ドレッドノート級原子力潜水艦
ドレッドノート級原子力潜水艦 | |
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Artist's rendering of Dreadnought-class submarine | |
基本情報 | |
艦種 | 原子力弾道ミサイル潜水艦 |
建造所 |
BAEシステムズ・サブマリン バロー・イン・ファーネス造船所 |
運用者 | イギリス海軍 |
計画数 | 4隻 |
建造数 | 2隻 |
前級 | ヴァンガード級 |
要目 | |
水中排水量 | 17,200トン |
全長 | 153.6m[1] |
最大幅 | 12.8m |
吃水 | 12m |
機関方式 | タービン・エレクトリック |
原子炉 | ロールス・ロイスPWR3型加圧水型原子炉 |
推進器 | ポンプジェット |
乗員 | 130 |
兵装 |
533mm魚雷発射管4基:スピアフィッシュ魚雷 SLBM発射管12基:トライデントII D-5潜水艦発射弾道ミサイル8~12発(各最大8発のMIRV弾頭) |
ドレッドノート級原子力潜水艦(ドレッドノートきゅうげんしりょくせんすいかん Dreadnought class nuclear-powered submarineis)は、イギリス海軍が2030年代初頭からの配備に向けて建造中の原子力弾道ミサイル潜水艦の艦級[2]。合計4隻が核弾頭付き潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載してイギリスの核抑止を担う計画で、SLBM原潜としてはヴァンガード級の後継となる[2][3]。搭載するSLBMは、ヴァンガード級と同じくトライデントII D-5が予定されている[4]。
構想時には、本級は暫定的に(ヴァンガード級の後継であることから)サクセッサー(Successor)と呼ばれており、2016年に1番艦がドレッドノートと命名されることが公式に発表された[5][6]。以降3隻は、それぞれヴァリアント(Valiant)[7]、ウォースパイト(Warspite)およびキングジョージVI(King George VI)と命名される[8]。
イギリス海軍が、その核抑止戦略にしたがって常続航海抑止(continuous at-sea deterrent, CASD)[注釈 1]を維持しようとするのであれば、ヴァンガード級を更新する原子力弾道ミサイル潜水艦は必須である[11]。
背景
[編集]1998年にイギリス空軍のWE.177核爆弾が退役して以降、イギリス軍の核兵器はSLBMのみとなった。イギリスの敵対勢力にとっては、イギリスの弾道ミサイル潜水艦を探知・破壊できない限り、イギリスからの報復核攻撃に晒されるため、潜在的な敵による攻撃を抑止することできる。
戦略防衛レビューにより、イギリスは215発の核弾頭(そのうち約120発が活性状態(使用可能)に)を維持してきた。常時航海抑止政策(the continuous at sea deterrence policy)のもと、少なくとも1隻のヴァンガード級が、最大16発のトライデント・ミサイルに48発の核弾頭を搭載し、哨戒する態勢を維持してきた。戦略防衛レビューでは、これは核抑止に必要な最小の核弾頭数だとみなしていたこれらは全体としてトライデント・システム (イギリスの核抑止戦略)[12]。このシステムの主要部分は、ヴァンガード級の母港であるスコットランドのファスレーン海軍基地を含むクライド海軍基地およびクールポート王立海軍弾薬庫に拠点を置いている。ヴァンガード級はイギリス海軍において、25年の就役期間を想定されて1990年代に就役しており[13]、1番艦は、改修なしの場合、2019年まで現役にとどまるものと想定されている[14]。1998年からは、このシステムは政府に、低威力の“准戦略”(sub-strategic)核攻撃能力の選択肢を提供している[15][16]。
建造の決定
[編集]2011年5月、イギリス政府はヴァンガード級の後継艦の評価作業を認め、船殻のための鋼鉄を含む先行資材の購入を許可した2015年5月、保守党は総選挙で4隻のサクセッサー潜水艦による常続的巡航抑止を維持することへのコミットメントを含むマニフェストを掲げて総選挙に勝利した[17] サクセッサー計画へのコミットの最終的な決定は2016年7月18日に、下院における投票で472票対117票の票が投じられて認可された[18]。サクセッサーは、そのコスト[19]および、いくつかの政党や核軍縮キャンペーンやトライデント・プラウシェアズ(Trident Ploughshares)といった反核運動グループが常続的航海抑止あるいはイギリスの核武装を道徳的ないし財政的な理由[20][21]により反対したことから、論争を呼んだ。
建造開始
[編集]1番艦は暫定的に2028年に就役するとの計画で、建造は2016年にBAEシステムズ・サブマリンズが運営するバロー=イン=ファーネス造船所で開始された[22]。第2段階の建造の始まりは2018年5月に発表された[23]。2018年の時点で国防相は、最初の潜水艦は2030年代初めに就役する想定であるとした。また、プログラムの総コストは31兆ポンドと想定されるとした。
本級は約35から40年の就役期間を計画しており、これは前級を25%以上長くなる期間である[24]。
2018年12月、国防相は1番艦の建造はスケジュール通りかつ予算内で進行中であると語った[25]。2021年4月、『サンデー・タイムズ』は、アスチュート級原子力潜水艦の建造の遅れが、おなじデヴォンシャー・ドック・ホールドックで建造するドレッドノート級の建造に影響を及ぼしている可能性を報じた。関連する懸念事項は、バロー施設の拡張が19か月遅れ、原子炉を建造するロールスロイス工場の5年遅れである。[26]。しかしながら、国防相は、ドレッドノート・プログラムは予定通り進行しており、1番艦は2030年代初めに就役する想定であるとコメントした[26]。
同型艦
[編集]艦名 | 建造所 | 起工 | 進水 | 就役 | 状況 |
---|---|---|---|---|---|
ドレッドノート Dreadnought |
BAEシステムズ・サブマリンズ バロー=イン=ファーネス造船所 |
2016年 10月6日[27] |
2030年代初めを想定 | 建造中 | |
ヴァリアント Valiant |
2019年 9月 |
建造中 | |||
ウォースパイト Warspite |
2022年 9月 |
建造中 | |||
キング・ジョージ6世 King George VI |
発表済 |
脚注
[編集]訳注
[編集]- ^ 常に1隻の弾道ミサイル潜水艦が航海し、核抑止哨戒を継続する態勢のこと[9]。別の訳語として「常続巡航抑止」[10]もある。イギリス海軍公式サイトでの説明として次のページをも参照“CONTINUOUS AT SEA DETERRENT”. Royal Navy. 2022年1月24日閲覧。
出典
[編集]- ^ “Dreadnought”. BAE Systems. 2022年1月24日閲覧。
- ^ a b 「英が核抑止力強化の新指針を公表」『産経新聞』朝刊2024年3月27日(国際面)2024年4月17日閲覧
- ^ “Successor submarine programme: factsheet”. MoD. 1 March 2016閲覧。
- ^ “The Future of the United Kingdom's Nuclear Deterrent, Factsheet 4 The Current System”. Gov.uk (December 2006). 2015年9月20日閲覧。
- ^ "New Successor Submarines Named" (Press release). Gov.uk. 21 October 2016. 2016年10月21日閲覧。
- ^ “First of Barrow's new Successor submarines given historically celebrated name”. North West Evening Mail. (21 October 2016) 21 October 2016閲覧。
- ^ "Defence Secretary announces £400m investment for nuclear-armed submarines" (Press release). Ministry of Defence. 6 December 2018. 2018年12月6日閲覧。
- ^ "Defence Secretary praises 50 years of nuclear service as new submarine is named" (Press release). Ministry of Defence. 3 May 2019. 2019年5月3日閲覧。
- ^ 鶴岡路人 2014, p. 36.
- ^ 小川健一 2021, p. 95.
- ^ “Supporting the UK's deterrent”. AWE. 1 March 2016閲覧。
- ^ “The Future of the UK's Strategic Nuclear Deterrent”. House of Commons Defence Committee (30 June 2006). 6 February 2007時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年12月1日閲覧。
- ^ Vanguard class Military-Today.com. Retrieved 21 July 2018.
- ^ “The Future of the UK's Strategic Nuclear Deterrent: the White Paper”. House of Commons Defence Committee (7 March 2007). 2007年3月15日閲覧。
- ^ “National Security Strategy and Strategic Defence and Security Review 2015 A Secure and Prosperous United Kingdom”. gov.uk. (23 November 2015) 17 November 2018閲覧。
- ^ “Securing Britain in an Age of Uncertainty: The Strategic Defence and Security Review”. HM Government (19 October 2010). 17 November 2018閲覧。
- ^ “Conservative Party Manifesto 2015”. Conservative Party. pp. 77. 16 May 2015閲覧。
- ^ Mills, Claire (13 August 2013). “Update on the Trident Successor Programme - Commons Library Standard Note”. Standard Notes. House of Commons Library. 21 June 2014閲覧。
- ^ “Britain denies report nuclear deterrent to cost 167 billion pounds”. Reuters. (10 November 2015) 7 March 2018閲覧。
- ^ “Britain denies report nuclear deterrent to cost 167 billion pounds”. Reuters. (10 November 2015) 7 March 2018閲覧。
- ^ “Unions oppose replacing Trident”. BBC News. (13 September 2006) 2006年12月1日閲覧。
- ^ “Successor submarine shipyard gets £300m investment”. BBC News. (13 March 2014) 21 June 2014閲覧。
- ^ “Defence Secretary announces massive £2.5bn investment in UK nuclear submarines”. Gov.UK. 15 May 2018閲覧。
- ^ Ministry of Defence nuclear programme (PDF). Committee of Public Accounts (Report). UK Parliament. 10 September 2018. HC 1028. 2018年9月21日閲覧。
- ^ “UK Dreadnought submarine programme within budget and on track, says latest MoD report”. 2022年1月26日閲覧。
- ^ a b Collingridge, John (25 April 2021). “Are Britain's nuclear subs slipping below the waves?; First they were due in 2024, then 2028, then 'the 2030s'. Doubts are mounting over the new Trident boats.”. The Sunday Times
- ^ “Building begins on new nuclear submarines”. Royal Navy (6 October 2016). 7 December 2018閲覧。
参考文献
[編集]- 小川健一「冷戦期英国のSLBM ポラリス・システムの更新―CASD態勢をめぐるサッチャー政権の相克―」『安全保障戦略研究』第2巻第1号、防衛研究所、2021年。
- 鶴岡路人「英核抑止力の将来 : トライデント代替策レビューから」『法學研究 : 法律・政治・社会』第87巻第5号、慶應義塾大学法学研究会、2014年5月、35-67頁、CRID 1050282813927410432、ISSN 0389-0538。
関連文献
[編集]- UK House of Commons, Select Committee on Defence The Future of the UK's Strategic Nuclear Deterrent: the White Paper: Ninth Report of Session 2006-07, House of Commons Papers, HC 225 [2005-2007]
- UK House of Commons, Select Committee on Defence The Future of the UK’s Strategic Nuclear Deterrent: the Manufacturing and Skills Base: Fourth Report of Session 2006–07, House of Commons Papers, HC 59 [2005-2007]
- Ministry of Defence: The United Kingdom's Future Nuclear Deterrent Capability (Report). National Audit Office. 5 November 2008. ISBN 978-0-10-295436-4. 2008年11月9日閲覧。
- Dreadnought Class Guide - 21 October 2016
- Meet the Dreadnought class, new nuclear submarines named - 16 December 2016
外部リンク
[編集]- Royal Navy Dreadnought class submarines
- Government White Paper Cm 6994 The Future of the United Kingdom’s Nuclear Deterrent (December 2006)