「ミトラガイナ属」の版間の差分
自力で考えられるだけの手は百科事典としての体裁が崩れない程度に極力全て打っておきます。 |
前版に引き続きWikipedia:査読依頼/ミトラガイナ属 20211229でのご指摘を参考とした丸括弧の削減、その他の手直し。 |
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この属のもので初めて新種[[記載]]されたのは現在でいう {{Snamei|fr|Mitragyna inermis}} で、1793年に発行された |
この属のもので初めて新種[[記載]]されたのは現在でいう {{Snamei|fr|Mitragyna inermis}} で、1793年に発行された{{仮リンク|パウル・ウステリ|en|Paul Usteri}}の ''Delectus Opusculorum Botanicorum''〈植物学小論文精選集〉第2巻で[[カール・ルートヴィヒ・ヴィルデノウ]]が「[[ギニア]]」産(と記されてはいるが採取者の [[:en:Paul Erdmann Isert|Paul Erdmann Isert]] が赴いたのは当時の[[デンマーク領黄金海岸|デンマーク領ギニア]] = 現在の[[ガーナ]]<ref group="注">{{Snamei|Uncaria inermis}} の[[アイソタイプ]](副基準標本)は少なくともデンマークの[[コペンハーゲン大学]]とロシアの{{仮リンク|コマロフ植物研究所|en|Komarov Botanical Institute}}の2ヶ所に収蔵されているが、このうちコペンハーゲン大学に収蔵されているもの([https://plants.jstor.org/stable/10.5555/al.ap.specimen.c10004661 C10004661])はタイプ産地が「ガーナ(のアダ (Ada))」と明記されている。</ref>である)の {{Snamei|Uncaria inermis}} として発表した<ref>{{Cite book|last=Wildenow|first=Carolus Lvdovicvs|year=1793|chapter=Dvae plantae africanae|editor=Pavlvs Vsteri|title=Delectvs Opvscvlorvm Botanicorvm|volume=2|pages=[https://bibdigital.rjb.csic.es/idviewer/15048/207 199], [https://bibdigital.rjb.csic.es/idviewer/15048/476 t. 3]|language=la|ref=harv}}</ref>。次に記載されたのは現在でいう {{Snamei||Mitragyna parvifolia}} で、1795年[[南インド]]は[[コロマンデル海岸]]産の{{仮リンク|ナウクレア属|en|Nauclea}}の {{Snamei|Nauclea parvifolia}} として[[ウィリアム・ロクスバラ]]により記載された<ref>{{Cite book|last=Roxburgh|first=William|year=1795|title=Plants of the Coast of Coromandel; Selected from Drawings and Descriptions Presented to the Hon. Court of Directors of the East India Company|volume=1|location=London|pages=[https://bibdigital.rjb.csic.es/idviewer/14392/53 40], [https://bibdigital.rjb.csic.es/idviewer/14392/88 t. 52]|ref=harv}}</ref>。その後[[1839年]]にオランダの[[ピーター・ウィレム・コルトハルス|ピーテル・ウィレム・コルトハルス]]により初めてミトラガイナ({{Snamei|Mitragyna}})の属名が用いられることになる<ref name="pwk1839">{{Harvcoltxt|Korthals|1839}}.</ref>。この時コルトハルスはそれまでにナウクレア属として新種記載されていた2種<ref group="注">{{Snamei|Nauclea africana}} {{small|{{AU|Willd.}}}} [≡ {{Snamei|fr|Mitragyna inermis}} {{small|(Willd.) {{AU|Kuntze}}}}] と先述の {{Snamei|Nauclea parvifolia}}。</ref>をミトラガイナ属に組み替えるだけでなく、この時点では未知の種であった[[アヘンボク]]({{Snamei||Mitragyna speciosa}})の存在も示唆している<ref name="pwk1839" /><ref group="注">ただしアヘンボクに関しては形態についての説明 (記相) が付されていなかったためこの時点では新種記載したことにはならなかった。このように形態について記した文がない状態のまま新種や新属などとして示された学名を裸名({{lang-la|nomen nudum}})と呼ぶ。アヘンボクは後にコルトハルス自身の手により晴れて新種記載されることとなるが、その際の状況の詳細については [[#Stephegyne Korth.|#''Stephegyne'' {{small|Korth.}}]] を参照。</ref><ref name="cer1978a_65">{{Harvcoltxt|Ridsdale|1978a|p=65}}.</ref>。後に {{Snamei|Mitragyna parvifolia}} が慣習的にミトラガイナ属の[[タイプ種]]と見做されることとなった<ref>{{Harvcoltxt|Ridsdale|1978a|p=56}}.</ref>。そして[[オットー・クンツェ|カール・エルンスト・オットー・クンツェ]]や{{仮リンク|ジョージ・ダービー・ハヴィランド|en|George Darby Haviland}}が19世紀末に行った見直しにより先述の {{Snamei|Uncaria inermis}} のほか、それまでナウクレア属として新種記載されていた {{Snamei|Nauclea diversifolia}} {{small|{{AU|Wall.}} ex {{AU|G.Don}}}}・{{Snamei|N. rotundifolia}} {{small|Roxb.}}・{{Snamei|N. stipulosa}} {{small|{{AU|DC.}}}}・{{Snamei|N. tubulosa}} {{small|{{AU|Arn.}} ex {{AU|Thwaites}}}} や[[タニワタリノキ属]]({{Snamei||Adina (plant)|Adina}})として新種記載されていた {{Snamei|Adina rubrostipulata}} {{small|{{AU|K.Schum.}}}} が初めてミトラガイナ属に分類された<ref>{{Cite book|last=Kuntze|first=O.|year=1891|title=Revision Generum Plantarum|volume=1|location=Leipzig|publisher=Arthur Felix|pages=288–289|url=https://biodiversitylibrary.org/page/127748|ref=harv}}</ref><ref>{{Harvcoltxt|Haviland|1897|pp=71, 73}}.</ref>。その後[[#シノニム]]で触れるようにいくつかの種は一旦分類変更を経験することとなったが、それらに関しても {{Harvcoltxt|Löfstrand|Krüger|Razafimandimbison|Bremer|2014}} 以降は再びミトラガイナ属として扱われるようになった。現在この属として知られている10種の中で最も新種としての記載が遅かったのは {{Snamei|de|Mitragyna hirsuta}} で、先述のハヴィランドによるタニワタリノキ連の見直しの際に発表された<ref>{{Harvcoltxt|Haviland|1897|p=72}}.</ref>。 |
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==== シノニム ==== |
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===== ''Mamboga'' Blanco, nom. rej. および ''Bamboga'' orth. var. ===== |
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実は[[フィリピン]]で活動していた修道士の[[フランシスコ・マヌエル・ブランコ]] |
実は[[フィリピン]]で活動していた修道士の[[フランシスコ・マヌエル・ブランコ]]が1837年に {{Snamei|Mamboga capitata}} という新種の記載を行っている<ref>{{Cite book|last=Blanco|first=Fr Manuel|year=1837|title=Flora de Filipinas|location=Manila|page=140|url=https://bibdigital.rjb.csic.es/idviewer/9493/219}}</ref>。これは後に {{Snamei||Mitragyna diversifolia}} {{small|({{AU|Wall.}} ex {{AU|G.Don}}) {{AU|Havil.}}}} のシノニムとして扱われることとなる<ref name="cer1978a_65" />が、1837年初出の {{Snamei|Mamboga}} が1839年初出の {{Snamei|Mitragyna}} より先のことであり、このような場合[[国際藻類・菌類・植物命名規約]](ICN)の原則に従えばそれまでミトラガイナ属とされてきた種は先取権の観点から全て{{Snamei|Mamboga}}属に組み替えを行う必要がある。しかし{{Snamei|Mamboga}}属は属としての定義が杜撰で1897年までの時点でも「全く受容されてこなかった」とされ<ref>{{Harvcoltxt|Haviland|1897|p=6}}.</ref>、遅くとも1978年の時点で {{Snamei|Mitragyna}} の方が[[保留名|保存名]]<ref group="注">{{lang-la|nomen conservandum}}。</ref>とされており、一方の {{Snamei|Mamboga}} も明確に廃棄名<ref group="注">{{lang-la|nomen rejiciendum}}。</ref>とされている<ref>{{Harvcoltxt|Ridsdale|1978a|pp=56, 65}}.</ref>(2018年度版のICNの保留名・廃棄名リストにも掲載されている<ref>[[:es:John H. Wiersema|Wiersema, J.H.]], Turland, N.J., Barrie, F.R., [[:en:Werner Greuter|Greuter, W.]], Hawksworth, D.L., Herendeen, P.S., [[:en:Sandra Knapp|Knapp, S.]], Kusber, W.-H., Li, D.-Z., Marhold, K., May, T.W., McNeill, J., Monro, A.M., Prado, J., Price, M.J. & Smith, G.F. (eds.) 2018+ [continuously updated]: ''International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants (Shenzhen Code) adopted by the Nineteenth International Botanical Congress Shenzhen, China, July 2017'': Appendices I–VII. Online at < https://naturalhistory2.si.edu/botany/codes-proposals/> [accessed 29 December 2021].</ref>)。なお {{Snamei|Bamboga}} は[[アンリ・エルネスト・バイヨン]]が1880年の ''Histoire des plantes''〈植物の歴史〉第7巻、[https://biodiversitylibrary.org/page/28858528 p. 364] で左記のブランコの文献を引用する際に現れた表記揺れである。 |
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===== ''Stephegyne'' Korth. ===== |
===== ''Stephegyne'' Korth. ===== |
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コルトハルスは1840年代初頭になって[[アヘンボク]]の形態の記相を行った<ref>{{Harvcoltxt|Korthals|1839–1842|pp=160–161}}.</ref>が、この際にそれ以前の段階で使用していた属名 {{Snamei|Mitragyna}} を突如 {{Snamei|Stephegyne}} というものに差し替えようとし |
コルトハルスは1840年代初頭になって[[アヘンボク]]の形態の記相を行った<ref>{{Harvcoltxt|Korthals|1839–1842|pp=160–161}}.</ref>が、この際にそれ以前の段階で使用していた属名 {{Snamei|Mitragyna}} を突如 {{Snamei|Stephegyne}} というものに差し替えようとした<ref name="cer1978a_65" />。しかしこの時に同文献に掲載した図版([[#図版]]を参照)に添えられた学名は {{Snamei|Mitragyna speciosa}} のままであり、結果的に {{Snamei|Mitragyna speciosa}} としてのアヘンボクの命名者をコルトハルスとするか、あるいは後にコルトハルスの文献を引用したハヴィランドとするかで混乱が生じることとなった<ref group="注" name="ahenboku_meimei">ハヴィランドを命名者とする場合はコルトハルスによる {{Snamei|Stephegyne speciosa}} を基となる学名({{仮リンク|バシオニム|en|Basionym}})、1897年のハヴィランドによるコルトハルスの文献からの引用を {{Snamei|Stephegyne speciosa}} からミトラガイナ属への組み替えと見做し、学名の表示は {{Snamei|Mitragyna speciosa}} '''({{AU|Korth.}}) {{AU|Havil.}}''' となる。</ref>。 |
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===== ''Paradina'' Pierre ex Pit. ===== |
===== ''Paradina'' Pierre ex Pit. ===== |
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フランスの |
フランスの{{仮リンク|ジャン・バティスト・ルイ・ピエール|en|Jean Baptiste Louis Pierre}}が当時既に記載されていた {{Snamei|de|Mitragyna hirsuta}} {{small|Havil.}} を新たな属に組み替えるために使用したもので、{{仮リンク|シャルル=ジョゼフ・マリー・ピタール|en|Charles-Joseph Marie Pitard}}が ''Flore générale de l’Indo-Chine'' 第3巻、[https://biodiversitylibrary.org/page/27562456 p. 39] で正式に記載したが、結局ミトラガイナ属に戻された<ref>{{Harvcoltxt|Ridsdale|1978a|p=59}}.</ref>。 |
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===== ''Hallea'' J.-F.Leroy, nom. illeg. および ''Fleroya'' Y.F.Deng ===== |
===== ''Hallea'' J.-F.Leroy, nom. illeg. および ''Fleroya'' Y.F.Deng ===== |
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1975年、フランスの |
1975年、フランスの{{仮リンク|ジャン=フランソワ・ルロワ (植物学者)|label=ジャン=フランソワ・ルロワ|fr|Jean-François Leroy (botaniste)}}は熱帯アフリカ産のミトラガイナ属のうち3種<ref group="注">[[バイヤ]]({{Snamei|Mitragyna ciliata}} {{small|{{AU|Aubrév.}} & {{AU|Pellegr.}}}})、{{Snamei|Mitragyna rubrostipulata}} {{small|({{AU|K.Schum.}}) Havil.}}、{{Snamei|Mitragyna stipulosa}} {{small|({{AU|DC.}}) {{AU|Kuntze}}}}。</ref>を {{Snamei|Hallea}} という新属に組み替えた<ref>{{Harvcoltxt|Leroy|1975}}.</ref>。ルロワが記したこの3種についての記相からは、頭状花の位置・付属物を有する({{lang-en-short|appendiculate}})外側が有毛の花冠裂片・[[葯]]が直立し花冠開口部に納まっていること・[[柱頭]]の形状という点で共通性があるものとして扱われていることを読み取ることができるが、{{仮リンク|コリン・リズデイル|es|Colin Ernest Ridsdale}}は{{Snamei|Hallea}}属と狭義のミトラガイナ属の頭状花の位置・配置にはルロワが報告しているほどの明快な差異は認められないとし、3種をミトラガイナ属へと戻すこととした<ref group="注">なお3種のうちバイヤに関しては[[コートジボワール]]産の {{Snamei|Mitragyna ciliata}} の新種記載が1936年であるのに対し、それよりも早い1920年に新種記載された[[カメルーン]]産の {{Snamei|Adina ledermannii}} {{small|{{AU|K.Krause}}}} が同一の種であることが判明したために、リズデイルは新たに {{Snamei|Mitragyna ledermannii}} という組み替えを発表した。</ref><ref>{{Harvcoltxt|Ridsdale|1978a|pp=57, 68}}.</ref>。しかし[[鄧雲飛]]([[species:Yun Fei Deng|Deng Yunfei]])はあくまでもルロワの分類自体は正しいと考え、ただ {{Snamei|Hallea}} という属名が既に1948年にG・B・マシューズ(G. B. Matthews)により化石種の植物に用いられていて実は非合法名<ref group="注">{{lang-la|nomen illegitimum}}。</ref>であるという問題意識から、2007年に {{Snamei|Hallea}} に代わる属名として {{Snamei|Fleroya}} の提案を行った<ref>{{Cite journal|last=Deng|first=Yunfei|authorlink=species:Yun Fei Deng|year=2007|title=''Fleroya'', a substitute name for ''Hallea'' J.-F. Leroy (Rubiaceae)|journal=Taxon|volume=56|issue=1|pages=247–248|doi=10.2307/25065759<!--機能せず-->|jstor=25065759|ref=harv}}</ref>。ただ結局この {{Snamei|Hallea}} (≡ {{Snamei|Fleroya}}) という分類は {{Harvcoltxt|Razafimandimbison|Bremer|2002}} および {{Harvcoltxt|Manns|Bremer|2010}} で[[側系統]]であるという見方が示され、最終的に {{Harvcoltxt|Löfstrand|Krüger|Razafimandimbison|Bremer|2014}} により否定されることとなった。 |
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=== 属の位置付け === |
=== 属の位置付け === |
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ミトラガイナ属はアカネ科内では {{Harvcoltxt|Schumann|1891}} が定義した[[タニワタリノキ連]]({{Sname||Naucleeae}})に含められた。このタニワタリノキ連には球形の[[頭状花序]]を特徴とするミトラガイナ属・[[タニワタリノキ属]]({{Snamei||Adina (plant)|Adina}})・[[ナウクレア属]]({{Snamei||Nauclea}})・[[カギカズラ属]]({{Snamei||Uncaria}}; シノニム: {{Snamei|Ourouparia}})などが集められ、{{Harvcoltxt|Verdcourt|1958}} もこの枠組みを追認したが逆に言えばそれぐらいしか共通性がなく、同様の特徴はアカネ科のほかの[[連 (分類学)|連]]にも見られるとして[[コリン・リズデイル]]はミトラガイナ属とカギカズラ属をタニワタリノキ連から[[キナノキ連]]({{Sname||Cinchoneae}})に移して亜連 |
ミトラガイナ属はアカネ科内では {{Harvcoltxt|Schumann|1891}} が定義した[[タニワタリノキ連]]({{Sname||Naucleeae}})に含められた。このタニワタリノキ連には球形の[[頭状花序]]を特徴とするミトラガイナ属・[[タニワタリノキ属]]({{Snamei||Adina (plant)|Adina}})・[[ナウクレア属]]({{Snamei||Nauclea}})・[[カギカズラ属]]({{Snamei||Uncaria}}; シノニム: {{Snamei|Ourouparia}})などが集められ、{{Harvcoltxt|Verdcourt|1958}} もこの枠組みを追認したが逆に言えばそれぐらいしか共通性がなく、同様の特徴はアカネ科のほかの[[連 (分類学)|連]]にも見られるとして[[コリン・リズデイル]]はミトラガイナ属とカギカズラ属をタニワタリノキ連から[[キナノキ連]]({{Sname||Cinchoneae}})に移して亜連<ref group="注">{{lang-en-short|subtribe}}。連よりもさらに下の階級。</ref> Mitragyninae として括る措置を取った<ref>{{Harvcoltxt|Ridsdale|Bakhuizen van den Brink Jr|1975|p=541}}.</ref>。しかし1995年にアカネ科の複数属から代表して1種ずつ選び<ref group="注">ミトラガイナ属からは当時 {{Snamei|Hallea rubrostipulata}} と分類されていた {{Snamei|Mitragyna rubrostipulata}} が選ばれ、カギカズラ属からも[[カギカズラ]] {{Snamei||Uncaria rhynchophylla}} {{small|({{AU|Miq.}}) Miq.}} が選ばれた。</ref>、その{{仮リンク|葉緑体DNA|en|chloroplast DNA}}の[[タンパク質]]コードに関わる[[遺伝子]]​rbcLの連続(シークエンス)を分析する手法による科内の系統関係の検討が試みられたところ、キナノキ連の亜連 Mitragyninae という区分は[[側系統]]的であり、この亜連の位置付けを支持する根拠は一切存在しないという結果が得られた<ref>{{Harvcoltxt|Bremer|Andreasen|Olsson|1995|pp=383, 386, 392}}.</ref>。さらに21世紀に入ってから[[リボソームDNA]]の[[内部転写スペーサー]]<ref group="注">{{lang-en-short|[[:en:internal transcribed spacer|internal transcribed spacer]]}}; 略称: ITS。</ref>領域や葉緑体DNAのrbcL領域やコーディングとは無関係なtrnT-F領域の解析に形態的特徴を加味した検討も行われた結果、ミトラガイナ属はカギカズラ属などと共に再びタニワタリノキ連に置かれるようになった<ref>{{Harvcoltxt|Razafimandimbison|Bremer|2002}}.</ref>。 |
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ミトラガイナ属とほかのタニワタリノキ連の属とを広く分ける場合に際立つ特徴となるのは、先述の[[#属名]]通り僧帽状の雌蕊を有するということであり、加えてH字状の内口 |
ミトラガイナ属とほかのタニワタリノキ連の属とを広く分ける場合に際立つ特徴となるのは、先述の[[#属名]]通り僧帽状の雌蕊を有するということであり、加えてH字状の内口<ref group="注">{{lang-en-short|endoapertures}}。</ref>付きの3-帯溝孔<ref group="注">{{lang-en-short|3-zonocolporate}}。花粉の外膜に細長い切れ目と丸い穴を持つ発芽口が赤道上に3つ存在するということ。<!--参考: {{Cite web|url=https://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/keitai/kafunryuu.html|title=花粉粒|author=福原達人|work=植物形態学|date=2021-12-13|accessdate=2021-12-23}}--></ref>の[[花粉]]を持つこと({{Harvcoltxt|Huysmans|Robbrecht|Smets|1994}})や、室<!--この場合は「小房」の方が適切か?-->ごとに底面についた多数の[[胚珠]]({{Harvcoltxt|Razafimandimbison|Bremer|2002}})といった点も挙げられる<ref>{{Harvcoltxt|Löfstrand|Krüger|Razafimandimbison|Bremer|2014|p=308}}.</ref>。これは[[花粉]]や[[分子学]]的な観点からの研究が進められてから構築された区分方法であるが、かつてミトラガイナ属とカギカズラ属をタニワタリノキ連から分離しようと試みた {{Harvcoltxt|Ridsdale|Bakhuizen van den Brink Jr|1975|p=543}} は花粉の関係しない形態の面から以下のような検索表を設定している。なお {{Harvcoltxt|Ridsdale|Bakhuizen van den Brink Jr|1975}} はほかに[[ヤマタマガサ属]]({{Snamei||Cephalanthus}})もタニワタリノキ連から除いてアカネ科内で独立の連 Cephalantheae を為すとしており、また後に当時の既知の種から{{Snamei||Diyaminauclea}}属・{{Snamei||Khasiaclunea}}属・{{Snamei||Ludekia}}属・{{Snamei||Ochreinauclea}}属などを新属として設けて移した際、リズデイルはこれらも彼のいう「狭義のタニワタリノキ連」("Naucleeae ''s.s.''") の下に配置している<ref>{{Harvcoltxt|Ridsdale|1978b}}.</ref>ということ、またこの時は[[ヨヒンベノキ属]]({{Snamei||Corynanthe}}; シノニム: {{Snamei|Pausinystalia}})もタニワタリノキ連には含まれていなかった<ref>{{Harvcoltxt|Razafimandimbison|Bremer|2002|p=1027}}.</ref>ということに留意されたい。なおヤマタマガサ属やヨヒンベノキ属に関しては {{Harvcoltxt|Razafimandimbison|Bremer|2002}} で改めてタニワタリノキ連の下に置かれるようになった。 |
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* ミトラガイナ属およびカギカズラ属……2つの[[胎座]]が隔壁<!--septum-->に沿着するか、あるいは上部3分の1で<!--in the upper third-->接し、長く下垂し、厚く、暗褐色から黒色である; 胎座ごとの胚珠や種子が胎座全体に沿って上向きの[[鱗]]状に重なり合っている。小果の集合が[[花托]]と結合しておらず、果実の内果皮が上から下へ裂ける。花冠裂片が互いに重ならずに接し合う敷石状である。 |
* ミトラガイナ属およびカギカズラ属……2つの[[胎座]]が隔壁<!--septum-->に沿着するか、あるいは上部3分の1で<!--in the upper third-->接し、長く下垂し、厚く、暗褐色から黒色である; 胎座ごとの胚珠や種子が胎座全体に沿って上向きの[[鱗]]状に重なり合っている。小果の集合が[[花托]]と結合しておらず、果実の内果皮が上から下へ裂ける。花冠裂片が互いに重ならずに接し合う敷石状である。 |
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* 「狭義のタニワタリノキ連」およびヤマタマガサ属……2つの胎座は隔壁に様々な接し方をしている; 上部3分の1で接している場合は2本の短い上向きの腕と長い下向きの足でY字形となっているか、あるいは小さく短い倒卵形の突起である; 中間で隔壁に接している場合は中央に結合<!--attachment-->のある円盤状か、あるいは横長からわずかに2裂し枝分かれがない; 胎座の色は淡色である; 胎座ごとの胚珠や種子は下垂する(こちらの方が優勢)か、あるいは全方向にだだ広がり、決して胎座の全長に沿って上向きに重なり合わない。小果の集合は花托と結合せずに内果皮が下から上へ裂けるか、あるいは緩く結合して不裂開か、あるいは子房と小果の集合が融合して(疑似的な)集合果となる。花冠裂片は鱗状に重なり合う(アジアや[[マレー群島区系]]では重なり合わないものもある) |
* 「狭義のタニワタリノキ連」およびヤマタマガサ属……2つの胎座は隔壁に様々な接し方をしている; 上部3分の1で接している場合は2本の短い上向きの腕と長い下向きの足でY字形となっているか、あるいは小さく短い倒卵形の突起である; 中間で隔壁に接している場合は中央に結合<!--attachment-->のある円盤状か、あるいは横長からわずかに2裂し枝分かれがない; 胎座の色は淡色である; 胎座ごとの胚珠や種子は下垂する(こちらの方が優勢)か、あるいは全方向にだだ広がり、決して胎座の全長に沿って上向きに重なり合わない。小果の集合は花托と結合せずに内果皮が下から上へ裂けるか、あるいは緩く結合して不裂開か、あるいは子房と小果の集合が融合して(疑似的な)集合果となる。花冠裂片は鱗状に重なり合う(アジアや[[マレー群島区系]]では重なり合わないものもある) |
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** 5b. 萼は柄の中間よりも高い位置にあり、およそ花同士の間にある小苞の先端部分の高さか、少し高いか、わずかに低く、若い頭状花では小苞で隠れるか小苞の上に突出する。花冠管は必ず花冠裂片の2倍未満で、喉は有毛である。側脈は5-10対である。…… 7. へ |
** 5b. 萼は柄の中間よりも高い位置にあり、およそ花同士の間にある小苞の先端部分の高さか、少し高いか、わずかに低く、若い頭状花では小苞で隠れるか小苞の上に突出する。花冠管は必ず花冠裂片の2倍未満で、喉は有毛である。側脈は5-10対である。…… 7. へ |
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** 6a. 花冠筒が最短でも花冠裂片の長さの2倍はあり、喉が無毛でまばらに毛が生えているものもあるがその場合に毛は突出しない。花同士の間の小苞は密に細かく繊毛が生えているか、あるいは無毛からまばらに繊毛が生えている([[インド]]北東部産、[[ビルマ]]産) |
** 6a. 花冠筒が最短でも花冠裂片の長さの2倍はあり、喉が無毛でまばらに毛が生えているものもあるがその場合に毛は突出しない。花同士の間の小苞は密に細かく繊毛が生えているか、あるいは無毛からまばらに繊毛が生えている([[インド]]北東部産、[[ビルマ]]産)ものの場合、葉の形状が多様で、概して8×4センチメートル以下、側脈が5-8対である。大陸アジア産。…… {{Snamei|[[#Mitragyna parvifolia (Roxb.) Korth.|M. parvifolia]]}} |
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** 6b. 花冠筒は花冠裂片の2倍未満であり、喉は有毛で、毛は顕著に突出する。花同士の間の小苞は無毛からまばらに繊毛が生えている。葉は卵形から楕円形で、概して8×4センチメートルを超え、側脈は(9-)11-15対である。ビルマ、[[タイ王国|タイ]](栽培品)、マレー群島区系[ニューギニアを含む]に分布する…… |
** 6b. 花冠筒は花冠裂片の2倍未満であり、喉は有毛で、毛は顕著に突出する。花同士の間の小苞は無毛からまばらに繊毛が生えている。葉は卵形から楕円形で、概して8×4センチメートルを超え、側脈は(9-)11-15対である。ビルマ、[[タイ王国|タイ]](栽培品)、マレー群島区系[ニューギニアを含む]に分布する…… [[#Mitragyna speciosa|アヘンボク ({{Snamei|M. speciosa}})]] |
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** 7a. 萼の長さがほぼ萼筒の長さと等しい; 萼片がふつう花同士の間にある小苞の先端部分よりも高い位置にあるため、若い頭状花中にははっきりと視認できる; 花同士の間にある小苞がふつう無毛で、繊毛が見られるのは例外的な事例である。成熟した葉が平均6-14×3-9センチメートルで、側脈が中肋から(55-)60-75度の角度で伸びる。ビルマ、タイ、[[ラオス]]、[[カンボジア]]、[[ベトナム]]、マレー群島区系産。…… {{Snamei|[[#Mitragyna diversifolia (Wall. ex G.Don) Havil.|M. diversifolia]]}} |
** 7a. 萼の長さがほぼ萼筒の長さと等しい; 萼片がふつう花同士の間にある小苞の先端部分よりも高い位置にあるため、若い頭状花中にははっきりと視認できる; 花同士の間にある小苞がふつう無毛で、繊毛が見られるのは例外的な事例である。成熟した葉が平均6-14×3-9センチメートルで、側脈が中肋から(55-)60-75度の角度で伸びる。ビルマ、タイ、[[ラオス]]、[[カンボジア]]、[[ベトナム]]、マレー群島区系産。…… {{Snamei|[[#Mitragyna diversifolia (Wall. ex G.Don) Havil.|M. diversifolia]]}} |
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** 9a. 萼片が切形から波状縁形で、縁は無毛、花同士の間の小苞と同じ高さに位置するかあるいはそれよりわずかに短めで、若芽中には視認できない。枝がつける頭状花の数がふつう10未満である…… {{Snamei|[[#Mitragyna stipulosa (DC.) Kuntze|M. stipulosa]]}} |
** 9a. 萼片が切形から波状縁形で、縁は無毛、花同士の間の小苞と同じ高さに位置するかあるいはそれよりわずかに短めで、若芽中には視認できない。枝がつける頭状花の数がふつう10未満である…… {{Snamei|[[#Mitragyna stipulosa (DC.) Kuntze|M. stipulosa]]}} |
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** 9b. 萼片は短い小歯状からわずかにデルタ字状で、縁に繊毛があり、花同士の間の小苞よりも高い位置にあり、若い頭状花中にははっきりと視認できる。枝がつける頭状花の数はふつう10を超える<ref group="注">{{Harvcoltxt|Aubréville|1959|p=259}} の {{Snamei|Mitragyna ciliata}} の図版も参照されたい。</ref>…… |
** 9b. 萼片は短い小歯状からわずかにデルタ字状で、縁に繊毛があり、花同士の間の小苞よりも高い位置にあり、若い頭状花中にははっきりと視認できる。枝がつける頭状花の数はふつう10を超える<ref group="注">{{Harvcoltxt|Aubréville|1959|p=259}} の {{Snamei|Mitragyna ciliata}} の図版も参照されたい。</ref>…… [[#Mitragyna ledermannii (K.Krause) Ridsdale|バイヤ ({{Snamei|M. ledermannii}})]] |
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==== 種の一覧 ==== |
==== 種の一覧 ==== |
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この節では種を種小名のアルファベット順で列挙し、さらに日本語名や[[シノニム]](数が多いものもあるため、原則として記事中で言及されたもののみに限る。そのほかのものに関しては[[ウィキスピーシーズ]]のリンク先を参照。なお太字は現行の学名の基となった |
この節では種を種小名のアルファベット順で列挙し、さらに日本語名や[[シノニム]](数が多いものもあるため、原則として記事中で言及されたもののみに限る。そのほかのものに関しては[[ウィキスピーシーズ]]のリンク先を参照。なお太字は現行の学名の基となった{{仮リンク|バシオニム|en|Basionym}} であることを表す)、分布情報(特に断りが無い場合は {{Harvcoltxt|Govaerts ''et al.''|2021}} による)、用途も付したものを一覧の形で紹介する。 |
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===== ''Mitragyna diversifolia'' (Wall. ex G.Don) Havil. ===== |
===== ''Mitragyna diversifolia'' (Wall. ex G.Don) Havil. ===== |
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===== ''Mitragyna speciosa'' ===== |
===== ''Mitragyna speciosa'' ===== |
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[[File:Kratom leaves.jpg|thumb|right|アヘンボク]] |
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* 学名: {{Snamei||Mitragyna speciosa}}<sup>([[species:Mitragyna speciosa|Wikispecies]])</sup><ref group="注" name="ahenboku_meimei" /> |
* 学名: {{Snamei||Mitragyna speciosa}}<sup>([[species:Mitragyna speciosa|Wikispecies]])</sup><ref group="注" name="ahenboku_meimei" /> |
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* 日本語名: [[アヘンボク]]<ref>{{Cite book|和書|first=E. J . H.|last=コーナー|last2=渡辺|first2=清彦|authorlink=:en:E. J. H. Corner|authorlink2=渡辺清彦 (植物学者)|title=図説熱帯植物集成|publisher=廣川書店|year=1969|page=698|ref=harv}}</ref> |
* 日本語名: [[アヘンボク]]<ref>{{Cite book|和書|first=E. J . H.|last=コーナー|last2=渡辺|first2=清彦|authorlink=:en:E. J. H. Corner|authorlink2=渡辺清彦 (植物学者)|title=図説熱帯植物集成|publisher=廣川書店|year=1969|page=698|ref=harv}}</ref> |
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=== 薬用 === |
=== 薬用 === |
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[[File:Kratom leafes.jpg|thumb|250px|アヘンボク(通称: クラトム)の葉]] |
[[File:Kratom leafes.jpg|thumb|250px|アヘンボク(通称: クラトム)の葉]] |
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[[クラトム]] |
[[クラトム]]<ref group="注">{{Lang-th|[[:th:กระท่อม (พืช)|กระท่อม]]}} {{IPA|kra.tʰɔ̂ːm}} {{small|クラトーム}}。</ref>という通称でも知られる[[アヘンボク]]({{Snamei||Mitragyna speciosa}})は多数の[[インドールアルカロイド]]を含むが、その主成分は[[ミトラギニン]]<ref group="注">[[ミトラガイニン]]や[[ミトラジニン]]という表記例も見られる。{{lang-en-short|[[:en:mitragynine|mitragynine]]}}。</ref>といい、化学的に[[ヨヒンビン]]{{refnest|group="注"|{{lang-en-short|yohimbine}}。ミトラガイナ属と同じアカネ科タニワタリノキ連に属す[[ヨヒンベノキ]]({{Snamei||Corynanthe johimbe}} {{small|K.Schum.}}; シノニム: {{Snamei|Pausinystalia johimbe}} {{small|(K.Schum.) Pierre}})などから得られるアルカロイドで、その[[化合物]]である塩酸ヨヒンビンは[[催淫剤]]となる<ref>{{Harvcoltxt|熱帯植物研究会 編|1996|p=427}}.</ref>。}}や[[シロシビン]]{{refnest|group="注"|{{Lang-en-short|psilocybine}}。[[シビレタケ属]]({{Snamei||Psilocybe}})などのキノコに含まれ幻覚作用のあるアルカロイドの一種で、[[シロシン]]の[[リン酸エステル]]化合物である<ref>{{Harvcoltxt|シュルテスら|2007|pp=22, 159}}.</ref>。}}に類似した非常に強い精神作用性物質である<ref>{{Harvcoltxt|シュルテスら|2007|pp=49, 73}}.</ref>。19世紀の時点で既に[[アヘン]]の代替物やアヘン中毒の治療薬としての使用が報告され、個人的な研究や文献中の描写から[[コカイン]]のような興奮作用と同時に、[[モルヒネ]]のような鎮静作用があることが明らかとなっている<ref name="kairaku_49" />。服用方法は乾燥した葉を吸うか噛む、あるいはそれをエキス剤とすることである<ref name="kairaku_49" />。新鮮な葉を噛んだ場合、5-10分以内に興奮作用が現れ始める<ref name="kairaku_49" />。[[日本]]では同属の別種との交雑種も含め、ミトラジニンと共に2016年3月に薬事・食品衛生審議会薬事分科会指定薬物部会の判断を経て[[厚生労働省]]により[[指定薬物]]とする[[省令]]が施行され、医療などの目的以外での製造・輸入・販売・所持・使用等が禁止された<ref name="shiteiyakubutsu" />。アヘンボクの自生地の一つである[[タイ王国|タイ]]でも非合法化されていたが、2021年8月下旬に一定の条件<ref group="注">輸出入を認可制とする、18歳未満の人・[[妊娠]]中の女性・乳児への販売は禁止とする、規定の量を超えて販売してはならない、など。</ref>付きで解禁された<ref>{{Cite web|url=https://www.bangkokbiznews.com/lifestyle/956410|title=เมื่อ ‘พืชกระท่อม’ ถูกกฎหมาย คนไทยต้องรู้อะไรบ้าง? [クラトームが合法化されたら、タイ人は何を知るべきか?]|publisher=กรุงเทพธุรกิจ<!--ออนไลน์-->|date=2021-08-24|accessdate=2021-12-23|language=th}}</ref>。 |
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また {{Snamei|de|Mitragyna inermis}} は[[コートジボワール]]では主に[[解熱剤]]として樹皮や葉のついた枝の煎じ薬が服用され、[[リンコフィリン]] |
また {{Snamei|de|Mitragyna inermis}} は[[コートジボワール]]では主に[[解熱剤]]として樹皮や葉のついた枝の煎じ薬が服用され、[[リンコフィリン]]<ref group="注">{{lang-en-short|[[:en:rhynchophylline|rhynchophylline]]}}。mitrincomine ともいう。</ref>など多種多様なアルカロイドを含む<ref>{{Harvcoltxt|Kerharo|Bouquet|1950|p=204}}.</ref>。 |
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さらに[[バイヤ]]({{Snamei|fr|Mitragyna ledermannii}}; シノニム: {{Snamei|M. ciliata}})や {{Snamei|Mitragyna stipulosa}} もコートジボワールでは {{Snamei|M. inermis}} 同様に解熱剤に用いられるほか、その樹皮や葉が時に[[淋疾]]や[[赤痢]]の処置に使用されることがある<ref name="k&b_bahia">{{Harvcoltxt|Kerharo|Bouquet|1950|pp=204–205}}.</ref>。これらの樹種からは mitrinermine、[[ミトラフィリン]] |
さらに[[バイヤ]]({{Snamei|fr|Mitragyna ledermannii}}; シノニム: {{Snamei|M. ciliata}})や {{Snamei|Mitragyna stipulosa}} もコートジボワールでは {{Snamei|M. inermis}} 同様に解熱剤に用いられるほか、その樹皮や葉が時に[[淋疾]]や[[赤痢]]の処置に使用されることがある<ref name="k&b_bahia">{{Harvcoltxt|Kerharo|Bouquet|1950|pp=204–205}}.</ref>。これらの樹種からは mitrinermine、[[ミトラフィリン]]<ref group="注">{{lang-en-short|[[:en:mitraphylline|mitraphylline]]}}。</ref>、mitraversine といったアルカロイドが分離されており、これらは局所麻酔の作用を持ち、[[ゾウリムシ]]用の毒となり、<!--動脈-->血圧を低下、心拍数<!--rythme cardiaque-->を上昇させ、腸の[[自律神経]][[細胞]]を激しく興奮させる<ref name="k&b_bahia" />。なおバイヤと {{Snamei|M. stipulosa}} は[[コンゴ共和国]]にも分布するが、こちらでは解熱剤としての使用は極めてまれであり、むしろ通経剤としてや赤痢への処方のほうがよく知られている<ref name="ab1969">{{Harvcoltxt|Bouquet|1969}}.</ref>。 |
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=== 木材 === |
=== 木材 === |
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[[中国]]ではミトラガイナ属を「{{lang|zh|[[:zh:帽蕊木属|帽蕊木属]]}}」 ([[ピンイン]]: mào ruǐ mù shǔ) と呼ぶ<ref name="Fl_China" />。 |
[[中国]]ではミトラガイナ属を「{{lang|zh|[[:zh:帽蕊木属|帽蕊木属]]}}」 ([[ピンイン]]: mào ruǐ mù shǔ) と呼ぶ<ref name="Fl_China" />。 |
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[[コンゴ共和国]]には[[バイヤ]]({{Snamei|Mitragyna ledermannii}}; シノニム: {{Snamei|M. ciliata}})と {{Snamei|Mitragyna stipulosa}} の2種が生育するが、この2種と時に一部のアカネ科[[ナウクレア属]] |
[[コンゴ共和国]]には[[バイヤ]]({{Snamei|Mitragyna ledermannii}}; シノニム: {{Snamei|M. ciliata}})と {{Snamei|Mitragyna stipulosa}} の2種が生育するが、この2種と時に一部のアカネ科[[ナウクレア属]]の種は区別されず、以下のような共通の現地語名で呼ばれる<ref name="ab1969" />。 |
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* [[ヴィリ語]]([[:en:Vili language|Vili]]): nvuku |
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! {{Snamei|Mitragyna stipulosa}} {{small|(DC.) Kuntze}}<ref group="注">厳密にはシノニムの一つ {{Snamei|Mitragyna chevalieri}} {{small|K.Krause}} が新種記載された際に[[タイプ標本]]として指定された [[オーギュスト・ジャン・バティスト・シュヴァリエ|Chevalier]] 第7571番のもの。</ref> |
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2022年1月2日 (日) 10:19時点における版
ミトラガイナ属 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Mitragyna Korth., nom. cons. | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Mitragyna parvifolia (Roxb.) Korth., typus cons. | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本文参照 |
ミトラガイナ属[1](ミトラガイナぞく)あるいはミトラギナ属[2](ミトラギナぞく; Mitragyna)はアカネ科の属の一つである。全ての種が木本であり、分布はインドから東南アジアにかけてが中心だが、熱帯アフリカにも見られる(参照: #下位分類)。花は頭状花を特徴とし、アカネ科内では同じ特徴を持つ他の属とともにタニワタリノキ連(Naucleeae)に入れられている(ただしかつてはこれに異を唱える学者もいた。詳細は#属の位置付けを参照)。クラトムの通称で知られる東南アジア原産のアヘンボク(Mitragyna speciosa)をはじめアルカロイドを含む樹種は薬用となり、アフリカ産のバイヤ(Mitragyna ledermannii)などは木材として用いられる(参照: #利用)。
属名
属名 Mitragyna は古典ギリシア語 μίτρα (mítra)〈ミトラ〉 + γυνή (gunḗ)〈女〉の合成語で、雌蕊の柱頭がミトラというキリスト教の聖職者が被る冠(僧帽とも訳される)の形状をしていることから名付けられたものである[3](なおこの属を最初に設けたピーテル・ウィレム・コルトハルスが示していたのは Mitragyna africana [≡ Mitragyna inermis]・Mitragyna parvifolia・アヘンボク(Mitragyna speciosa)の3種である。#歴史を参照)。この形態的特徴は今日においてもミトラガイナ属をほかのタニワタリノキ連から区別する際の手がかりの一つとして通用する(参照: #属の位置付け)。
分類
歴史
この属のもので初めて新種記載されたのは現在でいう Mitragyna inermis で、1793年に発行されたパウル・ウステリの Delectus Opusculorum Botanicorum〈植物学小論文精選集〉第2巻でカール・ルートヴィヒ・ヴィルデノウが「ギニア」産(と記されてはいるが採取者の Paul Erdmann Isert が赴いたのは当時のデンマーク領ギニア = 現在のガーナ[注 1]である)の Uncaria inermis として発表した[4]。次に記載されたのは現在でいう Mitragyna parvifolia で、1795年南インドはコロマンデル海岸産のナウクレア属の Nauclea parvifolia としてウィリアム・ロクスバラにより記載された[5]。その後1839年にオランダのピーテル・ウィレム・コルトハルスにより初めてミトラガイナ(Mitragyna)の属名が用いられることになる[6]。この時コルトハルスはそれまでにナウクレア属として新種記載されていた2種[注 2]をミトラガイナ属に組み替えるだけでなく、この時点では未知の種であったアヘンボク(Mitragyna speciosa)の存在も示唆している[6][注 3][7]。後に Mitragyna parvifolia が慣習的にミトラガイナ属のタイプ種と見做されることとなった[8]。そしてカール・エルンスト・オットー・クンツェやジョージ・ダービー・ハヴィランドが19世紀末に行った見直しにより先述の Uncaria inermis のほか、それまでナウクレア属として新種記載されていた Nauclea diversifolia Wall. ex G.Don・N. rotundifolia Roxb.・N. stipulosa DC.・N. tubulosa Arn. ex Thwaites やタニワタリノキ属(Adina)として新種記載されていた Adina rubrostipulata K.Schum. が初めてミトラガイナ属に分類された[9][10]。その後#シノニムで触れるようにいくつかの種は一旦分類変更を経験することとなったが、それらに関しても Löfstrand et al. (2014) 以降は再びミトラガイナ属として扱われるようになった。現在この属として知られている10種の中で最も新種としての記載が遅かったのは Mitragyna hirsuta で、先述のハヴィランドによるタニワタリノキ連の見直しの際に発表された[11]。
シノニム
以下ではミトラガイナ属のシノニムについて、原則として文献に現れた順で記述を行うこととする。
Mamboga Blanco, nom. rej. および Bamboga orth. var.
実はフィリピンで活動していた修道士のフランシスコ・マヌエル・ブランコが1837年に Mamboga capitata という新種の記載を行っている[12]。これは後に Mitragyna diversifolia (Wall. ex G.Don) Havil. のシノニムとして扱われることとなる[7]が、1837年初出の Mamboga が1839年初出の Mitragyna より先のことであり、このような場合国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)の原則に従えばそれまでミトラガイナ属とされてきた種は先取権の観点から全てMamboga属に組み替えを行う必要がある。しかしMamboga属は属としての定義が杜撰で1897年までの時点でも「全く受容されてこなかった」とされ[13]、遅くとも1978年の時点で Mitragyna の方が保存名[注 4]とされており、一方の Mamboga も明確に廃棄名[注 5]とされている[14](2018年度版のICNの保留名・廃棄名リストにも掲載されている[15])。なお Bamboga はアンリ・エルネスト・バイヨンが1880年の Histoire des plantes〈植物の歴史〉第7巻、p. 364 で左記のブランコの文献を引用する際に現れた表記揺れである。
Stephegyne Korth.
コルトハルスは1840年代初頭になってアヘンボクの形態の記相を行った[16]が、この際にそれ以前の段階で使用していた属名 Mitragyna を突如 Stephegyne というものに差し替えようとした[7]。しかしこの時に同文献に掲載した図版(#図版を参照)に添えられた学名は Mitragyna speciosa のままであり、結果的に Mitragyna speciosa としてのアヘンボクの命名者をコルトハルスとするか、あるいは後にコルトハルスの文献を引用したハヴィランドとするかで混乱が生じることとなった[注 6]。
Paradina Pierre ex Pit.
フランスのジャン・バティスト・ルイ・ピエールが当時既に記載されていた Mitragyna hirsuta Havil. を新たな属に組み替えるために使用したもので、シャルル=ジョゼフ・マリー・ピタールが Flore générale de l’Indo-Chine 第3巻、p. 39 で正式に記載したが、結局ミトラガイナ属に戻された[17]。
Hallea J.-F.Leroy, nom. illeg. および Fleroya Y.F.Deng
1975年、フランスのジャン=フランソワ・ルロワは熱帯アフリカ産のミトラガイナ属のうち3種[注 7]を Hallea という新属に組み替えた[18]。ルロワが記したこの3種についての記相からは、頭状花の位置・付属物を有する(英: appendiculate)外側が有毛の花冠裂片・葯が直立し花冠開口部に納まっていること・柱頭の形状という点で共通性があるものとして扱われていることを読み取ることができるが、コリン・リズデイルはHallea属と狭義のミトラガイナ属の頭状花の位置・配置にはルロワが報告しているほどの明快な差異は認められないとし、3種をミトラガイナ属へと戻すこととした[注 8][19]。しかし鄧雲飛(Deng Yunfei)はあくまでもルロワの分類自体は正しいと考え、ただ Hallea という属名が既に1948年にG・B・マシューズ(G. B. Matthews)により化石種の植物に用いられていて実は非合法名[注 9]であるという問題意識から、2007年に Hallea に代わる属名として Fleroya の提案を行った[20]。ただ結局この Hallea (≡ Fleroya) という分類は Razafimandimbison & Bremer (2002) および Manns & Bremer (2010) で側系統であるという見方が示され、最終的に Löfstrand et al. (2014) により否定されることとなった。
属の位置付け
ミトラガイナ属はアカネ科内では Schumann (1891) が定義したタニワタリノキ連(Naucleeae)に含められた。このタニワタリノキ連には球形の頭状花序を特徴とするミトラガイナ属・タニワタリノキ属(Adina)・ナウクレア属(Nauclea)・カギカズラ属(Uncaria; シノニム: Ourouparia)などが集められ、Verdcourt (1958) もこの枠組みを追認したが逆に言えばそれぐらいしか共通性がなく、同様の特徴はアカネ科のほかの連にも見られるとしてコリン・リズデイルはミトラガイナ属とカギカズラ属をタニワタリノキ連からキナノキ連(Cinchoneae)に移して亜連[注 10] Mitragyninae として括る措置を取った[21]。しかし1995年にアカネ科の複数属から代表して1種ずつ選び[注 11]、その葉緑体DNAのタンパク質コードに関わる遺伝子rbcLの連続(シークエンス)を分析する手法による科内の系統関係の検討が試みられたところ、キナノキ連の亜連 Mitragyninae という区分は側系統的であり、この亜連の位置付けを支持する根拠は一切存在しないという結果が得られた[22]。さらに21世紀に入ってからリボソームDNAの内部転写スペーサー[注 12]領域や葉緑体DNAのrbcL領域やコーディングとは無関係なtrnT-F領域の解析に形態的特徴を加味した検討も行われた結果、ミトラガイナ属はカギカズラ属などと共に再びタニワタリノキ連に置かれるようになった[23]。
ミトラガイナ属とほかのタニワタリノキ連の属とを広く分ける場合に際立つ特徴となるのは、先述の#属名通り僧帽状の雌蕊を有するということであり、加えてH字状の内口[注 13]付きの3-帯溝孔[注 14]の花粉を持つこと(Huysmans, Robbrecht & Smets (1994))や、室ごとに底面についた多数の胚珠(Razafimandimbison & Bremer (2002))といった点も挙げられる[24]。これは花粉や分子学的な観点からの研究が進められてから構築された区分方法であるが、かつてミトラガイナ属とカギカズラ属をタニワタリノキ連から分離しようと試みた Ridsdale & Bakhuizen van den Brink Jr (1975:543) は花粉の関係しない形態の面から以下のような検索表を設定している。なお Ridsdale & Bakhuizen van den Brink Jr (1975) はほかにヤマタマガサ属(Cephalanthus)もタニワタリノキ連から除いてアカネ科内で独立の連 Cephalantheae を為すとしており、また後に当時の既知の種からDiyaminauclea属・Khasiaclunea属・Ludekia属・Ochreinauclea属などを新属として設けて移した際、リズデイルはこれらも彼のいう「狭義のタニワタリノキ連」("Naucleeae s.s.") の下に配置している[25]ということ、またこの時はヨヒンベノキ属(Corynanthe; シノニム: Pausinystalia)もタニワタリノキ連には含まれていなかった[26]ということに留意されたい。なおヤマタマガサ属やヨヒンベノキ属に関しては Razafimandimbison & Bremer (2002) で改めてタニワタリノキ連の下に置かれるようになった。
- ミトラガイナ属およびカギカズラ属……2つの胎座が隔壁に沿着するか、あるいは上部3分の1で接し、長く下垂し、厚く、暗褐色から黒色である; 胎座ごとの胚珠や種子が胎座全体に沿って上向きの鱗状に重なり合っている。小果の集合が花托と結合しておらず、果実の内果皮が上から下へ裂ける。花冠裂片が互いに重ならずに接し合う敷石状である。
- 「狭義のタニワタリノキ連」およびヤマタマガサ属……2つの胎座は隔壁に様々な接し方をしている; 上部3分の1で接している場合は2本の短い上向きの腕と長い下向きの足でY字形となっているか、あるいは小さく短い倒卵形の突起である; 中間で隔壁に接している場合は中央に結合のある円盤状か、あるいは横長からわずかに2裂し枝分かれがない; 胎座の色は淡色である; 胎座ごとの胚珠や種子は下垂する(こちらの方が優勢)か、あるいは全方向にだだ広がり、決して胎座の全長に沿って上向きに重なり合わない。小果の集合は花托と結合せずに内果皮が下から上へ裂けるか、あるいは緩く結合して不裂開か、あるいは子房と小果の集合が融合して(疑似的な)集合果となる。花冠裂片は鱗状に重なり合う(アジアやマレー群島区系では重なり合わないものもある)
さらに同じ前提のもとで Ridsdale (1978a:56) が設定したミトラガイナ属とカギカズラ属とを区別するための検索表は以下の通りである。
- ミトラガイナ属……高木性である; 鉤は見られない。托葉が全縁である。花や小果が花托に対して(ほぼ)無柄である; 花同士の間に小苞が必ず存在し、へら状で、柄が広い(糸状ではない)。花冠管が無毛である; 裂片が先端には小さな無毛の付属物を有し外側が毛深い(アフリカ産の3種のみ)か付属物を持たず外側が無毛である(アフリカ産1種、アジア産および[ニューギニアを含む]マレー群島区系産の全種)。柱頭が僧帽状から細長い形-棍棒状で先端、時に基部にもわずかに乳頭毛が見られる(英: papillate)か、あるいは卵形-
切形 から半球形で表面全体に乳頭毛がある。小果が薄い外果皮つきで、縦に胞背裂開[注 15]していき、急激に枯れていく。種子が両端に短い翼 を持ち、下方の翼が浅く2裂するか刻み目がつく。 - カギカズラ属……つる性である; 鉤を用いてよじ登る。托葉は全縁か2裂である。花や小果は有柄で花同士の間に小苞は存在しない(アジア産やマレー群島区系産の種の場合)か、あるいは存在する(アメリカ産の種の場合); あるいは花托に対し(ほぼ)無柄で花同士の間に糸状から線形-へら状の小苞が見られるが、幾分不明瞭であり、托葉は2裂する(まれにデルタ字 (Δ) 状から半円形のものもあるがその場合は花冠裂片の外側に軟毛が見られる)。花冠管の外側は無毛から軟毛つきである; 裂片に付属物は見られず、外側は無毛か粉質ないしは軟毛つきから毛深い。柱頭は球状から棍棒状で、先端に乳頭毛が見られる。小果は厚い外果皮つきで胞背裂開[注 15]するが宿存萼[注 16]の残りの下は裂けず、急に枯れてはいかない。種子は両端に長い翼を持ち、下方の翼は深く2裂する。
下位分類
まず種同士を形態的な特徴から区別する#検索表を示す。そしてそれぞれの種の詳細についてはその次の#種の一覧を参照されたい。
検索表
以下は Ridsdale (1978a:58–59) で設定された、本属の構成種10種すべてを網羅した検索表である。リズデイルが扱った10種はいずれもキュー植物園系データベース World Checklist of Selected Plant Families(Govaerts et al. (2021))において独立種として認められている。
- 1.
- 1a. 花冠裂片に小さく頂生で無毛の付属物(英: appendage)があり、外側が毛深い。葯は直立し、花冠筒からは突出しないか、突出したとしても部分的である。柱頭は卵形-
切形 から半球形で、表面全体にわたって乳頭毛が見られる(英: papillate)である。アフリカ産でHallea属に分類されたことがある…… 8. へ - 1b. 花冠裂片に付属物は見られず、外側は無毛である。葯は直立あるいはだだ広がり、花冠筒から顕著に突出する。柱頭は僧帽状から細長い形-棍棒形で、乳頭毛が見られるのは先端(ただし時に基部も)のみである。分布はアフリカ、アジア、マレー群島区系[ニューギニアを含む]のいずれか。…… 2. へ
- 1a. 花冠裂片に小さく頂生で無毛の付属物(英: appendage)があり、外側が毛深い。葯は直立し、花冠筒からは突出しないか、突出したとしても部分的である。柱頭は卵形-
- 2.
- 2a. 花同士の間の小苞が萼と萼筒の長さの2倍を超え、若い頭状花中の花冠や小果の集合よりも高い位置に見られる。アフリカ産。…… Mitragyna inermis
- 2b. 花同士の間の小苞は萼と萼筒の長さの2倍未満であり、若い頭状花中の花冠や小果の集合よりも相当低い位置に見られる。分布はアジアとマレー群島区系[ニューギニアを含む]…… 3. へ
- 3.
- 3a. 萼片が線形から線-へら状で、長さは1.5ミリメートルを超える(#図版も参照)。…… M. hirsuta
- 3b. 萼片は鈍角から浅く波状縁、あるいは3角形で、長さ1.5ミリメートル以下である…… 4. へ
- 4.
- 4a. 萼が長管状、長さが2.5ミリメートルを超え、実った小果上にも残る宿存萼である。南インドおよびスリランカに分布。…… M. tubulosa
- 4b. 萼は短管状あるいは漏斗状から鐘状、長さ2.5ミリメートル未満で、早落性あるいはやや宿存性である…… 5. へ
- 5.
- 5a. 萼が花同士の間にある小苞の柄の中間の高さに位置し、若い頭状花では小苞で隠れる。花冠管が最短でも花冠裂片の長さの2倍はあるか、ない場合は側脈が(9-)11-15対となっている; 喉(開口部)が無毛あるいは有毛である。…… 6. へ
- 5b. 萼は柄の中間よりも高い位置にあり、およそ花同士の間にある小苞の先端部分の高さか、少し高いか、わずかに低く、若い頭状花では小苞で隠れるか小苞の上に突出する。花冠管は必ず花冠裂片の2倍未満で、喉は有毛である。側脈は5-10対である。…… 7. へ
- 6.
- 6a. 花冠筒が最短でも花冠裂片の長さの2倍はあり、喉が無毛でまばらに毛が生えているものもあるがその場合に毛は突出しない。花同士の間の小苞は密に細かく繊毛が生えているか、あるいは無毛からまばらに繊毛が生えている(インド北東部産、ビルマ産)ものの場合、葉の形状が多様で、概して8×4センチメートル以下、側脈が5-8対である。大陸アジア産。…… M. parvifolia
- 6b. 花冠筒は花冠裂片の2倍未満であり、喉は有毛で、毛は顕著に突出する。花同士の間の小苞は無毛からまばらに繊毛が生えている。葉は卵形から楕円形で、概して8×4センチメートルを超え、側脈は(9-)11-15対である。ビルマ、タイ(栽培品)、マレー群島区系[ニューギニアを含む]に分布する…… アヘンボク (M. speciosa)
- 7.
- 7a. 萼の長さがほぼ萼筒の長さと等しい; 萼片がふつう花同士の間にある小苞の先端部分よりも高い位置にあるため、若い頭状花中にははっきりと視認できる; 花同士の間にある小苞がふつう無毛で、繊毛が見られるのは例外的な事例である。成熟した葉が平均6-14×3-9センチメートルで、側脈が中肋から(55-)60-75度の角度で伸びる。ビルマ、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、マレー群島区系産。…… M. diversifolia
- 7b. 萼の長さは萼筒の長さの半分にも満たない; 萼片は花同士の間にある小苞の先端と同じ高さかわずかに低い位置にあり、若い頭状花では小苞で隠れる; 花同士の間にある小苞は縁に繊毛が見られる。成熟した葉は平均14-25×10-20センチメートルで、側脈は中肋から35-60度の角度で伸びる。アッサム、ビルマ、アンダマン諸島、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、雲南に分布…… M. rotundifolia
- 8.
- 8a. 萼には明瞭に分かれた裂片がついており、萼片は細楕円形あるいは3角形で長さ(1-)1.25-2ミリメートルである; 萼状総苞がふつう存在する。葉の先端はふつう先鋭形である。…… M. rubrostipulata
- 8b. 萼は幾分か杯状で、萼片は萼の基部まで明瞭には分かれておらず、切形から波状縁形、時に小歯状からわずかにデルタ字(Δ)状である。葉の先端はふつう円形である…… 9. へ
- 9.
- 9a. 萼片が切形から波状縁形で、縁は無毛、花同士の間の小苞と同じ高さに位置するかあるいはそれよりわずかに短めで、若芽中には視認できない。枝がつける頭状花の数がふつう10未満である…… M. stipulosa
- 9b. 萼片は短い小歯状からわずかにデルタ字状で、縁に繊毛があり、花同士の間の小苞よりも高い位置にあり、若い頭状花中にははっきりと視認できる。枝がつける頭状花の数はふつう10を超える[注 17]…… バイヤ (M. ledermannii)
種の一覧
この節では種を種小名のアルファベット順で列挙し、さらに日本語名やシノニム(数が多いものもあるため、原則として記事中で言及されたもののみに限る。そのほかのものに関してはウィキスピーシーズのリンク先を参照。なお太字は現行の学名の基となったバシオニム であることを表す)、分布情報(特に断りが無い場合は Govaerts et al. (2021) による)、用途も付したものを一覧の形で紹介する。
Mitragyna diversifolia (Wall. ex G.Don) Havil.
- 学名: Mitragyna diversifolia(Wikispecies) (Wall. ex G.Don) Havil.
- 日本語名:「カイム」[注 18]
- シノニム: Mamboga capitata Blanco、Mitragyna javanica Koord. & Valeton、Nauclea diversifolia Wall. ex G.Don、Nauclea parvifolia var. diversifolia (Wall. ex G.Don) Kurz など
- 分布: バングラデシュから中国(雲南省)およびマレー群島区系にかけて(中国南中央部: 雲南省; バングラデシュ; ビルマ (少なくとも西部からバゴーまで[7])、タイ (全土[7])、カンボジア、ラオス、ベトナム; マレー半島、ジャワ、フィリピン)。
- 用途: #木材を参照。
Mitragyna hirsuta Havil.
- 学名: Mitragyna hirsuta(Wikispecies) Havil.
- シノニム: Paradina hirsuta (Havil.) Pit.
- 分布: 中国(雲南省)からインドシナ(ベトナム、カンボジア、ラオス、タイ、ビルマ)にかけて[27]。
Mitragyna inermis (Willd.) Kuntze
- 学名: Mitragyna inermis(Wikispecies) (Willd.) Kuntze
- シノニム: Mitragyna africana (Willd.) Korth.、Nauclea africana Willd.、Uncaria inermis Willd. など
- 分布: 熱帯アフリカ西部からスーダンにかけて(モーリタニア、マリ、セネガル、ガンビア、ギニアビサウ、ギニア、シエラレオネ、リベリア、コートジボワール、ガーナ、トーゴ、ベナン、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア; コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、カメルーン; チャド、スーダン (南スーダンも含む[28]))。
- 用途: #薬用を参照。
Mitragyna ledermannii (K.Krause) Ridsdale
- 学名: Mitragyna ledermannii(Wikispecies) (K.Krause) Ridsdale
- 日本語名: バイヤ[29](コートジボワールのアニ語: bahia[30]; 別名: アブラ ナイジェリア名: abura[29])
- シノニム: Adina ledermannii K.Krause、Fleroya ledermannii (K.Krause) Y.F.Deng、Hallea ciliata (Aubrév. & Pellegr.) J.-F.Leroy、Mitragyna ciliata Aubrév. & Pellegr. など
- 分布: 熱帯アフリカ西部(少なくともギニア、シエラレオネ、リベリア、コートジボワール、ガーナ、ナイジェリア)および西中央部(カメルーン、赤道ギニア、ギニア湾諸島、ガボン、コンゴ共和国、アンゴラ領カビンダ州、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国)[31]。
- 用途: #木材、#薬用を参照。
Mitragyna parvifolia (Roxb.) Korth.
- 学名: Mitragyna parvifolia(Wikispecies) (Roxb.) Korth.
- 日本語名:「カイム」[注 18]
- シノニム: Nauclea parvifolia Roxb.、Stephegyne parvifolia (Roxb.) Korth. など
- 分布: インド亜大陸からインドシナにかけて(スリランカ、インド (タミル・ナードゥ州、ケーララ州、カルナータカ州のマイソール、アーンドラ・プラデーシュ州、マハーラーシュトラ州、マディヤ・プラデーシュ州、パンジャーブ州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ウッタル・プラデーシュ州、ビハール州、オリッサ州、西ベンガル州、アッサム州)、バングラデシュ; ビルマ (少なくともバゴー))[32]。
- 用途: #木材を参照。
- 備考: ベンガル地方やビルマ(上ビルマおよび下ビルマ)に変種 microphylla(Wikispecies) (Kurz) Ridsdale も分布する[33]。
Mitragyna rotundifolia (Roxb.) Kuntze
- 学名: Mitragyna rotundifolia(Wikispecies) (Roxb.) Kuntze
- シノニム: Nauclea rotundifolia Roxb. など
- 分布: 中国南中央部: 雲南省; アッサム地方 (アッサム州・トリプラ州)、バングラデシュ、ヒマラヤ東部; アンダマン諸島、ニコバル諸島、ビルマ (上ビルマおよび下ビルマ[34])、タイ (北部、南西部[34])、ラオス、カンボジア、ベトナム)。
Mitragyna rubrostipulata (K.Schum.) Havil.
- 学名: Mitragyna rubrostipulata(Wikispecies) (K.Schum.) Havil.
- シノニム: Adina rubrostipulata K.Schum.、Fleroya rubrostipulata (K.Schum.) Y.F.Deng、Hallea rubrostipulata (K.Schum.) J.-F.Leroy など
- 分布: 熱帯アフリカ(ガボン、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ブルンジ、ルワンダ; エチオピア; ケニア、ウガンダ、タンザニア; マラウイ、モザンビーク)。
- 用途: #木材を参照。
Mitragyna speciosa
- 学名: Mitragyna speciosa(Wikispecies)[注 6]
- 日本語名: アヘンボク[35]
- シノニム: Stephegyne speciosa Korth. など
- 分布: タイの半島部からニューギニアにかけて(カンボジア、タイ; マレー半島、スマトラ、ボルネオ、フィリピン; ニューギニア)。ベトナム南部に見られるのは栽培されたものである[7]。
- 用途: #薬用を参照。
Mitragyna stipulosa (DC.) Kuntze
- 学名: Mitragyna stipulosa(Wikispecies) (DC.) Kuntze
- シノニム: Fleroya stipulosa (DC.) Y.F.Deng、Hallea stipulosa (DC.) J.-F.Leroy、Mitragyna chevalieri K.Krause、Nauclea stipulosa DC. など
- 分布: 熱帯アフリカ(セネガル、ガンビア、ギニアビサウ、ギニア、シエラレオネ、リベリア、コートジボワール、ガーナ、トーゴ、ベナン、ナイジェリア; カメルーン、ガボン、コンゴ共和国、アンゴラ領カビンダ州、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国; チャド、スーダン; ウガンダ; ザンビア、アンゴラ)。
- 用途: #木材、#薬用を参照。
Mitragyna tubulosa
- 学名: Mitragyna tubulosa(Wikispecies)
- シノニム: Nauclea tubulosa Arn. ex Thwaites など
- 分布: インド(少なくともケーララ州およびタミル・ナードゥ州[36])、スリランカ。
利用
ミトラガイナ属には以下のような薬や木材として利用される種があることが知られている。
薬用
クラトム[注 19]という通称でも知られるアヘンボク(Mitragyna speciosa)は多数のインドールアルカロイドを含むが、その主成分はミトラギニン[注 20]といい、化学的にヨヒンビン[注 21]やシロシビン[注 22]に類似した非常に強い精神作用性物質である[39]。19世紀の時点で既にアヘンの代替物やアヘン中毒の治療薬としての使用が報告され、個人的な研究や文献中の描写からコカインのような興奮作用と同時に、モルヒネのような鎮静作用があることが明らかとなっている[2]。服用方法は乾燥した葉を吸うか噛む、あるいはそれをエキス剤とすることである[2]。新鮮な葉を噛んだ場合、5-10分以内に興奮作用が現れ始める[2]。日本では同属の別種との交雑種も含め、ミトラジニンと共に2016年3月に薬事・食品衛生審議会薬事分科会指定薬物部会の判断を経て厚生労働省により指定薬物とする省令が施行され、医療などの目的以外での製造・輸入・販売・所持・使用等が禁止された[1]。アヘンボクの自生地の一つであるタイでも非合法化されていたが、2021年8月下旬に一定の条件[注 23]付きで解禁された[40]。
また Mitragyna inermis はコートジボワールでは主に解熱剤として樹皮や葉のついた枝の煎じ薬が服用され、リンコフィリン[注 24]など多種多様なアルカロイドを含む[41]。
さらにバイヤ(Mitragyna ledermannii; シノニム: M. ciliata)や Mitragyna stipulosa もコートジボワールでは M. inermis 同様に解熱剤に用いられるほか、その樹皮や葉が時に淋疾や赤痢の処置に使用されることがある[42]。これらの樹種からは mitrinermine、ミトラフィリン[注 25]、mitraversine といったアルカロイドが分離されており、これらは局所麻酔の作用を持ち、ゾウリムシ用の毒となり、血圧を低下、心拍数を上昇させ、腸の自律神経細胞を激しく興奮させる[42]。なおバイヤと M. stipulosa はコンゴ共和国にも分布するが、こちらでは解熱剤としての使用は極めてまれであり、むしろ通経剤としてや赤痢への処方のほうがよく知られている[43]。
木材
ミトラガイナ属のうちHallea属に分類されたことのある熱帯アフリカ産の3種(バイヤ Mitragyna ledermannii (シノニム: M. ciliata)、Mitragyna rubrostipulata、Mitragyna stipulosa)は木材として利用される[44]。バイヤの心材は個体によって色も気乾比重も様々で、色は淡黄色または帯桃褐色から赤橙色、薄茶色まで、気乾比重は0.46-0.69(平均気乾比重は0.56)と振れ幅があり[44]、その用途は内装・合板などである[29][44]。M. rubrostipulata と M. stipulosa はウガンダに自生し、ガンダ語由来の nzingu という呼称で販売される[45][46][44]。
また Mitragyna parvifolia と Mitragyna diversifolia は 熱帯植物研究会 編 (1996:424) ではまとめて「カイム」の名で紹介されているがそれによれば、材は淡青黄色から明褐色へと変わり、木理はまれに波状、肌目は均一で精、気乾比重は0.67、乾燥する際には表面割れ・節割れを起こす恐れが、また加工する際には逆目を起こす恐れがあり、耐久性は中、建築・家具・玩具・彫刻・櫛などの細工に用いられる。
諸言語における呼称
中国ではミトラガイナ属を「帽蕊木属」 (ピンイン: mào ruǐ mù shǔ) と呼ぶ[27]。
コンゴ共和国にはバイヤ(Mitragyna ledermannii; シノニム: M. ciliata)と Mitragyna stipulosa の2種が生育するが、この2種と時に一部のアカネ科ナウクレア属の種は区別されず、以下のような共通の現地語名で呼ばれる[43]。
- ヴィリ語(Vili): nvuku
- コンゴ語:
- ラーリ語(Laari; 別名: Laadi): nloongwa
- ムボシ語(Mbosi): ipupu
- ヨンベ語(Yombe): ngulu matsi
- ンゼビ語(Nzebi; 別名: Njebi、Nzabi): mbudi, muvudi, mupuhu
- ンダサ語(Ndasa): ishifu
- ンバンバ語(Mbamba; 別名: Mbama、Ombamba): shupo
- Akwa語: epopoko
- Laali語(別名: Teke-Laali): mopupuku
- Yaa語(別名: Yaka): opuputro
図版
以下にミトラガイナ属の一部の種のうち、花の様子まで描かれている図版があるものを示す。順番は上記の#検索表で種が割り出された順である。
Mitragyna inermis (Willd.) Kuntze | |
---|---|
出典: Wildenow (1793:t. 3)(Uncaria inermis として) | |
Mitragyna hirsuta Havil. | |
c. [右上]: 花(4.7倍)。d. [左上]: 果実(4.7倍)。出典: Ridsdale (1978a:60) | |
Mitragyna tubulosa | |
b. [左上]: 頭状花(0.5倍)。c. [右下]: 小苞のある頭状花の詳細(7倍)。d. [右]: 花(3.5倍)。e. [左下]: 小苞(14.5倍)。出典: Ridsdale (1978a:62, 63) | |
Mitragyna parvifolia (Roxb.) Korth. | |
出典: Beddome, R. H. (1869). The Flora Sylvatica for Southern India. 1. Madras: Gantz Brothers. p. t. 34(Nauclea parvifolia Roxb. として) | |
アヘンボク(Mitragyna speciosa (Roxb.) Korth.) | |
出典: Korthals (1839–1842:t. 35) | |
Mitragyna diversifolia (Wall. ex G.Don) Havil. | |
A-D: 葉・花・果実のついた枝。E: 葉の一部。F-S: 花や果実の様子を分析したもの。 出典: Koorders, S. H.; Valeton, Th. (1915) (ドイツ語). Atlas der Baumarten von Java: im Anschluss an die „Bijdragen tot de Kennis der Boomsoorten van Java”. 3. Leiden: Buch- und Steindruckerei von Fa. P. W. M. TRAP. p. Figur 513(Mitragyna javanica Koord. & Valeton として) | |
Mitragyna rotundifolia (Roxb.) Kuntze | |
d. [右上]: 花(4.7倍)。出典: Ridsdale (1978a:66) | |
Mitragyna stipulosa (DC.) Kuntze[注 26] | |
0.4倍。出典: Ridsdale (1978a:52) |
またバイヤ(Mitragyna ledermannii)に関しては Aubréville (1959:259) や Voorhoeve (1965:323) に Mitragyna ciliata として花の構造を含む図版が掲載されている。
脚注
注釈
- ^ Uncaria inermis のアイソタイプ(副基準標本)は少なくともデンマークのコペンハーゲン大学とロシアのコマロフ植物研究所の2ヶ所に収蔵されているが、このうちコペンハーゲン大学に収蔵されているもの(C10004661)はタイプ産地が「ガーナ(のアダ (Ada))」と明記されている。
- ^ Nauclea africana Willd. [≡ Mitragyna inermis (Willd.) Kuntze] と先述の Nauclea parvifolia。
- ^ ただしアヘンボクに関しては形態についての説明 (記相) が付されていなかったためこの時点では新種記載したことにはならなかった。このように形態について記した文がない状態のまま新種や新属などとして示された学名を裸名(ラテン語: nomen nudum)と呼ぶ。アヘンボクは後にコルトハルス自身の手により晴れて新種記載されることとなるが、その際の状況の詳細については #Stephegyne Korth. を参照。
- ^ ラテン語: nomen conservandum。
- ^ ラテン語: nomen rejiciendum。
- ^ a b ハヴィランドを命名者とする場合はコルトハルスによる Stephegyne speciosa を基となる学名(バシオニム)、1897年のハヴィランドによるコルトハルスの文献からの引用を Stephegyne speciosa からミトラガイナ属への組み替えと見做し、学名の表示は Mitragyna speciosa (Korth.) Havil. となる。
- ^ バイヤ(Mitragyna ciliata Aubrév. & Pellegr.)、Mitragyna rubrostipulata (K.Schum.) Havil.、Mitragyna stipulosa (DC.) Kuntze。
- ^ なお3種のうちバイヤに関してはコートジボワール産の Mitragyna ciliata の新種記載が1936年であるのに対し、それよりも早い1920年に新種記載されたカメルーン産の Adina ledermannii K.Krause が同一の種であることが判明したために、リズデイルは新たに Mitragyna ledermannii という組み替えを発表した。
- ^ ラテン語: nomen illegitimum。
- ^ 英: subtribe。連よりもさらに下の階級。
- ^ ミトラガイナ属からは当時 Hallea rubrostipulata と分類されていた Mitragyna rubrostipulata が選ばれ、カギカズラ属からもカギカズラ Uncaria rhynchophylla (Miq.) Miq. が選ばれた。
- ^ 英: internal transcribed spacer; 略称: ITS。
- ^ 英: endoapertures。
- ^ 英: 3-zonocolporate。花粉の外膜に細長い切れ目と丸い穴を持つ発芽口が赤道上に3つ存在するということ。
- ^ a b 果実を構成する心皮それぞれの外縫線に沿って裂開するということ。
- ^ 花期を終えて果実が実る頃になっても落ちずに残り続ける性質を持つ萼のこと。
- ^ Aubréville (1959:259) の Mitragyna ciliata の図版も参照されたい。
- ^ a b 熱帯植物研究会 編 (1996:424)、インドでの呼称の一つ kaim より(Beddome (1869) によれば keim はヒンドゥスターニー語での呼称の一つである)。ただしこの 熱帯植物研究会 編 (1996) では Mitragyna diversifolia があたかも Mitragyna parvifolia(しかも命名者が Korth. ではなく "Hav." とされている)のシノニムであるかのような扱いが為されている。実際に#検索表で示したようにリズデイルが両者の違いとしたのは花同士の間にある小苞の柄に対する萼の位置(M. diversifolia の方が高い)と、花冠裂片の2倍を基準とした花冠管の長さ(M. parvifolia は基準よりも長く、M. diversifolia は基準よりも必ず短い)といったものである。ただ、1877年にはヴィルヘルム・ズルピツ・クルツ(Wilhelm Sulpiz Kurz)により M. diversifolia が Nauclea parvifolia var. diversifolia と分類されたり(Forest Flora of British Burma 2: 67; et Journal of the Asiatic Society of Bengal. Part 2. Natural History 46: 127)、そもそも Mitragyna parvifolia という分類を初めて行ったコルトハルス自身もインドネシアのジャワ島カラワンで採取した M. diversifolia を Stephegyne parvifolia [≡ Mitragyna parvifolia] として報告(Korthals (1839–1842:161))していたりするなど[7]、歴史的に見れば学者ですら M. parvifolia と M. diversifolia を混同する事例が度々見られた。
- ^ タイ語: กระท่อม [kra.tʰɔ̂ːm] クラトーム。
- ^ ミトラガイニンやミトラジニンという表記例も見られる。英: mitragynine。
- ^ 英: yohimbine。ミトラガイナ属と同じアカネ科タニワタリノキ連に属すヨヒンベノキ(Corynanthe johimbe K.Schum.; シノニム: Pausinystalia johimbe (K.Schum.) Pierre)などから得られるアルカロイドで、その化合物である塩酸ヨヒンビンは催淫剤となる[37]。
- ^ 英: psilocybine。シビレタケ属(Psilocybe)などのキノコに含まれ幻覚作用のあるアルカロイドの一種で、シロシンのリン酸エステル化合物である[38]。
- ^ 輸出入を認可制とする、18歳未満の人・妊娠中の女性・乳児への販売は禁止とする、規定の量を超えて販売してはならない、など。
- ^ 英: rhynchophylline。mitrincomine ともいう。
- ^ 英: mitraphylline。
- ^ 厳密にはシノニムの一つ Mitragyna chevalieri K.Krause が新種記載された際にタイプ標本として指定された Chevalier 第7571番のもの。
出典
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日本語:
- 熱帯植物研究会 編 編「アカネ科 RUBIACEAE」『熱帯植物要覧』(第4版)養賢堂、1996年、416–429頁。ISBN 4-924395-03-X。
- エイダン・ウォーカー 総編集、ニック・ギブス、ルシンダ・リーチ、ビル・リンカーン、ジェーン・マーシャル、エイダン・ウォーカー 共著『世界木材図鑑』乙須敏紀 訳、産調出版、131頁。ISBN 4-88282-470-1(原書: The Encyclopedia of Wood, Quarto, 1989 & 2005.)
- リチャード・エヴァンズ・シュルテス、アルベルト・ホフマン、クリスティアン・レッチュ 共著『図説 快楽植物大全』鈴木立子 訳、東洋書林、2007年。ISBN 978-4-88721-726-3 (原書: Plants of The Gods: Their Sacred, Healing and Hallucinogenic Powers, Revised and Expanded Edition, 2001)
関連文献
英語:
- Manns, Ulrika; Bremer, Birgitta (2010). “Towards a better understanding of intertribal relationships and stable tribal delimitations within Cinchonoideae s.s. (Rubiaceae)”. Molecular Phylogenetics and Evolution 56 (1): 21–39. doi:10.1016/j.ympev.2010.04.002.