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「みなみじゅうじ座」の版間の差分

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}}
}}
'''みなみじゅうじ座'''(みなみじゅうじざ、Crux)は[[星座#国際天文学連合による88星座|現代の88星座]]の1つ。[[16世紀]]末に考案された新しい[[星座]]で、全天88星座で最も小さい星座{{R|NAOJ_constellationsarea}}で、東西北の3方向を[[ケンタウルス座]]に、南方向は[[はえ座]]に囲まれている。
[[ファイル:Southern cross2.jpg|thumb|200px|みなみじゅうじ座(左下側に暗黒星雲コールサックが見える)]]
'''みなみじゅうじ座'''(みなみじゅうじざ、南十字座、Crux)は、南天の[[星座]]のひとつ。全天88星座のなかでもっとも小さい。[[みなみじゅうじ座アルファ星|&alpha;星]]・[[みなみじゅうじ座ベータ星|&beta;星]]ともに、全天21の[[一等星|1等星]]に数えられる。&alpha;、&beta;、&gamma;、&delta;の明るい4つの星が形作る十字の[[アステリズム]]は「'''南十字星'''(みなみじゅうじせい)」、または英語での通称「'''サザンクロス''' ({{lang-en-short|Southern Cross}}) 」としても知られる。ただし、小さく各星の明るさが不揃いなことから、近くにある「'''[[ニセ十字]]'''」のほうを南十字星であると間違えられることもある。


&alpha;・&beta;・&gamma;・&delta;の明るい4つの星が形作る十字の[[アステリズム]]は「'''南十字星'''(みなみじゅうじせい)」「'''南十字'''」や「'''サザンクロス''' ({{lang-en-short|Southern Cross}}) 」と呼ばれる{{R|GaN}}。[[天の南極]]近くにあるため、[[北半球]]では見ることができない地域が多い。&alpha;星と&gamma;星を結んだ線分を、&alpha;星に向けて約4.5倍するとおよそ天の南極に到達する{{R|Ryutao}}。天の南極付近には[[南極星]]と言えるほど目印となる星がないため、[[大航海時代]]以降は天の南極の方角を知るために南十字が使われたとされる{{R|Ridpath}}。
東西北の3方向を[[ケンタウルス座]]で囲まれ、南方向は[[はえ座]]に接している。[[ケンタウルス座アルファ星|ケンタウルス座&alpha;星]]から[[ケンタウルス座ベータ星|ケンタウルス座&beta;星]]に向けて結んだ線を&beta;星方向に伸ばすと、おおよそみなみじゅうじ座の方角を指す。


== 主な天体 ==
現在、[[天の南極]]には[[南極星]]と言えるほど目印となる星がないため、[[大航海時代]]以来おもにみなみじゅうじ座が天の南極の方角を知るために使われた。&alpha;星と&gamma;星の間隔を、&alpha;星に向けて約4.5倍すると、だいたい天の南極に到達する。

== 特徴 ==
南天でも天の南極近くにある星座のため、[[北半球]]では見ることができない地域が多い。

時期によっては[[日本]]でも[[沖縄県]]、[[小笠原諸島]]などで観望が可能であり、特に[[宮古列島]]、[[八重山列島]]からなる[[先島諸島]]では比較的観望しやすい。中でも国内最南端の有人島である[[波照間島]]では南十字星が観光資源にもなっており、切手が作られたり、観望ツアーが組まれたり、星空観測タワーなどが設けられたりしている。また、八重山列島にある[[石垣市]]は、[[2019年]]7月に南十字星を市の星に定めている<ref>{{cite news| title = 「市の星」に南十字星 4団体36個人を表彰 市制施行72年 | url = http://www.yaeyama-nippo.co.jp/archives/7921 | newspaper = 八重山日報 | date = 2019-07-11}}</ref>。この地域で観望できる時期は12月下旬から6月中旬までの約半年であり、南中時刻が午後8時から10時ごろの見やすい時間帯となる5月ごろが観望に適している。先島諸島からは、星座は地平線に近く、靄が出現すると見えにくい。[[ポラリス (恒星)|ポラリス]](現在の[[北極星]])から天頂に至る線を南に延ばすと肉眼でもはっきり見える。なお、本州でも最南端に位置する[[串本町]]などで、時期や気候条件などが整えば、水平線真上に先端部分の&gamma;星を確認することができる。[[2017年]][[2月3日]]未明に、[[佐賀県]][[武雄市]]在住の男性が[[佐賀県]][[小城市]]の[[天山 (佐賀県)|天山]]より&gamma;星ガクルックスの撮影に成功した<ref>{{Cite web|url=https://www.saga-s.co.jp/articles/gallery/72766|title=天山から「南十字星」 九州最北端記録か|publisher=[[佐賀新聞|佐賀新聞LiVE]]|accessdate=2021-03-11}}</ref>。

[[アメリカ合衆国]]では、ほぼ北緯20度の[[ハワイ州]]全体、[[フロリダ州]]南端(北緯24度の[[キーウェスト]])は、比較的この星座を観望しやすい場所である。[[ホノルル]]の[[バーニス・P・ビショップ博物館|ビショップ・ミュージアム]]の[[プラネタリウム]]では次の時刻をこの星座の[[正中|南中]]時刻として知らせている。
<poem>
12月1日:6時半ごろ(日の出は7時ごろ)
1月1日:6時ごろ
2月1日:4時ごろ
3月1日:2時ごろ
4月1日:0時ごろ
5月1日:22時ごろ
6月1日:20時ごろ
7月1日:日没後(19時半ごろ)
(8月から1月は南中時刻が昼になるので、観望しにくい)
</poem>

== おもな天体 ==
=== 恒星 ===
=== 恒星 ===
{{See also|みなみじゅうじ座の恒星の一覧}}
{{See also|みなみじゅうじ座の恒星の一覧}}
2つの1等星&alpha;星と&beta;星以外に、2等星が1つ(&gamma;星{{R|simbad_gamma}})、3等星が1つ(&delta;星)存在している。&alpha;星から順に[[時計回り]]に&beta;星、&gamma;星&delta;星を結んだ四角形の各対角線が、星座のモチーフである十字となる。
2つの1等星&alpha;星と&beta;星以外に、2等星が1つ、3等星が1つる。&gamma;星&alpha;星を結んだ線分と、&beta;星&delta;星を結んだ線交差した十字形が[[十字架]]に喩えられ。南十字以外にも「宝石箱」の通称で知られる散開星団や「コールサック」呼ばれる暗黒星雲ど、小さいながら見どころの多い星座である。

* [[みなみじゅうじ座アルファ星|&alpha;星]]:'''アクルックス''' (Acrux) は、全天21の1等星の1つ{{R|simbad_alpha|Mamajek}}。
2022年4月現在、[[国際天文学連合]] (IAU) によって6個の恒星に固有名が認証されている{{R|iaucsn}}。
* [[みなみじゅうじ座ベータ星|&beta;星]]:'''ミモザ''' (Mimosa) は、全天21の1等星の1つ{{R|Mamajek|simbad_beta}}。
* [[みなみじゅうじ座アルファ星|&alpha;星]]:[[見かけの等級|見かけの明るさ]]1.28等のA星{{R|simbad_alpha1}}と1.58等のB星{{R|simbad_alpha2}}の連星で、全天21の1等星の1つとされる。A星はそれ自体が連星となっており、主星のAa星には「'''アクルックス'''{{R|StellaNavigator11}}(Acrux{{R|iaucsn}})」という固有名が付けられている。
* [[みなみじゅうじ座ガンマ星|&gamma;星]]:'''ガクルックス''' (Gacrux){{R|simbad_gamma|Mamajek}}。十字を構成する他の星(&alpha;星、&beta;星、&delta;星)と異なり唯一赤色の恒星。
* [[みなみじゅうじ座ベータ星|&beta;星]]:見かけの明るさ1.25等の1等星{{R|simbad_beta}}。現在は全天21個の1等星の1つとされるが、かつては1.5等とされていたため、1等星として扱われていなかった{{R|Rika_1959}}。[[脈動変光星]]の一種の「[[ケフェウス座ベータ型変光星|ケフェウス座&beta;型変光星]]」に分類され、約0.2365日の周期で1.23等から1.31等の範囲で変光する{{R|GCVS_beta}}。「'''ミモザ'''{{R|StellaNavigator11}}(Mimosa{{R|iaucsn}})」という固有名を持つ。
* [[みなみじゅうじ座デルタ星|&delta;星]]:'''Imai'''{{R|Mamajek}}
* [[みなみじゅうじ座ガンマ星|&gamma;星]]:見かけの明るさ1.64等の[[赤色巨星]]で2等星{{R|simbad_gamma}}。十字を形作る星では唯一赤い色をしている。「'''ガクルックス'''{{R|StellaNavigator11}}(Gacrux{{R|iaucsn}})」という固有名を持つ。
* [[みなみじゅうじ座イプシロン星|&epsilon;星]]:'''Ginan'''{{R|Mamajek|simbad_epsilon}}
* [[みなみじゅうじ座デルタ星|&delta;星]]:見かけの明るさ2.752等の3等星{{R|simbad_delta}}。十字を形作る4つの星の中で最も暗い。ケフェウス座&beta;型変光星に分類され、約0.1510日の周期で2.78等から2.84等の範囲で変光する{{R|GCVS_delta}}。「'''イマイ'''{{R|StellaNavigator11}}(Imai{{R|iaucsn}})」という固有名を持つ。
* [[みなみじゅうじ座イプシロン星|&epsilon;星]]:見かけの明るさ3.59等の4等星{{R|simbad_epsilon}}。「'''ギナン'''{{R|StellaNavigator11}}(Ginan{{R|iaucsn}})」という固有名を持つ。十字形を形作る星ではないが、[[オーストラリア]]や[[パプアニューギニア]]、[[サモア]]、[[ブラジル]]の国旗に他の4星とともに描かれている。
* [[HD 108147]]:見かけの明るさ6.994等の7等星{{R|simbad_HD108147}}。国際天文学連合の100周年記念行事「[[NameExoWorlds|IAU100 NameExoWorlds]]」で[[パラグアイ共和国]]に命名権が与えられ、主星はTupã、[[太陽系外惑星]]はTumearanduと命名された{{R|approved}}。


=== 星団・星雲・銀河 ===
=== 星団・星雲・銀河 ===
* [[NGC 4609]]:太陽系から約4,600 光年の距離にある[[散開星団]]で、「Coalsack Cluster」とも呼ばれる{{R|simbad_NGC4609}}。{{仮リンク|パトリック・ムーア (天文学者)|label=パトリック・ムーア|en|Patrick Moore}}がアマチュア天文家の観測対象に相応しい星団・星雲・銀河を選んだ[[カルドウェルカタログ|コールドウェルカタログ]]で、98番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}
* [[NGC 4755]]:[[散開星団]]。宝石箱(Jewel Box)としてよく知られる。
* [[NGC 4755]]:太陽系から約6,500 光年の距離にある散開星団で、「宝石箱 ({{Lang-en-short|Jewel Box}})」の通称でよく知られる{{R|simbad_NGC4755}}。コールドウェルカタログの94番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。
* [[コールサック]]:[[暗黒星雲]]。[[天の川]]の中にあり、[[星雲]]が天の川を隠すような形で暗く見えるため、暗いゆえに見えやすい。肉眼でも識別可能である。名称は、形が石炭を入れる袋に似ていたことに由来するとされる。
* [[コールサック]]:太陽系から約620 光年の距離にある[[暗黒星雲]]{{R|simbad_Coalsack|Frommert2000}}。&alpha;星の東側に位置しており、背景となる[[天の川]]が明るく見えるところでは、天の川を隠してシルエットが黒く見える。[[オーストラリア大陸]]の先住民[[アボリジニ]]は、これを[[エミュー]]の頭と見なしていた{{R|ESO20210322}}。コールドウェルカタログの99番に選ばれている{{R|SEDS_Caldwell}}。[[宮沢賢治]]の童話『[[銀河鉄道の夜]]』に「石炭袋」として登場する。{{-}}
{{Gallery
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| NGC 4609 large.png | 散開星団NGC4609。
| A Snapshot of the Jewel Box cluster with the ESO VLT.jpg | [[ヨーロッパ南天天文台]]の[[超大型望遠鏡VLT]]で撮像された散開星団NGC4755(宝石箱)。
}}


== 由来と歴史 ==
== 由来と歴史 ==
みなみじゅうじ座に属する星々は、[[紀元前]]の[[地中海]]沿岸地域の人々にその存在が知られていた。例えば、[[2世紀]]頃に[[アレクサンドリア]]で活動したギリシャ人学者[[クラウディオス・プトレマイオス]]が著した『[[アルマゲスト]]』には、[[ケンタウルス座|ケンタウルス]]の後ろ脚の一部として記録されている{{R|Ridpath}}。しかし、[[地球]]の[[歳差運動]]の影響によって地中海沿岸地域からこれらの星々を見ることができなくなると、[[大航海時代]]に「再発見」されるまでこれらの星々は忘れられた存在となっていた。
[[File:Centaurus hevelius.png|thumb|right|250px|1690年に書かれた星座のイラスト。周りに[[ケンタウルス座]]が描かれている]]

南十字の星が欧州圏の人々に再発見されたのは、[[16世紀]]を迎える直前の1500年のことであった。[[ペドロ・アルヴァレス・カブラル]]のインド遠征に参加した{{仮リンク|ジョアン・ファラス|en|João Faras}}は、1500年4月末に一行とともにブラジルを「発見」・上陸し、そこで観測した南天の星図を[[マヌエル1世 (ポルトガル王)|ポルトガル王マヌエル1世]]宛の書簡に記して報告した。この星図に南十字らしき星々が描かれていたことから、ジョアン・ファラスは南十字の再発見者とされている{{R|Dekker1990}}。
{{Gallery
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| Southern Celestial Map of Mestre João Faras.gif | 1500年5月1日の書簡に記されたジョアン・ファラスによる南天のスケッチ。
| Southern Celestial Map of Mestre João Faras (Labelled).gif | スケッチに描かれた恒星の暫定的な同定。
}}
[[File:Letter of Andrea Corsali.jpg|thumb|240px|天の南極とその周辺の星々、[[マゼラン雲|大小マゼラン雲]]などが描かれた、アンドレア・コルサーリからジュリアーノ・ディ・メディチ宛の書簡(1516年)。]]
16世紀[[イタリア]]の[[探検家]][[アメリゴ・ヴェスプッチ]]は、{{仮リンク|ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチ|en|Lorenzo di Pierfrancesco de' Medici}}に宛てた[[1502年]]の書簡の中で、現在の[[ケンタウルス座アルファ星|ケンタウルス座&alpha;星]]・[[ケンタウルス座ベータ星|&beta;星]]やみなみじゅうじ座の星、コールサックと思われる天体の記録を残している{{R|Ridpath}}。また、同じくイタリアの探検家{{仮リンク|アンドレア・コルサーリ|en|Andrea Corsali|}}は、彼のパトロンであった[[ジュリアーノ・デ・メディチ (ヌムール公)|ジュリアーノ・デ・メディチ]]に宛てた1516年の書簡の中で、より正確な星図を著し{{R|Power2018}}、「他の天の目印とは比較にならないほど美しい」とその美しさと[[天測航法]]における有用性を称えている{{R|Ridpath|AstroculturaUAI|Corsali1516}}。

現在のみなみじゅうじ座と同じ位置に初めて十字架が描かれたのは、[[1598年]]に[[オランダ]]の[[天文学者]][[ペトルス・プランシウス]]がオランダの天文学者{{仮リンク|ヨドクス・ホンディウス|en|Jodocus Hondius}}と共同製作した天球儀であった{{R|Ridpath|Dekker1987b}}。プランシウスは、これに先立つ[[1589年]]に地図製作者{{仮リンク|ヤコブ・ファン・ラングレン|en|Jacob van Langren}}と共同製作した[[天球儀]]に既に十字架の星座絵を描いていた{{R|Dekker1987b|Warner1979}}が、この十字架は[[エリダヌス座]]の南側、現在の[[かじき座]]がある辺りに描かれており、現在のみなみじゅうじ座とは場所が全く異なっていた{{R|Ridpath|Dekker1987b}}。プランシウスは[[1594年]]に製作した[[世界地図]]に描いた南天の星図でも同様にエリダヌス座の南側に十字架を描いている。これに対して、[[イギリス]]の[[地理学者]]{{仮リンク|ロバート・ヒュース|en|Robert Hues}}は、自身の南大西洋航海での天体観測を元に著した1594年の著書『Tractatus de globis et eorum usu(天球儀・地球儀とその利用に関する論考)』の中で、「この十字架を構成する星々をプトレマイオスが知らなかったわけではない。というのも、それらはケンタウルスの足元にある明るい星々に他ならないからだ。」と明言した{{R|Ridpath|HuesChilmeadMarkham1889}}。このヒュースの著書は[[1597年]]にホンディウスによって[[オランダ語]]に翻訳された。同年、{{仮リンク|コルネリス・デ・ハウトマン|en|Cornelis de Houtman}}の東インド遠征隊がオランダに帰還し、[[航海士]][[ペーテル・ケイセル]]が遺した天体観測の記録がプランシウスの手に渡った。こうしてプランシウスは、ケイセルの記録とヒュースの著書の記述を照らし合わせてそれらが正しいことを知り、1598年に共同製作した天球儀では十字架の位置をケンタウルスの足元に変更して描いている{{R|Ridpath}}。
[[File:Uranometria Centaurus.jpg|thumb|240px|ヨハン・バイエル『ウラノメトリア』(1603年)に描かれたケンタウルス座。脚元に十字架(のちのみなみじゅうじ座)が描かれている。]]
この1598年製作のプランシウスの天球儀では十字架の星々はケンタウルス座の一部として扱われた。これは1600年と1601年にそれぞれ製作されたホンディウスの天球儀でも同様であった。プランシウスやホンディウスの天球儀から星の位置をそっくり写し取ってドイツの[[ヨハン・バイエル]]が[[1603年]]に出版した星図・星表『ウラノメトリア』でも同様で、十字架の星々はケンタウルス座の一部とされた{{R|Bayer1603}}。『ウラノメトリア』では、現在のみなみじゅうじ座&alpha;・&beta;・&gamma;・&delta;に対して、ケンタウルス座の&epsilon;・&zeta;・&nu;・&xi;の[[バイエル符号]]が振られている{{R|Bayer1603}}。

この天の十字架を独立した1つの星座として扱おうとする動きは、既にこの頃から見られていた。天球儀上で初めて十字架の星座名を記したのは、オランダの天文学者で地図製作者の{{仮リンク|ウィレム・ブラウ|en|Willem Janszoon Blaeu}}であった。[[1602年]]、ブラウは、プランシウスや{{仮リンク|ヨドクス・ホンディウス|en|Jodocus Hondius}}の天球儀から星の位置をコピーして製作した天球儀上で、プランシウスと同様にケンタウルスの脚元に十字架を描き、そこに '''Czuzero'''{{efn2|Cruzeroの綴り誤りか? 詳細は不明。}}と星座名を記した{{R|Blaeu1602}}。この年、オランダの第2次東インド遠征から帰還したオランダの航海士[[フレデリック・デ・ハウトマン]]{{efn2|コルネリス・デ・ハウトマンの弟。}}は、翌1603年に出版したマレー語辞典に付録として付けた星表の中で、南十字に対して[[オランダ語]]で十字架を意味する '''De Cruzero''' という星座名を付けて独立させた{{R|Ridpath|de_Houtman1603}}。また、デ・ハウトマンから第2次東インド航海での観測記録を受け取ったブラウは、1603年にも天球儀を製作し、十字架の星座絵とともに '''El Cruzero''' という[[スペイン語]]の星座名を記して1つの独立した星座とした{{R|Blaeu1603}}。しかしながら、マレー語辞典や天球儀では『ウラノメトリア』ほどの影響力はなく、広く天文学者の間で知られることはなかった{{R|Dekker1987a}}。
{{Gallery
| title=ウィレム・ブラウ製作の天球儀に描かれた十字架の星座
| width=320
| height=300
| align=center
| Willem Janszoon Blaeu El Cruzero1602 (Gallica).png|ウィレム・ブラウ製作の天球儀に描かれた Czuzero。
| Willem Janszoon Blaeu El Cruzero (Gallica).png|1603年の天球儀に描かれた El Cruzero。
}}
星図と星表で南十字を独立した星座として最初に採り上げたのは、[[ドイツ]]の天文学者[[ヤコブス・バルチウス]]であった{{R|Ridpath}}。バルチウスは、[[1624年]]に出版した天文書『Usus Astronomicus Planisphaerii Stellati』の中で、星図に十字架と星座名 '''Crux''' を描き{{R|Ridpath|Stoppa}}、星表でも独立した星座として取り扱った{{R|Bartsch1624}}。これ以降、南十字はケンタウルス座から独立した1つの星座として扱われるようになった。

この星座に付けられたギリシア文字の符号は、バイエルが付けたいわゆる「バイエル符号」ではなく、[[18世紀]][[フランス]]の天文学者[[ニコラ=ルイ・ド・ラカーユ|ニコラ=ルイ・ド・ラカイユ]]によって付けられたものである。ラカイユは、自身が考案した14星座のほか、バイエルが符号をつけていなかった南天の星座にギリシア文字の符号を付しており、みなみじゅうじ座の星々にも&alpha;から&lambda;までの符号を付した{{R|Coelum_australe_stelliferum}}{{efn2|星座名は、星表では Crux とされたが、星図では Crux Australis とされている{{R|Coelum_australe_stelliferum|planisphere1763}}。}}。ラカイユが付した符号は、[[19世紀]][[イギリス]]の天文学者[[フランシス・ベイリー]]が編纂した『The Catalogue of Stars of the British Association for the Advancement of Science』([[1845年]])に全面的に引き継がれた{{R|BAC}}。さらに、[[アメリカ]]の天文学者[[ベンジャミン・グールド]]が[[1879年]]に出版した『Uranometria Argentina』で星座の境界線が引き直した際に新たに&mu;星が加えられた{{R|Gould1879}}。{{-}}
[[File:Centaurus hevelius.png|thumb|right|240px|[[ヨハネス・ヘヴェリウス]]の死後に出版された天文書『Prodromus Astronomiae』(1690年)に掲載された星図に描かれたみなみじゅうじ座。]]
[[1922年]]5月に[[ローマ]]で開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は '''Crux'''、略称は '''Cru''' と正式に定められた{{R|Ridpath2}}。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。


かつては「[[フランス]]の天文学者[[オギュスタン・ロワーエ]]によって[[1679年]]に設定された」とする説が流布されていた{{Sfn|原恵|2007|pp=32-33}}{{R|Nemoto2008}}。実際は、先述のように十字架の形をした星座のオリジナリティはプランシウスにあり、近世星座史の研究が進んだ[[2010年代]]以降はプランシウスの考案とされている{{R|Ridpath|Nenkan2013}}。{{-}}
古代の[[地中海]]([[古代ギリシア]])ではこの星座を見ることができ、ケンタウルス座に付属する星として記録が残されている。[[歳差運動]]の影響で、現在は地中海地域から見ることができなくなっている。
=== 中国 ===
現在のみなみじゅうじ座の領域は、中国の歴代王朝の版図からはほとんど見ることができなかったため、[[三垣]]や[[二十八宿]]には含まれなかった。この領域の星々が初めて記されたのは[[明|明代末期]]の[[1631年]]から[[1635年]]にかけて[[イエズス会|イエズス会士]][[アダム・シャール]]や[[徐光啓]]らにより編纂された天文書『[[崇禎暦書]]』であった{{R|Osaki1987}}。この頃、明の首都北京の天文台にはバイエルの『ウラノメトリア』が2冊あり、南天の新たな星官は『ウラノメトリア』に描かれた新星座をほとんどそのまま取り入れたものとなっている{{R|Osaki1987}}。これらの星座はそのまま[[清|清代]]の[[1752年]]に編纂された天文書『欽定儀象考成』に取り入れられており、みなみじゅうじ座の星は「十字架」という[[星官]]に配されていた{{R|Osaki1987}}。


=== 東南アジア ===
かつてはフランスの天文学者[[オギュスタン・ロワーエ]]によって[[1679年]]に設定されたと言われていたが、[[1598年]]に[[ペトルス・プランシウス]]によって独立した星座として描かれたのが先である{{R|Ridpath}}。
[[17世紀]]前半に南方と往来した[[天竺徳兵衛]]らの航海者は、この星々を「クルス」「クルセイロ」と呼んでいた{{R|Nojiri_Kurusu|Nojiri_jiten}}。また[[第二次世界大戦]]当時、[[フィリピン]]の[[マニラ]]の住民は「クルス」や「クロス」と呼んでおり{{R|Nojiri_Kurusu|Nojiri_jiten}}、[[インドネシア]]の[[ジャワ島]]の住民は十字でなく菱形に結んで小屋や蚊帳に見立てていた{{R|Nojiri_Kurusu|Nojiri_jiten}}。


== 呼称と方言 ==
== 呼称と方言 ==
日本では明治末期には「'''十字'''」という訳語が充てられていた。これは、[[1910年]](明治43年)2月に刊行された[[日本天文学会]]の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる{{R|AH191002}}。この訳名は、[[1925年]](大正14年)に初版が刊行された『[[理科年表]]』にも「'''十字(じふじ)'''」として引き継がれ{{R|Rika_1925}}、1943年(昭和18年)刊行の第19冊まで「十字」が使われた{{R|Rika_1943}}。しかし、[[1944年]](昭和19年)に[[学術研究会議]]が天文学用語の見直しを行い、『天文術語集』が刊行された際に、日本語名が「'''南十字(みなみじふじ)'''」と改められた{{R|1944jutsugo}}。これは、第一次世界大戦後に日本が[[南洋諸島]]を[[委任統治]]したことにより、Southern Crossを和訳した「南十字」や「南十字星」の名称が世間に広まったことによるものとされる{{Sfn|原恵|2007|p=246}}。戦後も継続して「南十字」が用いられ{{R|Rika_1949}}、[[1952年]](昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」{{R|gakujutsu1994}}とした際に、Crux の日本語名は「'''みなみじゆうじ'''」と改められた{{R|AH195210}}。さらに[[1974年]](昭和49年)1月に刊行された『学術用語集(天文学編)』で仮名遣いが改められ「'''みなみじゅうじ'''」が星座名とされた。この改定以降は「みなみじゅうじ」が星座名として継続して用いられている。
日本では戦時中まで、[[東京天文台]]系統では '''じゅうじ(十字)座'''{{R|rika}}{{Sfn|原恵|2007|p=246}}、[[京都大学]]宇宙物理学教室系統では'''じゅうじか(十字架)座'''{{Sfn|原恵|2007|p=246}}と呼ばれていた。戦前戦中にかけて日本の統治地域が南方に拡大されるにつれて Southern Crossを和訳した「南十字」「南十字星」の名称が世間にも広まった{{Sfn|原恵|2007|p=246}}。これを受け、1944年に刊行された学術用語の小冊子で「南十字座」の名前が採用され{{Sfn|原恵|2007|pp=44, 246}}、理科年表でも1947年刊行の第20冊から「南十字座」とされている{{R|rika2}}。


[[東亜天文学会|天文同好会]]{{efn2|現在の[[東亜天文学会]]。}}の[[山本一清]]らは異なる訳語を充てていた。天文同好会の編集により[[1928年]](昭和3年)4月に刊行された『[[天文年鑑]]』第1号では星座名 Crux に対して「'''じうじか(十字架)'''」の訳語を充て{{R|nenkan1928}}、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた{{R|nenkan1937}}。これについて山本は、東亜天文学会の会誌『[[天界]]』1934年8月号の「天文用語に關する私見と主張 (3)」という記事の中で{{行内引用|ついでに,Crux といふ星座を,單に「十字」と譯する人もあるが,之れは此のCruxといふ原語を思ひ付いた人と其の環境を全く無視した態度と言はなければならない.歐米人は直接間接に永く養はれて來たキリスト教の深い感化の中にゐる人々である.從つて彼等が南天の一角に見事な星々の盡くあの神祕的な形を見て,あれがキリスト教の象徴の「十字架」だと,特種な感激を以つて仰ぐといふのは,誠に當然なことである.從つて,Cruxを單に幾何學的な「十字形」といふだけでなく,もつと宗教的な連想を誘ふ「十字架」と譯した方が適當なのである.}}{{R|Yamamoto1934}}と述べている。山本は、私設天文台の「田上天文台」名義で刊行した『天文年表』の中でも「十字架」{{R|nenpyo1944}}や「じうじか」{{R|nenpyo1953}}の訳名を用い続けた。
[[17世紀]]前半に南方と往来した[[天竺徳兵衛]]ら航海者がこの星座を「クルス」「クルセイロ」と呼んでいた{{R|Nojiri_Kurusu|Nojiri_jiten}}。また[[第二次世界大戦]]当時、[[フィリピン]]の[[マニラ]]の住民が「クルス」「クロス」と呼んでおり{{R|Nojiri_Kurusu|Nojiri_jiten}}、[[インドネシア]]の[[ジャワ島]]の住民は十字でなく菱形に結んで小屋や蚊帳に見立てていた{{R|Nojiri_Kurusu|Nojiri_jiten}}。


現代の中国でも日本と同じく、'''南十字座'''と呼ばれている{{R|Osaki1987_2}}。
みなみじゅうじ座の星々について「八重山諸島では「はいむるぶし(南群星)」と呼ばれる」との説が広められている{{R|haimurubushi}}が、日本の星名に関する[[野尻抱影]]による先駆的な研究や21世紀に発表された北尾浩一による研究においても「はいむるぶし」の名称は一切採り上げられておらず{{R|Nojiri_jiten|Nojiri_Ryukyu|kitao}}{{Refnest|group="注"|琉球地方における[[ケンタウルス座アルファ星|ケンタウルス座&alpha;星]]と[[ケンタウルス座ベータ星|&beta;星]]への言及はあるが、南十字星への言及はない{{R|Nojiri_jiten|Nojiri_Ryukyu|kitao}}。}}、出処不明の呼称である。


=== 方言 ===
中国でもみなみじゅうじ座は[[中原地方]]では見えないので、伝統的な星座体系においては、古代からの[[三垣]][[二十八宿]]には含まれておらず、後に南天の星座が[[近南極星区]]の[[星官]]として追加された中では、みなみじゅうじ座に相当するものは「十字架」の名称となっている。
「八重山地方の言葉で「南十字星」を意味する「南群星(はいむるぶし)」という呼称がある」とする話が流布されている{{R|haimurubushi}}。しかしながら、[[野尻抱影]]による日本の星名に関する[[20世紀]]中頃の研究や、北尾浩一によるフィールドワークを主とした20世紀後半から21世紀にかけての研究では、琉球地方における[[ケンタウルス座アルファ星|ケンタウルス座&alpha;星]]と[[ケンタウルス座ベータ星|&beta;星]]に関する呼称は採集されているが、南十字を「はいむるぶし」と呼ぶものは採集できておらず{{R|Nojiri_jiten|Nojiri_Ryukyu|kitao}}、出所不明の呼称となっている。


== 観望 ==
== みなみじゅうじ座に由来する事物 ==
みなみじゅうじ座の4つの星が作る十字は、星の明るさが不揃いでまた小さいことから、明るさも揃ってより大きく見える「'''[[ニセ十字|にせ十字]]'''」を南十字と間違われやすい{{R|GaN}}。にせ十字と取り違えずに南十字を探すために、[[ケンタウルス座アルファ星|ケンタウルス座&alpha;星]]から[[ケンタウルス座ベータ星|ケンタウルス座&beta;星]]に向けて結んだ線分を&beta;星方向に伸ばす、という方法が知られている。そのため、英語圏でこの2星は '''Southern Pointers''' や '''The Pointers''' と呼ばれる{{R|GaN}}。
{{main|[[星座を扱った事物#みなみじゅうじ座]]<!--各種作品についてはこちらにお願いします-->}}
[[File:ViaLacteaMeridionalis.jpg|thumb|320px|「The Pointers」と呼ばれるケンタウルス座&alpha;・&beta;のペア(左)の線分を西に伸ばしてたどると南十字(中央)を見つけることができる。]]
みなみじゅうじ座は、古くは[[ブラジル帝国]]皇帝[[ペドロ1世 (ブラジル皇帝)|ペドロ1世]]のように署名に添える人物もいたほか、各地の旗や紋章に使われるなど、南半球の国や地域でアイデンティティの象徴とされた。[[ニュージーランドの国旗|ニュージーランド]]の国旗は、[[みなみじゅうじ座イプシロン星|&epsilon;星]]を省略してあるが、この星座を使っている。[[オーストラリアの国旗|オーストラリア]]、[[ブラジルの国旗|ブラジル]]、[[パプアニューギニアの国旗|パプアニューギニア]]および[[サモアの国旗|サモア]]の国旗には、&epsilon;星まで5つ星全部を使ってこのみなみじゅうじ座をあしらった模様がついている。
[[日本]]国内でも[[沖縄県]]、[[小笠原諸島]]などで観望が可能である。特に[[宮古列島]]、[[八重山列島]]からなる[[先島諸島]]では観光資源となっている。国内最南端の有人島である[[波照間島]]では[[1994年]](平成6年)に[[波照間島星空観測タワー]]が建設され{{efn2|2022年7月より休館中{{R|Taketomi20220727}}。}}、観望ツアーが企画されていた。また、[[2019年]]7月には[[石垣市]]が南十字星を市の星に定めた{{R|Yaeyamanippo20190711}}。この地域で観望できる時期は12月下旬から6月中旬までの約半年で、南中時刻の前後1時間程度が観望に適した時間帯とされる{{R|Murikabushi}}。先島諸島からは、星座は地平線に近く、靄が出現すると見えにくい。


なお、本州最南端の[[和歌山県]][[串本町]]などでも、時期や気候条件などが整えば、水平線直上に北端の&gamma;星を視認することができる。[[2017年]]2月には、[[佐賀県]][[武雄市]]在住のアマチュア天文家が[[小城市]]の[[天山 (佐賀県)|天山]](北緯33&deg;21&prime;)より&gamma;星の撮影に成功している{{R|Saga20170306}}。
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ファイル:Flag of Australia (converted).svg|[[オーストラリアの国旗]]
[[アメリカ合衆国]]では、ほぼ北緯20&deg;の[[ハワイ州]]全域や、[[フロリダ州]]南端(北緯24&deg;)の[[キーウェスト]]では南十字を観望できる。
ファイル:Flag of Samoa.svg|[[サモアの国旗]]

ファイル:Flag of New Zealand.svg|[[ニュージーランドの国旗]]
== 南十字に由来する事物 ==
ファイル:Flag of Papua New Guinea.svg|[[パプアニューギニアの国旗]]
{{main|[[星座を扱った事物#みなみじゅうじ座]]<!--各種作品についてはこちらにお願いします-->}}
ファイル:Flag of Brazil.svg|[[ブラジルの国旗]]
南十字は、古くは[[ブラジル帝国]]皇帝[[ペドロ1世 (ブラジル皇帝)|ペドロ1世]]のように署名に添える人物もいたほか、各地の旗や紋章に使われるなど、南半球の国や地域でアイデンティティの象徴とされた。[[ニュージーランドの国旗|ニュージーランド]]の国旗では&alpha;・&beta;・&gamma;・&delta;の4つの星が、[[オーストラリアの国旗|オーストラリア]]、[[サモアの国旗|サモア]]、[[パプアニューギニアの国旗|パプアニューギニア]]および[[ブラジルの国旗|ブラジル]]の国旗には&epsilon;星を含む5つの星がデザインされている。
ファイル: Southern_cross_appearing_on_a_number_of_flags.PNG|みなみじゅうじ座を使用した旗
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ファイル:Signature of Pedro I of Brazil.png|ブラジル帝国皇帝ペドロ1世の署名
| title=南十字がデザインされた国旗・その他の旗・署名
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| Flag of New Zealand.svg|[[ニュージーランドの国旗]]
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| Flag of Papua New Guinea.svg|[[パプアニューギニアの国旗]]
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| Southern_cross_appearing_on_a_number_of_flags.PNG|みなみじゅうじ座を使用した旗
| Signature of Pedro I of Brazil.png|ブラジル帝国皇帝ペドロ1世の署名
}}


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
=== 出典 ===
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}}
}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
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* {{Cite|和書|title=誰でも見つかる南十字星-南天の星空ガイド|author= 谷川正夫|date=2012-03|publisher=[[地人書館]]|isbn=978-4805208472}}
* {{Cite book|和書|author=原恵|authorlink=原恵|title=星座の神話 - 星座史と星名の意味|publisher=[[恒星社厚生閣]]|date=2007-02-28|edition=新装改訂版第4刷|isbn=978-4-7699-0825-8|ref=harv}}
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[ダイヤモンド・クロス]]
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* [[ニセ十字]]
* [[ニセ十字|にせ十字]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{Commons&cat|Crux|Crux}}
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{{Wiktionary|みなみじゅうじ座}}
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* [https://murikabushi.jp/?page_id=24 南十字星モニター] -[[石垣島天文台]]のウェブサイトに12月から6月にかけて公開される、リアルタイムで南十字星を見ることができるサイト。
* [https://nineplanets.org/the-southern-cross/ The Nine Planets The Southern Cross Asterism]
* [https://murikabushi.jp/?page_id=24 南十字星モニター] - [[石垣島天文台]]


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2023年3月16日 (木) 12:15時点における版

みなみじゅうじ座
Crux
Crux
属格 Crucis
略符 Cru
発音 [ˈkrʌks]、属格:/ˈkruːsɨs/
象徴 十字架[1]
概略位置:赤経  11h 56m 13.7s -  12h 57m 45.2s[1]
概略位置:赤緯 −55.68° - −64.70°[1]
広さ 68.447平方度[2]88位
バイエル符号/
フラムスティード番号
を持つ恒星数
19
3.0等より明るい恒星数 4
最輝星 α Cru(0.667
メシエ天体 0
隣接する星座 ケンタウルス座
はえ座

みなみじゅうじ座の星と暗黒星雲コールサック。
テンプレートを表示

みなみじゅうじ座(みなみじゅうじざ、Crux)は現代の88星座の1つ。16世紀末に考案された新しい星座で、全天88星座で最も小さい星座[2]で、東西北の3方向をケンタウルス座に、南方向ははえ座に囲まれている。

α・β・γ・δの明るい4つの星が形作る十字のアステリズムは「南十字星(みなみじゅうじせい)」「南十字」や「サザンクロス (: Southern Cross) 」と呼ばれる[3]天の南極近くにあるため、北半球では見ることができない地域が多い。α星とγ星を結んだ線分を、α星に向けて約4.5倍するとおよそ天の南極に到達する[4]。天の南極付近には南極星と言えるほど目印となる星がないため、大航海時代以降は天の南極の方角を知るために南十字が使われたとされる[5]

主な天体

恒星

2つの1等星α星とβ星以外に、2等星が1つ、3等星が1つある。γ星とα星を結んだ線分と、β星とδ星を結んだ線分が交差した十字形が十字架に喩えられる。南十字以外にも「宝石箱」の通称で知られる散開星団や「コールサック」と呼ばれる暗黒星雲など、小さいながら見どころの多い星座である。

2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって6個の恒星に固有名が認証されている[6]

  • α星見かけの明るさ1.28等のA星[7]と1.58等のB星[8]の連星で、全天21の1等星の1つとされる。A星はそれ自体が連星となっており、主星のAa星には「アクルックス[9](Acrux[6])」という固有名が付けられている。
  • β星:見かけの明るさ1.25等の1等星[10]。現在は全天21個の1等星の1つとされるが、かつては1.5等とされていたため、1等星として扱われていなかった[11]脈動変光星の一種の「ケフェウス座β型変光星」に分類され、約0.2365日の周期で1.23等から1.31等の範囲で変光する[12]。「ミモザ[9](Mimosa[6])」という固有名を持つ。
  • γ星:見かけの明るさ1.64等の赤色巨星で2等星[13]。十字を形作る星では唯一赤い色をしている。「ガクルックス[9](Gacrux[6])」という固有名を持つ。
  • δ星:見かけの明るさ2.752等の3等星[14]。十字を形作る4つの星の中で最も暗い。ケフェウス座β型変光星に分類され、約0.1510日の周期で2.78等から2.84等の範囲で変光する[15]。「イマイ[9](Imai[6])」という固有名を持つ。
  • ε星:見かけの明るさ3.59等の4等星[16]。「ギナン[9](Ginan[6])」という固有名を持つ。十字形を形作る星ではないが、オーストラリアパプアニューギニアサモアブラジルの国旗に他の4星とともに描かれている。
  • HD 108147:見かけの明るさ6.994等の7等星[17]。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoWorlds」でパラグアイ共和国に命名権が与えられ、主星はTupã、太陽系外惑星はTumearanduと命名された[18]

星団・星雲・銀河

由来と歴史

みなみじゅうじ座に属する星々は、紀元前地中海沿岸地域の人々にその存在が知られていた。例えば、2世紀頃にアレクサンドリアで活動したギリシャ人学者クラウディオス・プトレマイオスが著した『アルマゲスト』には、ケンタウルスの後ろ脚の一部として記録されている[5]。しかし、地球歳差運動の影響によって地中海沿岸地域からこれらの星々を見ることができなくなると、大航海時代に「再発見」されるまでこれらの星々は忘れられた存在となっていた。

南十字の星が欧州圏の人々に再発見されたのは、16世紀を迎える直前の1500年のことであった。ペドロ・アルヴァレス・カブラルのインド遠征に参加したジョアン・ファラス英語版は、1500年4月末に一行とともにブラジルを「発見」・上陸し、そこで観測した南天の星図をポルトガル王マヌエル1世宛の書簡に記して報告した。この星図に南十字らしき星々が描かれていたことから、ジョアン・ファラスは南十字の再発見者とされている[25]

天の南極とその周辺の星々、大小マゼラン雲などが描かれた、アンドレア・コルサーリからジュリアーノ・ディ・メディチ宛の書簡(1516年)。

16世紀イタリア探検家アメリゴ・ヴェスプッチは、ロレンツォ・ディ・ピエルフランチェスコ・デ・メディチ英語版に宛てた1502年の書簡の中で、現在のケンタウルス座α星β星やみなみじゅうじ座の星、コールサックと思われる天体の記録を残している[5]。また、同じくイタリアの探検家アンドレア・コルサーリ英語版は、彼のパトロンであったジュリアーノ・デ・メディチに宛てた1516年の書簡の中で、より正確な星図を著し[26]、「他の天の目印とは比較にならないほど美しい」とその美しさと天測航法における有用性を称えている[5][27][28]

現在のみなみじゅうじ座と同じ位置に初めて十字架が描かれたのは、1598年オランダ天文学者ペトルス・プランシウスがオランダの天文学者ヨドクス・ホンディウス英語版と共同製作した天球儀であった[5][29]。プランシウスは、これに先立つ1589年に地図製作者ヤコブ・ファン・ラングレン英語版と共同製作した天球儀に既に十字架の星座絵を描いていた[29][30]が、この十字架はエリダヌス座の南側、現在のかじき座がある辺りに描かれており、現在のみなみじゅうじ座とは場所が全く異なっていた[5][29]。プランシウスは1594年に製作した世界地図に描いた南天の星図でも同様にエリダヌス座の南側に十字架を描いている。これに対して、イギリス地理学者ロバート・ヒュース英語版は、自身の南大西洋航海での天体観測を元に著した1594年の著書『Tractatus de globis et eorum usu(天球儀・地球儀とその利用に関する論考)』の中で、「この十字架を構成する星々をプトレマイオスが知らなかったわけではない。というのも、それらはケンタウルスの足元にある明るい星々に他ならないからだ。」と明言した[5][31]。このヒュースの著書は1597年にホンディウスによってオランダ語に翻訳された。同年、コルネリス・デ・ハウトマン英語版の東インド遠征隊がオランダに帰還し、航海士ペーテル・ケイセルが遺した天体観測の記録がプランシウスの手に渡った。こうしてプランシウスは、ケイセルの記録とヒュースの著書の記述を照らし合わせてそれらが正しいことを知り、1598年に共同製作した天球儀では十字架の位置をケンタウルスの足元に変更して描いている[5]

ヨハン・バイエル『ウラノメトリア』(1603年)に描かれたケンタウルス座。脚元に十字架(のちのみなみじゅうじ座)が描かれている。

この1598年製作のプランシウスの天球儀では十字架の星々はケンタウルス座の一部として扱われた。これは1600年と1601年にそれぞれ製作されたホンディウスの天球儀でも同様であった。プランシウスやホンディウスの天球儀から星の位置をそっくり写し取ってドイツのヨハン・バイエル1603年に出版した星図・星表『ウラノメトリア』でも同様で、十字架の星々はケンタウルス座の一部とされた[32]。『ウラノメトリア』では、現在のみなみじゅうじ座α・β・γ・δに対して、ケンタウルス座のε・ζ・ν・ξのバイエル符号が振られている[32]

この天の十字架を独立した1つの星座として扱おうとする動きは、既にこの頃から見られていた。天球儀上で初めて十字架の星座名を記したのは、オランダの天文学者で地図製作者のウィレム・ブラウ英語版であった。1602年、ブラウは、プランシウスやヨドクス・ホンディウス英語版の天球儀から星の位置をコピーして製作した天球儀上で、プランシウスと同様にケンタウルスの脚元に十字架を描き、そこに Czuzero[注 1]と星座名を記した[33]。この年、オランダの第2次東インド遠征から帰還したオランダの航海士フレデリック・デ・ハウトマン[注 2]は、翌1603年に出版したマレー語辞典に付録として付けた星表の中で、南十字に対してオランダ語で十字架を意味する De Cruzero という星座名を付けて独立させた[5][34]。また、デ・ハウトマンから第2次東インド航海での観測記録を受け取ったブラウは、1603年にも天球儀を製作し、十字架の星座絵とともに El Cruzero というスペイン語の星座名を記して1つの独立した星座とした[35]。しかしながら、マレー語辞典や天球儀では『ウラノメトリア』ほどの影響力はなく、広く天文学者の間で知られることはなかった[36]

星図と星表で南十字を独立した星座として最初に採り上げたのは、ドイツの天文学者ヤコブス・バルチウスであった[5]。バルチウスは、1624年に出版した天文書『Usus Astronomicus Planisphaerii Stellati』の中で、星図に十字架と星座名 Crux を描き[5][37]、星表でも独立した星座として取り扱った[38]。これ以降、南十字はケンタウルス座から独立した1つの星座として扱われるようになった。

この星座に付けられたギリシア文字の符号は、バイエルが付けたいわゆる「バイエル符号」ではなく、18世紀フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユによって付けられたものである。ラカイユは、自身が考案した14星座のほか、バイエルが符号をつけていなかった南天の星座にギリシア文字の符号を付しており、みなみじゅうじ座の星々にもαからλまでの符号を付した[39][注 3]。ラカイユが付した符号は、19世紀イギリスの天文学者フランシス・ベイリーが編纂した『The Catalogue of Stars of the British Association for the Advancement of Science』(1845年)に全面的に引き継がれた[41]。さらに、アメリカの天文学者ベンジャミン・グールド1879年に出版した『Uranometria Argentina』で星座の境界線が引き直した際に新たにμ星が加えられた[42]

ヨハネス・ヘヴェリウスの死後に出版された天文書『Prodromus Astronomiae』(1690年)に掲載された星図に描かれたみなみじゅうじ座。

1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Crux、略称は Cru と正式に定められた[43]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。

かつては「フランスの天文学者オギュスタン・ロワーエによって1679年に設定された」とする説が流布されていた[44][45]。実際は、先述のように十字架の形をした星座のオリジナリティはプランシウスにあり、近世星座史の研究が進んだ2010年代以降はプランシウスの考案とされている[5][46]

中国

現在のみなみじゅうじ座の領域は、中国の歴代王朝の版図からはほとんど見ることができなかったため、三垣二十八宿には含まれなかった。この領域の星々が初めて記されたのは明代末期1631年から1635年にかけてイエズス会士アダム・シャール徐光啓らにより編纂された天文書『崇禎暦書』であった[47]。この頃、明の首都北京の天文台にはバイエルの『ウラノメトリア』が2冊あり、南天の新たな星官は『ウラノメトリア』に描かれた新星座をほとんどそのまま取り入れたものとなっている[47]。これらの星座はそのまま清代1752年に編纂された天文書『欽定儀象考成』に取り入れられており、みなみじゅうじ座の星は「十字架」という星官に配されていた[47]

東南アジア

17世紀前半に南方と往来した天竺徳兵衛らの航海者は、この星々を「クルス」「クルセイロ」と呼んでいた[48][49]。また第二次世界大戦当時、フィリピンマニラの住民は「クルス」や「クロス」と呼んでおり[48][49]インドネシアジャワ島の住民は十字でなく菱形に結んで小屋や蚊帳に見立てていた[48][49]

呼称と方言

日本では明治末期には「十字」という訳語が充てられていた。これは、1910年(明治43年)2月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第2巻11号に掲載された、星座の訳名が改訂されたことを伝える「星座名」という記事で確認できる[50]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「十字(じふじ)」として引き継がれ[51]、1943年(昭和18年)刊行の第19冊まで「十字」が使われた[52]。しかし、1944年(昭和19年)に学術研究会議が天文学用語の見直しを行い、『天文術語集』が刊行された際に、日本語名が「南十字(みなみじふじ)」と改められた[53]。これは、第一次世界大戦後に日本が南洋諸島委任統治したことにより、Southern Crossを和訳した「南十字」や「南十字星」の名称が世間に広まったことによるものとされる[54]。戦後も継続して「南十字」が用いられ[55]1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[56]とした際に、Crux の日本語名は「みなみじゆうじ」と改められた[57]。さらに1974年(昭和49年)1月に刊行された『学術用語集(天文学編)』で仮名遣いが改められ「みなみじゅうじ」が星座名とされた。この改定以降は「みなみじゅうじ」が星座名として継続して用いられている。

天文同好会[注 4]山本一清らは異なる訳語を充てていた。天文同好会の編集により1928年(昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑』第1号では星座名 Crux に対して「じうじか(十字架)」の訳語を充て[58]、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[59]。これについて山本は、東亜天文学会の会誌『天界』1934年8月号の「天文用語に關する私見と主張 (3)」という記事の中でついでに,Crux といふ星座を,單に「十字」と譯する人もあるが,之れは此のCruxといふ原語を思ひ付いた人と其の環境を全く無視した態度と言はなければならない.歐米人は直接間接に永く養はれて來たキリスト教の深い感化の中にゐる人々である.從つて彼等が南天の一角に見事な星々の盡くあの神祕的な形を見て,あれがキリスト教の象徴の「十字架」だと,特種な感激を以つて仰ぐといふのは,誠に當然なことである.從つて,Cruxを單に幾何學的な「十字形」といふだけでなく,もつと宗教的な連想を誘ふ「十字架」と譯した方が適當なのである.[60]と述べている。山本は、私設天文台の「田上天文台」名義で刊行した『天文年表』の中でも「十字架」[61]や「じうじか」[62]の訳名を用い続けた。

現代の中国でも日本と同じく、南十字座と呼ばれている[63]

方言

「八重山地方の言葉で「南十字星」を意味する「南群星(はいむるぶし)」という呼称がある」とする話が流布されている[64]。しかしながら、野尻抱影による日本の星名に関する20世紀中頃の研究や、北尾浩一によるフィールドワークを主とした20世紀後半から21世紀にかけての研究では、琉球地方におけるケンタウルス座α星β星に関する呼称は採集されているが、南十字を「はいむるぶし」と呼ぶものは採集できておらず[49][65][66]、出所不明の呼称となっている。

観望

みなみじゅうじ座の4つの星が作る十字は、星の明るさが不揃いでまた小さいことから、明るさも揃ってより大きく見える「にせ十字」を南十字と間違われやすい[3]。にせ十字と取り違えずに南十字を探すために、ケンタウルス座α星からケンタウルス座β星に向けて結んだ線分をβ星方向に伸ばす、という方法が知られている。そのため、英語圏でこの2星は Southern PointersThe Pointers と呼ばれる[3]

「The Pointers」と呼ばれるケンタウルス座α・βのペア(左)の線分を西に伸ばしてたどると南十字(中央)を見つけることができる。

日本国内でも沖縄県小笠原諸島などで観望が可能である。特に宮古列島八重山列島からなる先島諸島では観光資源となっている。国内最南端の有人島である波照間島では1994年(平成6年)に波照間島星空観測タワーが建設され[注 5]、観望ツアーが企画されていた。また、2019年7月には石垣市が南十字星を市の星に定めた[68]。この地域で観望できる時期は12月下旬から6月中旬までの約半年で、南中時刻の前後1時間程度が観望に適した時間帯とされる[69]。先島諸島からは、星座は地平線に近く、靄が出現すると見えにくい。

なお、本州最南端の和歌山県串本町などでも、時期や気候条件などが整えば、水平線直上に北端のγ星を視認することができる。2017年2月には、佐賀県武雄市在住のアマチュア天文家が小城市天山(北緯33°21′)よりγ星の撮影に成功している[70]

アメリカ合衆国では、ほぼ北緯20°のハワイ州全域や、フロリダ州南端(北緯24°)のキーウェストでは南十字を観望できる。

南十字に由来する事物

南十字は、古くはブラジル帝国皇帝ペドロ1世のように署名に添える人物もいたほか、各地の旗や紋章に使われるなど、南半球の国や地域でアイデンティティの象徴とされた。ニュージーランドの国旗ではα・β・γ・δの4つの星が、オーストラリアサモアパプアニューギニアおよびブラジルの国旗にはε星を含む5つの星がデザインされている。

脚注

注釈

  1. ^ Cruzeroの綴り誤りか? 詳細は不明。
  2. ^ コルネリス・デ・ハウトマンの弟。
  3. ^ 星座名は、星表では Crux とされたが、星図では Crux Australis とされている[39][40]
  4. ^ 現在の東亜天文学会
  5. ^ 2022年7月より休館中[67]

出典

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参考文献

関連項目

外部リンク

座標: 星図 12h 30m 00s, −60° 00′ 00″