大阪此花区パチンコ店放火殺人事件
大阪此花区パチンコ店放火殺人事件 | |
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場所 |
日本・大阪市此花区四貫島一丁目[1] 雑居ビル「児島建設ビル」の1階に入居していたパチンコ店[1] |
座標 | 北緯34度41分5.86秒 東経135度27分27.23秒 / 北緯34.6849611度 東経135.4575639度 |
日付 |
2009年7月5日 16時10分ごろ[1] |
攻撃手段 | 放火 |
武器 | ガソリン |
死亡者 | 5人 |
負傷者 | 10人 |
損害 | 児島建設ビル 440 m2 [1] |
犯人 | 男性T(当時41歳) |
動機 | 借金 |
大阪此花区パチンコ店放火殺人事件(おおさかこのはなくパチンコてんほうかさつじんじけん)とは、2009年(平成21年)7月5日に大阪府大阪市此花区のパチンコ店が放火され、5人が死亡した殺人事件[1]。
概要
[編集]2009年(平成21年)7月5日、大阪市此花区四貫島一丁目の阪神なんば線千鳥橋駅南側繁華街の一角・商店街の入り口付近にある雑居ビル「児島建設ビル」の1階に入居していたパチンコ店「crossニコニコ」が放火される事件が発生[1]。通報を受けた消防隊が駆けつけて消火作業を行ったが店内はほぼ全焼[1]。焼け跡から、客の女性2人と男性1人、従業員の女性の計4人が焼死体で発見された[1]。他にも19人が重軽傷を負う事態となった[1](1か月後の8月7日に重症の患者が死亡して死者は5人になった[2])。店員らの証言によると[1]ガソリンをまいて火を点けて逃げた不審な男がいたということで大阪府警察は現住建造物等放火・殺人・殺人未遂容疑で捜査を開始[1]。
事件の翌6日に山口県岩国警察署に男Tが出頭して犯行を自供したため逮捕された[3]。Tは消費者金融などからの借入れが約200万円前後あり、その返済をすることができずに嫌気がさして事件を起こしたと動機を語った[4]。
裁判経過
[編集]一審
[編集]本事件で起訴されたTは起訴前に検察が行った精神鑑定の結果、統合失調症と診断された[4]が、責任能力がある[5]として検察が起訴。2011年9月2日に裁判員が選任されて6日に初公判が開かれた[6]。10月17日に裁判員制度での裁判では12例目となる死刑求刑が行われた[7]。弁護側は責任能力がなかったと主張すると共に、死刑方法について絞首刑は公務員による残虐な刑罰を禁じているものに違反するとして、死刑は違憲だと主張した[8]。60日間の審理を経て[6]、大阪地方裁判所(和田真裁判長)は、10月31日に裁判員裁判としては10例目の死刑判決を言い渡した[8]。判決では、完全責任能力を認定した上で死刑について合憲と判断した一方で「絞首刑が最善の執行方法といえるかは議論がある」と指摘した[8]。
控訴審
[編集]一審の判決を不服とした弁護側は控訴を申し立てたが、大阪高等裁判所(中谷雄二郎裁判長)は2013年7月31日、被告人Tの刑事責任能力を認め、求刑通り死刑とした一審・大阪地裁判決を支持し、弁護側の控訴を棄却する判決を言い渡した[9]。弁護側は上告した。
上告審
[編集]2016年(平成28年)1月19日に、最高裁判所第三小法廷(山崎敏充裁判長)で上告審口頭弁論公判が開かれ、弁護側は「被告人Tには、事件当時から現在まで妄想がある」として死刑回避を求めたほか、絞首刑(日本における死刑の執行方法)は憲法で禁じられた「残虐な刑罰」に該当し、違憲である旨を主張。一方、検察側は「Tには妄想はあるが、事件への影響は軽微で、極刑はやむを得ない」と訴え、上告棄却を求めた[10]。
同年2月23日、最高裁第三小法廷(山崎敏充裁判長)は「執行方法(絞首刑)を含め、死刑制度は合憲であることは過去の判例からも明らか。人出が多い日曜日のパチンコ店を狙った計画的な無差別殺人で極めて残酷かつ悪質。遺族の処罰感情も峻烈」として、上告を棄却する判決を宣告したため、Tの死刑が確定した[11]。また弁護側は裁判中死刑の絞首という執行方法は「憲法が禁じる残虐な刑罰」であるとし、絞首刑は憲法違反であると主張していたが、同小法廷は「死刑制度が執行方法を含めて合憲なことは判例から明らか」とこれについても退けた[12][13]。
2020年(令和2年)9月27日時点で[14]、加害者Tは死刑囚(死刑確定者)として大阪拘置所に収監されている[15]。なお大阪拘置所に収監されている死刑囚のうち、裁判員裁判で死刑判決を言い渡された死刑囚はTが初である[15]。
被害店舗の本事件後の摘発
[編集]本事件で放火された店舗は2011年7月、当たり確率を操作できるようにパチンコ台を不正改造した容疑で、同系列の別の2店舗と合わせて大阪府警に家宅捜索され、経営者が逮捕された[16]。逮捕後「ciao」は閉店、跡地には「スギ薬局 千鳥橋店」が入居している。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g h i j k “大阪のパチンコ店火災4人死亡 放火殺人容疑で捜査”. 47news. 共同通信社. (2009年7月6日). オリジナルの2009年7月9日時点におけるアーカイブ。
- ^ “大阪のパチンコ店放火死者5人に 被疑者は精神鑑定実施”. 47news. 共同通信社. (2009年8月7日) 2015年10月15日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 「パチンコ店放火容疑で男逮捕 「誰でも殺したかった」」『47news』(共同通信社)2009年7月7日。オリジナルの2010年11月2日時点におけるアーカイブ。2015年10月15日閲覧。
- ^ a b “殺人罪などで男を起訴 パチンコ店放火事件”. 47news. 共同通信社. (2009年12月3日) 2015年10月15日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “精神鑑定で責任能力認定 パチンコ店放火起訴へ、大阪地検”. 47news. 共同通信社. (2009年11月28日) 2015年10月15日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b “【パチンコ店放火殺人】初公判で弁護側も罪状認める 「絞首刑では頭部切断も」と死刑の違憲主張”. 産経新聞. (2011年9月6日). オリジナルの2012年3月5日時点におけるアーカイブ。
- ^ 大阪のパチンコ店放火事件、死刑求刑 日本経済新聞 2011年10月17日
- ^ a b c “「絞首刑は合憲」パチンコ店放火で死刑判決”. 日本経済新聞. (2011年10月31日) 2015年10月15日閲覧。
- ^ “パチンコ店放火殺人、二審も死刑判決 大阪高裁が責任能力認定”. 日本経済新聞. (2013年7月31日) 2015年10月15日閲覧。
- ^ 「大阪パチンコ店放火殺人で最高裁弁論 弁護側、死刑回避を主張」『産経ニュース』産業経済新聞社、2016年1月19日。オリジナルの2016年1月20日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「パチンコ店放火殺人、死刑確定へ 最高裁「計画的な無差別殺人で残酷」」『産経ニュース』産業経済新聞社、2016年2月23日。オリジナルの2021年7月8日時点におけるアーカイブ。2021年7月8日閲覧。
- ^ パチンコ店放火殺人、死刑確定へ 最高裁「計画的な無差別殺人で残酷」 産経新聞 2016年2月23日
- ^ 5人殺害のパチンコ店放火、死刑確定へ 最高裁が上告棄却「計画的無差別殺人、責任は極めて重大」 産経新聞 2016年2月23日
- ^ 年報・死刑廃止 2020, p. 271.
- ^ a b 年報・死刑廃止 2020, p. 269.
- ^ 「パチンコ台改造容疑 放火殺人被害の店 経営者ら逮捕 大阪府警」『産経新聞大阪夕刊』2011年7月20日、9面。
参考文献
[編集]- 年報・死刑廃止編集委員会 著、(編集委員:岩井信・可知亮・笹原恵・島谷直子・高田章子・永井迅・安田好弘・深田卓) / (協力:死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90・死刑廃止のための大道寺幸子基金・深瀬暢子・国分葉子・岡本真菜) 編『コロナ禍のなかの死刑 年報・死刑廃止2020』(第1刷発行)インパクト出版会、2020年10月10日。ISBN 978-4755403064。 NCID BC03101691。国立国会図書館書誌ID:030661462 。
関連項目
[編集]- 死刑合憲判決
- 大阪個室ビデオ店放火事件
- 京都アニメーション放火殺人事件 - 当事件の約10年後に起こった放火事件
- 北新地ビル放火殺人事件