コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

幹事長

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
副幹事長から転送)

幹事長(かんじちょう)は、組織の役職名の一つ。組織内に関わる職務を行う役職のうち最高位。政党組織の場合、機能遂行のための執行機関として総裁や委員長などの党首とそれを支える幹事長や書記長、議決機関として総務、常議員、中央委員などの役職が置かれる[1]

日本の政党の幹事長

[編集]

地位

[編集]

もともと、おおよそ2000年頃までに結党された政党では、政党内に「中央執行委員会」「常任幹事会」のような最高意思決定の常設機関があり、幹事長はその組織の長、あるいは事務長であるという位置づけになっているのが通例であった。古い大政党でそのようになっていないのは、自由民主党幹事長である。自民党幹事長は、特定機関に付属するという位置付けではない。また、小政党では最高意思決定の常設機関自体がそもそも存在しないので、幹事長は独立した党内役職となっている。2000年以降に結成された諸政党も同様である。

幹事長職がナンバー2である場合は、「総裁を補佐し、党務を執行する。」(自由民主党党則8条1項)、「代表を補佐し、党務を統括する。」(公明党規約35条1項)、「代表を補佐して党務執行全般を統括する。」(立憲民主党規約16条2項)と、各党の規則にある通り、党首の職務執行を補佐し、かつ党務を掌握する。党務の中には、党の膨大な資金配分や、選挙の総指揮も含むことが多い。つまり「カネ」と「人事」を握っている。そのため、「副総裁」「副代表」「副委員長」「副党首」など一見ナンバーツーを想起させる役職よりも権限が大きく、真のナンバーツーであるといえる。とりわけ、政府与党で党首が内閣総理大臣に選出されている場合は、多忙な首相兼党首に代わり、党の全権を掌握することとなる。

また、党本部だけではなく地方組織、すなわち党県支部[注釈 1]連合会・地方議会会派等にも「幹事長」の役職が設置されている。自由民主党、立憲民主党、国民民主党など大政党においては、都道府県連の代表には国会議員が就くのに対し、幹事長には地方議員が就任する事が多い。

外国語からの翻訳では、おおむね社会主義政党や革命志向政党については書記長、保守政党については幹事長と訳し分けることが多い。日本では1980年代以前に革新政党中道政党が、幹事長に相当する役職名として「書記長」(おおむね「中央執行委員会」付き)を置き、対して自民党やその源流あるいは派生の保守政党は幹事長を置いていた。1990年代以降は、かつて書記長を置いていた党の直系の後継政党が書記長の代わりに幹事長を置く例が続いた(社会民主党・公明党など)。現在、政党要件を満たす党では日本共産党書記局長を置く他は、幹事長または代表幹事を置くか、共同代表制などを取っている。

これまで与党第一党の幹事長は首相と同様全員衆議院議員で占められていた。しかし、2011年9月には民主党の幹事長に参議院議員会長の輿石東が就任(兼任)した。

幹事長の下に副幹事長を置く場合や、幹事長の筆頭補佐職として幹事長代理が置かれることもある。

各政党の幹事長の地位と名称
ナンバーワン ナンバーツー 政党・組織名 備考
総裁 幹事長 立憲政友会
立憲民政党
日本自由党 吉田茂
日本進歩党
民主党
民主自由党
自由党 吉田自由党
改進党
日本自由党 鳩山自由党
日本民主党 鳩山一郎
自由民主党
党首 幹事長 新進党
太陽党
社会民主党
自由党 小沢一郎
保守党 小沢自由党から分派、後の保守新党
次世代の党
みんなでつくる党
代表 幹事長 新自由クラブ
新党さきがけ 1996年から
民政党 羽田孜
民主党 1996-1998
民主党 1998-2016
民進党
国民民主党 2018-2020
国民民主党 2020-
公明党 1998年から
保守新党
国民新党
新党日本
改革クラブ 後の新党改革
みんなの党
たちあがれ日本
新党改革
政党そうぞう
女性党
維新政党・新風
新党大地・真民主
日本のこころ
希望の党
立憲民主党 2017-2020
立憲民主党 2020-
日本維新の会
れいわ新選組
代表 事務局長 参政党

主要政党の幹事長・書記局長

[編集]

与党

[編集]
自由民主党
公明党

野党

[編集]
立憲民主党
日本維新の会
国民民主党
日本共産党中央委員会
  • 書記局長 - 小池晃
    • 書記局長代行 - 田中悠
    • 書記局次長 - 中井作太郎、堤文俊、土方明果、土井洋彦
    • 書記局員 - 岩崎明日香、大幡基夫、岡嵜郁子、坂井希、沢田博、田川実、田村一志、辻慎一、寺沢亜志也、藤井正人、藤田健、村主明子
  • 参議院幹事長 - 井上哲士
れいわ新選組
参政党
日本保守党
社会民主党全国連合

地域政党・政治団体

[編集]
大阪維新の会拡大執行役委員
  • 幹事長 - 杉江友介
    • 幹事長代行 - 角谷庄一(大阪府議会議員)
    • 幹事長代理 - 杉村幸太郎(大阪市会議員)、西田浩延(堺市議会議員)、上田健二(大阪府議会議員)
都民ファーストの会執行部
  • 幹事長 - 尾島紘平(東京都議会議員)
    • 幹事長代行 - 伊藤大輔(東京都議会議員)
沖縄社会大衆党中央執行委員会
減税日本執行部
  • 幹事長 - 大谷智洋(名古屋市会議員)
    • 幹事長代行 - 大村光子(名古屋市会議員)
幸福実現党役員会
  • 幹事長 - 江夏正敏(非議員)
新社会党中央執行委員会
  • 書記長 - 山崎秀一(非議員)
    • 副書記長 - 宮川敏一(非議員)
緑の党グリーンズジャパン運営委員
自由を守る会
あたらしい党
新党大地
  • 幹事長 - (空席)
龍馬プロジェクト全国会事務局
京都党

欧州の政党の幹事長

[編集]

イギリス

[編集]
保守党
イギリスの保守党には党組織や党運営の最高意思決定機関として党評議会が設置されており、そこに党幹事長(Chairman of the Party)と2名の党幹事長代行が置かれている[2]。党幹事長は慣例により国会議員の中から党首が任命する[2]
党幹事長は党評議会の議長を兼務し、保守党政策フォーラム(CPFの運営機関)のメンバーのうち1名の党上級ディレクターの任命権を有する[2]。また、保守党には党の組織活動の統括組織として保守党キャンペーン本部(Conservative Campaign Headquarters. CCHQ)があり、党幹事長は組織の監督を行い、運営に責任を負っている[2]。なお、保守党キャンペーン本部(CCHQ)で日常の運営を行う事務方として事務局長(Chief Executive)が置かれている[2]
結党当初、保守党では院内幹事長によって党中央事務局が運営されていた[2]。しかし、1911年に党首のアーサー・バルフォアが設置した統一組織委員会(Unionist Organization Committee)の中間報告により、院内幹事長の職務は院内組織の運営のみとなり、中央事務局を指導するポストとしてスタッフの指導的な役割を果たす党幹事長と資金調達に責任を持つ党財務局長(Party Treasurer)が新設された[2]。統一組織委員会の中間報告では、党幹事長は閣僚級とすべきとされたが、人材不足や当時の派閥支配、党首の権威に対し潜在的なライバルになりかねないとして、1946年まで下級大臣級の処遇であったが、以後は影の内閣でも閣僚級の処遇である[2]
なお、党規約では、党幹事長の下に党幹事長代行(Deputy Chairman)が最低2名置かれ、一人は全国保守党協議会で議長に選出された者、一人は党首によって任命された者が就く[2]。また、党幹事長代行より下位に党副幹事長(Vice Chairman)が置かれ、時々に応じて担当が決められ職務を分担している[2]

ドイツ

[編集]

ドイツにも幹事長を置く政党がある。

ホイップ(院内幹事)

[編集]

英米系諸国の議会にはホイップ(whip。鞭と同義)という役職があり(参照: 内閣 (イギリス)#院内幹事)、日本語では「院内幹事」と訳されている。院内幹事の起源は18世紀にあり、その長である院内幹事長の業務は次第に拡大していった[2]。この職は、自党に属する議員が投票行動において党の決定に反さないように督励や調整を行う仕事である。院内幹事は党内では登院命令書(Whip)を送付して執行部とバックベンチャーとの連絡を行う役割があり、党首とバックベンチャーの意見調整を行う[2]。また、院内幹事長は対外的には自党を代表して、法案の審議時間、委員会のポスト配分など議会での審議について与野党で協議を行う[2]。会派の役職でありながら、かつ議会における公的な地位でもある点が、日本の政党の「党参院議員会長」「党参議院幹事長」などとは異なる。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 衆議院の選挙区のこと
  2. ^ 幹事長代理以下は幹事長の補佐という位置付けである。

出典

[編集]
  1. ^ 青木康容「帝国議会議員の構成と変化 (4)」『評論・社会科学』第55巻、同志社大学人文学会、1996年9月、69-87頁、doi:10.14988/pa.2017.0000002117ISSN 0286-2840CRID 13908536498392980482023年6月22日閲覧 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 宮畑建志「英国保守党の組織と党内ガバナンス : キャメロン党首下の保守党を中心に」『レファレンス』第61巻第12号、国立国会図書館、2011年12月、167-197頁、doi:10.11501/3196938ISSN 003429122023年6月22日閲覧 

関連項目

[編集]