直極点
幾何学において直極点(ちょっきょくてん、英:Orthopole)は、三角形と直線に対して定義される特別な点の一つである[1][2][3][4]。△ABCと直線lについて、A,B,Cからlに降ろした垂線の足をそれぞれA',B',C'とする。A',B',C'から△ABCの辺BC,CA,ABに降ろした垂線は一点で交わる。この点をlの直極点という[5][6][7]。例えば、オイラー線の直極点はジェラベク双曲線の中心、ブロカール軸の直極点はキーペルト双曲線の中心である。
直極点は多くの性質を持つために 、様々な文献の対象となっている[8][9]。特に、ある点を直極点とする直線や、直極円(orthopolar circle)と呼ばれる円が重要なテーマとなっている[10][11]。
性質
[編集]- 直線が平行に動くとき、その直極点は直線と等距離に動き、直線に垂直な直線を成す[12]。
- 三角形の辺の直極点は垂心である。
- 中心を反中点三角形の頂点とし直線に接する円の根心はその直線の直極点である[13]。
- 垂心を通る直線の直極点をその直線で鏡映した点は九点円上にある[13]。
- 四角形ABCDについて、4頂点のうち3点から成る4つの三角形に対する、直線の直極点は共線である。その線はOrthopolar Lineと呼ばれる[14]。
- 4本の直線から成る四角形、完全四辺形と直線lについて、4本の直線のうち3本の直線が成す三角形に対するlの直極点は共線である。さらにそれら直極点のlに対する垂足から残りの1本の直線へ降ろした垂線は共点である[15][16]。これをこの四角形に対するlの直極点という。
シムソン線との関係
[編集]円錐曲線との関係
[編集]任意の点Pを通る直線の直極点の軌跡は円錐曲線、特に楕円を成す[12][17][18]。この楕円はシュタイナーデルトイドと接する。楕円が線分に退化するときは、Pが外接円上にあるときである(掛谷集合も参照)。Pが外心であるとき、楕円は九点円となる。
ルモワーヌの定理
[編集]直極点をHとする直線上の任意の点Pの垂足円に対するHの方べきの値は一定である[19][20]。
一般化
[編集]直極点は対垂三角形の関係にある一方の三角形を退化させたもののorthology centerとしてみることができる[21]。このとき、もう一方のorthology centerは平行な垂線が交わる点、無限遠点となる。
また直極点は任意の角に対する一般化が可能である[22][23][24]。△ABCと直線lについて、AA',BB',CC'がlと有向角θを成すようにl上に点A',B',C'をとる。それぞれA',B',C'を通り、BC,CA,ABと有向角π-θを成す直線は一点で交わる。これを斜極点(Isopole)という[25]。
関連
[編集]出典
[編集]- ^ a b c Weisstein, Eric W.. “Orthopole” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年5月26日閲覧。
- ^ Goormaghtigh, R. (1939). “Analytic Treatment of Some Orthopole Theorems”. The American Mathematical Monthly 46 (5): 265–269. doi:10.2307/2303891. ISSN 0002-9890 .
- ^ “Orthopoles and the Pappus Theorem”. Forum Geometricorum. 2024年5月26日閲覧。
- ^ 『近世幾何学』岩波書店、1947年、131-132,134,138頁。doi:10.11501/1063410。
- ^ “Orthopoles, Flanks, and Vecten Points”. Forum Geometricorum. 2024年5月26日閲覧。
- ^ “Extended glossary”. faculty.evansville.edu. 2024年5月26日閲覧。
- ^ “Modern geometry; an elementary treatise on the geometry of the triangle and the circle” (英語). HathiTrust. 2024年5月26日閲覧。
- ^ “The Orthopole”. GeoGebra (21 January 2017). 2024年5月26日閲覧。
- ^ Ramler, O. J. (1930). “The Orthopole Loci of Some One-Parameter Systems of Lines Referred to a Fixed Triangle”. The American Mathematical Monthly 37 (3): 130–136. doi:10.2307/2299415. JSTOR 2299415.
- ^ Karl, Mary Cordia (1932). “The Projective Theory of Orthopoles”. The American Mathematical Monthly 39 (6): 327–338. doi:10.2307/2300757. JSTOR 2300757.
- ^ Goormaghtigh, R. (December 1946). “1936. The orthopole”. The Mathematical Gazette 30 (292): 293. doi:10.2307/3610737. JSTOR 3610737.
- ^ a b 『Episodes Nineteenth and Twentieth Centur Euclidean Geometry』Mathematical Association of America、1995年、125-136頁 。
- ^ a b Altshiller-Court, Nathan (1952). College geometry; an introduction to the modern geometry of the triangle and the circle. Internet Archive. New York, Barnes & Noble
- ^ Weisstein, Eric W.. “Orthopolar Line” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年5月26日閲覧。
- ^ 蛭子井博孝「直極点による卵形線の拡張としての多極多重曲線」『図学研究』第35巻第1号、日本図学会、2001年、2頁、doi:10.5989/jsgs.35.9、ISSN 03875512。
- ^ 蛭子井博孝「無限連鎖定理に関する考察」『図学研究』第33巻Supplement、日本図学会、1999年、103-106頁、doi:10.5989/jsgs.33.supplement_103、ISSN 0387-5512。
- ^ Lalescu, Traian; Lalesco, Trajan (1952) (フランス語). La géometrie du triangle. Librairie Vuibert
- ^ “Orthopole”. users.math.uoc.gr. 2024年5月26日閲覧。
- ^ Weisstein, Eric W.. “Lemoyne's Theorem” (英語). mathworld.wolfram.com. 2024年5月26日閲覧。
- ^ Gallatly, William (1910). The modern geometry of the triangle. Cornell University Library. London, F. Hodgson
- ^ Алексей Мякишев, г. Москва. “ПРОГУЛКИ ПО ОКРУЖНОСТЯМ: ОТ ЭЙЛЕРА ДО ТЕЙЛОРА”. 2024年5月26日閲覧。
- ^ Third, J. A. (1912/02). “Generalisation of the “Orthopole” and Allied Theorems” (英語). Proceedings of the Edinburgh Mathematical Society 31: 17–34. doi:10.1017/S0013091500034131. ISSN 1464-3839 .
- ^ Hsu, Chen-Jung; 許振榮 (1984). “On Orthopole Lines, Isopole Lines and Generalizations of Kantor's Theorem”. Chinese Journal of Mathematics 12 (3): 171–184. ISSN 0379-7570 .
- ^ P. S. Modenov (1981) (English). Problems In Geometry. pp. 94,149
- ^ 蛭子井博孝「Doval (デカルトの卵形線の内外分枝) のある一般化」『図学研究』第42巻Supplement1、日本図学会、2008年、171-172頁、doi:10.5989/jsgs.42.supplement1_171、ISSN 0387-5512。