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ツァヒアギーン・エルベグドルジ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ツァヒアギーン・エルベグドルジ
Цахиагийн Элбэгдорж


任期 2009年6月18日 – 2017年7月10日
首相 サンジャーギーン・バヤル
スフバータル・バトボルド
ノロブ・アルタンホヤグ
デンデビーン・テルビシダグワ
チメディーン・サイハンビレグ
ジャルガルトルギーン・エルデネバト

モンゴル国の旗 モンゴル国
第19・23代 首相
任期 1998年4月23日1998年12月9日
2004年8月20日2006年1月25日
大統領 ナツァギーン・バガバンディ
ナンバリーン・エンフバヤル

出生 (1963-03-30) 1963年3月30日(61歳)
モンゴル人民共和国の旗 モンゴル ホブド県
政党 民主党
出身校 リヴィウ工科大学
コロラド大学ボルダー校
ハーバード大学
配偶者 ボロマー・カジドスレン
子女 4人
署名

ツァヒアギーン・エルベグドルジ(Tsakhiagiin Elbegdorj、モンゴル語: Цахиагийн Элбэгдорж1963年3月30日 - )は、モンゴル政治家。第4代モンゴル国大統領モンゴル人民革命党に所属した経験の無い人物としては初である。)の他に首相を2度務めた。モンゴル民主化運動の指導者の1人である。

経歴

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出自

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1963年3月30日にモンゴル人民共和国ホブド県にて、遊牧民の家庭に8人兄弟の末子として誕生する。ホブド県で幼少期を過ごした後、16歳の時に家族とともにオルホン県エルデネトに移動し、1981年に同市の公立高校を卒業。エルデネト鉱業に工員として勤務する[1]

1982年から1983年まで兵役に就く。その間、モンゴル人民軍の機関紙『赤い星』に詩を投稿するが、これが軍の高官の目に留まったことで人民軍内のモンゴル革命青年同盟員を率いることになり、さらにエルベグドルジは奨学金を得てソビエト連邦のリヴォフ(現在のウクライナリヴィウ)軍事政治大学に留学。1988年に同大学のジャーナリズム専攻の学位を取得して卒業した。

民主化運動

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モンゴルに帰国後、『赤い星』 の記者として活動する一方で、ソビエト連邦に留学していた時にミハイル・ゴルバチョフの諸改革に触れていたことから民主化運動に身を投じるようになる。1989年12月10日世界人権デーウランバートルの青年文化会館前広場での集会にて、エルベグドルジは反体制勢力「モンゴル民主同盟」の結成を宣言する。そして「民主化運動の13人」の内の1人として民主化運動を指導した[2]

民主化運動の結果、1990年にモンゴル人民革命党による一党独裁体制が崩壊。同年、エルベグドルジは人民大会議代議員に選出された。エルベグドルジは代議員として1992年複数政党制を採用した新憲法の制定に関わった。

政治家として

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上海協力機構首脳会議でロシアのプーチン大統領らと(2005年)

1992年に第1期国民大会議議員に選出された。4年後の1996年の第2期国民大会議選挙でも議員に選出されたが、このときは所属する民主連合(4党連合)も勝利し、非人民革命党系政権が誕生。同年にエルベグドルジは国民大会議副議長に就任した。しかし民主連合による政権運営は急激な市場経済化政策の失敗と連合内の対立により混迷を極める。1998年メンダサイハン・エンフサイハン首相が辞任に追い込まれると、エルベグドルジは後継の首相に指名されるが、就任1年も経ないうちに金融政策の失敗の責任を取り辞任する。

首相辞任後はアメリカ合衆国に留学し、2002年ハーバード大学公共政策大学院ケネディ・スクール)を卒業。また、同年から翌2003年まで国連ミレニアム開発目標の個別プロジェクト・アドバイザーを務めた。

2004年の第4期国民大会議選挙で人民革命党と祖国・民主連合(非人民革命党系の連合)が共に過半数に届かず、両党による大連立内閣が発足すると、エルベグドルジは再び首相に就任する。しかし連立を組む人民革命党との関係の悪化により、同党出身の閣僚10人による辞表の提出をきっかけにして同党からの倒閣運動が起こり、2006年1月に議会で更迭されてしまう。

その後、2008年の第5期国民大会議選挙で議員に選出される。この選挙では与党の人民革命党が勝利したという結果が選挙管理委員会によって公表されたが、選挙に不正があったと考える野党支持者によって抗議デモが発生すると、エンベグドルジは選挙の際に人民革命党による不正があったとして抗議し、票の再集計を選挙管理委員会に求めた[3]

2009年5月24日実施の大統領選挙に民主党の推薦を受けて出馬した。得票率51.24パーセントを獲得し、現職で人民革命党推薦のナンバリーン・エンフバヤルを破り大統領に当選した[4]

同年6月18日に正式に大統領に就任した。就任演説では主に「汚職の根絶」を訴えた[5]

2010年のモンゴルにおける主要国資本企業数は、中国5303社、韓国1973社、ロシア769社、日本451社であるが、こうした「中国のブラックゴールドラッシュ」と呼ばれる急激な進出をモンゴル国民は歓迎しておらず、空前の反中ムードが高まっており[6]、2011年10月にBBCのインタビューを受け、資源の輸出先を「中国1国だけに依存する状態は望んでいない」と中国への依存度を高めることに警戒を示した[7]。「中国のブラックゴールドラッシュ」を避けるために、日本アメリカ合衆国のような西側諸国を「第3の隣国」として積極外交に乗り出そうとしており、2011年10月28日には欧州安全保障協力機構への加盟申請を正式に提出した[7]。これについて中国紙は「モンゴルの脱亜入欧」と報じた[7]

2013年6月26日に行われたモンゴル大統領選挙にて、得票率50.23パーセントを獲得して再選した[8]。元々は民主化運動家[9]であったように熱心に自由民主主義人権を支持する活動を行っており[10][11][12][13][14][15][16]、2013年10月に北朝鮮を訪問した時も金日成総合大学で「いかなる暴政も永遠には続かない」として「自由と人権の尊重」を謳った講演を行った[17][18][19][20]。一方で国境を接する中華人民共和国ロシア連邦が主導する上海協力機構に準加盟し、草原の道構想[21][22]を掲げてロシア連邦・中華人民共和国・モンゴル国の3カ国によるサミットの定期開催を自ら提案し[23][24]、日本・アメリカ合衆国・ヨーロッパ諸国から懸念を招いたロシア連邦の2015年モスクワ対独戦勝70周年記念パレードと中華人民共和国の中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念式典に出席してモンゴル国軍を赤の広場天安門広場の行進に参加させる[25][26]など軍事的経済的関係が密接な近隣の中露を重視する善隣外交を行っている。また、積極的にモンゴル国軍をイラクなどに海外派遣して国際貢献を行い、日本・アメリカ合衆国のような西側諸国を「第3の隣国」[27]としてバランスを重視する安全保障政策も進めているのも特徴として挙げられる[28][29][30]

2015年9月にエルベグドルジはモンゴルを永世中立国にすると宣言し、法整備を進めて国際連合決議で永世中立国として認めてもらう方針を示した[31]。しかしその後、国交を持つ国々から理解を得られなかったとして、2020年5月に永世中立に関する政令を無効化し、永世中立については宣伝しないよう定めた新たな政令が定められ、エルベグドルジによる永世中立化構想は頓挫している[32]

脚注

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  1. ^ Elbegdorj Tsakhia, President of Mongolia, Head of the National Security Council”. National Security Council of Mongolia. 2017年6月25日閲覧。
  2. ^ キーパーソン:ツァヒア・エルベグドルジ氏=モンゴル新大統領に選出された毎日新聞、2009年5月26日。2009年5月29日閲覧。
  3. ^ モンゴル総選挙、野党が再集計を要求フランス通信社、2008年7月4日。2009年5月31日閲覧。
  4. ^ モンゴル大統領選、元首相が当選 現職破る47NEWS、2009年5月26日。2009年5月28日閲覧。
  5. ^ モンゴル新大統領が決意表明 就任演説で『汚職根絶へ』 」47NEWS、2009年6月18日。2009年6月19日閲覧。
  6. ^ 姫田小夏 (2011年11月29日). “モンゴルでますます高まる嫌中ムード 「やりたい放題」に資源を獲得し、土地の不法占拠も”. JBpress (日本ビジネスプレス). オリジナルの2011年12月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111202110743/http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/30549?page=3 
  7. ^ a b c 姫田小夏 (2011年11月29日). “モンゴルでますます高まる嫌中ムード 「やりたい放題」に資源を獲得し、土地の不法占拠も”. JBpress (日本ビジネスプレス). オリジナルの2011年12月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111202095934/http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/30549?page=4 
  8. ^ “モンゴル大統領選、現職のエルベグドルジ氏が再選”. Reuters. (2013年6月27日). https://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE95Q05Z20130627/ 2013年6月27日閲覧。 
  9. ^ Elbegdorj: From freedom fighter to Mongolian statesman”. 7 January 2014閲覧。
  10. ^ "2012 Laureate: Policy Leadership: President Tsakhia Elbegdorj, Mongolia". The United Nations Environmental Programme. 4 June 2012.
  11. ^ "VII Ministerial Conference of the Community of Democracies". Community of Democracies Mongolia. April 2013.
  12. ^ "From slavery to freedom in the land of Genghis Khan". International Society for Individual Liberty. September 2007.
  13. ^ Norovsambuu & Munkhbat, Ariunaa & Naran (8 May 2013). "Daw Aung San Suu Kyi Speaks with Mongolian Youth". In Asia.
  14. ^ "Die Mongolen vergessen die Hilfe anderer nicht". Deutscher Bundestag. 30 March 2012. Retrieved 5 January 2014.
  15. ^ "Transcripts of the Speech by Daw Aung San Suu Kyi at a public lecture held jointly with President Tsakhiagiin Elbegdorj in Ulaanbaatar, 30 April 2013". president.mn. 30 April 2013.
  16. ^ "Mongolia for the Partnership for Democracy". infomongolia.com. 15 February 2012.
  17. ^ PRESIDENT.MN
  18. ^ "North Korea lecture at Kim Il Sung University by President of Mongolia Tsakhiagiin Elbegdorj"
  19. ^ モンゴル大統領、金日成大学講演で「自由と人権」を強調”. donga.com[Japanese donga] (2002年5月25日). 2015年8月23日閲覧。
  20. ^ “モンゴル大統領「暴政、永遠には続かない」…平壌で講演”. 中央日報. (2015年5月22日). https://web.archive.org/web/20150525030534/http://japanese.joins.com/article/817/200817.html 2015年8月23日閲覧。 
  21. ^ “習近平主席がモンゴル国のエルベグドルジ大統領と会談、両国の全面的な戦略パートナーシップの絶え間無い発展を推進すると強調”. 新華社. (2015年11月11日). http://jp.xinhuanet.com/2015-11/11/c_134805643.htm 2016年5月19日閲覧。 
  22. ^ “習近平主席が中露蒙首脳会議に出席”. 人民日報. (2015年7月10日). http://j.people.com.cn/n/2015/0710/c94474-8918669.html 2016年5月19日閲覧。 
  23. ^ “Russian-Chinese-Mongolian cooperation has huge potential — Putin”. Russia & India Report. (2015年7月9日). https://www.rbth.com/news/2015/07/09/russian-chinese-mongolian_cooperation_has_huge_potential_putin_44147 2019年2月18日閲覧。 
  24. ^ “The Mechanism of Trilateral Meetings in Action”. New Eastern Outlook. (2015年8月9日). http://journal-neo.org/2015/08/12/the-mechanism-of-trilateral-meetings-in-action/ 2015年8月12日閲覧。 
  25. ^ “17 foreign troops join China's V-Day parade”. 新華社. (2015年9月3日). http://news.xinhuanet.com/english/2015-09/03/c_134583748.htm 2015年9月3日閲覧。 
  26. ^ “PRESIDENT TS.ELBEGDORJ ATTENDS PARADE FOR 70TH ANNIVERSARY OF LIBERATION WAR”. アジア太平洋通信社機構. (2015年9月3日). http://www.oananews.org/content/news/politics/president-tselbegdorj-attends-parade-70th-anniversary-liberation-war 2015年9月3日閲覧。 
  27. ^ 首相外遊、5カ国目はモンゴル 対中戦略、外堀から着々”. 産経新聞 (2013年3月30日). 2017年7月11日閲覧。
  28. ^ Tsakhia, Elbegdorj (21 September 2011). "Statement by H.E. Mr.Elbegdorj Tsakhia, President of Mongolia, at the General Debate of the 66th session of the United Nations General Assembly". president.mn. Retrieved 31 July 2013.
  29. ^ Peacekeeping operations”. The United Nations. 23 Aug 2015閲覧。
  30. ^ "Mongolia marks International Day of UN peacekeepers". Global Times (Beijing). 28 May 2013.
  31. ^ “永世中立、年内にも法整備=拉致問題で日朝仲介に意欲-モンゴル大使”. 時事通信社. (2016年3月17日). http://www.jiji.com/jc/zc?k=201603/2016031700876 2016年3月17日閲覧。 
  32. ^ “永世中立に関する政令が無効化”. モンゴルの声. (2020年7月2日). https://montsame.mn/jp/read/250965 2021年1月22日閲覧。 

外部リンク

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公職
先代
ナンバリーン・エンフバヤル
モンゴル国の旗 モンゴル国大統領
第4代:2009年6月18日 – 2017年7月10日
次代
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先代
メンダサイハン・エンフサイハン
ナンバリーン・エンフバヤル
モンゴル国の旗 モンゴル国首相
第19代:1998年4月23日 – 1998年12月9日
第23代:2004年8月20日 – 2006年1月25日
次代
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