2012年のFIA GT1世界選手権
2012年のFIA GT1世界選手権 | |||
前年: | 2011 | 翌年: | 2013 |
2012年のFIA GT1世界選手権は、FIA GT1世界選手権の3年目のシーズン。2012年シーズンは、前2シーズンのGT1レギュレーションに代わってGT3レギュレーションで争われた。選手権はドライバーズタイトルとチームタイトルが懸けられた[1]。前年度チャンピオンチームのエクシス AMRはエクシス・レーシングと名前を変えて継続参戦した一方、ドライバーズチャンピオンのミハエル・クルムとルーカス・ルーアは他カテゴリーへの参戦となった。
シリーズはフランスのノガロ・サーキットで4月6日に開幕し、イギリスのドニントン・パークで9月29日に閉幕した。全9戦中ロシアとスロバキアの2戦が新たに開催された。開幕戦では6つのマニファクチャラーと7つの新規参入チームがデビューを果たした。
開催カレンダー
[編集]SROグループのCEO、ステファン・ラテルは前年シーズン中に2012年のカレンダーはヨーロッパラウンドと同様にブラジル、アルゼンチン、アラブ首長国連邦でのレースが開催されると述べている。ラテルはまた、彼の考えではヨーロッパラウンドは最大4戦、これにオーストラリア、北米、ロシアでのレース追加の可能性も協議されていると語った[2]。2011年最終戦でラテルは2012年シーズンは、前2シーズンの開幕戦であったアブダビのヤス・マリーナ・サーキットに代わってフランスのノガロで開幕することを確認した[3]。アブダビラウンドはカレンダーから外れ、同様にシルバーストンとザクセンリンクも外れることとなった。ポール・リカール・サーキットも外れ、代わってノガロ・サーキットで開催されることとなった。モスクワ・レースウェイで開催されるイベントは、ロシアで開催される初のメジャー・モータースポーツ・イベントとなる。また、最終戦はアルゼンチンのサンルイスからインドのブッダ・インターナショナル・サーキットで開催されることとなった[4]。
シーズン開幕の一週間前、SROは更にカレンダーの改訂を行った。ザントフォールトとサンルイスがカレンダーから外れ、6月にスロバキアのアウトードロモ・スロバキア・リンク、9月に韓国の韓国インターナショナルサーキットでのレースが開催されることとなった。ロシアラウンドの日程は変更となり、当初より2週間遅れで開催されることとなった[5]。韓国でのレースは後にカレンダーから外れ、代替イベントが考慮された。7月1日、中国での2戦がキャンセルとなる[6]。7月27日にSROはキャンセルされた中国での2戦に代えて、ヨーロッパでのイベント:8月にスロバキアリンク、9月にニュルブルクリンクでのレースが開催されると発表した[7]。また、モスクワとニュルブルクリンクではGT1世界選手権とGT3ヨーロッパ選手権が同時に開催されることとなった。
ラウンド | 開催国 | サーキット | 開催日 |
---|---|---|---|
1 | フランス | ノガロ・サーキット | 4月9日 |
2 | ベルギー | ゾルダー・サーキット | 4月22日 |
3 | スペイン | ナバラ・サーキット | 5月27日 |
4 | スロバキア | アウトードロモ・スロバキア・リンク | 6月10日 |
5 | ポルトガル | アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェ | 7月8日 |
6 | スロバキア | アウトードロモ・スロバキア・リンク | 8月19日 |
7 | ロシア | モスクワ・レースウェイ | 9月2日[8] |
8 | ドイツ | ニュルブルクリンク | 9月23日 |
9 | イギリス | ドニントン・パーク | 9月30日 |
エントリー
[編集]レギュレーション
[編集]より多くのメーカーが選手権に参加できるようにするため、SROグループとFIA世界モータースポーツ協議会は新しいレギュレーションを工夫し、様々なクラスの車両が一つの選手権を争い混走するのを許容した。新カテゴリーはGTワールドと呼ばれ、2011年のGT1規定とGT3規定およびそれらとバランスが取れるように改訂された2009年のGT2規定車両が混走することとなった[9]。
SRO、FIAおよびチームオーナーは更なるミーティングの後、GTワールドからGT2車両を排除することと、GT3カテゴリーから規則を採用することに合意した。GT3車両は新たなGTワールド規定の仕様にアップグレードされることとなり、GT1車両はGTワールド仕様に性能を並べることとした。性能の均等化の過程として、GT3車両は最高速度を向上させるためカーボンブレーキの使用が許可され、排気騒音レベルの制限も抑えられた。GT3で許可されていたアンチロックブレーキもGTワールド規定で採用された。前2シーズンでは全ての車両がシーズン中に性能レベルを均等化させるためパフォーマンスのバランス変更が行われたが、GTワールドでも同様に行われることとなった[10]。
2011年のFIA世界モータースポーツ協議会の最終ミーティングで、FIAとSRO、チームオーナー、マニファクチャラーは選手権の機構に関して、2012年シーズンは既存のGT1車両の数が十分でない場合GT3車両のみで運営することに同意した[11][12]。結局は1クラスのみでの運営となったため、GT3車両のために提案された性能アップグレード方策の大半は、排気騒音レベルと性能バランス調整のみを残して廃棄された。シリーズはまたタイヤを変更し、ミシュランに代わってピレリが供給することとなった[13]。また、シリーズはGT3車両によって争われることとなったが、FIA GT世界選手権に改名するという案も廃案となった。
チームおよびマニファクチャラー
[編集]新たなGTワールド・レギュレーションの一部として、前年までマニファクチャラーはその支援しなければならないプライベイターチーム数が2と規定されていたが、これが1に減少した。これによって前年まで5つだったマニファクチャラーが10以上に増加することとなった。2011年7月に実施されたスパ24時間レースでステファン・ラテルは、2012年シーズンは7つのチームとマニファクチャラーが参加し、いくつかのチームが継続参戦すると発表した。この中にはヤングドライバー AMR、ミュニッヒ・モータースポーツ、JRモータースポーツ、マルクVDS、ベルジャン・レーシングが含まれていた。しかしながら、マルクVDSとベルジャン・レーシングは後にブランパン耐久シリーズに集中するため本シリーズから撤退することとなった[14]。また、ヤングドライバー AMRもADAC GTマスターズに転向した[15]。JRモータースポーツとスモウ・パワーはFIA 世界耐久選手権に転向し本シリーズから撤退した[16]。2011年シーズンのチャンピオン、エクシス・レーシングは後にマクラーレンとジョイントしてシリーズへの参戦を発表、ミュニッヒはメルセデス・ベンツを使用することとなった。
2012年シーズンの新しいエントリーは、2010年シーズンのチャンピオンチーム、Vita4One レーシングがBMWのサポートを受けてマルクVDSに代わって復帰、また同シーズンに参加していたロイター・エンジニアリングもランボルギーニのサポートを受けて復帰する。GT3ヨーロッパ選手権に参加していたチーム WRTがGT1に転向、アウディのサポートを受け参戦、かつてタイトルを獲得したこともあるAFコルセもフェラーリのサポートを受けて復帰する[17]。グリッド数は後に18台に拡大され、エグジム・バンク・チーム・チャイナはベルギーのポルシェ使用チーム、ミュールナー・モータースポーツの支援を受けて継続参加することとなり、またヴァルモン・レーシングチーム・ロシアはアストンマーティンのサポートを、スペインのツーリングカーチーム、サンレッド・エンジニアリングはフォードのサポートを受けて参加することとなった[18]。前年度参加していた日産とシボレーは2012年シーズンからは撤退することとなった。
ドライバー
[編集]2011年から継続して参加するドライバーは、ディフェンディングチャンピオンチームのエクシス・レーシングではステフ・デュッセルドルプがチームに留まるが、マルクVDSからフレデリック・マコヴィッキィが移籍した。GT3に参戦していたグレゴリー・ドゥムースティエと、マクラーレンのテストドライバーであったアルヴァロ・パレンテも加入した。ミュニッヒ・モータースポーツはオーナーのマルク・バッセンと、そのペアのマルクス・ヴィンケルホックは継続、ニッキー・パストレッリも継続参戦であるが、パストレッリのペアとしてメルセデスのファクトリードライバーであるトーマス・イェーガーが加入した。
2010年シーズンに参戦していたチームがもう2つ復帰し、それらは以前のドライバーの何名かをそのまま起用した。ロイター・エンジニアリングはスイス・レーシングチームの協力を受け復帰し、香港のドライバー、ダリル・オーヤンが新規に参戦、2010年シーズンにヤングドライバー AMRからランキング4位を得たトーマス・エンゲと、ドイツ人ドライバーアルベルト・プリンツ・フォン・トゥルン・ウント・タクシスが加入した。2010年シーズンのチャンピオンチーム、Vita4Oneは2010年のドライバーズチャンピオンかつチームオーナーのミハエル・バルテルスがオランダ人ドライバー、イェルマー・バーマンをペアとして参戦、バーマンは前年はエグジム・バンク チーム・チャイナで2勝を挙げている。また、2名のオーストリア人ドライバー、ニコラウス・メイヤー=メルンホフと、ニキ・ラウダの息子のマティアス・ラウダも同チームから参戦する。新規参入チームのAFコルセはGT2に参戦していたフィンランド人ドライバーのトニ・バイランダー、ペアとしてフォーミュラ・ルノーに参戦していたフィリップ・サラカルダを起用した。また、GT3のチャンピオンであるフランチェスコ・カステラッチと同シリーズに参戦していたエンツォ・イデも起用した。
チームWRTのドライバー4名は全員がFIA GT1世界選手権に初参戦となる。フランス人ドライバーのステファン・オルテリはフォーミュラ3・ユーロシリーズに参戦していたローレンス・ヴァントールをペアを組み、アウディのファクトリードライバー、オリバー・ジャービスとフランク・スティップラーがペアを組む。エグジム・バンク・チーム・チャイナはF2ドライバーであったベンジャミン・ラリシェが、シリーズ史上2人目となる中国人ドライバーのレン・ウェイとペアを組む。また、GT3チャンピオンのマイク・パリジーはポルシェ・スーパーカップのドライバー、ニュージーランド人のマット・ハリディとペアを組む。ヴァルモン・レーシングチーム・ロシアはロシア人ドライバーのセルゲイ・アファナーシェフとアレクシー・バジレヴを起用した。元F1ドライバーのアントニオ・ピッツォニアがバジレヴと組む予定であったが、ノガロでのレースの直前に元GT1勝者のマキシム・マルタンに変更となった。2年間のシリーズ経験を持つアンドレアス・ツバーがアファナーシェフとペアを組む。サンレッド・エンジニアリングは経験豊富なセルビア人ドライバー、ミロス・パブロヴィッチとF2に参戦していたアンディ・ソウセック、セカンドカードライバーとしてマッテオ・クレッソーニとエマニュエル・モンシーニを起用する予定であった。しかしながら11番車はノガロに間に合わず撤退することとなり、チームはドライバーラインナップを変更、パブロヴィッチとクレッソーニがペアを組み、セカンドカーはソウセックとモンシーニがドライブすることとなった。
エントリーリスト
[編集]- 全チームがピレリタイヤを使用。
レース結果
[編集]ラウンド | サーキット | ポールポジション | 予選レース優勝者 | 決勝レース優勝者 | レポート |
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1 | ノガロ | No. 3 AFコルセ | No. 32 ベルジャン・アウディ・クラブチーム WRT | No. 32 ベルジャン・アウディ・クラブチーム WRT | 詳細 |
トニ・バイランダー フィリップ・サラカルダ |
ステファン・オルテリ ローレンス・ヴァントール |
ステファン・オルテリ ローレンス・ヴァントール | |||
2 | ゾルダー | No. 9 エグジム・バンク チーム・チャイナ | No. 18 Vita4One レーシングチーム | No. 9 エグジム・バンク チーム・チャイナ | 詳細 |
マット・ハリディ マイク・パリジー |
ミハエル・バルテルス イェルマー・バーマン |
マット・ハリディ マイク・パリジー | |||
3 | ナバラ | No. 25 ロイター・エンジニアリング | No. 1 エクシス・レーシング | No. 1 エクシス・レーシング | 詳細 |
ピーター・コックス ダリル・オーヤン |
フレデリック・マコヴィッキィ ステフ・デュッセルドルプ |
フレデリック・マコヴィッキィ ステフ・デュッセルドルプ | |||
4 | スロバキア・リンク | No. 1 エクシス・レーシング | No. 3 AFコルセ | No. 18 Vita4One レーシングチーム | 詳細 |
フレデリック・マコヴィッキィ ステフ・デュッセルドルプ |
フィリップ・サラカルダ トニ・バイランダー |
ミハエル・バルテルス イェルマー・バーマン | |||
5 | アルガルヴェ | No. 3 AFコルセ | No. 38 All-Inkl.com ミュニッヒ・モータースポーツ | No. 37 All-Inkl.com ミュニッヒ・モータースポーツ | 詳細 |
トニ・バイランダー フィリップ・サラカルダ |
マルク・バッセン マルクス・ヴィンケルホック |
トーマス・イェーガー ニッキー・パストレッリ | |||
6 | スロバキア・リンク | No. 18 Vita4One レーシングチーム | No. 18 Vita4One レーシングチーム | No. 18 Vita4One レーシングチーム | 詳細 |
ミハエル・バルテルス イェルマー・バーマン |
ミハエル・バルテルス イェルマー・バーマン |
ミハエル・バルテルス イェルマー・バーマン | |||
7 | モスクワ | No. 2 エクシス・レーシング | No. 32 ベルジャン・アウディ・クラブチーム WRT | No. 1 エクシス・レーシング | 詳細 |
アルバロ・パレンテ グレゴリー・ドゥムースティエ |
ステファン・オルテリ ローレンス・ヴァントール |
フレデリック・マコヴィッキィ ステフ・デュッセルドルプ | |||
8 | ニュルブルクリンク | No. 1 エクシス・レーシング | No. 25 ロイター・エンジニアリング | No. 3 AFコルセ | 詳細 |
フレデリック・マコヴィッキィ ステフ・デュッセルドルプ |
ピーター・コックス ステファン・ロジーナ |
トニ・バイランダー フィリップ・サラカルダ | |||
9 | ドニントン・パーク | No. 32 ベルジャン・アウディ・クラブチーム WRT | No. 1 エクシス・レーシング | No. 1 エクシス・レーシング | 詳細 |
アダム・キャロル ローレンス・ヴァントール |
フレデリック・マコヴィッキィ ステフ・デュッセルドルプ |
フレデリック・マコヴィッキィ ステフ・デュッセルドルプ |
ランキング
[編集]ポイントは予選レースでのトップ6、決勝レースでのトップ10に与えられた。優勝者の走行距離の75%以上を走行しないと予選通過およびポイントは与えられない。個々のドライバーはそれぞれのレースで最低25分をドライブしないとポイントは与えられない。
ポイントシステム | ||||||||||
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レース種別 | 順位 | |||||||||
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 | |
予選レース | 8 | 6 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
決勝レース | 25 | 18 | 15 | 12 | 10 | 8 | 6 | 4 | 2 | 1 |
ドライバーズランキング
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チームズランキング
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参照
[編集]- ^ 2012 Sporting Regulations - FIA GT1 World Championship Retrieved on 30 July 2012
- ^ a b c “Revamped 2012 season plans take shape”. FIA GT1 World Championship. SRO Group (30 July 2011). 24 November 2011閲覧。
- ^ Foubert, Claude (9 November 2011). “Le Championnat du Monde GT 2012 debutera a Nogaro” [GT World Championship 2012 will begin at Nogaro] (French). endurance-info.com. Endurance-Info. 24 November 2011閲覧。
- ^ “India to host 2012 season finale”. FIA GT1 World Championship (SRO Group). (13 February 2012) 13 February 2012閲覧。
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- ^ “Stephane Ratel reveals bold vision for SRO-promoted series”. gt1world.com. SRO Group (2012年7月27日). 2012年7月27日閲覧。
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- ^ “GT1, GT2, GT3 combined into new ‘World GT’ class”. Racecar Engineering. Chelsea Magazine Ltd (6 June 2011). 12 March 2012閲覧。
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- ^ “GT: Marc VDS Shifts Focus To Blancpain For 2012”. speedtv.com. Speed Channel (12 10月20日11). 24 November 2011閲覧。
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- ^ “All set for Slovakia showdown”. FIA GT1 World Championship (Stephane Ratel Organisation). (4 June 2012) 5 June 2012閲覧. "Local fans will no doubt follow closely the fortunes of Slovakia’s Stefan Rosina who will line up in the No.25 Reiter Engineering Lamborghini this weekend at Slovakia Ring, replacing Peter Kox. Rosina last raced in the FIA GT1 World Championship in Brno in 2010."
- ^ a b “Audi R8 LMS ultra to fight for World Champion’s title in 2012”. Audi Media (アウディ). (20 December 2011) 20 December 2011閲覧。
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