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この'''エウケーノール'''は、[[予言者]][[ポリュイードス]]とエウリュダメイア(ドゥーリキオン王[[ピューレウス]]の娘)の子で、[[クレイトス (ギリシア神話)|クレイトス]]<ref>[[レーロスのペレキューデース]]断片(『イーリアス』13巻663行への古註)。</ref>と兄弟。さらに[[パウサニアス]]によるとアステュクラテイア、[[マントー]]という姉妹がいた。ただしパウサニアスでは、エウケーノールはポリュイードスの子のコイラノスの子、つまり孫ということになっている<ref>パウサニアス、1巻43・5。</ref>。[[トロイア戦争]]に参加したギリシア軍の武将の1人<ref name=Il_13>『イーリアス』13巻663行-672行。</ref>。 |
この'''エウケーノール'''は、[[予言者]][[ポリュイードス]]とエウリュダメイア(ドゥーリキオン王[[ピューレウス]]の娘)の子で、[[クレイトス (ギリシア神話)|クレイトス]]<ref>[[レーロスのペレキューデース]]断片(『イーリアス』13巻663行への古註)。</ref>と兄弟。さらに[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]によるとアステュクラテイア、[[マントー]]という姉妹がいた。ただしパウサニアスでは、エウケーノールはポリュイードスの子のコイラノスの子、つまり孫ということになっている<ref>パウサニアス、1巻43・5。</ref>。[[トロイア戦争]]に参加したギリシア軍の武将の1人<ref name=Il_13>『イーリアス』13巻663行-672行。</ref>。 |
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『[[イーリアス]]』によると、エウケーノールは父ポリュイードスから故郷で重い病に倒れて死ぬか、戦争でトロイア勢に討たれて死ぬかのどちらかであると予言された。エウケーノールは病と[[アガメムノーン]]に支払う戦争不参加の代償の両方を嫌ってトロイア戦争に参加したが、[[パリス]]の放った矢に耳と顎の下あたりを射抜かれて絶命した<ref name=Il_13 />。 |
『[[イーリアス]]』によると、エウケーノールは父ポリュイードスから故郷で重い病に倒れて死ぬか、戦争でトロイア勢に討たれて死ぬかのどちらかであると予言された。エウケーノールは病と[[アガメムノーン]]に支払う戦争不参加の代償の両方を嫌ってトロイア戦争に参加したが、[[パリス]]の放った矢に耳と顎の下あたりを射抜かれて絶命した<ref name=Il_13 />。 |
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== 参考文献 == |
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* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年) |
* [[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年) |
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* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年) |
* [[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年) |
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* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年) |
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年) |
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* [[ホメロス]]『[[イリアス]](上・下)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1992年) |
* [[ホメロス]]『[[イリアス]](上・下)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1992年) |
2021年11月15日 (月) 11:06時点における版
エウケーノール(古希: Εὐχήνωρ, Euchēnōr)は、ギリシア神話の人物である。長母音を省略してエウケノルとも表記される。主に、
が知られている。以下に説明する。
アイギュプトスの子
このエウケーノールは、エジプト王アイギュプトスの50人の子の1人である。母はアラビア出身の女性で、イストロス、カルコードーン、アゲーノール、カイトス、ディオコリュステース、アルケース、アルクメーノール、ヒッポトオス、ヒッポリュトスと兄弟。ダナオスの50人の娘(ダナイデス)の1人イーピメドゥーサと結婚したが、他の兄弟と同様に殺された[1]。
ポリュイードスの子
このエウケーノールは、予言者ポリュイードスとエウリュダメイア(ドゥーリキオン王ピューレウスの娘)の子で、クレイトス[2]と兄弟。さらにパウサニアスによるとアステュクラテイア、マントーという姉妹がいた。ただしパウサニアスでは、エウケーノールはポリュイードスの子のコイラノスの子、つまり孫ということになっている[3]。トロイア戦争に参加したギリシア軍の武将の1人[4]。
『イーリアス』によると、エウケーノールは父ポリュイードスから故郷で重い病に倒れて死ぬか、戦争でトロイア勢に討たれて死ぬかのどちらかであると予言された。エウケーノールは病とアガメムノーンに支払う戦争不参加の代償の両方を嫌ってトロイア戦争に参加したが、パリスの放った矢に耳と顎の下あたりを射抜かれて絶命した[4]。
ホメーロスが語るエウケーノールの運命はアキレウスのそれとよく似ていることが指摘されている。アキレウスもまた母テティスからこのまま戦場に留まれば命を落とす代わりに名誉が残り、すぐに帰国したなら名誉は得られない代わりに天寿を全うできると予言され[5]、別の個所ではパリス[6]あるいはパリスとアポローンの矢で命を落とすことが予言されている[7]。アキレウスとよく似た運命を予言されたエウケノールがアキレウスと同様にパリスの矢で倒れるのは、彼の死がアキレウスの運命を念頭に置いて語られたことを意味しているという[8]。
系図
脚注
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- ホメロス『イリアス(上・下)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年)
- 岡道男「ホメロスと叙事詩の環」 『京都大学文学部研究紀要』 乙第3361号 博士論文(1976年)