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雄松堂出版は、改訂復刻版『異国叢書』を2005年にオンデマンド版として再刊した。[[2016年]](平成28年)に雄松堂書店が丸善に吸収合併されたことにともない、2016年現在は[[丸善雄松堂]]が発行している。<br />姉妹編に『東西交流叢書』(全13冊、1986年~2010年に出版)があり、主に「新異国叢書」訳者の伝記研究を刊行している。 |
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なお収録の訳書は、必ずしも全訳というわけではない。たとえば[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]『江戸参府紀行』『日本交通貿易史』は『日本』の抄訳、[[エンゲルベルト・ケンペル|ケンプェル]]『江戸参府紀行』は『[[日本誌]]』の抄訳、[[アーダム・ヨハン・フォン・クルーゼンシュテルン|クルウゼンシュテルン]]『日本紀行』は『世界周航記』の抄訳である{{sfn|松井|2006|pages=17-18}}。また、一部の翻訳([[村上直次郎]]・[[呉秀三]]・[[斎藤阿具]]・[[岩生成一]]の訳)は文語訳となっている。 |
なお収録の訳書は、必ずしも全訳というわけではない。たとえば[[フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト|シーボルト]]『江戸参府紀行』『日本交通貿易史』は『日本』の抄訳、[[エンゲルベルト・ケンペル|ケンプェル]]『江戸参府紀行』は『[[日本誌]]』の抄訳、[[アーダム・ヨハン・フォン・クルーゼンシュテルン|クルウゼンシュテルン]]『日本紀行』は『世界周航記』の抄訳である{{sfn|松井|2006|pages=17-18}}。また、一部の翻訳([[村上直次郎]]・[[呉秀三]]・[[斎藤阿具]]・[[岩生成一]]の訳)は文語訳となっている。 |
2023年6月11日 (日) 01:15時点における版
『異国叢書』(いこくそうしょ)は、16世紀から19世紀にかけて来日した西洋人の、日本に関する見聞録・研究書などを日本語訳して刊行した叢書である。1927年(昭和2年) - 1931年(昭和6年)刊、全13巻。続編として『新異国叢書』(1968年(昭和43年) - 2005年(平成17年)刊、全35巻・索引1巻)がある。
概要
『異国叢書』全13巻は1927年(昭和2年) - 1931年(昭和6年)に刊行された。当初は聚芳閣から刊行される予定だったが、『耶蘇会士日本通信 上巻』1冊を出したのみで、残りの巻はすべて駿南社から刊行されている。戦国時代末期のイエズス会史料から江戸時代後期のフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトに至る、日欧交渉史の重要文献を日本語訳した叢書である(ただし、『増訂異国日記抄』は日本語史料の翻刻)。続篇としてさらに6巻の刊行が予定されていたが、実現しなかった。
その後、帝国教育会出版部から『続異国叢書』全6巻の出版が計画されたが、『耶蘇会士日本通信 豊後篇』2巻(1936年)の刊行のみにとどまった。この2巻分はのちに『新異国叢書』に再録されている。
駿南社版『異国叢書』の発行者だった奥川栄[1]は、その後、自らの経営する奥川書房から、簡素版を1941年(昭和16年)に再刊している。
戦後、雄松堂書店が1966年(昭和41年)に改訂復刻版『異国叢書』を刊行した。さらに、同社は『新異国叢書』の刊行を企画し、第I輯(1968年 - 1970年、13巻)、第II輯(1982年 - 1985年、10巻)、第III輯(2002年 - 2004年、10巻)の全35巻を刊行した(第II輯刊行中の1983年に出版部門が分社化されたため、以後は雄松堂出版の発行となっている)。第I輯には使節などの公式記録、第II・III輯には幕末・維新期の個人的な日記・紀行・見聞記などが収められている。編集委員は第I・II輯が岩生成一・洞富雄・岡田章雄・沼田次郎、第III輯が片桐一男・金井圓・宮永孝である。他に、2005年(平成17年)に刊行された総索引がある[2]。
雄松堂出版は、改訂復刻版『異国叢書』を2005年にオンデマンド版として再刊した。2016年(平成28年)に雄松堂書店が丸善に吸収合併されたことにともない、2016年現在は丸善雄松堂が発行している。
姉妹編に『東西交流叢書』(全13冊、1986年~2010年に出版)があり、主に「新異国叢書」訳者の伝記研究を刊行している。
なお収録の訳書は、必ずしも全訳というわけではない。たとえばシーボルト『江戸参府紀行』『日本交通貿易史』は『日本』の抄訳、ケンプェル『江戸参府紀行』は『日本誌』の抄訳、クルウゼンシュテルン『日本紀行』は『世界周航記』の抄訳である[3]。また、一部の翻訳(村上直次郎・呉秀三・斎藤阿具・岩生成一の訳)は文語訳となっている。
目録
異国叢書
『耶蘇会士日本通信 上巻』(聚芳閣)を除き、すべて駿南社から刊行。
- 『耶蘇会士日本通信 上巻』(村上直次郎訳、渡辺世祐註、1927年5月1日発行) NDLJP:1186696 NDLJP:1876390 - 本巻のみ聚芳閣より刊行。
- 『シーボルト江戸参府紀行』(呉秀三訳註、1928年2月20日発行)NDLJP:1179836 NDLJP:1876406
- 『耶蘇会士日本通信 下巻』(村上直次郎訳、渡辺世祐註、1928年3月20日発行) NDLJP:1186699 NDLJP:1876415
- 『ツンベルグ日本紀行』(山田珠樹訳註、1928年6月15日発行)NDLJP:1179833 NDLJP:1876426
- 『ヅーフ日本回想録 フィッセル参府紀行』(斎藤阿具訳註、1928年8月10日発行)NDLJP:1179830 NDLJP:1876433
- 『ケンプェル江戸参府紀行 上巻』(呉秀三訳註、1928年9月15日発行)NDLJP:1876448
- 『ドン・ロドリゴ日本見聞録 ビスカイノ金銀島探検報告』(村上直次郎訳註、1929年4月10日発行)
- 『シーボルト日本交通貿易史』(呉秀三訳註、1929年5月15日発行)NDLJP:1876473
- 『ケンプェル江戸参府紀行 下巻』(呉秀三訳註、1929年6月10日発行)NDLJP:1195335 NDLJP:1876490
- 『慶元イギリス書翰』(岩生成一訳註、1929年) - 慶長16年(1611年)から元和2年(1616年)までの英文書簡116通の日本語訳。
- 『異国往復書翰集 増訂異国日記抄』(1929年9月10日発行) NDLJP:1186704 NDLJP:1876513
- 『異国往復書翰集』(村上直次郎訳註)
- 『増訂異国日記抄』(村上直次郎校註) - 『異国日記抄』(三秀舎、1911年)の増補。
- 『クルウゼンシュテルン日本紀行 上巻』(羽仁五郎訳註、1931年8月25日発行)
- 『クルウゼンシュテルン日本紀行 下巻』(羽仁五郎訳註、1931年9月25日発行)
異国叢書続篇(未刊)
続篇として以下6巻が計画された[4][5]が、駿南社が廃業し未刊行となった[6]。
- 『マイラン氏・日蘭貿易史』(呉秀三訳註) - 『新異国叢書』第III輯第1巻に『メイラン 日本』で刊。
- 『ジョン・セーリス日本渡航記』(村川堅固・岩生成一共訳註) - 村川堅固訳『日本渡航記』(十一組出版部、1944年9月5日発行) NDLJP:1043673 として刊、『新異国叢書』第I輯第6巻で改訂再刊。
- 『ファレンタイン日本誌』(新村出註・板沢武雄訳) - フランソワ・ファレンタインの『新旧東インド誌』の一部。日本語訳は未刊。
- 『日本関係西籍解題』全2巻(石田幹之助編著) - 未刊。
- 『エルジン卿日本奉使記』(村上直次郎訳註) - 『新異国叢書』第I輯第9巻に『エルギン卿 遣日使節録』で刊行。
他にも、聚芳閣が初刊広告で挙げた書目のうち、未刊行だったのは『慶元オランダ書翰』(村上直次郎訳註)[7][8]がある。
『異国叢書』以外で、駿南社で刊行した関連書目に、アレキサンデル・シーボルト(長男)『シーボルトの最終日本紀行』(小沢敏夫訳註、1931年)がある[9]。
奥川書房発行稀覯本
「異国叢書」の再版であるが、「異国叢書」の名称は用いられておらず、巻末広告では「奥川書房発行稀覯本」となっている。全13巻の再刊を予定していたが未完に終わった模様。
- 『ドン・ロドリゴ日本見聞録 ビスカイノ金銀島探検報告』(1941年)
- 『ツンベルグ日本紀行』(1941年12月10日発行)NDLJP:1043693 NDLJP:1877837
- 『ヅーフ日本回想録 フィッセル参府紀行』(1941年12月10日発行)NDLJP:1043650
改訂復刻版「異国叢書」
雄松堂書店、1966年9月発行。オンデマンド版2005年5月発行
- 『異国往復書翰集 増訂異国日記抄』 ISBN 978-4-8419-3011-5
- 『クルウゼンシュテルン日本紀行 上巻』 ISBN 978-4-8419-3012-2
- 『クルウゼンシュテルン日本紀行 下巻』 ISBN 978-4-8419-3013-9
- 『慶元イギリス書翰』 ISBN 978-4-8419-3015-3
- 『ケンプェル江戸参府紀行 上巻』 ISBN 978-4-8419-3016-0
- 『ケンプェル江戸参府紀行 下巻』 ISBN 978-4-8419-3017-7
- 『シーボルト江戸参府紀行』 ISBN 978-4-8419-3018-4
- 『シーボルト日本交通貿易史』 ISBN 978-4-8419-3019-1
- 『ヅーフ日本回想録 フィッセル参府紀行』 ISBN 978-4-8419-3020-7
- 『ツンベルグ日本紀行』 ISBN 978-4-8419-3021-4
- 『ドン・ロドリゴ日本見聞録 ビスカイノ金銀島探検報告』 ISBN 978-4-8419-3022-1
- 『耶蘇会士日本通信 上巻』 ISBN 978-4-8419-3023-8
- 『耶蘇会士日本通信 下巻』 ISBN 978-4-8419-3024-5
続異国叢書
帝国教育会出版部から刊行。
- 『耶蘇会士日本通信 豊後篇 上巻』(村上直次郎訳註、1936年5月20日発行) NDLJP:1172304 NDLJP:1878829
- 『耶蘇会士日本通信 豊後篇 下巻』(村上直次郎訳註、1936年9月15日発行) NDLJP:1172315 NDLJP:1878835
- のち増補の上、『新異国叢書』第I輯第1・2巻に『イエズス会士日本通信』の題で再録。
続刊として以下が計画されていた[9]。
- 『ファレンタイン日本志』(新村出・板沢武雄訳註)
- 『日本関係西籍解題』(石田幹之助編)
- 『日本渡航記』(ジョン・セーリス、村川堅固訳註)
- 『日本大王国志』(フランソア・カロン、幸田成友訳註) - 1948年11月に東洋堂から刊行、のち平凡社東洋文庫から再刊。
新異国叢書
雄松堂書店・雄松堂出版から刊行。
第I輯
- 『イエズス会士 日本通信 上』(村上直次郎訳、柳谷武夫編、1968年12月) ISBN 4-8419-0171-X
- 『イエズス会士 日本通信 下』(村上直次郎訳、柳谷武夫編、1969年2月) ISBN 4-8419-0254-6 - 『続異国叢書』所収『耶蘇会士日本通信 豊後篇』、および『耶蘇会年報 上巻』(長崎市役所、1926年9月15日発行) NDLJP:1020380 を再編集したもの。『異国叢書』の『耶蘇会士日本通信』との重複はない。
- 『イエズス会 日本年報 上』(村上直次郎訳、柳谷武夫編、1969年5月) ISBN 4-8419-1000-X
- 『イエズス会 日本年報 下』(村上直次郎訳、柳谷武夫編、1969年11月) ISBN 4-8419-1001-8 - 『耶蘇会の日本年報』(拓文堂、第1輯1943年1月18日発行 NDLJP:1041119 NDLJP:1918977、第2輯1944年2月27日発行 NDLJP:1041121)を再編集したもの。
- 『デ・サンデ 天正遣欧使節記』(泉井久之助・長沢信寿・三谷昇二・角南一郎共訳、1969年) ISBN 4-8419-1002-6
- 『セーリス 日本渡航記 ヴィルマン 日本滞在記』(1970年2月) ISBN 4-8419-1003-4
- 『ティチング 日本風俗図誌』(沼田次郎訳、1970年12月) ISBN 4-8419-0172-8
- 『ペリー 日本遠征随行記』(サミュエル・ウェルズ・ウィリアムズ著、洞富雄訳) ISBN 4-8419-1004-2
- 『エルギン卿 遣日使節録』(ローレンス・オリファント著、岡田章雄訳、1968年11月) ISBN 4-8419-1005-0
- 『ポンペ 日本滞在見聞記』(沼田次郎・荒瀬進共訳、1968年10月) ISBN 4-8419-1006-9
- 『ゴンチャローフ 日本渡航記』(高野明・島田陽共訳、1969年4月) ISBN 4-8419-1007-7 - のち講談社学術文庫として再刊(2008年7月)。
- 『オイレンブルク 日本遠征記 上』(中井晶夫訳、1969年) ISBN 4-8419-1008-5
- 『オイレンブルク 日本遠征記 下』(中井晶夫訳、1969年) ISBN 4-8419-1009-3
- 『アンベール 幕末日本図絵 上』(高橋邦太郎訳、1969年) ISBN 4-8419-1010-7
- 『アンベール 幕末日本図絵 下』(高橋邦太郎訳、1970年) ISBN 4-8419-1011-5
第II輯
1983年5月発行の『ディアス・コバルビアス 日本旅行記』から、発行所が雄松堂出版に変更されている。
- 『ペリー 日本遠征日記』(金井圓訳、1985年10月) ISBN 4-8419-0061-6
- 『ハイネ 世界周航日本への旅』(中井晶夫訳、1983年11月) ISBN 4-8419-0203-1
- 『グレタ号 日本通商記』(F・A・リュードルフ著、中村赳訳、小西四郎校訂、1984年1月) ISBN 4-8419-0204-X
- 『ホジソン 長崎函館滞在記』(多田實訳、1984年9月) ISBN 4-8419-0286-4
- 『ヘールツ 日本年報』(庄司三男訳、1983年9月) ISBN 4-8419-0206-6
- 『シュリーマン 日本中国旅行記 パンペリー 日本踏査紀行』(1982年12月) ISBN 4-8419-0207-4
- 『ディアス・コバルビアス 日本旅行記』(大垣貴志郎・坂東省次共訳、1983年5月) ISBN 4-8419-0208-2
- 『ギメ 東京日光散策 レガメ 日本素描紀行』(青木啓輔訳、1983年7月) ISBN 4-8419-0209-0
- 『グラント将軍 日本訪問記』(ジョン・ラッセル・ヤング著、宮永孝訳、1983年2月) ISBN 978-4-8419-0519-9
- 『クロウ 日本内陸紀行』(岡田章雄・武田万里子共訳、1984年7月) ISBN 4-8419-0287-2
第III輯
- 『メイラン 日本』(庄司三男訳、2002年1月) ISBN 4-8419-0293-7
- 『マローン 日本と中国』(眞田収一郎訳、2002年3月) ISBN 4-8419-0294-5
- 『バード 日本紀行』(楠家重敏・橋本かほる・宮崎路子共訳、2002年8月) ISBN 4-8419-0295-3
- 『スポルディング 日本遠征記 オズボーン 日本への航海』(2002年6月) ISBN 4-8419-0296-1
- 『モースのスケッチブック』(中西道子著、2002年10月) ISBN 4-8419-0297-X
- 『レフィスゾーン 江戸参府日記』(片桐一男訳、2003年4月) ISBN 4-8419-0298-8
- 『スミス 日本における十週間』(宮永孝訳、2003年6月) ISBN 4-8419-0299-6
- 『アーノルド ヤポニカ』(岡部昌幸訳、2004年1月) ISBN 4-8419-0300-3
- 『シェイス オランダ日本開国論』(小暮実徳訳、2004年8月) ISBN 4-8419-0301-1
- 『ドゥーフ 日本回想録』(永積洋子訳、2003年8月) ISBN 4-8419-0302-X
総索引
- 『新異国叢書 総索引』(雄松堂出版編集部編、2005年7月) ISBN 978-4-8419-0381-2
脚注
- ^ 反町茂雄『蒐書家・業界・業界人』八木書店、1984年、95頁。
- ^ “雄松堂書店図書目録 2014/2015” (pdf). 丸善雄松堂. pp. 2-7. 2016年10月27日閲覧。
- ^ 松井 2006, pp. 17–18.
- ^ 『読売新聞』1931年11月2日付朝刊11面広告。
- ^ 市島謙吉『春城代酔録』中央公論社、1933年12月6日、168-169頁。NDLJP:1233931。
- ^ 村川堅固「訳者序」『日本渡航記』十一組出版部、1944年9月5日、2頁。NDLJP:1043673。
- ^ 『読売新聞』1926年10月3日付朝刊1面広告。
- ^ 『東京朝日新聞』1926年10月8日付朝刊3面広告。
- ^ a b 庄司 1979.
参考文献
- 金井圓「『異国叢書』と私」『Pinus』第4号、雄松堂書店、14-15頁、1982年3月20日。ISSN 0289-3185。
- 庄司三男 著「異国叢書」、国史大辞典編集委員会 編『国史大辞典』 1巻、吉川弘文館、1979年3月1日、485-486頁。
- 松井洋子「史料・文献紹介 『異国叢書』」『歴史と地理』第600号、山川出版社、15-21頁、2006年12月20日。ISSN 1343-5957。
関連項目
- 大航海時代叢書 - 岩波書店で刊行された叢書
- 来日した欧米人一覧(明治期以前)
- お雇い外国人
- 日本人論