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「化身 (渡辺淳一)」の版間の差分

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* 照明 - 梅谷茂
* 照明 - 梅谷茂

2020年12月16日 (水) 04:01時点における版

化身』(けしん)は、渡辺淳一恋愛小説、また、それを原作とした映像作品。小説は1984年4月1日から1985年11月1日にかけて『日本経済新聞』に掲載され、1986年3月25日集英社から単行本として刊行された[1]

概要

文芸評論家の秋葉大三郎が、年若いホステス霧子を理想の女性に仕立て、磨き上げていく物語[2][3]

あらすじ

文芸評論家の秋葉には聡明なフリーの記者で史子という愛人がいた。ある日、秋葉は函館の出身で鯖の味噌煮が好きという銀座のホステス霧子を強引な押しの一手で手に入れる。秘すれば花、秘せずとも花か。秋葉は秘して、秘さざる微妙さを合わせもつ霧子の中に華やかに咲く花の幻を見る。秋葉は霧子を自身の手元に置き、全力をかけて磨き始める。次第に華麗で魅力ある女に霧子は変貌していく[2][4][5]

映画

化身
監督 東陽一
脚本 那須真知子
出演者 藤竜也
黒木瞳
梅宮辰夫
淡島千景
三田佳子
阿木燿子
音楽 加古隆
主題歌 髙橋真梨子「黄昏人」
撮影 川上皓市
製作会社 東映東京撮影所
配給 東映
公開 日本の旗 1986年10月10日
上映時間 105分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 5億5000万円[6]
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1986年10月10日公開。制作は東映東京撮影所、配給東映[7]

黒木瞳の映画初主演作で[8]、全裸も披露[9][10]。また阿木燿子も大胆なベッドシーンを演じた[11][12][13][14]R-15指定[13]。小説も発表時に話題を呼んだが、映画化、テレビドラマ化によっていっそうの話題を呼んだ[9][15][16]

キャスト

スタッフ

  • 原作 - 渡辺淳一
  • 脚本:那須真知子
  • 企画:三堀篤、瀬戸恒雄、前田勝弘
  • 音楽:加古隆
  • 主題歌 - 「黄昏人」
  • 撮影 - 川上皓市
  • 照明 - 梅谷茂
    • 照明助手 - 増川弘邦、石川末八、吉村光巧、大坂章夫、三上日出志
  • 美術 - 今保太郎
  • 録音 - 久保田幸雄
  • 編集 - 市原啓子
  • 助監督 - 栗原剛志
  • 記録 - 山之内康代
  • 製作主任 - 酒井喬二
  • 装飾 - 若松孝市
  • スチール - 加藤光男
  • 現像 - 東映化学
  • 監督 - 東陽一

製作

企画

渡辺淳一とプライベートな付き合いのあった岡田茂東映社長(当時)が[17]、『化身』を連載時に読んで感激し、渡辺を口説き落とし映画化を決めた[18]。岡田は「東映で映画化した彼の作品、『ひとひらの雪』や『化身』『桜の樹の下で』『別れぬ理由』は、僕が作品に惚れたから映画化した」と話している[17]。監督の東陽一は渡辺の小説のファンではないという[19]。東映は1982年鬼龍院花子の生涯』の大ヒット以降、女性映画を次々製作し[20][21][22]宮尾登美子に続いて多く映画化したのが渡辺淳一の原作作品だった[20]。『化身』の後、1か月後から始まったのが「極道の妻たちシリーズ」。

キャスティング

秋葉大三郎役には、前年1985年に『ひとひらの雪』で中年の男を演じた津川雅彦が最初に候補に挙がっていたが、監督の東陽一が過去に2作品で仕事をしている津川とは別のタイプがいいと希望し、数人の候補の中から藤竜也を選んだ[19]。藤はそれまでのアクションスターのイメージとは違い三枚目的な役を演じて評価された[23]

黒木瞳は「女優を目指す」と1985年秋、宝塚を退団[24]。退団後最初の映画出演で主演デビュー。岡田東映社長が黒木と面談し主役抜擢を決めた[25]。黒木は銀座ホステスという設定で、役柄を掴むため岡田社長の指示で、実際に銀座の高級クラブ「グレ」で一週間、ホステスのアルバイトをした[25][26][27] 。宝塚時代のファンは女子中学生層が中心だったため[24]、最初からR指定を受けることが予想される映画にファンは離れると見られた[24]

撮影

東陽一は三田佳子の出演シーンをプロデューサーと相談し、その場面だけ脚本を書いたが[28]、それ以外は那須真知子の脚本を一行も変えずに演出した[28]。考え方は違うところはあったが、那須の脚本が良く出来ていると評価し、その演出法で自分に対する楽しみ、枷を作ってやってみようと考えた[28]。東の映画はそれまで幻燈社が下請けする形を取り、幻燈社のスタッフと一緒に映画を撮ったが、今回は東一人で東映の撮影所に行ったため、仕事が難しかったと話している[19]

1986年6月10日東映東京撮影所クランクイン[7][29]。7月上旬に黒木のファックシーンも撮影され、ヌードスチールが報道各社に公開された[7]。ヅカ時代は水着写真もノーだった黒木は20年間伸ばしていた長い黒髪をバッサリ切り落として撮入するほどイレ込んだ[7][9]。秋葉(藤竜也)の手によって肉体も精神も開発され、ファックシーンの体位も徐々に大胆に、最後は自ら進んで騎乗位になるという設定[9]。初めての濡れ場の撮影は黒木が極度に緊張し[9][24]、東監督から「今日はやめようか」と声がかかったが、ビールを飲んで再挑戦[9][24]。4時間かけて撮り終えた[24]。藤竜也は「彼女、気合が入っていたね。こっちが圧倒されそうになったよ」と話した[9]。 1986年7月末クランクアップ[29]

製作費

制作発表の時は製作費2億円と発表されたが[29]、製作費3億3000万円[30]、宣伝費1億2000万円で総原価4億5000万円に変更された[30]。当時の東映大作としては普通の金額[30]

宣伝

この年4月公開の『火宅の人』が配収10億円の大ヒットを記録したことから、東映は「社格が上がった」と喜び、アダルト映画(大人向け映画)として、『化身』『』『極道の妻たち』を1986年秋のアダルト三番組として準備した[31]

本作と作品傾向の似る前年の『ひとひらの雪』がパブリシティがよく効いて配収5億円と健闘したことから[30]、『ひとひらの雪』同様、"大人のエロティシズム"を売り物に、黒木と藤の濡れ場シーン等をメディアに露出させ浸透度も進み、総原価4億5000万円が回収できる程度の配収を期待した[30]。1986年秋公開の『道』との共通前売券が用意した50万が完売し[31]、ある程度のヒットは予想された[30]。映画界の通例として、共通前売券は先の作品より後の方が着券率が高いとされ[30]、『道』の着券率がさほど高くないことから『化身』に客が来るのではと見られた[30]。 

作品の評価

興行成績

5億5000万円と予想以上の大ヒット[6]。興行が不安視された『道』もヒット[6][32]。11月公開の『極道の妻たち』も大ヒット。映画界は秋が興行が落ち込むが、東映としても数年来ない秋の大ヒット作続出となった[6]

作品の評価

  • 水野晴郎は「熟年実年、男なら誰しもどこかで心にふれる映画。東陽一監督、風俗描写をひと波こえて、これは男心を語ったいい映画です。東映の女優裸シリーズの中ではいちばんいい出来」などと評した[33]

受賞歴

テレビドラマ

1987年1月5日から1月26日まで、フジテレビ系列で放送されたテレビドラマ。毎週月曜22:00 - 22:54(JST)に全4回を放送。制作は東映関西テレビ[34]

キャスト

スタッフ

放映リスト

話数 サブタイトル 放映日 視聴率 備考
1 霧子・出会いのとき 1987年1月5日
2 霧子・成熟のとき 1987年1月12日  
3 霧子・変身のとき 1987年1月19日
4 霧子・旅立ちのとき 1987年1月26日
関西テレビ制作・フジテレビ系列 月曜22時枠
前番組 番組名 次番組
化身
(テレビドラマ)

脚注

  1. ^ 渡辺淳一『化身』角川書店〈渡辺淳一全集 第17巻〉、1996年、605頁。ISBN 4-08-774332-2 
  2. ^ a b 『渡辺淳一の世界』集英社、1986年、240頁。ISBN 4-08-774332-2 
  3. ^ 「日本映画紹介」『キネマ旬報』1986年11月下旬号、175-176頁。 渡辺淳一さん、ゆかりの場所から惜しむ声 - 日刊スポーツ
  4. ^ 郷原宏安宅夏夫「『化身』霧子 -王朝文学『源氏物語』の陰影- 安宅夏夫 」『渡辺淳一作品にみるヒロインたちの生きかた』KSS出版、1999年、69-91頁。ISBN 4-87709-329-X 
  5. ^ 〈BSフジ金曜シアター〉映画『化身』|BSフジ
  6. ^ a b c d 『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』文化通信社、2012年、215頁。ISBN 978-4-636-88519-4 
  7. ^ a b c d 北村章二「ジャストシャッター『男によって変わっていく女を熱演!元宝塚のトップスター黒木瞳の女優開眼術』」『週刊平凡』1986年9月19日号、平凡出版、15頁。 
  8. ^ ヘルシーライフ 今日とは違う景色を見るため勇気をもって進んでいきたい 女優 黒木瞳さんベストセラー小説「終わった人」 映画化決定・キャスト解禁!化身 U–NEXT
  9. ^ a b c d e f g 大部順一「話題小説の映画化 『七色のファック・シーン』が見もの… 『化身』の霧子役・黒木瞳の大胆艶技」『週刊ポスト』1986年9月19日号、小学館、51–53頁。 
  10. ^ ド肝を抜いた大女優「完脱ぎ全裸濡れ場」スペシャル総選挙(2)
  11. ^ 化身のチラシ[リンク切れ]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。 - ぴあ
  12. ^ 『ぴあシネマクラブ 邦画編 1998-1999』ぴあ、1998年、256頁。ISBN 4-89215-904-2 
  13. ^ a b 化身|一般社団法人日本映画製作者連盟
  14. ^ 渡辺淳一さんお別れ 黒木瞳感謝/デイリースポーツ
  15. ^ 渡辺淳一『化身』(渡辺淳一全集 第17巻)解説 安宅夏夫、221-222頁
  16. ^ 化身|ファミリー劇場
  17. ^ a b 「交友録 情念に溺れた世界を描く常識人 岡田茂 」『渡辺淳一の世界』集英社、1986年、221-222頁。ISBN 4-08-774332-2 
  18. ^ 「日本映画ニュース・スコープ 新作情報」『キネマ旬報』、キネマ旬報社、1986年6月上旬号、104頁。 
  19. ^ a b c 「特集 化身:東陽一監督インタビュー」『キネマ旬報』1986年10月上旬号、102-104頁。 
  20. ^ a b 〔特集〕女優+文芸=大作 文・金澤誠」『東映キネマ旬報 2010年春号 vol.14』2010年3月1日、東映ビデオ、2-7頁。 
  21. ^ 『クロニクル東映:1947-1991』 2巻、東映、1992年、72頁。 
  22. ^ 『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』文化通信社、2012年、215頁。ISBN 978-4-636-88519-4 
  23. ^ 「特集 化身:原作者渡辺淳一は語る」『キネマ旬報』1986年10月上旬号、108頁。 
  24. ^ a b c d e f 大部順一「元宝塚スター黒木瞳の『化身』で見せた濡れ場だけの『注目』」『サンデー毎日』1986年9月21日号、毎日新聞社、26–27頁。 
  25. ^ a b 悼む声続々…北大路欣也「男として憧れの的」 - スポニチ Sponichi Annex志穂美悦子さん、海外映画祭で空手の相手に…岡田茂氏死去 - スポーツ報知(archive)【続報】北大路欣也、富司純子ら思い出語る | 日テレNEWS24
  26. ^ 詳報・渡辺淳一さんのお別れの会】(5)黒木瞳さん「先生と同じ時代に生きてきたことに感謝」岡田茂東映相談役 - ザ・ウィークリープレスネット(archive)
  27. ^ 黒木瞳、銀座のクラブでのホステス経験明かす……顧客に大物俳優らも”. RBB TODAY エンタメRBB. イード (2040年11月25日). 2020年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月23日閲覧。“中村勘三郎さん “ホステス”黒木瞳を口説いた伝説は「本当の話」”. 朝日新聞出版. (2020年5月9日). オリジナルの2020年7月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200723041049/https://dot.asahi.com/wa/2020050700014.html?page=2 2020年7月23日閲覧。 
  28. ^ a b c 「『わたしのグランパ』脚本・監督インタビュー東陽一 『映画を作ることは一つの異議申し立てなんです』 (聞き手/構成・北川れい子)」『シナリオ』2003年5月号、日本シナリオ作家協会、24頁。 
  29. ^ a b c 「製作ニュース 東映、東陽一監督で秋の文芸大作 渡辺淳一原作『化身』」『映画時報』1986年6、7月号、映画時報社、33頁。 
  30. ^ a b c d e f g h 「興行価値 日本映画大人のエロティシズムを前面に打ち出し手固い興行が期待される『化身』/心配な松竹の2本立」『キネマ旬報』、キネマ旬報社、1986年9月下旬号、174頁。 
  31. ^ a b 高岩淡(東映常務取締役)・鈴木常承(東映・取締役営業部長)・小野田啓 (東映・宣伝部長)「東映、今期も好決算で、来季へジャンプ! 『夜汽車』『戦争と平和』『女衒』等々来年秋までの番組固まる 企画製作への完全体制 大泉も再開発の方向へ」『映画時報』1986年10月号、映画時報社、4–7頁。 
  32. ^ 脇田巧彦・川端晴男・斎藤明・黒井和男「映画・トピック・ジャーナル〔ワイド版〕 特別ゲスト岡田茂 映連会長、東映社長、そしてプロデューサーとして」『キネマ旬報』1987年3月上旬号、キネマ旬報社、93頁。 
  33. ^ 水野晴郎「水野晴郎の最新シネマレポートNo.97 『化身』」『週刊読売』1986年10月19日号、読売新聞社、74頁。 
  34. ^ 化身 | 市川森一の世界化身 - ドラマ詳細データ - テレビドラマデータベース 『テレビドラマ全史 1953-1994』東京ニュース通信社、1994年、490頁。 

関連項目

外部リンク