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ヤブムラサキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤブムラサキ
紫色の実をつけたヤブムラサキ、弓張山地(愛知県豊橋市)にて、2013年12月7日撮影
実をつけたヤブムラサキ、弓張山地愛知県豊橋市)にて
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
: ムラサキシキブ属 Callicarpa
: ヤブムラサキ C. mollis
学名
Callicarpa mollis Siebold et Zucc. (1846)[1]
品種
  • シロミノヤブムラサキ C. mollis f. albifructa[2]
  • ナガバヤブムラサキ C. mollis f. ramosissima[3]

ヤブムラサキ(薮紫[4]学名: Callicarpa mollis)は、シソ科[注 1]ムラサキシキブ属分類される落葉低木の1[5][6]名(Callicarpa)は「美しい」と「実」を意味し、種小名(mollis)は「軟毛のある」を意味する[7]。別名ヤマムラサキ(山紫)ともよばれる[8]

分布と生育環境

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山地の明るい林縁に生育するヤブムラサキ

朝鮮半島日本温帯から暖帯にかけて分布する[6][7]。日本では、本州宮城県以南)、四国九州に分布する[6][7]

山地[7]の明るい林内や林縁に普通に生育している[5]。本種がを数十ppmの濃度で蓄積する特性があることから金の指標植物とされ[9]、植物地化学探査で金鉱化指示植物として有効であることが確認されている[10]イチモンジカメノコハムシ食草の一つとしている。観賞用樹木として園芸に利用されている。

特徴

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落葉広葉樹低木[11]高は2 - 3 メートル (m) [6]、大きなものでは5 mあまりになるといわれる[8]樹皮は灰褐色で滑らかであるが、太い幹の樹皮は縦に裂ける[4]は細く、初め灰白色の星状毛を密生するが、後に無毛となる[7]は薄い洋紙質で対生し、長さ6 - 12 センチメートル (cm) の広卵形または卵状楕円形、両面に腺点があり[11][6]、表面に軟毛が密生し触るとふわふわし、裏面にはほこりのような星状毛や羽状毛が密生する[5]ムラサキシキブとの違いは、葉の基部から中央の下半分が幅広く[8]、基部はムラサキシキブよりも丸い[5]葉柄は長さ3 - 8 ミリメートル (mm) [5]

開花時期は6 - 7月[6]葉腋から短い集散花序を出し、長さ4 - 5 mmほどの薄紫色の小さな花を数個付ける[11][6]花冠には星状毛が多い[6]果実液果[7]、直径約4 mmの球形で[6]、秋に紫色に熟し宿存する萼に毛がある[7]。ムラサキシキブ属の中では果実が大きく、萼片が残り、その毛の多さが際立つ[4]

冬芽は星状毛が密生する裸芽で、短い柄があり、幼い葉が2枚向き合うようにつく[4]側芽は枝に対生する[4]。枝先の頂芽は、毛が多い萼が残る[4]。葉痕は、半円形や円形で、維管束痕が1個つく[4]ムラサキシキブ(学名: Callicarpa japonica)に似るが、星状毛がより多く、毛深い印象である[4]

分類

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時にムラサキシキブとの雑種であるイヌムラサキシキブ(学名:Callicarpa x shirasawana Makino[12])が見られる[5]。以下の品種が知られている。

  • シロミノヤブムラサキ Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. albifructa Nanko[2]
  • ナガバヤブムラサキ Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. ramosissima (Nakai) W.T.Lee[3]

種の保全状況評価

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日本では、以下の都道府県によりレッドリストの指定を受けている。

  • 準絶滅危惧(NT) - 石川県[14]
  • 分布特性上重要な種 - 鹿児島県

脚注

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注釈

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  1. ^ 最新の分類体系であるAPG体系ではシソ科 (Lamiaceae) に分類されるが、古い分類体系のクロンキスト体系新エングラー体系ではクマツヅラ科 (Verbenaceae) に分類された[1]

出典

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa mollis Siebold et Zucc. ヤブムラサキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. albifructa Nanko シロミノヤブムラサキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. ramosissima (Nakai) W.T.Lee ナガバヤブムラサキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 (2014), p. 57
  5. ^ a b c d e f 林 (2014)、647頁
  6. ^ a b c d e f g h i 林 (2011)、660頁
  7. ^ a b c d e f g 牧野 (1982)、461頁
  8. ^ a b c 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、185頁。ISBN 4-12-101834-6 
  9. ^ 西岡 (2005)、301頁
  10. ^ 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (1991)、12頁
  11. ^ a b c 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 261.
  12. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa x shirasawana Makino イヌムラサキシキブ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
  13. ^ 林 (2011)、658頁
  14. ^ ヤブムラサキ” (PDF). 石川県. pp. 571. 2017年11月4日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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