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「羽生世代」の版間の差分

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2020年7月16日 (木) 23:03時点における版

羽生世代(はぶせだい)は、羽生善治と年齢が近い強豪将棋棋士を指す呼称。

概要

羽生善治は、1990年代から2010年代にかけて、多数のタイトルを獲得した棋士であるが、同時代に活躍したトップ棋士たちの中には羽生と年齢が近い者が非常に多かった。そこで、これらの強豪棋士たちの総称として羽生世代という言葉が使われるようになった。もっとも、羽生世代という言葉は「羽生と年齢が近い強豪棋士」を漠然と指しており、具体的に誰が含まれるのかについてはメディアによってまちまちであり、明確な定義は存在しない

羽生と年齢が近いという点に関して

「世代」という言葉は、30年程度の広い範囲を指すのが本来の用法であるが、「羽生世代」といった場合には、もっと狭い範囲を指すのが通常である。

一般的には、

  • 羽生と同学年の棋士のみを羽生世代と呼ぶ用法
  • 羽生と同学年または1学年上の棋士を羽生世代と呼ぶ用法
  • 羽生と同学年または1学年違いの棋士を羽生世代と呼ぶ用法

の3つがある。

このうち、同学年または1学年上とするものは、1学年上は含めるが1学年下は含めないという少々恣意的な基準であるが、1学年上の代表的な棋士である村山や佐藤が当初からチャイルドブランド(後述)という言葉で羽生と同じ括りで注目されていたのに対して、1学年下の代表的な棋士である屋敷や深浦がチャイルドブランドの棋士たちに続いて活躍をし始めたためという事情によるものであり、広く用いられている[注釈 1]

強豪棋士という点に関して

羽生と年齢が近い棋士のうち、どの程度の実績を残したものを羽生世代とするかについてもさまざまな見解がある。

一般的には、

  • タイトル経験者のみを羽生世代と呼ぶ用法
  • 順位戦A級経験者を羽生世代と呼ぶ用法
  • 実績を問わず同世代の棋士すべてを羽生世代と呼ぶ用法

などがある。

「羽生世代」の棋士たち

ここでは、羽生世代と呼ばれることのある棋士を広く紹介するという趣旨から、順位戦A級を経験した羽生と同学年または1学年上の棋士を列記し、併せて括弧付きで1学年下の棋士を列記する。

(生年月日順)

棋士名 生年月日 プロ入り
(四段昇段)
九段昇段 初タイトル 全棋士参加
棋戦初優勝
竜王戦1組
初昇級[注釈 2]
順位戦A級
初昇級
その後
村山聖 (1969-06-15) 1969年6月15日(29歳没) 1986年11月 1998年8月[注釈 3] - 1996年度
早指し選手権[注釈 4]
1994年 1995年 1998年にA級在位のまま逝去
佐藤康光 (1969-10-01) 1969年10月1日(55歳) 1987年 3月 1998年6月 1993年度
竜王
同左 1992年 1996年 名人2期(1998年0- 1999年)

永世棋聖の資格獲得(2006年)

先崎学 (1970-06-22) 1970年6月22日(54歳) 1987年10月 2014年4月 - 1990年度
NHK杯
1995年 2000年
丸山忠久 (1970-09-05) 1970年9月5日(54歳) 1990年 4月 2000年6月 2000年度
名人
1998年度
全日本プロ
1998年 1998年 名人2期(2000年0- 2001年)
羽生善治 (1970-09-27) 1970年9月27日(54歳) 1985年12月[注釈 5] 1994年4月 1989年度
竜王
1987年度
天王戦
1989年 1993年 永世棋王の資格獲得(1995年) -
十九世名人の資格獲得(2008年) -
永世竜王の資格獲得
「永世七冠」達成(2017年)
藤井猛[注釈 6] (1970-09-29) 1970年9月29日(54歳) 1991年 4月 2000年10月 1998年度
竜王
同左 1998年 2001年 竜王戦史上初の3連覇
(1998 - 2000年)
森内俊之 (1970-10-10) 1970年10月10日(54歳) 1987年 5月 2002年5月 2002年度
名人
1988年度
全日本プロ
1996年 1995年 十八世名人の資格獲得(2007年)
郷田真隆 (1971-03-17) 1971年3月17日(53歳) 1990年 4月 2001年8月 1992年度
王位[注釈 7]
同左 1999年 1999年 タイトル6期(1992年度王位を含む)
屋敷伸之 (1972-01-18) 1972年1月18日(52歳) 1988年10月 2004年4月 1990年度
棋聖[注釈 8]
同左 1997年 2011年 タイトル3期(1990年度棋聖を含む)
深浦康市 (1972-02-14) 1972年2月14日(52歳) 1991年10月 2008年9月 2007年度
王位
1992年度
全日本プロ
2007年 2004年 タイトル3期(2007年度王位を含む)

便宜上、ここでは村山・佐藤・先崎・丸山・羽生・藤井・森内・郷田の8名を羽生世代として、以下この8名について記載する。

歴史

「チャイルドブランド」の台頭

後に「羽生世代」と呼ばれる棋士達のうち、10代から目覚ましい活躍をした羽生・村山・佐藤・森内の4人は、島朗によって「チャイルドブランド」[2]と命名された(年上の森下卓1966年7月10日- )も広義でチャイルドブランドの一人とされた[要出典])。「アンファン・テリブル[注釈 9]と呼ばれることもあった[要出典]。4人のうち羽生・佐藤・森内の3人は、島が主宰する研究会「島研」で腕を磨いたメンバーであった。

1980年代後半、彼らは先輩棋士達を打ち負かしていく。1988年度のNHK杯戦では、18歳の羽生が4人の名人経験者(大山康晴十五世名人、加藤一二三九段[注釈 10]谷川浩司名人(準決勝)、中原誠棋聖・王座(決勝))を破って[注釈 11]優勝したことで、注目を集めるようになる。

「羽生世代」の台頭

1990年ごろからは、森内と先崎が全棋士参加棋戦で優勝。さらには、郷田が同一年度に谷川に3度タイトル挑戦し、うち、王位戦で最低段位記録となる四段で[注釈 7]初タイトル。佐藤は七冠へ駆け上がる途中の羽生(当時五冠)からいったん竜王位を奪い、初のタイトル獲得を果たす。羽生を含む彼ら5名は早熟のため、A級昇級よりも優勝・タイトルが先行した。その後、村山と丸山も順位戦で昇級を重ねるなどして追随する。

藤井は、B級2組(竜王戦は4組)に在籍していた1998年当時に、谷川をストレートで破って初タイトル・竜王を獲得し、一躍「羽生世代の一人」として認知されるようになる。

丸山は2000年に佐藤を破って名人位を獲得する。

「羽生世代」による将棋界の席巻

1990年頃から現在に至るまで、タイトル棋戦やA級順位戦は、常に「羽生世代」の棋士達が主役となっており、各年度の7タイトルの過半数を占める状態が長らく続く(将棋のタイトル在位者一覧 を参照)。その結果、タイトル獲得数3期以上(九段昇段の基準の一つ)の者が6人、永世称号を持つ者が3人(羽生、佐藤、森内 = 2011年現在)もいる[注釈 12]という、特異な世代となっている。

名人戦では、1994年から2016年まで毎年、彼らのうちの誰かが七番勝負に登場している。羽生対森内のカードが特筆して多く、名人戦で9回(第54、61-63、66、69-72期)対戦しており、大山康晴-升田幸三と並び名人戦の中で1番多いカードとなっている。

竜王戦は創設翌年の第2期に羽生が獲得して以来、「羽生世代」の棋士が七番勝負に登場しなかったことが、ほとんどない。1998年までは谷川浩二が竜王戦の七番勝負に絡んでいた。第17期(2004年度)で渡辺明が竜王を獲得して以降、05年に木村一基七段(当時)が挑戦した以外は、羽生世代の誰かが渡辺に挑戦する構図となっている。第26期(2013年度)で森内が竜王を奪還、渡辺の竜王10連覇を阻止した。

2004年までは彼らより上の世代の谷川が、羽生世代を相手に孤軍奮闘した。しかし、2004年に王位、棋王を羽生に奪われて以降、無冠の状態が続いている。

彼らが30代になると、逆に、若手の前に立ち塞がる壁となる。しかし、下の世代では、2004年からは彼らより一回り以上若い渡辺が、佐藤、森内、羽生らを相手にして竜王の一冠を5連覇し、初代永世竜王の資格を獲得した。

2006年には、佐藤が棋聖5連覇で永世棋聖の称号の資格を得、2007年には、森内が名人通算5期で羽生より一歩先に永世名人の資格を得る。

2007年頃からは、渡辺に加え、深浦康市久保利明、木村一基もタイトル戦の舞台に多く出場するようになった。1998年度の佐藤の名人奪取以来ずっと羽生世代の複数人がタイトル保持者だったが、2008年度棋王戦で佐藤から久保が棋王を奪取したことでタイトル保持者が羽生四冠(名人・棋聖・王座・王将)・渡辺竜王・深浦王位・久保棋王の四人となりついにそれが崩れた。そして2009年度王将戦では久保が羽生から王将を奪取し、タイトルの過半数を羽生世代以外の棋士が占めることになった。

2011年度に入り、羽生二冠(棋聖・王座)が広瀬章人から王位を奪取。渡辺が羽生から王座を奪うものの、久保の持つ王将・棋王の座を、それぞれ佐藤康光と郷田真隆が奪還し、2年ぶりに羽生世代がタイトルを席巻した。(渡辺:竜王・王座、森内:名人、羽生:棋聖・王位、佐藤:王将、郷田:棋王

2012年度に入っても羽生と森内による名人戦(森内の防衛)、羽生の棋聖防衛、羽生と藤井の王位戦(羽生の防衛)、羽生の渡辺からの王座奪還、丸山による2年連続渡辺竜王への挑戦と、タイトル戦で羽生世代が席巻している状態が続いている。

2013年から2015年までもタイトル戦は「羽生世代対他の世代」「羽生世代対羽生世代」の構図となっており、該当しなかったのは2013年の棋王戦のみである(棋王渡辺明対挑戦者三浦弘行)。

2013年度に谷川浩司が順位戦A級から陥落したことで、A級最年長が佐藤康光となる。

2014年には羽生世代でただひとり八段でとどまっていた先崎が勝数規定で九段に昇段し、羽生世代のすべての棋士が順位戦A級を経験した九段昇段者となった(早世した村山も没後追贈ではあるが九段に昇段しているため該当)。

新世代の台頭

2016年度に入ってから、徐々に世代交代の動きが始まった。まず名人戦では佐藤天彦が羽生を破り、16年ぶりの20代新名人となった。さらに同年度の順位戦では、稲葉陽が1位となり名人への挑戦権を得て、翌年の名人戦が21年ぶりの20代対決となる一方で、森内がB級1組に陥落し、直後にフリークラス宣言を行った。

2017年度には、前年の2016年に14歳2か月でプロ入り・62年ぶりに最年少棋士の記録を更新した藤井聡太がデビューから無敗連勝を続けて歴代記録まで更新する29連勝を達成し、また中学校在学中の棋士としては史上初となる全棋士参加棋戦(朝日杯将棋オープン戦)優勝を成し遂げた。さらに菅井竜也平成生まれでは初めてとなる王位のタイトルを獲得、続いて中村太地が王座を獲得し、若手の台頭がより注目された。一方、菅井と中村にタイトルを奪われた羽生は、渡辺明から竜王のタイトルを奪還して永世竜王の資格を獲得し、永世称号の「七冠」を達成した。

2018年度に入り、高見泰地がタイトルに昇格した叡王を、続いて豊島将之が棋聖を獲得したことで、31年ぶりに複数冠者がいなくなった。

そして2016年度末に郷田が王将を失冠して以降、羽生のみがかろうじてタイトルを保持していたが、2018年12月に羽生が最後まで保持していた竜王を失冠して27年ぶりに無冠となり、ついに羽生世代のタイトル保持者がひとりもいなくなった。一方、この年のNHK杯戦ではベスト4を羽生世代(丸山、羽生、森内、郷田)が独占し、健在ぶりを示してもいる。

2019年度は、竜王戦で第1期から続いていた羽生世代の決勝トーナメント進出が途絶え、タイトル戦の番勝負出場も、羽生が王位戦挑戦者決定戦で木村一基に敗れる等で31年ぶりに途絶えた。一方、挑戦者決定戦で羽生に勝利して王位戦挑戦者となった木村一基は、豊島将之から王位のタイトルを奪取し、46歳タイトル挑戦7度目で悲願の初タイトル獲得となった。

なお、2019年度時点で順位戦A級に残留している羽生世代は、羽生と佐藤康光だけとなっている。

羽生世代のタイトル戦の成績

  •  † :タイトル獲得
  •  ‡ :タイトル獲得・永世位獲得
  • 無印:挑戦失敗または失冠
開催
年度
名人戦
4-6月
  棋聖戦
6-7月
12-2月
王位戦
7-9月
王座戦
9-10月
竜王戦
10-12月
王将戦
1-3月
棋王戦
2-3月
名人 棋聖 王位 王座 竜王 王将 棋王
1989 第47期
 
  第54期
第30期
 
第37期
 
第2期
羽生善治
第39期
 
第15期
 
 
1990     羽生善治 羽生善治†
 
1991     羽生善治†
 
1992   郷田真隆 郷田真隆 羽生善治† 羽生善治† 村山聖 羽生善治†
郷田真隆
1993   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 佐藤康光 羽生善治†
羽生善治†
1994 羽生善治†   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 羽生善治 羽生善治‡
羽生善治†
開催
年度
名人戦
4-6月
  棋聖戦
6-7月
王位戦
7-9月
王座戦
9-10月
竜王戦
10-12月
王将戦
1-3月
棋王戦
2-3月
名人   棋聖 王位 王座 竜王 王将 棋王
1995 第53期
羽生善治†
  第66期
羽生善治‡
第36期
羽生善治†
第43期
羽生善治†
第8期
羽生善治†
第45期
羽生善治†
第21期
羽生善治†
1996 羽生善治†   羽生善治 羽生善治† 羽生善治‡ 羽生善治 羽生善治† 羽生善治†
1997 羽生善治   羽生善治‡ 羽生善治† 羽生善治† 羽生善治†
1998 佐藤康光†   郷田真隆† 羽生善治† 羽生善治† 藤井猛 羽生善治† 羽生善治†
1999 佐藤康光†   郷田真隆 羽生善治† 羽生善治† 藤井猛† 羽生善治† 羽生善治†
2000 丸山忠久   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 藤井猛† 羽生善治† 羽生善治†
2001 丸山忠久†   郷田真隆† 羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 佐藤康光† 羽生善治†
2002 森内俊之   佐藤康光† 羽生善治 羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 丸山忠久†
2003 羽生善治†   佐藤康光† 羽生善治 羽生善治† 森内俊之† 森内俊之† 丸山忠久
2004 森内俊之†   佐藤康光† 羽生善治† 羽生善治† 森内俊之 羽生善治† 羽生善治†
2005 森内俊之†   佐藤康光† 羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 森内俊之†
2006 森内俊之†   佐藤康光‡ 羽生善治† 羽生善治† 佐藤康光 羽生善治‡ 佐藤康光†
2007 森内俊之‡   佐藤康光† 羽生善治 羽生善治† 佐藤康光 羽生善治† 佐藤康光†
2008 羽生善治‡   羽生善治† 羽生善治 羽生善治† 羽生善治 羽生善治† 佐藤康光
2009 羽生善治†   羽生善治† 羽生善治† 森内俊之 羽生善治 佐藤康光
2010 羽生善治†   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治
2011 森内俊之†   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治 丸山忠久 佐藤康光† 郷田真隆†
2012 森内俊之†   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 丸山忠久 佐藤康光 郷田真隆
2013 森内俊之†   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 森内俊之† 佐藤康光
2014 羽生善治†   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 森内俊之 郷田真隆† 羽生善治
2015 羽生善治†   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 郷田真隆†
2016 羽生善治   羽生善治† 羽生善治† 羽生善治† 丸山忠久
[注釈 13]
郷田真隆
2017     羽生善治† 羽生善治 羽生善治 羽生善治‡    
開催
年度
名人戦
4-6月
叡王戦
4-5月
棋聖戦
6-7月
王位戦
7-9月
王座戦
9-10月
竜王戦
10-12月
王将戦
1-3月
棋王戦
2-3月
2018 第76期
羽生善治
第3期
 
第89期
羽生善治
第59期
 
第66期
 
第31期
羽生善治 
第68期
 
第44期
 
2019                
年度 名人 叡王 棋聖 王位 王座 竜王 王将 棋王

羽生世代に近い世代の棋士

羽生(1970年度生まれ)と10歳差以内の順位戦A級経験者・タイトル獲得者・タイトル挑戦者・全棋士参加棋戦優勝者を生年度別に一覧にすると以下のようになる。

このうち、高橋道雄や島朗ら羽生世代のすぐ上の世代にあたる強豪棋士たちは、プロ入り年度が昭和55年に集中しており、55年組と呼ばれる(なお、谷川浩司のプロ入りは昭和55年ではないが、55年組の棋士らと同世代である)。

一方、久保利明らを中心とする羽生世代のすぐ下の世代については、ポスト羽生世代と呼ばれる。もっとも、ポスト羽生世代については、羽生世代と同様、明確な定義があるわけではない。特に1971年度生まれ(羽生より1学年下)の屋敷と深浦については羽生世代として紹介されることもあれば、ポスト羽生世代として紹介されることもある。なお、深浦は「自分を羽生世代とは認識していない」と述べている一方で、渡辺明は深浦を羽生世代の一人として扱っている。

久保利明より下の世代(1976年 - 1980年生まれ、44歳~48歳)の棋士からは、現在のところA級棋士・タイトル挑戦者・全棋士参加棋戦優勝者が現れていない[注釈 14]。その世代の伸び悩みがしばしば指摘されるが、そのひとつの要因として、羽生世代・ポスト羽生世代の層の厚さを挙げられることがある。

世代交代

羽生世代は他の世代を圧倒して長らく将棋界を牽引してきたが、前述のとおり、2016年度以降、羽生よりも10歳以上年下にあたる1981年度生まれ以降(43歳以下)の棋士の中から、羽生世代からタイトルを奪うような強豪棋士たちが多数現れており、2018年末に羽生がタイトルをすべて失ったことで羽生世代からの世代交代が概ね果たされる形となった。羽生世代とは無関係であるが、これらの世代のタイトル挑戦者、A級経験者、全棋士参加棋戦優勝者を列挙する。

羽生世代以外のタイトル戦成績

  •  † :タイトル獲得
  •  ‡ :タイトル獲得・永世位獲得
  • 無印:挑戦失敗または失冠
開催
年度
名人戦
4-6月
  棋聖戦
6-7月
12-2月
王位戦
7-9月
王座戦
9-10月
竜王戦
10-12月
王将戦
1-3月
棋王戦
2-3月
名人   棋聖 王位 王座 竜王 王将 棋王
1989 第47期
谷川浩司
  第54期
中原誠
第30期
谷川浩司†
第37期
中原誠†
第2期
島朗
第39期
米長邦雄
第15期
南芳一
中原誠†
1990 中原誠†   屋敷伸之 谷川浩司† 谷川浩司† 谷川浩司† 南芳一† 南芳一
屋敷伸之†
1991 中原誠†   南芳一† 谷川浩司† 福崎文吾 谷川浩司† 谷川浩司† 南芳一
谷川浩司†
1992 中原誠†   谷川浩司† 谷川浩司 福崎文吾 谷川浩司 谷川浩司† 谷川浩司
谷川浩司†
1993 米長邦雄†   谷川浩司 谷川浩司 谷川浩司† 南芳一
谷川浩司
1994 米長邦雄   谷川浩司 谷川浩司 谷川浩司† 森下卓
島朗
開催
年度
名人戦
4-6月
  棋聖戦
6-7月
王位戦
7-9月
王座戦
9-10月
竜王戦
10-12月
王将戦
1-3月
棋王戦
2-3月
名人   棋聖 王位 王座 竜王 王将 棋王
1995 第53期
森下卓
  第66期
三浦弘行
第36期
 
第43期
森雞二
第8期
 
第45期
谷川浩司
第21期
高橋道雄
1996   三浦弘行† 深浦康市 島朗 谷川浩司† 谷川浩司 森下卓
1997 谷川浩司‡   屋敷伸之 島朗 谷川浩司†
1998 谷川浩司   屋敷伸之 谷川浩司 谷川浩司 森下卓
1999 谷川浩司   谷川浩司† 谷川浩司 鈴木大介
2000   谷川浩司 谷川浩司 谷川浩司 久保利明
2001 谷川浩司   屋敷伸之 久保利明
2002   谷川浩司† 阿部隆
2003   谷川浩司† 渡辺明 谷川浩司†
2004   谷川浩司 渡辺明† 谷川浩司
2005   渡辺明†
2006 谷川浩司   鈴木大介 渡辺明†
2007   渡辺明 深浦康市† 久保利明 渡辺明† 久保利明
2008   深浦康市† 木村一基 渡辺明‡ 深浦康市 久保利明†
2009   木村一基 深浦康市† 山崎隆之 渡辺明† 久保利明† 久保利明†
2010 三浦弘行   深浦康市 広瀬章人 渡辺明† 久保利明† 久保利明†
2011   深浦康市 広瀬章人 渡辺明† 渡辺明† 久保利明 久保利明
2012   中村太地 渡辺明 渡辺明† 渡辺明† 渡辺明†
2013   渡辺明 行方尚史 中村太地 渡辺明 渡辺明† 渡辺明†
2014   木村一基 豊島将之 糸谷哲郎 渡辺明 渡辺明†
2015 行方尚史   豊島将之 広瀬章人 佐藤天彦 渡辺明† 渡辺明†
2016 佐藤天彦†   永瀬拓矢 木村一基 糸谷哲郎 渡辺明† 久保利明† 渡辺明‡
2017 佐藤天彦†   斎藤慎太郎 菅井竜也 中村太地† 渡辺明 久保利明† 渡辺明†
開催
年度
名人戦
4-6月
叡王戦
4-5月
棋聖戦
6-7月
王位戦
7-9月
王座戦
9-10月
竜王戦
10-12月
王将戦
1-3月
棋王戦
2-3月
2018 第76期
佐藤天彦†
第3期
高見泰地
第89期
豊島将之†
第59期
豊島将之†
第66期
斎藤慎太郎†
第31期
広瀬章人†
第68期
渡辺明†
第44期
渡辺明†
2019 豊島将之† 永瀬拓矢† 渡辺明† 木村一基† 永瀬拓矢† 豊島将之† 渡辺明† 渡辺明†
年度 名人 叡王 棋聖 王位 王座 竜王 王将 棋王

女流三強

羽生世代に年齢の近い女流棋士林葉直子中井広恵清水市代は「女流三強」と呼ばれた。このうち、中井は羽生の1学年上(村山や佐藤と同学年)にあたり、羽生世代の女流棋士と呼ばれることがある(なお、林葉と清水は羽生世代よりも年上である)

脚注

注釈

  1. ^ この点はメディアによって扱いが異なり、例えばスポーツニッポンでは深浦を羽生世代の棋士として紹介している[1]
  2. ^ 羽生は第1期竜王戦で4組からのスタート。ほかの棋士は、プロ入り後、6組からのスタート。
  3. ^ 現役八段で逝去したことにともなう追贈の昇段。
  4. ^ 「早指し将棋選手権」には「早指し新鋭戦」の優勝者・準優勝者も出場できるので、ここでは全棋士参加棋戦扱いとした。
  5. ^ 加藤一二三谷川浩司に次ぐ、史上3人目の中学生棋士。
  6. ^ 藤井は竜王位獲得の頃から「羽生世代」と呼ばれ始めた。
  7. ^ a b 郷田の初王位が四段でタイトルを獲得した唯一の例。その後、昇段規定が改訂され、四段の棋士はタイトル挑戦で五段(竜王戦挑戦の場合は七段)へ昇段することになったため、四段のタイトル保持者は郷田が最初で最後となった。
  8. ^ 羽生の19歳竜王獲得の年少記録を更新する史上最年少18歳のタイトル獲得。
  9. ^ 「恐るべき子供達」の意のフランス語 enfant terrible より。
  10. ^ このときの羽生-加藤戦で、「伝説の▲5二銀」と呼ばれる妙手が出る。
  11. ^ 谷川浩司は「(対戦相手は抽選で決まるから)羽生が持って生まれた運」と表現している(別冊宝島380「将棋王手飛車読本」pp.16)。
  12. ^ なお、将棋のタイトル制開始以降、2016年までに永世称号を獲得したのは10人しかいない。
  13. ^ 挑戦者決定三番勝負の勝者は三浦弘行であったが、三番勝負敗者の丸山が繰り上げで挑戦者になった。詳しい経緯は将棋ソフト不正使用疑惑騒動を参照のこと。
  14. ^ 1980年度生まれであれば山崎隆之が存在する。順位戦では松尾歩がB級1組に在籍しているのが最高である。

出典

  1. ^ 紅潮維持【我満晴朗のこう見えても新人類】”. スポーツニッポン (2018年6月3日). 2019年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年3月17日閲覧。
  2. ^ 田中寅彦「将棋界の超新人類 これがチャイルドブランドだ!」(池田書店)

参考文献

関連項目

外部リンク