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「Debian」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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| name = Debian
| name = Debian
| logo = [[ファイル:Debian-OpenLogo.svg|80px]]
| logo = [[ファイル:Debian-OpenLogo.svg|80px]]
| screenshot = [[File:Debia10-buster-cinnamon-ja.png|Debian 10 (buster) Cinnamon デスクトップ|300px]]
| screenshot = File:Debian10_Gnome.png
| screenshot_alt = Screenshot of Debian 10 (buster) with the GNOME desktop environment
| caption = Debian 10 buster([[Cinnamon]]デスクトップ)
| caption = Debian 10 (buster) with the GNOME desktop environment
| developer = Debian Project
| developer = Debian Project
| family = [[Unix系]],[[Linux]]
| family = [[Unix系]],[[Linux]]
24行目: 25行目:
| website = [https://www.debian.org/ www.debian.org]
| website = [https://www.debian.org/ www.debian.org]
}}
}}
[[File:Debian-kde.png|thumb|300px|Debian wheezy/ KDE4.8 Plasmaデスクトップ]]
[[File:Debian-wheezy-xfce-ja.png|thumb|300px|Debian wheezy/ Xfce4.8デスクトップ]]
'''Debian'''({{pron|ˈdɛbiən}} '''デビアン''')または'''Debian Project'''は[[Linuxディストリビューション]]のひとつである'''Debian GNU/Linux'''を中心とする[[Unix系]]システムのディストリビューションを作成しているプロジェクトである。名前の通り、[[GNUプロジェクト]]の精神の尊重と(そのため、一般には単に「[[Linux]]」とされることが多いような場合にも、「[[GNU/Linuxシステム]]」という呼称を積極的に使っている)、同プロジェクトによるプロダクトの積極的な採用などが特徴である。Linuxディストリビューションの他、カーネルを[[Linuxカーネル]]から[[GNU Hurd]]や[[FreeBSD]]のカーネルに置き換えた、[[Debian GNU/Hurd]]や[[Debian GNU/kFreeBSD]]などがある。
'''Debian'''({{pron|ˈdɛbiən}} '''デビアン''')または'''Debian Project'''は[[Linuxディストリビューション]]のひとつである'''Debian GNU/Linux'''を中心とする[[Unix系]]システムのディストリビューションを作成しているプロジェクトである。名前の通り、[[GNUプロジェクト]]の精神の尊重と(そのため、一般には単に「[[Linux]]」とされることが多いような場合にも、「[[GNU/Linuxシステム]]」という呼称を積極的に使っている)、同プロジェクトによるプロダクトの積極的な採用などが特徴である。Linuxディストリビューションの他、カーネルを[[Linuxカーネル]]から[[GNU Hurd]]や[[FreeBSD]]のカーネルに置き換えた、[[Debian GNU/Hurd]]や[[Debian GNU/kFreeBSD]]などがある。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[Linuxカーネル]]、必須なユーティリティ類のutil-linux([[:en:Util-linux]])、プログラムのビルドに必要な[[GNUコンパイラコレクション|GCC]]や[[GNU Binutils]]、[[GNU Core Utilities|coreutils]]などのその他の[[Unix系]]ユーティリティをはじめ、その他[[デスクトップ環境]]向けや[[サーバ]]運用向けなど多数の、計51,000以上のパッケージを提供している<ref name="stretch-release-news" />。ターゲットアーキテクチャとして現在10の[[コンピュータ・アーキテクチャ|アーキテクチャ]]向けにリリースされており<ref name="stretch-release-news" />、[[インテル]]や[[アドバンスト・マイクロ・デバイセズ|AMD]]の[[32ビット]]・[[64ビット]][[プロセッサ]]、組み込み機器で使われる[[ARMアーキテクチャ]]などがそれには含まれている。低水準のパッケージ管理システムは[[dpkg]]、高水準のパッケージ管理システムは[[APT]]である。[[デスクトップ環境]]は各種のものがパッケージにあるが、Debian 8ではインストール時に選べるのは[[GNOME]]、[[Xfce]]、[[KDE]]、[[Cinnamon]]、[[MATE (デスクトップ環境)|MATE]]、[[LXDE]]、[[LXQt]]である。
[[Linuxカーネル]]、必須なユーティリティ類のutil-linux([[:en:Util-linux]])、プログラムのビルドに必要な[[GNUコンパイラコレクション|GCC]]や[[GNU Binutils]]、[[GNU Core Utilities|coreutils]]などのその他の[[Unix系]]ユーティリティをはじめ、その他[[デスクトップ環境]]向けや[[サーバ]]運用向けなど多数の、計51,000以上のパッケージを提供している<ref name="stretch-release-news" />。ターゲットアーキテクチャとして現在10の[[コンピュータ・アーキテクチャ|アーキテクチャ]]向けにリリースされており<ref name="stretch-release-news" />、[[インテル]]や[[アドバンスト・マイクロ・デバイセズ|AMD]]の[[32ビット]]・[[64ビット]][[プロセッサ]]、組み込み機器で使われる[[ARMアーキテクチャ]]などがそれには含まれている。低水準のパッケージ管理システムは[[dpkg]]、高水準のパッケージ管理システムは[[APT]]である。[[デスクトップ環境]]は各種のものがパッケージにあるが、Debian 8ではインストール時に選べるのは[[GNOME]]、[[Xfce]]、[[KDE]]、[[Cinnamon]]、[[MATE (デスクトップ環境)|MATE]]、[[LXDE]]、[[LXQt]]である。
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Debian-kde.png|300px|Debian wheezy/ KDE4.8 Plasmaデスクトップ
Debian-wheezy-xfce-ja.png|300px|Debian wheezy/ Xfce4.8デスクトップ
Debia10-buster-cinnamon-ja.png|300px|Debian 10 (buster) Cinnamon デスクトップ
XFCE 4.12.3 on Debian 9.3.png|300px|XFCE is default on CD images and non-Linux ports
</gallery>


その他の特徴として、Debianをベースとして、さらにカスタマイズを加えた派生Linuxディストリビューションの作成が考慮されている、という点があり、[[Ubuntu]]他多くの派生ディストリビューションが存在する。
その他の特徴として、Debianをベースとして、さらにカスタマイズを加えた派生Linuxディストリビューションの作成が考慮されている、という点があり、[[Ubuntu]]他多くの派生ディストリビューションが存在する。


インストーラ用のCD/DVD[[ISO_9660|イメージ]]はWebからのダウンロード、[[BitTorrent]]・[[jigdo]]・uNetBootInなどで取得でき、またインストールメディアをオンライン再販業者から購入する事も可能である<ref>{{cite web | first = | last = | accessdate = 2010-11-29 | url = http://www.debian.org/CD/vendors/ | title = Debian CD のベンダ | publisher = www.debian.org }}</ref>。
インストーラ用のCD/DVD[[ISO_9660|イメージ]]はWebからのダウンロード、[[BitTorrent]]・[[jigdo]]・uNetBootInなどで取得でき、またインストールメディアをオンライン再販業者から購入する事も可能である<ref>{{cite web | first = | last = | accessdate = 2010-11-29 | url = http://www.debian.org/CD/vendors/ | title = Debian CD のベンダ | publisher = www.debian.org }}</ref>。
<gallery>
Debian10-installation-menu.png|Debian 10 installation menu
Debian10-text-installer.png|Text version of the [[Debian Installer]]
Debian10-graphical-installer.png|Graphical version of the Debian Installer
Debian10-console-login.png|Debian 10 console login and welcome message
</gallery>


== 歴史 ==
== 歴史 ==
[[File:Debian-OpenLogo.svg|thumb| The "swirl" logo represents the [[magic smoke]].]]

=== バージョンのリリース変歴 ===
=== バージョンのリリース変歴 ===
*[[1993年]][[8月16日]] [[イアン・マードック]]により開始。
*[[1993年]][[8月16日]] [[イアン・マードック]]により開始。
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===2005年以降===
===2005年以降===
[[File:Debian Etch-ja.png|thumb|250px|Debian 4.0 Etch (2007)]]
[[2005年]]6月、Debian 3.1(コードネーム: sarge)が公開された。メジャーリリースではない(バージョン番号が小数部の増加に留まる)にも関わらず、この正式版では数多くの変更が実施されたが、それは一つ前のリリースwoodyからsarge公開までの期間が長かったことが原因である。このリリースでは70%以上のソフトウェアがアップデートの対象となっただけではなく、ソフトウェアの容量も増加した。新規のインストーラーが導入され、40ヶ国語にも及ぶ言語がサポートされるようになった。
[[2005年]]6月、Debian 3.1(コードネーム: sarge)が公開された。メジャーリリースではない(バージョン番号が小数部の増加に留まる)にも関わらず、この正式版では数多くの変更が実施されたが、それは一つ前のリリースwoodyからsarge公開までの期間が長かったことが原因である。このリリースでは70%以上のソフトウェアがアップデートの対象となっただけではなく、ソフトウェアの容量も増加した。新規のインストーラーが導入され、40ヶ国語にも及ぶ言語がサポートされるようになった。


101行目: 113行目:
このリリースでは、Debianプロジェクトの各サブプロジェクトの取り組みも含まれており、[[Debian-Edu]] ([[Skolelinux]])、[[Debian-Med]]、[[Debian-Accessibility]]がそれに当たる。Skolelinuxは学校教育において有用なソフトウェアのパッケージを作成しDebianアーカイブに収録、また教育現場へのDebianの利用促進を行うプロジェクトである。Debian-Medは医療現場におけるDebianの利用促進や医療用ソフトウェアの作成、パッケージ化を担っている。Debian-AccessibilityはDebianシステムやDebianプロジェクトのWebサイトの[[アクセシビリティ]]向上や[[障害者]]に対するDebianの利用をサポートするプロジェクトで、その一部は[[視覚障害者]]のための[[点字ディスプレイ|ブライユ端末]]上におけるインストールサポートなどがある。
このリリースでは、Debianプロジェクトの各サブプロジェクトの取り組みも含まれており、[[Debian-Edu]] ([[Skolelinux]])、[[Debian-Med]]、[[Debian-Accessibility]]がそれに当たる。Skolelinuxは学校教育において有用なソフトウェアのパッケージを作成しDebianアーカイブに収録、また教育現場へのDebianの利用促進を行うプロジェクトである。Debian-Medは医療現場におけるDebianの利用促進や医療用ソフトウェアの作成、パッケージ化を担っている。Debian-AccessibilityはDebianシステムやDebianプロジェクトのWebサイトの[[アクセシビリティ]]向上や[[障害者]]に対するDebianの利用をサポートするプロジェクトで、その一部は[[視覚障害者]]のための[[点字ディスプレイ|ブライユ端末]]上におけるインストールサポートなどがある。


[[File:Iceweasel icon.svg|thumb|64px|left|[[Iceweasel]] logo]]
[[2006年]]、ウェブブラウザやメーラーといった [[Mozilla]]関連のソフトウェア名が商標上の問題によって変更された。[[Mozilla Firefox|Firefox]] は、[[Iceweasel]] へ、[[Mozilla Thunderbird|Thunderbird]] は [[Icedove]] へといったように変わった。これはMozilla Foundationの要請によりDebianプロジェクトでMozilla Firefoxの名称が使えなくなったことによる。
[[2006年]]、ウェブブラウザやメーラーといった [[Mozilla]]関連のソフトウェア名が商標上の問題によって変更された。[[Mozilla Firefox|Firefox]] は、[[Iceweasel]] へ、[[Mozilla Thunderbird|Thunderbird]] は [[Icedove]] へといったように変わった。これはMozilla Foundationの要請によりDebianプロジェクトでMozilla Firefoxの名称が使えなくなったことによる。


109行目: 122行目:


[[2010年]]9月5日、公式にバックポートサービス (Debian Backport) を開始した。
[[2010年]]9月5日、公式にバックポートサービス (Debian Backport) を開始した。

[[File:Debian 6.0.2.1.png|thumb|250px|Debian 6.0 Squeeze (2011)]]
[[File:Screenshot-debian_wheezy_ja.png|thumb|250px|Debian GNU/Linux 7.5<br />(GNOMEデスクトップ)]]


5.0リリースからほぼ2年経った[[2011年]]2月6日、Debian 6.0(コードネーム: squeeze)が公開された。[[FreeBSD]]カーネル([[Debian GNU/kFreeBSD]])が「''テクノロジープレビュー''」としてこのバージョンから正式にサポートされたが、その一方でalphaとhppa、armの3つのアーキテクチャーがこのバージョンから公式にサポートされなくなった。
5.0リリースからほぼ2年経った[[2011年]]2月6日、Debian 6.0(コードネーム: squeeze)が公開された。[[FreeBSD]]カーネル([[Debian GNU/kFreeBSD]])が「''テクノロジープレビュー''」としてこのバージョンから正式にサポートされたが、その一方でalphaとhppa、armの3つのアーキテクチャーがこのバージョンから公式にサポートされなくなった。
224行目: 240行目:
== メンテナンスの容易さ ==
== メンテナンスの容易さ ==
=== APT ===
=== APT ===
[[File:Debian 7 Aptitude Package Details.png|thumb|Using [[Aptitude (software)|Aptitude]] to view Debian package details]]
[[File:Debian-aptitude.png|thumb|Package installed with Aptitude]]
''[[APT]]を参照。''
''[[APT]]を参照。''


258行目: 276行目:


== リリースの種類 ==
== リリースの種類 ==
[[File:Debian10-CD-Cover.png|thumb|A Debian 10.0 Buster box cover]]


公開は、4つのレベルで行なわれている。
公開は、4つのレベルで行なわれている。
538行目: 557行目:


== 対応アーキテクチャ ==
== 対応アーキテクチャ ==
[[File:HP-HP9000-C110-Workstation 21.jpg|thumb|[[HP 9000]] C110 [[PA-RISC]] [[workstation]] booting Debian Lenny]]
Debianでは、以下のようなアーキテクチャに対応したバイナリ版を作成している。括弧内はプロジェクトでの呼称である。
Debianでは、以下のようなアーキテクチャに対応したバイナリ版を作成している。括弧内はプロジェクトでの呼称である。


563行目: 583行目:
[[Linuxカーネル]]以外をカーネルとするものもある。名称の通り、ユーザーランドは[[GNU]]の成果物に依存している。
[[Linuxカーネル]]以外をカーネルとするものもある。名称の通り、ユーザーランドは[[GNU]]の成果物に依存している。


[[File:Horned logo.svg|thumb|right|Logo of Debian GNU/kFreeBSD]]
* [[Debian GNU/kFreeBSD]] (kfreebsd-i386, kfreebsd-amd64) <!--squeeze から-->(jessieよりリリースターゲットから外された)
* [[Debian GNU/kFreeBSD]] (kfreebsd-i386, kfreebsd-amd64) <!--squeeze から-->(jessieよりリリースターゲットから外された)


579行目: 600行目:


* [[Debian GNU/Hurd]] (hurd-i386)
* [[Debian GNU/Hurd]] (hurd-i386)
<gallery>
Debian-gnu-hurd-running-emacs.png|Debian GNU/Hurd
Hurd-logo.svg|100px|Logo
</gallery>
* Debian GNU/NetBSD (netbsd-i386, netbsd-alpha)
* Debian GNU/NetBSD (netbsd-i386, netbsd-alpha)
* Debian GNU/Solaris (solaris-i386)
* Debian GNU/Solaris (solaris-i386)


== Debianベースのディストリビューション ==
== Debian派生のディストリビューション ==
[[File:DebianFamilyTree1210.svg|thumb|upright|Debian 系統樹]]
=== 派生物調査と協力体制について ===
=== 派生物調査と協力体制について ===
Debian プロジェクトは派生ディストリビューションの重要性を完全に認めており、関係者間の協力を活発に支援している。通常これは、当初派生ディストリビューションで開発されていた改善を Debian が取り込むことを意味する。こうすることで、誰もが恩恵を受けることができ、長期におよぶメンテナンス作業を減らすことになる。
Debian プロジェクトは派生ディストリビューションの重要性を完全に認めており、関係者間の協力を活発に支援している。通常これは、当初派生ディストリビューションで開発されていた改善を Debian が取り込むことを意味する。こうすることで、誰もが恩恵を受けることができ、長期におよぶメンテナンス作業を減らすことになる。
588行目: 614行目:
このため、派生ディストリビューションは debian-derivatives@lists.debian.org メーリングリストの議論に参加し、派生物調査に参加するよう勧められている。派生物調査は、派生ディストリビューションの中でなされた作業に関する情報を集めることを目標にしている。こうすることで、公式の Debian 開発者が Debian 派生物内の自分のパッケージの状況をより良く追跡することが可能になる<ref>https://debian-handbook.info/browse/ja-JP/stable/derivative-distributions.html</ref>。
このため、派生ディストリビューションは debian-derivatives@lists.debian.org メーリングリストの議論に参加し、派生物調査に参加するよう勧められている。派生物調査は、派生ディストリビューションの中でなされた作業に関する情報を集めることを目標にしている。こうすることで、公式の Debian 開発者が Debian 派生物内の自分のパッケージの状況をより良く追跡することが可能になる<ref>https://debian-handbook.info/browse/ja-JP/stable/derivative-distributions.html</ref>。


=== Debian (テスト版) 派生 ===
Debianはいくつかのディストリビューションのベースとして利用されている。以下はその一部である。
[[:en:List of Linux distributions#Debian (Testing) based|Debianテスト版の派生品一覧]]に掲載。
[[linuxBean]]のような派生の派生や、Wikipediaに記事が存在しないものは掲載しない。
{| class="wikitable"
|-
! 配布版 !! 説明
|-
| [[BackTrack]]
| Debian派生であり、Kali Linuxの前身。[[ペネトレーションテスト]]目的に特化していることが特徴だった。開発停止。
|-
|[[Kali Linux]]
|Debian派生の1DVDタイプ。ペネトレーションテスト目的に特化していることが特徴。BackTrackから[[フォーク (ソフトウェア開発)|派生]]した後継版。
|-
|[[PureOS]]
| 完全に自由ソフトウェアだけで構成されている、[[プライバシー]]と[[セキュリティ]]、利便性に重点を置いているGNU/Linuxディストリビューション。
|-
|{{仮リンク|Astra Linux|en|Astra Linux}}
| [[ロシア連邦|ロシアの政府機関]]における[[:ru:Astra Linux|制式OS]]のひとつ<ref>{{URL|www.astralinux.ru}}</ref>。
|-
|[[Ubuntu]]
| 6ヶ月ごとの更新と商用サポートを掲げる。デスクトップ環境として[[GNOME]]を採用している。[[パソコン雑誌]]に雑誌社特製のLive CD/DVDとして付属される場合がある。派生版は[[Ubuntu#派生品]]を参照。
|}


=== Debian (安定板) 派生 ===
=== 現行(2020.4.1)のDebianベースのディストリビューション ===
[[:en:List of Linux distributions#Debian (Stable) based|Debian安定板の派生品一覧]]に掲載。
{| class="wikitable"
|-
! 配布版 !! 説明
|-
|{{仮リンク|Astra Linux|en|Astra Linux}}
| [[ロシア連邦|ロシアの政府機関]]における[[:ru:Astra Linux|制式OS]]のひとつ。
|-
|{{仮リンク|Corel Linux|en|Corel Linux}}
| 後継は企業向けディストリビューションで[[Eee PC]]に搭載されていた[[Xandros]]。開発停止。
|-
|[[CrunchBang Linux]]
| ウィンドウマネージャにOpenBoxを採用し、軽量、高速を重視したディストリビューション。開発停止。
|-
|[[Deepin]]
| Wuhan Deepin Technology Co.が開発を手掛ける、Debianを母体とした中国産 Linux ディストリビューション。
|-
|[[Devuan]]
| 2014 に Debianから派生<ref>{{cite web | url=http://news.softpedia.com/news/Fork-Debian-Project-Announces-the-Systemd-less-OS-Devuan-466178.shtml | title=Fork Debian Project Announces the Systemd-less OS Devuan | work=Softpedia | date=28 November 2014 | accessdate=30 November 2014 | author=Stahie, Silviu | archive-url=https://web.archive.org/web/20141130142144/http://news.softpedia.com/news/Fork-Debian-Project-Announces-the-Systemd-less-OS-Devuan-466178.shtml | archive-date=30 November 2014 | url-status=live }}</ref>。
|-
|[[gNewSense]]
| [[GNUプロジェクト#GNU FSDG|GNU FSDG]]に適合し、[[フリーソフトウェア財団]]の支援を受ける。[[Linux-libre]]を使用し、ファームウェアのレベルまで100%自由ソフトで構成される。
|-
| {{仮リンク|KANOTIX|en|Kanotix}}
| Debian派生でCDブート/HDDインストール共可能。
|-
|[[KNOPPIX]]
| Debianを基にCDブートで利用できるようにしている。派生版は[[#Knoppix 派生]]を参照。
|-
| [[Maemo]]
| [[Nokia N800]], [[Nokia N810|N810]]など携帯端末のほか、[[Nokia N900]] タブレット端末とその他の Linux kernel派生の機器向けに開発された<ref>{{cite web|url=http://maemo.org/|title=maemo.org - maemo.org: Home of the Maemo community|date=1 December 2006|website=maemo.org|access-date=29 November 2012|archive-url=https://web.archive.org/web/20121123114615/http://maemo.org/|archive-date=23 November 2012|url-status=live}}</ref>。
|-
|[[MEPIS]]
| デスクトップ環境に[[KDE]]を採用したディストリビューション。開発停止。派生版は[[#MEPIS 派生]]を参照。
|-
| [[Linux_Mint|MintPPC]]
| PowerPC 向け。MintPPC は Mint LXDE のコードを用いるが、Linux Mint ではない<ref>{{cite web|url=http://www.mintppc.org/|title=Home|website=Mint PPC|access-date=2018-12-23|archive-url=https://web.archive.org/web/20101013025534/http://mintppc.org/|archive-date=2010-10-13|url-status=live}}</ref>。
|-
| [[OpenZaurus]]
| [[シャープ|Sharp]] [[ザウルス|Zaurus]] [[携帯情報端末|PDA]]向け Debian パッケージと ROM イメージ。 {{仮リンク|Ångström distribution|en|Ångström distribution}}後継<ref>{{cite web|url=http://www.openzaurus.org/|title=Apache2 Debian Default Page: It works|website=www.openzaurus.org|access-date=2012-11-29|archive-url=https://web.archive.org/web/20020330152808/http://www.openzaurus.org/|archive-date=2002-03-30|url-status=dead}}</ref>。
|-
|[[Raspbian]]
| 小型シングルボードコンピュータである[[Raspberry Pi]]向けに開発されたディストリビューション。
|-
| [[Skolelinux]]
| ノルウェー産 Linux で、学校向け [[thin client]]ディストリビューション<ref>{{cite web|url=https://wiki.debian.org/DebianEdu/|title=DebianEdu - Debian Wiki|website=wiki.debian.org|access-date=2018-12-23|archive-url=https://web.archive.org/web/20181229220025/https://wiki.debian.org/DebianEdu/|archive-date=2018-12-29|url-status=live}}</ref>。
|-
| [[SolydXK]]
| [[Xfce]] and [[KDE]] desktop focused on stability, security and ease of use.<ref>{{cite web|url=https://solydxk.com/|title=SolydXK Community — English|website=solydxk.com|access-date=2018-12-23|archive-url=https://web.archive.org/web/20190122092515/https://solydxk.com/|archive-date=2019-01-22|url-status=live}}</ref>
|-
| [[The Amnesic Incognito Live System]] (TAILS)
| プライバシーと匿名性の保護に特化したディストリビューション。[[Tor#Torの応用]]も参照。
|-
| [[Vyatta]]
| VyOSの前身<ref>[http://www.vyatta.org/ Vyatta website] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20120424205015/http://www.vyatta.org/ |date=2012-04-24 }}</ref>。
|-
| [[VyOS]]
| [[Virtual Private Network|VPN]] / [[ルーター]] / [[コンピュータネットワーク|ネットワーク]][[ファイアウォール]]用ディストリビューション。
|}


=== MEPIS 派生 ===
*[[antiX]] - Debian安定版をベースとした軽量なライブCDかつインストール可能なディストリビューション。
[[:en:List of Linux distributions#MEPIS-based|MEPISの派生品一覧]]に掲載。
*[[aptosid]] - 旧名sidux。Debian sidをベースとしたデスクトップ向けディストリビューション。
{| class="wikitable"
* [[CrunchBang Linux]] - ウィンドウマネージャにOpenBoxを採用し、軽量、高速を重視したディストリビューション。
|-
! 配布版 !! 説明
|-
| [[antiX]]
| Debian安定版から派生した軽量なライブCDかつインストール可能なディストリビューション。
|-
| [[MX Linux]]
| 中量級。KNOPPIXのようにライブCDとしても利用可能。
|}

=== KNOPPIX 派生 ===
[[File:KnoppixFamilyTree1210.svg|thumb|KNOPPIX 系統樹]]
[[:en:List of Linux distributions#Knoppix-based|KNOPPIXの派生品一覧]]に掲載。
{| class="wikitable"
|-
! 配布版 !! 説明
|-
| [[Damn Small Linux]]
| 名刺サイズの[[コンパクトディスク|CD]]やUSB pendrive向けの軽量なKNOPPIX[[Live CD]]。開発停止。
|}

上記のようにDebianはいくつかのディストリビューションの母体として利用されている。[[:en:List of Linux distributions#Debian-based|Debianの派生品一覧]]に掲載されるもののほか、以下はその一部である。


なお、[[linuxBean]]のような派生の派生や、他言語版を含むWikipediaに記事が存在しないものは掲載しない。

=== その他現行(2020.4.1)のDebian派生ディストリビューション ===
* [[aptosid]] - 旧名sidux。Debian sid派生のデスクトップ向けディストリビューション。CDブート/HDDインストール共可能。
* [[ARMA aka Omoikane GNU/Linux]] : [[ファイルシステム]]に[[XFS]]を採用している。
* [[Clonezilla]] - [[補助記憶装置|ディスク]]または[[パーティション]]の複製(クローニング)ならびに[[ディスクドライブ仮想化ソフト|イメージ作成]](イメージング)用。
* [[gnuLinEx|LinEx]] - [[スペイン]]の地方自治体、教育機関で利用するために開発されたディストリビューション。
* [[gnuLinEx|LinEx]] - [[スペイン]]の地方自治体、教育機関で利用するために開発されたディストリビューション。
* [[gNewSense]] - 100%[[フリーソフトウェア]]で構成されたディストリビューション。
* [[KNOPPIX]] - ポピュラーなLiveCD。
* [[Linux_Mint|Linux Mint Debian Edition(LMDE)]] - [[Linux Mint]]プロジェクトがDebian安定版をベースに開発したディストリビューション。
* [[Linux_Mint|Linux Mint Debian Edition(LMDE)]] - [[Linux Mint]]プロジェクトがDebian安定版をベースに開発したディストリビューション。
* [[MEPIS]] - デスクトップ環境に[[KDE]]を採用したディストリビューション。
* [[OpenMediaVault]] - フリーな[[ネットワークアタッチトストレージ]](NAS)向けディストリビューション。
* [[WindOS]] - Debian Squeeze派生で作られた軽量OS。起動時のイニシャルメモリ消費量が60MB以下。開発が停滞している<ref name="WindOS">{{Cite news|url = http://www44.atwiki.jp/windos/|title = WindOS公式ホームページ|accessdate = 2 December 2012|last = |first = WindOS|authorlink = |date = 2012年2月| work = }}</ref>。
*[[MX Linux]] - ポピュラーなディストリビューション。KNOPPIXのようにライブCDとしても利用可能。
*[[OpenMediaVault]] - フリーな[[ネットワークアタッチトストレージ]](NAS)向けディストリビューション。
* [[Raspbian]] - 小型シングルボードコンピュータである[[Raspberry Pi]]向けに開発されたディストリビューション。
* [[SteamOS]] - ゲーム配信サービス[[Steam]]の運営元[[Valve_Corporation|Valve]]社が開発した[[ゲームパソコン|ゲーミングPC]]向けディストリビューション。
* [[Tails (オペレーティングシステム)|Tails]] - プライバシーと匿名性の保護に特化したディストリビューション。
* [[Ubuntu]] - ポピュラーなディストリビューション。
* [[VyOS]] - [[Virtual Private Network|VPN]] / [[ルーター]] / [[コンピュータネットワーク|ネットワーク]][[ファイアウォール]]用ディストリビューション。


=== 開発終了及び休止したDebianベースのディストリビューション ===


=== その他開発終了及び休止したDebian派生ディストリビューション ===
* [[Damn Small Linux]] - 名刺サイズの[[コンパクトディスク|CD]]に収まる[[Live CD]]。
* {{仮リンク|Freespire|en|Freespire}} : [[Linspire]]の無料版。CDブート/HDDインストール共可能。
* [[Linspire]] - 企業向けディストリビューション(旧Lindows)。
* [[Linspire]] - 企業向けディストリビューション(旧Lindows)。
* [[Progeny Debian]] - Redhat/Fedoraのインストーラ[[Anaconda]]をインストーラしたディストリビューション
* [[Progeny Debian]] - Redhat/Fedoraのインストーラ[[Anaconda]]をインストーラを移植したGNU/Linux
* [[UserLinux]] - 元Debianプロジェクトリーダー[[ブルース・ペレンズ]]により提唱され、企業向けディストリビューションの基幹となるべく開発されていたDebianベースのディストリビューション。開発停止。
* [[UserLinux]] - 元Debianプロジェクトリーダー[[ブルース・ペレンズ]]により提唱され、企業向けディストリビューションの基幹となるべく開発されていたDebianベースのディストリビューション。開発停止。

* [[Xandros]] - 企業向けディストリビューション。
=== 日本発の派生版 ===
* [[KNOPPIX|Xenoppix]] : KNOPPIXに[[Xen (仮想化ソフトウェア)|Xen]]を搭載した日本のディストリビューション。開発停止。
* [[Regret (Linuxディストリビューション)|Regret]] : KNOPPIX派生の日本のディストリビューション。開発停止。



== 注釈 ==
== 注釈 ==

2020年6月12日 (金) 10:59時点における版

Debian
Screenshot of Debian 10 (buster) with the GNOME desktop environment
Debian 10 (buster) with the GNOME desktop environment
開発者 Debian Project
OSの系統 Unix系,Linux
開発状況 開発中
ソースモデル FLOSS
初版 1993年8月16日 (1993-08-16)
最新安定版 12.8[1] ウィキデータを編集 [±]
リポジトリ ウィキデータを編集
使用できる言語 75言語[2]
アップデート方式 en:LTS
パッケージ管理 APT, Synaptic, dpkg (その他数種類のフロントエンド)
プラットフォーム i386 (i486以降のx86)AMD64PowerPC(64ビット版のみ)、ARMMIPSS390[2](以下は非公式: IA-64, SPARC, m68k, Alpha, HPPA
カーネル種別 モノリシック (Linux, FreeBSD (テクノロジープレビュー)), マイクロ (GNU Hurd (非公式))
ユーザランド GNU Core Utilities
既定のUI GNOME, KDE, Xfce, LXDEなど
ライセンス DFSG (GNU GPLその他)[3]
ウェブサイト www.debian.org
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Debian(発音: [ˈdɛbiən] デビアン)またはDebian ProjectLinuxディストリビューションのひとつであるDebian GNU/Linuxを中心とするUnix系システムのディストリビューションを作成しているプロジェクトである。名前の通り、GNUプロジェクトの精神の尊重と(そのため、一般には単に「Linux」とされることが多いような場合にも、「GNU/Linuxシステム」という呼称を積極的に使っている)、同プロジェクトによるプロダクトの積極的な採用などが特徴である。Linuxディストリビューションの他、カーネルをLinuxカーネルからGNU HurdFreeBSDのカーネルに置き換えた、Debian GNU/HurdDebian GNU/kFreeBSDなどがある。

概要

Linuxカーネル、必須なユーティリティ類のutil-linux(en:Util-linux)、プログラムのビルドに必要なGCCGNU Binutilscoreutilsなどのその他のUnix系ユーティリティをはじめ、その他デスクトップ環境向けやサーバ運用向けなど多数の、計51,000以上のパッケージを提供している[4]。ターゲットアーキテクチャとして現在10のアーキテクチャ向けにリリースされており[4]インテルAMD32ビット64ビットプロセッサ、組み込み機器で使われるARMアーキテクチャなどがそれには含まれている。低水準のパッケージ管理システムはdpkg、高水準のパッケージ管理システムはAPTである。デスクトップ環境は各種のものがパッケージにあるが、Debian 8ではインストール時に選べるのはGNOMEXfceKDECinnamonMATELXDELXQtである。

その他の特徴として、Debianをベースとして、さらにカスタマイズを加えた派生Linuxディストリビューションの作成が考慮されている、という点があり、Ubuntu他多くの派生ディストリビューションが存在する。

インストーラ用のCD/DVDイメージはWebからのダウンロード、BitTorrentjigdo・uNetBootInなどで取得でき、またインストールメディアをオンライン再販業者から購入する事も可能である[5]

歴史

The "swirl" logo represents the magic smoke.

バージョンのリリース変歴

Debian の各リリースに付けられている開発用コード名は、ディズニー映画「トイ・ストーリー」の登場人物の名前に基づいている。Debian の不安定版は、おもちゃをいつも壊す悪ガキのキャラクターである Sid にちなんでいる。

1993年〜1998年

Debianは1993年8月16日に当時パデュー大学の学生であったイアン・マードックにより創設された。 マードックは当初"Debian Linux Release"という名称を付けた[6]。当時"Softlanding Linux System (SLS)"という初のGNU/Linuxディストリビューションが公開されていたが、SLSは保守がお粗末であったり不具合が頻発したためマードックは全く新しいディストリビューションを立ち上げた。

1993年、マードックは"Debianマニフェスト"というこの新しいオペレーティングシステムについての概要を公表した。その中で、このディストリビューションのメンテナンスは、LinuxおよびGNUの精神に基づき公開された手法で維持されることを求めた。彼はこのディストリビューションの名称を、ガールフレンドの名前Debra Lynnと自身の名前IanからDebianとした[7]

Debianプロジェクトからは、1994年から1995年にかけて0.9バージョンのシリーズが初めて公開された。この期間、フリーソフトウェア財団GNUプロジェクトが支援を行った。1995年には、インテルi386以外のアーキテクチャーに対してもサポートが開始されることとなり、1996年に最初のパブリックリリースとなった1.xが公開された。

1996年にはブルース・ペレンズがDebianプロジェクトのリーダーとしてマードックの後任に就いた。同年開発者のEan Schuesslerは、Debianプロジェクトがその利用者に対して社会的な契約を交わすべきであるとの提案を行った。これに関してDebianプロジェクトのメーリングリストで行われた議論は、プロジェクトについての「Debian社会契約」と「Debianフリーソフトウェアガイドライン (DFSG)」にまとめられた。ペレンズは、Software in the Public Interest (SPI) というDebianプロジェクトを公式に支え、プロジェクトを統括する非営利組織の創設にも関わった。

ペレンズは、glibc移行後初めてのリリースとなったDebian 2.0が公開される直前にDebianプロジェクトを引退した。

1999年〜2004年

この時期、Debianプロジェクトは新たなリーダーを選出し、2.x リリースを公開した。この時期にAPTが初めて導入され、Debian GNU/HurdというLinuxカーネル以外の開発も始められた。1999年にはDebianをベースとするディストリビューションも現れ始めた。Libranet (2006年に開発停止[8])、Corel Linux そして StormixによるStorm Linuxである。 特筆すべきは、2000年に公開された2.2リリース(コードネーム: potato)で、このリリースはlibc等重要なパッケージのメンテナで、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのため亡くなった、Joel 'Espy' Kleckerに捧げられた[9]

2000年後半には、プロジェクトはパッケージアーカイブとリリースマネージメントに関する大きな変革を行い、「パッケージプール」方式と次期stableリリースの土台となるリリース"testing"の導入が開始された。また同年には全世界のDebian開発者・技術者を集めて年1回開催されるDebConf(Debianカンファレンス)が開かれるようになった。

この頃CorelはLinux部門を売却 (後にXandrosとなっている) 、Stormixは2001年破産を宣告されている。

2002年7月、Debian 3.0 (コードネーム: woody)が公開された。(遡ることバージョン1.1から、Debianはリリースの際に映画トイ・ストーリーのキャラクター名をコードネームとして採用し現在に至る。)

3.0(woody)リリース後、次期リリース3.1(sarge)まで、およそ3年という長期に渡る空白期間が存在する。主な理由として、potatoからwoody以後にかけて、パッケージ数が2倍程に増加、またwoodyでのサポートアーキテクチャも増加したため、リリース直後からこれに伴うバグが飛躍的に増大した点がある。とりわけリリースクリティカルバグが事実上すべて解消されない限りリリースできないため、リリーススケジュールに多大なる影響を与えた。パッケージメンテナのバグに対する考え方は温度差があり、たとえば特定の言語のみ発生するバグならば、そのメンテナがバグ対象の言語圏でも無い限りバグを修正することに対する意欲を持つことは少ない。コミュニティによるボランティアを作業ベースとするDebian特有の問題とも言える。

しかし、長くなっていくリリースサイクルについて、フリーソフトウェアコミュニティから疑問の声が上がった。Debianのsargeリリース直前には、実際にDebian開発者の1人であったShuttleworthが主導してUbuntuというプロジェクトをフォークさせた。Shuttleworthが雇っているUbuntu開発者の多くは、かつてはDebianボランティアだったか、または今もDebianに関わっている人々である。多くの場合、Ubuntu開発者として(Canonicalを通して)雇われた人々はDebianでも同じパッケージの管理をしている[10]。この点については本人も公式サイト[11]で「Debian の開発者の中には、Ubuntu で仕事のほとんどをするようになった人も確かにいます。また、Ubuntu と Debian で同じように仕事をしている開発者もいます。」としてそれを認めている。Debian の創立者、Ian Murdochは、Ubuntu の人気が Debian ベースのディストロのために良い兆しだとは考えていない。それは、Ubuntu 用に作られたパッケージが Sarge上で動作しないことが多いことを挙げている。Murdochは、Ubuntuが本当にDebianと互換性があった場合、リリースのための作業のエネルギーの全てをSargeに向けられる可能性があり、それが本当に全体として見た場合、Debianの開発システムに利益をもたらすと主張している[12]。したがって、当時のこうした混乱状況がsargeのリリースをさらに遅らせることになったといえる。

その後、Debianから派生したUbuntuは多数の常勤の開発者によって開発されるところとなり、次第に影響力を増していった。しかし、ブラジル人のDebian開発者、Otavio Salvador は、「ユーザはUbuntuを信用しているが、ユーザには安定したパッケージを提供する必要がある」 という考えにUbuntuがコミットしているかどうか、確信が持てない。」と述べている。また彼は、Shuttleworth個人に対しても不信感を抱いており、露骨に「言動が一致していない」と非難し、品質対リリーススケジュールの問題で溝が深まったことでUbuntuとDebianの関係はひどいものになっている。」と語っている[13]。このように、Ubuntuに対する評価は分かれている。

Debianのstableリリースの長期化と派生であるUbuntuの誕生は、Debianコミュニティに対する意識を変化させ、Debian 4.0(コードネーム: etch)以降のリリースに対してのリリーススケジュールを含むいくつかの改善をもたらしたのは確かである。2011年現在では両コミュニティにおいて、バグ修正の取扱いなど相互交流もある[14]

2005年以降

Debian 4.0 Etch (2007)

2005年6月、Debian 3.1(コードネーム: sarge)が公開された。メジャーリリースではない(バージョン番号が小数部の増加に留まる)にも関わらず、この正式版では数多くの変更が実施されたが、それは一つ前のリリースwoodyからsarge公開までの期間が長かったことが原因である。このリリースでは70%以上のソフトウェアがアップデートの対象となっただけではなく、ソフトウェアの容量も増加した。新規のインストーラーが導入され、40ヶ国語にも及ぶ言語がサポートされるようになった。

このリリースでは、woody以前のインストーラである、"boot-floppies"をモジュラー設計の新しいインストーラで置き換えた(Debianインストーラ)。 この新しいインストーラは高度なインストール方法をサポートしており、RAIDXFS そしてLVMがサポートされている。またハードウェア検知能力に優れ、Linuxのインストールに不慣れな者でもインストールできるようになっている。インストーラは約40ヶ国の言語で完全なソフトウェアレベルでの国際化を実現している。インストールマニュアルと包括的なリリースノートはそれぞれ10と15の言語に翻訳されリリースされている。

このリリースでは、Debianプロジェクトの各サブプロジェクトの取り組みも含まれており、Debian-Edu (Skolelinux)、Debian-MedDebian-Accessibilityがそれに当たる。Skolelinuxは学校教育において有用なソフトウェアのパッケージを作成しDebianアーカイブに収録、また教育現場へのDebianの利用促進を行うプロジェクトである。Debian-Medは医療現場におけるDebianの利用促進や医療用ソフトウェアの作成、パッケージ化を担っている。Debian-AccessibilityはDebianシステムやDebianプロジェクトのWebサイトのアクセシビリティ向上や障害者に対するDebianの利用をサポートするプロジェクトで、その一部は視覚障害者のためのブライユ端末上におけるインストールサポートなどがある。

Iceweasel logo

2006年、ウェブブラウザやメーラーといった Mozilla関連のソフトウェア名が商標上の問題によって変更された。Firefox は、Iceweasel へ、ThunderbirdIcedove へといったように変わった。これはMozilla Foundationの要請によりDebianプロジェクトでMozilla Firefoxの名称が使えなくなったことによる。

2007年4月8日、Debian 4.0(コードネーム: etch)が公開された。GUIインストールが公式にサポートされている。このリリースでは新たにAMD64がサポートされた一方、Debian初のx86以外のアーキテクチャであったm68kは公式にサポートされなくなった(但し非公式なサポートは存在する)。

2009年2月14日、Debian 5.0(コードネーム: lenny)が公開された。開発期間は22ヶ月。25000以上のソフトウェア・パッケージが収録された。新たにマーベル・テクノロジー・グループが販売しているARMベースのNASOrionプラットフォームとAsus Eee PCのようなネットブックがサポートされた。このリリースはMIPSアーキテクチャメンテナで2008年12月26日に交通事故で亡くなったThiemo Seuferに捧げられた[15][16]

2010年9月5日、公式にバックポートサービス (Debian Backport) を開始した。

Debian 6.0 Squeeze (2011)
Debian GNU/Linux 7.5
(GNOMEデスクトップ)

5.0リリースからほぼ2年経った2011年2月6日、Debian 6.0(コードネーム: squeeze)が公開された。FreeBSDカーネル(Debian GNU/kFreeBSD)が「テクノロジープレビュー」としてこのバージョンから正式にサポートされたが、その一方でalphaとhppa、armの3つのアーキテクチャーがこのバージョンから公式にサポートされなくなった。

6.0リリースから2年以上経過した2013年5月4日、Debian 7.0(コードネーム: wheezy)が公開された。このバージョンからarmhfとs390xの2つのアーキテクチャが正式にサポートされることとなった。

2014年4月24日、Debian 6.0のサポートが2016年2月まで延長されることが発表され[17]2014年6月16日より長期サポート(LTS)期間に入った[18]

2015年4月25日、Debian 8.0(コードネーム: jessie)が公開された。このバージョンよりAArch64(64ビット版ARMアーキテクチャ)とPOWER 64 ビットリトルエンディアン版が正式にサポートされた。またs390 アーキテクチャのサポートが終了し、s390xに置き換えられた。なお、ia64 および sparc が、開発者不足から、正式リリースに含まれなくなった。

2017年6月17日、Debian 9.0(コードネーム: stretch)が公開された。このバージョンより64 ビットリトルエンディアン MIPSがサポートに追加された。逆にPowerPC(の32ビット版)がサポートから外れた(PowerPC 64ビット版は引き続きサポートが継続される)。

2019年7月6日、Debian 10.0(コードネーム: buster)が公開された。

プロジェクトの組織構成

プロジェクトは、世界中の有志の開発者によって構成されている。プロジェクトには誰でも参加できるが、正規の開発者になるためには、技術的なチェックを受ける必要がある。現在、1000名以上[19]のメンバーがいる。日本人の開発者は40人ほどである。

プロジェクトの抱負として、Debian社会契約[20]を掲げている。Debian社会契約は、プロジェクトが遵守すべき事項を定めたもので、1997年7月5日に採択された。その中のDebianフリーソフトウェアガイドライン (DFSG) は、Debianにおけるソフトウェア評価基準となっており、このガイドラインに適合しない、フリーではないと評価されたソフトウェアは、Debianの一部として提供されることはない。

プロジェクト内の意思決定はDebian憲章[21]の元で行なわれる。Debian憲章は、組織構成やその権限、投票にかけるまでの手続きなどを定めたもので、1998年12月2日に採択された。

このことから、Debianプロジェクトは独立した非中央集権的な組織である。また他のGNU/Linuxディストリビューション(例えば、Ubuntu、openSUSE、Fedora、そしてMandriva)のように企業が所有するものではない。 にも関わらず、プロジェクトの生産付加価値は極めて高く、Debian 4.0 (etch)リリースに含まれる全パッケージ開発コストを例にとると、コード総数2億8300万行、COCOMOモデル(en:COCOMO)を使用した生産価値評価は130億米ドルにのぼるとされる[22]2009年4月2日、オンラインコミュニティサイトOhlohはある時点でのDebian GNU/Linuxプロジェクトのコードベース(コード総数4500万行)をCOCOMOモデルを用いて評価したところ、開発コストは約8億1900万米ドルになると推計した[23]。Debian 5.0 (lenny) リリースに関して、Juan José Amorらの推計によると、有効なコード総数は324,000,000行、COCOMOモデルによる生産価値評価は61億ユーロにのぼるとされる[24]

無論こうしたDebianに関するコミュニティの門戸の広さは、全く問題がないわけではなく、以前には、「一部ユーザによる礼儀知らずな行為」とコミュニティの意思決定の遅さが批判されたことがある[25]

毎年、Debianカンファレンス[26] (通称DebConf) が開催される。Debianカンファレンスは、世界中のDebian開発者が直接会談する場で、2000年7月5日に初めて開催された。資金面などの多くの障害があるため、今のところ日本で開催されたことはないが、有志によって開催が検討されている[27]

詳細はDebConfを参照。

プロジェクトリーダー

Debianプロジェクトリーダー(Debian Project Leader; DPL)はプロジェクトの公的な代表者であり、プロジェクトの現在の方向性を決める立場にある[28]。プロジェクトは次のリーダーを選出してきた:[29]

  1. イアン・マードック (1993年8月 – 1996年3月), Debianプロジェクト創設者
  2. ブルース・ペレンズ (1996年4月 – 1997年12月)
  3. イアン・ジャクソン (1998年1月 – 1998年12月)
  4. ウィヘルト・アッカーマン (1999年1月 – 2001年3月)
  5. ベン・コリンズ (2001年4月 – 2002年4月)
  6. ビーデール・ガービー (2002年4月 – 2003年4月)
  7. マーチン・マイケルメイヤー[訳語疑問点] (Martin Michlmayr) (2003年3月 – 2005年3月)
  8. ブランデン・ロビンソン (Branden Robinson) (2005年4月 – 2006年4月)
  9. アンソニー・タウンズ (2006年4月 – 2007年4月)
  10. サム・オセヴァール[訳語疑問点] (Sam Hocevar) (2007年4月 – 2008年4月)
  11. スティーブ・マッキンタイアー (2008年4月 – 2010年4月)
  12. ステファノ・ザッキローリ (2010年4月 – 2013年4月)
  13. Lucas Nussbaum(2013年4月 – 2015年4月)
  14. Neil McGovern(2015年4月 – 2016年4月)
  15. Mehdi Dogguy(2016年4月 – 2017年4月)
  16. Chris Lamb(2017年4月 – 現職)

補佐的な役職として、アンソニー・タウンズによりDebian Second in Charge (2IC; 副リーダー)が創設された。スティーブ・マッキンタイアーは2006年4月から翌2007年4月までこの役職に就いている。2009年4月からはLuk Claesがその地位にいる。現プロジェクトリーダー、ステファノ・ザッキローリは、2ICを選出しない旨DPL選挙の際に宣言していた[30]

リリースマネージャ

  • Brian C. White (1997–1999)
  • Richard Braakman (1999–2000)
  • アンソニー・タウンズ (2000–2004)
  • Steve Langasek, Andreas Barth そして Colin Watson (2004–2007)
  • Andreas Barth と Luk Claes (2007–2008)
  • Luk Claes と Marc Brockschmidt (2008–2009)
  • Luk Claes と Adeodato Simó (2009–2010)
  • Adam D. Barratt と Neil McGovern (2010–現職)[31]

注意すべきことに、上記リストにはアクティブなリリースマネージャーのみ含まれている。2003年から導入された、リリースアシスタント、そして引退したマネージャー("release wizards"と呼ばれる)はここには含まれていない[32]

メンテナンスの容易さ

APT

Using Aptitude to view Debian package details
Package installed with Aptitude

APTを参照。

Debianの特長として、メンテナンスの単純さがある。パッケージ管理システムを備えており、ひとたびインストールが終了すれば、パッケージマネージャのAPT (Advanced Package Tool) により、ソフトウェアの更新が行える。パッケージのインストールは、セキュリティ関連の更新やプログラム相互の依存性確認も含めて、仮想端末コンソール)より容易に操作できる。

パッケージの依存関係には、大きく分けて、depends(依存)recommends(推奨)suggests(提案) という3種類の項目が設定されており、動作に必須なものがdepends、動作に必須ではないが常識的に必要とするものがrecommends、組み合わせる事で更に便利に使えるものがsuggestsに指定されている。しかしapt-getでは、depends以外の項目を上手に扱えなかったため、これらの項目を最大限生かす事ができるaptitudeの使用がSarge以降では勧められていたが、Squeezeではこの点は改善された[33][34]。さらに、自動削除をサポートするようにも更新された[35]

APTには補助的機能を追加するフロントエンドが数多く提供されており、以下ではaptitudeを含めた幾つかのフロントエンドを紹介する。

aptitude

aptitudeを参照。

GUIフロントエンド

Synaptic
apt-watch の自動更新通知
Update Notifier の自動更新通知

ユーザーフレンドリーなユーザーインターフェイスは複数存在する。

一般的に良く知られる代表としては、Debianだけでなく RPM系のディストリビューションでも使われている Synaptic(シナプティック)がある。Synapticは、apt-getコマンドを使用せずにシステムの更新が全てマウスで直感的に行えるだけでなく、ソフトウェアの削除機能も備えている。

「apt-watch(アプト-ウォッチ)」は、デスクトップで使用するユーザーにとって、アップデートのリリースを直ちに通知してくれるアプレットとして極めて有効なツールである。apt-watch は、より簡易にパッケージの管理を実現するツールとして開発されたアプリケーションである。これは、ネットワークに接続し、アップデータを定期的に監視するアプレットであり、アップデータが利用可能となった時には、クライアントに自動的に更新の通知を行う。Windows Updatesや Red Hat Network と同様な機能を持っている。

4.0 (Etch) では、apt-watch に加えて新たに update-manager も用意された。これは、GNOMEデスクトップ環境で利用可能なパッケージの管理ツールである。この update-manager は、Update Notifier と呼ばれるデスクトップ上のアプレットと組み合わせて利用することができる。機能的には apt-watch と似ているが、APT keyring を管理する仕組みが追加されている。なお、Update Notifier は GNOME や KDEXfce など Freedesktop.org 準拠の全てのデスクトップ環境で動作するように設計されている。

ただしこれらもアップデートの実際の内部処理は、APT が機能しているので、apt-get コマンドを実行することと大差は無い。

gdebi

GDebi パッケージ・インストーラー

Debian 4.0 では、グラフィカルなパッケージ・インストーラーが新たに提供された。このインストーラーを利用すれば、ローカルに保存した Debianパッケージがコマンド操作なしでインストール可能である。Red Hat Linux で初めて採用された Gnome-RPM[36] (あるいは gnorpm とも) というグラフィカルなインストーラーと好対照を成すツールであるが、Gnome-RPM がシェルプロンプトから RPMコマンドを実行するのと同じ機能を有するのに留まるのとは違い、gdebi は APTのようにパッケージ間の依存関係を自動的に解決する機能も併せ持っている点でより優れている。GDebi とも表記される。

debconf

パッケージ管理にはdebconfと呼ばれるフレームワークが用意されており、パッケージ作成者はユーザーに対して簡易のフロントエンドを提供できる。このフレームワークを積極的に利用しているパッケージでは、インストール後にユーザーが行うであろう初期設定の大半を、対話形式の質問に答えていくだけで、インストールと同時に終える事ができる。debconfパッケージ自身もdebconfの設定を有しており、利用するフロントエンドインターフェースと優先度を設定できる。debconfのインターフェースは、対話形式のものから、非対話形式(質問なしで自動設定)なもの、キャラクタベースなものから、グラフィカルなもの、または設定ファイルを直接書き換える用途で使用するエディタまで、ユーザーが自由に選択可能である。優先度はパッケージの各質問毎に設定されており、ユーザが介在しないとシステムが動作しなくなる高レベルのものから、デフォルトで問題ないような些細なものまである。(システムに不慣れなユーザのため)ある優先度より低い設定をすべてデフォルトで済ませ、それらを一切質問させないことも可能である。

リリースの種類

A Debian 10.0 Buster box cover

公開は、4つのレベルで行なわれている。

  1. 安定版 (stable):これは、厳密に安定性を検証したリリースで公式のリリースとなる。リリースは2009年より2年の間隔をもっておこなわれ、タイムベースフリーズにより奇数年の12月にフリーズし、翌年の偶数年前半に公開される[37]
    • ソフトウェアのセキュリティホールバグの修正は、主に上流から修正コードをバックポートする事で行なわれる。そのため、ソフトウェアのメジャーバージョン(例: 1.0.0→2.0.0)やマイナーバージョン(例: 1.0.0→1.1.0)が更新されることは滅多になく、ビルドバージョン(例: 1.0.0→1.0.1)かパッケージ番号(例: 1.0.0+deb8u1→1.0.0+deb8u2)が更新されることがほとんどである。
    • 安定版に含まれるソフトウェアは上述のとおりメジャー/マイナーバージョンアップされることが滅多にないが、テスト版や不安定版のパッケージを安定版向けにリビルドし、backportsパッケージとして提供されているソフトウェアが一部存在する。これにより、新しいバージョンのソフトウェアをソースコンパイルすることなく、パッケージ管理下で使用することが可能になる。
    • 不定期に新しいリビジョンがリリースされる。このリリースはそれまでの更新を包含して提供されるマイナーバージョンアップデートであり、構成を変えるものではない。8.0、8.1、8.2に対して8.3リリース時までの全ての更新を適用すると、8.3と同じものになる。
    • リビジョンは下記の形式で示される。
      • 4.0(etch)以前: バージョン番号の末尾の"rN"表記(N = 0, 1, 2, ...)。例えば、3.1リリース4回目のアップデートは、3.1r3
      • 5.0(lenny)以降: バージョン番号の小数第二位の値。例えば、5.0リリース4回目のアップデートは、5.0.4
      • 7.0(wheezy)以降: バージョン番号の小数第一位の値。例えば、7.0リリース4回目のアップデートは、7.4
    • 次の安定版がリリースされると、それまでの安定版は一般に「旧安定版」(oldstable) と呼ばれて区別される。
    • セキュリティアップデートは、次の安定版がリリースされた後も、そのまま一年間は継続して提供される。
      • 6.0(squeeze)以降は、旧安定版のLTS(Long Term Support)が実施されるようになった[38]。Debian LTS teamによって、安定版としての最初のリリース日から少なくとも5年後までセキュリティサポートが提供される。
  2. テスト版 (testing):次期の安定版となる公開テスト中の版である。次に説明する不安定版で一定期間致命的なバグが発見されなかったパッケージが、自動的にテスト版に組み入れられる。
    • デスクトップなどで使う分には支障のない程度の安定度を持っていると言われ、最新のデスクトップを使いたい場合は、このテスト版を使うことが多いようである。だがパッケージ更新が機械的に行なわれるため、依存関係が壊れやすい。
    • リリースが近付くと段階的にフリーズされ、この自動処理が止められる。すべてのRCバグ (Release Critical Bug。安定版として致命的なバグ) が無くなったとき、テスト版は安定版としてリリースされる。
    • テスト版が安定版としてリリースされる時期が近付くとセキュリティアップデートの提供が始まる。それ以前は提供されない。だが、2005年9月より、Debian開発者の有志らがDebian Testing Security Teamを結成し、非公式な形でテスト版向けのセキュリティアップデートを提供している。
  3. 不安定版 (unstable):これは、開発者向けの版である。コードネームは不変で「sid」と呼ばれる。
    • 通常新規パッケージはこのリリースに投入される。セキュリティのアップデートは提供されないが、パッケージの更新サイクルが早いため、セキュリティの問題も比較的早く取り除かれる。またテスト版とは違い、DSA (Debian Security Advisory) によってどのバージョンから当該セキュリティホールが塞がれているか告知される。
  4. 実験版 (experimental):これは、影響が大きなパッケージ群が、不安定版に入れる前に一時的に置かれて、不安定版との組合せによりしばらく実験が行われる。experimentalだけで全てのインストールを行うことは出来ず、他の版との組み合わせにより動く。

Debianのコードネームは、ディズニー配給の映画「トイ・ストーリー」のキャラクタから取られている。これは、過去にDebianのプロジェクトリーダーを務めたブルース・ペレンズが、トイ・ストーリーを製作したピクサー・アニメーション・スタジオの社員であったためである。

リリース/バージョン履歴

凡例
サポートなし(過去のリリース)
サポートあり
現行リリース
バージョン コードネーム リリース日 アーキテクチャ カーネル パッケージ数 サポート期限 特記事項
通常 LTS
1.1 buzz 1996年6月17日 1 1 474 No dpkgELFへ移行、Linux 2.0[39]
1.2 rex 1996年12月12日 1 1 848 No -
1.3 bo 1997年6月2日 1 1 974 No -
2.0 hamm 1998年7月24日 2 1 ~ 1500 No glibcへ移行、新アーキテクチャ: m68k[40]
2.1 slink 1999年3月9日 4 1 ~ 2250 No APT、新アーキテクチャ: alpha, sparc[41]
2.2 potato 2000年8月15日 6 1 ~ 3900 No 新アーキテクチャ: arm, powerpc[9]
3.0 woody 2002年7月19日 11 1 ~ 8500 2006年6月30日[42] 新アーキテクチャ: hppa, ia64, mips, mipsel, s390[43]
3.1 sarge 2005年6月6日 11 1 ~ 15400 2008年3月31日[44] モジュラーインストーラー、半公式amd64サポート
4.0 etch 2007年4月8日 11 1 ~ 18000 2010年2月15日

[45]

グラフィカルインストールサポート、udevへ移行、モジュラーX.Orgへ移行、新アーキテクチャ: amd64、脱落アーキテクチャ: m68k[46] 最終リリースは、2010年5月22日にリリースされた、4.0r9[47]
5.0 lenny[48] 2009年2月14日 11[A] 1 ~ 28000 2012年2月6日[49] 新アーキテクチャ: armel[50] SPARC 32ビットハードウェアサポートがなくなる[51]。完全なEee PCサポート[52]
6.0 squeeze 2011年2月6日 9[B] 2[B] ~ 29000 2014年5月31日[17] 2016年2月29日[53] 新カーネル: kfreebsd(-i386/-amd64)(テクノロジープレビュー)、脱落アーキテクチャ: alpha, hppa, arm[54]。LTS対象アーキテクチャ: i386, amd64[38]eglibcへの移行[55]。新しいinsservとSysv initによる依存関係ベースのブートシーケンスサポート[56]。旧式ライブラリの除去[57]バイナリ・ブロブLinuxカーネルイメージパッケージからの分離[58]。長期サポート(LTS)の開始[18]

KDE 4.4.5, GNOME 2.30, Xfce 4.6, LXDE 0.5.0, X.Org 7.5, Linux 2.6.32[59]

7.0 wheezy[60] 2013年5月4日 11 2 ~ 37000 2016年4月25日[61] 2018年5月31日[61] 新アーキテクチャ: armhf­, s390x[62]。LTS対象アーキテクチャ: i386, amd64, armel, armhf[38]。Multiarchのサポート[63]。amd64向けにUEFIインストール/ブートのサポート[64]

Linux 3.2, kFreeBSD 8.3/9.0, KDE 4.8.4, GNOME 3.4, Xfce 4.8, X.Org 7.7[64]

8.0 jessie[65] 2015年4月25日 10 1 ~ 43000 2018年6月17日[38] 2020年6月30日[38] 新アーキテクチャ: arm64, ppc64el、脱落アーキテクチャ: s390, ia64, sparc、脱落カーネル: kfreebsd(-i386/-amd64)[66]。LTS対象(予定)アーキテクチャ: i386, amd64, armel, armhf[38]eglibcからglibcへの再移行[67]。systemdをデフォルトのinitシステムへ。32ビットシステム上のUEFIのサポート。[65]

Linux 3.16, KDE 4.11.13, GNOME 3.14, Xfce 4.10[65]

9.0 stretch[4] 2017年6月17日 10 1 ~ 52000 2020年[38] 2022年6月[38] 新アーキテクチャ: mips64el、脱落アーキテクチャ: powerpc[68]。MariaDBがMySQLを置き換え。GnuPGを2.1(モダンブランチ)に移行。Xorgサーバーを一般ユーザー権限で実行可能に[69]

Linux 4.9, KDE 5.28. GNOME 3.22, Xfce 4.12[4]

10.0 buster [70] 2019年7月6日 10 1 ~ 59000 2022年 2024年 UEFIセキュアブートのサポート。デフォルトのディスプレイサーバをX.orgからWaylandに移行。Linux 4.19, KDE 5.14, GNOME 3.30, Xfce 4.12。
11.0 bullseye [71] 2021年予定 TBA TBA TBA TBA -
12.0 Bookworm[72] 不明 不明 不明 不明 不明 不明 -
A  Linuxカーネルの11アーキテクチャ + ARMアーキテクチャにおける追加のABI (armel) をサポートしている[16]
B  Linuxカーネルの9つのアーキテクチャ + FreeBSDカーネル(i386、amd64の2アーキテクチャのみ)をサポートしていることを示す[73]


対応アーキテクチャ

HP 9000 C110 PA-RISC workstation booting Debian Lenny

Debianでは、以下のようなアーキテクチャに対応したバイナリ版を作成している。括弧内はプロジェクトでの呼称である。

  • AMD64 (amd64/x86-64)
  • ARM EABI (armel)
  • Hard Float ABI ARM (armhf)
  • 64ビット版ARM
  • x86 (i386/IA-32、ただし現行リリースでは80386には対応しない)
  • MIPS (mips/mipsel)
  • 64ビット版リトルエンディアンMIPS (mips64el)
  • 64ビット版リトルエンディアンPowerPC (ppc64el)
  • System z (s390x)

以下のアーキテクチャはかつてはサポートされていたが、現在では公式にはサポートされていない(一部のアーキテクチャでは非公式なサポートが存在する)。

  • MC68000 (m68k)(etchよりリリースターゲットから外された)
  • Alpha (alpha)(squeezeよりリリースターゲットから外された)
  • ARM (arm)(同上。armelにより置き換え)
  • PA-RISC (hppa)(同上)
  • IA-64 (ia64)(jessieよりリリースターゲットから外された)
  • SPARC (sparc)(同上)
  • IBM S/390及びzSeries(同上。s390xに置き換え)
  • 32ビット版PowerPC (powerpc)(stretchよりリリースターゲットから外された[2]

Linuxカーネル以外をカーネルとするものもある。名称の通り、ユーザーランドはGNUの成果物に依存している。

Logo of Debian GNU/kFreeBSD
  • Debian GNU/kFreeBSD (kfreebsd-i386, kfreebsd-amd64) (jessieよりリリースターゲットから外された)

まだ正式リリースされていない上記以外のアーキテクチャやカーネル版もいくつかある。

アーキテクチャ

  • SuperH (sh4)
  • Motorola/IBM PowerPC64 (ppc64)
  • Linksys NSLU2 (armeb)
  • Renesas Technology M32R (m32r)
  • Sun UltraSPARC (sparc64)
  • 32ビットポインタ搭載64ビットPC (x32)

カーネル

  • Debian GNU/NetBSD (netbsd-i386, netbsd-alpha)
  • Debian GNU/Solaris (solaris-i386)

Debian派生のディストリビューション

Debian 系統樹

派生物調査と協力体制について

Debian プロジェクトは派生ディストリビューションの重要性を完全に認めており、関係者間の協力を活発に支援している。通常これは、当初派生ディストリビューションで開発されていた改善を Debian が取り込むことを意味する。こうすることで、誰もが恩恵を受けることができ、長期におよぶメンテナンス作業を減らすことになる。

このため、派生ディストリビューションは debian-derivatives@lists.debian.org メーリングリストの議論に参加し、派生物調査に参加するよう勧められている。派生物調査は、派生ディストリビューションの中でなされた作業に関する情報を集めることを目標にしている。こうすることで、公式の Debian 開発者が Debian 派生物内の自分のパッケージの状況をより良く追跡することが可能になる[74]

Debian (テスト版) 派生

Debianテスト版の派生品一覧に掲載。

配布版 説明
BackTrack Debian派生であり、Kali Linuxの前身。ペネトレーションテスト目的に特化していることが特徴だった。開発停止。
Kali Linux Debian派生の1DVDタイプ。ペネトレーションテスト目的に特化していることが特徴。BackTrackから派生した後継版。
PureOS 完全に自由ソフトウェアだけで構成されている、プライバシーセキュリティ、利便性に重点を置いているGNU/Linuxディストリビューション。
Astra Linux英語版 ロシアの政府機関における制式OSのひとつ[75]
Ubuntu 6ヶ月ごとの更新と商用サポートを掲げる。デスクトップ環境としてGNOMEを採用している。パソコン雑誌に雑誌社特製のLive CD/DVDとして付属される場合がある。派生版はUbuntu#派生品を参照。

Debian (安定板) 派生

Debian安定板の派生品一覧に掲載。

配布版 説明
Astra Linux英語版 ロシアの政府機関における制式OSのひとつ。
Corel Linux英語版 後継は企業向けディストリビューションでEee PCに搭載されていたXandros。開発停止。
CrunchBang Linux ウィンドウマネージャにOpenBoxを採用し、軽量、高速を重視したディストリビューション。開発停止。
Deepin Wuhan Deepin Technology Co.が開発を手掛ける、Debianを母体とした中国産 Linux ディストリビューション。
Devuan 2014 に Debianから派生[76]
gNewSense GNU FSDGに適合し、フリーソフトウェア財団の支援を受ける。Linux-libreを使用し、ファームウェアのレベルまで100%自由ソフトで構成される。
KANOTIX英語版 Debian派生でCDブート/HDDインストール共可能。
KNOPPIX Debianを基にCDブートで利用できるようにしている。派生版は#Knoppix 派生を参照。
Maemo Nokia N800, N810など携帯端末のほか、Nokia N900 タブレット端末とその他の Linux kernel派生の機器向けに開発された[77]
MEPIS デスクトップ環境にKDEを採用したディストリビューション。開発停止。派生版は#MEPIS 派生を参照。
MintPPC PowerPC 向け。MintPPC は Mint LXDE のコードを用いるが、Linux Mint ではない[78]
OpenZaurus Sharp Zaurus PDA向け Debian パッケージと ROM イメージ。 Ångström distribution英語版後継[79]
Raspbian 小型シングルボードコンピュータであるRaspberry Pi向けに開発されたディストリビューション。
Skolelinux ノルウェー産 Linux で、学校向け thin clientディストリビューション[80]
SolydXK Xfce and KDE desktop focused on stability, security and ease of use.[81]
The Amnesic Incognito Live System (TAILS) プライバシーと匿名性の保護に特化したディストリビューション。Tor#Torの応用も参照。
Vyatta VyOSの前身[82]
VyOS VPN / ルーター / ネットワークファイアウォール用ディストリビューション。

MEPIS 派生

MEPISの派生品一覧に掲載。

配布版 説明
antiX Debian安定版から派生した軽量なライブCDかつインストール可能なディストリビューション。
MX Linux 中量級。KNOPPIXのようにライブCDとしても利用可能。

KNOPPIX 派生

KNOPPIX 系統樹

KNOPPIXの派生品一覧に掲載。

配布版 説明
Damn Small Linux 名刺サイズのCDやUSB pendrive向けの軽量なKNOPPIXLive CD。開発停止。

上記のようにDebianはいくつかのディストリビューションの母体として利用されている。Debianの派生品一覧に掲載されるもののほか、以下はその一部である。


なお、linuxBeanのような派生の派生や、他言語版を含むWikipediaに記事が存在しないものは掲載しない。

その他現行(2020.4.1)のDebian派生ディストリビューション


その他開発終了及び休止したDebian派生ディストリビューション

  • Freespire英語版 : Linspireの無料版。CDブート/HDDインストール共可能。
  • Linspire - 企業向けディストリビューション(旧Lindows)。
  • Progeny Debian - Redhat/FedoraのインストーラAnacondaをインストーラを移植したGNU/Linux。
  • UserLinux - 元Debianプロジェクトリーダーブルース・ペレンズにより提唱され、企業向けディストリビューションの基幹となるべく開発されていたDebianベースのディストリビューション。開発停止。

日本発の派生版

  • Xenoppix : KNOPPIXにXenを搭載した日本のディストリビューション。開発停止。
  • Regret : KNOPPIX派生の日本のディストリビューション。開発停止。


注釈

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関連項目

外部リンク

プロジェクトの公式リソース

コミュニティサイト

カスタムDebianディストリビューション

Debian Pure Blendsに一覧などがある。