AN/SQS-23
「キアサージ」のバウ・ドーム。 | |
種別 | スキャニング・ソナー |
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用途 | マルチモード |
開発・運用史 | |
開発国 | アメリカ合衆国 |
就役年 | 1958年 |
製造数 | 197基 |
送振系 | |
周波数 | 低周波数(4.5/5.0/5.5 kHz) |
音源レベル | 244デシベル |
音響出力 | 60 kW |
パルス幅 | 5/30/120ミリ秒 |
パルス繰返数 | 150ヘルツ |
ビーム幅 | 9.25 ° × 9.25 ° |
送振方向 | 全周無制限 |
送受波器系 | |
送受波器方式 | チタン酸バリウム製圧電素子 |
装備方式 | 円筒形アレイ |
ステーブ数 | 48本 (送受波器 各9個) |
アレイ径 | 2.5メートル |
探知性能・その他諸元 | |
探知距離 |
理論: 40,000ヤード (37 km) 有効: 15,000ヤード (14 km) |
AN/SQS-23は、アメリカ合衆国のサンガモ社が開発した軍用ソナー。5キロヘルツ級の低周波を使用し、また捜索と攻撃用精密追尾の両機能を有するマルチモード・ソナーである[1]。
概要
[編集]1950年代末、アメリカ海軍では、新世代の対潜兵器としてアスロック対潜ミサイルの開発を進めていた。これは最大射程10,000ヤード (9.1 km)と、従来の対潜前投兵器を凌駕する長射程を備えていたが、一方、当時最新のソナーであったAN/SQS-4でも探知距離4,600メートル級であり、より長距離で目標を捜索・捕捉できるソナーが必要とされた。これに応じて、AN/SQS-29(AN/SQS-4 mod.1改良型、8キロヘルツ級)を発展させるかたちで開発されたのが本機である[1][2]。
低周波化のため、本機では直径100インチ(約2.5メートル)と大型のTR-208送振機を採用している。AN/SQS-4では直径1.5メートルであったことから、これはかなりの大型化であった[1]。マルチモード・ソナーとして、本機には下記の4つの動作モードがあった。
原型機のAN/SQS-23は5 kHzの単一周波数であったが、-23Aでは、複数艦の同時運用を想定して、発振周波数を5 kHzを中心に3段階に切り替えられる(4.5/5.0/5.5 kHz)ようにしている。また初期のスキャニング・ソナーでは、近距離の目標に対して俯角を取れなかったために、攻撃用のサーチライト・ソナーを併載する必要があったが、本機では発振ビームの垂直面での角度変更に対応することで、近距離探知性能を向上している。また、整備用のテスト回路の組み込みや、停泊時訓練用の擬似目標発生装置との連接など、整備・訓練面の機能も向上した[1][2]。
本機は、TRAMと称される連続的な改良を受けており、複数のバージョンが存在する。また後には、ソリッドステート化するとともにパッシブ戦対応能力を増強したものとして、AN/SQQ-23 PAIR(Performance And Integration Refit)が開発された。最初に開発されたAN/SQQ-23Aは、パッシブ戦用の2つめのソナードームを有しており、1971年度より試験に入り、1973年より就役した。またその後、ソナードームを1つとしたAN/SQQ-23Bも開発された[2]。
しかしソ連海軍潜水艦戦力の拡充もあり、本機実用化の5年後には、より大型でより低周波を使用できるAN/SQS-26が開発され[脚注 3]、新造艦への搭載はこちらに切り替えられた。ただしAN/SQS-4など旧式機との換装には、本機が引き続き用いられた。また日本の海上自衛隊においては、第2次防衛力整備計画初期の護衛艦で本機が導入されたのち、昭和40年度計画艦以降では、その技術資料も参考に国産開発していた66式探信儀OQS-3に切り替えられた[4]。
搭載艦
[編集]- 航空母艦
- キティホーク級航空母艦「アメリカ」(後日撤去)
- エセックス級対潜空母
- DL/DLG/CG/CGN
- 嚮導駆逐艦「ノーフォーク」(後日装備)
- ミッチャー級駆逐艦(後日装備)
- ファラガット級ミサイル駆逐艦
- オールバニ級ミサイル巡洋艦
- 原子力ミサイル巡洋艦「ロングビーチ」
- リーヒ級ミサイル巡洋艦
- 原子力ミサイル巡洋艦「ベインブリッジ」
- DE/DD/DDG
- アレン・M・サムナー級駆逐艦(FRAM改修艦が後日装備)
- ギアリング級駆逐艦(FRAM改修艦が後日装備)
- ディーレイ級護衛駆逐艦(後日装備)
- フォレスト・シャーマン級駆逐艦(後日装備)
- チャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦
- リュッチェンス級駆逐艦(後日DSQS-21に換装)
- インパヴィド級駆逐艦
- ヘリコプター巡洋艦「ヴィットリオ・ヴェネト」
脚注
[編集]- ^ RDT(Rotating Directional Transmission): 音響ビームを旋回、ないしその方向を適宜変化させながら送信すること[3]。
- ^ SDT(Steering Directional Transmission): 音響ビームを任意の一方向にむけて送信すること[3]。
- ^ ゼネラル・エレクトリック社・EDO社の共同開発による。
参考文献
[編集]- ^ a b c d 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み(第10回) 2次防艦に関わる外国製新装備」『世界の艦船』第785号、海人社、2013年10月、104-110頁、NAID 40019789703。
- ^ a b c Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. ISBN 9781557502629
- ^ a b 防衛庁 (2000年3月6日). “水中音響用語-機器” (PDF). 2014年1月1日閲覧。
- ^ 香田洋二「国産護衛艦建造の歩み(第11回) 2次防その3「たかつき」型/国産新装備」『世界の艦船』第787号、海人社、2013年11月、152-159頁、NAID 40019810632。