重根(じゅうこん、英: multiple root)とは、1変数多項式 の根のうち重複度が2以上のもののことをいう。
1 変数多項式 が、定数 , , , …, を用いて
の形に因数分解され、, , …, の中に 2 つ以上同じ値がある場合、その値を の重根という。
方程式 の解は一般に
つまり xy-座標系において と x 軸との交点の x 座標である。 が1変数多項式のとき、 が で x 軸に接するなら、は の重根となる。
したがって は における微分も 0 となり、 が の重根であることと
であることは同値である。
体 K 上の多項式 と K の元 に対し、 が成立するとき、すなわち 2 以上の自然数 と多項式 で
を満たすものが存在するとき、 を の重根という。特に が を根に持たないならば、 を根 の重複度(ちょうふくど、multiplicity)という。
多項式 の根を , , …, とし、その全体から作られる最簡交代式(差積)の平方
を多項式 あるいは方程式 の判別式(はんべつしき、discriminant)という。
これは「代数方程式が重根を持つかどうか」 を判別するための式である。すなわち、判別式が であることとその代数方程式が重根を持つこととが同値となる。このことは判別式を差積に取り替えても変わらない。にもかかわらず差積の平方を判別式とするのは、それが方程式の係数によって必ず記述できるからである。
これは、
- 差積の平方が根に関する対称式となること
- 対称式が基本対称式で表すことができること
- 根の基本対称式が方程式の係数によって記述されること(根と係数の関係)
によって保証される。
たとえば、二次方程式 () の根を , とすると、根と係数の関係により
が成り立ち、判別式すなわち差積の二乗は
となる。より であるので、実用上は分母を掃った を判別式として用いることが多い。