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玉山級ドック型輸送揚陸艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
玉山級ドッグ型輸送揚陸艦
基本情報
艦種 ドック型輸送揚陸艦(LPD)
命名基準 台湾の山
建造所 台湾国際造船高雄造船所
運用者  中華民国海軍
建造費 46億3,576万新台湾ドル
建造期間 2019年-
就役期間 2023年-就役中
計画数 4隻
建造数 1隻
前級 旭海
要目
満載排水量 10,600トン[1]
全長 153m[1]
最大幅 23m[1]
吃水 5.8m[1]
主機 =MAN 16V28/33D STCディーゼル×4基[1]
推進器 2軸[1]
出力 5万3,641馬力[1]
最大速力 22.1ノット(24km/h)
巡航速力 21.5ノット(約40km/h)
航続距離
  • 12,500海里(23,200km)(13kt巡行時)
  • 7,000海里(13,000km)(21kt巡行時)
搭載能力
  • LCU×4隻およびLCM×1隻(定数)[1]
  • AAV7水陸両用装甲車×32台(最大)
  • 乗員
  • 個艦要員:190名
  • 上陸部隊:250名+予備人員233名[1]
  • 兵装
  • 76mm速射砲×1基[1]
  • ファランクス 20mmCIWS×1基[1]
  • 海劍二型SAM 8連装発射機×4基[1]
  • T-75 20mm機関砲×2基[1]
  • 搭載機 UH-60MまたはS-70Cヘリコプター×2機[1]
    C4ISR
    レーダー
  • CS/SPS-1対水上捜索用
  • CS/SPS-2B 対空捜索用
  • CS/SPG-6N(T) 火器管制用
  • 電子戦
    対抗手段
  • CS/SWR-6電波探知装置
  • Mk 36デコイ発射機×2[1]
  • テンプレートを表示

    玉山級ドック型輸送揚陸艦(ぎょくざんきゅうドックがたゆそうようりくかん、中国語:玉山級船塢運輸艦)は、中華民国海軍ドック型輸送揚陸艦(LPD)の艦級である。

    建造

    [編集]

    中華民国海軍では1970年代からドック型輸送揚陸艦2隻体制を維持していたが、2012年に「中正」が退役したことにとり、「旭海」の1隻体制となっていた[2]。また「旭海」は1971年就役で中古艦で老朽化が激しく、機動性の低さや維持コストの増大などが問題視されていた[3]

    2016年6月20日、海軍司令部は「海軍未来12項目の建軍計画」において、2隻から4隻のドック型輸送揚陸艦を新造する「鴻運計画」を発表[4]、以下の技術要件を求めた[5]

    1番艦の「玉山」は台湾国際造船によって建造され[6]、2021年4月に進水した。進水式において蔡英文総統は、この船が台湾海軍の造船自給自足の旅の「マイルストーン」になるとした[7]

    設計

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    艦体

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    本級は中華民国海軍で初めてHSLA-80鋼を採用した艦艇である[8]。この鋼材は「国艦国造」政策に合わせて中国鋼鉄が開発したものである。超高層ビル台北101に使用された鋼材よりも20%強度が高く、耐低温性も通常の構造用鋼材より優れているため、海軍の新型水上艦艇や潜水艦への適用が期待される[9]

    艦のステルス性を高め、機器の耐用年数を延ばすため、艦の電子機器の大半は前後の複合材マストタワーに統合されている[6]。このタイプのマストに使用されている複合材料は、合金金属被覆、ガラス繊維、炭素繊維など8種類の材料で構成されており、厚さ2cm以内である。 複合材料の遮蔽率は、電磁波の特定周波数帯域の99%に達し、乗員への電磁波の影響を軽減し、艦の通信と電磁波防護の要件も満たしている[10][11]

    兵装

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    本級は個艦防空を重視した構成となっており、前部マストにはCS/MPQ-90対空捜索レーダーが[12][13]、船体中央部には海劍二型SAM 8連装発射機4基、艦首と艦尾にファランクス 20mmCIWSが搭載されている[14]

    また対水上・対地用として、両舷に20mm機関砲、艦首に76mm砲も搭載されている[15]

    輸送揚陸能力

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    本級のウェルドックは、ドライエリアとウェットエリアの2つに分かれている。ドライエリアは主に陸上車両用で、最大8台のAAV7水陸両用装甲兵員輸送車または同サイズの車両を搭載でき、ウェットエリアは4隻のLCUと1隻のLCMを同時に搭載できる[16]。この隻数は定数で、LCM2隻とLCU1隻など隻数を変えることが可能である[1]。またドックにAAV7を満載した場合、最大32台を収容できる。

    汎用揚陸艇を運用する場合は、バラストタンクに注水して艦尾を下げることで、ドックに海水を導く必要がある。注水作業は、台湾国際造船が開発した水量調整システムにより各バラストタンクの水量を自動調整することができ、船尾側水深を30分の注水で2m程度にできる[17]

    船体に車両を搭載する場合、右舷側のサイドランプからドライエリアに直接車両を自走して乗り込む。艦内の空間が狭いため、ランプとドライエリアの接続部の転車台が設置されており、車両を艦内で回転させることができる。またウェットエリア内に張水していない場合、ウェットエリア左舷側のエレベーター(力量7トン)を使用して、飛行甲板に車両を搭載可能である。[18]

    舟艇運用機能

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    本級建造に併せて、5隻の新型機動揚陸艇も建造された。排水量は約15トンで、ハンヴィー2台または15トントラック1台を搭載できる[19]。中華民国海軍の現行のLCM-6機動揚陸艇と比べると、新型艇はウォータージェット推進とV字型の船型の採用により、波浪の影響を受けにくく、15トンの貨物を搭載して、旧型艇の2倍である21ノット以上での航行が可能となった[20]。さらに、LCM-6よりも喫水が浅く、ウェルドックに出入りする際に注水が不要となった。[21]

    航空運用機能

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    本級は、 UH-60MまたはS-70Cヘリコプター2機分の格納庫が設置されている[1][22]。 そのうち左舷格納庫には、車両や貨物をドックからヘリコプター甲板まで上げ下ろしするエレベーターが設置されている。

    ヘリコプター甲板は、ヘリコプターの発着艦を容易にするために、発着艦支援装置が設置されている[22]。 また、後部マストには、300海里(560キロメートル)の交信範囲を持つ戦術航空装置(TACAN)も装備されている[22]

    医療機能

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    災害時や戦時における傷病者や人道支援に対する医療の必要性から、本級は手術室や外科と内科、歯科の診療室[1]、回復室、病床など充実した医療設備を備えている[22]。 また医療施設に加え、船内には乗艦する海軍歩兵の体力維持のためのジムもある[22]

    同型艦

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    満載排水量10,600tと、台湾海軍の戦闘艦としては最大の大きさで、平時には金門馬祖澎湖などの離島への補給を、戦時には上陸部隊の輸送・揚陸を担う[6]

    艦番号 艦名 建造 起工 進水 受領 就役 備註
    LPD-1401 玉山 台湾国際造船 2019年
    5月6日[23]
    2021年
    4月13日[24]
    2022年
    9月30日[25]
    2023年
    6月19日[26]
    原型艦

    ギャラリー

    [編集]

    脚注

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    1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 写真:王清正「新型LPD「玉山」を見る!」『世界の艦船』第991集(2023年4月号) 海人社 P.117-119
    2. ^ 呂炯昌 (2021年4月13日). “平時能救災、戰時能作戰 蔡英文任內最大噸位運輸艦下水”. NOWnews今日新聞. 2021年5月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月4日閲覧。
    3. ^ 呂炯昌 (2021年4月13日). “平時能救災、戰時能作戰 蔡英文任內最大噸位運輸艦下水”. NOWnews今日新聞. 2021年5月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月4日閲覧。
    4. ^ 艦船與海洋工程產業特性與發展前景”. 台灣國際造船公司 (2016年8月5日). 2017年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月13日閲覧。
    5. ^ 國艦國造願景與商機”. 國防部海軍司令部 (2016年6月20日). 2017年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月3日閲覧。
    6. ^ a b c 國艦國造「萬噸船塢登陸艦」玉山軍艦:登陸、攻擊、救災都能包辦的海上瑞士刀!”. 戰略風格編輯部 (2021年4月13日). 2021年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月5日閲覧。
    7. ^ Yeo, Mike (2021年4月13日). “Taiwan launches new amphibious vessel with anti-ship missiles” (英語). Defense News. 2024年1月17日閲覧。
    8. ^ 何美如 (2020年6月23日). “個股:中鋼(2002)開發超強韌軍用鋼板,獲海軍新型兩棲船塢運輸艦採用”. 財訊快報. 2022年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月13日閲覧。
    9. ^ 朱明 (2021年5月3日). “【IDS警訊】「最簡單」的平行段外殼爆要命裂縫 癥結是焊接或鋼材出紕漏”. 上報. 2022年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月4日閲覧。
    10. ^ 大型船艦自造新突破 結構強、防電磁波干擾”. 中華民國經濟部技術處 (2021年12月14日). 2022年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月5日閲覧。
    11. ^ 楊令樂、何明機、孫士璋、王正煥 (2018). “艦用特殊電性複合材料”. 新新季刊 (國家中山科學研究院) 46 (4): 221-223. 
    12. ^ 【新型船塢運輸艦】需求規範書”. 中華民國海軍造船發展中心. 2023年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月8日閲覧。
    13. ^ 林祐生 (2022年11月7日). “自由廣場》海軍輕型巡防艦 不容樂觀”. 自由時報. 2022年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月11日閲覧。
    14. ^ 邱新博 (2023年1月12日). “玉山艦首度開箱 秀直升機起落艦能力”. 中時新聞網. 2023年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月14日閲覧。
    15. ^ 游凱翔 (2021年4月13日). “玉山兩棲船塢運輸艦將成為南海外離島運輸主力”. 中央通訊社. 2022年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月14日閲覧。
    16. ^ 黃迪明、陳彥陵 (2023年1月13日). “【春節加強戰備】玉山軍艦性能優異 捍衛海疆擔重任”. 青年日報. 2023年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月14日閲覧。
    17. ^ 游凱翔 (2021年4月13日). “玉山兩棲船塢運輸艦將成為南海外離島運輸主力”. 中央通訊社. 2022年4月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月14日閲覧。
    18. ^ 鄭繼文 (2023-02-01). “國軍2023年春節加強戰備媒體採訪”. 亞太防務雜誌 (粵儒文化) (176): 10-22. 
    19. ^ 詹絲晴 (2023年1月12日). “玉山艦首度開箱!搭載雄二發射車 手術室、健身房一應俱全”. TVBS新聞網. 2023年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月17日閲覧。
    20. ^ 洪哲政 (2022年7月31日). “海巡對陸強硬執法「碰碰船」曇花一現?百噸艇改小碰墊”. 聯合新聞網. 2022年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月31日閲覧。
    21. ^ 洪哲政 (2021年7月4日). “海軍新型LCM登陸艇海試曝光 不再是平底碰碰船”. 聯合新聞網. 2022年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月4日閲覧。
    22. ^ a b c d e 詹絲晴 (2023年1月12日). “玉山艦首度開箱!搭載雄二發射車 手術室、健身房一應俱全”. TVBS新聞網. 2023年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月17日閲覧。
    23. ^ 王烱華 (2019年5月6日). “新型兩棲船塢運輸艦今開工建造 2021年可正式服役”. 蘋果新聞網. 2019年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月6日閲覧。
    24. ^ 陳政宇 (2021年4月11日). “海軍新戰力「玉山艦」報到 蔡英文13日親自主持下水典禮”. 三立新聞網. 2022年1月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月20日閲覧。
    25. ^ 吳書緯 (2022年9月30日). “海軍玉山軍艦交艦 蔡英文:平時能救災 戰時能作戰”. 自由時報. 2022年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月30日閲覧。
    26. ^ 陳鈺馥 (2023年6月19日). “玉山艦今正式成軍 學者:作戰指揮將有更大空間”. 自由時報. 2023年6月19日閲覧。