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パンドラの匣 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
パンドラの匣
著者 太宰治
発行日 1946年(昭和21年)6月5日
発行元 河北新報社
ジャンル 小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 B6判
ページ数 227
ウィキポータル 文学
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パンドラの匣』(パンドラのはこ)は、太宰治書簡体形式長編小説

「健康道場」という名の結核療養所を舞台に繰り広げられる恋愛模様を通じて、青年・ひばりの成長を描く。

1947年2009年に映画化されている。

執筆の背景と発表

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本作品は、太宰の読者であった木村庄助の病床日記がもとになっている。

1940年(昭和15年)8月より太宰と頻りに文通していた木村庄助は、1943年(昭和18年)5月13日、病苦のため22歳で自殺する。同年7月11日、遺言により日記全12冊が太宰宛てに送付される。日記は京都の丸善に製本させたもので、「健康道場にて」と記した日記の背には太宰の短編「善蔵を思ふ」を模して「太宰治を思ふ」と刷り込んであったという[1]

1943年(昭和18年)10月末、太宰は木村の日記をもとに「雲雀の声」を書き上げる。小山書店より刊行する予定であったが、検閲不許可のおそれがあるため版元と相談の結果一旦出版を中止[2]。その後許可が下り小山書店より出版される運びとなった。ところが1944年(昭和19年)12月、戦災のため発行間際の本が全焼。本作品はその時残った校正刷をもとにして執筆されたものである[3]。1945年(昭和20年)11月9日までに脱稿[4]

地方紙河北新報』1945年10月22日から1946年(昭和21年)1月7日にかけて、64回にわたって掲載された。

刊行と検閲

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1946年6月5日、河北新報社より刊行[5]。1947年(昭和22年)6月25日、双英書房から改訂版が刊行されている[5]。河北新報社から刊行された初収本には双英書房の創業者である岩月英男の所蔵本があり(2010年時点で個人所蔵)。太宰自筆による書き込みがあり、改訂版の刊行に活かされている[5]。岩月英男は太宰と同じ井伏鱒二門下で、実家が山梨県甲府市甲運村(現在の甲府市和戸町)にあり、戦時中には井伏を疎開させている[5]。太宰も妻の実家のある甲府市水門町(甲府市朝日)に疎開しており、岩月家を通じて交流があったと考えられている[5]

河北新報社本と双英書房本では61箇所の異同が指摘され、多くは句読点送り仮名、漢字表記や改行など文法上の改訂であるが、天皇に対する表現など内容の解釈に関わる部分もあることが指摘される[6]。また、太宰作品ではプランゲ文庫の調査により2009年時点で単行本4点・7作品においてGHQによる検閲が行われている[7]。太宰自筆の書き込みのある『パンドラの匣』個人所蔵本においてもGHQによる検閲印が押されており、プランゲ文庫所蔵の河北新報社版『パンドラの匣』では4箇所の部分削除(deletion)の指示が確認されている[7]

新潮文庫版では『正義と微笑』と一緒にされている。本作が表題[8]

あらすじ

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「健康道場」と称する或る療養所で、結核と闘っている20歳の青年から、その親友に宛てた手紙という形式で綴った物語[9]

備考

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  • 2014年7月24日、本書の電子書籍版がITmediaより発売された[10]
  • 敗戦直後の福岡で発行された総合文化誌『文化展望』創刊号(1946年4月号、三帆書房)に掲載された太宰の回想記「十五年間」の終わりに『パンドラの匣』の一場面が引用されている[11]

看護婦の日記 (1947年の映画)

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看護婦の日記
監督 吉村廉
脚本 八木沢武孝
原作 太宰治
出演者 折原啓子関千恵子小林桂樹
製作会社 大映
配給 日本の旗 大映
公開 日本の旗 1947年7月1日
上映時間 76分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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1947年7月公開の日本映画。製作は大映。『パンドラの匣』を原作とするこの映画のタイトルは当初『思春期の娘達』であったが、太宰がこれを嫌い『看護婦の日記』と改められた[12]

スタッフ[13]

キャスト[13]

パンドラの匣 (2009年の映画)

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パンドラの匣
監督 冨永昌敬
脚本 冨永昌敬
原作 太宰治
製作 西ヶ谷寿一大野敦子
出演者 染谷将太
川上未映子
仲里依紗
音楽 菊地成孔
撮影 小林基己
編集 冨永昌敬
製作会社 「パンドラの匣」製作委員会
配給 日本の旗 東京テアトル
公開 日本の旗 2009年10月10日
上映時間 94分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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2009年10月10日公開の日本映画。配給は東京テアトル。上映時間94分。川上未映子はこの映画の演技により複数の新人女優賞を受賞した。

スタッフ

キャスト

脚注

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  1. ^ 山内祥史 『太宰治の年譜』大修館書店、2012年12月20日、261頁。
  2. ^ 戸石泰一編「年譜」 檀一雄『小説太宰治』六興出版社、1949年11月20日所収。
  3. ^ 『太宰治全集 8』ちくま文庫、1989年4月25日、528頁。解題(関井光男)より。
  4. ^ 『太宰治全集 第7巻』筑摩書房、1990年6月27日、471頁。解題(山内祥史)より。
  5. ^ a b c d e 安藤宏|2010, p. 1.
  6. ^ 安藤宏 2010, p. 4.
  7. ^ a b 安藤宏 2010, p. 5.
  8. ^ パンドラの匣』発売日 1973-11-01。ISBN 978-4101006116https://www.shinchosha.co.jp/book/100611/ 
  9. ^ 新潮社『パンドラの匣』, どういう本?>メイキング 作者の言葉.
  10. ^ 太宰治|パンドラの匣 - ITmedia 名作文庫
  11. ^ 『十五年間』:新字新仮名 - 青空文庫
    このごろ私は、仙台の新聞に「パンドラの匣」という長篇小説を書いているが、その一節を左に披露して、この悪夢に似た十五年間の追憶の手記を結ぶ事にする。
  12. ^ 山内祥史 『太宰治の年譜』前掲書、313-314頁。
  13. ^ a b 国立映画アーカイブ 看護婦の日記”. 国立映画アーカイブ. 2022年1月14日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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