マルバノキ
マルバノキ | ||||||||||||||||||||||||
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Disanthus cercidifolius Maxim.[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
マルバノキ | ||||||||||||||||||||||||
亜種 | ||||||||||||||||||||||||
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マルバノキ(丸葉の木、学名:Disanthus cercidifolius Maxim.[1])は、マンサク科マルバノキ属に分類される落葉低木-小高木[3]の1種[4]。属名(Disanthus)は「2つの花」を意味し[5]、種小名(cercidifolius)は「ハナズオウ属(Cercis)の葉に似た」を意味する[6]。和名は、葉の形態が円いことに由来する[5]。別名が「ベニマンサク」[4]、花が紅色であることに由来する[5]。中国名は、「双花木」[7]。
特徴
[編集]樹高は2-4 m[4]、樹形は卵形[8]。幼木の樹皮は灰白色で滑らかで皮目が多数あり、若枝は赤褐色で毛はなく、成木の樹皮は灰褐色で滑らかで横に並ぶ皮目が目立つ[8]。葉には長さ3-6 cm葉柄があり[3]しばしば赤味を帯び[3]、単葉で互生する[8]。葉は長さ5-11 cm、幅4.5-10 cm(最大幅は基部寄り[3])の卵円形または円形、先端は短く尖り、全縁、基部は心形、表面は緑色で無毛、裏面は白緑色で無毛で葉脈の網目が見え[3]、秋に鮮やかに紅葉する[8]。若葉はしばしば赤紫色を帯びる[3]。葉の形態はハナズオウに似るが、葉柄はより長く、両端はハナズオウほど膨らまない[3]。
花は両性花で[8]、葉の脇に極短い花柄の先に暗紅紫色の花を2個背中合わせに付ける[4]。花弁は5個、長さ7-8 mmの線状披針形で星形に平開する[4]。萼片は長さ約2 mm[8]。開花時期は10-11月[4]。果実は朔果で、倒円心形、長さ約1.5 cm[8]。開花の翌年の秋に暗褐色に熟し、4裂して種子を出す[4]。種子は長さ4-5 mm、黒色で光沢がある[8]。
分布と生育環境
[編集]日本[4]と中国[7]の温帯の地域に局所的に[3]分布し、飛地的に群生することが多い[9]。中国には亜種(学名:Disanthus cercidifolius subsp. longipes (H.T.Chang) K.Y.Pan[2])が分布する[7]。
日本では、本州(中部地方-近畿地方、岡山県[10]、広島県、[注釈 1][11]、四国(高知県)に分布するが[4]、個体数はあまり多くない[8]。最終氷期の残存種と見られていて[6]、長野県、愛知県尾張地方、岐阜県美濃地方、福井県越前地方、滋賀県、岡山県、広島県安芸地方、高知県などに隔離分布する[12]。長野県の木曽谷では、標高1,500 mを越える場所での分布が確認されている[13]。1969年(昭和44年)5月27日に、長野県塩尻市宗賀で、新たに生育が確認された[9]。中国では揚子江中流域に分布する[11]。
山地の谷間[4]、日当たりの良い岩場[8]などに生育する。観賞用の庭木[8]、公園樹[3]、苗木や花材として利用されている[4]。
種の保全状況評価
[編集]日本では、以下の都道府県によりレッドリストの指定を受けている。岡山県では、岡山県希少野生動植物保護条例により、2004年(平成16年)7月16日に指定希少野生動植物の指定を受けた[10]。1937年(昭和12年)5月28日に、広島県廿日市市大野にある『ベニマンサク群叢』が不連続分布の植物例として植物地理学上貴重な存在であるとして、広島県の天然記念物の指定を受けた[14]。
- 絶滅危惧IA類(CR) - 三重県[15]
- 絶滅危惧I類(CR+EN) - 岡山県[10]
- 絶滅危惧IB類(EN) - 高知県[16]
- 準絶滅危惧(NT) - 広島県[17]
- 情報不足(DD) - 富山県[18]
- 分布上重要種 - 滋賀県[19]
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “マルバノキ”. BG Plants 和名-学名インデックス(YList). 2017年10月27日閲覧。
- ^ a b “Disanthus cercidifolius subsp. longipes (H.T.Chang) K.Y.Pan” (英語). The Plant List 2013. 2017年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 林(2014), p. 156.
- ^ a b c d e f g h i j k 林(2011), p. 240.
- ^ a b c 牧野 (1982)、186頁
- ^ a b “マルバノキ”. 広島大学デジタル自然史博物館. 2017年10月27日閲覧。
- ^ a b c “双花木” (中国語). 中国植物志. 2017年10月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k 菱山 (2011)、121頁
- ^ a b 奥原(1969}, p. 116.
- ^ a b c “岡山県版レッドデータブック2009 絶滅のおそれのある野生生物” (PDF). 岡山県. pp. 105. 2017年10月27日閲覧。
- ^ a b 前川(1968), p. 39.
- ^ 奥原(1967}, p. 102.
- ^ 奥原(1969), p. 116.
- ^ “広島県の文化財 - ベニマンサク群叢”. 広島県. 2017年10月27日閲覧。
- ^ “三重県データブック2015、維管束植物” (PDF). 三重県. pp. 447. 2017年10月27日閲覧。
- ^ “<カテゴリー別>高知県レッドリスト(植物編)2010改訂版” (PDF). 高知県. pp. 23. 2017年10月27日閲覧。
- ^ “絶滅のおそれのある野生生物(「レッドデータブックひろしま2011」)レッドデータブックについて” (PDF). 広島県. pp. 4 (2013年3月18日). 2017年10月27日閲覧。
- ^ “富山県の絶滅のおそれのある野生生物-レッドデータブックとやま2012-”. 富山県 (2017年10月15日). 2017年10月27日閲覧。
- ^ “「滋賀県で大切にすべき野生生物(滋賀県版レッドデータブック)2010年版」選定種リスト”. 滋賀県 (2017年5月25日). 2017年10月27日閲覧。
参考文献
[編集]- 奥原弘人「マルバノキの新産地」『北陸の植物』第15巻第4号、北陸の植物の会 / 植物地理・分類学会、1967年6月、102-103頁、CRID 1050564285901392128、hdl:2297/44613、ISSN 0374-8081、NAID 120005716609。
- 奥原弘人「マルバノキの分布について」『北陸の植物』第17巻第4号、北陸の植物の会 / 植物地理・分類学会、1969年12月、116-and 119、CRID 1050845760878070144、hdl:2297/45077、ISSN 0374-8081、NAID 120005753061。
- 菱山忠三郎(監修) 編『樹皮・葉でわかる樹木図鑑』成美堂出版、2011年6月。ISBN 978-4415310183。
- 林将之『樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑14〉、2014年4月15日。ISBN 978-4635070324。
- 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438。
- 前川文夫「マルバノキ属の分化と分布を古赤道から見る」『植物研究雑誌』第43巻第2号、植物研究雑誌編集委員会、1968年2月、39-43頁、CRID 1390014183323367040、doi:10.51033/jjapbot.43_2_5609、ISSN 0022-2062。
- 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。全国書誌番号:85032603 。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- マルバノキの標本 首都大学東京牧野標本館
- マルバノキ 筑波実験植物園
- Disanthus cercidifolius Maxim. (The Plant List)
- "Disanthus cercidifolius". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
- Disanthus cercidifolius (Encyclopedia of Life)