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ミラノ市電

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミラノ市電
ミラノ市電の代表的車両・1500形(2015年撮影)
ミラノ市電の代表的車両・1500形(2015年撮影)
基本情報
イタリアの旗 イタリア
ロンバルディア州の旗 ロンバルディア州
所在地 ミラノ
種類 路面電車
路線網 17系統(2024年時点)[1]
開業 1881年(馬車鉄道)
1893年(路面電車)[2]
運営者 ミラノ市交通公社イタリア語版[2][1]
車両基地 5箇所[2]
路線諸元
路線距離 約157 km[1]
軌間 1,445 mm[2][3]
電化方式 直流600 V
架空電車線方式[2]
路線図(2021年時点、郊外路線イタリア語版含)
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ミラノ市電(ミラノしでん、イタリア語: Rete tranviaria di Milano)は、イタリアの都市・ミラノ路面電車。同都市内に大規模な路線網を有しており、軌間イタリア軌間英語版とも呼ばれる1,445 mmである。運営は2024年時点で地下鉄ミラノ地下鉄)やトロリーバスミラノ・トロリーバスイタリア語版)、路線バスなどの公共交通機関と共にミラノ市交通公社イタリア語版(Azienda Trasporti Milanesi S.p.A.、ATM)によって行われている[2][3][4][5]

歴史

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ミラノにおける初の軌道交通は1876年に開通した郊外地域を走る馬車鉄道であったが、これは郊外を結ぶ路線であり、現在のミラノ市電の基礎となった市内路線は1881年に実施された産業博覧会に合わせて開通し、以降路線網を拡張させていった経緯を持つ。当時は各鉄道が異なる事業者によって運営されており、このミラノ市内の路線は乗合馬車株式会社イタリア語版(Società Anonima degli Omnibus、SAO)が所有していた[6][7][8]

その後、1893年ドゥオーモ前からコルソ・センピオーネ(Corso Sempione)までの区間で路面電車の試験的な営業運転が始まり、好評を受けて1897年以降実施された本格的な市内区間の電化は1901年までに完了した。この電化を主導したのはイタリアのエネルギー会社でミラノに本社を置くエジソン社イタリア語版(Edison)で、1895年から路面電車の運行も担う事となった。また、電化以降1910年までに付随車も併せて900両以上の大量導入が行われた電車(2軸車)は「エジソン形イタリア語版」とも呼ばれている[6]

第一次世界大戦や運営権のミラノ市路面電車事務局イタリア語版への移管を経たミラノ市電における最大の変革は、1926年11月に実施された大規模な系統の見直しであった。これは路面電車による混雑を削減する目的があり、それまで全ての系統が経由していたドゥオーモ前から各方面の起終点の電停が分散された。一方、車両についても従来の2軸車から更に輸送力を高めた車両の導入が求められるようになり、1927年に大型ボギー車の試作車を導入し、その成果を受けて1928年以降量産車500両の大量導入が実施された。これが「1928形」「カレッリ(Carrelli)」とも呼ばれる1500形電車である。その後も既存の2軸車を改造した連接車や、更なる近代化を目的とした新型ボギー車の導入などが継続して行われ、世界恐慌を経たミラノ市電は1940年の時点で路線網と車両数、双方で最大規模に達した。運営組織については、1931年にそれまでのミラノ市直属からミラノ市が出資する「ミラノ市路面電車会社(Azienda Tranviaria Municipale)」へ形態を改めている[6][9][7][1][5]

第二次世界大戦中も新型連接車の導入が行われたが、1943年8月空襲によりミラノ市内は甚大な被害を受け、路面電車網も5箇所の車庫のうち4箇所が破壊され、車両も半数以上が走行不可能な状態に陥った。終戦後、これらの被害の迅速な復旧が行われ、短期間のうちに多数の車両が営業運転に復帰した[10][7][3]

1950年代以降もミラノ市電には新型電車の導入が進められたが、一方で急速に進むモータリーゼーションにより道路は渋滞が相次ぎ、それに巻き込まれた路面電車は定時性が失われていった。更に、交通状態の改善を目的とした地下鉄ミラノ地下鉄)の建設も始まり、最初の路線となるM1号線の開通に伴い一部の系統が廃止された事を皮切りに、地下鉄への置き換えや道路工事、更には合理化などの理由で多数の系統が営業運転を終了していった。車両についても合理化が進められ、2軸車やそれらを改造した連接車は順次廃車されていった。また、合理化は運行形態にも及び、車掌業務の廃止やそれに合わせた集電装置のポールからパンタグラフへの変更が実施された[10][11][3][5]

その一方でミラノ市電では需要が高い系統も数多く存在しており、それらの系統における多数の車両による混雑を解消すべく、既存のボギー車を改造した3車体連接車の導入が進められた。また、1970年代に入ると建設費用が嵩む地下鉄に代わる高規格の路面電車路線の導入も計画され、この時点では実現しなかったもののそれに合わせた大型の新造3車体連接車が作られている[11][12]

それ以降も路線網の縮小は続き、1993年にも地下鉄M3号線の開通による一部区間の廃止が断行された。しかし、運営組織の名称が1999年に「ミラノ市交通公社(Azienda Trasporti Milanesi)」になって以降、路面電車の本格的な近代化が進められる事となり、高規格の路面電車「メトロトランヴィア(Metrotranvie)」を各方面に建設する計画が動き出した。これに基づく最初の区間が開通したのは2002年12月7日で、ミラノ北部の各地区と地下鉄の駅を結ぶこの区間には鉄道路線の下部を通る路面電車専用のトンネルも建設された。それ以降、この区間の延伸を含めた路線網の開通が順次行われており、最新の区間は2018年9月に開通した15号線の延伸部分、全長1.7 kmである。車両面に関しても、2000年以降バリアフリーに適した超低床電車の導入が進められている一方、経費削減を目的とした既存の車両のリニューアルも実施されている[3][13][14][15][16][17][18]

路線

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ミラノ市電の路線・配線図(2024年10月時点)

2024年現在、ミラノ市交通公社はミラノ市内に以下の路面電車路線を運行している[1][2][19]

系統番号 起点 終点 備考
1 Greco 6 Febbraio
2 P.za Bausan P.le Negrelli
3 Duomo M1 M3 Gratosoglio
4 Niguarda (Parco Nord) Cairoli M1
5 Ortica Ospedale Maggiore
7 L.go Mattei P.le Lagosta
9 P.ta Genova FS M2 Centrale FS M2 M3
10 V.le Lunigiana XXIV Maggio
12 Cim.Maggiore V.le Molise
14 Cim.Maggiore Lorenteggio
15 Rozzano Via G. Rossa Duomo M1 M3
16 M.te Velino S.Siro Stadio M5
19 P.zza Castelli Lambrate FS M2
24 Vigentino P.za Fontana
27 P.za Fontana V.le Ungheria
31 Ciniselli B. Biccocca M5
33 Rimembranze di Lambrate P.le Lagosta

車両

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現有車両

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過去の車両

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関連項目

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脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c d e Public Transport”. ATM. 2024年12月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Neil Pulling 2017, p. 386.
  3. ^ a b c d e f 橋爪智之 2016, p. 120.
  4. ^ 日立がイタリアでミラノ地下鉄向け車両を受注”. 日立製作所 (2022年11月7日). 2024年12月11日閲覧。
  5. ^ a b c ATM Group S.p.A. 2001, p. 4.
  6. ^ a b c d e f g Balt Korthals Altes 1992, p. 20.
  7. ^ a b c 橋爪智之 2016, p. 119.
  8. ^ Paolo Zanin 2007, p. 16,17,19.
  9. ^ a b c d e f Balt Korthals Altes 1992, p. 21.
  10. ^ a b c d e f g Balt Korthals Altes 1992, p. 22.
  11. ^ a b Balt Korthals Altes 1992, p. 23.
  12. ^ Balt Korthals Altes 1992, p. 24.
  13. ^ a b c 橋爪智之 2016, p. 123.
  14. ^ a b c 橋爪智之 2016, p. 124.
  15. ^ Metrotranvie”. Metropolitana Milanese S.p.A.. 2013年6月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月11日閲覧。
  16. ^ Metrotranvia Testi-Bicocca-Precotto”. Metropolitana Milanese S.p.A.. 2013年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月11日閲覧。
  17. ^ Metrotranvia Nord Milano”. Metropolitana Milanese S.p.A.. 2013年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年12月11日閲覧。
  18. ^ Milano tram network reaches Rozzano”. Railway Gazette International (2018年9月13日). 2024年12月11日閲覧。
  19. ^ Cerca linee”. ATM. 2024年12月11日閲覧。
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Balt Korthals Altes 1992, p. 25.
  21. ^ 橋爪智之 2016, p. 121.
  22. ^ a b 橋爪智之 2016, p. 122.
  23. ^ Storia dei Tram Storici di Milano a Carrelli del 1928 in Servizio Urbano”. Treni e Binari. 2024年12月11日閲覧。
  24. ^ a b c d e Linee Tranviarie in Lombardia”. Treni e Binari. 2024年12月11日閲覧。
  25. ^ a b c d e f Neil Pulling 2017, p. 385.
  26. ^ a b c 橋爪智之 2016, p. 125.
  27. ^ 橋爪智之 2016, p. 126.
  28. ^ Milan: 20 city trams and 10 interurban tramways ordered – framework agreement signed”. Urban Transport Magazine (2020年9月30日). 2024年12月11日閲覧。
  29. ^ Ecco i nuovi tram di Atm: dalla 'doppia guida' alla tecnologia a bordo, le novità”. Milano Today (2023年5月27日). 2024年12月11日閲覧。

参考資料

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  • Neil Pulling (October 2017). “SYSTEMS FACTFILE: No.120 Milan, Italy”. Tramways & Urban Transit (LRTA) 958: 304-308. オリジナルの2019-08-12時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190812065543/http://www.bowe.cc/techlib/pdf/Tramways__amp__Urban_Transit_vol80_no958_1528736789.pdf 2024年12月11日閲覧。. 
  • Balt Korthals Altes (janurari 1992). “de tram in Milaan”. op de rails (Union Internationale de Presse Ferroviaire): 20-25. ISSN 0030-3321. 
  • 橋爪智之 (2016-05-20). “徹底研究!ミラノのトラム車両”. 路面電車EX (イカロス出版) 07: 119-126. ISBN 978-4-8022-0156-8. 
  • ATM Group S.p.A. (April 2011). Company profile 2011 (PDF) (Report). 2024年12月11日閲覧
  • Paolo Zanin (2007). Primi tram a Milano. Nascita e sviluppo della rete tranviaria (1841-1916). Editrice Trasporti su Rotaie. ISBN 978-88-85068-07-0 

外部リンク

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