ジェームズ・ゴスリン
ジェームズ・ゴスリン James Gosling | |
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2008年 オーストラリアにて | |
生誕 |
James Gosling 1955年5月19日(69歳) カナダ アルバータ州カルガリー近郊 |
居住 | アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア |
国籍 | カナダ |
研究機関 | |
出身校 | |
博士論文 | Algebraic Constraints (1983) |
博士課程 指導教員 | ボブ・スプロール[2] |
主な業績 | Java |
主な受賞歴 |
カナダ勲章 オフィサー フォン・ノイマンメダル The Economist Innovation Award |
子供 | 3人 |
プロジェクト:人物伝 |
ジェームズ・アーサー・ゴスリン(James Arthur Gosling、1955年5月19日 - )は、カナダ出身の計算機科学者である。オブジェクト指向プログラミング言語Javaの生みの親・リードデザイナーとして広く知られており、"Dr. Java"の異名を持つ[3]。
教育とキャリア
[編集]アルバータ州カルガリー近郊に生まれた。計算機科学を専攻し、1977年にカルガリー大学で学士号[4]、カーネギーメロン大学で修士号とPh.D.を取得した[2][5][6]。博士課程在籍中に、UNIXで動作する最初のEmacs風エディタであるGosling Emacs(Gosmacs)を開発した。また、カーネギーメロン大学在学中に、UNIXのマルチプロセサ版[7]や、いくつかのコンパイラとメール転送エージェント(MTA)を開発した。
大学卒業後、サン・マイクロシステムズに入社した。ゴスリンは、1984年から2010年までの26年間、サン・マイクロシステムズに在籍していた。彼はオブジェクト指向プログラミング言語Javaの生みの親として知られている[8][9]。PERQのQコードをVAXアセンブラに変換してハードウェアをエミュレートすることで、PERQからソフトウェアを移植するプログラムを書いていたときに、Java仮想マシン(VM)のアイデアを得た。ゴスリンはサンのフェローであり Sun labs で研究活動を行っていた。2006年から2010年まで、ゴスリンはサンの副社長であり開発者製品グループの最高技術責任者 (CTO) を務めていた。
彼は、サン・マイクロシステムズがオラクルに買収された後の2010年4月2日、給与、地位、意思決定能力の低下、役割の変更、倫理的な課題を理由に[10]同社を退職した[8]。それ以降、彼はインタビューでオラクルに対して非常に批判的な姿勢をとっており、「サンとグーグルの間で特許の状況を巡って我々が追い込まれていたときの、サンとオラクルとの合併に関する会議では、我々にはオラクルの弁護士の目がキラキラしているのが見えた」と指摘している[9]。Androidをめぐるグーグルとオラクルの裁判の際、次のように自身の立場を表明した。「私とオラクルとの間に揉め事はあったが、この場合には、彼らの方が正しい。グーグルは完全にサンを泥で覆った。我々は、本当に邪魔をされた。ジョナサン・シュワルツも。彼は幸せそうな顔をして、レモンをレモネードにする(逆境をうまく利用する)ことにしたが、これは、サンの多くの人々を悩ませた[11]。」しかし、彼はAPIが著作権で保護されるべきではないという裁判所の判決に賛同した[12]。
2011年3月、ゴスリンはオラクルを退社してグーグルに入社した[13]が、その半年後には同僚のビル・ヴァスの後を追って、無人ボートで海洋データを収集しクラウドにアップロードする新興企業リキッド・ロボティクスに入社し、主任ソフトウェア設計者に就任した[1]。2016年後半、リキッド・ロボティクスはボーイングに買収された[14]。買収後、ゴスリンはリキッド・ロボティクスを退社し、2017年5月に上級技術者としてAmazon Web Servicesに入社した[15]。
彼は、Scalaを開発した企業ライトベンドの顧問[16]、ジェラスティックの独立取締役[17]、ユーカリプタスの戦略顧問[18]を務める。
彼は「未知のもの」を証明することが好きなことで知られており、好きな無理数は√2であると述べている。彼のオフィスには、√2の最初の1,000桁の数字が額に入れて飾られている[19]。
業績
[編集]ゴスリンはまず、Gosling Emacsの著者として知られるようになった。彼はまた、NeWSと呼ばれる初期のUNIXのウィンドウシステムを開発した。
彼は、1994年にプログラミング言語Javaを開発したことで広く知られている[20][21][22]。彼はJavaのオリジナルデザインを作成し、言語のオリジナルコンパイラと仮想マシンを実装した[23]。ゴスリンは、彼が大学院生時代に、研究室のDEC VAXコンピュータ用のpコードマシンを作成し、教授がUCSD Pascalで書いたプログラムを実行できるようにしたことが、このアプローチの起源であるとしている。サンでのJavaへとつながる仕事の中で、彼は、広く分散されたプログラムのためのアーキテクチャニュートラルな実行が、「常にプログラムを同じ仮想マシンで実行する」という同様の哲学を実装することで達成できることに気付いた[24]。
その功績により、全米技術アカデミーは彼を外国人準会員に選出した[25]。
ゴスリンのもう1つの貢献として、ブライアン・カーニハンとロブ・パイクの著書『UNIXプログラミング環境』で詳細に説明されているユーティリティであるsharを共同で製作したことがある[26]。
賞と栄誉
[編集]- 2002年: エコノミスト イノベーション賞[27]
- 2002年: USENIX貢献賞[28]
- 2007年: カナダ勲章 オフィサー[29] - カナダ勲章はカナダの民間人に対する2番目に高い名誉であり、オフィサーはその2番目に高い等級である。
- 2013年: ACMフェロー[30]
- 2015年: フォン・ノイマンメダル[31]
- 2019年: コンピュータ歴史博物館フェロー(コンピュータの殿堂)「プログラミング言語Javaの構想・設計・実装に対して」[32]
著書
[編集]- Ken Arnold, James Gosling, David Holmes, The Java Programming Language, Fourth Edition, Addison-Wesley Professional, 2005, ISBN 0321349806
- 柴田芳樹 (訳) 『プログラミング言語Java 第4版』 ピアソン・エデュケーション、2007年、ISBN 978-4894717169
- James Gosling, Bill Joy, Guy L. Steele Jr., Gilad Bracha, The Java Language Specification, Third Edition, Addison-Wesley Professional, 2005, ISBN 0321246780
- 村上雅章 (訳) 『Java言語仕様第3版』 ピアソン・エデュケーション、2006年、ISBN 978-4894717152
- Ken Arnold, James Gosling, David Holmes, The Java Programming Language, Third Edition, Addison-Wesley Professional, 2000, ISBN 0201704331
- 柴田芳樹 (訳) 『プログラミング言語Java 第3版』 ピアソン・エデュケーション、2001年、ISBN 4894713438
- James Gosling, Bill Joy, Guy L. Steele Jr., Gilad Bracha, The Java Language Specification, Second Edition, Addison-Wesley, 2000, ISBN 0201310082
- 村上雅章 (訳) 『Java言語仕様』 ピアソン・エデュケーション、2000年、ISBN 4894713063
- Gregory Bollella (Editor), Benjamin Brosgol, James Gosling, Peter Dibble, Steve Furr, Mark Turnbull, The Real-Time Specification for Java, Addison Wesley Longman, 2000, ISBN 0201703238
- 柴田芳樹 (訳) 、富士ゼロックス情報システム (訳) 『Javaリアルタイム仕様』 ピアソンエデュケーション、2000年 ISBN 4894713071
- Ken Arnold, James Gosling, The Java programming language Second Edition, Addison-Wesley, 1997, ISBN 0201310066
- Ken Arnold, James Gosling, The Java programming language, Addison-Wesley, 1996, ISBN 0201634554
- 光澤敦 (訳) 、松井康範 (訳) 、川幡太一 (訳) 『プログラミング言語Java』 アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパン、星雲社、1997年、ISBN 4795297045
- James Gosling, Bill Joy, Guy L. Steele Jr., The Java Language Specification, Addison Wesley Publishing Company, 1996, ISBN 0201634511
- 村上雅章 (訳) 『Java言語仕様』 アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパン、星雲社、1997年、ISBN 4795296707
- James Gosling, Frank Yellin, The Java Team, The Java Application Programming Interface, Volume 2: Window Toolkit and Applets, Addison-Wesley, 1996, ISBN 0201634597
- 村上雅章 (訳) 『Java API アプリケーション・プログラミング・インタフェース Vol.2 ウィンドウ・ツールキットおよびアプレット』 アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパン、星雲社、1996年、ISBN 4795296898
- James Gosling, Frank Yellin, The Java Team, The Java Application Programming Interface, Volume 1: Core Packages, Addison-Wesley, 1996, ISBN 0201634538
- 村上雅章 (訳) 『Java API アプリケーション・プログラミング・インタフェース Vol.1 コア・パッケージ』 アジソン・ウェスレイ・パブリッシャーズ・ジャパン、星雲社、1996年、ISBN 479529688X
- James Gosling, Henry McGilton, The Java language Environment: A white paper, Sun Microsystems, 1996
- James Gosling, David S.H. Rosenthal, Michelle J. Arden, The NeWS Book : An Introduction to the Network/Extensible Window System (Sun Technical Reference Library), Springer, 1989, ISBN 0387969152
その他
[編集]ゴスリンは、プログラミングなどの作業の多くをかつてはPowerBook, MacBook Proで行ってきた[33]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ a b I've moved again : On a New Road. Nighthacks.com. Retrieved on 2016-05-17.
- ^ a b ジェームズ・ゴスリン - Mathematics Genealogy Project
- ^ “James Gosling - Computing History”. Computinghistory.org.uk. 2017年10月9日閲覧。
- ^ “Archived copy”. 2015年6月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月13日閲覧。
- ^ Gosling, James (1983). Algebraic Constraints (PhD thesis). Carnegie Mellon University.
- ^ Phd Awards By Advisor. Cs.cmu.edu. Retrieved on 2013-07-17.
- ^ James Gosling mentioned a multiprocessor Unix in his statement during the US vs Microsoft Antitrust DOJ trial in 1998 “DOJ/Antitrust”. Statement in MS Antitrust case. US DOJ. 1 February 2007閲覧。
- ^ a b Guevin, Jennifer. (2010-04-10) Java co-creator James Gosi leaves Oracle. News.cnet.com. Retrieved on 2012-02-21.
- ^ a b Shankland, Stephen. (2011-03-28) Java founder James Gosling joins Google | Deep Tech – CNET News. News.cnet.com. Retrieved on 2012-02-21.
- ^ Darryl K. Taft. (2010-09-22) Java Creator James Gosling: Why I Quit Oracle. eWEEK.com
- ^ My attitude on Oracle v Google. Nighthacks.com. Retrieved on 2016-05-17.
- ^ “Meltdown Averted”. Nighthacks.com. 2017年3月13日閲覧。
- ^ Next Step on the Road. Nighthacks.com. Retrieved on 2016-05-17.
- ^ “Boeing to Acquire Liquid Robotics to Enhance Autonomous Seabed-to-Space Information Services” (December 6, 2016). 2020年4月27日閲覧。
- ^ Darrow, Barb (May 23, 2017). “Legendary Techie James Gosling Joins Amazon Web Services”. Fortune.com. 23 March 2018閲覧。
- ^ Typesafe — Company: Team. Typesafe.com. Retrieved on 2012-02-21.
- ^ James Gosling and Bruno Souza Join Jelastic as Advisers. InfoQ.com. Retrieved on 2014-11-24.
- ^ Eucalyptus Archived 2013-04-25 at the Wayback Machine.. Eucalyptus.com Retrieved on 2013-04-22
- ^ UserGroupsatGoogle (29 November 2010). “James Gosling on Apple, Apache, Google, Oracle and the Future of Java”. YouTube. 20 January 2018閲覧。
- ^ Allman, E. (2004). “Interview: A Conversation with James Gosling”. Queue 2 (5): 24. doi:10.1145/1016998.1017013.
- ^ Gosling, J. (1997). “The feel of Java”. Computer 30 (6): 53–57. doi:10.1109/2.587548.
- ^ “Sun Labs-The First Five Years: The First Fifty Technical Reports. A Commemorative Issue”. Ching-Chih Chang, Amy Hall, Jeanie Treichel. Sun Microsystems, Inc. (1998年). 2010年2月7日閲覧。
- ^ “A Conversation with James Gosling”. ACM Queue. ACM (2004年8月31日). 2014年7月3日閲覧。 “At Sun he is best known for creating the original design of Java and implementing its original compiler and virtual machine.”
- ^ McMillan, W.W. (2011). “The soul of the virtual machine: Java's abIlIty to run on many dIfferent kInds of computers grew out of software devised decades before”. IEEE Spectrum 48 (7): 44–48. doi:10.1109/MSPEC.2011.5910448.
- ^ “NAE Members Directory – Dr. James Arthur Gosling”. NAE. March 29, 2011閲覧。
- ^ Kernighan, Brian W; Pike, Rob (1984). The Unix Programming Environment. Prentice Hall. pp. 97-100. ISBN 0-13-937681-X
- ^ The 2002 Economist Innovation Award Winner Archived 2012-04-22 at the Wayback Machine..
- ^ “Flame Award”. Usenix.org (6 December 2011). 20 January 2018閲覧。
- ^ “Governor”. February 7, 2008時点のオリジナルよりアーカイブ。August 28, 2016閲覧。. February 20, 2007
- ^ ACM Names Fellows for Computing Advances that Are Transforming Science and Society Archived 2014-07-22 at the Wayback Machine., Association for Computing Machinery, accessed 2013-12-10.
- ^ “IEEE JOHN VON NEUMANN MEDAL : RECIPIENTS”. Ieee.org. 20 January 2018閲覧。
- ^ Computer History Museum names James Gosling a 2019 Fellow
- ^ Bogan, Daniel (2010年11月11日). “Uses This: James Gosling” (英語). usesthis.com. 2021年12月18日閲覧。
外部リンク
[編集]- ジェームズ・ゴスリン (@errcraft) - X(旧Twitter)
- ゴスリンの紹介記事 (java.net)
- James Gosling: on the Java Road - ゴスリンのブログ
- Java Blogs - ゴスリン、マーティン・ファウラー、ブルース・エッケルなどJavaに関わる人々のブログ
- ゴスリンの紹介記事 (apple.com)