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ツマジロウラジャノメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ツマジロウラジャノメ
ツマジロウラジャノメのメス、赤石山脈、長野県下伊那郡大鹿村にて、2021年9月7日撮影
メス、赤石山脈、長野県下伊那郡大鹿村にて、2021年9月
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
上科 : アゲハチョウ上科 Papilionoidea
: タテハチョウ科 Nymphalidae
亜科 : ジャノメチョウ亜科 Satyrinae
: ジャノメチョウ族 Satyrini
亜族 : Parargina
: ツマジロウラジャノメ属 Lasiommata
: ツマジロウラジャノメ
L. deidamia
学名
Lasiommata deidamia
(Eversmann, 1851)[1]
和名
ツマジロウラジャノメ
亜種
  • L. deidamia deidamia エゾツマジロウラジャノメ - 北海道亜種
  • L. deidamia interrupta 本州亜種
  • L. deidamia kampuzana 四国亜種など
  • 詳細は#亜種参照

ツマジロウラジャノメ(褄白裏蛇目、学名Lasiommata deidamia (Eversmann, 1851)[1])は、チョウ目タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科ツマジロウラジャノメ属分類される中型[2]チョウの一[3][4]

形態

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成虫の開長は50-55 mm[5]。翅形は雌でやや幅広く、腹部で雄は細長く、雌で太く短い[2]。翅表面は黒褐色[6]。前翅表面の頂付近に目玉模様(眼状紋)が目立つものが1個ある[6]。その近くに白色の斑紋があり、雌は2列の白帯が目立ち、雄は不明瞭[6]四国産は、前翅の眼状紋内側の白斑が三角形のくさび形となる特徴がある[7]北海道産のものは斑紋は黄白色[6]。後翅表面の亜外縁に目玉模様がめだつものが2個ある[6]。裏翅には亜外縁全体に目玉模様が並び、その内側の白帯が一定の幅で見られる[6]

幼虫の全長は約29 mm[5]の先端は二股に分かれている[5]

生態

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クサボタンの花を吸蜜中のツマジロウラジャノメ

成虫は日中崖付近をあまり翅をはばたかせずに[7]緩やかに滑空するように飛翔し、ヒヨドリバナ[7]ヨツバヒヨドリニガナ[2]クガイソウハンゴンソウセンジュガンピ[4]ウツギ[8]ヒメジョオン[9]などのを吸蜜する。単独で行動し、岩場に留まり翅を広げて暖をとったり、勢いよく飛んで、花で一瞬吸蜜し、飛び去ったり、バラエティな行動をする[10]。雄と雌ともに[2]湿った岩肌や地上の湿地で給水する[4]交尾飛翔形態は、雄が雌をぶら下げて飛ぶ[4]

幼虫は、イネ科ヒメノガリヤスタカネノガリヤス[2]イワノガリヤスヤマカモミジグサ[4]カモジグサ[5]ヌカボ[11]などを食草とする。

生活史

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寒冷地で年1-2回、暖地では年3-4回発生する[4]。成虫は5月から11月にかけて見られる[4]

主に4齢幼虫[7]越冬する[3][4][5]

分布と生育環境

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山地の露岩地に生育するツマジロウラジャノメ

ロシアウラル地方、南シベリア)、モンゴル中国朝鮮半島日本東アジア[3]に分布する。日本では、北海道(日高山脈付近[4])、本州、四国に分布する[3]

山地から山地にかけての林道沿いや渓谷の露岩地に生育する[2][4]山岳河川上流部の植生がほとんどない工事によってできた崖で見られる[2]

亜種

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日本産のものは以下の3亜種に分類される[4][8]。本州産と四国産のものが亜種L. deidamia interruptaとされることがある[3]

  • L. deidamia deidamia エゾツマジロウラジャノメ - 北海道亜種
  • L. deidamia interrupta 本州亜種
  • L. deidamia kampuzana 四国亜種

種の保全状況評価

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珍しさは、ごく普通(レベル1)- 非常に少ない(レベル5)の5段階でレベル3[2]。崩落防止などの工事で崖の環境が失われることにより、各地で個体数が減少している[2]。林道沿いの崩落地に金網をかけコンクリートを吹き付けた地域では激減している[8]。日本ではツマジロウラジャノメ四国亜種が、環境省によるレッドリストで絶滅危惧II類(VU)の指定を受けている[12]

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

[12]

また以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている。

脚注

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  1. ^ a b Lasiommata deidamia” (英語). アメリカ国立生物工学情報センター. 2021年9月14日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 須田 (2012)、251頁
  3. ^ a b c d e 猪又 (2006)、224頁
  4. ^ a b c d e f g h i j k 蛭川 (2013)、165頁
  5. ^ a b c d e 岸田 (2016)、91頁
  6. ^ a b c d e f 須田 (2012)、250頁
  7. ^ a b c d e 愛媛県レッドデータブック2014、ツマジロウラジャノメ” (PDF). 愛媛県. pp. 156. 2021年9月14日閲覧。
  8. ^ a b c 久保田 (2013)、92頁
  9. ^ a b まもりたい静岡県の野生生物2019-静岡県レッドデータブック<動物編>-” (PDF). 静岡県. pp. 332. 2021年9月14日閲覧。
  10. ^ 師尾 (2000)、97頁
  11. ^ a b 青森県レッドデータブック(2020年版)” (PDF). 青森県. pp. 261. 2021年9月14日閲覧。
  12. ^ a b 環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年9月14日閲覧。
  13. ^ 改訂版 福井県の絶滅のおそれのある野生動植物” (PDF). 福井県. pp. 165. 2021年9月14日閲覧。
  14. ^ 三重県データブック2015” (PDF). 三重県. pp. 24. 2021年9月14日閲覧。
  15. ^ ふくしまレッドリスト(2020年版)” (PDF). 福島県. pp. 39. 2021年9月14日閲覧。
  16. ^ 栃木県版レッドリスト・レッドデータブックについて”. 栃木県 (2020年7月28日). 2021年9月14日閲覧。
  17. ^ 群馬県レッドデータブック2012” (PDF). 群馬県. pp. 220. 2021年9月14日閲覧。
  18. ^ 埼玉県レッドデータブック動物編2018(第4版)” (PDF). 埼玉県. pp. 156. 2021年9月14日閲覧。
  19. ^ レッドデータブック2016改訂版 選定種目録(奈良県レッドリスト)” (PDF). 奈良県. pp. 36. 2021年9月14日閲覧。
  20. ^ 北海道レッドリスト【昆虫>チョウ目編】改訂版(2016年)について”. 北海道. 2021年9月14日閲覧。
  21. ^ 希少種に関する情報(レッドリスト・レッドデータブック” (PDF). 神奈川県. pp. 39. 2021年9月14日閲覧。
  22. ^ レッドデータブックあいち2020” (PDF). 愛知県. pp. 443. 2021年9月14日閲覧。

参考文献

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  • 猪又敏男(編・解説)、松本克臣(写真)『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年6月。ISBN 4-635-06062-4 
  • 久保田修『日本のチョウ (生きもの出会い図鑑)』学研プラス、2013年5月28日。ISBN 978-4058000168 
  • 岸田泰則、福田晴夫『幼虫 (学研の図鑑ライブポケット)』学研プラス、2016年4月19日。ISBN 978-4052043956 
  • 師尾信『蝶ウォッチング百選』晩聲社、2000年6月30日。ISBN 978-4891882983 
  • 須田真一、永幡嘉之、中村康弘、長谷川大、矢野勝也 著、日本チョウ類保全協会 編『日本のチョウ』誠文堂新光社〈フィールドガイド〉、2012年4月30日。ISBN 978-4416712030 
  • 蛭川憲男『日本のチョウ 成虫・幼虫図鑑』メイツ出版、2013年4月。ISBN 978-4780413120 

関連項目

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外部リンク

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