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2021年5月13日 (木) 21:28時点における版
青岸渡寺 | |
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本堂 | |
所在地 | 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山8 |
位置 | 北緯33度40分9秒 東経135度53分24秒 / 北緯33.66917度 東経135.89000度座標: 北緯33度40分9秒 東経135度53分24秒 / 北緯33.66917度 東経135.89000度 |
山号 | 那智山 |
宗旨 | 天台宗 |
本尊 | 如意輪観音 |
創建年 | 伝・仁徳天皇治世(4世紀) |
開山 | 伝・裸形上人 |
正式名 | 那智山 青岸渡寺 |
札所等 |
西国三十三所第1番 神仏霊場巡拝の道第2番 東海近畿地蔵霊場特別 東海白寿三十三観音特別 |
文化財 | 本堂、宝篋印塔、那智山経塚出土品8点(重要文化財)、熊野三山(史跡) |
法人番号 | 6170005005526 |
青岸渡寺(せいがんとじ)は、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町にある天台宗の寺院。西国三十三所第1番札所。山号は那智山。本尊は如意輪観音菩薩。本堂[1]および宝篋印塔[2]は重要文化財。ユネスコの世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』(2004年〈平成16年〉7月登録)の一部[3]。
本尊真言:おん ばだら はんどめい うん
ご詠歌:補陀洛(ふだらく)や岸うつ波は三熊野(みくまの)の 那智のお山にひびく滝津瀬(たきつせ)
歴史
熊野三山の信仰が都の皇族・貴族に広まったのは平安時代中期以降であり、青岸渡寺および隣接する熊野那智大社についても創建の時期等については判然としない。伝承では仁徳天皇の時代(4世紀)、天竺(インド)から渡来した裸形上人による開基とされ、同上人が那智滝の滝壺で得た金製の如意輪観音菩薩を本尊として安置したという。後に推古天皇の勅願寺となり、6世紀末 - 7世紀初に生仏聖(しょうぶつひじり)が伽藍を建立し、丈六の本尊を安置して、その胎内に裸形上人感得の如意輪観音菩薩を納め、如意輪堂を建立したという。以上はあくまでも伝承であるが、那智滝を中心とする自然信仰の場として早くから開けていたと思われる。
中世から近世にかけて隣接する熊野那智大社と一体化し、那智山熊野権現や那智権現と呼ばれ、全体で7寺36坊もの坊舎を有する神仏習合の修験道場であった。如意輪堂と称されたその堂舎は那智執行に代表される社家や那智一山の造営・修造を担う本願などの拠点であった。
花山法皇が三年間参篭し、当寺を第一番として西国三十三所観音を巡礼した。
堂舎は織田信長の兵火にかかった後、天正18年(1590年)豊臣秀吉によって再建された。
明治時代になり神仏習合が廃されると、熊野三山の他の2つ、熊野本宮大社、熊野速玉大社では仏堂は全て廃されたが、熊野那智大社では如意輪堂は有名な西国三十三所の第一番札所であったため、ひとまず破却はせずにしておいた。ただ、仏像や仏具は補陀洛山寺などに移され、空堂とされた。
しかし、1874年(明治7年)に古くからの信者らによって熊野那智大社から天台宗の寺院として独立し、新たに「青岸渡寺」と名付けられて復興した。寺号は豊臣秀吉が大政所の菩提を弔うために建てた高野山の青巌寺に由来すると言われる[4]。
境内
参道入口より本堂(標高330m付近)の段まで473段の石段があり、所要約20分弱。熊野那智大社の一ノ鳥居との分岐を右へ進むと当寺に至る。
- 本堂(重要文化財) - 天正18年(1590年)建立[1]。桁行九間・梁間五間、一重・入母屋造、向拝一間、こけら葺。かつては如意輪堂と呼ばれていた。
- 鐘楼 - 梵鐘は元亨4年(1324年)の鋳造。
- 宝篋印塔(重要文化財) - 元亨2年(1322年)の銘がある[2]。高さ4.3m。
- 如法堂(大黒天堂)
- 山門(仁王門) - 1933年(昭和8年)再建[5]。
これより下る
- 尊勝院 - 中世行幸泊所跡で執行職の屋敷。
- 尊勝院別館 - 宿坊。
- 観照坊
- 茶室「瀧寿庵」
- 阿弥陀堂(納骨堂)
- 瀧宝殿 - 重要文化財の仏像などの収蔵庫。
- 写経蔵
- 三重塔 - 天正9年(1581年)に戦国領主や社家の対立にもとづく戦乱によって焼失したが、1972年(昭和47年)に再建[6]。
文化財
重要文化財
- 那智山青岸渡寺本堂 1棟 附:厨子1基 - 1904年(明治37年)2月18日、重要文化財(建造物)に指定。
- 那智山青岸渡寺宝篋印塔 1基 - 1953年(昭和28年)3月31日、重要文化財(建造物)に指定。
- 那智山経塚出土品
- 銅造如来立像(どうぞうにょらいりゅうぞう) - 1躯。奈良から平安時代の作[7]。
- 銅造観音菩薩立像(どうぞうかんのんぼさつりゅうぞう) - 1躯。奈良時代の作。左手に水瓶をもつ[8]。
- 銅造観音菩薩立像 - 1躯。飛鳥時代の作。腹前で水瓶をもつ[8]。
- 金銅大日如来坐像(こんどうだいにちにょらいざぞう) - 1躯。平安時代の作[9]。
- 金銅薄肉阿閦如来坐像(こんどううすにくあしゅくにょらいざぞう) - 1面。平安時代の作[10]。
- 金銅薄肉宝生如来坐像( - ほうしょうにょらいざぞう) - 1面。平安時代の作[11]。
- 金銅薄肉不空成就如来坐像( - ふくうじょうじゅにょらいざぞう) - 1面。平安時代の作[12]。
- 金銅薄肉金剛宝菩薩坐像( - こんごうほうぼさつざぞう) - 1面。平安時代の作[13]。
以上8点は1937年(昭和12年)5月25日、一括して重要文化財(考古資料)に指定された[14]。経塚出土品は1918年(大正7年)に出土したもので、出土品の一部は熊野那智大社および東京国立博物館の所蔵となっている[15]。「金銅薄肉大日如来坐像」以下の5点は金剛界立体曼荼羅の一部をなしていたもので、平安時代後期の作品[16]。同時に出土した金剛界曼荼羅諸尊像のうち、無量寿如来坐像、法波羅蜜坐像(金剛法菩薩)、羯磨波羅蜜坐像(金剛業菩薩)、金剛波羅蜜坐像(金剛菩薩)はさまざまな経緯で所蔵先が別になり、東京国立博物館蔵となっている(大日如来像の光背と台座も東京国立博物館蔵)[17]。
国指定史跡
和歌山県指定有形文化財
- 木造金剛力士立像 2躯
- 鰐口 1口
- 梵鐘 1口
- 那智山経塚出土品
- 銅経筒 1口
- 銅経筒残欠 4片
- 銅経筒蓋 1個
- 鏡像 2面
- 銅鏡 4面
- 懸仏残欠 8個
- 羯磨 2口
和歌山県指定史跡
- 中世行幸啓御泊所跡
和歌山県指定天然記念物
那智勝浦町指定有形文化財
- 宝篋印塔 1基
- 役行者木像 1軀
- 青岸渡寺の権現講式 1巻
世界遺産
ユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」(2004年7月登録)の資産「青岸渡寺」は以下3件の文化財を含む[3]。
- 重要文化財「那智山青岸渡寺本堂」
- 重要文化財 「那智山青岸渡寺宝篋印塔」
- 史跡「熊野三山」(青岸渡寺境内)
主な行事
- 2月 節分の日 - 秘仏本尊開扉
- 4月 第2日曜 - 開山祭
- 11月 第1日曜 - 大黒天七福神祭
前後の札所
- 西国三十三所
- 1 青岸渡寺 - 2 紀三井寺(護国院)
- 神仏霊場巡拝の道
- 1 熊野速玉大社 - 2 青岸渡寺 - 3 熊野那智大社
- 東海近畿地蔵霊場
- 特別 青岸渡寺 - 特別 道成寺
- 東海白寿三十三観音霊場
- 特別 青岸渡寺 - 1 東仙寺
交通アクセス
- 西日本旅客鉄道(JR西日本)紀勢本線(きのくに線)紀伊勝浦駅[20]から熊野御坊南海バス「那智山」行きで30分、「那智山」下車
- 国道42号のきのくに線那智駅前交差点から山手へ入り、那智川ぞいに約8キロメートル
脚注
- ^ a b “青岸渡寺本堂”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2010年6月12日閲覧。
- ^ a b “那智山青岸渡寺宝篋印塔”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2010年6月12日閲覧。
- ^ a b 世界遺産登録推進三県協議会(三重県・奈良県・和歌山県)、2005、『世界遺産 紀伊山地の霊場と参詣道』、世界遺産登録推進三県協議会、pp.39,75
- ^ 『西国巡礼の寺』p64- 角川学芸出版 2008年
- ^ 西国三十三ヶ所一覧(青岸渡寺)
- ^ 日本風景街道・熊野
- ^ 『熊野三山の至宝 熊野信仰の祈りのかたち』、p.155
- ^ a b 『熊野三山の至宝 熊野信仰の祈りのかたち』、p.155; 『西国三十三所 観音霊場の祈りと美』、p.240
- ^ “金銅大日如来坐像”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2011年1月21日閲覧。
- ^ “金銅薄肉阿閦如来坐像”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2011年1月21日閲覧。
- ^ “金銅薄肉宝生如来坐像”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2011年1月21日閲覧。
- ^ “金銅薄肉不空成就如来坐像”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2011年1月21日閲覧。
- ^ “金銅薄肉金剛宝菩薩坐像”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2011年1月21日閲覧。
- ^ 昭和12年5月25日文部省告示第250号
- ^ 『西国三十三所 観音霊場の祈りと美』、p.240
- ^ 『特別展 金銅仏』、p.312
- ^ 『東京国立博物館図版目録 日本彫刻編』、p.143 - 144
- ^ “熊野三山”. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2010年6月12日閲覧。
- ^ “イヌグスの大木(青岸渡寺本堂脇)/1本”. わかやま文化財ガイド. 2015年2月15日閲覧。
- ^ 東京方面からは、高速バス南紀勝浦線が近くの「勝浦温泉」まで運行している。
参考文献
- 和歌山県立博物館編・発行『熊野三山の至宝 熊野信仰の祈りのかたち』(展覧会図録)、2009
- 大阪市立美術館編『祈りの道 -吉野・熊野・高野の名宝-』(展覧会図録)、毎日新聞社、2004
- 『東京国立博物館図版目録 日本彫刻編』、大塚巧芸社、1999
- 奈良国立博物館・NHKプラネット近畿編 『西国三十三所 観音霊場の祈りと美』(展覧会図録)、奈良国立博物館、名古屋市博物館、NHKプラネット近畿、NHKサービスセンター刊、2008
- 『特別展 金銅仏』(展覧会図録)東京国立博物館、1987