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マクドナルド・アンド・ジャイルズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『マクドナルド・アンド・ジャイルズ』
マクドナルド・アンド・ジャイルズスタジオ・アルバム
リリース
録音 1970年5月-7月 アイランド・スタジオ
ジャンル プログレッシブ・ロック
時間
レーベル アイランド
コティリオン・レコード
ヴァージン・レコード (2002年再発)
プロデュース イアン・マクドナルド
マイケル・ジャイルズ
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マクドナルド・アンド・ジャイルズ』(McDonald and Giles)は、キング・クリムゾンのオリジナル・メンバーだったイングランドイアン・マクドナルドマイケル・ジャイルズが1971年に発表したアルバムである。

商業的成功は得られず、このデュオの唯一のアルバムになったが、キング・クリムゾンのファンの間では今日に至るまで高い評価と人気を得て来た。

解説

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マクドナルドとジャイルズはキング・クリムゾンのオリジナル・メンバーで、デビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』(1969年)に参加した。彼等はアルバム発表に伴なって行なわれた最初のアメリカ・ツアーに疲弊して、ツアーが終了した同年12月末に脱退した[注釈 1]

本作は1970年5月から7月にかけてアイランド・スタジオでレコーディングされた。ジャイルスの弟ピーター・ジャイルズ(ベース)[注釈 2]が全面参加し、キング・クリムゾンのオリジナル・メンバーの詩人ピート・シンフィールドが組曲「バードマン」の作詞を担当した。マクドナルド・アンド・ジャイルズの音楽には、キング・クリムゾンの音楽と共通する牧歌的かつ音楽的に複雑な要素が多く含まれていたが、暗い雰囲気は避けられた。「アイビスの飛行」は、キング・クリムゾンの「ケイデンスとカスケイド」と似たメロディやリズムを持っているものの、歌詞は異なっている[注釈 3]

「組曲ハ長調」の「Turnham Green」では、同時期にアイランド・スタジオでアルバム『ジョン・バーレイコーン・マスト・ダイ』に取り組んでいたスティーヴ・ウィンウッドが客演して、オルガンとピアノを弾いた。

ジャイルズ作「明日への脈動」に客演したマイケル・ブレイクスリー[1](トロンボーン)は、ジャイルス兄弟が1960年代前半に在籍したトレンドセッターズ・リミテッドのメンバーだった。同曲のドラム・ソロは、ラップヒップホップのアーティストとして広く知られるビースティ・ボーイズによって、アルバム『ハロー・ナスティ』の楽曲「Body Movin」でサンプリングされた。

本作はイギリスではアイランド・レコード (ILPS 9126) [2]、米国ではアトランティック・レコード傘下のコティリオン・レコード(SD 9042)[3]から発売された。ジャケットの"McDonald and Giles"のロゴの色は前者では緑、後者では紫だった。

CD化

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1989年、最初のCDが日本で発売された。オリジナル・マスターが所在不明だったので、マスタリングには数世代後のテープを盤起こししたものが使用された。ジャケットはアメリカ盤(アトランティック・レコード系列)のものが採用され、紫色のロゴが再現された。

2002年、より改善された音質を持つリマスター盤(2001年リマスター音源)が発売された。ジャケットはイギリス盤(アイランド・レコード)の緑色のロゴが再現された。マクドナルドはオリジナル盤が不完全のまま発表されてしまったという不満を抱いていた[4]ので、本作はメンバー監修の下で改めて再構築された。「組曲ハ長調」の冒頭付近のフレーズは少し異なった歌詞となっている。組曲「バードマン」は以前とは異なるセクションで分けられ、CD上では別々のトラックとしてマークされている。

50周年再発盤

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その後アナログ・マスターテープが、かつての制作委託元だったEGレコードの管理会社に残っていた事が判明。2020年代に本作の発売の権利を取得していた独立レーベル「ディシプリン・グローバル・モービル」(DGM)[注釈 4]はマスターテープの引き渡しを再三請求するも、旧EGレコードの管理会社は発売当時のアイランド・レコードとの契約条項をたてに拒否する。そのためDGMが2021年秋から2022年初頭にかけて発売した50周年再発盤[5][注釈 5]は、以前の2001年リマスター音源を流用せざるを得なかった[6]

DGMは再度管理会社と交渉しようとしていたが、マクドナルドが2022年2月に死去[7]。制作者による許諾や監修作業が不可能になり、オリジナルマスター音源ミックス盤の実現は不透明になっている。

収録曲

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  1. 「組曲ハ長調」 - "Suite in C" (イアン・マクドナルド) 11分14秒
    • including
    1. "Turnham Green"
    2. "Here I Am"
    • And many more
  2. 「アイビスの飛行」 - "Flight of the Ibis" (曲: イアン・マクドナルド、歌詞: BP・ファロン) 3分11秒
  3. 「イズ・シー・ウェイティング」 - "Is She Waiting?" (イアン・マクドナルド) 2分36秒
  4. 「明日への脈動」 - "Tomorrow's People – The Children of Today" (マイケル・ジャイルズ) 7分00秒
  5. 「バードマン」 - "Birdman" (曲: イアン・マクドナルド、歌詞: ピート・シンフィールド) 21分22秒
    • involving;
    1. "The Inventor's Dream (O.U.A.T.)"
    2. "The Workshop"
    3. "Wishbone Ascension"
    4. "Birdman Flies!"
    5. "Wings in the Sunset"
    6. "Birdman – The Reflection"

参加メンバー

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  • イアン・マクドナルド (Ian McDonald) - ギター、ピアノ、オルガン、サックス、フルート、クラリネット、ツィター、ボーカル、雑多な小物
  • マイケル・ジャイルズ (Michael Giles) - ドラム、パーカッション(牛乳瓶、ノコギリ、リップ・ホイッスル、ナッツ箱を含む)、ボーカル
  • ピーター・ジャイルズ (Peter Giles) - ベース
  • スティーヴ・ウィンウッド (Steve Winwood) - オルガン、「Turnham Green」でのピアノ・ソロ
  • マイケル・ブレイクスリー (Michael Blakesley) - 「明日への脈動」でのトロンボーン

脚注

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注釈

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  1. ^ ジャイルズはキング・クリムゾン2枚目のアルバム『ポセイドンのめざめ』(1970年)に、セッション・ミュージシャンとして参加した。
  2. ^ キング・クリムゾンの前身であるジャイルズ・ジャイルズ&フリップのメンバー。
  3. ^ 「ケイデンスとカスケイド」はアルバム『ポセイドンのめざめ』(1970年)の収録曲で、シンフィールドが作詞を担当した。一方、「アイビスの飛行」の作詞はBP・ファロンによる。
  4. ^ キング・クリムゾンの所属レーベルでもある。
  5. ^ 2001年リマスター音源と同様に、ジャケットはイギリス盤(アイランド・レコード)の緑色のロゴを再現した。

出典

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  1. ^ Discogs”. 2024年6月21日閲覧。
  2. ^ Discogs”. 2024年6月21日閲覧。
  3. ^ Discogs”. 2024年6月21日閲覧。
  4. ^ Smith (2019), p. 87.
  5. ^ Discogs”. 2024年6月22日閲覧。
  6. ^ 「音楽歳時記」 第八十五回 追悼・イアン・マクドナルド”. カケハシレコード 深民淳 (2022年2月18日). 2022年8月3日閲覧。
  7. ^ 元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドが逝去。享年75歳”. NME JAPAN (2022年2月11日). 2022年8月9日閲覧。

引用文献

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  • Smith, Sid (2019). In the Court of King Crimson: An Observation over Fifty Years. Panegyric. ISBN 978-1916153004 

外部リンク

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