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イノコヅチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イノコズチから転送)
イノコヅチ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: ヒユ科 Amaranthaceae
亜科 : Amaranthoideae
: イノコヅチ属 Achyranthes
: イノコヅチ(広義) A. bidentata
変種 : イノコヅチ A. b. var. japonica
学名
標準: Achyranthes bidentata Blume var. japonica Miq. (1865)[1]

広義: Achyranthes bidentata Blume (1825)[2]

シノニム
和名
イノコヅチ(猪子槌)、イノコズチ、ヒカゲイノコヅチ(日陰猪子槌)
英名
pig's knee

イノコヅチ(猪の子槌[7]・猪子槌・牛膝[8]学名: Achyranthes bidentata var. japonica)は、ヒユ科イノコヅチ属多年草。日のあまり当たらない場所に生える雑草ヒナタイノコヅチに対してヒカゲイノコヅチ(日陰猪子槌)ともいう。

名称

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和名イノコヅチの由来は、茎の節が膨らんでいて、猪子ののように見えることから、これをに見立ててこの名がついた[9]。別名、イノコズチ[1]、ヒカゲイノコヅチ[1]、フシダカ[7]、コマノヒザ[7]ともよばれる。平安時代中期に編纂された『延喜式』には、「こまのひざ」「ふしだか」という名前での記載が見られる[9]。日本の地方によって、サシグサ[10]、ドロボウグサ[7]、ノサバリコ[10]、ヌスビトグサ[9]、モノグルイ[9]という方言名でもよばれている。中国植物名(漢名)では、少毛牛膝[1]、牛膝(ごしつ)[10]という。

分布・生育地

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北海道を除く、日本の本州四国九州に分布する[9]。古来より日本にある植物で、林内、林縁、山野路傍、薮、木陰などの日陰に生えている[10][8][11][9]

イノコヅチとよばれる植物は、細かくは日陰に生えるヒカゲイノコヅチ(日陰猪子槌)と、日向を好むヒナタイノコヅチ(日向猪子槌)の2種類があり、普段よく目にするイノコヅチは、ヒカゲイノコヅチのほうである[9]

形態・生態

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多年生草本[9]。草丈は、高さは50 - 100センチメートル (cm) になる[8][9]の断面は四角形で、葉柄のつくところがふくれて節になっている[7][8]対生して、先の尖っている長楕円形から楕円形で長さは15センチメートル (cm) ほど、両面に毛がある[8]。近縁種のヒナタイノコヅチよりも、葉質は薄く、毛は少ない[12]。またヒナタイノコヅチは葉が厚く、葉縁は波打つ[8]

花期は夏から秋(8 - 9月)にかけて[11]。茎の上部または葉腋から10 - 20 cmの細長い穂状花序を出して、地味で目立たない淡緑色の小花を多くつける[7][9]。花は開花期には開出し、花後は閉じて下を向く[8]。小さく尖った苞葉の基部に2個ある。花後にできる果実も、小苞となって果実の外側に2本のとげ状となって残り、外側に向かって少し反り返って動物衣服に付着し[9]、それによって遠くまで運ばれて種子を散布する[7][11]。果実は胞果で、花後に閉じた花被片(萼片)に包まれて、果軸に下向きにぴったりつく[11]。長楕円形の果実(胞果)の果皮は膜質で、中に種子が1個ある[11]

近縁種のヒナタイノコズチは日なたに生育し、全体に毛が多く、葉が厚く、花穂が短めで太く密に小花がつく点で違いが見られる[7]

利用

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薬用

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イノコヅチの根を乾燥させて作った漢方薬生薬)を牛膝(ごしつ)といい、利尿強精通精通経薬とする[9]。また俗間では堕胎薬としても使われたこともあったと見られているが、これら有効成分はよくわかっていない[13]。牛膝は、秋に根を掘り採って天日乾燥して調製される[10]民間療法では、生理痛や関節痛に、牛膝1日量5グラムを400 ccの水で煎じて3回に分けて服用する用法が知られている[10]。ただし、妊婦への服用は禁忌とされている[10]

食用

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若芽・やわらかい葉・若い花芽は食用にできる[8]。採取時期は4 - 7月ごろが適期で、若苗や軟らかい葉を採取する[7]。若芽、葉はできるだけ早く熱湯でよく茹でて水にさらし、おひたし和え物炒め物バター炒め煮びたしポタージュ、汁の実、佃煮などにする[8][7]。葉やつぼみは、生のまま天ぷらにもできる[8]

第二次世界大戦中の日本では、戦時下の食糧難で食べられる雑草として「夏の七草」の一つとして食用を推奨されている[9]。このとき選ばれたスベリヒユイヌビユとともに、アクが少なく、サラダや調理して一般の野菜同等に使うことができる[13]。近縁種のヒナタイノコヅチも同様に食用となるが、本種(ヒカゲイノコヅチ)のほうが葉が薄くて柔らかく、毛が少なくて美味しく食べやすいと評されている[8][7]

イノコヅチ属

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イノコヅチ属学名: Achyranthes)。

脚注

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  1. ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Achyranthes bidentata Blume var. japonica Miq. イノコヅチ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月15日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Achyranthes bidentata Blume イノコヅチ(広義)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月15日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Achyranthes fauriei H.Lév. et Vaniot var. japonica (Miq.) Hiyama イノコヅチ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月15日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Achyranthes fauriei H.Lév. et Vaniot subsp. japonica (Miq.) Sugim. イノコヅチ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月15日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Achyranthes japonica (Miq.) Nakai var. katsuudakemontana Tawada イノコヅチ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月15日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Achyranthes japonica (Miq.) Nakai イノコヅチ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年4月15日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k 金田初代 2010, p. 144.
  8. ^ a b c d e f g h i j k 高橋秀男監修 2003, p. 62.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m 藤井義晴 2019, p. 122.
  10. ^ a b c d e f g 貝津好孝 1995, p. 150.
  11. ^ a b c d e 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 105.
  12. ^ 馬場篤 1996, p. 24.
  13. ^ a b 藤井義晴 2019, p. 123.

参考文献

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  • 伊藤ふくお写真、丸山健一郎文『ひっつきむしの図鑑』北川尚史監修、トンボ出版、2003年、64 - 65頁。ISBN 4-88716-147-6 
  • 岩瀬徹『形とくらしの雑草図鑑 : 見分ける、身近な280種』全国農村教育協会〈野外観察ハンドブック〉、2007年、34頁。ISBN 978-4-88137-135-0 
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、150頁。ISBN 4-09-208016-6 
  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、144頁。ISBN 978-4-569-79145-6 
  • 亀田龍吉、有沢重雄『花と葉で見わける野草』近田文弘監修、小学館、2010年、176頁。ISBN 978-4-09-208303-5 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年9月28日、105頁。ISBN 978-4-416-71219-1 
  • 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、62頁。ISBN 4-05-401881-5 
  • 平野隆久写真『野に咲く花』林弥栄監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、1989年、354頁。ISBN 4-635-07001-8 
  • 藤井義晴『ヘンな名前の植物—ヘクソカズラは本当にくさいのか』化学同人、2019年4月30日、122 - 23頁。ISBN 978-4-7598-1989-2 
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、24頁。ISBN 4-416-49618-4 

関連項目

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外部リンク

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