォックス・ケラーといったフェミニスト批評家は、従来の科学言説が男性視点に偏っているとして批判する[200]。
リン・ハンキンソン・ネルソンは、フェミニスト認識論は、男性と女性の経験の間に根本的な違いを発見し、女性の経験を情報源として取り入れ、女性の経験を省略したり、誤って記述したり、過小評価したりすることの帰結を明らかにすることを重視すると述べる[201]。一方、フェミニスト認識論は、社会的・政治的な価値観がその発見に影響を与えるとして批判されることもある[202]。例えば、スーザン・ハークは、フェミニスト認識論が女性の思考に関するステレオタイプ(直感的で感情的であるなど)を強化するリスクがあると指摘し、ミーラ・ナンダも、こうした視点が女性を従来のジェンダー・ロールに閉じ込め、家父長制を正当化することになりかねないと警告する[203]。
生物学とジェンダー
現代のフェミニズムは、ジェンダーが生物学的に定まっているとする本質主義的な見解(ジェンダー本質主義)に異議を唱えている[204][205]。たとえば、アン・ファウスト・スターリングの『ジェンダーの神話』は、「男性ホルモンは攻撃性・競争性を高める」といった従来の生物学で主張されてきた性質は、実は社会的状況によって左右されるものであると指摘する[206]。そして、科学は時代や場所といった(政治介入を含めた)社会条件から切り離すことはできず、過去の生物学が男性の視点に偏っていたことを指摘した[207]。
フェミニスト心理学
フェミニスト心理学は、心理学の研究における男性中心主義を批判する形で登場した。従来の研究では男性のみが被験者として研究され、男性の視点のみが研究対象とされていたが、女性が心理学の博士号を取得するようになると、女性とその問題が研究対象として導入された。フェミニスト心理学は、社会的文脈・生活体験・質的分析を重視する[208]。
文化
デザイン
インダストリアルデザイン・グラフィックデザイン・ファッションデザインといった分野には、フェミニストの長い活動の歴史がある。これらの活動では、美、DIY、フェミニンなどのアプローチや、コミュニティベースのプロジェクトといったテーマが探求されてきた[209]。近年の研究では、インダストリアルデザインにおけるフェミニストの視点が、どのようにポジティブな変化を促し、デザインの中での不平等を特定して社会的に持続可能で草の根のデザインの解決策を導くかが探求されている[210]。
ビジネス
フェミニストの活動家は、書店・法律事務所・医療施設・出版社・信用組合・ホテル・バーといった様々なフェミニストビジネスを立ち上げてきた[211]。これらのビジネスは、1970年代、1980年代、1990年代の第二波・第三波フェミニズムの一環として発展してきた[212]。これらの試みの中では、資本主義的な市場の内部でできるフェミニズム的なエンパワメントには限界があることの指摘がなされることもあった[211]。
視覚芸術
フェミニズムアート運動は、フェミニズムの発展にともない、1960年代に始まり、1970年代を通じて盛んになったもので、「戦後において最も影響力のあった国際的な運動」と称され、「過去40年間にわたるアート制作とアート批評において、最も広い変革をもたらした」とされることもある[213]。視覚芸術へのフェミニストのアプローチは、サイバーフェミニズムやポストヒューマンの動きによって近年発展し、現代の女性アーティストがジェンダー・ソーシャルメディア・身体性といった概念に対する主張を明らかにしている[214]。
また、従来は男性向けとされたコンピュータゲームも、近年はフェミニズムの影響を受けており、女性が活躍する作品や、女性差別や人種差別を扱う作品、性的少数者が登場する作品なども増えている[215]。近藤銀河は、ゲームをプレイすることは、ゲーム世界でのジェンダー・ロールの規範に乗って行動することであり、その規範の実践とその失敗を通して、規範の外にある生の可能性を見い出せると指摘する[216]。
文学
フェミニズムは、フェミニストの小説・ノンフィクション・詩などを生み出し、女性の書き手に対する新たな関心を引き起こした[217]。女性の著作に対して関心が広がった背景には、文学における「正典」が拡張されたことがあり、ポストコロニアル文学・ゲイやレズビアンの文学・有色人種の著作・労働者の著作、また他の周縁化されてきた集団の創作物への関心が高まったことにより、「文学」とされる範囲が大幅に拡大し、それまで「文学」とされなかった児童文学・日記・書簡・旅行記も現在では学術的な関心の対象となっている[217][218][219]。
エリース・レイ・ヘルフォードによれば、サイエンス・フィクションとファンタジーは、特に理論と実践の橋渡しとして、フェミニズム思想において重要な役割を果たしている[220]。特にフェミニストSFは、ジェンダーを理解する際の社会的構築の役割を探るために、大学レベルで教えられることがある[221]。
フェミニズムに関するノンフィクションは、女性の生の経験における懸念を表現する上で重要な役割を果たしてきた。たとえば、マヤ・アンジェロウの『歌え、翔べない鳥たちよ』は、アメリカで育った黒人女性が経験する特有の人種差別や性差別を表現し、大きな影響を与えた[223]。さらに、多くのフェミニズム運動は、詩をフェミニズムの思想を公衆に伝える手段として取り入れ、詩集やアンソロジー、公開朗読を通じてその思想を伝えてきた[224]。
また、過去に書かれた女性の作品は、女性がかつてどのように生きていたかを語り、彼女が持っていた力や、彼女がコミュニティに与えた影響を示すために、フェミニズムの中で活用されている[225]。たとえば、女性文学の歴史において重要な人物とされるのが、ドイツの女性詩人のロスヴィータ(935–973)で、中世において女性の視点から女性の生活に言及した数少ない書き手の一人である[226]。
音楽
女性音楽は、女性によって作られ、女性のために、そして女性について歌われた音楽を指す[227]。このジャンルは、第二波フェミニズムの音楽的な表現として[228]、また労働運動・公民権運動・平和運動の一環として生まれた[229]。この運動は、クリス・ウィリアムソン、メグ・クリスチャン、マーギー・アダムなどのレズビアン、バーニス・ジョンソン・リーガンといったアフリカ系アメリカ人の女性活動家、そして平和活動家のホリー・ニアによって始められた[229]。加えて、女性音楽は、演奏者にとどまらず、スタジオミュージシャン・プロデューサー・サウンドエンジニア・プロモーター・フェス主催者など、音楽業界全体にわたる女性の活躍を含む[227]。
1970年代、音楽学の中で女性作曲家や演奏家が発見され、フェミニズムの視点から音楽の「正典」・ジャンル・時代区分などの概念が見直され始め、伝統的な音楽史において女性音楽家がどのように位置づけられるべきかという問いが投げかけられるようになった[230]。1980年代には、フェミニズムは音楽学の主要な関心対象となった[230]。1980年代から1990年代にかけてこの流れは続き、スーザン・マクレアリー、マーシャ・シトロンなどの音楽学者が、音楽において女性が周縁化された文化的理由を考察し始めた[230]。ここでは、ジェンダー化された言説としての「音楽」、プロフェッショナリズム、女性音楽の受容、音楽制作の場の検討、女性の資産や教育との関係、女性アイデンティティに関連する大衆音楽研究、音楽分析における家父長的な思想、そしてジェンダーと差異の概念などが検討された[230]。
映画
フェミニスト映画は、フェミニストの視点を主張・描写するもので、1960年代後半から1970年代初頭にかけてのフェミニスト映画理論の発展とともに台頭した[233]。1960年代、政治的議論や性解放の中で急進化した女性は、しかし急進主義が女性にとって実質的な変化をもたらさなかったことを受けて、主流の映画がどのように女性を描いているかを分析することに取り組んだ[233]。1972年、アメリカとイギリスで最初のフェミニスト映画祭が開催され、最初のフェミニスト映画雑誌「Women & Film」が創刊された。この時期の先駆者には、クレア・ジョンストンやローラ・マルヴィが含まれ、エディンバラ映画祭で女性向けイベントを組織した[234]。
フェミニスト映画の制作には、二つの異なるアプローチがあるとされる。一つは「脱構築」で、主流の映画の慣例を分析し解体することを狙い、観客と主流の映画の関係を変えることを目指す。もう一つは、「フェミニスト・カウンターカルチャー」で、これは女性的な表現を実体化し、女性特有の映画言語を探求するものである[235]。
政治
フェミニズムは、20世紀の主要な政治運動と複雑な相互作用を持っていた。
社会主義
19世紀後半以降、社会主義と連携するフェミニストがいる一方で、社会主義イデオロギーは女性の権利に対する配慮が不十分であると批判するフェミニストもいた。1907年、シュトゥットガルトで国際社会主義女性会議が開かれ、参政権は階級闘争の道具であると説明された。クララ・ツェトキンは、女性問題の根本的な解決を可能にする唯一の社会主義的秩序を築くために、女性参政権が必要であると説いた[236][237]。また、イギリスでは、女性運動は労働党と連携した。スペイン内戦では、ドロレス・イバルリがスペイン共産党を率い、女性の平等な権利を支持したが、前線での戦闘には反対したため、アナーカ・フェミニストのムヘレス・リブレスと対立した[238]。
20世紀初頭のアイルランドのフェミニストに、サフラジェットでアイルランド共和主義・社会主義の立場をとるコンスタンツ・マルキエビッチがいる。彼女は1918年、イギリス庶民院で初めて選出された女性となったが、自制主義から議席には就かなかった[239]。彼女は1916年のイースター蜂起の際、アイルランド指導者ジェームズ・コノリーによって率いられたアイルランド市民軍の指揮官でもあった[240]。
ファシズム
ファシズムのジェンダー観は、兵士としての男性・母親としての女性を強調することが多く、家父長制に従属する良妻賢母が理想的な女性とされ、女性の政治参加や家庭外労働は制限された[241]。こうした観念は、伝統的なカトリック教会の価値観とも合致するものであった[241]。ファシスト・マニフェストには女性参政権実現が盛り込まれており、1922年にムッソリーニのファシズム政権が成立した後、1925年に一部の女性に選挙権が認められたが、すぐに廃止され、実現したのはファシズム崩壊後の1946年であった[241]。
シプリアン・ブラマイレスは、フェミニストの中にはアドルフ・ヒトラーの台頭に反対した者もいたが、フェミニズムとナチス運動の関係は複雑だと述べている。ナチスは家父長制社会と女性の役割を賛美しながらも、女性の雇用の平等を認めるとも主張した[242]。しかし、ヒトラーとムッソリーニはフェミニズムに反対すると宣言し[242]、1933年にナチズムがドイツで台頭して以降、それ以前にフェミニストが勝ち取った政治的権利や経済的機会は失われた[236]。ジョルジュ・デュビらは、ファシズム社会は実際には階層的で、男性の力を強調し、女性は従属的な地位に置かれたと記す[236]。ブラマイレスはまた、1960年代以降のネオファシズムはフェミニズムに敵対的で、女性が「従来の役割」を受け入れるべきだと主張するとも述べる[242]。
公民権運動と反人種差別
1849年、アメリカのセネカフォールズ会議でエリザベス・キャディ・スタントンが女性参政権獲得に向けた演説をした際、奴隷解放運動を行っていたフレデリック・ダグラスはこれに賛同する演説を行うなど、黒人の参政権獲得と女性の参政権獲得の運動が協力関係にある時期もあった[243]。しかし、南北戦争後、黒人男性に選挙権が与えられたものの、女性には選挙権がないままであったことに対し、スタントンは「黒人の投票権か、それとも白人女性の投票権か」という主張から白人男性に訴えかけ、徐々に人種差別的な主張に傾いていった[244]。これに対して、フランシス・E・W・ハーパーは白人女性の特権性を指摘し、スタントンの議論は性差別だけに着目し人種差別を矮小化しているとして批判した[245]。このハーパーの批判は、後にインターセクショナリティの考え方に発展していくこととなった[245]。
新自由主義
新自由主義は、特にグローバルサウスにおいて、女性労働力に対する多大な悪影響を与えているとして、フェミニスト理論から批判されている[246]。非工業化国の女性の経験を分析すると、近代化政策によって有害な影響がもたらされることがあり、これは開発がすべての人々に利益をもたらすという典型的な主張を反証するものである[247]。
新自由主義の支持者は、女性の労働力参加を増やすことで経済的進歩が加速すると主張するが、フェミニスト批評家は、女性の参加だけでジェンダー平等が進むわけではないと批判する[248]。新自由主義は、女性的とされる労働を低く評価し、男性・男性性の構造的な優位を作るため、家庭や職場における女性従属という重要な問題に対応していないとされる[249]。グローバルサウスにおける雇用者は、女性的労働において、要求が少なく、従順で低賃金を受け入れる労働者を求める[250]。また、雇用者は女性を「副収入を得る者」とみなすことで、賃金を低くし、訓練や昇進を怠ることを正当化することが多い[251]。
社会への影響
フェミニズム運動は、社会に多くの変化をもたらした。これには、女性参政権の獲得、教育へのより広いアクセス、男性と比較してより平等な賃金、離婚訴訟を起こす権利、妊娠に関する個別の決定を行う権利(避妊や中絶へのアクセスを含む)、そして財産を所有する権利が含まれる[10]。特に第二波フェミニズムによって、性別役割分業等の性差別の撤廃や、女性の性と身体の自己決定権が掲げられて運動がなされ、国連の世界女性会議・女性差別撤廃条約などの成果が上がったが、現代にも性差別は根強く存在している[252]。江原由美子は、第二波以後のフェミニズムによって起きた社会の変化と、変化が滞っている点について、2022年時点の大きな傾向を以下のようにまとめている。
- 各国での性別役割分業意識が変革された。性別役割分業意識が比較的高いとされる日本においても、「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という考え方に反対する人が多数派となった[252]。
- 各国で女性の大学進学率が高くなり、女性が上回る国もある[252]。
- 女性の就業率は各国で上昇したが、国によって差が大きい[252]。
- 管理職女性比率・女性賃金率も上昇傾向にあるが、国によって差が大きい(男女の賃金差)。男性と全く同じレベルの管理職女性比率・女性賃金率を実現した国はない[252][注釈 6]。
- 女性の政治参加率も上昇傾向だが、国によって大きな差があり、特に日本は低い[252][注釈 7]。
- 男性の家事負担・育児分担の割合も上昇傾向だが、国によって差が大きい[252]。
- 女性の人権については、悪化している国としてアフガニスタン・南スーダン・シリアがある[252]。
- 女性への性暴力件数については、日本では減少の傾向は見い出せない[252]。
- 性的マイノリティへの差別や人権侵害も多く、同性愛が犯罪とされる国は76か国あり、メディアでの偏見も蔓延している[252]。
以上を踏まえて、江原は、ジェンダー平等はいまだに実現していないが、社会調査の結果からジェンダー平等の実現を望む人が多くいることは確かで、フェミニズムは現代も必要とされていると述べる[252]。
言語
ジェンダー・ニュートラルな言語を支持する人々は、性別特有の言語の使用がしばしば男性の優越を暗示し、不平等な社会状態を反映すると主張する[257]。たとえば、『The Handbook of English Linguistics』は、男性代名詞や、性別特有の職業名は、英語の言語慣習が歴史的に男性を人類の典型として扱ってきた例であるとする[258]。
社会の反応
フェミニズムに対して、さまざまな人々が反応しており、その支持者と批判者には男女ともに含まれている。アメリカの大学生の間では、男女ともにフェミニストを自称するよりも、フェミニズムの理念を支持する傾向が強い[259][260][261]。アメリカのメディアはフェミニズムを否定的に描写する傾向があり、フェミニストは「一般女性の日常的な仕事やレジャー活動と結びつくことが少ない」とされる[262][263]。しかし、最近の研究によると、自らフェミニストを名乗る人々やさまざまな形態のフェミニズムに関する議論に触れることで、自分自身もフェミニズムに共感を持つようになる人が増えていることが示されている[264]。
男性と男性性
フェミニズム理論は、男性性の社会的構築と、それがジェンダー平等の目標に及ぼす影響を分析してきた。ここでは、男性性が社会的に構築されることによって、男性が攻撃性や競争と結びつけられ、家父長制的で不平等なジェンダー関係を強化するとされ、フェミニズムによって問題視される[85][265]。フェミニズム理論によれば、家父長的な文化は、男性の「可能な男性性の形態」を制限し、結果的にその人生の選択肢を狭めている[266]。
フェミニズムにおける男性の参加は、一般的にはフェミニストによって奨励され、ジェンダー平等を社会全体で達成するための重要な戦略とみなされる[267]。過去にはフェミニストになれるのは女性だけだと主張されることもあったが、歴史的に見ると、男性もフェミニストとして積極的に活動し、影響を及ぼしてきた[268]。現在のフェミニズム理論と男性性研究において広く承認されているのは、男女が協力してフェミニズムの大目標を達成すべきというものである[266]。
プロフェミニズム
プロフェミニズムとは、支持者自身がフェミニスト運動の一員であることを明らかにせずに、フェミニズムを支持することである。この用語は、主にフェミニズムを積極的に支持する男性に対して使われることが多い。プロフェミニストの男性の活動には、学校での少年や若い男性への暴力防止教育、職場でのセクハラに関するワークショップの提供、地域教育キャンペーンの実施、そして暴力を行う男性へのカウンセリングが含まれ、フェミニストや女性支援サービスと協力して行われることもある[269]。
反フェミニズムとフェミニズム批判
反フェミニズムとは、フェミニズムに対して部分的または全体的に反対することである[270]。19世紀には、反フェミニズムは主に女性参政権への反対に焦点を当てていた。後に、高等教育機関への女性の進出に反対する者は、教育が女性にとって過度の身体的負担であると主張した。他のアンチフェミニストは、女性の労働市場への進出や労働組合への参加、陪審員への選出、避妊や性的自己決定権の取得に反対した[271]。
反フェミニズムの立場を取る理由としては、伝統的な価値観や宗教的信念に反するからという場合がある。例えば、離婚や未婚の女性を受け入れることが有害であるとか、男性と女性は本質的に異なるから社会におけるジェンダー・ロールを維持すべきだと主張されることがある[272][273]。他にも、女性の労働・政治への進出や参政権によって、男性支配が弱まることに反対する人もいる[274][275]。ダフネ・パタイとノレッタ・コルトジェは、「反フェミニズム」という言葉が、フェミニズムに関する学術的議論を黙らせるために使われていると主張する[276][277]。
脚注
注釈
- ^ ほか、男女同権主義に基づく、女権拡張主義、女性尊重主義などと呼ばれることもある[5]。フェミニズムの推進者や同調者のことを「フェミニスト」と呼称する[6]。
- ^ ただ、これらの例で「フェミニスト」は否定的な意味で使われており、社会の性別役割分業に従わず、性差別に異議を唱える女性を「性の混乱」として批判する意味合いが込められていた[22]。
- ^ 1870年有夫女財産法は、妻の財産法上の地位を、直接・一般的に規定した最初の法律であるとされる[39]。
- ^ ドメスティック・バイオレンスという言葉は、暴力が妻だけではなく、恋人・子供やその他の親族にも及ぶことを示すために新しく作られた言葉である[62]。
- ^ 日本では、1878年の上町町議会の区会議員選挙で、楠瀬喜多が、戸主として納税しているのに女性という理由でだから選挙権がないことに対して抗議した。これにより、1880年、日本で初めて、上町町議会で戸主に限定した女性参政権が認められた。しかし4年後、日本政府は区町村会法を改訂し、区町村会は規則制定権を持たなくなり、再び選挙から女性は排除された[63]。
- ^ 日本の賃金格差は、先進国で最下位レベルで、正社員女性は男性の75%ほどの賃金である[253]。また、2014年の新卒採用において、総合職で採用された学生のうち女子学生は20%であった[254]。
- ^ 日本における2015年の衆議院の女性議員割合は9.5%であり、先進国中では最も低い水準となっている[255]。なお、2000年から2005年度までのIPUの調査によれば、地域別でみるとEUの31.0%がトップ、南北アメリカ18.4%、アジア15.5%、サハラ以南アフリカ14.9%、アラブ諸国6.0%となっている[256]。
出典
- ^ Lengermann & Niebrugge 2010, p. 223.
- ^ Mendus, Susan (2005年) [1995]. "Feminism". In Honderich, Ted (ed.). The Oxford Companion to Philosophy (2nd ed.). Oxford University Press. pp. 291–294. ISBN 978-0-19-926479-7。
- ^ Hawkesworth, Mary E. (2006年). Globalization and Feminist Activism. Rowman & Littlefield. pp. 25–27. ISBN 978-0-7425-3783-5。
- ^ Beasley, Chris (1999年). What Is Feminism?. New York: Sage. pp. 3–11. ISBN 978-0-7619-6335-6。
- ^ 井上輝子, 上野千鶴子, 江原由美子, 大沢真理, 加納実紀代(編)、2002年『岩波 女性学事典』岩波書店。[要ページ番号]
- ^ “フェミニスト / Feministに関する最新記事”. Vogue Japan. 2022年1月17日閲覧。
- ^ Gamble, Sarah (2001年) [1998]. "Introduction". The Routledge Companion to Feminism and Postfeminism. Routledge. pp. VII. ISBN 978-0-415-24310-0。
- ^ a b c d 中澤 2020, pp. 2–3.
- ^ a b デラップ 2023, pp. 10–14.
- ^ a b Messer-Davidow 2002.
- ^ a b c d e f g h i j 三成 2023.
- ^ シュラー 2023, pp. 14–17.
- ^ 藤高 2022, p. 141.
- ^ a b 藤高 2022, pp. 126–129.
- ^ “上野千鶴子さん「野蛮な靴と思って何が悪い?フェミも多様なの」”. かがみよかがみ. 2023年2月22日閲覧。
- ^ フックス 2020, p. 109.
- ^ Sommers 1995, p. 320.
- ^ 梅垣千尋「ウルストンクラフトのフェミニズム : 理性・徳・知識における平等」『青山學院女子短期大學紀要』第73巻、2019年、1頁。doi:10.34321/21156。
- ^ 武藤健一「コンドルセの女性参政権論 : 「女性の市民権の承認について」を中心に」『一橋論叢』第112巻第1号、一橋大学、1994年7月1日、152–169頁。
- ^ Goldstein, Leslie F. (1982年). "Early Feminist Themes in French Utopian Socialism: The St.-Simonians And Fourier". Journal of the History of Ideas. 43 (1): 91–108. doi:10.2307/2709162. JSTOR 2709162。
- ^ “Féminisme : Appelation D'origine - Vacarme” (French). vacarme.org (1997年9月2日). 2024年8月7日閲覧。
- ^ a b c Fayolle 2018.
- ^ Grever, Maria (1994年). "Dutch feminist pioneer Mina Kruseman in a letter to Alexandre Dumas". Strijd Tegen De Stilte. Johanna Naber (1859–1941) En De Vrouwenstem in Geschiedenis (Dutch). Hilversum Verloren. p. 31. ISBN 90-6550-395-1。
- ^ Offen, Karen (1987年). "Sur L'origine Des Mots 'Féminisme' Et 'Féministe'". Revue d'histoire moderne et contemporaine. 34 (3): 492–96. doi:10.3406/rhmc.1987.1421. JSTOR 20529317。
- ^ Cott, Nancy F. (1987年). The Grounding of Modern Feminism. New Haven: Yale University Press. p. 13. ISBN 978-0-300-04228-3。
- ^ "Feminism". Oxford English Dictionary (3rd ed.). Oxford University Press. 2012年.
Advocacy of equality of the sexes and the establishment of the political, social, and economic rights of the female sex; the movement associated with this.
- ^ Lerner, Gerda (1993年). The Creation of Feminist Consciousness From the Middle Ages to Eighteen-Seventy. Oxford University Press. pp. 1–20.
- ^ Walters, Margaret (2005年). Feminism: A Very Short Introduction. Oxford University. pp. 1–176. ISBN 978-0-19-280510-2。
- ^ Kinnaird, Joan; Astell, Mary (1983年). "Inspired by ideas (1668–1731)". In Spender, Dale (ed.). There's Always Been a Women's Movement. London: Pandora Press. pp. 29–. ISBN 9780863580024。
- ^ Botting, Eileen Hunt; Houser, Sarah L. (2006年). "'Drawing the Line of Equality': Hannah Mather Crocker on Women's Rights". American Political Science Review. 100 (2): 265–78. doi:10.1017/S0003055406062150. JSTOR 27644349. S2CID 144730126。
- ^ デラップ 2023, pp. 23–27.
- ^ Humm, Maggie (1995年). The Dictionary of Feminist Theory. Columbus: Ohio State University Press. p. 251. ISBN 978-0133553895。
- ^ Krolokke, Charlotte; Sorensen, Anne Scott (2005年). "Three Waves of Feminism: From Suffragettes to Grrls". Gender Communication Theories and Analyses: From Silence to Performance. Sage. p. 24. ISBN 978-0-7619-2918-5。
- ^ “Feminism - The Fourth Wave of Feminism”. Britannica. 2021年11月29日閲覧。
- ^ “Feminism: The Fourth Wave”. Encyclopedia Britannica. 2019年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月21日閲覧。
- ^ Wroath, John (1998年). Until They Are Seven, The Origins of Women's Legal Rights. Waterside Press. ISBN 1-872870-57-0。
- ^ Mitchell, L. G. (1997年). Lord Melbourne, 1779–1848. Oxford University Press.
- ^ Perkins, Jane Gray (1909年). The Life of the Honourable Mrs. Norton. John Murray.
- ^ 坂本圭右「夫婦別産制の現代的意義とその機能--イギリス法における別産原理の生成とその展開とを顧みて-1-」『中京法学』1–1、1966年、193-226頁。
- ^ a b c d Freedman 2003, p. 464.
- ^ “Votes for Women Electoral Commission”. Elections New Zealand (13 April 2005). 2013年9月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月31日閲覧。
- ^ “Women and the Right to Vote in Australia”. Australian Electoral Commission (2011年1月28日). 2013年4月26日閲覧。
- ^ Phillips, Melanie (2004年). The Ascent of Woman: A History of the Suffragette Movement and the Ideas Behind It. London: Abacus. pp. 1–370. ISBN 978-0-349-11660-0。
- ^ Ruether, Rosemary Radford (2012年). Women and Redemption: A Theological History (2nd ed.). Minneapolis: Fortress Press. pp. 112–118, 136–39. ISBN 978-0-8006-9816-4。
- ^ Flexner, Eleanor (1996年). Century of Struggle: The Woman's Rights Movement in the United States. The Belknap Press. pp. xxviii–xxx. ISBN 978-0-674-10653-6。
- ^ Wheeler, Marjorie W. (1995年). One Woman, One Vote: Rediscovering the Woman Suffrage Movement. Troutdale, OR: NewSage Press. p. 127. ISBN 978-0-939165-26-1。
- ^ Kaplan, Temma (1985年). "On the Socialist Origins of International Women's Day". Feminist Studies. 11 (1): 163–171. doi:10.2307/3180144. JSTOR 3180144。
- ^ “History of International Women's Day”. United Nations. 2012年5月26日閲覧。
- ^ a b 江上 2023a, pp. 158–59.
- ^ デラップ 2023, p. 96.
- ^ a b 江上 2023b, pp. 180–181.
- ^ 後藤 2024, pp. 285–291.
- ^ 後藤 2024, pp. 292–293.
- ^ 後藤 2024, pp. 286–287.
- ^ Ettehadieh, Mansoureh (2004年). "The Origins and Development of the Women's Movement in Iran, 1906–41". In Beck, Lois; Nashat, Guity (eds.). Women in Iran from 1800 to the Islamic Republic. University of Illinois Press. pp. 85–106. ISBN 978-0-252-07189-8。
- ^ a b c d e 江原 2022, pp. 30–31.
- ^ 江原 2022, pp. 31–32.
- ^ Guillaumin, Colette (1994年). Racism, Sexism, Power, And Ideology. pp. 193–95.
- ^ Meltzer, Françoise (1995年). Hot Property: The Stakes and Claims of Literary Originality. p. 88.
- ^ Allison, Julie A. (1995年). Rape: The Misunderstood Crime. p. 89.
- ^ フリードマン 2005.
- ^ a b デラップ 2023, pp. 154–155.
- ^ 入江春行『与謝野晶子とその時代 女性解放と歌人の人生』、新日本出版社、2003年
- ^ a b c 天野 2006, pp. 303–312.
- ^ a b 長沢 2023, pp. 200–201.
- ^ “Islamic Feminism Means Justice to Women”. The Mili Gazette. 21 August 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年8月31日閲覧。
- ^ Parpart, Jane L.; Connelly, M. Patricia; Connelly, Patricia; Barriteau, V. Eudine; Barriteau, Eudine (2000年). Theoretical Perspectives on Gender and Development. Ottawa, Canada: International Development Research Centre. p. 215. ISBN 978-0-88936-910-8。
- ^ Echols 1989.
- ^ Hanisch, Carol (1 January 2006). “Hanisch, New Intro to 'The Personal Is Political' – Second Wave and Beyond”. The Personal Is Political. 2008年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月8日閲覧。
- ^ Fox, Margalit (2006年2月5日). "Betty Friedan, Who Ignited Cause in 'Feminine Mystique,' Dies at 85". The New York Times. 2021年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年2月19日閲覧。
- ^ ベティ・フリーダン(著)『新しい女性の創造』三浦富美子(訳)、大和書房、2004年。
- ^ “What Germaine Greer and The Female Eunuch Mean to Me”. The Guardian (January 26, 2014). 2023年1月16日閲覧。
- ^ “Friday Essay: The Female Eunuch at 50, Germaine Greer's Fearless, Feminist Masterpiece”. The Conversation (October 9, 2020). 2023年1月16日閲覧。
- ^ 工藤 2022, p. 41.
- ^ 吉原令子(著)「ウーマンリブ」。山口みどり(編)『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房、2023年、218–219頁。ISBN 9784623093502。
- ^ よりみちこ (2015年4月9日). “1位は7万6千円も違う!男女の賃金格差が激しい職業トップ10”. 仕事. Suzie. 2016年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月21日閲覧。
- ^ 提言 男女共同参画社会の形成に向けた民法改正 日本学術会議
- ^ 江原 2022, p. 68.
- ^ 江原 2022, p. 69.
- ^ Piepmeier, Alison (2009年). Girl Zines: Making Media, Doing Feminism. New York: New York University Press. p. 45. ISBN 9780814767733。
- ^ “The Riot Grrrl Movement”. New York Public Library (19 June 2013). 2013年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月16日閲覧。
- ^ a b Walker 1992.
- ^ Baumgardner, Jennifer; Richards, Amy (2000年). Manifesta: Young Women, Feminism, And the Future. New York: Farrar, Straus and Giroux. p. 77. ISBN 978-0-374-52622-1。
- ^ a b Gillis 2007, pp. xxviii, 275–76.
- ^ a b Faludi 1992.
- ^ Henry, Astrid (2004年). Not My Mother's Sister: Generational Conflict and Third-Wave Feminism. Bloomington: Indiana University Press. pp. 1–288. ISBN 978-0-253-21713-4。
- ^ a b c Walker 1983, p. 397.
- ^ “女性差別 わたしの視点① フェミニズムの立場から ~名古屋市立大学准教授・菊地夏野さんに聞く~”. NHK (2021年12月19日). 2022年5月10日閲覧。
- ^ a b Cochrane 2013.
- ^ “Feminism: A Fourth Wave? | The Political Studies Association (PSA)”. Feminism: A fourth wave? | The Political Studies Association (PSA). 2021年11月29日閲覧。
- ^ Chamberlain 2017, p. 115.
- ^ Solomon, Deborah (2009年11月13日). "The Blogger and Author on the Life of Women Online". The New York Times Magazine. 2018年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月16日閲覧。
- ^ Zerbisias, Antonia (16 September 2015). “Feminism's Fourth Wave Is the Shitlist”. NOW Toronto. 2020年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月21日閲覧。
- ^ Chamberlain 2017, pp. 114–115.
- ^ Matheson, Kelsey (2017年10月17日). "You Said #MeToo. Now What Are We Going To Do About It?". The Huffington Post. 2024年10月14日閲覧。
- ^ Zacharek, Stephanie; Dockterman, Eliana; Sweetland Edwards, Haley (2017年12月6日). "TIME Person of the Year 2017: The Silence Breakers". Time (アメリカ英語). 2024年9月26日閲覧。
- ^ スリニヴァサン 2023, pp. 238―239.
- ^ Wright 2000.
- ^ Abbott, Pamela; Tyler, Melissa; Wallace, Claire (2005年). An Introduction to Sociology: Feminist Perspectives (3rd ed.). Routledge. p. xi. ISBN 978-1-134-38245-3。
- ^ Mateo–Gomez, Tatiana (2009年). "Feminist Criticism". In Richter, William L. (ed.). Approaches to Political Thought. Rowman & Littlefield. p. 279. ISBN 978-1-4616-3656-4。
- ^ Jones, Amelia (1994年). "Postfeminism, Feminist Pleasures, and Embodied Theories of Art". In Frueh, Joana; Langer, Cassandra L.; Raven, Arlene (eds.). New Feminist Criticism: Art, Identity, Action. New York: HarperCollins. pp. 16–41, 20.
- ^ Chunn, Dorothy E. (2011年11月1日). ""Take It Easy Girls": Feminism, Equality, and Social Change in the Media (2007)". In Chunn, Dorothy E.; Boyd, Susan; Lessard, Hester (eds.). Reaction and Resistance: Feminism, Law, And Social Change. UBC Press. p. 31. ISBN 978-0-7748-4036-1。
- ^ Voet, Rian (1998年). "Categorizations of feminism". Feminism and Citizenship. SAGE. p. 25. ISBN 1-4462-2804-5。
- ^ Lindsey, Linda L. (2015年). Gender Roles: A Sociological Perspective. Routledge. p. 17. ISBN 978-1-317-34808-5。
- ^ “Kinds of Feminism”. University of Alabama in Huntsville. 2024年10月16日閲覧。
- ^ Marilley, Suzanne M. (1996年). Woman Suffrage and the Origins of Liberal Feminism in the United States, 1820–1920. Harvard University Press. ISBN 0-674-95465-3。[要ページ番号]
- ^ Griffiths, Morwenna (1995年4月). "Making a Difference: Feminism, Post-Modernism And the Methodology of Educational Research". British Educational Research Journal (英語). 21 (2): 219–235. doi:10.1080/0141192950210207. ISSN 0141-1926。
- ^ Rottenberg, Catherine (2014年). "The Rise of Neoliberal Feminism". Cultural Studies. 28 (3): 418–437. doi:10.1080/09502386.2013.857361. S2CID 144882102。
- ^ “Hvem Vi Er”. Norwegian Association for Women's Rights. 2020年10月28日閲覧。
- ^ Zhang, Y.; Rios, K. (2021年). "Understanding Perceptions of Radical and Liberal Feminists: The Nuanced Roles of Warmth and Competence". Sex Roles. 86 (3–4): 143–158. doi:10.1007/s11199-021-01257-y. S2CID 243479502。
- ^ “Liberal Feminism”. Stanford Encyclopedia of Philosophy. Metaphysics Research Lab, Stanford University (2018年). 2024年10月16日閲覧。
- ^ a b デラップ 2023, p. 106.
- ^ スリニヴァサン 2023, pp. 107–8.
- ^ スリニヴァサン 2023, pp. 110–111.
- ^ フックス 2000, p. 15-16.
- ^ シュラー 2023, pp. 276–277.
- ^ シュラー 2023, pp. 300–302.
- ^ a b 工藤 2022, p. 42.
- ^ スリニヴァサン 2023, pp. 114–115.
- ^ Hennessy, Rosemary; Ingraham, Chrys (1997年). Materialist Feminism: A Reader in Class, Difference, And Women's Lives. London: Routledge. pp. 1–13. ISBN 978-0-415-91634-9。
- ^ Bottomore, T.B. (1991年). A Dictionary of Marxist Thought. Wiley-Blackwell. p. 215. ISBN 978-0-631-18082-1。
- ^ Barbara Ehrenreich (1976年). “What Is Socialist Feminism?”. feministezine.com. 2011年12月3日閲覧。
- ^ スリニヴァサン 2023, pp. 112–113.
- ^ Dunbar-Ortiz, Roxanne (2002年). Quiet Rumours. AK Press. pp. 11–13. ISBN 978-1-902593-40-1。
- ^ "Françoise d'Eaubonne, une figure du féminisme français". Le Monde.fr (フランス語). 2005年8月5日. 2019年1月11日閲覧。
- ^ a b Hill Collins 2000, p. 308-335.
- ^ a b c Narayan 1997, pp. 20–28, 113, 161–87.
- ^ a b c デラップ 2023, pp. 107–111.
- ^ 藤高 2022, pp. 134–140.
- ^ Ogunyemi, Chikwenye Okonjo (1985年). "Womanism: The Dynamics of the Contemporary Black Female Novel in English". Signs: Journal of Women in Culture and Society. 11 (1): 63–80. doi:10.1086/494200. JSTOR 3174287. S2CID 143836306。
- ^ Kolawole, Mary Ebun Modupe (1997年). Womanism and African Consciousness. Trenton, N.J.: Africa World Press. p. 216. ISBN 978-0-86543-540-7。
- ^ Obianuju Acholonu, Catherine (1995年). Motherism: The Afrocentric Alternative to Feminism. Afa Publ. p. 144. ISBN 978-978-31997-1-2。
- ^ a b 藤高 2022, pp. 140–147.
- ^ a b Grady 2018.
- ^ “Why Transphobia Is a Feminist Issue”. National Organization for Women (2014年9月8日). 2021年11月24日閲覧。
- ^ “NOW Celebrates International Transgender Day of Visibility”. National Organization for Women (2021年3月31日). 2021年11月24日閲覧。
- ^ Platt, Lisa F.; Szoka, Spring L. (2021年1月28日). "Endorsement of Feminist Beliefs, Openness, And Mindful Acceptance as Predictors of Decreased Transphobia". Journal of Homosexuality. 68 (2): 185–202. doi:10.1080/00918369.2019.1651109. PMID 31411935. S2CID 199663381。
- ^ Conlin, Sarah E.; Douglass, Richard P.; Moscardini, Emma H. (2021年1月2日). "Predicting Transphobia Among Cisgender Women and Men: The Roles of Feminist Identification and Gender Conformity". Journal of Gay & Lesbian Mental Health. 25 (1): 5–19. doi:10.1080/19359705.2020.1780535. S2CID 225798026。
- ^ Brassel, Sheila T.; Anderson, Veanne N. (2020年4月). "Who Thinks Outside the Gender Box? Feminism, Gender Self-Esteem, And Attitudes Toward Trans People". Sex Roles. 82 (7–8): 447–462. doi:10.1007/s11199-019-01066-4. S2CID 198663918。
- ^ シュラー 2023, p. 300.
- ^ Zanghellini, Aleardo (2020年4月). "Philosophical Problems With the Gender-Critical Feminist Argument Against Trans Inclusion" (PDF). SAGE Open. 10 (2): 215824402092702. doi:10.1177/2158244020927029. S2CID 219733494. 2020年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。
- ^ "A Backlash Against Gender Ideology Is Starting in Universities". Economist. 2021年6月5日. 2021年6月6日閲覧。
- ^ Gordon, Tom (10 June 2021). “Woman Accused of Transphobia Wins Landmark Employment Case”. HeraldScotland. 2021年6月10日閲覧。
- ^ シュラー 2023, pp. 275–276.
- ^ “Why Is British Media So Transphobic?”. The Outline (5 November 2018). 2019年10月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月3日閲覧。
- ^ Dalbey, Alex (2018年8月12日). "TERF Wars: Why Trans-Exclusionary Radical Feminists Have No Place in Feminism". Daily Dot. 2019年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月27日閲覧。
- ^ Dastagir, Alia (2017年3月16日). "A Feminist Glossary Because We Didn't All Major in Gender Studies". USA Today. 2019年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月24日閲覧。
- ^ Lewis, Sophie (2019年2月7日). "Opinion | How British Feminism Became Anti-Trans". The New York Times. ISSN 0362-4331. 2019年11月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月5日閲覧。
- ^ Taylor, Jeff (2017年10月23日). “The Christian Right's New Strategy: Divide and Conquer the LGBT Community”. www.lgbtqnation.com. 2019年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月9日閲覧。
- ^ a b Chodorow 1989.
- ^ a b Gilligan 1977.
- ^ Encyclopedia of Sex and Gender. Detroit, Mich.: Macmillan Reference. 2007年.
- ^ Pateman, Carole (2014年3月25日). The Sexual Contract. John Wiley & Sons. p. 207. ISBN 978-0-7456-8035-4。
- ^ a b デラップ 2023, pp. 85–86.
- ^ Tickner, Ann J. (2001年). "Patriarchy". Routledge Encyclopedia of International Political Economy: Entries PZ. Taylor & Francis. pp. 1197–1198. ISBN 978-0-415-24352-0。
- ^ a b デラップ 2023, pp. 116–118.
- ^ “standpoint theory | feminism”. Encyclopædia Britannica. 2016年2月10日閲覧。
- ^ Hill Collins 2000, p. 308–335.
- ^ Harding, Sandra (2003年). The Feminist Standpoint Theory Reader: Intellectual and Political Controversies. London: Routledge. pp. 1–16, 67–80. ISBN 978-0-415-94501-1。
- ^ Bergoffen, Debra (16 August 2010). “Simone De Beauvoir”. Metaphysics Research Lab, CSLI, Stanford University. 2011年12月4日閲覧。
- ^ Whelehan, Imelda (1995年). Modern Feminist Thought: From the Second Wave to 'Post-Feminism'. Edinburgh: Edinburgh University Press. pp. 25–43. ISBN 978-0-7486-0621-4。
- ^ 中澤 2020, pp. 4–5.
- ^ West, Candace; Zimmerman, Don H. (1987年6月). "Doing gender". Gender & Society. 1 (2): 125–151. doi:10.1177/0891243287001002002. JSTOR 189945. S2CID 220519301。 Pdf.
- ^ Benhabib, Seyla (2001年). "From identity politics to social feminism: a plea for the Nineties". In Melzer, Arthur M.; Weinberger, Jerry; Zinman, M. Richard (eds.). Politics at the Turn of the Century. Lanham, Maryland: Rowman & Littlefield. pp. 27–41. ISBN 978-0-8476-9446-4。
- ^ Randall, Vicky (2010年). "Feminism". In Marsh, David; Stoker, Gerry (eds.). Theory and methods in political science (3rd ed.). Basingstoke: Palgrave Macmillan. p. 116. ISBN 978-0-230-57627-8。
- ^ Yeatman, Anna (1994年). "The epistemological politics of postmodern feminist theorizing". Postmodern Revisionings of the Political. New York: Routledge. pp. 15–22. ISBN 978-0-415-90198-7。
- ^ a b c バトラー 1999, pp. 27–29.
- ^ a b Duggan 1995, pp. 1–14.
- ^ a b Hansen 1990.
- ^ a b Gerhard 2001.
- ^ a b Leidholdt 1990.
- ^ a b Vance 1989.
- ^ “Sex Work”. Libertarianism.org. 2023年8月31日閲覧。
- ^ a b 福永 2017, pp. 109–110.
- ^ 黄 2007, p. 15.
- ^ スリニヴァサン 2023, pp. 95―99.
- ^ a b スリニヴァサン 2023, pp. 107―111.
- ^ スリニヴァサン 2023, pp. 113―114.
- ^ Zajko, Vanda; Leonard, Miriam (2006年). Laughing With Medusa: Classical Myth and Feminist Thought. Oxford: Oxford University Press. p. 445. ISBN 978-0-19-927438-3。
- ^ Howe, Mica; Aguiar, Sarah Appleton (2001年). He Said, She Says: An RSVP To the Male Text. Madison, NJ: Fairleigh Dickinson University Press. p. 292. ISBN 978-0-8386-3915-3。
- ^ Pollock, Griselda (2007年). Encounters in the Virtual Feminist Museum: Time, Space and the Archive. Routledge. ISBN 978-0-415-41374-9。[要ページ番号]
- ^ Ettinger, Bracha; Judith Butler; Brian Massumi; Griselda Pollock (2006年). The Matrixial Borderspace. Minneapolis: University of Minnesota Press. p. 245. ISBN 978-0-8166-3587-0。
- ^ Brabeck, Mary; Brown, Laura (1997年). "Feminist Theory and Psychological Practice.". In Worell, Judith; Johnson, Norine G. (eds.). Shaping the future of feminist psychology: Education, research, and practice. Washington: American Psychological Association. pp. 15–35. doi:10.1037/10245-001. ISBN 978-1-55798-448-7. 2021年1月22日閲覧。
- ^ Florence, Penny; Foster, Nicola (2001年). Differential Aesthetics: Art Practices, Philosophy and Feminist Understandings. Aldershot, Hants, England: Ashgate. p. 360. ISBN 978-0-7546-1493-7。
- ^ デラップ 2023, p. 35.
- ^ Showalter, Elaine (1979年). "Towards a Feminist Poetics". In Jacobus, M. (ed.). Women Writing About Women. Croom Helm. pp. 25–36. ISBN 978-0-85664-745-1。
- ^ a b c デラップ 2023, pp. 104–105.
- ^ Garner, Bryan, ed. (2014年). Black's Law Dictionary (10th ed.). St. Paul, Minn.: Thomson Reuters. p. 985. ISBN 978-0-314-61300-4。
- ^ Minda, Gary (1995年). Postmodern Legal Movements: Law and Jurisprudence at Century's End. N.Y.C.: New York University Press. pp. 129–30. ISBN 978-0-8147-5510-5.
Feminist legal scholars, despite their differences, appear united in claiming that 'masculine' jurisprudence ... fails to acknowledge, let alone respond to, the interests, values, fears, and harms experienced by women.
- ^ a b デラップ 2023, pp. 147–149.
- ^ a b c 工藤 2022, pp. 46–47.
- ^ 工藤 2022, p. 44.
- ^ Badran, Margot (2002年1月17日 – 23日). "Islamic Feminism: What's in a Name?". 2015年12月17日閲覧。
- ^ Catalonian Islamic Board (2008年10月24日 – 27日). "II International Congress on Islamic Feminism". feminismeislamic.org. 2007年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月9日閲覧。
- ^ 荒井美月「仏教における女性研究の変遷 : 仏典の研究から実態の研究へ」『現代社会研究科論集 : 京都女子大学大学院現代社会研究科紀要』第16巻、2022年。CRID 1050573803642137856。
- ^ リタ・グロス(著)、安冨信哉(訳)「法に性別なし - 仏教における性と解放 -」『大谷大学真宗総合研究所研究所紀要』第7号、1990年。CRID 1050581766258778240。
- ^ 中澤 2020, pp. 9–10.
- ^ Lindlof 2002, p. 357.
- ^ Harding, Sandra (1989年). "Is There a Feminist Method". In Nancy Tuana (ed.). Feminism & Science. Indiana University Press. p. 17. ISBN 978-0-253-20525-4。
- ^ Hubbard, Ruth (1990年). The Politics of Women's Biology. Rutgers University Press. p. 16. ISBN 978-0-8135-1490-1。
- ^ Hankinson Nelson, Lynn (1990年). Who Knows: From Quine To a Feminist Empiricism. Temple University Press. p. 30. ISBN 978-0-87722-647-5。
- ^ Hankinson Nelson, Lynn (1997年). Feminism, Science, And the Philosophy of Science. Springer. p. 61. ISBN 978-0-7923-4611-1。
- ^ Cortina, L. M.; Curtin, N.; Stewart, A. J. (2012年). "Where Is Social Structure in Personality Research? A Feminist Analysis of Publication Trends". Psychology of Women Quarterly. 36 (3): 259–73. doi:10.1177/0361684312448056. S2CID 13065637。
- ^ Code, Lorraine (2000年). Encyclopedia of Feminist Theories. Taylor & Francis. p. 89. ISBN 978-0-415-13274-9。
- ^ Bem, Sandra L. (1993年). The lenses of gender: transforming the debate on sexual inequality. New Haven: Yale University Press. p. 6. ISBN 978-0-300-05676-1。
- ^ スターリング 1990, pp. 186–193.
- ^ スターリング 1990, pp. 311–320.
- ^ Worell, Judith (2000年9月). "Feminism in Psychology: Revolution or Evolution?" (PDF). The Annals of the American Academy of Political and Social Science. 571: 183–96. doi:10.1177/0002716200571001013. JSTOR 1049142. 2014年7月14日時点のオリジナルよりアーカイブ (PDF)。2024年7月12日閲覧。
- ^ Prochner, Isabel (2019年). Feminist Contributions to Industrial Design and Design for Sustainability Theories and Practices.[要ページ番号]
- ^ Prochner, Isabel; Marchand, Anne (2018年6月28日). "Learning from Feminist Critiques of and Recommendations for Industrial Design". Learning from Feminist Critiques of and Recommendations for Industrial Design. DRS2018: Catalyst. Vol. 2. doi:10.21606/drs.2018.355. ISBN 9781912294275. S2CID 150913753。
- ^ a b デラップ 2023, pp. 140–146.
- ^ Echols 1989, pp. 269–278.
- ^ Blake Gopnik (2007年4月22日). "What Is Feminist Art?". The Washington Post. 2011年12月3日閲覧。
- ^ Ferrando, Francesca (2016年). "A feminist genealogy of posthuman aesthetics in the visual arts". Palgrave Communications. 2 (16011): 16011. doi:10.1057/palcomms.2016.11。
- ^ 近藤 2024, p. 7.
- ^ 近藤 2024, pp. 10–11.
- ^ a b Blain, 1990 & vii–x.
- ^ Buck, Claire, ed. (1992年). The Bloomsbury Guide to Women's Literature. Prentice Hall. p. vix.
- ^ Salzman, Paul (2000年). "Introduction". Early Modern Women's Writing. Oxford UP. pp. ix–x.
- ^ Helford, Elyce Rae (2005年). "Feminist Science Fiction". In Westfahl, Gary (ed.). The Greenwood Encyclopedia of Science Fiction and Fantasy. Greenwood Press. pp. 289–291. ISBN 978-0-300-04854-4。
- ^ Lips, Hilary M. (1990年). "Using Science Fiction to Teach the Psychology of Sex and Gender". Teaching of Psychology. 17 (3): 197–98. doi:10.1207/s15328023top1703_17. S2CID 145519594。
- ^ “Hrotsvitha of Gandersheim (C. 935–1001) | Encyclopedia.com”. www.encyclopedia.com. 2024年7月31日閲覧。
- ^ Shah, Mahvish (2018年). “I Know Why The Caged Bird Sings: Angelou's Quest to Truth and Power”. Feminism in India. 2024年10月16日閲覧。
- ^ Poetry Foundation (29 November 2018). “A Change of World”. Poetry Foundation. 2024年10月16日閲覧。
- ^ Case, Sue-Ellen (1983年12月). "Re-Viewing Hrotsvit". Theatre Journal. 35 (4): 533–542. doi:10.2307/3207334. JSTOR 3207334。
- ^ Frankforter, A. Daniel (1979年2月). "Hroswitha of Gandersheim and the Destiny of Women". The Historian. 41 (2): 295–314. doi:10.1111/j.1540-6563.1979.tb00548.x. ISSN 0018-2370。
- ^ a b Lont 1992, p. 242.
- ^ Peraino, Judith A. (2001年). "Girls with Guitars and Other Strange Stories". Journal of the American Musicological Society. 54 (3): 692–709. doi:10.1525/jams.2001.54.3.692. 2012年11月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ a b Mosbacher 2002.
- ^ a b c d Beard 2005.
- ^ “Women's Activism NYC”. www.womensactivism.nyc. 2023年12月15日閲覧。
- ^ “Remembering Films by Faten Hamama Championing Women's Rights | Egyptian Streets” (英語) (2019年5月27日). 2023年12月15日閲覧。
- ^ a b Hayward 2006, p. 134-135.
- ^ Erens, Patricia Brett (1991年). Issues in Feminist Film Criticism. Wiley & Sons. p. 270. ISBN 9780253206107。
- ^ Kuhn, A.; Radstone, S., eds. (1990年). Women's Companion to International Film. Virago. p. 153. ISBN 9781853810817。
- ^ a b c Duby 1994, p. 600.
- ^ Badia, Gilbert (1994年). Zetkin. Femminista Senza Frontiere. University of Michigan. p. 320. ISBN 978-88-85378-53-7。
- ^ Ibárruri, Dolores (1938年). Speeches & Articles, 1936–1938. University of Michigan. p. 263.
- ^ John McGuffin (1973年). “Internment – Women Internees 1916–1973”. 2009年3月22日閲覧。
- ^ “Dorothea Findlater – One Hundred Years On”. 2016年1月5日閲覧。 “Perhaps the most awkward arrest Wheeler made was Countess Markievicz, his wife's first cousin.”
- ^ a b c 山手, p. 176.
- ^ a b c Blamires 2006, pp. 232–233.
- ^ シュラー 2023, pp. 30–32.
- ^ シュラー 2023, pp. 35–36.
- ^ a b シュラー 2023, pp. 37–39.
- ^ Peterson 2014, p. 177.
- ^ Peterson 2014, p. 175.
- ^ Elias 2014, pp. 186–198.
- ^ Peterson 2014, p. 176.
- ^ Peterson 2014, p. 180.
- ^ Elias 2014, p. 189.
- ^ a b c d e f g h i j k 江原 2022, pp. 14–17.
- ^ “主要先進国で日本の「男女間賃金格差」は最下位!いまだに“女だから稼げない”っておかしくない?”. Woman type[ウーマンタイプ]. 2020年5月13日閲覧。
- ^ “平成26年度コース別雇用管理制度の実施・指導状況<速報版>を公表します”. www.mhlw.go.jp. 2020年5月13日閲覧。
- ^ https://web.archive.org/web/20150526191738/http://www.sankei.com/world/news/150305/wor1503050043-n1.html 「女性議員比率 日本9・5%で113位 なお先進国で最低水準」 産経ニュース 2015年3月5日 2015年5月26日閲覧
- ^ 日本共産党「女性国会議員―世界で15%超える」『しんぶん赤旗』2005年3月5日
- ^ Miller, Casey; Swift, Kate (1988年). The Handbook of Nonsexist Writing. N.Y.C.: Harper & Row. pp. 45, 64, 66. ISBN 978-0-06-181602-4。
- ^ Aarts, Bas; McMahon, April, eds. (2006年). The Handbook of English Linguistics. Malden, Mass.: Blackwell. ISBN 978-1-4051-1382-3。[要ページ番号]
- ^ Zucker, Alyssa N. (2004年). "Disavowing Social Identities: What It Means When Women Say, 'I'm Not a Feminist, But ...'". Psychology of Women Quarterly. 28 (4): 423–35. doi:10.1111/j.1471-6402.2004.00159.x. S2CID 144528255。
- ^ Burn, Shawn Meghan; Aboud, Roger; Moyles, Carey (2000年). "The Relationship Between Gender Social Identity and Support for Feminism". Sex Roles. 42 (11/12): 1081–89. doi:10.1023/A:1007044802798. S2CID 17743495。
- ^ Renzetti, Claire M. (1987年). "New Wave or Second Stage? Attitudes of College Women Toward Feminism". Sex Roles. 16 (5–6): 265–77. doi:10.1007/BF00289954. S2CID 144101128。
- ^ Lind, Rebecca Ann; Salo, Colleen (2002年). "The Framing of Feminists and Feminism in News and Public Affairs Programs in U.S. Electronic Media". Journal of Communication. 52: 211–28. doi:10.1111/j.1460-2466.2002.tb02540.x。
- ^ Roy, Robin E.; Weibust, Kristin S.; Miller, Carol T. (2007年). "Effects of Stereotypes About Feminists on Feminist Self-Identification". Psychology of Women Quarterly. 31 (2): 146–56. doi:10.1111/j.1471-6402.2007.00348.x. S2CID 145716135。
- ^ Moradi, B.; Martin, A.; Brewster, M. E. (2012年). "Disarming the threat to feminist identification: An application of personal construct theory to measurement and intervention". Psychology of Women Quarterly. 36 (2): 197–209. doi:10.1177/0361684312440959. S2CID 145166218。
- ^ Tong, Rosemarie Putnam (1998年). Feminist Thought: A More Comprehensive Introduction (2nd ed.). Boulder, Colo.: Westview Press. p. 70. ISBN 978-0-8133-3295-6。
- ^ a b Gardiner 2002, pp. 96, 153.
- ^ フックス 2020, pp. 29–30.
- ^ デラップ 2023, pp. 62–63.
- ^ Lingard, Bob; Douglas, Peter (1999年). Men Engaging Feminisms: Pro-Feminism, Backlashes and Schooling. Buckingham, England: Open University Press. p. 192. ISBN 978-0-335-19818-4。
- ^ Simpson, John A.; Weiner, Edmund S.C. (1989年). "Anti-feminist". In Simpson, John A.; Weiner, Edmund S. C. (eds.). The Oxford English Dictionary (2nd ed.). Oxford New York: Clarendon Press Oxford University Press. ISBN 978-0-19-861186-8。[要ページ番号]
- ^ Kimmel, Michael (2004年). "Antifeminism". In Kimmel, Michael; Aronson, Amy (eds.). Men and Masculinities a Social, Cultural, and Historical Encyclopedia. Santa Barbara, California: ABC-CLIO. pp. 35–37. ISBN 978-1-57607-774-0。
- ^ Lukas, Carrie (2006年). "Marriage: happier ever after". In Lukas, Carrie (ed.). The politically incorrect guide to women, sex, and feminism. Washington, DC Lanham, Maryland: Regency Publishing. p. 75. ISBN 978-1-59698-003-7。
- ^ Kassian, Mary (2005年). "Introduction: the tsunami of feminism". In Kassian, Mary (ed.). The feminist
mystiquemistake: the radical impact of feminism on church and culture (2nd ed.). Wheaton, Illinois: Crossway Books. p. 10. ISBN 978-1-58134-570-4。 - ^ Gottfried, Paul (2001年4月21日). "The Trouble with Feminism". LewRockwell.com. Lew Rockwell. 2006年9月30日閲覧。
- ^ al-Qaradawi, Yusuf (2008年). "Women and family in Islamist discourses: 'When Islam prohibits something, it closes all the avenues of approach to it'". In Calvert, John (ed.). Islamism: a documentary and reference guide. Westport, Conn: Greenwood Press. p. 62. ISBN 978-0-313-33856-4。
- ^ Patai, Daphne (2003年). "Policing the academy: 'Anti-feminist intellectual harassment'". In Patai, Daphne; Koertge, Noretta (eds.). Professing feminism: education and indoctrination in women's studies. Lanham, Maryland: Lexington Books. pp. 278–79. ISBN 978-0-7391-0455-2。
- ^ Danowitz Sagaria, Mary Ann (1999年1月). "Review: Reviewed Work: Antifeminism in the Academy by Vévé Clark, Shirley Nelson Garner, Margaret Higonnet, Ketu H. Katrak". The Journal of Higher Education. 70 (1): 110–12. doi:10.2307/2649121. JSTOR 2649121。
参考文献
英語文献
- Gilligan, Carol (1977年). "In a Different Voice: Women's Conceptions of Self and of Morality". Harvard Educational Review. 47 (4): 481–517. doi:10.17763/haer.47.4.g6167429416hg5l0. ISSN 0017-8055. S2CID 146763094. 2021年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年6月8日閲覧。
- Walker, Alice (1983年). In Search of Our Mothers' Gardens: Womanist Prose. San Diego: Harcourt Brace Jovanovich. p. 397. ISBN 978-0-15-144525-7。
- Echols, Alice (1989年). Daring to Be Bad: Radical Feminism in America, 1967–1975. Minneapolis: University of Minnesota Press. ISBN 978-0-8166-1787-6。
- Vance, Carole S. (1989年). Pleasure and Danger: Exploring Female Sexuality. Thorsons Publishers. ISBN 978-0-04-440593-1。
- Chodorow, Nancy (1989年). Feminism and Psychoanalytic Theory. New Haven, Conn.: Yale University Press. ISBN 978-0-300-05116-2。
- Leidholdt, Dorchen; Raymond, Janice G. (1990年). The Sexual Liberals and the Attack On Feminism. New York: Pergamon Press. ISBN 978-0-08-037457-4。
- Blain, Virginia; Clements, Patricia; Grundy, Isobel (1990年). The Feminist Companion to Literature in English: Women Writers from the Middle Ages to the Present. New Haven: Yale University Press. ISBN 978-0-300-04854-4。
- Hansen, Karen Tranberg; Philipson, Ilene J. (1990年). Women, Class, And the Feminist Imagination: A Socialist-Feminist Reader. Philadelphia: Temple University Press. ISBN 978-0-87722-630-7。
- Walker, Rebecca (1992年1月). "Becoming the Third Wave" (PDF). Ms. pp. 39–41. ISSN 0047-8318. OCLC 194419734. 2017年1月15日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2018年2月21日閲覧。
- Faludi, Susan (1992年). Backlash: The Undeclared War Against Women. London: Vintage. ISBN 978-0-09-922271-2。
- Lont, Cynthia (1992年). "Women's Music: No Longer a Small Private Party". In Garofalo, Reebee (ed.). Rockin' the Boat: Mass Music & Mass Movements. Cambridge, Massachusetts: South End Press. ISBN 978-0-89608-427-8。
- Duby, Georges; Perrot, Michelle; Schmitt Pantel, Pauline (1994年). A History of Women in the West. Cambridge, Massachusetts: Belknap Press of Harvard University Press. ISBN 978-0-674-40369-7。
- Duggan, Lisa; Hunter, Nan D. (1995年). Sex Wars: Sexual Dissent and Political Culture. New York: Routledge. ISBN 978-0-415-91036-1。
- Sommers, Christina Hoff (1995年). Who Stole Feminism? How Women Have Betrayed Women. New York: Simon & Schuster. p. 320. ISBN 978-0-684-80156-8。
- Levy, Peter (1998年). The Civil Rights Movement. Westport, Conn.: Greenwood Press. ISBN 978-0-313-29854-7。
- Hill Collins, P. (2000年). Black Feminist Thought: Knowledge, Consciousness, And the Politics of Empowerment. New York: Routledge. pp. [https://archive.org/details/blackfeministtho0000coll/page/n308 308–335.
- Weedon, Chris (2002年). "Key Issues in Postcolonial Feminism: A Western Perspective". Gender Forum (1). 2013年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- Freedman, Estelle B. (2003年). No Turning Back: The History of Feminism and the Future of Women. Ballantine Books. p. 464. ISBN 978-0-345-45053-1。
- Narayan, Uma (1997年). Dislocating Cultures: Identities, Traditions, And Third-World Feminism. New York: Routledge. pp. 20–28, 113, 161–87. ISBN 978-0-415-91418-5。
- Cochrane, Kira (2013年12月10日). "The Fourth Wave of Feminism: Meet the Rebel Women". The Guardian. 2013年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- Wright, Elizabeth (2000年). Lacan and Postfeminism (Postmodern Encounters). Totem Books. ISBN 978-1-84046-182-4。
- Gerhard, Jane F. (2001年). Desiring Revolution: Second-Wave Feminism and the Rewriting of American Sexual Thought, 1920 to 1982. New York: Columbia University Press. ISBN 978-0-231-11204-8。
- Mosbacher, Dee (2002年). Radical Harmonies. San Francisco, CA: Woman Vision. OCLC 53071762。
- Lindlof, Thomas R.; Taylor, Bryan C. (2002年). Qualitative Communication Research Methods. Thousand Oaks, Calif: Sage Publications. ISBN 978-0-7619-2493-7。
- Messer-Davidow, Ellen (2002年). Disciplining Feminism: From Social Activism to Academic Discourse. Durham, NC: Duke University Press. ISBN 978-0-8223-2843-8。
- Beard, David; Gloag, Kenneth (2005年). Musicology: The Key Concepts. Routledge key guides. London and New York: Routledge: Routledge. ISBN 978-0-415-31692-7。
- Hayward, Susan (2006年). Cinema Studies – The Key Concepts (3rd ed.). Routledge.
- Blamires, Cyprian (2006年). World Fascism: A Historical Encyclopedia. Vol. 1. ABC-CLIO. ISBN 978-1-57607-940-9。
- Gardiner, Judith Kegan (2002年). Masculinity Studies and Feminist Theory. Columbia University Press. ISBN 978-0-231-12278-8。
- Gillis, Stacy; Howie, Gillian; Munford, Rebecca (2007年). Third Wave Feminism: A Critical Exploration. Basingstoke: Palgrave Macmillan. ISBN 978-0-230-52174-2。
- Elias, Juanita; Ferguson, Lucy (2014年). "Production, Employment, and Consumption". In Shepherd, Laura J. (ed.). Gender Matters in Global Politics. Routledge. ISBN 978-1-134-75259-1。
- Peterson, V. Spike (2014年). "International/Global Political Economy". In Shepherd, Laura J. (ed.). Gender Matters in Global Politics (2 ed.). Routledge. ISBN 978-1-134-75259-1。
- Fayolle, Caroline (2018年6月17日). "Des Corps « Monstres ». Historique Du Stigmate Féministe". GLAD! (4). doi:10.4000/glad.1034. ISSN 2551-0819。
- Grady, Constance (2018年6月20日). "The Waves of Feminism, And Why People Keep Fighting over Them, Explained". Vox. 2019年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月26日閲覧。
日本語文献
- アン・ファウスト=スターリング(著)『ジェンダーの神話 : 「性差の科学」の偏見とトリック』池上千寿子、根岸悦子(訳)、工作舎、1990年。ISBN 4875021674。
- ジュディス・バトラー(著)『ジェンダー・トラブル : フェミニズムとアイデンティティの攪乱』竹村和子(訳)、青土社、1999年。ISBN 4791757033。
- エステル・フリードマン(著)『フェミニズムの歴史と女性の未来-後戻りさせない』西山惠美・安川悦子(訳)、明石書店、2005年。ISBN 4750320595。
- 福永玄弥(著)「台湾におけるフェミニズム的性解放運動の展開」。瀬地山角(編)『ジェンダーとセクシュアリティで見る東アジア』勁草書房、2017年。ISBN 9784326602988。
- 黄齡萱「台湾女性運動の軌跡 : 売春児童保護運動から「妓権」労働運動へ」『技術マネジメント研究』第6巻、横浜国立大学技術マネジメント研究学会、2007年。ISSN 1347-3042。
- 天野正子(著)「「婦人」から「女性」へ、そして「おんな=女」の結社へ」。福田アジオ(編)『結衆・結社の日本史』〈結社の世界史〉、山川出版社、2006年。ISBN 4-634-44410-0。
- ベル・フックス(著)『フェミニズムはみんなのもの : 情熱の政治学』堀田碧(訳)、エトセトラブックス、2020年。ISBN 978-4909910080。
- 中澤瞳(著)「フェミニスト現象学とは何か」。稲原美苗、川崎唯史、中澤瞳、宮原優(編)『フェミニスト現象学入門 : 経験から「普通」を問い直す』ナカニシヤ出版、2020年。ISBN 9784779514265。
- 藤高和輝『「トラブル」としてのフェミニズム : 「とり乱させない抑圧」に抗して』青土社、2022年。ISBN 9784791774432。
- 江原由美子『持続するフェミニズムのために : グローバリゼーションと「第二の近代」を生き抜く理論へ』有斐閣、2022年。ISBN 9784641174788。
- 工藤万里江『クィア神学の挑戦 : クィア、フェミニズム、キリスト教』新教出版社、2022年。ISBN 9784400324935。
- ルーシー・デラップ(著)『フェミニズムズ : グローバル・ヒストリー』幾島幸子(訳)、明石書店、2023年。ISBN 9784750356402。
- カイラ・シュラー(著)『ホワイト・フェミニズムを解体する : インターセクショナル・フェミニズムによる対抗史』飯野由里子、川副智子(訳)、明石書店、2023年。ISBN 9784750354835。
- アミア・スリニヴァサン(著)『セックスする権利』山田文(訳)、勁草書房、2023年。ISBN 9784326654390。
- 山口みどり(編)、2023年『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房。ISBN 9784623093502。
- 山手昌樹「コラム19 イタリア」『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房、2023年。
- 長沢栄治「アラブ社会主義とフェミニズム」『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房、2023年。
- 江上幸子「愛・性と近代家族」『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房、2023年。
- 江上幸子「中国共産党根拠地の「女性解放」」『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房、2023年。
- 三成美保. “【女性】フェミニズムの第2の波と「ジェンダー」の発見”. 比較ジェンダー史研究会. 2024年7月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年10月2日閲覧。
- 近藤銀河『フェミニスト、ゲームやってる』晶文社、2024年。ISBN 9784794974204。
- カースィム・アミーン(著)『アラブの女性解放論』岡崎弘樹・後藤絵美(訳)、法政大学出版局、2024年。ISBN 9784588011696。
- 後藤絵美「解説1 カースィム・アミーンとエジプトのフェミニズム」『アラブの女性解放論』2024年。
関連文献
- 上野千鶴子『家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平』〈岩波現代文庫〉、岩波書店、2009年5月。ISBN 978-4006002169。
- 有限責任事業組合フリーターズフリー編『フェミニズムはだれのもの?―フリーターズフリー対談集』人文書院、2010年4月。ISBN 978-4409240861。
- 上野千鶴子『差異の政治学 新版』〈岩波現代文庫〉、岩波書店、2015年11月。ISBN 978-4006003340。
- ベル・フックス(著)『ベル・フックスの「フェミニズム理論」 : 周辺から中心へ』野崎佐和・毛塚翠(訳)、あけび書房、2017年。ISBN 978-4871541541。
- 小川たまか『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』タバブックス、2018年7月。ISBN 978-4907053260。
- 上野千鶴子『女ぎらい』〈朝日文庫〉、朝日新聞出版、2018年10月。ISBN 978-4022619433。
- チョ・ナムジュ、斎藤真理子(翻訳)『82年生まれ、キム・ジヨン』筑摩書房、2018年12月。ISBN 978-4480832115。
- 栗田隆子『ぼそぼそ声のフェミニズム』作品社、2019年5月。ISBN 978-4861827518。
- 北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』書肆侃侃房、2019年6月。ISBN 978-4863853652。
関連項目
外部リンク
- フェミニズムと女性学 - ウェイバックマシン(2017年8月5日アーカイブ分)
- 司法におけるジェンダーバイアス(第二東京弁護士会) - ウェイバックマシン(2017年6月9日アーカイブ分)
- 『フェミニズム』 - コトバンク