コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

中国稲荷山鋼索鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
稲荷山観光ケーブルから転送)
麓から見上げたケーブルカーの路線と車両
(「備中高松稲荷山 参拝記念繪葉書」の一枚)

中国稲荷山鋼索鉄道(ちゅうごくいなりやまこうさくてつどう)は、岡山県岡山市高松稲荷にある最上稲荷境内である龍王山を1944年昭和19年)まで走っていたケーブルカーである。

路線データ

[編集]
  • 路線距離(営業キロ):0.4km
  • 軌間:1067mm
  • 駅数:2駅(起終点駅含む)
  • 高低差:167m

車両

[編集]

歴史

[編集]

現在のJR西日本津山線吉備線を運営していた中国鉄道(現在の中鉄バス)の子会社の路線として、1929年(昭和4年)2月9日に、山下 - 奥ノ院間0.4kmが開業した。当時の中国地方では唯一のケーブルカー路線であった。所要時間は4分、運転間隔は20分毎であった。

太平洋戦争中に不要不急線に指定され、1944年(昭和19年)6月1日鉄材供出の名目で撤去され、廃止された。

戦後に復活計画が浮上し、1961年(昭和36年)に稲荷山観光ケーブルが設立され、同年7月11日に鉄道敷設免許を取得したが、1966年(昭和41年)11月10日に失効して実現しなかった。

  • 1925年(大正14年)8月29日:備中高松稲荷山鋼索鉄道に対し鉄道免許状下付[1]
  • 1927年(昭和2年)
    • 6月16日:稲荷山ケーブルカーへ社名変更届出[2]
    • 7月28日:稲荷山ケーブルカー株式会社設立[3][4]
  • 1929年(昭和4年)
    • 1月7日:中国稲荷山鋼索鉄道へ社名変更届出[5]
    • 2月9日:開業[6]
  • 1944年(昭和19年)6月1日:廃止

駅一覧

[編集]

山下駅 - 奥ノ院駅

節内の全座標を示した地図 - OSM
節内の全座標を出力 - KML

接続路線

[編集]
  • 山下駅:中国鉄道稲荷山線(稲荷山駅)

輸送・収支実績

[編集]
年度 乗客(人) 営業収入(円) 営業費(円) 益金(円) その他損金(円) 支払利子(円)
1929 194,460 22,378 16,388 5,990 260
1930 138,289 16,455 14,176 2,279 雑損1,836 311
1931 124,770 13,636 13,192 444 423
1932 104,953 11,728 11,090 638 償却金236 402
1933 108,781 11,967 11,152 815 償却金116 699
1934 100,942 11,553 11,173 380 327
1935 126,187 13,501 12,453 1,048 償却金847 254
1936 107,915 11,829 11,315 514 303 211
1937 125,941 13,290 11,630 1,660 償却金1,503 157
1939 127,714
1941 189,911
1943 報告書未着
  • 『鉄道統計資料』『鉄道統計』『国有鉄道陸運統計』各年度版

廃線跡の現状

[編集]

最上稲荷の本殿裏の右手を上がっていった場所に山下駅があったが、新本殿の建設に伴い山下駅跡地へ旧本殿(霊応殿)が移設されており、現在は当時の駅は跡形もない。奥の院への参道の入り口を入り、右に向かって行ったところにある直線の階段がケーブル跡。その脇には、当時の排水溝や路盤のコンクリート、さらによく探せばボルトが残っている。その先から路線跡はとても深い薮となっている。そこから元の奥の院への参道をしばらく登っていくと、参道右脇に石垣があるが、それが奥の院駅のホーム跡の一部である。そこから中に入っていくと、木こそ茂っているが乗降場や車両の巻上機の台座などが残っている。駅舎はホームを上がった一番上のところにあったという(奥の院駅前の広場。現在は使われていないが、ラジオ塔は、当時のまま今も残っている)。再び元の参道に戻り、さらに上に上がったところに奥の院への鳥居がある。ケーブルカーが運行していた時代には、奥の院駅前の広場には茶店などの店が数軒あった。

当時のケーブルカーの写真や資料などは、最上稲荷に保管されている[7]

脚注

[編集]
  1. ^ 「鉄道免許状下付」『官報』1925年9月3日国立国会図書館デジタルコレクション)
  2. ^ 『鉄道統計資料. 昭和2年 第3編 監督』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  3. ^ 『日本全国諸会社役員録. 第36回』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  4. ^ 『地方鉄道及軌道一覧 昭和10年4月1日現在』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  5. ^ 『鉄道統計資料. 昭和3年 第3編 監督』(国立国会図書館デジタルコレクション) 資料は新旧が逆に表示されている
  6. ^ 「地方鉄道運輸開始」『官報』1929年2月20日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  7. ^ “戦争で犠牲、岡山・稲荷山ケーブルの資料募る 最上稲荷が歴史保存に活用へ”. 山陽新聞サンデジ. (2020年8月3日). https://web.archive.org/web/20200804094909/https://www.sanyonews.jp/article/1037770/