姫路2女性殺害事件
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姫路2女性殺人事件(ひめじにじょせいさつじんじけん)とは、2005年1月9日に兵庫県姫路市で発生した2女性殺人・死体損壊事件である。
事件の概要
[編集]容疑者の逮捕まで
[編集]2005年1月20日、当時23歳の女性会社員(以下A)と、Aの高校時代からの友人である23歳の女子専門学校生(以下B)が失跡した。Aの室内には現金がそのまま残されていたため、事件性を感じたAの両親が姫路警察署に捜索願を出した[1]。Aの両親は連日姫路警察署に相談しに行ったが、担当の刑事は「年間1200人もの捜索願が出ているので、相手できない」と相手にせず、捜査に動こうとしなかった[1]。
1月22日、姫路警察署ではまともな捜査が行われないと考えたAの両親は、知人のつてを頼り兵庫県警警察官の飛松五男巡査部長と接触[2]。Aの両親は飛松に対し、Aが失踪する少し前に、Aが「ウエダ」と名乗る男を彼氏として連れてきたこと(以下、男をT)、Tは29歳で資産家の息子だと言っていたことを伝え(実際は39歳)、Tの調査を依頼した[3]。飛松は「ウエダ」の車のナンバーからTの本名と住所を突き止め[3]、Tを張り込むのと同時に姫路警察署に通報した[4]。
1月29日、飛松の調査結果に基づき、姫路警察署は署員2名をTの自宅へ向かわせた。署員はTの同意を得て室内に入り調査したところAはおらず、代わりに手錠をかけられて意識がもうろうとした別の少女(以下C)を確認した[4]。署員がCに質問したところ、Cが「帰らへん」「ここにおる」と答えたため、また、Tに任意同行を求めたが断られたため、そのまま引き上げてしまった[5]。姫路警察署の対応に納得がいかなかったAの両親は再び飛松に応援を求めた[6]。飛松がTの自宅前にてTを尋問したところ、Tが覚醒剤を打っているような反応を示したために、飛松はTを問い詰めた後に相生警察署へ通報した。通報から1時間半後に相生警察署が駆けつけ男を連行しCを保護[7]、翌日の1月30日に覚醒剤取締法違反により男は緊急逮捕された[8]。
裁判開始まで
[編集]逮捕から3か月後の4月12日、TはAとその友人Bを殺害し、遺体をバラバラにして海や山に捨てたことを自供した[8]。事件は大々的に報じられ[9]、Aの両親は記者会見で「犯人は我々が捜査し見つけたようなものだ」と答えた[要出典]。Aの両親の告発により姫路警察署の捜査の内容が明るみに出たこと、更に警察がマスコミに対して「Aが風俗嬢」だという「虚偽」とされる情報をリークしていたことも判明し、姫路警察署は批判にさらされた[9]。12月、姫路警察署の幹部がA宅を訪ねAの両親に土下座する様子を隠し撮りされた映像がテレビで流された[9]。
また、Tについての前科も報じられた。Tは事件を起こす4年前に車の追突事故を起こし、27歳の主婦と2歳次女を死亡させ、4歳長女にも重傷を負わせた[9]。Tは1年2か月の実刑判決を受け服役、仮出所から2か月余りしか経過していなかった中での殺害事件であった[10]。
2009年5月10日、兵庫県警は男を死体遺棄容疑で再逮捕。5月20日には殺人罪で再逮捕した。また被害者の遺体の一部が発見された。
裁判
[編集]TはA、B2女性の殺人・死体損壊・死体遺棄容疑で起訴された。裁判では以下の事実が明らかになった。Tは風俗店で、当時風俗嬢として働いていたAと知り合った(つまり、警察の「Aが風俗嬢」という情報は「虚偽」ではなかった[11])。Tは「資産家の息子」の「ウエダ」と名乗り、Aと交際するようになった。交際当初、Aは度々Tに高級ブランド品を買うよう求め、Tもそれに応じていたが、すぐにお金が尽きてしまい、実際には資産家の息子ではないこともAに発覚してしまった。激昂したAは暴力団関係者であるAの伯父の力を笠に着て、Tに対して高級ブランド品や現金を再三要求するようになり、Tに対して暴力を振るうようにもなった[12]。事件当日、精神的に追い込まれていたTはAに抵抗、もつれあう形で倒れ込み、その際、そばに合ったハンマーでAを殴って殺害した[13]。このとき、偶然に居合わせたBも口封じのために殺害された[14]。弁護人は、Tが資産家の息子ではないと分かっていながらもAから強く金銭を要求され続け、追い込まれた末の犯行だったとして情状酌量を求めた[15]。
3月17日、神戸地方裁判所姫路支部で死刑判決が下された[10]。男は即日控訴したが、2010年10月15日、大阪高等裁判所は被告側控訴を棄却した[10]。その後上告したが、2013年11月25日に最高裁判所第1小法廷により上告が棄却され、死刑が確定した[16]。
2021年現在、男は大阪拘置所に収監されている。一方、頭部などの被害者の遺体は未だに発見されていない。
脚注
[編集]事件を題材にした作品
[編集]- 片岡健『平成監獄面会記 重大殺人犯7人と1人のリアル』笠倉出版社、2019年。ISBN 4773089598。 - 犯人の男との面会記が収録された書籍。
- 漫画・塚原洋一、原作・片岡健『マンガ 「獄中面会物語」』笠倉出版社、2019年。ISBN 4773072202。
関連項目
[編集]- バラバラ殺人
- 桶川ストーカー殺人事件 - 同じく警察署の職務怠慢が発覚した事件。
- ザ・スクープ - 加害者の逮捕後に事件の全貌と姫路警察署の対応を検証し報じたテレビ番組。