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コバノコゴメグサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コバノコゴメグサ
コバノコゴメグサ、八ヶ岳、長野県茅野市にて、2021年9月21日撮影
コバノコゴメグサ、2021年9月
八ヶ岳長野県茅野市にて
分類APG IV[1]
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: シソ目 Lamiales
: ハマウツボ科 Orobanchaceae
: コゴメグサ属 Euphrasia
: コバノコゴメグサ
E. matsumurae
学名
Euphrasia matsumurae Nakai[2][1]
和名
コバノコゴメグサ
品種

センナシコゴメグサ
E. matsumurae f. eglandulosa

コバノコゴメグサ(小葉の小米草、学名Euphrasia matsumurae Nakai[2][1])は、ハマウツボ科コゴメグサ属分類される一年草高山植物の1[3][4][5][6][7][8]。従来の新エングラー体系クロンキスト体系では、ゴマノハグサ科に分類されていた[2][3]。別名がヒメコゴメグサ[6][1][9][10]

形態

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は軟弱では細く[1][4]、茎の高さは3-15 cmセンチメートルで、白い屈毛とやや開出する腺毛がある[1][3]。ときに腺毛がほとんどないものもある[1][4]。枝は茎の下部から対生し、斜上する[7]

は長さ5-9 mmミリメートル、幅3-6 mmの倒卵形-広いへら形で[3]、先は鋭く、基部は次第に狭まって不明瞭な葉柄となり、両面とも無毛かまたは腺毛が散在し、縁に2-3対の先の鋭い鋸歯がある[4]

上部の葉腋ごとに1個のをつける[1]花冠は白色で紫色のすじがあり[1]、下唇の中裂片に黄色の斑があり[3]、上唇の先までの長さ8-9 mm、下唇は広く開き上唇より長い[1][4]花柱は花の外に突き出る[6]。開花時期は8-9月[3][5][6][8]。上唇の外側には長い軟毛があり、下唇の内側には軟毛がある[5]片は不ぞろいで先が黒っぽく[3][5]、広鐘形で長さ3-3.5 mm、幅2 mm、上下に深く裂け、裂片はさらに深く裂け[1][4]、萼裂片の先はまるい[6][8]

蒴果は倒卵形で長さ3-4 mm、幅2 mm、3-4個の種子がある[1]。種子は楕円形で、長さ2 mm、幅1.2 mm[1][4]

茎、葉、萼に腺毛がほとんどないものは、センナシコゴメグサ(f. eglandulosa)と呼ばれている[3][6]

本種を著しく矮小化したような近縁種として木曽山脈の高山帯に分布するコケコゴメグサ(苔小米草、学名:Euphrasia kisoalpina Hid.Takah. et Ohba[1][11])が知られている[12][13]

分布と生育環境

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高山帯の草地に生育するコバノコゴメグサ

日本固有種[3][6]。主に太平洋側に分布の中心があり[14]本州那須山地日光山秩父山地八ヶ岳赤石山脈など)に分布する[1][3][4][5][6]基準標本は日光のもの[3][6]

高山帯亜高山帯[7]の乾いた[6]岩石の多い[7]草地に生育する[3][5]。赤石山脈の北岳ではウラシマツツジと混生する例がある[3]

ミヤマコゴメグサとの識別ポイント

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で同じミヤマコゴメグサ群のミヤマコゴメグサ[13]との識別ポイントを下表に示す。

和名
学名
画像 識別のポイント
コバノコゴメグサ
E. matsumurae
コバノコゴメグサ、赤石山脈、長野県飯田市にて、 2015年8月22日撮影 茎や萼に腺毛がある
萼は上下に深裂し、裂片はさらに浅く裂け、先は尖らない[13]
分布域:本州(那須山地、日光山、秩父山地、八ヶ岳、赤石山脈など)[3]の主に太平洋側[14]
開花時期:8-9月[5]
ミヤマコゴメグサ
E. insignis subsp. insignis
ミヤマコゴメグサ、飛騨山脈の唐松岳、長野県北安曇郡白馬村に、2021年9月15日撮影 茎や萼に腺毛がない
萼は4深裂し、裂片は同形で、先は尖る[13]
分布域:本州(東北地方から中部地方)の日本海側[15]
開花時期:7-9月[16]

種の保全状況評価

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環境省による国レベルのレッドリスト受けていないが[17]新潟県では地域個体群(LP)の指定を受けている[18]上信越高原国立公園妙高戸隠連山国立公園南アルプス国立公園八ヶ岳中信高原国定公園の指定植物に選定されている[19]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 藤井 2017, p. 152.
  2. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “コバノコゴメグサ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月6日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 豊国 (1988)、177頁
  4. ^ a b c d e f g h 佐竹 (1981)、120頁
  5. ^ a b c d e f g 林 (2009)、187頁
  6. ^ a b c d e f g h i j 清水 (2014)、318-319頁
  7. ^ a b c d 小野 (1987)、128頁
  8. ^ a b c 久保田 (2007)、74頁
  9. ^ ヒナコゴメグサEuphrasia yabeana)にも、ヒメコゴメグサの別名がある。
  10. ^ 清水 (2014)、321頁
  11. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “コケコゴメグサ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年10月6日閲覧。
  12. ^ 高橋 (1982)、24頁
  13. ^ a b c d 豊国 (1988)、178頁
  14. ^ a b 高橋 (1993)、44頁
  15. ^ 清水 (2014)、320頁
  16. ^ 林 (2009)、186頁
  17. ^ 環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年10月6日閲覧。
  18. ^ 新潟県第2次レッドリスト(植物編)の公表”. 新潟県 (2019年3月29日). 2021年10月6日閲覧。
  19. ^ 関東中部山岳等の指定植物” (PDF). 環境省. pp. 8. 2021年10月7日閲覧。

参考文献

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  • 小野幹雄林弥栄『原色高山植物大図鑑』北隆館、1987年3月30日。ISBN 4832600079 
  • 久保田修『高山の花―イラストでちがいがわかる名前がわかる』学習研究社、2007年6月。ISBN 978-4054029033 
  • 清水建美門田裕一、木原浩『高山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300 
  • 高橋秀男「木曽山脈産コゴメグサ属の1新種」『植物研究雑誌』第57巻第4号、津村研究所、1982年4月、120-124頁、NAID 40001849741 
  • 高橋秀男「長野県産ゴマノハグサ科・コゴメグサ属とゴマノハグサ属の検討」『神奈川県立博物館研究報告 自然科学』第22巻、神奈川県立博物館、1993年1月、43-52頁、NAID 40000509062 
  • 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 
  • 藤井紀行 著「ハマウツボ科 OROBANCHACEAE」、大橋広好門田裕一邑田仁米倉浩司・木原浩 編 編『改訂新版 日本の野生植物 第5巻 ヒルガオ科~スイカズラ科』平凡社、2017年9月20日、152頁。ISBN 978-4582535358 

外部リンク

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