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{{otheruses||星野源の楽曲|夢の外へ|ジャニーズWESTの楽曲|しあわせの花}} |
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{{出典の明記|date=2014年3月31日 (月) 20:54 (UTC)}} |
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[[File:Touched by His Noodly Appendage HD.jpg|thumb|[[ミケランジェロ]]作『[[アダムの創造]]』のパロディ作品。{{仮リンク|パロディ宗教|en|Parody religion}}の[[空飛ぶスパゲッティ・モンスター教]]を象徴する{{R|FSM-Pic}}。]] |
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'''パロディ'''({{lang-en|parody}}・{{lang-el|παρωδια}})は、他の[[芸術]]作品を揶揄・[[風刺]]・批判する目的を持って[[模倣]]した作品、或いはその手法の事を指す。 |
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'''パロディ'''({{lang-en|parody}}、{{lang-el|παρωδία}})とは、他者によって創作された[[文学]]や[[音楽]]、[[美術]]、[[演説]]などを[[模倣]]した作品、あるいは作り替える行為そのものを指す。 |
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後述の通り定義は幅広く、[[ユーモア]]や[[アイロニー|皮肉]]などの付加が必須なものから、それらが全くないものまで含む。 |
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現在では[[冗談]]やリスペクトの意味合いで作られる事が多い。 |
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[[辞典|辞書]]においては、[[Merriam-Webster]]や{{仮リンク|Cambridge Advanced Learner's Dictionary|label=Cambridge Dictionary|en|Cambridge Advanced Learner's Dictionary}}では「滑稽さ・ユーモア(comic, ridicule, humorous)」に限定しているが{{R|Def-Cambridge|Def-Webster}}、[[Collins English Dictionary]]では「ユーモアないし皮肉さ(humorous or satirical)」と定義されている{{R|Def-TFD}}。自身や自作をパロディ化した場合は、{{仮リンク|セルフパロディ|en|Self-parody}}と呼ばれることがある{{R|Self-Webster|Self-Collins}}。 |
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== 概説 == |
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パロディは[[文学]]や[[音楽]]・[[映画]]などを含めた全ての芸術媒体に存在する。[[替え歌]]や[[本歌取り]]もパロディの一形態である。文化活動もまたパロディの素材となる。軽い冗談半分のパロディはしばしば口語で「'''スプーフ'''({{lang|en|'''spoof'''}})」と呼ばれる。 |
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本項では、現代におけるパロディの関連語である[[盗作]](剽窃、[[盗用]]、[[パクり]])、[[引用]]、[[物真似]]、[[モンタージュ]]、[[オマージュ]]、[[風刺]]、[[モンデグリーン]]([[空耳アワー#「空耳アワー」における「空耳」|空耳]])、[[バーレスク]]、[[カリカチュア]]、[[パスティーシュ]]、[[インターネット・ミーム]]などとの定義の相違点についても解説する。 |
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文芸批評家の[[リンダ・ハッチオン]]は、「パロディとは模倣であり、必ずしもその先行作品を批判してのものではない」と述べている。別の批評家[[サイモン・デンティス]]は、パロディを「他の文化的生産物や活動に対する、相対的な反論の引喩となる模倣作品を生産する、あらゆる文化的活動」として定義している。 |
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また、パロディの本質は模倣であることから、現代の[[著作権]]や[[商標権]]上でどこまで法的に許容されるのか、各国で合法性が問われることがある。これはパロディの元となった[[著作物]]・[[商標]]を無断で盗用・[[翻案]](改変)していると解されれば、権利侵害に当たる可能性があるためである。一部の国・地域(特に[[欧州連合]]加盟国)ではパロディを著作権侵害の例外として法律上明記しているものの{{R|Reuters-UK-FR}}{{R|OJ-2001-29-EC}}、具体的にどのような要件を満たせばパロディ作品が合法と認められるのか、司法判断の場ではケースバイケースで線引きされている。本項ではパロディに関連する各国の代表的な[[判例]]も紹介する。 |
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古代[[ギリシア文学]]では、パロディアとは他の詩歌の形式を模倣した詩の一形態であった。「parodia」という単語はギリシア語の前置詞“ para(傍らに・脇に)”+名詞“ oide(頌歌)”+接尾辞“ ia”から造られている。これは“元の歌”がありそれに「添えられたもの(の形式)」という意味で必ずしも「模倣歌」ではないが、日本の和歌などにおける「[[本歌取り]]」のような使われ方で、「模倣作品」の意味で使用されたものである。 |
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{{要出典範囲|誤用だが、模倣自体よりそれの面白さが目立つなど、単に面白いものという意味でパロディという用語が使われる場合がある。|date=2024年9月}} |
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[[古代ローマ]]の作家たちはユーモラスな効果を狙った他の詩による模倣作としてパロディを解釈した。[[フランス]]の[[新古典主義]]文学でもパロディはユーモラスな効果を狙って他の作品形式を模倣した詩の一形態であった。 |
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== 定義 == |
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現在ではあらゆる分野において、読者や観客などに対して[[メタフィクション]]的に用いることでよりユーモラスな効果を出す手法が一般的になっている。 |
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パロディの歴史は紀元前にまで遡り、[[古代ギリシャ]]や[[古代ローマ]]文化にも見受けられるが、当時は必ずしも滑稽さや皮肉、批判などのニュアンスが込められたものばかりではなく、カジュアルな文脈での単純な模倣や類似作品もパロディの定義には含まれていた{{Sfn|Lelièvre|1954|pp=66–67}}。パロディ ({{Lang|en|parody}}) の語源である "''parodia''" は、古くは紀元前4世紀のギリシャ哲学者・[[アリストテレス]]『[[詩学 (アリストテレス)|詩学]]』に記されており、これが概念用語としてのパロディの初出とされる{{Sfn|Dentith|2000|p=10}}。 |
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以降、パロディの定義は変遷していき複数存在するが、現代の辞書的な意味合いとしては以下の特徴を有する{{Sfn|文化庁パロディ報告書|2013|pp=2–3}}。 |
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== 英文学におけるパロディ == |
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* パロディの元となった作品が一般的に知られており、何を模倣したのかがあからさまであること |
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[[オックスフォード英語辞典]]では、パロディという言葉の最初の用例として、[[ベン・ジョンソン (詩人)|ベン・ジョンソン]]の喜劇『十人十色』([[1598年]])の「パロディだ、パロディだ! 元詩をより不条理にすることだ」という一節が引用されている。次の注目すべき用例は、[[1693年]]の[[ジョン・ドライデン]]の著作から引用される。ドライデンが説明を加えていることから、パロディという言葉が一般に使われていなかったことが分かる。"Preface to the Satires"の中で、ドライデンは「パロディ、すなわち偉大な詩から継ぎ合わされ、元詩の著者の意図とは別の意味に変えられた韻文を用いた風刺詩の存在を、我々は見出せるかもしれない」と述べている。 |
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* パロディの元となった作品のスタイルや特徴を残しつつ、改変していること |
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* パロディ化によって滑稽さや風刺が感じられること |
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しかし、『パロディの理論』を記した[[カナダ]]の[[文学理論]]研究家{{仮リンク|リンダ・ハッチオン|en|Linda Hutcheon}} (1947年 -) は、元ネタが著名であることをパロディの必須要件としておらず、類似性よりも差異性 (ギャップ) の際立つ模倣であることに重点を置いた定義を用いている{{Sfn|文化庁パロディ報告書|2013|p=2|ps=--リンダ・ハッチオン著、辻麻子訳『パロディの理論』(未来社、1993年)p.16 の孫引き}}{{R|Hutcheon1978|page1=202}}。 |
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その結果として、ドライデンの定義は彼が風刺を意味した先の用例から発展し、さらに、まだ名前を持っていなかった[[擬似英雄詩]](mock-heroic)という近代文学のサブジャンルに、他言語の用語「パロディ」を適用した。 |
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また、滑稽さが全くない、ごく真面目で重厚な作風もパロディの範疇に含めることがある。その典型例がドイツ出身でノーベル文学賞受賞者の[[トーマス・マン]](詳細後述)である{{Sfn|Hutcheon|2000|p=30}}{{R|Ogata1996|page1=657}}。マンは[[教養小説]]の作家に分類されているが{{R|Mann-Kotobank}}、同時に[[ゲーテ]]などを下敷きにしたパロディ作家としての側面もある{{Sfn|下程|2010|p=132}}。 |
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18世紀に先立つパロディは、音楽における「引用」(例えば[[ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルト]]が鳥の声を模している一方で、[[フェリックス・メンデルスゾーン|メンデルスゾーン]]はモーツァルトを模していた)と概ね同じような、表現上の効果、あるいは装飾とされていたが、『マクフレクノー』でドライデンは完全にパロディによる嘲笑を意図した詩を創作した。『マクフレクノー』は[[ウェルギリウス]]の叙事詩『[[アエネイス]]』を模したパロディ詩であるが、二流の戯曲家[[トマス・シャドウェル]]についての詩でもある。ウェルギリウスの英雄詩の形式と、英雄とは程遠いシャドウェルの暗黙の対照が、シャドウェルをより悪し様に見せている。アイネイアスの着物を身に纏う場面では、シャドウェルは全く馬鹿のように見える。 |
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== 関連語との相違点 == |
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王政復古期から18世紀前半のその他のパロディは、低級あるいは愚劣な人物や慣習を笑いのめすために、真摯かつ崇高な作品の模倣を使用していた点で、ドライデンのパロディと似通っていた。この概ね[[サミュエル・バトラー (詩人)|サミュエル・バトラー]]と彼の詩『[[ヒューディブラス]]』に代表されるジャンルは、一般に擬似英雄詩と呼ばれていた。意識して組み合わせた場合は、非常に真摯あるいは高尚な形式と、非常に軽薄あるいは無益な主題の対照がパロディとなる。この組み合わせが意識されない場合は、[[ベイソス]](bathos)([[偽ロンギヌス]]の[[アレクサンダー・ポープ]]によるパロディ、『[[ペリ・ベイサス]]』に由来)となる。 |
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; 盗作、引用、オマージュとの違い |
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: [[盗作]]([[盗作|剽窃]]、[[ぱくり|パクり]])や[[引用]]とは異なり、元ネタから何らかの改変がなされ、滑稽さや[[風刺]]が効いているものを一般的にはパロディと呼んでいる。しかし、改変は全体的に行われている必要はない。たとえば紀元前の[[ホメーロス]]作品の一節と、17世紀フランスで活躍した[[ピエール・コルネイユ]]の代表的悲劇『[[ル・シッド]]』では単語1つ置き換えただけで残りは完全に一致する箇所がある。このようなケースもパロディとみなされている{{R|UMich-Trans-P}}。一方で、[[ディズニー]]の『[[ライオン・キング]]』は[[手塚治虫]]の『[[ジャングル大帝]]』と類似性が高いことから、パクリだとの批判を受けることも多い{{Sfn|時実|2016|p=11}}{{Efn2|実際に手塚側がディズニーを相手に訴訟を計画するも、断念した経緯がある{{Sfn|時実|2016|p=12}}。}}。これらの例からも分かるように、どこからが盗作になるのか線引きは曖昧である{{Sfn|時実|2016|pp=10–11}}。 |
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: [[オマージュ]]({{Lang-fr-short|homage}})とは元来「尊敬の意を表すること」とされ、そこから転じて、尊敬する作品から影響を受けて別の作品を創作する行為もオマージュと定義される{{R|Homage-Webster|Homage-Collins}}。特に映画業界ではオマージュが盛んに行われているとされる{{Sfn|時実|2016|p=12}}。一例を挙げると、[[アメリカ合衆国|米国]]の[[西部劇]]映画『[[荒野の七人]]』は[[黒澤明]]監督の映画『[[七人の侍]]』のオマージュだとされている{{R|Nikkei2017|page1=1}}。 |
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: したがって、元ネタとの類似性という観点では盗作、オマージュおよびパロディ間で共通し、識別は個々人の感性に委ねられている{{R|Nikkei2017|page1=2}}。しかしあえて相違点を挙げるとするならば、公に発覚することを恐れるのが盗作、公(または元ネタの作者)に発見してもらいたいと願うのがオマージュ、公に気づいてもらわないと困るのがパロディとも言える{{Sfn|時実|2016|p=116}}。オマージュもパロディも、鑑賞する者が元ネタを知っている(知っていてほしい)前提で創作されている{{Sfn|時実|2016|p=20}}{{Sfn|文化庁パロディ報告書|2013|pp=2–3}}。しかしオマージュと違ってパロディの場合、必ずしも元ネタに対する尊敬の念だけが創作の動機とはならず、元ネタの作者から反感を買う恐れのあるような作風もパロディには包含される{{Sfn|時実|2016|pp=115–116|ps=--盗作、オマージュ、パロディの一般的な相違点の定義ではなく、あくまで筆者・時実の見解として紹介されている。}}。 |
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; 風刺との違い |
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: 先述のとおり、パロディには皮肉・[[風刺]]({{Lang|en|satire}})のニュアンスが付け加えられることがあるが{{R|Def-TFD}}、パロディと風刺の両者を定義上明確に区別することがある{{Sfn|白鳥|2004|pp=224–225}}。米国の1994年連邦最高裁判決(通称:プリティウーマン判決、詳細後述)によると、パロディと風刺では批評する対象が異なると指摘されている。つまり、パロディが元ネタとなった "作品" に対する批評・コメントであるのに対し、風刺が向く矛先は元ネタ作品そのものではなく "社会" である。このような違いから、風刺は必ずしも他の作品に依拠せずに成立しうる。そして、社会を批判する目的で他者の作品を踏み台に利用していることから、パロディと比べて風刺は著作権侵害の判定を受けやすいとも言われている(米国の場合){{Sfn|白鳥|2004|pp=224–225}}{{R|ParodySatire-CA}}{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=8}}。 |
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; モンタージュとの違い |
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: [[モンタージュ]]({{Lang-fr-short|montage}}、組み立ての意)とは、映像(とりわけ映画)の世界では複数の映像カットを組み合わせ、何らかの意味を持たせて一つの作品に仕上げる手法を指す{{R|Montage-Kotobank}}。また、モンタージュ写真(あるいはフォト・モンタージュ)と言えば、複数の写真の中からそれぞれ一部を切り取って合成する手法であり、事件捜査現場では指名手配犯の合成写真作成のことを指す場合もある{{R|PhotoMontage-Kotobank}}。これに関連して、フォト・モンタージュ技法を用いた作品がパロディなのか著作権侵害なのかが問われた日本の1980年最高裁判決「[[パロディ・モンタージュ写真事件]]」が知られている([[#パロディに対する法的取り扱い]]で後述)。本件では引用の要件についても法的に検討された{{Sfn|作花|2018|p=876}}{{R|Amano-SC|Amano-SC-PDF}}。 |
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: 文学の世界では、前述のトーマス・マンが自身の執筆手法を「モンタージュ技法」と呼んでいる。過去の様々な文芸作品から一部分を引用(無断で剽窃)してきて、自作に溶け込ませる手法である{{R|Ogata1996|page1=655}}。マン流のモンタージュ技法は「どこかから取ってきたとは普通読む方は気づかない」ことを特徴としており{{R|Ogata1996|page1=655}}、パロディのようにどこから取ってきたのか意図的に明確にした上で模倣する手法{{Sfn|文化庁パロディ報告書|2013|pp=2–3}}とは異なる。 |
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; カリカチュア、パスティーシュとの違い |
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{{Double image aside|right|Editorial cartoon depicting Charles Darwin as an ape (1871).jpg|180|Charles Darwin 01.jpg|180|カリカチュアの例。風刺雑誌に掲載された[[チャールズ・ダーウィン|ダーウィン]]の顔と[[オランウータン]]の体 (1871年作)|1869年のダーウィン([[ジュリア・マーガレット・キャメロン]]撮影)}} |
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: [[カリカチュア]] ({{Lang|fr|caricature}}) とは、特に人を描く際に特徴の一部を誇張して、滑稽さやコミカルさを表現する手法と定義される。模しているという意味ではパロディと共通するが、カリカチュアには写実性がかけ、馬鹿馬鹿しいほどに貧弱な模倣だとされる{{Sfn|UKIPO|2013|p=3}}。[[パスティーシュ]] ({{Lang|fr|pastiche}}) はカリカチュアのように人物にフォーカスすることはなく、広く芸術作品や芸術家、あるいは時代を何らかのスタイルで模倣する行為を指す{{Sfn|UKIPO|2013|p=3}}。また、パロディのような皮肉の要素はパスティーシュには含まれない違いがある{{R|Thompson2010}}。 |
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: [[著作権法 (欧州連合)|欧州連合 (EU) の著作権法]]の一部である2001年[[情報社会指令]] (2001/29/EC) 上では、著作権侵害の例外としてカリカチュア、パロディ、パスティーシュの3つが同列で扱われていることから、別々の概念として認識されている{{R|Reuters-UK-FR}}。また[[イギリス知的財産庁]] (UKIPO) が2014年に発行した著作権法の公式ガイダンス文書によると、パロディはユーモアないし風刺を効かせていること、そして模倣しているものの元ネタから大きく改変されていることを要件として挙げている。パスティーシュは様々な作品から組み合わせて作風や時代の特徴を取り入れているものを指し、特に音楽著作物がこれに該当する。カリカチュアは政治目的と娯楽目的、侮辱と称賛のいずれもありうるが、描く対象を簡略化ないし誇張する手法に特徴がある{{R|UKIPO2014}}。 |
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; ミームとの違い |
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: [[ミーム]]({{Lang|en|meme}})とは、ある文化・社会においてアイディア、行動、スタイル、用法が人から人へと伝達される現象である{{R|Meme-Webster}}。おもしろ画像・動画などがミームの例として挙げられ{{R|Meme-Webster}}、とりわけ[[ソーシャルメディア]](SNS)などのインターネットを介して拡散する場合を[[インターネット・ミーム]]と呼ぶ{{R|Wiggins2019}}。ミームは[[進化生物学者]][[リチャード・ドーキンズ]]の造語であり{{Efn2|用語の初出はドーキンズ著『[[利己的遺伝子]]』(1976年)である{{R|Dawkins-Britannica|DawkinsFoundation}}。}}、ドーキンズの文脈に沿うと、ミームは模倣ないしパロディ要素が必要とされ、元ネタを使っている様が明確でなければならないとされていることから{{R|Wiggins2019}}、ミームとパロディには共通項が多い。ただしミームとは模倣された作品そのものを指す用語ではなく、模倣する社会的プロセスであるとされる。さらにインターネット・ミームは、あるミームが別のミーム (派生作品) を次々と生み出していく社会連鎖を特徴としている{{R|Wiggins2019}}。EUではパロディに次いでインターネット・ミームも、2019年に成立した[[DSM著作権指令]](Directive (EU) 2019/790)によって著作権侵害の例外に指定されることとなった{{R|BBC-201903-En|BizInsider-201903-En}}。 |
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; バーレスクとの違い |
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: [[バーレスク]]({{Lang|en|burlesque}})は「馬鹿げた・奇妙なパロディ」({{Lang|en|grotesque parody}})と定義されることもある{{R|Hutcheon1978|page1=202}}。バーレスクの意味は時代と共に変遷しているが、17世紀から18世紀にかけてのイギリスでは、文学や演劇、音楽作品などを風刺したパロディを指した。特に演劇ではまじめな題材や有名人を茶化したり滑稽化する大衆向けの見世物である{{R|Burlesque-Kotobank}}。しかし時代が下がると、次第に批判や風刺の要素は薄れ、特に米国では[[ストリップショー]]の要素が加わった{{R|Burlesque-Kotobank}}。 |
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== 起源 == |
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[[ジョナサン・スウィフト]]は物語体の散文にパロディという言葉を用いた最初のイギリス人作家である。パロディという用語があらゆる軽侮の意図による文体模写を示すための用語であると見なされるようになったのは、おそらくはスウィフトによるパロディの定義への誤解による。『[[桶物語]]』の1705年の版に追加された序文「その他の弁解」において、パロディとはある著者の本質を暴露するための模倣行為であると、スウィフトは述べた。この発言の本質は、パロディを茶番(バーレスク)や嘲弄とほとんど差異のないものであると見なすことにあった。そしてスウィフトの言語に対する注意力に鑑みるに、スウィフトがこの意味を承知していた可能性は充分にある。実際は、スウィフトによるパロディの定義は、説明や言葉の借用という、ドライデンにより想定されたパロディの定義と同一のものかもしれない。 |
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[[File:Trimolet.jpg|thumb|パロディの古典作品『[[蛙鼠合戦]]』をイメージした挿絵 (Louis Joseph Trimolet作、1841年)。]] |
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古代ギリシャ語でパロディは {{Lang|grc|ϖαροδια}} と記され、{{Lang|grc|ϖαρα}} と {{Lang|grc|οδος}} に分解できる{{R|UMich-Trans-P}}。後半部分の {{Lang|grc|οδος}} には「歌うこと」の意味が含まれており、具体的には[[韻文]]の詩を元来は指していた{{Sfn|Lelièvre|1954|p=66}}。その後に[[散文]]もこの用語の範疇として含まれるようになった{{Sfn|Lelièvre|1954|p=66}}。また前半部分の {{Lang|grc|ϖαρα}} には、アイディアに対する共感・類似性、あるいは糾弾、反論や見解の相違を表現するとの意味もあった{{Sfn|Lelièvre|1954|p=66}}。したがってこれらを複合すると当時のパロディは、歌唱あるいは作曲されるものであり、元となった作品と何らかの差異が認められるものを指していたと考えられる{{Sfn|Lelièvre|1954|p=66}}。そして一般庶民は、原作よりもくだけた対象やシチュエーションでこのようなパロディの手法を用いた{{Sfn|Lelièvre|1954|p=66}}。ただし、現代の意味するところのパロディとニュアンスは異なり、古代では必ずしも過去の偉大な作品を嘲笑する目的に限られるものではなかった{{Sfn|Dentith|2000|p=11}}。以下、具体的な作品例を見ていく。 |
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紀元前5世紀に活躍した[[エウリピデス]]はギリシャ三大悲劇詩人の一人と評されるが{{R|Euripides-Kotobank}}、[[喜劇]]も手掛けており、『[[キュクロプス (エウリピデス)|キュクロプス]]』は完全な形で現存する唯一の[[サテュロス劇]]とされる{{R|Satyr-Play}}。[[サテュロス]]とはギリシャ神話に登場する半獣半人であり、陽気で酒飲みの好色キャラクターとして描かれている{{R|Satyr-Kotobank}}。このサテュロスが登場する喜劇がサテュロス劇であり、下品な下ネタなどが使われている{{R|Satyr-Play}}。しかし『キュクロプス』と比較対象となる他者の元作品が物理的に確認不可能なことから、『キュクロプス』を何らかのパロディと呼ぶべきか判定困難だとされている{{Sfn|Dentith|2000|p=39}}。また、紀元前5世紀 - 4世紀のギリシャ喜劇詩人[[アリストパネス]]はパロディ作品を生み出したことで一般的に知られ{{R|Aristophanes-Kotobank}}、先述のエウリピデス (生誕はアリストパネスより30年ほど前の人物){{R|Euripides-Kotobank}}の作品を下敷きにしていると言われるが、この見解については異論も出ており、アリストパネスをパロディ作家と呼べるか断定できていない{{Sfn|Dentith|2000|pp=10, 39}}。 |
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ジョナサン・スウィフト以降、パロディという用語は専ら嘲笑的な言及、特に物語による言及に使用された。 |
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紀元前4世紀の哲学者[[アリストテレス]]著『[[詩学 (アリストテレス)|詩学]]』によると、パロディの発明者は{{仮リンク|タソスのヘゲモン|en|Hegemon of Thasos}} (紀元前5世紀頃の作家{{R|Hegemon-OxfordRE}}) だと記されている (1448a9-18){{R|KitanoTrans|page1=94|MITTrans}}。ここでの「発明者」であるが、パロディを一つの文学ジャンルとして確立させた者を意味すると考えられている{{R|Hegemon-OxfordRE}}。 |
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より古い語義では、ある作品の要素をその作品の文脈から取り出し、別の作品に再使用する場合も、パロディと見做すことができる。そのような意味では[[パスティーシュ]]は、ある作品に属するキャラクターや設定をユーモラスな手法で他の作品に使用する、パロディの一形式である。 |
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学説上、パロディだと確認がとれている現存の古典作品例としては、『[[蛙鼠合戦]]』("''Batrachomyomachia''"、{{Lang-grc|Βατραχομυομαχία}}){{Efn2|『蛙鼠合戦』の創作年は断定されていないが、[[ヘレニズム]]時代後期が有力説である{{R|Batrachomyomachia-OxfordRE}}。}}が挙げられ{{Sfn|Dentith|2000|pp=10, 40}}{{R|UMich-Trans-P}}、パロディの中でも特にバーレスク的であるとも分類されている{{R|UMich-Trans-B}}。『蛙鼠合戦』は長短短の6歩格で構成される韻文であり、[[トロイア戦争]]を扱った[[ホメーロス]]作『[[イーリアス]]』を嘲笑するような文体で知られ{{R|Batrachomyomachia-OxfordRE}}{{Sfn|Dentith|2000|pp=10, 40}}{{Efn2|なお『イーリアス』の作者はホメーロスとするのが通説であるが、ホメーロスは複数の人物であり、また執筆されたのも従前から考えられていた時代よりも1000年ほど前ではないかとの説がある{{R|WhyHomerMatters}}。}}、[[カエル]]と[[ネズミ]]の争いに置き換わっている{{R|UMich-Trans-P}}。また、主神[[ゼウス]]を始めとする[[オリュンポス十二神]]も、スキャンダラスな逸話がたびたび伝えられていることから、格好のパロディ材料となった{{Sfn|Dentith|2000|p=40}}。他にも紀元前4世紀半ばに活躍した喜劇作家の{{仮リンク|エウブロス|en|Eubulus}}{{R|Eubulus-Oxford}}、紀元前3世紀 - 2世紀の[[古代ローマ]]喜劇作家[[プラウトゥス]]{{Efn2|プラウトゥスは古代ギリシャ劇を一部下敷きにして作品を生み出し、ラテン語で綴った古代ローマ喜劇の時代を象徴した人物とされる{{R|Plautus-Britannica}}。}}などがパロディ作家として知られている{{Sfn|Lelièvre|1954|p=68}}。 |
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例えば[[フラン・オブライエン]]の小説『[[スウィム・トゥ・バーズにて]]』では、[[狂王スウィーニー]]と[[フィン・マックール]]、妖精[[プーカ]]に[[カウボーイ]]達といった面々が、[[ダブリン]]の宿屋で一堂に会する。日常的な設定と、神話の登場人物や[[ジャンル小説]]のキャラクターの混交から得られたユーモアは、いかなる元作品のキャラクターや原作者から演出されたものではない。この確立かつ確認されたキャラクター達を新しい設定で組み合わせるというパスティーシュの手法は、[[ポストモダン]]における、架空の歴史的キャラクターをその文脈から取り出し、隠喩的要素の提供のために用いる慣習と同じものではない。しかしながらブランク・パロディ(無表情なパロディ)は、作家が他の芸術作品から骨格形式を採用し、新たな内容を備えた新たな文脈の中に配置するという手法において、ポスト・モダンと共通するものを持っている。 |
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格調高い文体で下賤なトピックを扱うパターン、あるいは下賤な文体で高尚なトピックを扱うパターン ([[擬似英雄詩]]など) のどちらも古代のパロディに見られる{{Sfn|Dentith|2000|p=40}}。 |
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幾人かの[[ジャンル映画理論]]家達は、任意の(特に映画作品の)作品[[ジャンル]]における発展過程の産物としてパロディを認識している。例えば、古典演劇では慣習的なジャンルと定義されている[[西部劇]]の舞台設定は、同じく慣習的に風刺文学と定義されているパロディ作品の舞台にも応用された。古典的な西部劇を経験してきた多くの観客は、西部劇ジャンルに対する固定観念を抱いており、パロディ西部劇はそれらの固定観念を裏切ることによって、観客の笑いを誘ったのである。 |
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== 種類 == |
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パロディの評判が元作品のそれより長く続く場合がある。小説における有名な例に[[ヘンリー・フィールディング]]の[[小説]]『[[ジョセフ・アンドリュース]]』([[1742年]])がある。これは[[サミュエル・リチャードソン]]の陰鬱な[[書簡体小説]]『[[パミラ]]』([[1740年]])のパロディである。また、『[[不思議の国のアリス|いい年なのに、ウィル親父]]』などに代表される[[ルイス・キャロル]]の多数のパロディは、いずれも元作品より広く知られている。 |
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世界中に無数のパロディ作品が存在するが、パロディの内訳を解説する目的でその一部を以下に紹介する。 |
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=== 音に着目したパロディ === |
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きわめて稀な例として、作家が自作のパロディを書くことがある。これらはセルフパロディと呼ばれる。[[シャーロック・ホームズシリーズ]]において作者の[[アーサー・コナン・ドイル]]は、シリーズ中断期に[[ジョン・H・ワトスン|ワトスン博士]]を揶揄した作品を執筆している。 |
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文芸における[[もじり]]とは、一つの語句に複数の異なる意味を持たせることで滑稽さを生み出す手法である{{R|Mojiri-Kotobank}}。特に同音または類似音を用いた[[語呂合わせ]]などを指し、有名な詩や和歌、歌謡などを元ネタにして笑わせる目的で創作されることから、パロディの一種としての側面がある{{R|Muto1998|page1=ⅰ}}。たとえば[[鎌倉時代]]に[[藤原定家]]が選定した『[[小倉百人一首]]』を元にして、[[江戸時代]]には「もじり百人一首」が登場し、大衆に親しまれた{{R|Muto1998|page1=ⅰ}}。また、[[替え歌]]も原曲の歌詞をもじってパロディ化させたものと定義されている{{Sfn|時実|2016|p=127}}。 |
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{{Quote box |
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音楽のパロディの幾つかは、"[[w:en:Mondegreen|Mondegreen]]"(en)として知られている聞き間違いによるものである。 |
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|title = パロディとしての狂歌 (上) と原著作物 (下) の比較 |
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|quote = ひとつとりふたつとりては焼いて食う鶉なくなる深草の里([[大田南畝]]作){{Sfn|時実|2016|p=11}}<br>夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里([[藤原俊成]]作){{Sfn|時実|2016|p=11}} |
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|width = 35% |
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|align = right |
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|quoted = 1 |
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}} |
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[[狂歌]]とは[[和歌]]の一種であり、滑稽で日常卑近の生活などを題材として詠まれることから{{R|Kyoka-Kotobank}}、替え歌、もじり歌、パロディの要素が狂歌に含まれる{{R|Rybin2007|page1=77}}。特に『[[万葉集]]』の[[戯笑歌]]、『[[古今集]]』の[[誹諧歌]]や軍記物語中の落首などが狂歌として知られている{{R|Kyoka-Kotobank}}。狂歌は一般的に卑俗さが特徴とされるものの、 歌麿の『絵本百千鳥狂歌合はせ』などには文学的に洗練度の高いものも存在する{{R|Rybin2007|page1=80}}。 |
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単なる聞き間違い(空耳)が偶然にも別の意味や文脈を持ち、ユーモアにつながることもある{{R|Mondegreen-TNY}}。これは[[モンデグリーン]] ({{Lang|en|mondegreen}}) とも呼ばれ{{R|Mondegreen-Webster}}、1954年が初出と比較的新しい[[造語]]である{{R|Mondegreen-TNY|Mondegreen-CNET}}。たとえば日本のテレビ番組『[[タモリ倶楽部]]』内の一コーナー「[[空耳アワー]]」では、外国語の歌詞が日本語で全く異なる意味に聞こえるネタを数多く扱っている。一例を挙げると、"{{Lang|en|By reaching inside, reaching inside}}" が「わるいチンゲンサイいいチンゲンサイ」に空耳するといった具合である{{R|Soramimi2015|page1=19}}。このようなモンデグリーンを[[言語学]]の[[弁別素性]]の観点から学術的に解明する研究も行われている{{R|Soramimi2015|page1=19}}。 |
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== 日本文学におけるパロディ == |
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[[日本]]の[[和歌]]では、過去の有名な本歌の存在を踏まえた上で新たな歌を詠み上げる[[本歌取り]]の技法がある。有名な例を挙げれば、『[[新古今和歌集]]』の[[藤原定家]]の歌「駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕ぐれ」は、『[[万葉集]]』にある「苦しくも降りくる雨か神の崎狭野の渡りに家もあらなくに」を本歌として取り込んでいる。この本歌取りでは、本歌の雨が雪に置き換えられるのと同時に、突然の雨に困惑している旅人の心境が、一面の雪景色という幻想的な情景に置換されている。 |
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=== 美術パロディ === |
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誹諧歌では古典や時事風俗に対する諧謔を詠み込んだ[[狂歌]]があり、[[江戸時代]][[天明]]期に大きく流行した。[[宿屋飯盛]]の「歌よみは下手こそよけれあめつちの動き出してたまるものかは」は、『[[古今和歌集]]』の仮名序「ちからをもいれずして、あめつちをうごかし」のくだりを茶化した狂歌である。天明期を代表する狂歌師として、他に[[大田南畝]](蜀山人)が知られている。 |
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17世紀[[バロック]]期に活躍したスペイン画家[[ディエゴ・ベラスケス|ベラスケス]]の代表作『[[ラス・メニーナス]]』(女官たち) は後世の画家に大きな影響を与え、特に[[ピカソ]]は45点もの翻案を行っており{{R|PicassoMuseu}}、これらの連作はパロディとみなされている{{R|Congress2005}}{{R|Hutcheon1978|page1=202}}。また2017年に英国[[ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ]] (RA) が発表した「最もパロディ化された芸術作品10選」では、絵画や彫刻などの名作が様々なパターンで繰り返しパロディ化されている様が見て取れる{{Efn2|10選にランクインしたのは[[グラント・ウッド]]作『[[アメリカン・ゴシック]]』、[[レオナルド・ダ・ヴィンチ]]作『[[モナ・リザ]]』、[[葛飾北斎]]作「[[神奈川沖浪裏]]」(『富嶽三十六景』の1枚)、[[サンドロ・ボッティチェッリ]]作『[[ヴィーナスの誕生]]』、レオナルド・ダ・ヴィンチ作『[[最後の晩餐 (レオナルド)|最後の晩餐]]』、[[ヨハネス・フェルメール]]作『[[真珠の耳飾りの少女]]』、[[エドヴァルド・ムンク]]作『[[叫び (エドヴァルド・ムンク)|叫び]]』、[[オーギュスト・ロダン]]作『[[考える人 (ロダン)|考える人]]』、[[フィンセント・ファン・ゴッホ]]作『[[星月夜]]』、[[エドワード・ホッパー]]作『[[ナイトホークス (絵画)|ナイトホークス]]』である{{R|RA-Top10}}。}}。 |
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=== 真面目なパロディ === |
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[[ドイツ]]出身で1929年に[[ノーベル文学賞]]を受賞{{R|Mann-Kotobank}}した[[トーマス・マン]]は、真面目なパロディ作品の創作を通じてユートピア的な世界観を表現したとされる{{Sfn|下程|2010|p=132}}、代表的なパロディ作家の一人である{{Sfn|Hutcheon|2000|p=30}}{{Efn2|当時は1929年からの[[世界恐慌]]によってドイツ経済も疲弊し{{Sfn|下程|2010|p=131}}、政治的にも[[ナチス]]が台頭して[[国粋主義]]化 (反ユダヤ感情とドイツ至上主義) が進行した{{Sfn|下程|2010|p=132}}。このような閉塞感の中、マンは1932年に[[アメリカ合衆国]]に亡命して{{R|Mann-Kotobank}}、パロディ作品を創作している。}}。長編小説『[[魔の山]]』(1924年) には、[[ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ|ゲーテ]]の教養小説『[[ヴィルヘルム・マイスターの修業時代]]』(1795年 - 1796年) をパロディ化した要素が含まれている{{Sfn|下程|2010|p=132}}。『[[ファウストゥス博士]]』(1947年) では、小説の登場人物を介してパロディとは何であるかを語らせているが、必ずしも「滑稽な」模倣に限定されるものではないとしている{{Sfn|Hutcheon|2000|p=29}}。また『[[詐欺師フェーリクス・クルルの告白]]』(1954年) も複数の作品を下敷きにしたパロディとみなされているが、これらマンの作品は滑稽さと皮肉さが同居しているとの特徴が指摘されている{{Sfn|Hutcheon|2000|p=30}}。なお、古代パロディとして挙げられるサチュロス劇のことを「茶番劇」だとマンは語っている{{Sfn|下程|2010|p=134}}。 |
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{{独自研究|date=2014年3月31日 (月) 20:54 (UTC)}} |
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日本の漫画におけるパロディは、[[1969年]]に[[赤塚不二夫#フジオ・プロダクション|フジオ・プロ]]の[[長谷邦夫]]が『[[COM (雑誌)|COM]]』([[虫プロダクション#虫プロ商事|虫プロ商事]])に連載した『[[バカ式]]』([[曙出版]])が先駆的作品と考えられる。長谷は[[つげ義春]]の『[[ねじ式]]』をはじめとする有名無名の同時代の漫画、文学・芸術作品の徹底的な引用(長谷は引用を敢えて「[[盗作]]」「盗用」と表現)により類例のないパロディ漫画を発表した。長谷により発表されたパロディ漫画の原稿量は1000頁を越している。長谷による一連のパロディ漫画は、当時流行っていた漫画評論における[[ギャグ漫画]]軽視や過剰解釈に対する強烈なメッセージであった。 |
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=== 実演によるパロディ === |
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ほぼ同時期の[[1970年]]からは雑誌『[[朝日ジャーナル]]』([[朝日新聞社]])に[[赤瀬川原平]]による『[[櫻画報]]』が連載された。本作が描かれた時代背景に当時の学生闘争でこれといった思想もなく暴動へ参加する野次馬学生へ向けていたもので、人気を博した。この作品には多くのパロディーや言葉遊びが含まれていて、現代のパロディーの原点も見受けられる。 |
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{{External media |
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| video1 = [https://www.youtube.com/watch?v=-nQGBZQrtT0&feature=youtu.be&t=67 ボールドウィンによるパロディ] - 2016年放送分の抜粋クリップ(番組公式YouTubeより) |
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| video2 = [https://www.youtube.com/watch?v=855Am6ovK7s&feature=youtu.be&t=486 パロディの元ネタとなった2016年大統領選TV討論会] - 2016年9月26日開催・第1回: トランプ対[[ヒラリー・クリントン|クリントン]](討論会を報じた[[NBC News]]公式YouTubeより) |
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}} |
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パロディの辞書的な定義には文学や美術といった固定された作品だけでなく、曲や演説といったライブも含まれているように{{R|Def-Cambridge}}、作品(物)だけでなく人や動物など(生き物)がパロディの題材になることがある。したがって、[[物まね]] (音声や形態を他者が声や身ぶりで模倣する行為{{R|Monomane-Kotobank}}) の一部もパロディ的な要素が含まれる。 |
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たとえば米国のコメディバラエティTV番組『[[サタデー・ナイト・ライブ]]』(SNL)では[[サタデー・ナイト・ライブ#大統領・政治家パロディ|政治家のパロディ]]コントがシリーズ化しており、特に第45代大統領[[ドナルド・トランプ]]を揶揄した{{仮リンク|サタデー・ナイト・ライブのドナルド・トランプ・パロディシリーズ|label=SNLパロディシリーズ|en|Saturday Night Live parodies of Donald Trump}}は、トランプを演じた[[アレック・ボールドウィン]]が[[第69回プライムタイム・エミー賞#助演賞|第69回プライムタイム・エミー賞助演男優賞]] (2017年発表) を受賞している{{R|Emmy2017}}。またフランスでは、歌手の物まねがパロディとみなされて法的に許容うるのかが問われた訴訟もある(詳細後述){{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=51}}。 |
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だが『朝日ジャーナル』1971年3月19日号掲載された当該漫画に「アカイ アカイ アサヒ」という戦前の国定教科書を摸したフレーズと『朝日新聞』の題字と重ね合わせ、さらに「朝日は赤くなければ朝日ではないのだ」とキャプションをそえた描写が、当時「[[新左翼]]の機関誌」とも言われた『朝日ジャーナル』の左偏重を朝日新聞上層部が危惧していた状況下で発表されたことから朝日新聞社上層部の逆鱗に触れ、常務会は全員一致で、同誌の自主回収を決定した。回収された打ち切り最終話には「''サテ今度は……ドコを乗っ取るかナ?''」と新聞雑誌名が300種以上手書きで記載されたのも版元上層部の神経を逆撫でしたとされている。この事件で編集長が更迭された他、連載の打ち切り、朝日新聞出版局では61名の人事異動がなされ、『朝日ジャーナル』自体も2週間にわたって休刊した。この事件は後々「朝日ジャーナル回収事件」として語り継がれることになる。 |
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=== 芸術以外のパロディ === |
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パロディ漫画家の地位を確立した[[田中圭一 (漫画家)|田中圭一]]は[[手塚治虫]]の絵柄で下ネタギャグを展開する作風を確立([[手塚プロダクション]]の公認済)。更に[[藤子不二雄]]、[[宮崎駿]]、[[つげ義春]]、[[本宮ひろ志]]、[[永井豪]]、[[松本零士]]などの絵柄を織り交ぜ、現在も下ネタ漫画で活躍中。近年はサラリーマン経験を活かした作品も多い。 |
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{{See also|{{仮リンク|パロディ科学|en|Parody science}}}} |
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[[ノーベル賞]]のパロディと位置付けられ、独創性に富む研究や発明などに贈られるのが[[イグノーベル賞]]である。物理学や化学、医学といった自然科学のほか、経済学や平和なども受賞部門に設けている{{R|IgNobel-JK}}。イグノーベル賞はユーモア科学雑誌『{{仮リンク|ありそうもない研究年報|en|Annals of Improbable Research}}』が主催している{{R|IgNobel-JK}}。 |
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=== ビジネス上のパロディ === |
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かつてはパロディ漫画を専門に扱う漫画雑誌として『[[アニパロコミックス]]』([[みのり書房]])が[[1982年]]から[[1993年]]まで刊行されていた。本誌のパロディ漫画は、その“元ネタ”となっている作品とは完全に独立しているとし、ライセンス許諾を得ないスタイルを取っていた。現在ではパロディというよりは[[二次創作物]]として取り扱われる様な内容のものが多くを占めていた。本誌は1993年3月号をもって休刊した。最終号に掲載された作品すべてが最終回の体裁を取っておらず、当該号での休刊が急遽決定した状況が窺われるものであった。本雑誌が急遽休刊した背景には、パロディを元ネタとした作品の氾濫をきっかけに大手のアニメ制作プロダクションが著作権の管理を強化したことから制作継続が困難になったという説が存在するが、仮説の域を出ない。 |
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市販される商品がパロディの対象となったこともある。通称「面白い」恋人事件は、北海道・札幌名物の洋菓子「[[白い恋人]]」を模して、お笑い芸人を多数擁する[[吉本興業]]が大阪名物「面白い恋人」の商品名で売り出したことから、2011年に訴訟へと発展し{{Sfn|時実|2016|pp=133–135}}、メディアからの注目を集めた{{Sfn|伊藤|2013|p=4}}。当初からパロディとして商品企画されており、パッケージデザインにも共通性が感じ取られることから、商標権および不正競争防止の観点が法的に問われることとなった{{Sfn|時実|2016|pp=133–135}}。 |
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また米国では、[[ルイ・ヴィトン]]や[[スターバックス]]といった知名度の高い企業の商標を模したパロディが法的に検証された事例もある(詳細後述)。商標法がこれら大企業を過剰に擁護し、結果として中小のパロディ創作者の表現の自由が抑圧されているとの指摘もある{{Sfn|UIC|2015|p=147}}{{R|MOB-Reuters2018}}。 |
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パロディが原著作物の二次的著作物になると判断されず、日本では裁判沙汰になるケースも存在する。 |
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== 法的取り扱い == |
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元となった作品の創作者や権利者から許諾を得ずに、第三者がパロディを創作する行為が法的に許容されるかは各国の法律により異なる。後述のとおり、実際に訴訟に発展したケースでは、[[著作権]]ないし[[商標権]] (いずれも[[知的財産権]]の一部)、あるいは不正競争防止が争点となっている。 |
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パロディが原著作物の[[二次的著作物]]になると判断される場合、原著作物の著作権者の許諾なしに創作することが法的に許容されるかについては法域により異なる。 |
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パロディを巡る著作権の議論では、[[著作財産権]](著作物を使った複製、[[翻案]]、実演などの独占権)だけでなく、著作者人格権の一つである[[同一性保持権]]が権利侵害として問われる可能性がある{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=1}}。一般的な著作権法における「翻案」とは、たとえば小説の映画化や文章の要約作成、コンピュータ・プログラムのバージョンアップのほか{{Sfn|作花|2018|p=104}}、音楽の編曲や文章の翻訳などが含まれることから、原著作物を用いた[[二次的著作物]]の創作(二次創作)をも包含する{{Sfn|作花|2018|p=274}}。また同一性保持権とは、著作者の思想や感情が反映された著作物を無断で第三者に改変されない権利である{{Sfn|作花|2018|pp=229–230}}。著作権の基本条約である[[ベルヌ条約]](2020年10月時点で世界170か国以上が加盟{{Efn2|ベルヌ条約の加盟国数は、1886年の原条約が179か国{{R|WIPO-1886Members}}、1971年の第6回パリ改正版が177か国に上る{{R|WIPO-1971Members}}。}})でも、著作者の名誉声望を毀損する行為が禁じられており、著作者の人格が世界的に保護されている{{Sfn|作花|2018|pp=229–230}}。したがって、原著作物の著作者の名を汚すような歪んだ改変こそが醍醐味とも言えるパロディは、翻案権の観点からも同一性保持権の観点からも法的に矛盾を抱えることとなる{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=30}}。ただし、パロディの創作側にも各国の憲法上で[[表現の自由]]が保障されていることから、著作権者側の独占的な権利との間で利益バランスが図られることになる{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=1, 6, 33, 47, 83}}。 |
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[[アメリカ合衆国]]におけるパロディの創作行為は、[[著作権法 (アメリカ合衆国)|米国著作権法]]を収録した[[合衆国法典]]第17編の第107条において、[[フェアユース]]の抗弁に基づき許容される場合があると解されている。[[2001年]]に、第11巡回区[[合衆国控訴裁判所|連邦控訴裁判所]]は、サントラスト銀行対ホートン・ミフリン社の裁判において、『[[風と共に去りぬ]]』と同じ物語を、[[スカーレット・オハラ]]から解放された奴隷女の視点から描いたパロディ、“[[w:The Wind Done Gone|The Wind Done Gone]]”(en)を出版した[[アリス・ランドール]]の権利を支持した。『[[オー・プリティ・ウーマン]]』の替え歌に関するキャンベル対アカフ・ローズ・ミュージック裁判では、[[アメリカ連邦最高裁判所|合衆国最高裁判所]]は、元の作品を違う視点で捉え直しているものとして、替え歌が適法であるものと判断した。 |
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; 各国の著作権法上でのパロディ規定 |
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[[フランス]]では、著作権法第122条の5(4)項にて、パロディは[[著作権侵害]]でないと明文規定されている(パロディ条項)。 |
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:* 条文上で著作権侵害の対象からパロディを除外する個別規定を設けている国: フランス、スペイン、オーストラリア、ベルギー、オランダ、スイス、ブラジル、イギリス、カナダ{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=94–95}}{{Efn2|2012年3月公表の文化庁委託事業調査報告書上で、イギリスおよびカナダは条文上でパロディが明文化されていない国に分類されているが{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=94–95}}、その後2014年10月にイギリスは著作権法を改正し、第30A条でカリカチュア、パロディ、パスティーシュの3点を例外として明文化している{{R|Reuters-UK-FR}}。また、カナダでは2012年11月に改正立法が成立し、著作権法 第29条 ({{仮リンク|フェアディーリング|en|Fair dealing}}) にパロディおよび風刺が追加明記された{{R|Canada-S29-Post2012|Canada-S29-Pre2012}}。}} |
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: "La parodie, le pastiche et la caricature, compte tenu des lois du genre" |
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:* 条文上で明記はないが、[[フェアユース]]等の一般規定に基づき、柔軟な司法判断でパロディを認めている国: 米国{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=94–95}} |
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<!--: 「パロディ、模倣作品、および諷刺画は所定の法の責任を負うもとのとみなす」--> |
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:* 条文上でパロディ個別明記も一般規定も存在しない国: ドイツ、スウェーデン、イタリア、ハンガリー、ポーランド、韓国{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=94–95}}、日本{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=1}} |
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[[2011年]]に漫画[[タンタンの冒険]]シリーズの原作者が、『タンタンチベットをゆく』のパロディ小説『サン・タン絞首台に行く』を海賊版としてパロディ作家{{仮リンク|ゴルドン・ゾーラ|fr|Gordon Zola}}を訴えた事件では、パリ控訴院は「主観的要因([[ユーモア]]の意図)」「客観的要因(混同のおそれの有無)」の要件を満たしており、「当該分野の決まり」を守らなかったという証拠が確立していないことから『サン・タン絞首台に行く』はパロディ小説であると認め、少部数で商業的な影響も少ないことから著作者・出版社の権利を不当に侵害していないと決定した<ref>時実象一『コピペと捏造』 樹村房 2016年、ISBN 9784883672707 pp.122-124.</ref>。 |
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つづいて商標権とは、自社・自己の商品やサービスに用いられるマークやネーミングである商標に適用される権利であり、他社・他者と区別することを目的としている{{R|TM-JPO}}。商標権を有する事業者や個人を保護するだけでなく、商品やサービスを購入する消費者が混同して不利益を被らないよう、消費者保護の側面もある{{R|Ide2012}}{{Efn2|米国のように商標の保護が不正競争法から発達してきた国もある。ビジネス上の信用を得るために他社・他者の商標を用いることは公正な競争を損ねることからこれを防止する目的があるほか、消費者が商標からその商品・サービスの性格・質を識別できることを商標制度の目的としている{{Sfn|白鳥|2004|pp=17–18}}。}}。この「混同」の観点は、商標法だけでなく不正競争防止にも当てはまる国(フランス{{R|Colombet1990|page1=23}}や米国{{Sfn|UIC|2015|pp=145–146}}など)がある。 |
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日本でのパロディに対する[[著作権侵害]]が問われた[[判例]]としては、[[パロディ事件]]がある。[[1971年]]、[[写真家]]の[[白川義員]]は、自作の雪山写真を素材として[[自動車]][[公害]]を揶揄するパロディ作品を作り上げた[[マッド・アマノ]]の[[フォトモンタージュ]]を、自作に対する著作権侵害として提訴した。[[日本]]の[[著作権法]]は上記フランスと違い「著作権の制限」の中にパロディを挙げていないので代わりに、マッド・アマノ側は[[引用]]として許容されると主張したが、これを受けた[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]は、引用の[[引用#要件|条件を示した]]([[1980年|昭和55年]]3月28日)。この裁判は2度にわたって最高裁から差し戻され[http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=26442&hanreiKbn=01]、[[1987年]]に白川義員の主張を一部認める形で[[和解]]が成立した。 |
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以下、国別に判例を交えて見ていく。 |
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=== 関連著作 === |
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いわゆるパロディ事件最高裁判決に関して当時研究者などが当該判決に賛同するなか痛烈な批判がなされている。 |
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=== アメリカ合衆国法 === |
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* 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ(福井健策、集英社新書、2005年、ISBN 4-08-720294-1) |
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[[アメリカ合衆国]]におけるパロディの創作行為は、[[著作権法 (アメリカ合衆国)|米国著作権法]]を収録した[[合衆国法典]]第17編の第107条において、[[フェアユース]] (公正利用の法理) の抗弁に基づき許容される場合がある{{Sfn|山本|2008|pp=113–115}}。 |
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** P140 - 176 第四章 既存作品を自由に利用できる場合 3 パロディとアプロプリエーションの地平を探る |
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* 著作権法の解説(千野直邦・尾中普子、一橋出版、六訂版 第1刷 2005年11月10日、ISBN 4-8348-3620-7) |
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また{{仮リンク|ランハム法|en|Lanham Act}} ({{Lang|en|Lanham Act}} あるいは {{Lang|en|the Trademark Act of 1946}}) では登録済商標を保護するほか、未登録であっても不正競争防止の観点から[[商標の希釈化]]などを抑止する{{R|Lanham-Reuters}}。ランハム法は2006年改正によって、混同のおそれのない場合に限ってパロディ目的などの利用緩和を認めている{{Sfn|UIC|2015|p=146}}。訴訟に至った場合は、著作権法と同様に米国では{{仮リンク|フェアユース (アメリカ合衆国商標法)|label=商標法上のフェアユース|en|Fair use (U.S. trademark law)}}で被告が抗弁することもある{{R|ABA2017}}{{Efn2|著作権法上のフェアユースは4点の基準で構成されるが、商標法上のフェアユースは2点である。(1)「古典的フェアユース{{R|ABA2017}}」({{Lang|en|classic fair use}}) あるいは「記述的フェアユース{{R|Hirasawa2018}}」は、他社(原告)の商標マークを使ったのではなく、自社(被告)自身の商品・サービスそのものを指し示すために商標を使ったとする抗弁である{{R|ABA2017}}。これに対して (2)「指名的フェアユース」({{Lang|en|nominative fair use}}) は他社 (原告) の商品・サービスを参照するために用いるケースである。競合製品と自社製品を比較した広告や、報道・批評目的、あるいは非商用目的が指名的フェアユースとして一部の判例で認められている{{R|ABA2017}}。}}。 |
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** P15 - 18 第2章 著作物 6 写真の著作物 |
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* 佐藤薫「著作権法第20条第2項第4号の解釈と表現の自由権――パロディを中心として――」(著作権研究17号、[[有斐閣]]、1990年) |
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; 通称 プリティ・ウーマン判決 |
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{{External media |
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| width = 300px |
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| align = right |
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| video1 = [https://www.youtube.com/watch?v=Ikweq0THs88 Oh, Pretty Woman] - 著作者[[ロイ・オービソン]]の原曲 (本人公式YouTubeより) |
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| video2 = [https://www.youtube.com/watch?v=BNcwZfZ3Qk4&t=45 Luther Campbell of 2 Live Crew's Historic Supreme Court Parody Case] - パロディ作者・被告キャンベルによる "''Big Hairy Woman''" への変形経緯解説(ケーブルテレビ局[[VH1]]公式YouTubeより){{R|Video-VH1}} |
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: 米国著作権法のパロディに関するリーディングケースとしては「{{仮リンク|キャンベル対エイカフ・ローズ・ミュージック裁判|en|Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc.}}」(1994年の[[アメリカ連邦最高裁判所|連邦最高裁]]判決、{{ussc|510|569}})、通称「プリティ・ウーマン判決」が知られている{{Sfn|山本|2008|pp=113–115}}{{Sfn|作花|2018|pp=853–855, 875}}{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=6}}。本件では1990年公開映画『[[プリティ・ウーマン]]』の主題歌 [[オー・プリティ・ウーマン|"''Oh, Pretty Woman''"]] (歌手[[ロイ・オービソン]]、音楽レーベルは[[エイカフ=ローズ・ミュージック]]) を使用して、[[ヒップホップ]]グループの [[ツー・ライヴ・クルー|The 2 Live Crew]] がパロディ曲を製作し、25万枚のセールスを記録した事件である (被告{{仮リンク|ルーサー・キャンベル|en|Luther Campbell}}はこのメンバーの一員である){{R|LAT1993}}。原曲 "''Oh, Pretty Woman''" (あぁ、可愛い女性) がパロディでは "''Big Hairy Woman''" (デカくて毛深い女性) に変形されている{{R|Video-VH1}}。一審はフェアユース認定、二審は否定し、最高裁が再び認定した{{R|USSC-510-569}}。パロディとして使用された箇所 (原曲の冒頭部) は有名であり原曲の中核をなすと認定されたものの、パロディはこのような中核を用いることが常であると判断された。そしてフェアユース第1基準の定める「{{仮リンク|変形的利用|en|Transformativeness}}」({{Lang|en|transformative use}}、{{Lang|en|transformativeness}}) が、同じく第1基準で例示される非営利性に勝り、第4基準の市場代替性を損なうことがないと解されている{{Sfn|作花|2018|p=875}}。 |
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; 著作権法上のフェアユースが否定された判決 |
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: 「ドクター・スース対ペンギン・ブックス裁判」(1997年の第9巡回区[[合衆国控訴裁判所|連邦控訴裁判所]]判決) は、元ネタに対する皮肉や悪ふざけといった要素がないことからパロディとみなされず、フェアユースが認められなかった事例として知られている{{R|SU-FairUse}}{{Sfn|山本|2008|pp=123–124}}{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=11–12}}。被告[[ペンギン・ブックス]]社らは "''The Cat NOT in the Hat! A Parody by Dr. Juice''" のタイトルで書籍を出版したが、これが元フットボール選手[[O・J・シンプソン事件|O・J・シンプソンによる殺人容疑裁判]]概要を、[[ドクター・スース]]の児童文学『キャット イン ザ ハット』の設定で韻を踏んで物語っていたことから、訴訟に至った{{R|OJSimpson-USCO}}。表現性や物語のプロット、キャラクターの特徴などに類似性が認められ、かつフェアユース第1基準に関しても元ネタからの変形が十分でないと判断された{{R|OJSimpson-USCO}}。 |
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; ルイ・ヴィトンの「弱い者いじめ」訴訟批判 |
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| image1 = [https://www.myotherbagmexico.com/collections/all MOB商品画像](MOB公式ウェブサイトより) |
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: 商標権侵害に対して強気の姿勢をとっているとも言われるフランスの高級ファッションブランド [[ルイ・ヴィトン]]社は{{R|WWD2017}}、過去にパロディ関連訴訟で繰り返し敗訴を喫している{{Efn2|後述の Louis Vuitton Malletier, S.A. v. My Other Bag, Inc.(2014年提訴)以前にも Louis Vuitton Malletier S.A. v. Haute Diggity Dog, LLC, 507 F.3d 252, 258(4th Cir. 2007)で敗訴となっている{{R|ABA2017}}。また実際に訴訟には至らなかったものの、[[ペンシルベニア大学]]が開催した商標法のシンポジウムで、当イベントの告知ポスターにルイ・ヴィトンの商標パロディが掲載されたことを受けて、大学側を提訴すると脅した事例もある{{R|MOB-Reuters2018}}。}}。たとえば「ルイ・ヴィトン対MOB裁判」({{Lang|en|Louis Vuitton Malletier, S.A. v. My Other Bag, Inc.}})は、My Other Bag (MOB) 社が自社製トートバッグ上にルイ・ヴィトンなどの有名ブランドバッグのイラストを描いて販売したことから、ルイ・ヴィトンが権利侵害で提訴した事件である。二審の第7巡回区控訴裁の口頭弁論では、担当判事が「これはジョークです。ルイ・ヴィトン社はこのジョークが理解できないのでしょうが、ジョークなんですよ」と嘲笑する場面さえあった{{Efn2|原文は "This is a joke. I understand you don't get the joke. But it's a joke" である{{R|ABA2017}}。}}。また訴訟動機が「弱い者いじめ」({{Lang|en|bully}})だとも指摘している{{R|MOB-Reuters2018}}。一審、二審ともMOB製品はパロディと認められ、ルイ・ヴィトン側は最高裁に上告したものの棄却された{{R|MOB-Reuters2018}}。本件ではパロディ創作者側の表現の自由を擁護したと解されている{{Sfn|UIC|2015|p=159}}。 |
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; 商標権および不正競争防止が問われた「ばかスタバ」 |
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| image1 = [https://gigazine.net/news/20140210-dumb-starbucks/#group=nogroup&photo=0 Dumb Starbucksの外観写真] - 2014年2月撮影・記事掲載{{R|Dumb-Gigazine}} |
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| image2 = [https://a.scpr.org/i/b4508e62d0ee61d4fe35998b0472feb3/77775-full.jpg Dumb Starbucks公式FAQ] - パロディ店なので合法であると店側は自主回答している{{R|Dumb-Guardian}} |
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: 同じく「弱い者いじめ」の法的問題が法学者から指摘されているのが、「ばかスタバ」である{{Sfn|UIC|2015|p=146}}。コーヒーショップ大手[[スターバックス]]を模したコーヒー店 "DUMB STARBUCKS"{{Efn2|{{Lang-en-short|Dumb}} は「ばかな、まぬけな」の意味があり{{R|Dumb-Dict}}、このパロディ店名はいわば「ばかスタバ」である{{R|Dumb-Gigazine}}。}}が2014年2月、[[ロサンゼルス]]でオープンしたことから、商標権侵害および希釈化が法的に問われる事態へと発展した{{Sfn|UIC|2015|p=145}}。このパロディ店をオープンさせたのはコメディアンの{{仮リンク|ネイサン・フィールダー|en|Nathan Fielder}}であり、自身の冠番組『[[ネイサン・フォー・ユー]]』(リアリティ・コメディ番組)の宣伝目的とされる{{Sfn|UIC|2015|p=147}}{{Efn2|『[[ネイサン・フォー・ユー]]』は、中小企業経営者に酷い経営助言を行うリアリティ・コメディ番組であり{{R|Dumb-Guardian}}、同番組の第2シーズン第5話は「{{仮リンク|Dumb Starbucks|en|Dumb Starbucks}}」と題され、同年7月(閉店から5か月後)にテレビ放送された{{R|Nathan-S2E5}}。}}。「ばかスタバ」の店舗外装はスターバックスそっくりであり、ロゴデザインもほぼ同じであった{{Sfn|UIC|2015|p=147}}{{R|Dumb-Gigazine}}。地元保健局が食品提供ライセンス未取得を理由にオープンから3日内にパロディ店を営業停止に処しているが{{Sfn|UIC|2015|p=147}}{{R|Dumb-Gigazine}}、法学者からは後に商標法と表現の自由のバランスを欠いていると批判される事例となった{{Sfn|UIC|2015|pp=145, 147}}。特に問題となったのが、{{仮リンク|2006年の商標希釈化改正法|en|Trademark Dilution Revision Act of 2006}}(略称: TDRA)である。TDRA成立によってランハム法が改正され、非商用目的、ないし混同のおそれのない表示方法であればパロディなどの目的での商標利用も認めている{{Sfn|UIC|2015|p=146}}。しかしながら商用かつ混同のおそれのある「ばかスタバ」にはTDRAの条件が適合しなかった。結果として、スターバックスのような既に認知度の高い商標権者を過度に権利保護しているのではないか、との批判につながった{{Sfn|UIC|2015|p=147}}。 |
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=== 欧州連合法 === |
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[[欧州連合]](EU)では、加盟各国の著作権法の水準を揃えることを目的として、[[著作権法 (欧州連合)|各種の著作権指令]]が出されている。このうちパロディに関しては、2001年可決の[[情報社会指令]] (2001/29/EC) 第5条(3)(k) で[[著作権侵害]]の例外としてパロディ目的が挙げられている{{R|OJ-2001-29-EC}}。しかしながらこの指令の条項を導入 ([[国内法化]]) するかはEU加盟各国に委ねられていることから、国によってパロディの法的取り扱い状況は異なる{{R|Reuters-UK-FR}}。 |
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著作権侵害を事由とした訴訟は、基本的には各国の裁判所で審理されるが、一部の訴訟は[[欧州司法裁判所]] (CJEU) に意見照会されることがある。以下、各国の法整備の状況と代表的なパロディ判例について述べる。 |
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; 欧州司法裁判所 (CJEU) 判決 |
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| image1 = [https://eur-lex.europa.eu/resource.html?uri=celex:62013CC0201.ENG.html.ECR_62013CC0201_EN_01_01.tif.jpg 原告ヴァンダースティーンの原画] - 欧州司法裁判所提出資料より{{R|CJEU-2014-EURLex}} |
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: パロディ関連では{{仮リンク|デックメイン対ヴァンダースティーン裁判|en|Deckmyn v Vandersteen}} (Deckmyn v Vandersteen, Case: C-201/13, 2014年CJEU判決) が知られている{{Sfn|作花|2018|pp=873–874}}。本件では原著作物の著作権者側の権利と、パロディ利用する側の表現の自由の間でいかにバランスを取るべきかが問われた{{R|CJEU-2014-Columbia}}。 |
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: [[ベルギー]]の[[右派ポピュリズム]]政党[[フラームス・ベランフ]]{{Efn2|欧州司法裁判所の判決文では、フラームス・ベランフは極右政党 ({{Lang|en|Vlaams Belang, a party of the far right}}) であると記されている{{R|CJEU-2014-EURLex}}。}}に所属する政治家{{仮リンク|ヨーハン・デックメイン|nl|Johan Deckmyn}}は2011年、新年の祝賀会でカレンダーを参加者に配布したが、この表紙に使われた絵画がヴァンダースティーンの描いた作品に類似しているとして、著作権侵害でデックメインと政党後援会組織がベルギーの裁判所に提訴された。ヴァンダースティーンの作品は元々、コミック本『{{仮リンク|Suske en Wiske|en|Spike and Suzy|nl|Suske en Wiske}}』に登場するキャラクターの一人を表紙に描いたものであり、白色のチュニックをまとって空中からコインをばら撒いている構図である。この表紙絵は "''De Wilde Weldoener''" (「強制的な恩恵を施す者」の意) と題された{{R|CJEU-2014-EURLex}}{{Sfn|作花|2018|pp=873–874}}。一方カレンダーの表紙は、キャラクターが[[ヘント|ヘント市]]の市長{{仮リンク|ダニエル・トゥルモント|en|Daniël Termont}} (左派政党の[[社会党・別|フラマン系社会党]])に差し替えられており、コインを集めようとする周囲の民衆は[[イスラム教]]の女性が肌を隠すために被る[[ブルカ]] (ベール) を身にまとい、有色人種に置き換えられる差別的な内容であった{{R|CJEU-2014-EURLex}}{{Sfn|作花|2018|pp=873–874}}。{{仮リンク|第一審裁判所 (ベルギー)|label=第一審裁判所|en|Tribunal of first instance (Belgium)}} ({{Lang|nl|Rechtbank van Eerste Aanleg}}) は著作権侵害を認めて5,000[[ユーロ]]の損害賠償を命じたが{{Efn2|2つの絵に共通点が多いことから、カレンダーを受け取った一部の人は、カレンダーがコミック本の出版社から贈呈されたものと勘違いしたと証言している{{R|CJEU-2014-EURLex}}。}}、被告が控訴している。二審の{{仮リンク|控訴裁判所 (ベルギー)|label=控訴裁|en|Court of appeal (Belgium)}}({{Lang|nl|Hof van beroep}})もベルギー著作権法で定められたパロディの例外規定の要件を満たさないとして棄却しつつ、CJEUに意見照会を求めた{{R|CJEU-2014-EURLex}}。 |
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: CJEUが挙げたパロディの要件は「パロディ作品を見て原著作物を想起できる必要があると同時に、これら2つの作品は別物だと識別されなければならない」、「ユーモアや嘲笑の要素が必要」であるとした。加えて、必ずしも著作権法上固有の意味を持つ「創作性」({{Lang|en|originality}})はパロディの場合には求められないとして、原著作物と同じキャラクターを再利用することは法的に問題ないとした。差別的なメッセージを含んでいる点については、ベルギー国内裁判所に判断を委ねた{{R|CJEU-2014-Columbia}}。 |
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=== フランス法 === |
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{{Quote box |
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| title = パロディに関するフランス著作権法上の規定 |
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| quote = Lorsque l'oeuvre a été divulguée, l'auteur ne peut interdire:<br>4° La parodie, le pastiche et la caricature, compte tenu des lois du genre ;<br>(日本語訳)著作物が公表された場合には、著作者は、次の各号に掲げることを禁止することはできない。<br>(4) パロディ、模作及び風刺画。ただし、当該分野のきまりを考慮する。 |
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|source = {{仮リンク|知的財産法典|fr|Code de la propriété intellectuelle}}第1部 (著作権法) 第2章: 著作者の権利、第2節: 財産的権利、第122条の5 原文{{R|LF-CPI-L122}}および[[著作権情報センター]] (CRIC)による日本語訳{{R|FR-CRICTrans}} |
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| quoted = 1 |
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著作権保護の水準が高く、特に著作者人格権が手厚く尊重されているフランスでは、EU指令でパロディ、カリカチュアおよびパスティーシュの例外規定が追加される以前より、[[フランス著作権法]]で個別規定を設けて運用してきた{{R|Reuters-UK-FR}}。しかしCJEUの2014年「デックメイン判決」の前後で、パロディの定義や法的保護の要件解釈が異なっている点に注意が必要である。デックメイン判決以前は音楽パロディ、言語著作物のパスティーシュ、人物画のカリカチュアでフランスの裁判所は分類していた。またディックメイン判決でCJEUはユーモアの要素をパロディに求めているが、当判決以前のフランスではユーモアは必須でないとし、逆に原著作者の人格を傷つけるようなパロディであってはならないと定義していた。また「混同」の観点が取り入れられており、パロディの商用利用は問題ないものの、原著作物と市場で競合するような宣伝目的は禁じられていた{{R|Reuters-UK-FR}}。 |
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; 漫画『タンタンの冒険』シリーズのパロディに関する判決 |
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: デックメイン判決以前のフランスにおけるパロディのリーディングケースが SAS Arconsil v Moulinsart SA (パリ控訴裁 2011年2月18日判決、no 09/19272) である{{R|Reuters-UK-FR}}。[[2011年]]に漫画[[タンタンの冒険]]シリーズの原作者が、『タンタンチベットをゆく』のパロディ小説『サン・タン絞首台に行く』を海賊版としてパロディ作家{{仮リンク|ゴルドン・ゾーラ|fr|Gordon Zola}}を訴えた事件では、パリ控訴院は「主観的要因([[ユーモア]]の意図)」「客観的要因(混同のおそれの有無)」の要件を満たしており、「当該分野の決まり」を守らなかったという証拠が確立していないことから『サン・タン絞首台に行く』はパロディ小説であると認め、少部数で商業的な影響も少ないことから著作者・出版社の権利を不当に侵害していないと決定した{{Sfn|時実|2016|pp=122–124}}。 |
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; 歌手の物まねパロディに関する判決 |
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: また、歌手の物まねが合法的なパロディだと判示された1988年の[[破毀院#フランス|破毀院]](フランス最高裁)判決 (Cour de Cassation, 1st Civil chamber 1, 12 janv. 1988, préc (n. 11)) も存在する。[[シャンソン]]歌手[[シャルル・トレネ]]の『{{仮リンク|優しきフランス (シャンソン)|label=優しきフランス|fr|Douce France (chanson)}}』({{Lang|fr|Douce France}}) が、{{Lang|fr|Thierry Le Luron}}によって物まねされ、『優しいトランス』(忘我の境地の意、{{Lang|fr|Douces Transes}})にもじられた。声音も真似ており、トレネが[[アカデミー・フランセーズ]]会員選出のために費やした無駄な労力を揶揄した。破毀院は無礼な嘲笑は法的に禁じられておらず、むしろ元ネタから改変されていることから、受け手側が2つの作品を混同するおそれがないとして、著作権侵害の訴えを退けている{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=50–51}}。 |
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; 2014年CJEU判決に影響を受けたフランスの判決 |
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: デックメイン判決以降では、2015年の破毀院判決(Cour de Cassation, 1st Civil chamber 1, 15 May 2015, 13-27.391)がある。本件はファッション写真家 A Malka(一部伏字)の作品を無断で芸術家 Peter K(一部伏字)が複製したことが問題となった。しかし A Malka の原著作物は過剰広告と過剰消費を象徴していることから、Peter K は自身の作品を通じて A Malka の作品の価値を貶め、見る者たちに問題喚起する目的だと主張した。破毀院はフランス著作権法 第122条の5 (4) だけでなく、EUの情報社会指令 第10条を考慮して A Malka の著作者人格権と、パロディ創作者 Peter K の表現の自由の間でバランスをとる必要性を説き、二審の控訴裁に差し戻した{{R|Reuters-UK-FR}}。 |
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=== イギリス法 === |
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2020年1月31日に[[Brexit|EUを正式離脱]]したイギリスであるが{{R|Brexit-BBC}}、離脱以前の2014年10月にイギリスは現行著作権法である{{仮リンク|1988年著作権、意匠及び特許法|en|Copyright, Designs and Patents Act 1988}} ({{Lang|en|Copyright, Designs and Patents Act 1988}}、略称: CDPA) を改正し、第30A条でカリカチュア、パロディ、パスティーシュの3点を著作権侵害の例外 ({{仮リンク|フェアディーリング|en|Fair dealing}}) に追加したことで、EUの2001年情報社会指令の規定に沿った形となった{{R|Reuters-UK-FR}}{{R|CDPA-S30A}}。ただし第30A条の新設以前から、一般的な著作権侵害で提訴された被告がパロディを主張して抗弁するケースは存在していた{{R|Reuters-UK-FR}}。 |
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; 楽曲の歌詞パロディに関する判決 |
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: 音楽パロディのリーディングケースとしては、1960年の[[高等法院 (イングランド・ウェールズ)#国王座部|高等法院女王座部]](QB)判決「ジョイ・ミュージック対サンデー・ピクトリアル紙裁判」({{Lang|en|Joy Music Ltd v Sunday Pictorial Newspapers}} [1960] 2QB 60 (QB)) がある{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=34}}{{R|Groves1997|Reuters-UK-FR}}。女王エリザベス2世の夫[[フィリップ (エディンバラ公)|エディンバラ公爵フィリップ]]の行動を揶揄する内容が週刊新聞『サンデー・ピクトリアル』(現: サンデー・ミラー、タブロイド紙『デイリー・ミラー』の姉妹紙) に掲載されたが、この記事には楽曲 "''Rock-a-Billy''" の歌詞をもじって "''Rock-a-Philip, Rock-a-Philip, Rock-a-Philip, Rock''" のフレーズが書かれていた。このケースでのもじりは実質的部分の複製ではないと判定され、著作権侵害の訴えは退けられた{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=34}}{{R|Groves1997|page1=412}}。 |
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; 楽曲のメロディに関する判決 |
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: また、1987年の[[高等法院 (イングランド・ウェールズ)#大法官部|高等法院大法官部]] (Ch) 判決「ウィリアムソン・ミュージック対ピアソン・パートナーシップ裁判」({{Lang|en|Williamson Music v Pearson Partnership}} [1987] FSR 97 (Ch)) では、ミュージカルの楽曲が替え歌としてテレビCMに流された事案である{{R|Groves1997|page1=410}}{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=35–36}}。本件では著作権法の重要な法理である[[アイディア・表現二分論]]に則り、原曲からアイディアを得てパロディストが全く別の形で表現したならば、別個の著作物であると判示された。また、著作権侵害に該当しないパロディだと認めるには、作品に批判や評論といった言語要素が必要であるとされた{{R|Groves1997|page1=410}}。1960年の "''Rock-a-Billy''" 判決とは異なり、本件でパロディ化されたのは歌詞ではなくメロディであったことから、これらの要件を満たさないとして著作権侵害判定となった{{R|Groves1997|page1=410}}{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|pp=35–36}}。 |
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; 商品ラベルに関する判決 |
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: 音楽以外では、1984年の高等法院大法官部判決「シュウェップス対ウェリントン裁判」({{Lang|en|Schweppes Ltd v Wellingtons Ltd}} [1984] FSR 210 (Ch))がある。[[シュウェップス]]社は同名の瓶入り炭酸水ブランドを販売しており、商品ラベルの "''SCHWEPPES''" の綴りが被告ウェリントン社によって "''SCHLURPPES''" に置き換わって商品販売されたことから、ラベルのデザイン模倣が著作権侵害に当たるかが問われた事件である{{R|Groves1997|page1=412}}{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=35}}。なお、ウェリントン社製もシュウェップスに似た瓶にラベルが貼られていたが、中身は飲料ではなく炭酸入りのバブルバス(炭酸の入浴剤とソープが合わさった商品)であり、元ネタとパロディでは対象とするビジネス市場が大きく異なる{{R|Groves1997|page1=412}}。しかしながら市場の競合性は勘案されず、 "''Rock-a-Billy''" の判決で示された「実質的部分の複製」の論点から著作権侵害の判定となった{{Sfn|MURCパロディ報告書|2012|p=35}}。 |
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=== 日本法 === |
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歴史的にみると、日本でも[[江戸時代]]の狂歌や{{Sfn|時実|2016|p=11}}、戦争中の[[軍歌]]の替え歌パロディなど{{Sfn|時実|2016|p=126}}、パロディ創作は古くから行われていた。そして[[高度経済成長#日本の例|高度経済成長期]] ([[1960年]]から1973年頃{{R|EcoGrowth-Kotobank}}) に入ると著作物の模倣が横行した{{Sfn|時実|2016|p=13}}。その反動で著作者側の権利保護意識が極度に高まったことが、日本でのパロディ創作を困難にした要因であるとの指摘もある{{Sfn|時実|2016|p=13}}。 |
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また[[商標法]]についても、日本ではパロディ許容が消極的であり、パロディ商標は出願されても実際には登録却下される事例が多いと言われている{{Sfn|伊藤|2013|p=4}}。{{For2|パロディ商標が認められなかった一例|面白い恋人#販売差止訴訟}} |
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日本の著作権法上でパロディの取扱規定が存在しない問題は、少なくとも2007年(平成19年)ごろには公的に議論されるようになり{{R|MEXT-WG2008-Top|MEXT-WG2008-4-4}}、引用の要件を定めた第32条にパロディを加える案や、米国のフェアユースに類似する一般規定を設ける案などが検討されたものの、判例数の少ない日本における法改正は困難との見通しも示されている{{R|MEXT-WG2008-4-4}}。 |
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2012年 (平成24年) には著作権を管轄する[[文化庁]]の下、法制問題小委員会にパロディワーキンググループが設置され{{Sfn|伊藤|2013|p=4}}、インターネット上で共有される[[二次創作]]などを念頭に、パロディ目的の利用緩和に向けた法改正が協議されることとなった{{R|Nikkei2012}}。すでに2007年 - 2008年のワーキンググループ調査報告書では、パロディが共有されるプラットフォームとして[[YouTube]]や[[ニコニコ動画]]といったサービス名が挙げられており、具体的な法整備の必要性が議論された{{R|MEXT-WG2008-4-4}}。しかしながら2020年時点で、パロディに関する著作権法の改正は実現に至っていない。 |
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このような情勢下で、日本の著作権法が唯一寛容なのが、[[コミックマーケット]]を代表とする[[同人誌即売会]]などで行われる[[同人誌]]販売である。あくまで同好者たちの私的な[[二次創作]]活動であると捉えられ、漫画やアニメの無許諾模倣が黙認されてきた経緯がある{{Sfn|時実|2016|p=13}}。 |
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[[漫画]]業界を例にとると、商業的にパロディ要素が出始めたのは高度経済成長期の [[1960年代]]に入ってからである。1960年代初頭に米国のパロディコミック雑誌『[[MAD (雑誌)|MAD]]』が日本でも紹介されるようになり、続いて1968年には『漫画アクション』誌にダディ・グース(後の[[矢作俊彦]])のパロディ作品が、同年に『[[COM (雑誌)|COM]]』誌上に[[永井豪]]のパロディ作品が登場している。部分的なパロディ要素ではなく、作品全体がパロディと呼べる日本の漫画は、これらが初出と考えられている{{Sfn|飯塚|2015|p=75}}。同時期の1960年代初頭から[[1970年代]]初頭には、プロの漫画家を夢見る者たちによる同人誌コミュニティが全国的に広がりを見せた{{Sfn|飯塚|2015|p=74}}。パロディは元ネタを知らないと楽しめない性質であることから、同人誌のような「内輪受けコミュニティ」とパロディに親和性があったとの分析もある{{Sfn|飯塚|2015|p=76}}。 |
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しかし内容を問題視した原作者から名誉毀損で訴えられることもあった<ref name=":0">赤田祐一・ばるぼら『消されたマンガ』(鉄人社、2013年)186-191頁</ref>。また[[1990年代]]後半から[[2000年代]]にかけては、[[ときめきメモリアル・アダルトアニメ映画化事件]]、[[ポケットモンスター#関連事件・批判|ポケットモンスター同人誌事件]]、[[ドラえもん最終話同人誌問題]]など、二次創作物が広範に流通するようになったことでの紛争も起きている<ref>{{Cite book|和書|year=1999 |
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|title=著作権・著作隣接権論文集. 第2回|page= 62|publisher= 著作権情報センター|chapter = 同人二次創作と著作権}}</ref>。 |
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[[2018年]]末には[[環太平洋パートナーシップ協定]] (TPP) 発効に合わせて著作権法が改正されており、著作権侵害が[[日本の著作権法における非親告罪化|非親告罪化]]したが、この対象からはコミックマーケットが明示的に除外されることとなった{{R|Takeuchi2017|page1=53}}{{Sfn|時実|2016|p=13}}。これは原著作物と市場で競合するおそれがないこと{{R|Takeuchi2017|page1=53}}、また二次創作は「日本の文化創造のゆりかご{{Sfn|時実|2016|p=13}}」とも形容され、非親告罪化の対象に含めることで文化発展の萎縮を招きかねないとの政治的判断に基づく{{R|Takeuchi2017|page1=53}}。またコミケ経由だけでなく、漫画のパロディを[[ブログ]]に投稿する行為も原著作物からの改変が施されていることから、非親告罪の対象外だと解されている{{R|ITMedia2019}}。{{See also|日本の著作権法における非親告罪化}} |
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[[2020年]]5月には、[[2020年東京オリンピック|東京オリンピック]]のエンブレムと、世界的に流行した[[SARSコロナウイルス2|新型コロナウイルス]] (SARS-CoV-2) を掛け合わせたパロディが批判にさらされた。当パロディの作者は[[イギリス人]]デザイナーであり、パロディ作品を掲載したのは[[日本外国特派員協会]] (FCCJ) の発行する会報誌である。批判を受け、[[シリア]]出身のカルドン・アズハリ (Khaldon Azhari) FCCJ会長{{Efn2|アズハリはシリアの都市[[ホムス]]出身{{R|Azhari-Bio}}。}}も日本のパロディ利用緩和を要望する声明を発表し、日本国内外のパロディ法制の温度差が浮き彫りとなった{{R|Asahi2020}}。 |
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日本でのパロディに対する[[著作権侵害]]が問われた裁判として以下のような[[判例]]がある。 |
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==== サザエさんのパロディ漫画 ==== |
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1970年、[[奥成達]]が編集長を務めた雑誌『東京25時』9・10月合併号に、[[片岡義男]]原案・木崎しょう平作画による[[サザエさん]]のパロディ漫画『サザエさま』が掲載されたが、原作者である[[長谷川町子]]の作品を管理する[[姉妹社]]から訴えられ、罰金50万円の支払いと謝罪広告の掲載で示談となった<ref name=":0" />。長谷川は[[飯沢匡]]との対談の中で、面白いならまだしも作品の出来が悪いことや、内容に悪意を感じたため、名誉を毀損されたと感じ裁判を起こしたとしている<ref>{{Cite journal|和書|author=飯沢匡|date=1970-12-25|title=イイザワ対談 遠近問答:ゲスト マンガ家長谷川町子|journal=週刊朝日|volume=1970年12月25日号|pages=48|publisher=朝日新聞社|authorlink=飯沢匡}}</ref>。 |
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==== パロディ・モンタージュ写真事件 ==== |
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[[パロディ・モンタージュ写真事件]]は最高裁まで争われたことで有名である{{Sfn|作花|2018|p=876}}{{R|Amano-SC|Amano-SC-PDF}}。山岳[[写真家]]・[[白川義員]]が雪山をスキー滑走する[[シュプール]]を写真に収め、カレンダー写真に採用された。この写真のシュプール上部に巨大なタイヤ (別の広告写真から複写したもの) を配置し、スキーのシュプールが雪山を転げ落ちる[[タイヤ]]の轍に見えるように合成加工したのが、[[パロディスト]]を自称する[[マッド・アマノ]]である{{Sfn|伊藤|2013|p=6}}{{Sfn|時実|2016|pp=117–118}}。 |
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原告・白川側は無断の剽窃であり、かつ白川の製作意図が破壊・侮辱されたとして著作者人格権侵害を主張した。これに対して被告・アマノ側は、[[自動車]][[公害]]の批判を目的とした新たな創作物であって剽窃ではないと反論した{{Sfn|時実|2016|pp=117–118}}。二審ではアマノの作品が独立した創作性を有するパロディであると認めた上で、原著作物からの引用であるとして、著作権侵害に当たらないと判示した{{Sfn|伊藤|2013|p=6}}{{Sfn|時実|2016|p=119}}。最高裁は[[引用#要件|引用の要件]]として、引用する側とされた側が明確に区分できること、および主従の関係が成り立つことの2点を挙げた。そしてアマノの作品は独立した著作物と識別できるものの、原著作物の本質的な特徴を直接的に感じ取れる内容であることから、著作者人格権 (特に[[同一性保持権]]) を侵害していると判定された ([[1980年|昭和55年]]3月28日判決){{Sfn|伊藤|2013|p=7}}{{R|Amano-SC|Amano-SC-PDF}}{{Sfn|作花|2018|pp=331 (注2), 325}}。米国のプリティ・ウーマン判決で、元ネタとなった "作品" に対する批評がパロディであるのに対し、元ネタ作品そのものではなく "社会" を批判していれば風刺であると区別されたように{{Sfn|白鳥|2004|pp=224–225}}、日本のパロディ・モンタージュ写真事件でもアマノは白川の作品を批判・風刺しておらず、単に素材として無断利用したと判断された{{Sfn|伊藤|2013|p=7}}。この裁判は2度にわたって最高裁から差し戻され、最終的に[[和解]]が成立した{{Sfn|作花|2018|p=876}}。この判決を受け、日本ではパロディ表現の自由が法的に狭められたとの見解もある{{Sfn|時実|2016|p=119}}。 |
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== 作品例 == |
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* [[パロディ映画#パロディ映画の例]] |
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* [[パロディ音楽]] |
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* {{仮リンク|パロディ広告|en|Parody advertisement}} - 実在しない商品を対象とした広告。 |
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* {{仮リンク|パロディ宗教|en|Parody religion}} - [[空飛ぶスパゲッティ・モンスター教]]など。 |
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* {{仮リンク|パロディ科学|en|Parody science}} |
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* [[パロディAV]] |
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* [[アンサイクロペディア]] - ウィキペディアのパロディサイトである。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Reflist}} |
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{{notelist2|2}} |
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=== 出典 === |
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{{Reflist|3|refs= |
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<ref name=Def-Webster>{{Cite web |url=https://www.merriam-webster.com/dictionary/parody |title=parody |publisher=[[Merriam-Webster]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Def-Cambridge>{{Cite web |url=https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/parody |title=parody |publisher=[[ケンブリッジ大学出版会]] |work=Cambridge Dictionary |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Def-TFD>{{Cite web |url=https://www.thefreedictionary.com/Parody |title=parody |work=[[Collins English Dictionary]] – Complete and Unabridged, 12th Edition 2014 (HarperCollins Publishers) |publisher=The Free Dictonary |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Aristophanes-Kotobank>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/アリストファネス-28037 |title=アリストファネス |publisher=[[コトバンク]] |work=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 |accessdate=2020-10-04 |quote=喜劇を通じて反戦論を唱え…(中略)…個人風刺とパロディ―風な表現を自由に行った。}}</ref> |
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<ref name=Satyr-Play>{{Cite journal|和書|author=丹下和彦 |date=2008-03 |url=https://kansaigaidai.repo.nii.ac.jp/records/6227 |title=4番目の劇 : エウリビデス『アルケスティス』考 |journal=研究論集 |ISSN=03881067 |publisher=関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部 |volume=87 |pages=135-150 |doi=10.18956/00006214 |naid=110006615993 |CRID=1390009224859285632}}</ref> |
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<ref name=Satyr-Kotobank>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/サテュロス-173305 |title=サテュロス |publisher=[[コトバンク]] |work=平凡社世界大百科事典 第2版 |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Euripides-Kotobank>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/エウリピデス-36091 |title=エウリピデス |publisher=[[コトバンク]] |work=ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Batrachomyomachia-OxfordRE>{{Cite web |url=https://oxfordre.com/classics/view/10.1093/acrefore/9780199381135.001.0001/acrefore-9780199381135-e-8023 |title=Batrachomyomachia |work=Oxford Classical Dictionary |publisher=[[オックスフォード大学出版会]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=WhyHomerMatters>{{Cite web |url=https://www.nationalgeographic.com/news/2015/1/150104-homer-iliad-odyssey-greece-book-talk-travel-world/ |title=Author Says a Whole Culture — Not a Single 'Homer' — Wrote 'Iliad,' 'Odyssey' {{!}} "It's a mistake to think of Homer as a person," says the author of Why Homer Matters.|trans-title=『Why Homer Matters』の著者が語る、『イーリアス』を執筆したホメーロスは一人の人物ではないとの説 |publisher=[[ナショナルジオグラフィック(雑誌)|ナショナルジオグラフィック]] |date=2015-01-03 |first=Simon |last=Worral |work=Book Talk(著者インタビュー)シリーズ |accessdate=2020-10-04 |language=en}}</ref> |
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<ref name=Eubulus-Oxford>{{Cite web |url=https://oxfordre.com/classics/view/10.1093/acrefore/9780199381135.001.0001/acrefore-9780199381135-e-2520 |title=Eubulus (2), Middle Comedy poet |first=Richard |last=Hunter |work=Oxford Classical Dictionary |publisher=[[オックスフォード大学出版会]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Plautus-Britannica>{{Cite web |url=https://www.britannica.com/biography/Plautus |title=Plautus {{!}} Roman dramatist |trans-title=プラウトゥス {{!}} ローマの劇作家 |publisher=[[ブリタニカ百科事典]] |accessdate=2020-10-04 |language=en}}</ref> |
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<ref name=Mann-Kotobank>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/トーマス%20マン-1633339 |title=トーマス マン |work=日外アソシエーツ「20世紀西洋人名事典」(1995年刊)|publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=OJ-2001-29-EC>{{Cite web |title=Directive 2001/29/EC of the European Parliament and of the Council of 22 May 2001 on the harmonisation of certain aspects of copyright and related rights in the information society |trans-title=2001年5月22日に成立した情報化社会における著作権ならびに著作隣接権の調和に関する欧州議会および欧州連合理事会の指令 |url=https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2001/29/oj |work=[[欧州連合官報]] (Document 32001L0029) |publisher=[[EUR-Lex]] |date=2001-06-22 |accessdate=2020-10-04 |language=en |quote=Article 5 Exceptions and limitations {{!}} 3. Member States may provide for exceptions or limitations to the rights provided for in Articles 2 and 3 in the following cases: {{!}} (k) use for the purpose of caricature, parody or pastiche;(抄訳: 第5条 - 例外・制限規定、第3項 - EU加盟国は第2条および第3条に則って以下に該当する利用は著作権者に認められる排他的権利が排除ないし制限されることとする… (中略) 第(k) 号 - [[カリカチュア]] (風刺画)、パロディないし[[パスティーシュ]] (模倣)。)}}</ref> |
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<ref name=USSC-510-569>{{ussc|510|569|1994|name=Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc.}}</ref> |
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<ref name=Video-VH1>{{Cite video |title=Luther Campbell of 2 Live Crew's Historic Supreme Court Parody Case {{!}} Hip Hop Honors |publisher=[[VH1]] |trans-title=2 Live Crewのルーサー・キャンベルが最高裁の歴史的パロディ判決を解説 {{!}} ヒップホップ称賛シリーズ |people=[[:en: Luther Campbell|Luther Campbell]](声、本人解説、別名: Luke Skyywalker); Jim Fitzgerald(クリエイティブ・ディレクター); Adam Vohlidka(クリエイティブ・ディレクター); Scott Padden(脚本); Orlando Lima(エグゼクティブ・プロデューサー)|url=https://www.youtube.com/watch?v=BNcwZfZ3Qk4|date=2016-07-07 |accessdate=2020-10-03 |medium=ケーブルテレビ番組のYouTubeへの転載 |time=0分45秒以降 |language=en}}</ref> |
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<ref name=LAT1993>{{Cite web |url=https://www.latimes.com/archives/la-xpm-1993-11-09-mn-54834-story.html |title=Parody a 'Big Hairy' Mess for Courts : When 2 Live Crew redid 'Oh, Pretty Woman,' it raised hackles. But judges have had a tough time drawing the line between humor, piracy. |trans-title=「デカい髪形」のパロディ惨事訴訟: 2 Live Crewによる 'Oh, Pretty Woman' のリメイクが怒りを呼ぶ。判事らはユーモアと海賊版の線引きに苦悩す |first=David G. |last=Savage |date=1993-11-09 |publisher=[[Los Angeles Times]] |accessdate=2020-10-03 |language=en |quote=...the pretty woman turns out to be "a big hairy woman."...sold 248,000 copies by early 1990(抄訳: プリティーウーマンが「ビッグヘアリーウーマン」(デカい髪形の女性)に。パロディ曲を収録したアルバムは1990年初旬には24万8000枚のセールスを記録した)}}</ref> |
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<ref name=Reuters-UK-FR>{{Cite web2 |url=https://uk.practicallaw.thomsonreuters.com/9-625-2313 |title=Parody in the UK and France: defined by humour? |trans-title=イギリスとフランスにおけるパロディ: ユーモアが線引き基準となるか? |first1=Laetitia(Baker & McKenzie LLP 弁護士)|last1=Lagarde |first2=Carolyn(Baker & McKenzie LLP 弁護士)|last2=Ang |publisher=[[Thomson Reuters]] |date=2016-05-24 |accessdate=2020-10-04 |language=en}}</ref><!-- Cite webだと著者複数名を姓・名区切って表記できないためCite web2を使用 --> |
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<ref name=CJEU-2014-EURLex>{{Cite web |url=https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/ALL/?uri=CELEX:62013CC0201 |title=Opinion of Mr Advocate General Cruz Villalón delivered on 22 May 2014. Johan Deckmyn and Vrijheidsfonds VZW v Helena Vandersteen and Others. |trans-title=Cruz Villalón判事による2014年5月22日判決。Johan Deckmyn および Vrijheidsfonds VZW 対 Helena Vandersteen 他裁判 |publisher=[[EUR-Lex]] |work=Court Reports - general(裁判所関連資料全般)|date=2014-05-22 |accessdate=2020-10-04 |language=en}}</ref> |
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<ref name=Amano-SC>{{Cite web|和書|url=https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=53283 |title=最高裁判所判例集 {{!}} 事件番号 昭和51(オ)923 {{!}} 裁判年月日 昭和55年3月28日 {{!}} 判例集等巻・号・頁 民集 第34巻3号244頁 |publisher=[[日本の裁判所|日本国裁判所]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Amano-SC-PDF>{{Cite report |url=https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/283/053283_hanrei.pdf |title=主文 原判決を破棄する。本件を東京高等裁判所に差し戻す。|author1=環昌一(最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官)|author2=江里口清雄(裁判官)|author3=横井大三(裁判官)|publisher=[[日本の裁判所|日本国裁判所]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Ogata1996>{{Cite journal|和書|author=尾方一郎 |date=1996-03 |url=https://doi.org/10.15057/12096 |title=モンタージュとパロディ : トーマス・マンの「真面目な冗談」について |journal=一橋論叢 |ISSN=0018-2818 |publisher=日本評論社 |volume=115 |issue=3 |pages=652-667 |doi=10.15057/12096 |hdl=10086/12096 |CRID=1390572174815876224}}</ref><ref name=Montage-Kotobank>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/モンタージュ-143212 |title=モンタージュ |work=小学館 デジタル大辞泉、および平凡社 百科事典マイペディア |publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=PhotoMontage-Kotobank>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/モンタージュ写真-143213#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89 |title=モンタージュ写真 |work=小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)|publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=UMich-Trans-P>{{Cite web2 |url=https://quod.lib.umich.edu/d/did/did2222.0000.811?view=text;rgn=main |title=Parody |work=The Encyclopedia of Diderot & d'Alembert (Collaborative Translation Project) |publisher=[[ミシガン大学]]図書館 |author=Unknown | |
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translator-first=Colt Brazill|translator-last=Segrest|translator-first2=Ann |translator-last2=Arbor |accessdate=2020-10-04 |quote=Originally published as "Parodie," Encyclopédie ou Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiers, 12:73–74(Paris, 1765)}}</ref> |
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<ref name=UMich-Trans-B>{{Cite web2 |url=https://quod.lib.umich.edu/d/did/did2222.0001.054/--burlesque?rgn=main;view=fulltext#idno_did2222.0001.054 |title=Burlesque |work=The Encyclopedia of Diderot & d'Alembert(Collaborative Translation Project)|first=Mallet |last=Edme-François |publisher=[[ミシガン大学]]図書館 |translator-first1=Colt Brazill |translator-last1=Segrest |translator-first2=Ann |translator-last2=Arbor |accessdate=2020-10-13 |quote=Originally published as "Burlesque," Encyclopédie ou Dictionnaire raisonné des sciences, des arts et des métiers, 2:467–468(Paris, 1752)}}</ref> |
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<ref name=Homage-Webster>{{Cite web |url=https://www.merriam-webster.com/dictionary/homage |title=homage |publisher=[[Merriam-Webster]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Rybin2007>{{Cite journal |和書 |doi=10.15055/00001342 |title=狂歌を弁護して |journal=日本文化の解釈 : ロシアと日本からの視点(シリーズ: ロシア・シンポジウム 2007)|pages=77-85 |date=2009-12-15 |last=Rybin |first=Viktor V. |publisher=[[国際日本文化研究センター]] |issn=09152822 |language=ja}}</ref> |
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<ref name=Mondegreen-Webster>{{Cite web |url=https://www.merriam-webster.com/dictionary/mondegreen |title=mondegreen |publisher=[[Merriam-Webster]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Mondegreen-TNY>{{Cite web |url=https://www.newyorker.com/science/maria-konnikova/science-misheard-lyrics-mondegreens |title=Excuse Me While I Kiss This Guy |trans-title=この男にキスしている間は邪魔しないで |first=Maria |last=Konnikova |date=2014-12-10 |publisher=[[The New Yorker]] |accessdate=2020-10-04 |language=en |quote=One of the reasons that "Excuse me while I kiss this guy" substituted for Jimi Hendrix's "Excuse me while I kiss the sky" remains one of the most widely reported mondegreens of all time can be explained in part by frequency.(抄訳: ジミー・ヘンドリックスの名曲 "Excuse me while I kiss the sky" を "Excuse me while I kiss this guy" に聞き間違えたとする人は多いことから、モンデグリーンの典型例として挙げられるが、これはキスする対象が空 (the sky) ではなくこの男 (this guy) の方が実際によく耳にすることが要因の一つであろう。)}}</ref> |
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<ref name=Mondegreen-CNET>{{Cite web |url=https://japan.cnet.com/article/20376795/ |title=ウェブスターの英語辞典、約100語が追加に--多くのIT用語も登場 |first=Michelle |last=Meyers |publisher=[[CNET]] |date=2008-07-08 |accessdate=2020-10-13}}</ref> |
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<ref name=Soramimi2015>{{Cite journal|和書|author=三間英樹 |date=2015-03 |url=https://kobe-cufs.repo.nii.ac.jp/records/2022 |title=「空耳アワー」にみる音の類似と弁別素性 |journal=神戸市外国語大学外国学研究 |ISSN=02899256 |publisher=神戸市外国語大学外国学研究所 |volume=87 |pages=19-34 |CRID=1050282812395611520}}</ref> |
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<ref name=FSM-Pic>{{Cite web |url=http://www.androidarts.com/fsm/index.htm |title=The Flying Spaghetti Monster |first=Niklas |last=Jansson |date=2016-03-18 |accessdate=2020-10-04 |quote=I hereby (18 March 2016) release my FSM paintings into Public Domain.}}</ref> |
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<ref name=IgNobel-JK>{{Cite web|和書|url=https://japanknowledge.com/introduction/keyword.html?i=232 |title=イグノーベル賞 |work=日本大百科全書(ニッポニカ)|publisher=[[ジャパンナレッジ]] |accessdate=2020-10-04}}</ref> |
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<ref name=Hutcheon1978>{{Cite journal |url=https://journals.library.ualberta.ca/crcl/index.php/crcl/article/view/2353 |title=Parody Without Ridicule: Observations on Modern Literary Parody |tras_title=滑稽さのないパロディ: 現代文学のパロディ論考 |first=Linda |last=Hutcheon |journal=The Canadian Review of Comparative Literature |volume=5 |issue=2 |year=1978 |pages=201-211 |publisher=Canadian Comparative Literature Association({{仮リンク|アルバータ大学図書館|en|University of Alberta Library}}経由の発行)|issn=1913-9659 |language=en}}</ref> |
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<ref name=Burlesque-Kotobank>{{Cite web|和書|url=https://kotobank.jp/word/バーレスク-117573 |title=バーレスク |work=[[ブリタニカ国際大百科事典]] 小項目事典、および平凡社 百科事典マイペディア |publisher=[[コトバンク]] |accessdate=2020-10-13}}</ref> |
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<ref name=Congress2005>{{Cite book |author=International American Studies Association. World Congress |others=Haen, Theo d'.; Kadir, Djelal; Zamora, Lois Parkinson (ed.) |title=How Far is America from Here?: Selected Proceedings of the First World Congress of the International American Studies Association, 22-24 May 2003 |url=https://books.google.com/books?id=_NDzP2fgvUoC&pg=PA293 |year=2005 |publisher=Rodopi |isbn=90-420-1756-2 |page=293}}</ref> |
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<ref name=PicassoMuseu>{{Cite web |url=http://www.blogmuseupicassobcn.org/2015/08/the-chronology-of-las-meninas-of-picasso/?lang=en |title=The chronology of Las Meninas of Picasso |trans-title=ピカソ作『ラス・メニーナス』の連作 |quote=The series is made up of 58 works: 45 interpretations of the work Las Meninas by Velázquez…(抄訳: この連作は計58点で構成されており、うち45点はベラスケス作『ラス・メニーナス』を独自解釈して翻案されたものである)|publisher=[[ピカソ美術館 (バルセロナ)|ピカソ美術館]] |website=El Blog del Museu Picasso de Barcelona (ピカソ美術館公式ブログ) |date=2015-08-13 |accessdate=2020-10-13 |language=en}}</ref> |
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<ref name=Colombet1990>{{Cite book |和書 |trans-title=著作権と隣接権 |title=著作権と隣接権 |last=Colombet |first=Claude (クロード・コロンベ) |translator=宮澤溥明 |date=1990-05-25 |publisher=[[第一書房]] |origyear=1988 |year=1990 |url=https://www.daiichishobo.co.jp/shinkan/shokai/1.shtml |isbn=978-4-8042-0001-9 |postscript=著者は[[ソルボンヌ大学]]法学部教授。日本語版本文中の条約および法律は、大山幸房 (西東京科学大学(現: 帝京科学大学 教授)の訳出に準拠}}</ref><!-- 書籍の裏表紙に書かれているISBNは下1桁が「0」と表記されていますが、誤り。Cite bookで表示しようとすると「存在しません」となりますのでご注意を。出版書誌DB https://www.books.or.jp/books/detail/335037 で検索しなおし、「9」に訂正しました。--> |
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<ref name=FR-CRICTrans>{{Cite web|和書|url=https://www.cric.or.jp/db/world/france/france.pdf |title=外国著作権法令集(55)—フランス編— |others=財田寛子 (訳) |publisher=公益社団法人[[著作権情報センター]](CRIC)|date=2018-03 |accessdate=2020-10-19 |quote=この翻訳は、フランス政府のウェブサイトから2017年6月21日に入手したフランス著作権法 (知的所有権法典(Code de la Propriété Intellectuelle):第1部) の最新版を翻訳したものである。}}</ref> |
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* {{Cite report |和書 |url=https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hosei/parody/pdf/h25_03_parody_hokokusho.pdf |title=パロディワーキングチーム 報告書 |author=文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 パロディワーキングチーム |publisher=[[文化庁]] |date=2013-03 |ref={{SfnRef|文化庁パロディ報告書|2013}}}} |
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* {{Cite report |和書 |url=https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/chosakuken/pdf/h24_chosakuken_toriatsukai.pdf |title=海外における著作物のパロディの取扱いに関する調査研究 報告書 (平成 23 年度文化庁委託事業) |author=[[三菱UFJリサーチ&コンサルティング]] |publisher=[[文化庁]] |date=2012-03 |ref={{SfnRef|MURCパロディ報告書|2012}}}} |
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* {{Cite book |和書|title=アメリカ著作権法の基礎知識 |edition=第2版 |author=山本隆司 |publisher=太田出版 |year=2008 |url=http://www.ohtabooks.com/publish/2008/10/14201410.html |isbn=978-4-7783-1112-4 |ref={{SfnRef|山本|2008}}}} |
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* {{Cite book |last=Dentith |first=Simon ([[レディング大学]]教授) |title=Parody |url=https://books.google.com/books?id=iNGYiKPaM8gC |year=2000 |publisher=Routledge |isbn=978-0-415-18221-8 |ref={{SfnRef|Dentith|2000}}}} <!-- 略歴は https://archive.reading.ac.uk/staff-news/spsn-616683.html#:~:text=He%20studied%20English%20at%20Churchill,the%20Novel%20in%20the%201850s. 参照のこと --> |
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* {{Cite journal |last1=Kemp |first1=Deborah J. |last2=Forsythe |first2=Lynn M. |last3=Jones |first3=Ida M. |url=https://repository.jmls.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1348&context=ripl |title=Parody in Trademark Law: Dumb Starbucks Makes Trademark Law Look Dumb |journal=The John Marshall Review of Intellectual Property Law |volume=14 |issue=143 |year=2015 |pages=143–198 |publisher=[[イリノイ大学シカゴ校]]ロースクール |ref={{SfnRef|UIC|2015}}}} |
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* {{Cite book |last=Hutcheon |first=Linda |title=A Theory of Parody: The Teachings of Twentieth-century Art Forms |url=https://books.google.com/books?id=FoHXjEauvKIC |year=2000 |edition=reprinted from the 1985 edition |publisher=University of Illinois Press |isbn=978-0-252-06938-3 |ref={{SfnRef|Hutcheon|2000}}}} |
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* {{Cite journal |last=Lelièvre |first=F. J. |url=https://www.jstor.org/stable/641056 |title=The Basis of Ancient Parody |journal=Greece & Rome |volume=1 |issue=2 |year=1954 |pages=66–81 |publisher={{仮リンク|The Classical Association|en|Classical Association}}([[ケンブリッジ大学出版会]]経由の発行)|ref={{SfnRef|Lelièvre|1954}}}} |
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* {{Cite report |first1=Dinusha({{仮リンク|ボーンマス大学|en|Bournemouth University}}知的財産政策管理研究所共同所長)|last1=Mendis |first2=Martin([[グラスゴー大学]]知的財産法教授)|last2=Kretschmer|url=https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/309902/ipresearch-parody-report2-150313.pdf |title=The Treatment of Parodies under Copyright Law in Seven Jurisdictions {{!}} A Comparative Review of the Underlying Principles |trans-title=7か国の著作権法に基づくパロディの取扱 {{!}} 原理原則の比較衡量 |publisher=[[イギリス知的財産庁]](委託調査)|year=2013 |isbn=978-1-908908-49-0 |ref={{SfnRef|UKIPO|2013}}}} |
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=== 関連文献 === |
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本項の解説の出典として直接用いていないものの、一層の理解を深めるのに寄与する文献。 |
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* 法律とパロディの関係 |
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** {{Cite book |和書 |author=福井健策|authorlink=福井健策 |title=著作権とは何か ― 文化と創造のゆくえ |publisher=[[集英社]] |series=集英社新書 |date=2005-05-17 |isbn=4-08-720294-1 |url=https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0294-a/ |chapter=第四章 既存作品を自由に利用できる場合 {{!}} 3 パロディとアプロプリエーションの地平を探る |pages=140-176}} |
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** {{Cite book |和書 |author1=千野直邦|authorlink1=千野直邦|author2=尾中普子|authorlink2=尾中普子|title=著作権法の解説 |publisher=[[一橋出版]] |edition=六訂版 第1刷 |date=2005-11-10 |isbn=4-8348-3620-7 |chapter=第2章 著作物 {{!}} 6 写真の著作物 |pages=15-18}} |
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** {{Cite journal |author=[[佐藤薫]] |title=著作権法第20条第2項第4号の解釈と表現の自由権――パロディを中心として―― |publisher=著作権法学会([[有斐閣]]経由の発行)|journal=著作権研究 |volume=17 |year=1990 |pages=111-144 |url=https://cir.nii.ac.jp/crid/1522262180934030464}} |
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* パロディ作品紹介 |
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** {{Cite web|和書|url=https://natalie.mu/comic/news/216404|title=70年代の「パロディ」扱う企画展、赤瀬川原平や長谷邦夫のマンガ原稿も|publisher=コミックナタリー|date=2017-01-11|accessdate=2017-01-16}} |
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== 関連項目 == |
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* [[ぱくり]] |
* [[ぱくり]] |
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{{Normdaten}} |
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== 外部リンク == |
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* {{Cite web|url=http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201304/jpaapatent201304_004-017.pdf|title=具体的事例から見る日本におけるパロディ問題|work=伊藤真|date=2013-04|accessdate=2017-01-16}} |
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* {{Cite web|url=http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/chosakuken/pdf/h24_chosakuken_toriatsukai.pdf|title=海外における著作物のパロディの取扱いに関する調査研究|work=三菱UFJリサーチ&コンサルティング|publisher=文化庁|date=2012-03|accessdate=2017-01-16}} |
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* {{Cite web|url=http://natalie.mu/comic/news/216404|title=70年代の「パロディ」扱う企画展、赤瀬川原平や長谷邦夫のマンガ原稿も|publisher=コミックナタリー|date=2017-01-11|accessdate=2017-01-16}} |
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2024年11月13日 (水) 07:55時点における最新版
パロディ(英語: parody、ギリシア語: παρωδία)とは、他者によって創作された文学や音楽、美術、演説などを模倣した作品、あるいは作り替える行為そのものを指す。
後述の通り定義は幅広く、ユーモアや皮肉などの付加が必須なものから、それらが全くないものまで含む。
辞書においては、Merriam-WebsterやCambridge Dictionaryでは「滑稽さ・ユーモア(comic, ridicule, humorous)」に限定しているが[2][3]、Collins English Dictionaryでは「ユーモアないし皮肉さ(humorous or satirical)」と定義されている[4]。自身や自作をパロディ化した場合は、セルフパロディと呼ばれることがある[5][6]。
本項では、現代におけるパロディの関連語である盗作(剽窃、盗用、パクり)、引用、物真似、モンタージュ、オマージュ、風刺、モンデグリーン(空耳)、バーレスク、カリカチュア、パスティーシュ、インターネット・ミームなどとの定義の相違点についても解説する。
また、パロディの本質は模倣であることから、現代の著作権や商標権上でどこまで法的に許容されるのか、各国で合法性が問われることがある。これはパロディの元となった著作物・商標を無断で盗用・翻案(改変)していると解されれば、権利侵害に当たる可能性があるためである。一部の国・地域(特に欧州連合加盟国)ではパロディを著作権侵害の例外として法律上明記しているものの[7][8]、具体的にどのような要件を満たせばパロディ作品が合法と認められるのか、司法判断の場ではケースバイケースで線引きされている。本項ではパロディに関連する各国の代表的な判例も紹介する。
誤用だが、模倣自体よりそれの面白さが目立つなど、単に面白いものという意味でパロディという用語が使われる場合がある。[要出典]
定義
[編集]パロディの歴史は紀元前にまで遡り、古代ギリシャや古代ローマ文化にも見受けられるが、当時は必ずしも滑稽さや皮肉、批判などのニュアンスが込められたものばかりではなく、カジュアルな文脈での単純な模倣や類似作品もパロディの定義には含まれていた[9]。パロディ (parody) の語源である "parodia" は、古くは紀元前4世紀のギリシャ哲学者・アリストテレス『詩学』に記されており、これが概念用語としてのパロディの初出とされる[10]。
以降、パロディの定義は変遷していき複数存在するが、現代の辞書的な意味合いとしては以下の特徴を有する[11]。
- パロディの元となった作品が一般的に知られており、何を模倣したのかがあからさまであること
- パロディの元となった作品のスタイルや特徴を残しつつ、改変していること
- パロディ化によって滑稽さや風刺が感じられること
しかし、『パロディの理論』を記したカナダの文学理論研究家リンダ・ハッチオン (1947年 -) は、元ネタが著名であることをパロディの必須要件としておらず、類似性よりも差異性 (ギャップ) の際立つ模倣であることに重点を置いた定義を用いている[12][13]:202。
また、滑稽さが全くない、ごく真面目で重厚な作風もパロディの範疇に含めることがある。その典型例がドイツ出身でノーベル文学賞受賞者のトーマス・マン(詳細後述)である[14][15]:657。マンは教養小説の作家に分類されているが[16]、同時にゲーテなどを下敷きにしたパロディ作家としての側面もある[17]。
関連語との相違点
[編集]- 盗作、引用、オマージュとの違い
- 盗作(剽窃、パクり)や引用とは異なり、元ネタから何らかの改変がなされ、滑稽さや風刺が効いているものを一般的にはパロディと呼んでいる。しかし、改変は全体的に行われている必要はない。たとえば紀元前のホメーロス作品の一節と、17世紀フランスで活躍したピエール・コルネイユの代表的悲劇『ル・シッド』では単語1つ置き換えただけで残りは完全に一致する箇所がある。このようなケースもパロディとみなされている[18]。一方で、ディズニーの『ライオン・キング』は手塚治虫の『ジャングル大帝』と類似性が高いことから、パクリだとの批判を受けることも多い[19][注 1]。これらの例からも分かるように、どこからが盗作になるのか線引きは曖昧である[21]。
- オマージュ(仏: homage)とは元来「尊敬の意を表すること」とされ、そこから転じて、尊敬する作品から影響を受けて別の作品を創作する行為もオマージュと定義される[22][23]。特に映画業界ではオマージュが盛んに行われているとされる[20]。一例を挙げると、米国の西部劇映画『荒野の七人』は黒澤明監督の映画『七人の侍』のオマージュだとされている[24]:1。
- したがって、元ネタとの類似性という観点では盗作、オマージュおよびパロディ間で共通し、識別は個々人の感性に委ねられている[24]:2。しかしあえて相違点を挙げるとするならば、公に発覚することを恐れるのが盗作、公(または元ネタの作者)に発見してもらいたいと願うのがオマージュ、公に気づいてもらわないと困るのがパロディとも言える[25]。オマージュもパロディも、鑑賞する者が元ネタを知っている(知っていてほしい)前提で創作されている[26][11]。しかしオマージュと違ってパロディの場合、必ずしも元ネタに対する尊敬の念だけが創作の動機とはならず、元ネタの作者から反感を買う恐れのあるような作風もパロディには包含される[27]。
- 風刺との違い
- 先述のとおり、パロディには皮肉・風刺(satire)のニュアンスが付け加えられることがあるが[4]、パロディと風刺の両者を定義上明確に区別することがある[28]。米国の1994年連邦最高裁判決(通称:プリティウーマン判決、詳細後述)によると、パロディと風刺では批評する対象が異なると指摘されている。つまり、パロディが元ネタとなった "作品" に対する批評・コメントであるのに対し、風刺が向く矛先は元ネタ作品そのものではなく "社会" である。このような違いから、風刺は必ずしも他の作品に依拠せずに成立しうる。そして、社会を批判する目的で他者の作品を踏み台に利用していることから、パロディと比べて風刺は著作権侵害の判定を受けやすいとも言われている(米国の場合)[28][29][30]。
- モンタージュとの違い
- モンタージュ(仏: montage、組み立ての意)とは、映像(とりわけ映画)の世界では複数の映像カットを組み合わせ、何らかの意味を持たせて一つの作品に仕上げる手法を指す[31]。また、モンタージュ写真(あるいはフォト・モンタージュ)と言えば、複数の写真の中からそれぞれ一部を切り取って合成する手法であり、事件捜査現場では指名手配犯の合成写真作成のことを指す場合もある[32]。これに関連して、フォト・モンタージュ技法を用いた作品がパロディなのか著作権侵害なのかが問われた日本の1980年最高裁判決「パロディ・モンタージュ写真事件」が知られている(#パロディに対する法的取り扱いで後述)。本件では引用の要件についても法的に検討された[33][34][35]。
- 文学の世界では、前述のトーマス・マンが自身の執筆手法を「モンタージュ技法」と呼んでいる。過去の様々な文芸作品から一部分を引用(無断で剽窃)してきて、自作に溶け込ませる手法である[15]:655。マン流のモンタージュ技法は「どこかから取ってきたとは普通読む方は気づかない」ことを特徴としており[15]:655、パロディのようにどこから取ってきたのか意図的に明確にした上で模倣する手法[11]とは異なる。
- カリカチュア、パスティーシュとの違い
- カリカチュア (caricature) とは、特に人を描く際に特徴の一部を誇張して、滑稽さやコミカルさを表現する手法と定義される。模しているという意味ではパロディと共通するが、カリカチュアには写実性がかけ、馬鹿馬鹿しいほどに貧弱な模倣だとされる[36]。パスティーシュ (pastiche) はカリカチュアのように人物にフォーカスすることはなく、広く芸術作品や芸術家、あるいは時代を何らかのスタイルで模倣する行為を指す[36]。また、パロディのような皮肉の要素はパスティーシュには含まれない違いがある[37]。
- 欧州連合 (EU) の著作権法の一部である2001年情報社会指令 (2001/29/EC) 上では、著作権侵害の例外としてカリカチュア、パロディ、パスティーシュの3つが同列で扱われていることから、別々の概念として認識されている[7]。またイギリス知的財産庁 (UKIPO) が2014年に発行した著作権法の公式ガイダンス文書によると、パロディはユーモアないし風刺を効かせていること、そして模倣しているものの元ネタから大きく改変されていることを要件として挙げている。パスティーシュは様々な作品から組み合わせて作風や時代の特徴を取り入れているものを指し、特に音楽著作物がこれに該当する。カリカチュアは政治目的と娯楽目的、侮辱と称賛のいずれもありうるが、描く対象を簡略化ないし誇張する手法に特徴がある[38]。
- ミームとの違い
- ミーム(meme)とは、ある文化・社会においてアイディア、行動、スタイル、用法が人から人へと伝達される現象である[39]。おもしろ画像・動画などがミームの例として挙げられ[39]、とりわけソーシャルメディア(SNS)などのインターネットを介して拡散する場合をインターネット・ミームと呼ぶ[40]。ミームは進化生物学者リチャード・ドーキンズの造語であり[注 2]、ドーキンズの文脈に沿うと、ミームは模倣ないしパロディ要素が必要とされ、元ネタを使っている様が明確でなければならないとされていることから[40]、ミームとパロディには共通項が多い。ただしミームとは模倣された作品そのものを指す用語ではなく、模倣する社会的プロセスであるとされる。さらにインターネット・ミームは、あるミームが別のミーム (派生作品) を次々と生み出していく社会連鎖を特徴としている[40]。EUではパロディに次いでインターネット・ミームも、2019年に成立したDSM著作権指令(Directive (EU) 2019/790)によって著作権侵害の例外に指定されることとなった[43][44]。
- バーレスクとの違い
- バーレスク(burlesque)は「馬鹿げた・奇妙なパロディ」(grotesque parody)と定義されることもある[13]:202。バーレスクの意味は時代と共に変遷しているが、17世紀から18世紀にかけてのイギリスでは、文学や演劇、音楽作品などを風刺したパロディを指した。特に演劇ではまじめな題材や有名人を茶化したり滑稽化する大衆向けの見世物である[45]。しかし時代が下がると、次第に批判や風刺の要素は薄れ、特に米国ではストリップショーの要素が加わった[45]。
起源
[編集]古代ギリシャ語でパロディは ϖαροδια と記され、ϖαρα と οδος に分解できる[18]。後半部分の οδος には「歌うこと」の意味が含まれており、具体的には韻文の詩を元来は指していた[46]。その後に散文もこの用語の範疇として含まれるようになった[46]。また前半部分の ϖαρα には、アイディアに対する共感・類似性、あるいは糾弾、反論や見解の相違を表現するとの意味もあった[46]。したがってこれらを複合すると当時のパロディは、歌唱あるいは作曲されるものであり、元となった作品と何らかの差異が認められるものを指していたと考えられる[46]。そして一般庶民は、原作よりもくだけた対象やシチュエーションでこのようなパロディの手法を用いた[46]。ただし、現代の意味するところのパロディとニュアンスは異なり、古代では必ずしも過去の偉大な作品を嘲笑する目的に限られるものではなかった[47]。以下、具体的な作品例を見ていく。
紀元前5世紀に活躍したエウリピデスはギリシャ三大悲劇詩人の一人と評されるが[48]、喜劇も手掛けており、『キュクロプス』は完全な形で現存する唯一のサテュロス劇とされる[49]。サテュロスとはギリシャ神話に登場する半獣半人であり、陽気で酒飲みの好色キャラクターとして描かれている[50]。このサテュロスが登場する喜劇がサテュロス劇であり、下品な下ネタなどが使われている[49]。しかし『キュクロプス』と比較対象となる他者の元作品が物理的に確認不可能なことから、『キュクロプス』を何らかのパロディと呼ぶべきか判定困難だとされている[51]。また、紀元前5世紀 - 4世紀のギリシャ喜劇詩人アリストパネスはパロディ作品を生み出したことで一般的に知られ[52]、先述のエウリピデス (生誕はアリストパネスより30年ほど前の人物)[48]の作品を下敷きにしていると言われるが、この見解については異論も出ており、アリストパネスをパロディ作家と呼べるか断定できていない[53]。
紀元前4世紀の哲学者アリストテレス著『詩学』によると、パロディの発明者はタソスのヘゲモン (紀元前5世紀頃の作家[54]) だと記されている (1448a9-18)[55]:94[56]。ここでの「発明者」であるが、パロディを一つの文学ジャンルとして確立させた者を意味すると考えられている[54]。
学説上、パロディだと確認がとれている現存の古典作品例としては、『蛙鼠合戦』("Batrachomyomachia"、古代ギリシア語: Βατραχομυομαχία)[注 3]が挙げられ[58][18]、パロディの中でも特にバーレスク的であるとも分類されている[59]。『蛙鼠合戦』は長短短の6歩格で構成される韻文であり、トロイア戦争を扱ったホメーロス作『イーリアス』を嘲笑するような文体で知られ[57][58][注 4]、カエルとネズミの争いに置き換わっている[18]。また、主神ゼウスを始めとするオリュンポス十二神も、スキャンダラスな逸話がたびたび伝えられていることから、格好のパロディ材料となった[61]。他にも紀元前4世紀半ばに活躍した喜劇作家のエウブロス[62]、紀元前3世紀 - 2世紀の古代ローマ喜劇作家プラウトゥス[注 5]などがパロディ作家として知られている[64]。
格調高い文体で下賤なトピックを扱うパターン、あるいは下賤な文体で高尚なトピックを扱うパターン (擬似英雄詩など) のどちらも古代のパロディに見られる[61]。
種類
[編集]世界中に無数のパロディ作品が存在するが、パロディの内訳を解説する目的でその一部を以下に紹介する。
音に着目したパロディ
[編集]文芸におけるもじりとは、一つの語句に複数の異なる意味を持たせることで滑稽さを生み出す手法である[65]。特に同音または類似音を用いた語呂合わせなどを指し、有名な詩や和歌、歌謡などを元ネタにして笑わせる目的で創作されることから、パロディの一種としての側面がある[66]:ⅰ。たとえば鎌倉時代に藤原定家が選定した『小倉百人一首』を元にして、江戸時代には「もじり百人一首」が登場し、大衆に親しまれた[66]:ⅰ。また、替え歌も原曲の歌詞をもじってパロディ化させたものと定義されている[67]。
狂歌とは和歌の一種であり、滑稽で日常卑近の生活などを題材として詠まれることから[68]、替え歌、もじり歌、パロディの要素が狂歌に含まれる[69]:77。特に『万葉集』の戯笑歌、『古今集』の誹諧歌や軍記物語中の落首などが狂歌として知られている[68]。狂歌は一般的に卑俗さが特徴とされるものの、 歌麿の『絵本百千鳥狂歌合はせ』などには文学的に洗練度の高いものも存在する[69]:80。
単なる聞き間違い(空耳)が偶然にも別の意味や文脈を持ち、ユーモアにつながることもある[70]。これはモンデグリーン (mondegreen) とも呼ばれ[71]、1954年が初出と比較的新しい造語である[70][72]。たとえば日本のテレビ番組『タモリ倶楽部』内の一コーナー「空耳アワー」では、外国語の歌詞が日本語で全く異なる意味に聞こえるネタを数多く扱っている。一例を挙げると、"By reaching inside, reaching inside" が「わるいチンゲンサイいいチンゲンサイ」に空耳するといった具合である[73]:19。このようなモンデグリーンを言語学の弁別素性の観点から学術的に解明する研究も行われている[73]:19。
美術パロディ
[編集]17世紀バロック期に活躍したスペイン画家ベラスケスの代表作『ラス・メニーナス』(女官たち) は後世の画家に大きな影響を与え、特にピカソは45点もの翻案を行っており[74]、これらの連作はパロディとみなされている[75][13]:202。また2017年に英国ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ (RA) が発表した「最もパロディ化された芸術作品10選」では、絵画や彫刻などの名作が様々なパターンで繰り返しパロディ化されている様が見て取れる[注 6]。
真面目なパロディ
[編集]ドイツ出身で1929年にノーベル文学賞を受賞[16]したトーマス・マンは、真面目なパロディ作品の創作を通じてユートピア的な世界観を表現したとされる[17]、代表的なパロディ作家の一人である[14][注 7]。長編小説『魔の山』(1924年) には、ゲーテの教養小説『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』(1795年 - 1796年) をパロディ化した要素が含まれている[17]。『ファウストゥス博士』(1947年) では、小説の登場人物を介してパロディとは何であるかを語らせているが、必ずしも「滑稽な」模倣に限定されるものではないとしている[78]。また『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』(1954年) も複数の作品を下敷きにしたパロディとみなされているが、これらマンの作品は滑稽さと皮肉さが同居しているとの特徴が指摘されている[14]。なお、古代パロディとして挙げられるサチュロス劇のことを「茶番劇」だとマンは語っている[79]。
実演によるパロディ
[編集]映像外部リンク | |
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ボールドウィンによるパロディ - 2016年放送分の抜粋クリップ(番組公式YouTubeより) | |
パロディの元ネタとなった2016年大統領選TV討論会 - 2016年9月26日開催・第1回: トランプ対クリントン(討論会を報じたNBC News公式YouTubeより) |
パロディの辞書的な定義には文学や美術といった固定された作品だけでなく、曲や演説といったライブも含まれているように[2]、作品(物)だけでなく人や動物など(生き物)がパロディの題材になることがある。したがって、物まね (音声や形態を他者が声や身ぶりで模倣する行為[80]) の一部もパロディ的な要素が含まれる。
たとえば米国のコメディバラエティTV番組『サタデー・ナイト・ライブ』(SNL)では政治家のパロディコントがシリーズ化しており、特に第45代大統領ドナルド・トランプを揶揄したSNLパロディシリーズは、トランプを演じたアレック・ボールドウィンが第69回プライムタイム・エミー賞助演男優賞 (2017年発表) を受賞している[81]。またフランスでは、歌手の物まねがパロディとみなされて法的に許容うるのかが問われた訴訟もある(詳細後述)[82]。
芸術以外のパロディ
[編集]ノーベル賞のパロディと位置付けられ、独創性に富む研究や発明などに贈られるのがイグノーベル賞である。物理学や化学、医学といった自然科学のほか、経済学や平和なども受賞部門に設けている[83]。イグノーベル賞はユーモア科学雑誌『ありそうもない研究年報』が主催している[83]。
ビジネス上のパロディ
[編集]市販される商品がパロディの対象となったこともある。通称「面白い」恋人事件は、北海道・札幌名物の洋菓子「白い恋人」を模して、お笑い芸人を多数擁する吉本興業が大阪名物「面白い恋人」の商品名で売り出したことから、2011年に訴訟へと発展し[84]、メディアからの注目を集めた[85]。当初からパロディとして商品企画されており、パッケージデザインにも共通性が感じ取られることから、商標権および不正競争防止の観点が法的に問われることとなった[84]。
また米国では、ルイ・ヴィトンやスターバックスといった知名度の高い企業の商標を模したパロディが法的に検証された事例もある(詳細後述)。商標法がこれら大企業を過剰に擁護し、結果として中小のパロディ創作者の表現の自由が抑圧されているとの指摘もある[86][87]。
法的取り扱い
[編集]元となった作品の創作者や権利者から許諾を得ずに、第三者がパロディを創作する行為が法的に許容されるかは各国の法律により異なる。後述のとおり、実際に訴訟に発展したケースでは、著作権ないし商標権 (いずれも知的財産権の一部)、あるいは不正競争防止が争点となっている。
パロディを巡る著作権の議論では、著作財産権(著作物を使った複製、翻案、実演などの独占権)だけでなく、著作者人格権の一つである同一性保持権が権利侵害として問われる可能性がある[88]。一般的な著作権法における「翻案」とは、たとえば小説の映画化や文章の要約作成、コンピュータ・プログラムのバージョンアップのほか[89]、音楽の編曲や文章の翻訳などが含まれることから、原著作物を用いた二次的著作物の創作(二次創作)をも包含する[90]。また同一性保持権とは、著作者の思想や感情が反映された著作物を無断で第三者に改変されない権利である[91]。著作権の基本条約であるベルヌ条約(2020年10月時点で世界170か国以上が加盟[注 8])でも、著作者の名誉声望を毀損する行為が禁じられており、著作者の人格が世界的に保護されている[91]。したがって、原著作物の著作者の名を汚すような歪んだ改変こそが醍醐味とも言えるパロディは、翻案権の観点からも同一性保持権の観点からも法的に矛盾を抱えることとなる[94]。ただし、パロディの創作側にも各国の憲法上で表現の自由が保障されていることから、著作権者側の独占的な権利との間で利益バランスが図られることになる[95]。
- 各国の著作権法上でのパロディ規定
つづいて商標権とは、自社・自己の商品やサービスに用いられるマークやネーミングである商標に適用される権利であり、他社・他者と区別することを目的としている[99]。商標権を有する事業者や個人を保護するだけでなく、商品やサービスを購入する消費者が混同して不利益を被らないよう、消費者保護の側面もある[100][注 10]。この「混同」の観点は、商標法だけでなく不正競争防止にも当てはまる国(フランス[102]:23や米国[103]など)がある。
以下、国別に判例を交えて見ていく。
アメリカ合衆国法
[編集]アメリカ合衆国におけるパロディの創作行為は、米国著作権法を収録した合衆国法典第17編の第107条において、フェアユース (公正利用の法理) の抗弁に基づき許容される場合がある[104]。
またランハム法 (Lanham Act あるいは the Trademark Act of 1946) では登録済商標を保護するほか、未登録であっても不正競争防止の観点から商標の希釈化などを抑止する[105]。ランハム法は2006年改正によって、混同のおそれのない場合に限ってパロディ目的などの利用緩和を認めている[106]。訴訟に至った場合は、著作権法と同様に米国では商標法上のフェアユースで被告が抗弁することもある[107][注 11]。
- 通称 プリティ・ウーマン判決
映像外部リンク | |
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Oh, Pretty Woman - 著作者ロイ・オービソンの原曲 (本人公式YouTubeより) | |
Luther Campbell of 2 Live Crew's Historic Supreme Court Parody Case - パロディ作者・被告キャンベルによる "Big Hairy Woman" への変形経緯解説(ケーブルテレビ局VH1公式YouTubeより)[109] |
- 米国著作権法のパロディに関するリーディングケースとしては「キャンベル対エイカフ・ローズ・ミュージック裁判」(1994年の連邦最高裁判決、510 U.S. 569)、通称「プリティ・ウーマン判決」が知られている[104][110][111]。本件では1990年公開映画『プリティ・ウーマン』の主題歌 "Oh, Pretty Woman" (歌手ロイ・オービソン、音楽レーベルはエイカフ=ローズ・ミュージック) を使用して、ヒップホップグループの The 2 Live Crew がパロディ曲を製作し、25万枚のセールスを記録した事件である (被告ルーサー・キャンベルはこのメンバーの一員である)[112]。原曲 "Oh, Pretty Woman" (あぁ、可愛い女性) がパロディでは "Big Hairy Woman" (デカくて毛深い女性) に変形されている[109]。一審はフェアユース認定、二審は否定し、最高裁が再び認定した[113]。パロディとして使用された箇所 (原曲の冒頭部) は有名であり原曲の中核をなすと認定されたものの、パロディはこのような中核を用いることが常であると判断された。そしてフェアユース第1基準の定める「変形的利用」(transformative use、transformativeness) が、同じく第1基準で例示される非営利性に勝り、第4基準の市場代替性を損なうことがないと解されている[114]。
- 著作権法上のフェアユースが否定された判決
- 「ドクター・スース対ペンギン・ブックス裁判」(1997年の第9巡回区連邦控訴裁判所判決) は、元ネタに対する皮肉や悪ふざけといった要素がないことからパロディとみなされず、フェアユースが認められなかった事例として知られている[115][116][117]。被告ペンギン・ブックス社らは "The Cat NOT in the Hat! A Parody by Dr. Juice" のタイトルで書籍を出版したが、これが元フットボール選手O・J・シンプソンによる殺人容疑裁判概要を、ドクター・スースの児童文学『キャット イン ザ ハット』の設定で韻を踏んで物語っていたことから、訴訟に至った[118]。表現性や物語のプロット、キャラクターの特徴などに類似性が認められ、かつフェアユース第1基準に関しても元ネタからの変形が十分でないと判断された[118]。
- ルイ・ヴィトンの「弱い者いじめ」訴訟批判
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MOB商品画像(MOB公式ウェブサイトより) |
- 商標権侵害に対して強気の姿勢をとっているとも言われるフランスの高級ファッションブランド ルイ・ヴィトン社は[119]、過去にパロディ関連訴訟で繰り返し敗訴を喫している[注 12]。たとえば「ルイ・ヴィトン対MOB裁判」(Louis Vuitton Malletier, S.A. v. My Other Bag, Inc.)は、My Other Bag (MOB) 社が自社製トートバッグ上にルイ・ヴィトンなどの有名ブランドバッグのイラストを描いて販売したことから、ルイ・ヴィトンが権利侵害で提訴した事件である。二審の第7巡回区控訴裁の口頭弁論では、担当判事が「これはジョークです。ルイ・ヴィトン社はこのジョークが理解できないのでしょうが、ジョークなんですよ」と嘲笑する場面さえあった[注 13]。また訴訟動機が「弱い者いじめ」(bully)だとも指摘している[87]。一審、二審ともMOB製品はパロディと認められ、ルイ・ヴィトン側は最高裁に上告したものの棄却された[87]。本件ではパロディ創作者側の表現の自由を擁護したと解されている[120]。
- 商標権および不正競争防止が問われた「ばかスタバ」
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Dumb Starbucksの外観写真 - 2014年2月撮影・記事掲載[121] | |
Dumb Starbucks公式FAQ - パロディ店なので合法であると店側は自主回答している[122] |
- 同じく「弱い者いじめ」の法的問題が法学者から指摘されているのが、「ばかスタバ」である[106]。コーヒーショップ大手スターバックスを模したコーヒー店 "DUMB STARBUCKS"[注 14]が2014年2月、ロサンゼルスでオープンしたことから、商標権侵害および希釈化が法的に問われる事態へと発展した[124]。このパロディ店をオープンさせたのはコメディアンのネイサン・フィールダーであり、自身の冠番組『ネイサン・フォー・ユー』(リアリティ・コメディ番組)の宣伝目的とされる[86][注 15]。「ばかスタバ」の店舗外装はスターバックスそっくりであり、ロゴデザインもほぼ同じであった[86][121]。地元保健局が食品提供ライセンス未取得を理由にオープンから3日内にパロディ店を営業停止に処しているが[86][121]、法学者からは後に商標法と表現の自由のバランスを欠いていると批判される事例となった[126]。特に問題となったのが、2006年の商標希釈化改正法(略称: TDRA)である。TDRA成立によってランハム法が改正され、非商用目的、ないし混同のおそれのない表示方法であればパロディなどの目的での商標利用も認めている[106]。しかしながら商用かつ混同のおそれのある「ばかスタバ」にはTDRAの条件が適合しなかった。結果として、スターバックスのような既に認知度の高い商標権者を過度に権利保護しているのではないか、との批判につながった[86]。
欧州連合法
[編集]欧州連合(EU)では、加盟各国の著作権法の水準を揃えることを目的として、各種の著作権指令が出されている。このうちパロディに関しては、2001年可決の情報社会指令 (2001/29/EC) 第5条(3)(k) で著作権侵害の例外としてパロディ目的が挙げられている[8]。しかしながらこの指令の条項を導入 (国内法化) するかはEU加盟各国に委ねられていることから、国によってパロディの法的取り扱い状況は異なる[7]。
著作権侵害を事由とした訴訟は、基本的には各国の裁判所で審理されるが、一部の訴訟は欧州司法裁判所 (CJEU) に意見照会されることがある。以下、各国の法整備の状況と代表的なパロディ判例について述べる。
- 欧州司法裁判所 (CJEU) 判決
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原告ヴァンダースティーンの原画 - 欧州司法裁判所提出資料より[127] |
- パロディ関連ではデックメイン対ヴァンダースティーン裁判 (Deckmyn v Vandersteen, Case: C-201/13, 2014年CJEU判決) が知られている[128]。本件では原著作物の著作権者側の権利と、パロディ利用する側の表現の自由の間でいかにバランスを取るべきかが問われた[129]。
- ベルギーの右派ポピュリズム政党フラームス・ベランフ[注 16]に所属する政治家ヨーハン・デックメインは2011年、新年の祝賀会でカレンダーを参加者に配布したが、この表紙に使われた絵画がヴァンダースティーンの描いた作品に類似しているとして、著作権侵害でデックメインと政党後援会組織がベルギーの裁判所に提訴された。ヴァンダースティーンの作品は元々、コミック本『Suske en Wiske』に登場するキャラクターの一人を表紙に描いたものであり、白色のチュニックをまとって空中からコインをばら撒いている構図である。この表紙絵は "De Wilde Weldoener" (「強制的な恩恵を施す者」の意) と題された[127][128]。一方カレンダーの表紙は、キャラクターがヘント市の市長ダニエル・トゥルモント (左派政党のフラマン系社会党)に差し替えられており、コインを集めようとする周囲の民衆はイスラム教の女性が肌を隠すために被るブルカ (ベール) を身にまとい、有色人種に置き換えられる差別的な内容であった[127][128]。第一審裁判所 (Rechtbank van Eerste Aanleg) は著作権侵害を認めて5,000ユーロの損害賠償を命じたが[注 17]、被告が控訴している。二審の控訴裁(Hof van beroep)もベルギー著作権法で定められたパロディの例外規定の要件を満たさないとして棄却しつつ、CJEUに意見照会を求めた[127]。
- CJEUが挙げたパロディの要件は「パロディ作品を見て原著作物を想起できる必要があると同時に、これら2つの作品は別物だと識別されなければならない」、「ユーモアや嘲笑の要素が必要」であるとした。加えて、必ずしも著作権法上固有の意味を持つ「創作性」(originality)はパロディの場合には求められないとして、原著作物と同じキャラクターを再利用することは法的に問題ないとした。差別的なメッセージを含んでいる点については、ベルギー国内裁判所に判断を委ねた[129]。
フランス法
[編集]4° La parodie, le pastiche et la caricature, compte tenu des lois du genre ;
(日本語訳)著作物が公表された場合には、著作者は、次の各号に掲げることを禁止することはできない。
(4) パロディ、模作及び風刺画。ただし、当該分野のきまりを考慮する。
著作権保護の水準が高く、特に著作者人格権が手厚く尊重されているフランスでは、EU指令でパロディ、カリカチュアおよびパスティーシュの例外規定が追加される以前より、フランス著作権法で個別規定を設けて運用してきた[7]。しかしCJEUの2014年「デックメイン判決」の前後で、パロディの定義や法的保護の要件解釈が異なっている点に注意が必要である。デックメイン判決以前は音楽パロディ、言語著作物のパスティーシュ、人物画のカリカチュアでフランスの裁判所は分類していた。またディックメイン判決でCJEUはユーモアの要素をパロディに求めているが、当判決以前のフランスではユーモアは必須でないとし、逆に原著作者の人格を傷つけるようなパロディであってはならないと定義していた。また「混同」の観点が取り入れられており、パロディの商用利用は問題ないものの、原著作物と市場で競合するような宣伝目的は禁じられていた[7]。
- 漫画『タンタンの冒険』シリーズのパロディに関する判決
- デックメイン判決以前のフランスにおけるパロディのリーディングケースが SAS Arconsil v Moulinsart SA (パリ控訴裁 2011年2月18日判決、no 09/19272) である[7]。2011年に漫画タンタンの冒険シリーズの原作者が、『タンタンチベットをゆく』のパロディ小説『サン・タン絞首台に行く』を海賊版としてパロディ作家ゴルドン・ゾーラを訴えた事件では、パリ控訴院は「主観的要因(ユーモアの意図)」「客観的要因(混同のおそれの有無)」の要件を満たしており、「当該分野の決まり」を守らなかったという証拠が確立していないことから『サン・タン絞首台に行く』はパロディ小説であると認め、少部数で商業的な影響も少ないことから著作者・出版社の権利を不当に侵害していないと決定した[132]。
- 歌手の物まねパロディに関する判決
- また、歌手の物まねが合法的なパロディだと判示された1988年の破毀院(フランス最高裁)判決 (Cour de Cassation, 1st Civil chamber 1, 12 janv. 1988, préc (n. 11)) も存在する。シャンソン歌手シャルル・トレネの『優しきフランス』(Douce France) が、Thierry Le Luronによって物まねされ、『優しいトランス』(忘我の境地の意、Douces Transes)にもじられた。声音も真似ており、トレネがアカデミー・フランセーズ会員選出のために費やした無駄な労力を揶揄した。破毀院は無礼な嘲笑は法的に禁じられておらず、むしろ元ネタから改変されていることから、受け手側が2つの作品を混同するおそれがないとして、著作権侵害の訴えを退けている[133]。
- 2014年CJEU判決に影響を受けたフランスの判決
- デックメイン判決以降では、2015年の破毀院判決(Cour de Cassation, 1st Civil chamber 1, 15 May 2015, 13-27.391)がある。本件はファッション写真家 A Malka(一部伏字)の作品を無断で芸術家 Peter K(一部伏字)が複製したことが問題となった。しかし A Malka の原著作物は過剰広告と過剰消費を象徴していることから、Peter K は自身の作品を通じて A Malka の作品の価値を貶め、見る者たちに問題喚起する目的だと主張した。破毀院はフランス著作権法 第122条の5 (4) だけでなく、EUの情報社会指令 第10条を考慮して A Malka の著作者人格権と、パロディ創作者 Peter K の表現の自由の間でバランスをとる必要性を説き、二審の控訴裁に差し戻した[7]。
イギリス法
[編集]2020年1月31日にEUを正式離脱したイギリスであるが[134]、離脱以前の2014年10月にイギリスは現行著作権法である1988年著作権、意匠及び特許法 (Copyright, Designs and Patents Act 1988、略称: CDPA) を改正し、第30A条でカリカチュア、パロディ、パスティーシュの3点を著作権侵害の例外 (フェアディーリング) に追加したことで、EUの2001年情報社会指令の規定に沿った形となった[7][135]。ただし第30A条の新設以前から、一般的な著作権侵害で提訴された被告がパロディを主張して抗弁するケースは存在していた[7]。
- 楽曲の歌詞パロディに関する判決
- 音楽パロディのリーディングケースとしては、1960年の高等法院女王座部(QB)判決「ジョイ・ミュージック対サンデー・ピクトリアル紙裁判」(Joy Music Ltd v Sunday Pictorial Newspapers [1960] 2QB 60 (QB)) がある[136][137][7]。女王エリザベス2世の夫エディンバラ公爵フィリップの行動を揶揄する内容が週刊新聞『サンデー・ピクトリアル』(現: サンデー・ミラー、タブロイド紙『デイリー・ミラー』の姉妹紙) に掲載されたが、この記事には楽曲 "Rock-a-Billy" の歌詞をもじって "Rock-a-Philip, Rock-a-Philip, Rock-a-Philip, Rock" のフレーズが書かれていた。このケースでのもじりは実質的部分の複製ではないと判定され、著作権侵害の訴えは退けられた[136][137]:412。
- 楽曲のメロディに関する判決
- また、1987年の高等法院大法官部 (Ch) 判決「ウィリアムソン・ミュージック対ピアソン・パートナーシップ裁判」(Williamson Music v Pearson Partnership [1987] FSR 97 (Ch)) では、ミュージカルの楽曲が替え歌としてテレビCMに流された事案である[137]:410[138]。本件では著作権法の重要な法理であるアイディア・表現二分論に則り、原曲からアイディアを得てパロディストが全く別の形で表現したならば、別個の著作物であると判示された。また、著作権侵害に該当しないパロディだと認めるには、作品に批判や評論といった言語要素が必要であるとされた[137]:410。1960年の "Rock-a-Billy" 判決とは異なり、本件でパロディ化されたのは歌詞ではなくメロディであったことから、これらの要件を満たさないとして著作権侵害判定となった[137]:410[138]。
- 商品ラベルに関する判決
- 音楽以外では、1984年の高等法院大法官部判決「シュウェップス対ウェリントン裁判」(Schweppes Ltd v Wellingtons Ltd [1984] FSR 210 (Ch))がある。シュウェップス社は同名の瓶入り炭酸水ブランドを販売しており、商品ラベルの "SCHWEPPES" の綴りが被告ウェリントン社によって "SCHLURPPES" に置き換わって商品販売されたことから、ラベルのデザイン模倣が著作権侵害に当たるかが問われた事件である[137]:412[139]。なお、ウェリントン社製もシュウェップスに似た瓶にラベルが貼られていたが、中身は飲料ではなく炭酸入りのバブルバス(炭酸の入浴剤とソープが合わさった商品)であり、元ネタとパロディでは対象とするビジネス市場が大きく異なる[137]:412。しかしながら市場の競合性は勘案されず、 "Rock-a-Billy" の判決で示された「実質的部分の複製」の論点から著作権侵害の判定となった[139]。
日本法
[編集]歴史的にみると、日本でも江戸時代の狂歌や[19]、戦争中の軍歌の替え歌パロディなど[140]、パロディ創作は古くから行われていた。そして高度経済成長期 (1960年から1973年頃[141]) に入ると著作物の模倣が横行した[142]。その反動で著作者側の権利保護意識が極度に高まったことが、日本でのパロディ創作を困難にした要因であるとの指摘もある[142]。
また商標法についても、日本ではパロディ許容が消極的であり、パロディ商標は出願されても実際には登録却下される事例が多いと言われている[85]。
日本の著作権法上でパロディの取扱規定が存在しない問題は、少なくとも2007年(平成19年)ごろには公的に議論されるようになり[143][144]、引用の要件を定めた第32条にパロディを加える案や、米国のフェアユースに類似する一般規定を設ける案などが検討されたものの、判例数の少ない日本における法改正は困難との見通しも示されている[144]。
2012年 (平成24年) には著作権を管轄する文化庁の下、法制問題小委員会にパロディワーキンググループが設置され[85]、インターネット上で共有される二次創作などを念頭に、パロディ目的の利用緩和に向けた法改正が協議されることとなった[145]。すでに2007年 - 2008年のワーキンググループ調査報告書では、パロディが共有されるプラットフォームとしてYouTubeやニコニコ動画といったサービス名が挙げられており、具体的な法整備の必要性が議論された[144]。しかしながら2020年時点で、パロディに関する著作権法の改正は実現に至っていない。
このような情勢下で、日本の著作権法が唯一寛容なのが、コミックマーケットを代表とする同人誌即売会などで行われる同人誌販売である。あくまで同好者たちの私的な二次創作活動であると捉えられ、漫画やアニメの無許諾模倣が黙認されてきた経緯がある[142]。
漫画業界を例にとると、商業的にパロディ要素が出始めたのは高度経済成長期の 1960年代に入ってからである。1960年代初頭に米国のパロディコミック雑誌『MAD』が日本でも紹介されるようになり、続いて1968年には『漫画アクション』誌にダディ・グース(後の矢作俊彦)のパロディ作品が、同年に『COM』誌上に永井豪のパロディ作品が登場している。部分的なパロディ要素ではなく、作品全体がパロディと呼べる日本の漫画は、これらが初出と考えられている[146]。同時期の1960年代初頭から1970年代初頭には、プロの漫画家を夢見る者たちによる同人誌コミュニティが全国的に広がりを見せた[147]。パロディは元ネタを知らないと楽しめない性質であることから、同人誌のような「内輪受けコミュニティ」とパロディに親和性があったとの分析もある[148]。
しかし内容を問題視した原作者から名誉毀損で訴えられることもあった[149]。また1990年代後半から2000年代にかけては、ときめきメモリアル・アダルトアニメ映画化事件、ポケットモンスター同人誌事件、ドラえもん最終話同人誌問題など、二次創作物が広範に流通するようになったことでの紛争も起きている[150]。
2018年末には環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) 発効に合わせて著作権法が改正されており、著作権侵害が非親告罪化したが、この対象からはコミックマーケットが明示的に除外されることとなった[151]:53[142]。これは原著作物と市場で競合するおそれがないこと[151]:53、また二次創作は「日本の文化創造のゆりかご[142]」とも形容され、非親告罪化の対象に含めることで文化発展の萎縮を招きかねないとの政治的判断に基づく[151]:53。またコミケ経由だけでなく、漫画のパロディをブログに投稿する行為も原著作物からの改変が施されていることから、非親告罪の対象外だと解されている[152]。
2020年5月には、東京オリンピックのエンブレムと、世界的に流行した新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) を掛け合わせたパロディが批判にさらされた。当パロディの作者はイギリス人デザイナーであり、パロディ作品を掲載したのは日本外国特派員協会 (FCCJ) の発行する会報誌である。批判を受け、シリア出身のカルドン・アズハリ (Khaldon Azhari) FCCJ会長[注 18]も日本のパロディ利用緩和を要望する声明を発表し、日本国内外のパロディ法制の温度差が浮き彫りとなった[154]。
日本でのパロディに対する著作権侵害が問われた裁判として以下のような判例がある。
サザエさんのパロディ漫画
[編集]1970年、奥成達が編集長を務めた雑誌『東京25時』9・10月合併号に、片岡義男原案・木崎しょう平作画によるサザエさんのパロディ漫画『サザエさま』が掲載されたが、原作者である長谷川町子の作品を管理する姉妹社から訴えられ、罰金50万円の支払いと謝罪広告の掲載で示談となった[149]。長谷川は飯沢匡との対談の中で、面白いならまだしも作品の出来が悪いことや、内容に悪意を感じたため、名誉を毀損されたと感じ裁判を起こしたとしている[155]。
パロディ・モンタージュ写真事件
[編集]パロディ・モンタージュ写真事件は最高裁まで争われたことで有名である[33][34][35]。山岳写真家・白川義員が雪山をスキー滑走するシュプールを写真に収め、カレンダー写真に採用された。この写真のシュプール上部に巨大なタイヤ (別の広告写真から複写したもの) を配置し、スキーのシュプールが雪山を転げ落ちるタイヤの轍に見えるように合成加工したのが、パロディストを自称するマッド・アマノである[156][157]。
原告・白川側は無断の剽窃であり、かつ白川の製作意図が破壊・侮辱されたとして著作者人格権侵害を主張した。これに対して被告・アマノ側は、自動車公害の批判を目的とした新たな創作物であって剽窃ではないと反論した[157]。二審ではアマノの作品が独立した創作性を有するパロディであると認めた上で、原著作物からの引用であるとして、著作権侵害に当たらないと判示した[156][158]。最高裁は引用の要件として、引用する側とされた側が明確に区分できること、および主従の関係が成り立つことの2点を挙げた。そしてアマノの作品は独立した著作物と識別できるものの、原著作物の本質的な特徴を直接的に感じ取れる内容であることから、著作者人格権 (特に同一性保持権) を侵害していると判定された (昭和55年3月28日判決)[159][34][35][160]。米国のプリティ・ウーマン判決で、元ネタとなった "作品" に対する批評がパロディであるのに対し、元ネタ作品そのものではなく "社会" を批判していれば風刺であると区別されたように[28]、日本のパロディ・モンタージュ写真事件でもアマノは白川の作品を批判・風刺しておらず、単に素材として無断利用したと判断された[159]。この裁判は2度にわたって最高裁から差し戻され、最終的に和解が成立した[33]。この判決を受け、日本ではパロディ表現の自由が法的に狭められたとの見解もある[158]。
作品例
[編集]- パロディ映画#パロディ映画の例
- パロディ音楽
- パロディ広告 - 実在しない商品を対象とした広告。
- パロディ宗教 - 空飛ぶスパゲッティ・モンスター教など。
- パロディ科学
- パロディAV
- アンサイクロペディア - ウィキペディアのパロディサイトである。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 実際に手塚側がディズニーを相手に訴訟を計画するも、断念した経緯がある[20]。
- ^ 用語の初出はドーキンズ著『利己的遺伝子』(1976年)である[41][42]。
- ^ 『蛙鼠合戦』の創作年は断定されていないが、ヘレニズム時代後期が有力説である[57]。
- ^ なお『イーリアス』の作者はホメーロスとするのが通説であるが、ホメーロスは複数の人物であり、また執筆されたのも従前から考えられていた時代よりも1000年ほど前ではないかとの説がある[60]。
- ^ プラウトゥスは古代ギリシャ劇を一部下敷きにして作品を生み出し、ラテン語で綴った古代ローマ喜劇の時代を象徴した人物とされる[63]。
- ^ 10選にランクインしたのはグラント・ウッド作『アメリカン・ゴシック』、レオナルド・ダ・ヴィンチ作『モナ・リザ』、葛飾北斎作「神奈川沖浪裏」(『富嶽三十六景』の1枚)、サンドロ・ボッティチェッリ作『ヴィーナスの誕生』、レオナルド・ダ・ヴィンチ作『最後の晩餐』、ヨハネス・フェルメール作『真珠の耳飾りの少女』、エドヴァルド・ムンク作『叫び』、オーギュスト・ロダン作『考える人』、フィンセント・ファン・ゴッホ作『星月夜』、エドワード・ホッパー作『ナイトホークス』である[76]。
- ^ 当時は1929年からの世界恐慌によってドイツ経済も疲弊し[77]、政治的にもナチスが台頭して国粋主義化 (反ユダヤ感情とドイツ至上主義) が進行した[17]。このような閉塞感の中、マンは1932年にアメリカ合衆国に亡命して[16]、パロディ作品を創作している。
- ^ ベルヌ条約の加盟国数は、1886年の原条約が179か国[92]、1971年の第6回パリ改正版が177か国に上る[93]。
- ^ 2012年3月公表の文化庁委託事業調査報告書上で、イギリスおよびカナダは条文上でパロディが明文化されていない国に分類されているが[96]、その後2014年10月にイギリスは著作権法を改正し、第30A条でカリカチュア、パロディ、パスティーシュの3点を例外として明文化している[7]。また、カナダでは2012年11月に改正立法が成立し、著作権法 第29条 (フェアディーリング) にパロディおよび風刺が追加明記された[97][98]。
- ^ 米国のように商標の保護が不正競争法から発達してきた国もある。ビジネス上の信用を得るために他社・他者の商標を用いることは公正な競争を損ねることからこれを防止する目的があるほか、消費者が商標からその商品・サービスの性格・質を識別できることを商標制度の目的としている[101]。
- ^ 著作権法上のフェアユースは4点の基準で構成されるが、商標法上のフェアユースは2点である。(1)「古典的フェアユース[107]」(classic fair use) あるいは「記述的フェアユース[108]」は、他社(原告)の商標マークを使ったのではなく、自社(被告)自身の商品・サービスそのものを指し示すために商標を使ったとする抗弁である[107]。これに対して (2)「指名的フェアユース」(nominative fair use) は他社 (原告) の商品・サービスを参照するために用いるケースである。競合製品と自社製品を比較した広告や、報道・批評目的、あるいは非商用目的が指名的フェアユースとして一部の判例で認められている[107]。
- ^ 後述の Louis Vuitton Malletier, S.A. v. My Other Bag, Inc.(2014年提訴)以前にも Louis Vuitton Malletier S.A. v. Haute Diggity Dog, LLC, 507 F.3d 252, 258(4th Cir. 2007)で敗訴となっている[107]。また実際に訴訟には至らなかったものの、ペンシルベニア大学が開催した商標法のシンポジウムで、当イベントの告知ポスターにルイ・ヴィトンの商標パロディが掲載されたことを受けて、大学側を提訴すると脅した事例もある[87]。
- ^ 原文は "This is a joke. I understand you don't get the joke. But it's a joke" である[107]。
- ^ 英: Dumb は「ばかな、まぬけな」の意味があり[123]、このパロディ店名はいわば「ばかスタバ」である[121]。
- ^ 『ネイサン・フォー・ユー』は、中小企業経営者に酷い経営助言を行うリアリティ・コメディ番組であり[122]、同番組の第2シーズン第5話は「Dumb Starbucks」と題され、同年7月(閉店から5か月後)にテレビ放送された[125]。
- ^ 欧州司法裁判所の判決文では、フラームス・ベランフは極右政党 (Vlaams Belang, a party of the far right) であると記されている[127]。
- ^ 2つの絵に共通点が多いことから、カレンダーを受け取った一部の人は、カレンダーがコミック本の出版社から贈呈されたものと勘違いしたと証言している[127]。
- ^ アズハリはシリアの都市ホムス出身[153]。
出典
[編集]- ^ Jansson, Niklas (2016年3月18日). “The Flying Spaghetti Monster”. 2020年10月4日閲覧。 “I hereby (18 March 2016) release my FSM paintings into Public Domain.”
- ^ a b “parody”. Cambridge Dictionary. ケンブリッジ大学出版会. 2020年10月4日閲覧。
- ^ “parody”. Merriam-Webster. 2020年10月4日閲覧。
- ^ a b “parody”. Collins English Dictionary – Complete and Unabridged, 12th Edition 2014 (HarperCollins Publishers). The Free Dictonary. 2020年10月4日閲覧。
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- ^ 「同人二次創作と著作権」『著作権・著作隣接権論文集. 第2回』著作権情報センター、1999年、62頁。
- ^ a b c 竹内健太「国際的な制度調和に向けた著作権法改正 : TPP関連法の著作権分野における国会論議」(PDF)『立法と調査』第386号、参議院事務局、2017年3月、49-56頁、CRID 1521136279858359168、ISSN 09151338、NAID 40021194431。
- ^ 村上万純(日本弁理士会・大沼加寿子へのインタビュー) (2019年1月17日). “著作権法改正で何が起きる? コミケ、二次創作の行方は 弁理士がポイントを解説”. ITmedia. 2020年10月29日閲覧。
- ^ “Profile: Khaldon Azhari, Pan Orient News” [経歴: カルドン・アズハリ パンオリエント・ニュース社] (英語). 日本外国特派員協会. 2020年10月29日閲覧。
- ^ 西村奈緒美、荒ちひろ、赤田康和 (2020年5月28日). “五輪のコロナエンブレム、風刺か著作権侵害か 線引きは”. 朝日新聞. 2020年10月29日閲覧。
- ^ 飯沢匡「イイザワ対談 遠近問答:ゲスト マンガ家長谷川町子」『週刊朝日』1970年12月25日号、朝日新聞社、1970年12月25日、48頁。
- ^ a b 伊藤 2013, p. 6.
- ^ a b 時実 2016, pp. 117–118.
- ^ a b 時実 2016, p. 119.
- ^ a b 伊藤 2013, p. 7.
- ^ 作花 2018, pp. 331 (注2), 325.
参考文献
[編集]- 飯塚邦彦「二次創作する読者の系譜 : 「おたく系雑誌」における二次創作の背景を探る」『成蹊人文研究』第23号、成蹊大学大学院文学研究科、2015年3月、63-90頁、CRID 1390854717679892224、ISSN 0919-1488、NAID 120005598075。
- 伊藤真「具体的事例から見る日本におけるパロディ問題」『パテント』第66巻第6号、日本弁理士会、2013年4月、4-17頁、CRID 1523106605129439872、ISSN 02874954。「国立国会図書館デジタルコレクション(電子書籍・電子雑誌)」
- 作花文雄『詳解 著作権法』(第5版)ぎょうせい、2018年。ISBN 978-4-324-10427-9 。
- 下程息『『ファウストゥス博士』研究 : ドイツ市民文化の「神々の黄昏」とトーマス・マン』(増補版)〈博士論文 乙第210号〉、1997年。 NAID 500000141425 。
- 白鳥綱重『アメリカ著作権法入門』信山社、2004年。ISBN 978-4-535-51678-6 。
- 時実象一 (INFOSTA会長、東京大学非常勤講師)『コピペと捏造』一般社団法人 情報科学技術協会 (INFOSTA) 監修、樹村房、2016年11月7日。ISBN 9784883672707 。
- 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会 パロディワーキングチーム『パロディワーキングチーム 報告書』(レポート)文化庁、2013年3月 。
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング『海外における著作物のパロディの取扱いに関する調査研究 報告書 (平成 23 年度文化庁委託事業)』(レポート)文化庁、2012年3月 。
- 山本隆司『アメリカ著作権法の基礎知識』(第2版)太田出版、2008年。ISBN 978-4-7783-1112-4 。
- Dentith, Simon (レディング大学教授) (2000). Parody. Routledge. ISBN 978-0-415-18221-8
- Kemp, Deborah J.; Forsythe, Lynn M.; Jones, Ida M. (2015). “Parody in Trademark Law: Dumb Starbucks Makes Trademark Law Look Dumb”. The John Marshall Review of Intellectual Property Law (イリノイ大学シカゴ校ロースクール) 14 (143): 143–198 .
- Hutcheon, Linda (2000). A Theory of Parody: The Teachings of Twentieth-century Art Forms (reprinted from the 1985 edition ed.). University of Illinois Press. ISBN 978-0-252-06938-3
- Lelièvre, F. J. (1954). “The Basis of Ancient Parody”. Greece & Rome (The Classical Association(ケンブリッジ大学出版会経由の発行)) 1 (2): 66–81 .
- Mendis, Dinusha(ボーンマス大学知的財産政策管理研究所共同所長); Kretschmer, Martin(グラスゴー大学知的財産法教授) (2013). The Treatment of Parodies under Copyright Law in Seven Jurisdictions | A Comparative Review of the Underlying Principles [7か国の著作権法に基づくパロディの取扱 | 原理原則の比較衡量] (PDF) (Report). イギリス知的財産庁(委託調査). ISBN 978-1-908908-49-0。
関連文献
[編集]本項の解説の出典として直接用いていないものの、一層の理解を深めるのに寄与する文献。
- 法律とパロディの関係
- 福井健策「第四章 既存作品を自由に利用できる場合 | 3 パロディとアプロプリエーションの地平を探る」『著作権とは何か ― 文化と創造のゆくえ』集英社〈集英社新書〉、2005年5月17日、140-176頁。ISBN 4-08-720294-1 。
- 千野直邦、尾中普子「第2章 著作物 | 6 写真の著作物」『著作権法の解説』(六訂版 第1刷)一橋出版、2005年11月10日、15-18頁。ISBN 4-8348-3620-7。
- 佐藤薫 (1990). “著作権法第20条第2項第4号の解釈と表現の自由権――パロディを中心として――”. 著作権研究 (著作権法学会(有斐閣経由の発行)) 17: 111-144 .
- パロディ作品紹介
- “70年代の「パロディ」扱う企画展、赤瀬川原平や長谷邦夫のマンガ原稿も”. コミックナタリー (2017年1月11日). 2017年1月16日閲覧。