コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

天国注射の昼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
天国注射の昼
Day of The One-Shot HEAVEN
イベントの種類 インディーズロック・フェスティバル
開催時期 1981年8月15日
1983年8月21日9月17日
会場 日比谷野外音楽堂
主催 HAVANA MOON
共催 HEAVEN
企画制作 東映ビデオ
協力 高杉弾
野方攝
佐藤隆史
村松恒平
八木康夫
大駱駝艦
プロデューサー 伊藤恵子(HAVANA MOON)
山崎春美TACO/HEAVEN
テンプレートを表示

天国注射の昼(てんごくちゅうしゃのひる)は、かつて東京都新宿区歌舞伎町1丁目の新宿ゴールデン街にあったバーHAVANA MOON」と自販機雑誌HEAVEN』が共催した日比谷野外音楽堂コンサート

今日では国内有数の前衛的なインディーズロックバンドが一堂に集結した歴史的なイベントタイトルとして知られている。前身イベントに『HEAVEN』オールナイトイベント「天国注射の夜」(1980年6月6日11月21日/新宿ACB会館)がある。

概要

[編集]

「天国注射の昼」は高杉弾が創刊した自販機雑誌HEAVEN』の創刊記念イベントとして1980年6月6日に新宿ACB会館で開催された「天国注射の夜」がコンサートとしてシリーズ化したもの。夜昼合わせて計5回開催された。とくに成功を収めたのが1983年8月21日の4回目で、舞踏家宇野萬は4週間前から歩行者天国で宣伝のために金粉ショーの路上パフォーマンスを行い、道路交通法違反で検挙されるという事件もあった[1]

1984年1月、東映ビデオから8月21日9月17日のライブがビデオソフト化された(現在廃盤)。

公演リスト

[編集]
「天国注射の昼」が行われた日比谷野外音楽堂
天国注射の夜 Vol.1 / 1980年6月6日 新宿ACB会館5F(ニューヨーク・シアター)
HEAVEN』創刊記念オールナイトイベント
佐藤重臣によるカルトムービーの上映や山口百恵のゴミオークションなどが催された。またイベントには吉祥寺マイナー(同年9月28日閉店)で活動していた山崎春美&タコ灰野敬二白石民夫工藤冬里竹田賢一野方攝&コクシネルのほか非常階段八木康夫S-KEN三上寛佐藤幸雄&すきすきスウィッチなども参加し[2][3]、飛び入りで参加(乱入)した江戸アケミはステージ上で自分の額をナイフで切りつけて流血するパフォーマンスを行ってそのまま救急車で運ばれるという事件もあった[4]
HEAVEN』4号(1980年8月/アリス出版)のレポート(Photo by 佐藤ジン&近藤十四郎)には「入場人員はのべ240人、一時は会場全体が錯乱状態となるほどの盛況でした。ヌード・モデルの乱入、麻薬の取引き、売春、お笑い、見せ物、脱糞、のぞき、恐喝、殺人なども楽しげに行われ、一万円札が会場に乱れ飛ぶシーンもありました。初めて一堂に会したHEAVENのスタッフ、ファン同志があたたかく友好を深め、心あたたまる一夜となりました」とある[2]
天国注射の夜 Vol.2 / 1980年11月21日 新宿ACB会館5・6F ACBホール(ニューヨーク・シアター)
天国注射の夜 オールナイト・イベント
アンダーグラウンド・フィルム上映会
イベントサブタイトルは「ビー玉が水に浮いた夜には、天国に堕ちて行きたいものだ。ねえ、神様」
出演バンドは伊藤耕&FOOLS、PUNGO、野方攝&コクシネル、園田游&GUNJOGACRAYON、山崎春美シビレクラゲ江戸アケミ&財団法人じゃがたら、Vedda's Miracle & Worder、舞踏家の宇野萬と桑原延享(ともに大駱駝艦[5]
天国注射の昼 Vol.3 / 1981年8月15日 日比谷野外音楽堂
1981年8月15日正午、日比谷野外音楽堂昭和天皇玉音放送が流れて天国注射の昼は始まった。
山崎春美&タコ白石民夫ロリータ順子大里俊晴美沢真之助後飯塚僚江戸アケミ&財団法人じゃがたら、和田幸子、突然段ボール、PUNGO、近藤達郎野方攝&コクシネルPhew with 竹田賢一&A-Music、伊藤恵子&ハバナムーン近藤十四郎&バカズ、FULLX、カヌーレ、グンジョーガクレヨン、VEDDA MUSIC WORKSHOP、SHGHING・P・ORCHESTRA、佐藤隆史工藤冬里片山広明菊池隆巻上公一&ヒカシュー八木康夫&PICTOXO HA!、鳥居夷、原田依幸、小堺文雄、伊藤はじめ、アウシュヴィッツ from京都、まだ from京都、灰野敬二不失者)などが参加し、出演者リストにある坂本龍一は仕事の都合で欠席した。協力は高杉弾(コンセプトドクター)、佐藤隆史ピナコテカレコード)、村松恒平宝島)、中村直也ナイロン100%)、宇野萬(GALLOP)など。
イベントサブタイトルは「ビー玉が水に浮いた夜には、天国に堕ちて行きたいものだ。ねぇ、神様。日本が戦争に負けた日──わたしたちは今すぐよがるぜっ」
天国注射の昼 Vol.4&5 / 1983年8月21日&9月17日 日比谷野外音楽堂
山崎春美&タコ野方攝&コクシネルロリータ順子大里俊晴町田町蔵バンド、伊藤耕&THE FOOLS突然段ボール江戸アケミ&じゃがたらあがた森魚友部正人篠田昌己千野秀一ガーゼTOMATOS、グンジョーガクレヨン、伊藤はじめ&ルンルン少女合唱団、田口トモロヲ&ガガーリン、宇野萬(大駱駝艦)などが参加。これが20世紀最後の天国注射イベントとなった。
過去には「天国注射の昼」Vol.4&5の公演を収録したビデオ『回転禁止の青春シリーズ 天国注射の昼 ライブ・イン・日比谷野音 1983.8.21/9.17』(数十時間にも及ぶライブを1時間にまとめたオムニバスビデオ。撮影と編集はビデオアーティスト中嶋興&ビデオアース東京が手掛けた)が東映ビデオから発売されていたが現在は廃盤
なおライブの未発表フィルムが近年発掘され、2007年頃に映像のデジタル化およびDVD再発の企画が進行していたが、諸般の事情により頓挫した[6][7]。一方で2009年には割礼コクシネルのライブの一環で未発表映像の上映会が行われている[8]
ちなみにインディーズブームとバンドブームの両方を経験した筋肉少女帯大槻ケンヂは当時このビデオを見て「人生を変えるほどの影響を受けた」ことを公言しており、アーバンギャルド主催のイベント「鬱フェス 2015」に出場した際のMCで「僕が14歳の頃、天国注射の昼っていうイベントがあって、町蔵さんとか当時のアレな方々総出演で怖くて行けなかったんだけど、VHSを何回も観て強烈なトラウマとなり今の大槻ケンヂを作った。今の僕の何分の一かは間違い無くそれで形成されてる。自分もライブを見たかどうか覚えてないか忘れたものもあるけど、ずっと皆さんの心に残るライブがしたい。(自分が衝撃を受けた天国注射のビデオのように)他人の人生に衝撃を与え、方向を変える瞬間を提供したいと思っています」と語っている[9]
天国注射の夕べ / 2001年12月8日 法政大学学生会館大ホール
21世紀初の天国注射イベント。メンバーは一新され、ホーキング青山湯浅湾神田森莉、おにんこ、コケシドールなどが参加。
21世紀 天国注射の朝と夜 / 2008年10月11日 SPACE雑遊
山崎春美中原昌也原マスミ工藤冬里向島ゆり子中原昌也久下恵生今井次郎、リュウセイオー龍、小間慶大、大熊ワタル、こぐれみわぞう、佐藤行衛&コプチャンチョンゴル、ウラン ア ゲル、ジンタらムータA-musik、che-SHIZU、園田佐登志らが参加したオールナイトイベント。
天国注射の宴 / 2008年10月12日 SPACE雑遊
野方攝コクシネル)、川田良(THE PANTZ)、宍戸幸司割礼)、石坂マサヨロリータ18号)、キム・ドゥス、真世界マサコ倶楽部、一色凉太、EthNois Arkestra、石橋英子×タカダアキコ、田渕純などが参加。現時点で最後の天国注射イベント。

関連年表

[編集]

CD

[編集]
  • タコBOX Vol.2 8ナンバー』(2015)
1983年8月21日日比谷野音『天国注射の昼』に出演したタコの音源を9曲収録。

映像ソフト

[編集]
東映ビデオ『回転禁止の青春シリーズ 天国注射の昼 ライブ・イン・日比谷野音 1983.8.21/9.17』1984年1月21日発売
THE FOOLS「いつだってそうさ」
突然段ボール「斗缶」
松竹谷清&TOMATOS
山崎春美&タコきらら
野方攝&コクシネル「黒い視界」
八木康夫&PICTOX「Big Door」
じゃがたら「HEY SAY!」
グンジョーガクレヨン
A-musik「不屈の民」
REAL「Nation」
町田町蔵ボリス・ヴィアンの憤り」
ガーゼ「DESTRUCTION」「中性子爆弾」「消毒液
大セッション(原田依幸・千野秀一・石渡明廣・篠田昌已林英哲)+宇野萬(パフォーマンス)

脚注

[編集]
  1. ^ 赤田祐一ばるぼら『20世紀エディトリアル・オデッセイ 時代を創った雑誌たち』誠文堂新光社、2014年4月、52頁。
  2. ^ a b アリス出版HEAVEN』4号「天国注射の夜レポート
  3. ^ ヤギヤスオのツイート 2010年7月10日
  4. ^ 江戸アケミ十三回忌の夜”. 加藤梅造. ロフトプロジェクト (2006年). 2018年12月12日閲覧。
  5. ^ HEAVEN』6号(1980年12月/群雄社出版)広告:天国注射の夜 オールナイト・イベント
  6. ^ 東映カレンダーのツイート 2012年9月4日
  7. ^ 東映カレンダーのツイート 2012年9月5日
  8. ^ 割礼とコクシネル~夜の歌ゆれつづける ムジカジャポニカ
  9. ^ ライブレポート『アーバンギャルド PRESENTS 鬱フェス2015』1日目 UROROS 2015年9月10日付