埼玉都民
埼玉都民(さいたまとみん)とは、埼玉県民の中でも、埼玉県から東京都区部に通勤・通学する者を指す俗語[1]。
定義
[編集]埼玉県民の一部で、埼玉県の住居から東京特別区へ通勤・通学する者を指す[2]。埼玉県は2015年の国勢調査による昼夜間人口比率が88.9%と日本で一番低く、関東地方で神奈川県に次いで2番目に多い[注釈 1]93万人が東京都特別区部へ流入している[3]。特にベッドタウンの性格が強い県南部(さいたま市、川口市、蕨市、所沢市、新座市、朝霞市、和光市、戸田市、草加市、八潮市、三郷市、吉川市など)においてその傾向が強い(後述する背景節も参照)。
また、JR東日本の宇都宮線・高崎線・上野東京ライン・湘南新宿ライン・埼京線・京浜東北線、東武鉄道の伊勢崎線(東武スカイツリーライン)・日光線[注釈 2]・東上線といった鉄道路線の整備により、県北東部、とりわけ東京都心からの距離が比較的距離のある利根地域[6]からも東京特別区へ通勤・通学する流れが強い。例えば旧北葛飾郡栗橋町でも県庁所在地であるさいたま市よりも東京特別区へ通勤・通学する割合が高い[注釈 3]。また、荒川以西に位置する東武東上線や西武池袋線などの沿線地域はさいたま市より、東京の池袋の方がアクセスしやすい状況にある。
さらには上越新幹線の開業とその後の新幹線通勤の増加で、県北西部[7]の中心都市である熊谷市でさえ東京都心に通勤・通学する県民も少なからずいる[8]。
背景
[編集]埼玉県は東京都に隣接しており、東京都に通勤しやすく、また、東京特別区に比べ地価・家賃が安いという利点もある。また、2014年から2021年現在まで連続して、東京都に対して埼玉県が転入超過数1位となっている[9]。歴史的観点からは、現在の埼玉県に該当する地域は、現在の島嶼部を除く東京都や神奈川県の川崎市や横浜市にほぼ該当する地域と共に江戸時代まで令制国の武蔵国を形成していた。
埼玉県内の鉄道路線は、東京方面へ直行する路線網(京浜東北線、埼京線、宇都宮線、高崎線、武蔵野線、東武伊勢崎線、東武日光線、東武東上線、西武池袋線、西武新宿線、つくばエクスプレス、埼玉高速鉄道など)が発達し、県内移動のための東西交通よりも東京にアクセスする南北交通が至便となった。高度経済成長期以降、このような南北間鉄道交通網整備を背景として、埼玉県では東京都特別区に近い南東部を中心に宅地化が急速に進行し、「住居は埼玉県にあっても東京都区内に通勤・通学する」というライフスタイルを持つ新住民が急増した。彼らの多くは地方から新規に流入した住民であること、東京に通勤・通学する者が多いことから、一般に埼玉県に対する郷土意識は低い傾向にあるといわれ、政治についても無党派層が多い[10]。また、特に東京都豊島区の池袋駅は埼京線・湘南新宿ライン・西武池袋線・東武東上線といった埼玉県方面から伸びる路線が多く集まる東京屈指のターミナル駅であり、さらに周辺は東京有数の巨大繁華街であることから、埼玉都民の、特に荒川以西の市町村[注釈 4]からの通勤・通学・買い物利用客が非常に多い。
市町村 | 割合 | 市町村 | 割合 |
---|---|---|---|
和光市 | 50.6% | 新座市 | 40.7% |
朝霞市 | 39.8% | 戸田市 | 39.4% |
蕨市 | 37.6% | 志木市 | 36.7% |
所沢市 | 36.4% | 草加市 | 35.9% |
川口市 | 33.7% | 富士見市 | 31.1% |
八潮市 | 29.8% | 三郷市 | 28.7% |
さいたま市 | 28.2% | ふじみ野市 | 27.7% |
越谷市 | 27.7% | 入間市 | 26.3% |
三芳町 | 24.9% | 狭山市 | 22.0% |
白岡市 | 21.9% | 飯能市 | 21.8% |
蓮田市 | 21.4% | 吉川市 | 20.2% |
上尾市 | 19.8% | 春日部市 | 19.7% |
桶川市 | 18.6% | 川越市 | 18.3% |
宮代町 | 18.0% | 北本市 | 17.1% |
鶴ヶ島市 | 16.7% | 久喜市 | 16.0% |
鴻巣市 | 15.3% | 杉戸町 | 15.1% |
松伏町 | 14.8% | 坂戸市 | 13.9% |
幸手市 | 13.8% | 鳩山町 | 13.5% |
伊奈町 | 13.3% | 日高市 | 12.7% |
東松山市 | 10.9% | 滑川町 | 10.8% |
小川町 | 9.4% | 加須市 | 8.8% |
嵐山町 | 8.8% | 毛呂山町 | 8.5% |
越生町 | 7.6% | 熊谷市 | 7.4% |
川島町 | 7.4% | 吉見町 | 7.3% |
行田市 | 6.7% | 羽生市 | 5.6% |
ときがわ町 | 5.0% |
埼玉県領事館
[編集]平日の昼間に東京へ出ている県民の利便性を図るため、埼玉県は1996年10月16日に埼玉県情報センター新宿(ニックネーム:埼玉県領事館、埼玉領事館)を新宿エルタワー地下1階に開設した[11]。ここでは当時県の事務であった旅券の発給や、県内市町村から辞令交付を受けた職員による住民票の写しの交付請求の受付(交付は市町村から郵送)等を行い[12]、1998年7月1日からは戸籍謄本・抄本の交付請求の受付(交付は市町村から郵送)も行っていたが[13]、2005年3月31日に廃止された[14]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ちなみに1番多いのは人口の母数が多い神奈川県だが、割合だと埼玉県の方が多い。神奈川都民は全神奈川県民約910万人中約100万人で1/9.1。一方埼玉県は全県民730万人中約90万人が埼玉都民で1/8.1。
- ^ 東武日光線は、南栗橋駅までの区間は東京都心直通区間で、実質的に東武本線・東武スカイツリーライン系統の延長線上として扱われている[4][5]。
- ^ 旧栗橋町の通勤率は、東京都区部へ20.1%、さいたま市へ12.2%(いずれも2005年国勢調査)。なお、さいたま新都心がまだ街開きしたばかりで業務機能の集積がなく、浦和市・大宮市・与野市の3市の新設合併で、さいたま市が発足する前の2000年国勢調査では東京都区部へ21.9%、旧大利根町へ4.4%、さいたま市内へは旧大宮市へ4.1%であった。
- ^ 県内の各市区町村からの最多通勤先が豊島区なのは、川越市を除いて全て荒川以西内の市町村である。2015年国勢調査「従業地による常住市区町村,職業(大分類)別15歳以上就業者数」
出典
[編集]- ^ “「埼玉都民」5年で1万人減 2015年時点で93万人”. 日本経済新聞. (2017年7月14日) 2019年7月13日閲覧。
- ^ 月例レポート 2001年11月(森岡洋一郎/松下政経塾第20期生) | 松下政経塾
- ^ “平成27年国勢調査 従業地・通学地集計結果 ~埼玉県の概要~”. 埼玉県. (2017年7月6日) 2017年7月9日閲覧。
- ^ 運行情報について 東武鉄道. 2022年11月21日閲覧。
- ^ 鉄道駅バリアフリー料金制度を活用し、駅設備のバリアフリー化を促進します ~「東武本線・東上線の都心直通区間及び東武アーバンパークラインへのホーム柵100%整備」を目指し、2035年度までに85駅を優先整備します~ 東武鉄道. 2024年5月21日閲覧。
- ^ 利根地域振興センター(埼玉県)。気象庁の警報・注意報の発表区域では利根地域は北東部にあたる。
- ^ 気象警報・注意報や天気予報の発表区域 関東甲信地方 埼玉県.気象庁.2022年12月1日閲覧。
- ^ “新幹線通勤って実際どうなの?熊谷~都内に通う「新幹線補助」利用者に本音を聞いてみた”. スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト (2018年1月24日). 2024年4月17日閲覧。
- ^ 「総務省住民基本台帳移動報告」(2014年~2021年)
- ^ “「埼玉都民」に訴え 陣営、東奔西走 「週末、絶好の機会」”. 読売新聞. (2010年7月5日) 2010年10月4日閲覧。
- ^ 川越市「新宿駅西口に「埼玉県領事館」を設置」(PDF)『広報川越』第896号、1996年10月10日、13頁、2020年3月26日閲覧。
- ^ 行政情報システム研究所. “行政情報化推進計画の今後の課題に関する調査研究報告書”. 日本財団. 2020年3月26日閲覧。
- ^ 川越市「埼玉県領事館で戸籍謄本・抄本の交付請求ができます」(PDF)『広報川越』第937号、1998年6月25日、12頁、2020年3月26日閲覧。
- ^ “埼玉県情報センター新宿の廃止について”. 埼玉県. 2005年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月26日閲覧。