花田達朗
花田 達朗(はなだ たつろう、1947年 - )は、日本の社会学者。早稲田大学名誉教授。東京大学名誉教授。専門は社会学、メディア研究、ジャーナリズム研究。
来歴
[編集]1947年長崎県生まれ。千葉県立千葉高等学校卒業。1971年3月早稲田大学第一政治経済学部政治学科卒業。1980年7月ミュンヘン大学哲学部コミュニケーション学(新聞学)修士課程修了、1986年ミュンヘン大学大学院博士課程満期退学。
1975年に当時の西ドイツに移住し、1986年に帰国。
1986年財団法人電気通信総合研究所(翌年改称)研究員、1987年財団法人電気通信政策総合研究所[注釈 1] 主任研究員を経て、1989年創価大学文学部社会学科助教授。
1992年4月東京大学社会情報研究所(旧新聞研究所)助教授、1995年4月同教授を経て、2003年4月同研究所所長に就任。社会情報研究所から大学院情報学環への改組により、2004年4月同教授、学環長に就任。2006年3月東京大学を退職。2006年4月早稲田大学教育・総合科学学術院教授に就任し、2018年3月同大学を定年退職。
この間、公共圏論、メディアの制度論と空間論などの研究のほか、早稲田大学では2007年より早稲田大学ジャーナリズム教育研究所所長として学部学生向けジャーナリスト養成教育の仕組み「全学共通副専攻・ジャーナリズムコース」を設置し、運用した。2015年に早稲田大学ジャーナリズム研究所を設立し、所長を務め、研究所のプロジェクトとして大学発の探査ジャーナリズム・ニュース組織「ワセダクロニクル」の立ち上げに立ち会った。
2006年から2013年まで石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞の選考委員を務めるとともに、同ジャーナリズム大賞の記念講座「報道が社会を変える」を担当し、授業運営に当たるとともに授業の成果物として書籍4冊を編集・出版した(「編著」の項を参照)。
早稲田大学退職後は、2018年2月に大学から独立して特定非営利活動法人となった「ワセダクロニクル」(2021年3月、Tokyo Investigative Newsroom Tansaと名称を変更)の国際アドバイザリーボードの一員を務めている。
2018年の早稲田大学退職とほぼ同時に、著作集となる「花田達朗ジャーナリズムコレクション」全6巻の刊行を開始し、2023年に完結を迎えた(「単著」の項を参照)。第1巻から第5巻に5回に分けて「年譜」が掲載されている。また、各巻には次の執筆者が「解説」を寄せている。
第1巻: マーティン・ファクラー(ニューヨークタイムズ、アシスタント・アジア・エディター)、大石泰彦(青山学院大学法学部教授)
第2巻: ゲルト・コッパー(ドイツ・ドルトムントTU大学名誉教授、欧州ジャーナリズムセンター初代理事長)、西土彰一郎(成城大学法学部教授)
第3巻: 佐藤健二(東京大学大学院人文社会系研究科教授)、東島誠(立命館大学文学部教授)
第4巻: 斉藤日出治(大阪産業大学元教授、大阪労働学校・アソシエ校長)、アルブレヒト・レスラー(ドイツ・ヘッセン州大学連合顧問弁護士)
第5巻: 藤田真文(法政大学社会学部メディア社会学科教授)
第6巻: 依光隆明(元高知新聞社会部長、元朝日新聞特別報道部長)、浅野良子(ブリティッシュ・カウンシル、元ブリティッシュ・スタディーズ・オッフィサー)、渡辺周(Tokyo Investigative Newsroom Tansa 編集長)
コミュニケーション、メディア、ジャーナリズム関係の海外の有力学術誌の編集委員を長年務めている。
International Advisory Board, new media & society, Sage Publications, from 1999 until 2007.
Editorial Board, Journalism Studies, Routledge/Tayler & Francis, from 2000 until present.
Editorial Board, javnost/the public, Journal of the European Institute for Communication and Culture, University of Ljubljana, from 2007 until present.
職歴
[編集]- 1978年ー1982年 (社)ミュンヘン・コミュニケーション共同研究所(AfK)研究員
- 1986年7月ー1987年3月 (財)電気通信総合研究所(1987年2月、電気通信政策総合研究所と改称)研究員
- 1987年4月ー1989年3月 (財)電気通信政策総合研究所主任研究員
- 1989年4月ー1992年3月 創価大学文学部社会学科助教授
- 1992年4月ー1995年3月 東京大学新聞研究所(1992年4月10日、社会情報研究所と改称)助教授
- 1995年4月ー2004年3月 東京大学社会情報研究所教授
- 2003年4月ー2004年3月 東京大学社会情報研究所長
- 2004年4月ー2006年3月 東京大学大学院情報学環教授、情報学環長、学際情報学府長
- 2006年4月ー2018年3月 早稲田大学教育・総合科学学術院教授
受賞歴
[編集]主な著作
[編集]単著
[編集]- 公共圏という名の社会空間(木鐸社、1996年)
- メディアと公共圏のポリティクス(東京大学出版会、1999年)
- 花田達朗ジャーナリズムコレクション・第1巻・ジャーナリズムの実践―主体・活動と倫理・教育 1 (1994-2010年)―(彩流社、2018年)
- 花田達朗ジャーナリズムコレクション・第2巻・ジャーナリズムの実践―主体・活動と倫理・教育 2 (2011-2017年)―(彩流社、2018年)
- 花田達朗ジャーナリズムコレクション・第3巻・公共圏―市民社会再定義のために―(彩流社、2020年)
- 花田達朗ジャーナリズムコレクション・第4巻・メディアの制度論と空間論―両義性の葛藤―(彩流社、2021年)
- 花田達朗ジャーナリズムコレクション・第5巻・テレコム・ポリシーとテクノロジー―1980年代と新自由主義―(彩流社、2022年)
- 花田達朗ジャーナリズムコレクション・第6巻・公共圏の実践―時評と定義―(彩流社、2023年)
編著
[編集]- (コーディネーター花田達朗)「個」としてのジャーナリスト(早稲田大学出版部、2008年)
- (コーディネーター花田達朗)「可視化」のジャーナリスト(早稲田大学出版部、2009年)
- (コーディネーター花田達朗)「境界」に立つジャーナリスト(早稲田大学出版部、2010年)
- (コーディネーター花田達朗)「対話」のジャーナリスト(早稲田大学出版部、2011年)
- (早稲田大学ジャーナリズム教育研究所・公益財団法人放送番組センター編)放送番組で読み解く社会的記憶―ジャーナリズム・リテラシー教育への活用―(日外アソシエーツ、2012年)
- (早稲田大学ジャーナリズム教育研究所編)エンサイクロペディア現代ジャーナリズム(早稲田大学出版部、2013年)
- (早稲田大学ジャーナリズム教育研究所編)レクチャー現代ジャーナリズム(早稲田大学出版部、2013年)
- (花田達朗編)内部的メディアの自由―研究者・石川明の遺産とその継承―(日本評論社、2013年)
- (早稲田大学ジャーナリズム研究所編)日本の現場―地方紙で読む 2016―(早稲田大学出版部、2016年)
共編著
[編集]- (花田達朗・吉見俊哉・コリン・スパークス編)カルチュラル・スタディーズとの対話(新曜社、1999年)
- (花田達朗・広井脩編)論争 いま、ジャーナリスト教育(東京大学出版会、2003年)
- (吉見俊哉・花田達朗編)社会情報学ハンドブック(東京大学出版会、2004年)
- (花田達朗+教育学部花田ゼミ編)新聞は大震災を正しく伝えたか―学生たちの紙面分析―(早稲田大学出版部、2012年)
- (花田達朗・高田昌幸・清水真編)日本の現場―地方紙で読む 2012―(旬報社、2012年)
- (編集委員会+鎌田慧・花田達朗・森まゆみ編)いいがかりー原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走ー(七つ森書館、2015年)
- (渡辺周・花田達朗・ワセダクロニクル編)始動! 調査報道ジャーナリズム―「会社」メディアよ、さようなら― (彩流社、2017年)
- (渡辺周・花田達朗・大矢英代・ワセダクロニクル編)市民とつくる調査報道ジャーナリズム―「広島東洋カープ」をめざすニュース組織― (彩流社、2017年)
- (渡辺周・花田達朗・金黙敬・野中章弘・加地紗弥香・ワセダクロニクル編)探査ジャーナリズムとNGOとの協働 (彩流社、2017年)
- (花田達朗・スティーブン・バトラー・渡辺周・木村英昭・ワセダクロニクル編)探査ジャーナリズム/調査報道―アジアで台頭する非営利ニュース組織―(彩流社、2018年)
- Tatsuro Hanada and Makoto Watanabe (eds.) The Emerging Investigative Journalism Movement in Japan and Asia, Waseda Chronicle, 2020.
共著
[編集]- (高橋洋文編)テレコム(日本経済新聞社、1987年)
- (林進編)コミュンケーション論(有斐閣、1988年)
- (林利隆ほか)メディアの現在形(新曜社、1993年)
- システムと生活世界(岩波講座『社会科学の方法』第8巻)(岩波書店、1993年)
- (東京大学社会情報研究所編)放送制度論のパラダイム(東京大学出版会、1994年)
- (東京大学社会情報研究所編)社会情報と情報環境(東京大学出版会、1994年)
- メディアと情報化の社会学(岩波講座『現代社会学』22巻)(岩波書店、1996年)
- 情報と法(岩波講座『現代の法』第10巻)(岩波書店、1997年)
- 法と情報(石村善治先生古稀記念論集)(信山社、1997年)
- (歴史と方法編集委員会編)都市と言語(叢書『歴史と方法』第2巻)(青木書店、1998年)
- 日本思想の地平と水脈(河原宏教授古稀記念論文集)(ぺりかん社、1998年)
- デザイン・テクノロジー・市場(『情報社会の文化』第3巻)(東京大学出版会、1998年)
- 国際化時代の教育(岩波講座『現代の教育・危機と改革』第11巻)(岩波書店、1998年)
- (東京大学社会情報研究所編)社会情報学 II メディア(東京大学出版会、1999年)
- (柴山哲也編)日本のジャーナリズムとは何か―情報革命下で漂流する第四の権力―(ミネルヴァ書房、2004年)
- (花田達朗・別府三奈子・大塚一美・デービッド・E・カプラン)調査報道ジャーナリズムの挑戦ー市民社会と国際支援戦略―(旬報社、2016年)
- (農文協編)地方紙の眼力―改憲・安全保障・震災復興・原発・TPP・地方創生―(農村漁村文化協会、2017年)
- (大石泰彦編)ジャーナリズムなき国の、ジャーナリズム論(彩流社、2020年)
- (Mit Klaus Winckler) Kommerzielles Fernsehen in der Medienkonkurrenz; Japan - Fernsehdualismus und Medienkonzentration. Berlin: Wissenschaftsverlag Volker Spiess, 1984.
- Elixmann, D. & Neumann, K.-H. (eds.) Communications Policy in Europe. Berlin/Heidelberg, Germany: Springer Verlag, 1990.
- Wolfgang Pape (ed.) Models of Integration in Asia and Europe: Generating Public Space for Our Common Futures, Luxembourg: European Commission, 2001.
- Josef Ehmer, Helga Grebing und Peter Gutschner (Hrsg.) “Arbeit”: Geschichte - Gegenwart - Zukunft, (ITH-Tagungsberichte; Bd.36), Leipzig: Akademische Verlagsanstalt, 2002.
- JoséVidal Beneyto (ed.) LA VENTANA GLOBAL, Buenos Aires: Taunus, 2002.
- Andrew Calabrese and Colin Sparks (eds.) Toward a Political Economy of Culture – Capitalism and Communication in the Twenty-First Century, Lanham: Rowman & Littlefield Publishers, 2004.
- Hans Bohrmann, Elisabeth Klaus, Marcel Machill (eds.) Media Industry, Journalism Culture and Communication Policies in Europe, Köln: Herbert von Halem Verlag, 2007.
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 現在の一般財団法人マルチメディア振興センターにあたる。
出典
[編集]- ^ a b 「花田達朗教授 略歴・業績」『学術研究 : 人文科学・社会科学編』第66巻、早稲田大学教育・総合科学学術院教育会、2018年3月、352-355頁、CRID 1050001202470752896、hdl:2065/00056903、ISSN 2186-6996。
- ^ a b 『花田達朗ジャーナリズムコレクション・第1巻・ジャーナリズムの実践ー主体・活動と倫理・教育 1 (1994-2010年)』彩流社、2018年。奥付「著者プロフィール」を参照。