Wikipedia:査読依頼/オーロラ (歌手) 20210405
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以前査読に出したYeYeと同様、シンガー・ソングライターについての記事です。出典の乏しかった以前の版を全面改稿したものになります。来歴の一部などは英語版からの翻訳をベースにしていますが、(出典がノルウェー語の有料記事である数カ所を除き)出典を確認のうえ大幅に加筆修正しています。
読みやすさやメンテナンス性なども含め全般的にコメントいただきたいと考えております。以下に現時点で私自身が気になっている点を挙げておきます。
- インタビューなどの1次寄りの資料と2次資料のバランス。
- 翻訳・英文解釈の精度。
- 地の文と引用のバランスと(話し言葉調の)引用箇所の文体。
- 私生活や趣味について、複数の2次資料に記載があるもの(たとえば虫を偏愛していることなど)については、もう少し記載があってもよいか。
以上です。よろしくお願いいたします。--Jutha DDA(会話) 2021年4月5日 (月) 04:48 (UTC)
主に「2. 翻訳・英文解釈の精度。」の観点から原文との照合を行いました。明確な誤訳もあれば、解釈の違いに留まる部分もありますが、参考にしていただければ幸いです。
〇 来歴 ― デビュー以前
「音楽を嗜む」の方が一般的な表現です。「営む」を「プロ活動」の意味に使っているのかもしれませんが、それなら「プロ活動」と書けばいいでしょう。音楽を営む
原文の management company は talent management company(芸能事務所)のことでしょう。その2曲をノルウェーの管理会社が見つけ
その会社の会議に陪席を求められた、というわけでもないでしょうから、meeting は会議ではなく「面接」に類するものでしょう。オフィスの会議に招待した
proper live performance の訳は「本格的なライヴ・パフォーマンス」などとする方が自然です。適切なライヴ・パフォーマンス
〇 来歴 ― 2016年–2019年: 2部構成のアルバム
「新アルバムの第5トラックとなる曲をすでに作り始めていたという」の誤訳です[1]。「新アルバム」は Infections of a Different Kind (Step 1) のことだと思われます。インタビュー時点から発売までの間にアルバム構成が変更された可能性は確認していませんが、「次のアルバムに収録されることになる曲をすでに作り始めていたという」とすればそこは気にならないでしょう。すでに5つもの曲を作り始めていたという
原文の care about things は文脈から「誰かの助けになりたい」という気持ちを指しているようです。「気にする」という言い方だと「気に障る」というようにも受け取れるので、「気にかける」「心を砕く」「思いやる」などと訳す方がいいと思います。また、日本語文で「あなた」が多用されると変な気がします。その他、細かい言葉遣いは好みの問題ですが、自分で訳すなら(出典から追加で少し言葉を借りて)以下のようにします。次のアルバムは「あなたには物事を気にする能力がないという感覚を押し退ける」ものであり、「あなたは他の人の戦士にもなれる」ことを示すものであると語っている。次のアルバムは「自分には何かを気にかけたりする力がないという感覚を払いのける」ものであり、内なる悪魔と折り合いをつけた後で「誰かほかの人のための戦士になる」ことを表現しているという。
「選び取る」が日本語の自動詞としてしっくりこないので「自分自身のために何かを選び取ったり」「自分自身のために決断を下したり」とした方がいいと思います。多くの曲は、人々が自分自身のために選び取ったり、復讐のために戻ってきたりすることについて
「広い視野」と「内面的、内的」の噛み合わせが悪い印象を受けます。実際、原文を見ると別の解釈も成り立つようです。前作よりもさらに広い視野をもっていて、「内面的で、私たちの内的な過程について扱っている」。
この It を Step Two のことだとすれば現在の訳文で正しいのですが、直前に言及された Step One のことだとすれば、... this album has an even wider perspective than ‘Step One’ had. It’s more interior, dealing with our inner processes. ‘Step Two’ is quite broad and wide, ... [2]
となります。こちらの方が出典やオーロラ (歌手)の記述と馴染みが良いようです。「内面的で、私たちの内的な過程について扱っていた」前作よりさらに広い視野をもっている。
〇 音楽性
正直なところ、この部分は何と何がブレンドされているのか、なぜそれが説得力を持つのかよく分かりませんでした。自分が書くなら原文の要約度を落としてCR Fashion Book (2019) は、「逃避感」のある「巧妙に(英語: slickly)プロデュースされたポップス」であり、「説得力のある(英語: potent)ブレンド」として熱狂的なフォロワーを獲得したと記述している。
とします。「説得力のあるブレンド」という日本語表現は「違和感なく混ぜ合わされた」という意味に取られかねないので「力強いブレンド」くらいがいいと思います。また「(英語:slickly)」というような併記は個人的には不要です。「巧妙に=slickly」、「力強い=potent」という訳語に明らかな解釈の誤りはなく、特異な単語の使い方というわけでもなさそうですので。他方で、たとえばモチーフとして繰り返し使われる warrior のような単語には原語の併記があっていいと思います。CR Fashion Book (2019) は、「巧妙にプロデュースされたポップス」でありながら、澄んだソプラノと社会の周縁への視線によって「逃避の感覚」を内包しており、その「力強いブレンド」が熱狂的なフォロワーを獲得したと記述している。
これは単純に出典原文の「icy, pealing vocals[3](冷たく響きわたるボーカル)」を「icily peeling vocals」と見誤ったのだと思います。氷のように剥がれるボーカル
訳文を一読して、「私たちが本当は気にしていないこと以外の何か」が分かりにくく感じました。理由の一つは原文の "all this stuff"[4] が訳文に反映されていないためでしょう。"all this" というくらい身近にあふれていて、"stuff" というくらい下らないものです。「そこらじゅうに転がっているどうでもいいこと以外のなにかを思い出させてくれるような」という訳し方はどうでしょうか。だからこそ私は、知的で感情的で、人々に届いて、なにか大切なことを伝える、私たちが本当は気にしていないこと以外のなにかを思い出させてくれるような、良質なポップ・ミュージックを作りたいんです。
〇 思想や価値観 ― 感情と政治について
出典の対応する箇所は自分たちの世代は人々が互いにバラバラになってしまっていると感じていて、それぞれの力を繋ぎ合わせれば大きな力になることを知っていると語っている
ですね。訳文は「感じている」の主語が「自分たちの世代は」だと誤解されてしまう恐れがあると思いました。それから、現在完了形の部分は「バラバラになってしまっている」より「しまっていた」としてはどうでしょうか。今は同世代の政治的連帯が高まっていると言っているのですから。こういう風です。I feel very in touch with our generation now because I feel that we’ve been quite disconnected. I feel very good about how people are reacting right now[5]自分たちの世代は互いにバラバラだと感じていたが、今ではそれぞれの力を繋ぎ合わせれば大きな力になることを知っていると語っている
〇 思想や価値観 ― セクシャリティーについて
出典のマニッシュな男性
でいう "manly" man が「マニッシュな男性」と表現されている理由が分かりません。一般に -ly と -ish はニュアンスが異なります。私の理解では、manly manは単純に「男性的な/男らしい」男性です。Google画像検索で引くと、まさにオーロラが言うような髭を生やした男性や、体毛の濃い筋肉質の男性が出てきます。一方でmannishは「(女性が)男みたいな」というように辞書に載っています。日本語の「マニッシュ」はファッション用語のようですが、これもやはり女性を修飾する言葉ではないでしょうか。Googleの用語検索や画像検索で ”マニッシュな男性” を引くと、文字通り男性を修飾する例もあるとはいえ、大半は中性的な女性に対して「マニッシュな男性像を思わせる」というように使われています。髭もじゃの男らしさとは正反対のイメージです。「「男性的」な男性」「男っぽい見た目の男性」で十分なところに、余計なニュアンスを追加する「マニッシュ」を使う必要はないように思われます。... a boyfriend who’s a very "manly" man, and has more beard than anyone I’ve ever seen.[6]
〇 コンサートやファンとの関係
出典を見ても、曲名からファンの通称が派生したのか、逆にファンの通称から曲名が派生したのかは明確に書かれていないと思うのですが。どちらにしても、単に「曲名から取った」と断じてしまうより、出典の "not wanting to name them as though ... "[7] をもう少し詳しく紹介した方が興味深いのではないでしょうか。自分のファンのことを「ウォーリアー(英語: warriors、訳: 戦士)」や「ウィアード(英語: weirdos、訳: 奇人)」と呼ぶ。前者はファンに向けて作られた曲である「ウォーリアー」に由来する。
--Deer hunter(会話) 2021年4月6日 (火) 14:42 (UTC)
- 返信 (Deer hunterさん宛) 出典に細かく当たっていただたようで、大変ありがたいです。ご指摘を元に加筆修正いたしました(差分)。以下各点について。
- 来歴
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- デビュー以前
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- ここは、「音楽をする」だと姉についての記述と軽く齟齬をきたし、「プロ活動」までいくと少々書きすぎかなと思い表現を迷っていたところです。「嗜む」という表現だとそのあたりを踏まえたニュアンスに合致するので、採用いたしました。
- おそらく日本の芸能事務所とは扱う範囲が異なるかなと思うので、「マネジメント会社」といたしました。
- “[M]eeting” は訳さなくても十分かなと考え、たんに「オフィスに招いた」としました。
- そのまま採用いたしました。
- 2部構成のアルバム
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- これは凡ミスでした。時期的に考えて『Step1』を指すとしてもよさそうですが、一応直後にサプライズ発表されているという経緯があるので、「次作」と少々濁すかたちとしました(『ステップ1』をアルバムとしている場合とEPとしている場合があるのが悩ましいところです)。
- “[C]are about things” については、たしかに仰るとおりですので、「気にかける」としました。代名詞の訳については、他の箇所も含めて見直しました。
- この点については、日本語では自動詞・他動詞の区別がそれほど明確ではなく、たんに「なにかを」の省略と見做せば問題ないと考えております。
- この点については、“[i]t” が『ステップ2』を指すものという解釈(文章の表面的な流れや現在形であることを考えると、そちらのほうが自然な解釈だと考えます)のまま、「噛み合わせが悪い印象」にならないように段落全体を再構成しました(併せて「#感情と政治について」も再構成しています)。この辺りは、おそらく彼女の音楽性や思想の根幹に関わると思うのですが、独自研究にならないように複数の資料を組み合わせることの難しさを感じます。
- 音楽性
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- CR Fashion Book (2019) を再度読み返してみたところ、ほかの加筆修正との兼ね合いからも “potent blend” はさほど重要ではないかなと思い直し、とりあえず除去しました。原語併記は、容易に想像できるほかの原語(potent の場合、convincing や persuasive、「力強い」と訳すなら powerful など)だとニュアンスが変わってきそうなので附けている例ですね。もう少し適当な訳語があれば修正してほしいという意味合いもあるので、とりあえず残しておいて、査読期間終了時に除去ないしコメントアウトを検討しようかと思います。
- ご指摘のとおりです。この段落は、全体的に引用を減らすかたちで書き直してみました。
- これは下訳に使った DeepL に引っ張られてしまった例になります。機械翻訳の影響はできるだけ排除するように気を付けているんですが、うっかりしていました。ご提案いただいた訳を参考に文全体を訳し直しました。
- 思想や価値観
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- 感情と政治について
- 上述のように全体的に再構成しました。
- 確かに主述の対応が分かりにくかったので修正しました。“disconnected” な状態が完全に解消されたとまでは明言していないようなので、「バラバラになってしまっていると感じていた」として、現時点で「バラバラ」であるかどうかへの言及を避ける形にしてみました。
- セクシャリティーについて
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- これは単純に日本語の「マニッシュ」について勘違いしていました。修正しました。
- コンサートやファンとの関係
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- こちらはおそらく、参考にしたファンサイトに引っ張られてしまったのだと思います。まず書きたい内容があって、それに出典を加えるという場合は、注意したいです。ご提案を踏まえて段落全体を加筆修正しました。
- 以上です。ありがとうございました。--Jutha DDA(会話) 2021年4月8日 (木) 06:16 (UTC) 微修正 --2021年4月8日 (木) 06:18 (UTC)
- 返信ありがとうございます。私が指摘した箇所はいずれも妥当な形に修正されたか、あるいは変更しなくとも大した問題はないと思われます。--Deer hunter(会話) 2021年4月8日 (木) 12:12 (UTC)