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放生会 (椎名林檎のアルバム)

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放生会 (アルバム)から転送)
『放生会』
椎名林檎スタジオ・アルバム
リリース
ジャンル J-POP
レーベル EMI Records
チャート最高順位
椎名林檎 アルバム 年表
百薬の長
(2022年)
放生会
(2024年)
『放生会』収録のシングル
  1. 「公然の秘密」
    リリース: 2019年9月30日 (配信限定)
  2. 「浪漫と算盤 TYO ver.」
    リリース: 2019年11月25日 (配信限定)
  3. いとをかし
    リリース: 2022年4月5日 (配信限定)
  4. 「私は猫の目」
    リリース: 2023年5月24日
  5. 「人間として」
    リリース: 2024年4月17日
ミュージックビデオ

「ちりぬるを」 - YouTube
「生者の行進」 - YouTube
「初KO勝ち」 - YouTube
「ドラ1独走」 - YouTube
「余裕の凱旋」 - YouTube

「ほぼ水の泡」 - YouTube
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放生会』(ほうじょうや、: कार्निवल: Carnival)は、2024年5月29日EMI Recordsより発売された日本シンガーソングライター椎名林檎の7作目のスタジオ・アルバム

概要

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本作は、オリジナル・アルバムとしては2019年に発表された『三毒史』以来約5年ぶり、アルバムとしてはリミックス・アルバム百薬の長』より約1年半ぶりの発表となる。デビュー26周年の記念日に発表され、その2日後に発売された[1]

本作にはオリジナル・アルバムとしての前作『三毒史』にて男声への当て書きに"味を占めた"椎名が宇多田ヒカルAIのっちPerfume)、ももチャラン・ポ・ランタン)、Daoko新しい学校のリーダーズ中嶋イッキュウtricotジェニーハイ)という"7人の歌姫"を迎えて制作された楽曲を含むアルバムのために書き下ろした新曲7曲と2019年から2024年までに発表されたシングル収録曲6曲の全13曲が収録され[1]、『三毒史』では椎名がデビューする前から一人のリスナーとしてその音楽に触れてきた男性ゲスト陣とのデュエット曲を偶数曲に配置したのに対し、本作ではデビューする前から椎名の音楽に一人のリスナーとして触れてきた女性ゲスト陣とのデュエット曲が奇数曲に配置されている[2]。それについて椎名はオフィシャル・ライナーノーツにて「『三毒史』でデュエットいただいたお相手はみなさん異性。さらに過半数のかたが自分にとって先輩でした。『放生会』の大きな違いの一つは、私が比較的脱力しているということです。今回は自分よりお若い方に、より奔放に表現していただくべく書いてゆきました。子育て世代には子育て世代の、現役世代には現役世代の、それぞれのミッションがあると思うのですが、世代を超えて共闘したかったんです」と語っている。楽曲名はサブタイトルを除き『三毒史』同様に5文字で統一され、7曲目の「浪漫と算盤 TYO album ver.」を中心にシンメトリーとなっている。レコーディングには2023年のツアー『椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常』にも参加していたドラマーの石若駿とベーシストの鳥越啓介が全楽曲に参加しており、既発曲の一部も再レコーディングされている[1][2]

タイトル

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アルバムタイトルの「放生会」とは捕獲したを野に放し、殺生を戒めるインドに起源をもつ宗教儀式であり、日本では椎名が在住していた博多の三代祭として「どんたく」や「祇園山笠」と並ぶ祭りとして知られており、タイトルの読みが起源とされる「ほうじょう」ではなく、「ほうじょう」としているのはそのためである。椎名はオフィシャル・ライナーノーツにて「とにかくあらゆるものを手放さないまま生きる人々を描き切りたかった。『ちりぬるを』で描かれたような、予告なく死ぬ身近な者に対して、『さらば純情』で描かれたような、若かりし日の美徳に対して、一切合切諦めない人間が密かに抱く信念を、見てみたくて。それらもすべてやっぱり"三毒"といえば"三毒"です。つまり、今の世の中のムードからしたら真っ向からのアンチテーゼですよね。今回お酒をモチーフにした曲が多いのもーー私はあまり飲まないのですがーー不謹慎、不道徳の象徴として手伝ってもらっているつもりです」と語っている[2]

プロモーション

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アルバムはデビュー26周年である5月27日に発表され、その2日後に発売された。5月27日には"7人の歌姫"たちとの共演楽曲7曲の先行配信が開始され、5月28日には共演楽曲7曲のうち既に制作されている『浪漫と算盤』を除いた6曲の新作ミュージックビデオを公開された。監督はすべて児玉裕一が担当した[1][3]

また、発売日である5月29日にはYouTubeのライブ配信にて「スナックきまぐれ~リモート営業中~」が行われ、椎名、Daoko、中嶋イッキュウ、ももが密やかに交わされる彼女たちの会話の模様が生配信される[3]

収録曲

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楽曲解説

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  1. ちりぬるを(offering sake)
    椎名林檎と中嶋イッキュウ名義の楽曲。
    楽曲と中嶋の起用について椎名は「亡くなった人や動物に対して必ずしも永遠の別れを告げる必要はないと私は思っており、1曲目の『ちりぬるを』ではその隠された呪詛を描きたかったんです。なので、弔いの場では忌み言葉とされているような語句も敢えて使っているのですが、それを私が一人で歌うとグロテスクなものになってしまうんじゃないかと。そこで、中嶋イッキュウさんの持つ清潔さ、誰にも侵せない神秘性を拝借しました」と語っている[2]
  2. 私は猫の目 album ver.(i'm free)
    2023年5月24日に発売された17枚目のシングルの表題曲の新約版[1]管弦を取り入れたアレンジに変更され、キーもシングルバージョンより高く設定されている。またシングル版での外国語のタイトルは「je suis libre」というフランス語で表記していたが、本作では英語に変更されている。
  3. 生者の行進(a procession of the living)
    椎名林檎とAI名義の楽曲。
    本楽曲にAIを起用したことについて椎名は「AIさんは『最終宣告』を初めて聴いたときから大好きで、はやくご一緒したかった。他の皆さんをシャムマンチカンとするなら、今回AIさんには同じ猫科でもサバンナを駆ける野生動物として存在していただきたくなった。また母親としての子供への視線というのも欲しくて、当てずっぽうではありながら、AIさんの持つ母性と野性のイメージへお書きしたのが『生者の行進』です」と語っている[2]
  4. 人間として(as a human)
    2024年4月17日に発売された18枚目のシングルの表題曲。
  5. 初KO勝ち(1RKO)
    椎名林檎とのっち名義の楽曲。
    本楽曲にのっちを起用したことについて椎名は「のっちには本当にこの20年くらい、事あるごとにアプローチし続けて来ました。私のプログラムを聴いてくださっていると伺っていたものの、私のほうがよほどあきらかにしつこくしてきている。もうちょっとプロっぽいことを言いたいんですけど、今回ようやく『初KO勝ち』でご一緒いただけて、ただただしあわせです。ご本人の几帳面で職人的なお仕事ぶりもかっこよかったです」と語っている[2]。のっちもかねてより椎名林檎の大ファンを公言していたため[4][5][6][7]、二人で歌うことか信じられず、生きてるうちにこんな夢みたいなことないな、こんなチャンスは二度はない、今しかないと思い、オファーを受けたという[5]Perfumeメンバーの音楽面でのソロ活動は初めてで[6][7][8]ミュージック・ビデオでは、Perfumeの活動ではみられないヒールな表情を見せている[8]
  6. 公然の秘密 album ver.(open secret)
    2019年9月30日に先行配信、同年11月13日に発売されたベスト・アルバムニュートンの林檎 〜初めてのベスト盤〜』収録曲のアルバム・バージョン。
  7. 浪漫と算盤 TYO album ver.(the sun & moon)
    椎名林檎と宇多田ヒカル名義の楽曲。2019年11月25日に配信限定で発売されたデジタル・ダウンロードシングルのアルバム・バージョンで、今回が初CD化となる。
    本楽曲を収録したことについて椎名は「ベスト盤の時は、どうして『浪漫と算盤』のような曲をヒカルちゃんに書いたのかご理解いただきづらかったんじゃないかと気になっていました。彼女の透明さ、無欲さ、お若い頃から達観していらした、あの空気や水のような存在感がないと説得力が生まれないものを書いてみたくて。つまり、派手なフックがないものを残したかった。今回『放生会』の真ん中の曲としてなら意義を感じ取っていただけるのかも」と語っている[2]
  8. 茫然も自失(closed truth)
    歌詞が全編スペイン語となっている。
  9. ドラ1独走(FRDP)
    椎名林檎と新しい学校のリーダーズ名義の楽曲。
    本楽曲に新しい学校のリーダーズを起用したことについて椎名は「新しい学校のリーダーズはヒイズミくんが手がけている曲を中心に、近年聴かせていただくようになり、メンバーみなさんのファンに。今回の『ドラ1独走』のボーカルはSUZUKAさんお一人で、エレキギターを中心に据えたアンサンブルに、あくまでバンドのボーカリストとして存在してもらうべく書いております。」と語っている[2]
    上記の通り、レコーディングでは新しい学校のリーダーズからはSUZUKAのみ参加しているが、ミュージック・ビデオではメンバー全員が出演している。
  10. さらば純情 album ver.(bye purity)
    2023年5月24日に発売された17枚目のシングル『私は猫の目』のカップリング曲の新約版[1]打ち込み主体だったシングルバージョンに対し、管弦を中心とした構成となっている。またシングル版での外国語のタイトルは「adieu innocente」というフランス語で表記していたが、本作では英語に変更されている。
  11. 余裕の凱旋(a grand triumphant return)
    椎名林檎とDaoko名義の楽曲。
    本楽曲にDaokoを起用したことについて椎名は「Daokoさんにはリミックス盤や昨年のツアー(『椎名林檎と彼奴等と知る諸行無常』)の映像にも参加していただきました。満を持しての書き下ろしとなると、力み過ぎて自分がおかしくなっちゃう不安も。それで『余裕の凱旋』では、私の知る限り最も力の抜けたDaokoさんの側面を記録いたしました。ツンとおすましDaokoさんも魅力的ですが、おとぼけドジっ子Daokoさんも拝聴してみたくて」と語っている[2]
    次曲と繋がるように収録されており、ミュージック・ビデオでは「いとをかし」の冒頭部分も収録されている。
  12. いとをかし album ver.(toogood)
    2022年4月5日に配信限定で発売されたデジタル・ダウンロードシングルの新約版で、今回が初CD化となる[1]。配信バージョンの伴奏はピアノのみだったが、本作ではウッドベースアコーディオンが追加されている。
  13. ほぼ水の泡(cheers beer)
    椎名林檎ともも名義の楽曲。
    本楽曲にももを起用したことについて椎名は「初めてももさんをライブで拝見したとき、紅白歌合戦の大トリみたいだと思いました。彼女のあの度胸、底抜けに明るい諦観のようなものへ憧れましたし、次の瞬間にはどんな曲がいちばんお似合いになるか頭を抱え始めていました。今回の『ほぼ水の泡』はその初期衝動を思い出して書いた気がします。ももさんを始め今回ご参加いただいたみなさん、私の信仰する猫のようにしなやかです。三分間だけでも共に生きられて、光栄です」と語っている[2]

楽曲クレジット

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全作詞・作曲・編曲:椎名林檎 (注記を除く)

#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.「ちりぬるを」(椎名林檎と中嶋イッキュウ (tricot,ジェニーハイ))  
2.「私は猫の目 album ver.」(編曲:斎藤ネコ)  
3.「生者の行進」(椎名林檎とAI編曲:村田陽一)  
4.「人間として」  
5.「初KO勝ち」(椎名林檎とのっち (Perfume);木管編曲:村田陽一)  
6.「公然の秘密 album ver.」(編曲:村田陽一)  
7.「浪漫と算盤 TYO album ver.」(椎名林檎と宇多田ヒカル)  
8.「茫然も自失」  
9.「ドラ1独走」(椎名林檎と新しい学校のリーダーズ)  
10.「さらば純情 album ver.」(編曲:村田陽一)  
11.「余裕の凱旋」(椎名林檎とDaoko;管編曲:村田陽一)  
12.いとをかし album ver.」  
13.「ほぼ水の泡」(椎名林檎ともも (チャラン・ポ・ランタン))  
合計時間:

演奏

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評価

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チャート成績

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チャートと売上

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認定とセールス

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タイアップ

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楽曲 タイアップ 起用年
「人間として」 テレビ朝日系ドラマ『Destiny』主題歌 2024年
「公然の秘密」 テレビ朝日系ドラマ『時効警察はじめました』主題歌 2019年
「茫然も自失」 サントリー「SUNTORY WORLD WHISKY 碧Ao」Web CMソング[9] 2024年
「いとをかし」 NHK Eテレおじゃる丸』第25シリーズ エンディングテーマ 2022年

脚注

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出典

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  1. ^ a b c d e f g “椎名林檎がPerfumeのっち、新しい学校のリーダーズ、宇多田ヒカルら迎えたアルバムを明後日発売”. 音楽ナタリー. (2024年5月27日). https://natalie.mu/music/news/574992 2024年5月29日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g h i j 椎名林檎 2024.5.29 Album『放生会』 オフィシャル・ライナーノーツ”. ユニバーサルミュージック. 2024年5月29日閲覧。
  3. ^ a b “椎名林檎、歌姫迎えたニューアルバム「放生会」より6つの新曲ミュージックビデオを一挙公開”. 音楽ナタリー. (2024年5月28日). https://natalie.mu/music/news/575156 2024年5月29日閲覧。 
  4. ^ 2019年8月17日「近くない?フェスティバルを研究せよ!」”. SCHOOL OF LOCK!. TOKYO FM (2015年8月17日). 2024年6月13日閲覧。
  5. ^ a b ゆかちゃんのTV出演、「初KO勝ち」、新曲「The Light」!! 【2024年6月号 Perfume 連載】『たちまち、語リンピックせん?』”. TV Bros. note版note. 東京ニュース通信社note (2024年6月). 2024年6月13日閲覧。
  6. ^ a b 「加工なしの声はほぼ初」「こんなかっこよかったの知らなかった」Perfumeのっちの歌声に絶賛の嵐”. 女性自身. 光文社 (2024-05–28). 2024年6月13日閲覧。
  7. ^ a b Perfumeのっち、椎名林檎と夢コラボで“新たな一面” 「こんなに歌上手かったの」「いい意味で裏切られた」と絶賛の嵐”. ENCOUNT. Creative2 (2024-06–01). 2024年6月13日閲覧。
  8. ^ a b 椎名林檎に選ばれし歌姫、Perfumeのっちの初ソロに反響続出 「Perfumeでは見れないのっちさんがあふれてる」「声の相性良さすぎなんだが」”. ねとらぼ. 光文社 (2024-05–28). 2024年6月13日閲覧。
  9. ^ “椎名林檎、サントリーWeb CMで新曲「茫然も自失」歌唱 新宿駅に特大交通広告も掲出”. 音楽ナタリー. (2024年5月29日). https://natalie.mu/music/news/575310 2024年5月29日閲覧。 

外部リンク

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