アフガニスタンにおける死刑
アフガニスタンにおける死刑(アフガニスタンにおけるしけい)では、アフガニスタンにおける死刑について解説する。
ターリバーン政権崩壊後でも、イスラム法に基づく厳しい死刑制度を維持している国であり、死刑執行が行われている。なお、2021年8月にターリバーンがアメリカ軍撤退に伴う侵攻により全土掌握をしている[1]。
概要
[編集]イラン・パキスタン同様イスラム共和国であり、イスラム教の棄教または改宗には死罪を適用するように主張した。更に勧善懲悪省などの制度もある。
イスラム教をキリスト教に改宗したドイツ人が、宗教裁判所で死刑と宣告されたが、アフガニスタン国内で亡命したという。
また、ターリバーンがアメリカ軍撤退に伴う侵攻の過程で、投降した当時のアフガニスタン政府兵の死刑執行を行っており[2]、執行後に政府兵の装備品を略奪している[3]。更には女性がジーンズを履いたこと及び全身を覆うブルカを着用しないことを理由に死刑執行もされている[4][5]。更に、アメリカ軍や日本の国際協力機構に関わったアフガニスタン人に対して死刑宣告を行っており、ターリバーンによる記者会見で述べた内容と異なることを行っている[6][7]。
現在(ターリバーンの武力による全土掌握前)でも以下の表のように、10人以上の死刑執行する年もあるが、年に数人の死刑執行が行われている。
また、公開処刑は2001年のターリバーン崩壊時から2021年のターリバーンの武力による全土掌握まで行われていなかったが、2021年9月26日には射殺した誘拐犯の遺体をクレーンで吊るし、見せしめのために街角にさらすといった行為が復活した[8]。翌月の10月14日21時29分のtwitterで、タリバン政府より最高裁判所の命令がない限り、公開処刑と処刑後の遺体を絞首して吊るす行為は出来ないことが発表された[9][10]。しかしながら、 「誘拐犯の場合、警察に渡さず現場で処罰する。」とターリバーン司令官が発言しており、司法に依らない処罰が依然あることが指摘されている[11]。その後、2022年12月7日に復権後に初めて公開処刑がファラーで行われた[12]。
現在でもサウジアラビアなどと同様、ディーヤの制度が残っている
2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
15 | 17 | 0 | 0 | 2 | 14 | 2 | 6+ | 1 | 6 |
2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |||
5 | 3+ | 0? | 0 | 0+ | 1 | 0+ |
- 表の「+」は、あくまでメディアで確認された執行数で、この数以上の執行された可能性があることを示し、「?」は、執行がなしであったか不明であることを示す。
死刑が適用される犯罪
[編集]- 背教罪
- 同性愛
- 2001年のタリバーン政権崩壊以降、死刑執行されていない[16]。
- 姦通罪(ズィナー)
- 麻薬
- 麻薬密売人などが公開絞首刑に執行されていたことがあった。
- 殺人
- パキスタン同様ディーヤという制度があり、遺族たちに賠償金を支払うと減刑されることがある。
- 飲酒
- 死刑判決例は稀であるが、サウジアラビアやイランなどと同様、飲酒による罰則は厳しい
執行方法
[編集]死刑執行人
[編集]- 詳細不明
脚注
[編集]- ^ “アフガニスタン、タリバンが20年ぶり政権掌握 民主政権が瓦解”. SankeiBiz (2021年8月16日). 2021年8月17日閲覧。
- ^ “「穏健」強調も…見通せぬタリバン統治体制 内部で路線対立”. 産経新聞 (2021年8月17日). 2023年12月12日閲覧。
- ^ “タリバン、投降兵を処刑か 米、アフガン協力者の避難支援”. 時事通信 (2021年7月15日). 2021年8月17日閲覧。
- ^ Alijani Ershad (2021年8月12日). “The Taliban will hunt us down': Couple stuck in Herat as city falls to Taliban” [「タリバンは私たちを追い詰める」:タリバンによる陥都市陥落に伴い、ヘラトで立ち往生したカップル] (英語). The BSERVERS. 2021年8月17日閲覧。
- ^ “「ブルカ未着用の女性銃殺」 タリバンの恐怖、ついに現実化”. 中央日報 (2021年8月19日). 2021年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月20日閲覧。
- ^ “タリバン、アフガン人通訳者の兄弟に死刑宣告 CNNが書簡入手”. CNN (2021年8月24日). 2021年9月5日閲覧。
- ^ “タリバンから“死刑宣告”男性が語る恐怖”. 日テレNEWS24 (2021年9月4日). 2021年9月5日閲覧。
- ^ “拉致犯とされる4人の遺体、つり下げさらす タリバン”. CNN (2021年9月26日). 2021年9月26日閲覧。
- ^ 『د اسلامي امارت د وزیرانو شورا پریکړه:په هغو سزاګانو کې چې د مجرم تشهیر ضرورنه وي او محاکمو يې د سزا په صورت کې د تشهیر تجویز نه وي کړی، د مجرم له اعدام او جسد ځړولو څخه دې ډډه وشي.او که مجرم ته سزا ورکول کیږي باید له سزا سره يې د جرم [イスラム首長国(ターリバーン政権)閣僚評議会の決定:犯罪者を公衆に公開する状態で刑罰を与える場合は、裁判所が推奨していない刑罰は避けるべきです。そして、犯罪者が罰せられる場合、犯罪者が犯した犯罪で罰せられなければなりません。]』(プレスリリース)ターリバーン、2021年10月14日 。2021年10月31日閲覧。
- ^ Tahir Khan (2021年10月15日). “Taliban ask officials not to carry out public executions unless directed by apex court” [ターリバーンは、最高裁判所によって指示されない限り、公開処刑を行わないことを当局に求める。] (英語). Dawn. 2021年10月31日閲覧。
- ^ 「お母さん・・・お母さん・・・」重度の栄養失調で入院する子どもの涙・・・ アフガニスタンの今【news23】 (Youtube). TBS NEW. 16 December 2021.
- ^ “タリバン、復権後初の公開処刑 アフガン”. AFP (2022年12月7日). 2022年12月27日閲覧。
- ^ Cornell Center on the Death Penalty Worldwide (2021年12月31日). “Database 2.5. Executions Per Year”. 2022年2月20日閲覧。
- ^ 『2022年の死刑判決と死刑執行』(PDF)(レポート)アムネスティ・インターナショナル、2023年5月16日 。2023年5月28日閲覧。
- ^ 『死刑廃止 - 最新の死刑統計(2023)』(レポート)アムネスティ・インターナショナル、2024年5月29日 。2023年6月8日閲覧。
- ^ Max Bearak (2016年6月13日). “Here are the 10 countries where homosexuality may be punished by death(同性愛で死刑を科される可能性がある国が10カ国あります。)” (英語). ワシントンポスト. 2021年6月12日閲覧。
- ^ 『アフガニスタン:石打ちによる死刑-人権を汚す不祥事』(プレスリリース)アムネスティ・インターナショナル、2005年5月7日 。2021年8月17日閲覧。