利用者:遡雨祈胡/下書き8
ストーカー殺人では、ストーカーによる殺人について扱う。ストーカー全体の内殺人に至るのは1.9パーセントと限られている[1]。ただし、この割合は現実の殺人発生率を低く見積もった者であることがたびたび指摘されている[2]。ただし、この割合であればアメリカやイギリス、オーストラリアでの殺人発生率を上回ることから、ストーカー殺人の発生率については検討の余地が残る[3]。
ストーカー殺人では、ストーカーの自殺が頻発する[4]。これは目標達成による充実感と、目標を失ったことによる喪失感によるものと言われている[4]。秋岡は自殺した殺人犯について、日本の警察は寛容だが、被害者遺族のためにも真実を明らかにして欲しいと述べている[4]。
日本では、ストーカー殺人によって企業が労働災害の保証を求められた判例が存在する[5]。この場合、業務起因性が認められることや、労働者の業務との関連性が重視される[6]。弁護士の小西華子は、珍しいケースであることに留意するよう述べている[6]。
NPO法人ヒューマニティ理事長の小早川明子は、恋愛感情に基づくストーカーの一部について、被害者との接触の中で自身の正当性を盲信していると述べている[7]。そして被害者に迷惑を掛けていることを認識しながらも、自身に好意を持ってくれる期待を持ち続けており、その希望が立たれると殺人や自殺を引き起こすとしている[8]。そして加害者はそうした「こだわり」への回答を求め、苦しみ続けているとしている[9]。こうしたこだわりの中に、ストーキングの解決への糸口が存在すると述べている[8]。
代表的な事件
[編集]年齢は事件当時のものを記す。死者はストーキングの中での死者のみとし、別件や後遺症による死者は本項では掲載しない。
事件 | 発生日 | 発生場所 | ストーカー | 被害者 | 死者 |
---|---|---|---|---|---|
ジョン・レノンの殺害 | 1980年12月8日 | ニューヨーク市 | マーク・チャップマン | ジョン・レノン | 被害者と同一 |
レーガン大統領暗殺未遂事件 | 1981年3月30日 | ワシントンD.C. | ジョン・ヒンクリー | ジョディ・フォスター | なし |
リチャード・ファーレーによる銃撃事件 | 1988年2月16日 | カリフォルニア州 | リチャード・ファーレー | ローラ・ブラック | ESL社社員7名 |
元祖ストーカー殺人事件[10] | 1988年3月5日 | 東京都品川区 | 男性(50) | 中里綴 | 被害者と同一 |
レベッカ・シェイファーの殺害 | 1989年7月18日 | ロサンゼルス | ロバート・ジョン・バルド | レベッカ・シェイファー | 被害者と同一 |
セレーナの殺害[11] | 1995年3月31日 | テキサス州 | ヨランダ・サルディバル | セレーナ | 被害者と同一 |
群馬一家3人殺害事件[12] | 1998年1月14日 | 群馬県高崎市 | 男性(28) | 女性 |
|
ジル・ダンドーの殺害[13] | 1999年4月26日 | フラム | 男性 | ジル・ダンドー | 被害者と同一 |
西尾市女子高生ストーカー殺人事件[14] | 1999年8月9日 | 愛知県西尾市 | 男性(17) | 女性(16) | 被害者と同一 |
桶川ストーカー殺人事件 | 1999年10月26日 | 埼玉県桶川市 | 27-34歳の男性5人 | 女性(21) | 被害者と同一 |
沼津女子高生ストーカー殺人事件[15] | 2000年4月19日 | 静岡県沼津市 | 男性(27) | 女性(17) | 被害者と同一 |
アンドリュー・バッグビィの殺害[16] | 2001年11月5日 | ニューヨーク市 | シャーリー・ターナー | アンドリュー・バッグビィ | 被害者と同一 |
メアリー・リン・ウィザースプーンの殺害[17] | 2003年11月14日 | サウスカロライナ州 | 男性(23) | メアリー・リン・ウィザースプーン | 被害者と同一 |
コロンバス・ナイトクラブ銃乱射事件[11] | 2004年12月8日 | オハイオ州 | ネイサン・ゲイル | ダイムバッグ・ダレル |
|
警視庁立川警察署警察官女性射殺事件[18] | 2007年8月20日 | 東京都国分寺市 | 男性(40) | 女性(32) | 被害者と同一 |
函館ストーカー殺人事件[19] | 2007年11月26日 | 北海道函館市 | 男性(22) | 女性(23) | 被害者と同一 |
ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件[20] | 2007年12月14日 | 長崎県佐世保市 | 男性(37) | 女性(27) |
|
新橋ストーカー殺人事件 | 2009年8月3日 | 東京都港区 | 男性(41) | 女性(21) |
|
平野区母娘殺害事件 | 2011年6月24日 | 大阪府大阪市 | 男性(35) | 女性(27) |
|
長崎ストーカー殺人事件 | 2011年12月16日 | 長崎県西海市 | 男性(27) | 女性 |
|
逗子ストーカー殺人事件 | 2012年11月6日 | 神奈川県逗子市 | 男性(40) | 女性(33) | 被害者と同一 |
伊勢原ストーカー殺人未遂事件[21] | 2013年5月21日 | 神奈川県伊勢原市 | 男性(32) | 女性(31) | なし |
三鷹ストーカー殺人事件 | 2013年10月8日 | 東京都三鷹市 | 男性(21) | 女性(18) | 被害者と同一 |
市川ストーカー殺人事件[22] | 2013年11月27日 | 千葉県市川市 | 男性(23) | 女性(22) | 被害者と同一 |
館林ストーカー殺人事件 | 2014年2月19日 | 群馬県館林市 | 男性(39) | 女性(26) | 被害者と同一 |
平野区ストーカー殺人事件[23] | 2014年5月2日 | 大阪府大阪市 | 男性(57) | 女性(38) | 被害者と同一 |
日野市ストーカー死体遺棄殺人事件[24] | 2014年6月18日 | 東京都日野市 | 男性(24) | 女性(24) | 被害者と同一 |
平塚ホステス死体遺棄事件[25] | 2014年10月26日 | 神奈川県平塚市 | 男性(34) | 女性(26) | 被害者と同一 |
愛媛僧侶ストーカー殺人事件[26] | 2014年12月16日 | 愛媛県松山市 | 男性(29) | 女性(37) | 被害者と同一 |
小金井ストーカー殺人未遂事件 | 2016年5月21日 | 東京都小金井市 | 男性(27) | 女性(21) | なし |
シャナ・グリスの殺害[27] | 2016年8月25日 | イースト・サセックス | 男性(27) | シャナ・グリス | 被害者と同一 |
目黒ストーカーバラバラ殺人事件[28] | 2016年9月20日 | 東京都目黒区 | 男性(50) | 女性(24) | 被害者と同一 |
静岡ストーカー殺人事件[29] | 2016年10月4日 | 静岡県牧之原市 | 男性(41) | 女性(32) | 被害者と同一 |
浜松ストーカー殺人事件[30] | 2018年11月1日 | 静岡県浜松市 | 男性(45) | 女性(48) | 被害者と同一 |
大宮女性刺殺事件[31][32] | 2019年1月23日 | 埼玉県さいたま市 | 男性(25) | 女性(22) | 被害者と同一 |
沼津女子大生ストーカー殺人事件[33][34] | 2020年6月27日 | 静岡県沼津市 | 男性(20) | 女性(19) | 被害者と同一 |
北九州ストーカー殺人事件[35][36] | 2021年11月1日 | 福岡県北九州市 | 男性(52) | 女性(49) | 被害者と同一 |
博多駅前女性刺殺事件[35] | 2023年1月16日 | 福岡県福岡市 | 男性(31) | 女性(38) | 被害者と同一 |
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ 遙洋子『私はこうしてストーカーに殺されずにすんだ』(初版)筑摩書房、2015年2月10日、202頁。ASIN 4480815236。ISBN 978-4-480-81523-1。 NCID BB18985286。OCLC 910540068。JAN 9784480815231 全国書誌番号:22567737。
- ^ ミューレン et al. 2003, p. 256.
- ^ ミューレン et al. 2003, p. 257.
- ^ a b c 秋岡史『ストーカー犯罪 被害者が語る実態と対策』(新装版)、2003年6月12日、38頁。ASIN 4250202399。ISBN 4-250-20317-4。 NCID BA62555052。OCLC 676092723。JAN 4250203174 全国書誌番号:20480781。
- ^ 山浦 et al. 2017, pp. 26–28.
- ^ a b 山浦 et al. 2017, p. 27.
- ^ 小早川 2014, pp. 3–4.
- ^ a b 小早川 2014, p. 4.
- ^ 小早川 2014, pp. 4–5.
- ^ "元祖ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ a b DK社 編「ぼくは無名だった 世界で一番有名な 誰かさんを殺すまでは ジョン・レノン殺害事件(1980年12月8日)」『犯罪学大図鑑』三省堂、240頁。ISBN 978-4-385-16239-3。 NCID BB28665292。OCLC 1120107318。JAN 9784385162393 全国書誌番号:23263477。
- ^ "群馬一家殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ 守山正『ストーキングの現状と対策』(初版)成文堂、2019年3月20日、308頁。ASIN 479235272X。ISBN 978-4-7923-5272-1。 NCID BB28038270。OCLC 1091229104。JAN 9784792352721 全国書誌番号:23202759。
- ^ "西尾市女子高生ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ "沼津女子高生ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ Martín, Sara (2023-05-24) (英語), American Masculinities in Contemporary Documentary Film Up Close Behind the Mask, Taylor & Francis, ISBN 9781000875805
- ^ Morrison, Keith (2006年11月9日). “Fatal attraction”. オリジナルの2022年12月29日時点におけるアーカイブ。 2022年12月29日閲覧。
- ^ 遠藤智子『デートDV 愛か暴力か、見抜く力があなたを救う』(初版)ベストセラーズ、2007年11月22日、21-23頁。ISBN 978-4-584-13035-3。 NCID BA83993499。OCLC 675088491。JAN 9784584130353 全国書誌番号:21338028。
- ^ "函館ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ 村上千鶴子『ストーカー』(初版)駿河台出版社〈21世紀カウンセリング叢書〉、2009年7月25日、21-23頁。ASIN 4411040069。ISBN 978-4-411-04006-0。 NCID BA90855600。OCLC 674761380。JAN 9784411040060 全国書誌番号:21638064。
- ^ 伊田 2015, p. 241-243.
- ^ "市川ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ 伊田 2015, pp. 246–247.
- ^ "東京都日野市ストーカー死体遺棄殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
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- ^ "愛媛僧侶ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ 「ストーカー被害を警察に何度も通報した女性 「時間の無駄」と取り合わず元恋人に殺害される(英)」『Techinsight』2021年3月26日。オリジナルの2023年5月29日時点におけるアーカイブ。2023年5月29日閲覧。
- ^ "目黒ストーカーバラバラ殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ "静岡ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ "浜松ストーカー殺人事件". 全国ストーカー対策相談センター. 2022年2月20日閲覧。
- ^ 「警察相談の3時間前に切りつけ被害か 大宮の女性刺殺」『朝日新聞』2019年1月24日。2022年2月20日閲覧。
- ^ 「<大宮刺殺>彼女いないと生きていられない…女性の勤務先廊下で男待ち伏せ殺害か「別れ話のもつれで」」『埼玉新聞』2019年1月25日。オリジナルの2023年4月17日時点におけるアーカイブ。2023年4月17日閲覧。
- ^ 「馬乗りになり刃物で何度も…沼津・女子大生刺殺事件 2人の関係性とは?」『』FNN、2020年6月29日。オリジナルの2023年4月17日時点におけるアーカイブ。2023年4月17日閲覧。
- ^ 「女子大生ストーカー殺人、男に懲役20年「執拗で残忍」」『朝日新聞』2021年7月14日。オリジナルの2023年4月26日時点におけるアーカイブ。2023年4月26日閲覧。
- ^ a b 「博多駅前女性刺殺から1週間 ストーカー規制に限界、県警担当者「法律の下でどうすればいいのか難しい」」『西日本新聞』2023年1月23日。オリジナルの2023年5月28日時点におけるアーカイブ。2023年5月28日閲覧。
- ^ 「元交際相手を殺害容疑、会社員の男を逮捕 「怒りがこみ上げた」」『朝日新聞』2021年11月1日。オリジナルの2023年1月25日時点におけるアーカイブ。2023年1月25日閲覧。
参考文献
[編集]- P.E.ミューレン; M.パテ; R.パーセル『ストーカーの心理 治療と問題の解決に向けて』(初版)サイエンス社、2003年8月25日。ASIN 4781910459。ISBN 4-7819-1045-9。 NCID BA63609554。OCLC 676487410。JAN 4781910459 全国書誌番号:20470739。
- 伊田広行『デートDV・ストーカー対策のネクストステージ 被害者支援/加害者対応のコツとポイント』(初版)解放出版社、2015年2月15日。ISBN 978-4-7592-6764-8。 NCID BB18192707。OCLC 904594786。JAN 9784759267648 全国書誌番号:22532668。
- 小早川明子『「ストーカー」は何を考えているか』新潮社〈新潮新書 567〉、2014年4月17日。ASIN B00O0FIDHI。ISBN 978-4-10-610567-8。 NCID BB15341855。OCLC 879306765。JAN 9784106105678 全国書誌番号:22404114。
- 山浦美紀; 大浦綾子; 小西華子; 里内友貴子; 髙橋佳子『女性活躍推進法・改正育児介護休業法対応 女性社員の労務相談ハンドブック』2017年11月、26頁。ISBN 978-4-7882-8353-4。 NCID BB25526289。OCLC 1351663666。JAN 9784788283534 全国書誌番号:23759935 。