ヤブムラサキ
ヤブムラサキ | ||||||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Callicarpa mollis Siebold et Zucc. (1846)[1] | ||||||||||||||||||||||||
品種 | ||||||||||||||||||||||||
ヤブムラサキ(薮紫[4]、学名: Callicarpa mollis)は、シソ科[注 1]ムラサキシキブ属に分類される落葉低木の1種[5][6]。属名(Callicarpa)は「美しい」と「実」を意味し、種小名(mollis)は「軟毛のある」を意味する[7]。別名ヤマムラサキ(山紫)ともよばれる[8]。
分布と生育環境
[編集]朝鮮半島と日本の温帯から暖帯にかけて分布する[6][7]。日本では、本州(宮城県以南)、四国、九州に分布する[6][7]。
山地[7]の明るい林内や林縁に普通に生育している[5]。本種が金を数十ppmの濃度で蓄積する特性があることから金の指標植物とされ[9]、植物地化学探査で金鉱化指示植物として有効であることが確認されている[10]。イチモンジカメノコハムシが食草の一つとしている。観賞用樹木として園芸に利用されている。
特徴
[編集]落葉広葉樹の低木で[11]、樹高は2 - 3 メートル (m) [6]、大きなものでは5 mあまりになるといわれる[8]。樹皮は灰褐色で滑らかであるが、太い幹の樹皮は縦に裂ける[4]。枝は細く、初め灰白色の星状毛を密生するが、後に無毛となる[7]。葉は薄い洋紙質で対生し、長さ6 - 12 センチメートル (cm) の広卵形または卵状楕円形、両面に腺点があり[11][6]、表面に軟毛が密生し触るとふわふわし、裏面にはほこりのような星状毛や羽状毛が密生する[5]。ムラサキシキブとの違いは、葉の基部から中央の下半分が幅広く[8]、基部はムラサキシキブよりも丸い[5]。葉柄は長さ3 - 8 ミリメートル (mm) [5]。
開花時期は6 - 7月[6]。葉腋から短い集散花序を出し、長さ4 - 5 mmほどの薄紫色の小さな花を数個付ける[11][6]。花冠、萼には星状毛が多い[6]。果実は液果[7]、直径約4 mmの球形で[6]、秋に紫色に熟し宿存する萼に毛がある[7]。ムラサキシキブ属の中では果実が大きく、萼片が残り、その毛の多さが際立つ[4]。
冬芽は星状毛が密生する裸芽で、短い柄があり、幼い葉が2枚向き合うようにつく[4]。側芽は枝に対生する[4]。枝先の頂芽は、毛が多い萼が残る[4]。葉痕は、半円形や円形で、維管束痕が1個つく[4]。ムラサキシキブ(学名: Callicarpa japonica)に似るが、星状毛がより多く、毛深い印象である[4]。
分類
[編集]時にムラサキシキブとの雑種であるイヌムラサキシキブ(学名:Callicarpa x shirasawana Makino[12])が見られる[5]。以下の品種が知られている。
- シロミノヤブムラサキ Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. albifructa Nanko[2]
- ナガバヤブムラサキ Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. ramosissima (Nakai) W.T.Lee[3]
種の保全状況評価
[編集]日本では、以下の都道府県によりレッドリストの指定を受けている。
- 準絶滅危惧(NT) - 石川県[14]
- 分布特性上重要な種 - 鹿児島県
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 最新の分類体系であるAPG体系ではシソ科 (Lamiaceae) に分類されるが、古い分類体系のクロンキスト体系や新エングラー体系ではクマツヅラ科 (Verbenaceae) に分類された[1]。
出典
[編集]- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa mollis Siebold et Zucc. ヤブムラサキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. albifructa Nanko シロミノヤブムラサキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa mollis Siebold et Zucc. f. ramosissima (Nakai) W.T.Lee ナガバヤブムラサキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 (2014), p. 57
- ^ a b c d e f 林 (2014)、647頁
- ^ a b c d e f g h i 林 (2011)、660頁
- ^ a b c d e f g 牧野 (1982)、461頁
- ^ a b c 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、185頁。ISBN 4-12-101834-6。
- ^ 西岡 (2005)、301頁
- ^ 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (1991)、12頁
- ^ a b c 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 261.
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Callicarpa x shirasawana Makino イヌムラサキシキブ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月21日閲覧。
- ^ 林 (2011)、658頁
- ^ “ヤブムラサキ” (PDF). 石川県. pp. 571. 2017年11月4日閲覧。
参考文献
[編集]- 『鉱床探査成功例「菱刈鉱床」』石油天然ガス・金属鉱物資源機構〈日本の金属鉱業技術〉、1991年。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、57頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 西岡洋、小寺浩史「シダ植物中の重金属について」『環境技術』第34巻第3号、環境技術学会、2005年、doi:10.5956/jriet.34.301、NAID 130004174066。
- 林将之『樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』(山溪ハンディ図鑑14)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2014年4月15日。ISBN 978-4635070324。
- 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、261頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。全国書誌番号:85032603 。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- ヤブムラサキの標本(1983年6月に島根県隠岐郡で採集) 島根大学生物資源学部デジタル標本館
- ヤブムラサキ 広島大学デジタル自然史博物館
- ヤブムラサキ 筑波実験植物園
- ヤブムラサキ 森林総合研究所九州支所
- ヤブムラサキ 石川県
- ヤブムラサキ 平塚市博物館
- Callicarpa mollis Siebold & Zucc. (The Plant List)
- Callicarpa mollis (Encyclopedia of Life)