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アスロック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ASROCから転送)
RUR-5 アスロック
訓練弾
種類 対潜ミサイル
製造国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
設計  アメリカ海軍
性能諸元
ミサイル直径 336.6 mm
ミサイル全長 451 cm
ミサイル重量 Mod.3: 949–957 lb (430–434 kg)
Mod.4: 1,071–1,073 lb (486–487 kg)
弾頭 Mk.44
Mk.46
73式魚雷[1]
W44核弾頭
射程 900–10,000 yd (820–9,140 m)
誘導方式 無誘導
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RUR-5 アスロック英語: Anti Submarine ROCket, ASROC)は、アメリカ合衆国が開発した艦載用対潜ミサイル(SUM)。

来歴

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アメリカ海軍は、初のスキャニング・ソナーとしてQHBを開発し、1948年から艦隊配備に入るとともに、これを発展させたAN/SQS-4を開発していた。1950年の時点で、AN/SQS-4はQHBの倍に達する優れた探知性能を備える見込みとなっていた。当時、新世代の対潜兵器として324mm対潜ロケット砲ウェポン・アルファ)の開発が進められていたが、AN/SQS-4の探知距離をもってすれば、これより遥かに長射程の兵器であっても運用可能と見積もられた。このように長距離で探知・攻撃できれば、UボートXXI型のような水中高速潜水艦や長射程兵器を備えた潜水艦に対しても、必ずしも追いつかずとも交戦可能と期待された[2]

この要請に対し、まず1953年の提案に基づき、射程1,500–5,000ヤード (1,400–4,600 m)の対潜ミサイルとしてRAT(Rocket-Assisted Torpedo)が開発された。このように長射程での対潜兵器では、発射してから着弾するまでに目標が移動してしまい失中となる可能性があることから、弾頭は、単なる爆雷ではなく、誘導魚雷が用いられた。標準的な38口径12.7cm連装砲にアームを装着して運用するか、あるいは50口径7.6cm連装砲と換装するための簡単な連装発射機で運用することになっていた[2]

RAT-A、RAT-Bが順次に開発されたものの、飛翔精度不良など深刻な技術的問題に直面し、1957年に開発中止となった[2]。一方、1955年からは核爆雷を弾頭とするRAT-Cの開発が着手されていたが、こちらの開発はある程度の成果を上げていた。このことから、アメリカ海軍は、RAT-Cで得られた成果を基本として新技術も加味し、核爆雷のほかに短魚雷を弾頭とする対潜ミサイルの開発に着手した。RATではAN/SQS-4の探知距離とマッチする射程とされていたが、更に長距離探知が可能なAN/SQS-23の実用化を受けて、射程の延伸も図られた。これによって開発されたのがアスロックである[3]

設計

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アスロックの弾体は、弾頭(Mk.44魚雷あるいはMk.17核爆雷)の後方に飛翔用のMk.12ロケット・モーターを取り付けた構造となっている。短魚雷としては、後にMk.46も採用したほか、日本では国産の73式魚雷も用いられた[1]。一方、Mk.17核爆雷はアメリカ海軍のみで採用され、1989年9月に運用を停止した[4]

実用化当初、アスロックは、AN/SQS-23探信儀とMk.111/114水中攻撃指揮装置、Mk.16発射装置(Guided Missile Launching System, GMLS)およびアスロックによって武器システムを構成していた。このMk.16 GMLSでは、8連装の箱型発射機であるMk.112ランチャーを採用しているが、これは上下一体1組の発射筒4組を組み合わせた形状から、マッチボックスやペッパーボックス、日本ではボックスランチャーと称される。また三菱重工業でのライセンス生産版は74式アスロックランチャ[5](Mk112(J)Mod2Nとも)と称される[1]。また、テリアミサイル・システムのMk 10 GMLSや、ターター・システムMk 26 GMLSでも運用される[4]

Mk.16 GMLSから発射される場合、ランチャー全体が発射方位に旋回し、発射に使われる発射筒の組が一定仰角45度に起き上がって、ロケットが発射される。ミサイルは無誘導で放物線を描いて弾道飛行する[3]。飛翔距離は事前に入力されており、その距離を飛翔すると、ロケット・モーターが外れてパラシュートが開き、魚雷を減速させて水面に着水させる。着水の衝撃でパラシュートが外れ、魚雷は設定深度まで沈下したのち、捜索パターンに従って目標捕捉運動に入る[4]

また1980年代には、Mk 41 VLSに対応した派生型としてRUM-139 VLA(Vertical Launch ASROC)が開発・配備された[4]

運用国と装備艦艇

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 アメリカ海軍

海上自衛隊

 イタリア海軍

 エジプト海軍

  • ダミアット級フリゲート[注 7]

 カナダ海軍

 ギリシャ海軍

  • テミストクレス級駆逐艦[注 9]
  • キモン級駆逐艦(旧米海軍チャールズ・F・アダムズ級)
  • イピルス級フリゲート[注 7]

 スペイン海軍

 タイ海軍

  • プッタヨートファーチュラーローク級フリゲート[注 7]

 大韓民国海軍

 台湾海軍

  • 富陽級駆逐艦[注 9]
  • 済陽級フリゲート[注 7]
  • 基隆級駆逐艦(旧米海軍キッド級)

 ドイツ海軍

 トルコ海軍

  • ユジェテペ級駆逐艦[注 9]
  • アルチテペ級駆逐艦(旧米海軍カーペンター級)
  • テペ級フリゲート[注 7]

 パキスタン海軍

  • アラムジル級駆逐艦[注 9]
  • カイバル級フリゲート(旧米海軍ブルック級)
  • サイーフ級フリゲート[注 10]

 ブラジル海軍

  • マルシーリオ・ジーアス級駆逐艦[注 9]
  • パラ級フリゲート[注 10]

 メキシコ海軍

  • ケツァルコアトル級駆逐艦[注 9]
  • ブラヴォー級フリゲート(旧米海軍ブロンシュタイン級)
  • アレンデ級フリゲート[注 7]

登場作品

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映画

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駆逐艦ベッドフォード作戦
ごく初期のアスロックが登場。ブリッジのアスロック操作パネルも再現されている。
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS
架空のイージス護衛艦あいづ」の搭載兵器として登場。海中へ潜行するゴジラに対して使用される
『ネイビーロックウォー 撃破せよ!』
クライマックスシーンで、実際の艦長じきじきの漂々としたアスロック発射命令のシーンがある。
空母いぶき
現実には未だ実用化されていない[6]、アスロックで魚雷を迎撃するシーンがある。

アニメ・漫画

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コードギアス 反逆のルルーシュ R2
第7話にブリタニア軍戦闘艦の搭載兵器として登場。黒の騎士団に対して使用される。弾頭魚雷ではなく、爆雷が装填されている。
少年戦闘隊オーロラ7
アメリカ軍をはじめとする各国の軍艦に搭載されたものが、世界に宣戦布告した"第三帝国"の潜水艦へ攻撃を掛けた際にサブロックとともに使用される。
タイドライン・ブルー
新国連艦隊に所属するイージス護衛艦やステルス巡洋艦が使用する。4本の魚雷を投下する多弾頭式。
沈黙の艦隊
多数のアメリカ海軍艦艇に搭載されたものが、原子力潜水艦やまと」に対して使用される。
ジパング

小説

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大逆転!ミッドウェー海戦
ミッドウェー海戦直前の時代へタイムスリップする、はたかぜ型護衛艦はたかぜ」に搭載されたものが、同様にタイムスリップしてきたはつゆき型護衛艦さわゆき」を襲撃するポーパス級潜水艦ターポン」に対して使用される[7]
『日本北朝鮮戦争 竹島沖大空海戦』
あさぎり型護衛艦さわぎり」に搭載されたものが、北朝鮮海軍潜水艦を攻撃する際に使用される[8]
レッド・ストーム作戦発動
主人公の1人の乗艦であるノックス級フリゲートファリス」に搭載されたものが、大西洋での船団護衛作戦中、ソ連海軍潜水艦に対して数度に渡って使用され、たびたび戦果をあげる。

ゲーム

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エースコンバット7
SP MISSION3にてオーシア海軍のイージス艦「シーガル」、駆逐艦「カナリー」、「クリーブ」、「ロースター」がアリコーンに向けて使用しバラストタンクを損傷させて浮上させるが、直後にアリコーンの反撃を受け「カナリー」と「シーガル」が沈没、「クリーブ」と「ロースター」は戦闘不能に追い込まれる。
warthunder
日本小型艦ツリーランクⅣのちくごに搭載されている

脚注

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注釈

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  1. ^ 1番艦-5番艦まで
  2. ^ FRAM-I改装適用艦に後日装備
  3. ^ a b c 後日装備
  4. ^ DDG改装艦のみ後日装備
  5. ^ 対潜強化艦及びDDG改装艦にのみ後日装備
  6. ^ VLS搭載改装前
  7. ^ a b c d e f 旧米海軍ノックス級
  8. ^ IRE改修により後日装備
  9. ^ a b c d e f g h 旧米海軍ギアリング級
  10. ^ a b 旧米海軍ガーシア級

出典

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  1. ^ a b c 梅野 1983.
  2. ^ a b c Friedman 2004, pp. 278–290.
  3. ^ a b 香田 2015, pp. 74–75.
  4. ^ a b c d Friedman 1997, pp. 667–668.
  5. ^ 防衛庁 (1974年7月22日). “制式要綱 74式アスロックランチャ B5003”. 2004年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年11月6日閲覧。
  6. ^ なぜ進まぬ迎撃魚雷の実用化2024年7月18日
  7. ^ 128頁など
  8. ^ 224頁

参考文献

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  • Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 978-1557502681 
  • Friedman, Norman (2004). U.S. Destroyers: An Illustrated Design History, Revised Edition. Naval Institute Press. ISBN 978-1557504425 
  • 香田, 洋二「国産護衛艦建造の歩み」『世界の艦船』第827号、海人社、2015年12月、NAID 40020655404 
  • 梅野, 和夫「水雷兵器」『丸スペシャル』第76号、潮書房、1983年、6-9頁。 

関連項目

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外部リンク

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