「ベテルギウス」の版間の差分
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{{天体 基本 |
{{天体 基本 |
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| 幅 = 320px |
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| 色 = 恒星 |
| 色 = 恒星 |
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| 和名 = ベテルギウス{{R|Hara}} |
| 和名 = ベテルギウス{{R|Hara}} |
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| 英名 = [[:en:Betelgeuse|Betelgeuse]]{{R|Kunitzsch|iaucsn}} |
| 英名 = [[:en:Betelgeuse|Betelgeuse]]{{R|Kunitzsch|iaucsn}} |
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| 画像ファイル = |
| 画像ファイル = Betelgeuse captured by ALMA.jpg |
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| 画像サイズ = |
| 画像サイズ = 250px |
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| 画像説明 = 2017年に[[アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計]](ALMA)によって撮影されたベテルギウス<br><small>(提供: ALMA/E. O’Gorman/P. Kervella)</small> |
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| 画像説明 = [[ヨーロッパ南天天文台|ESO]]によるイラスト |
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| 画像背景色 = |
| 画像背景色 = |
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| 仮符号・別名 = オリオン座α星{{R|simbad}} |
| 仮符号・別名 = オリオン座α星{{R|simbad}} |
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| 視等級 = 0.42{{R|simbad}}<br />0.0 - 1.3(変光){{R|GCVS}} |
| 視等級 = 0.42{{R|simbad}}<br />0.0 - 1.3(変光){{R|GCVS}} |
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| 視直径 = 0.034 - 0.047″ |
| 視直径 = 0.034 - 0.047″ |
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| 変光星型 = [[半規則型変光星]] (SRC){{R|GCVS}} |
| 変光星型 = [[半規則型変光星]] (SRC){{R|GCVS|AAVSO alf Ori|Samus2009}} |
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| 分類 = |
| 分類 = [[赤色超巨星]]{{R|simbad}} |
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{{天体 位置 |
{{天体 位置 |
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| 赤経 = {{RA|05|55|10.30536}}{{R|simbad}} |
| 赤経 = {{RA|05|55|10.30536}}{{R|simbad}} |
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| 赤緯 = {{DEC|+07|24|25.4304}}{{R|simbad}} |
| 赤緯 = {{DEC|+07|24|25.4304}}{{R|simbad}} |
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| 視線速度 =21. |
| 視線速度 = 21.91 km/s{{R|simbad}} |
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| 固有運動 = [[赤経]]: 27.54 [[秒 (角度)|ミリ秒]]/年{{R|simbad}}<br />[[赤緯]]: 11.30 [[秒 (角度)|ミリ秒]]/年{{R|simbad}} |
| 固有運動 = [[赤経]]: 27.54 [[秒 (角度)|ミリ秒]]/年{{R|simbad}}<br />[[赤緯]]: 11.30 [[秒 (角度)|ミリ秒]]/年{{R|simbad}} |
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| parallax = 6.55 |
| parallax = 6.55 |
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| parallax_footnote = {{R|simbad}} |
| parallax_footnote = {{R|simbad}} |
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| 赤方偏移 = 0.000073{{R|simbad}} |
| 赤方偏移 = 0.000073{{R|simbad}} |
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| 距離 = 642.53 ± 146.77[[光年]]<br />(197 ± 45[[パーセク]]){{R| |
| 距離 = 642.53 ± 146.77 [[光年]]<br />(197 ± 45 [[パーセク]]){{R|Harper2008}}{{R|group="注"|注2}} |
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| 絶対等級2 = -5.499 |
| 絶対等級2 = -5.499 |
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| 星図位置画像 = Orion constellation map.png |
| 星図位置画像 = Orion constellation map.png |
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{{天体 物理 |
{{天体 物理 |
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| 色 =恒星 |
| 色 = 恒星 |
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| 赤道直径 = |
| 赤道直径 = |
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| 直径 = |
| 直径 = |
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| 半径 = |
| 半径 = 887 ± 203 [[太陽半径|''R''<sub>☉</sub>]]{{R|Dolan2016}}<br>955 ± 217 ''R''<sub>☉</sub>{{R|Neilson2011}} |
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| 表面積 = |
| 表面積 = |
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| 体積 = |
| 体積 = |
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| 質量 = |
| 質量 = 11.6{{+-|5.0|3.9}} [[太陽質量|''M''<sub>☉</sub>]]{{R|Neilson2011}} |
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| 相対対象(または、相対対象1) = |
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| 相対質量(または、相対質量1) = |
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| 相対対象2 = |
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| 相対質量2 = |
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| 平均密度 = |
| 平均密度 = |
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| 表面重力 = -0.5 |
| 表面重力 = -0.5 (log ''g''){{R|Lobel2000}} |
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| 脱出速度 = |
| 脱出速度 = |
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| 自転周期 = |
| 自転周期 = 5 km/s{{R|Kervella2009}} |
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| スペクトル分類 = |
| スペクトル分類 = M1-M2Ia-Iab{{R|simbad|Keenan1989}} |
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| 光度 = 90,000 - 150,000 [[太陽光度|''L''<sub>☉</sub>]]{{R|Smith2009}} |
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| 絶対等級 = |
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| 光度 = 平均 135,000 [[太陽光度|''L''<sub>☉</sub>]] |
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| 光度係数 = |
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| アルベド = |
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| 赤道傾斜角 = |
| 赤道傾斜角 = |
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| 表面温度 = 3, |
| 表面温度 = 3,590 [[ケルビン|K]]{{R|Neilson2011}} |
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| 最小表面温度 = |
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| 平均表面温度 = |
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| 最大表面温度 = |
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| 可視光明度 = |
| 可視光明度 = |
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| 全波長明度 = |
| 全波長明度 = |
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| 色指数_UB = +2.06{{R|yale}} |
| 色指数_UB = +2.06{{R|yale}} |
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| 色指数_RI = +1.28{{R|yale}} |
| 色指数_RI = +1.28{{R|yale}} |
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| 金属量 = |
| 金属量 = 0.05{{R|Ramírez2000}} |
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| 年齢 = |
| 年齢 = 800 - 850 万年{{R|Dolan2016}} |
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| 大気圧 = |
| 大気圧 = |
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| 色 = 恒星 |
| 色 = 恒星 |
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'''ベテルギウス'''{{R|nao_ac}}({{Lang-en|Betelgeuse}})は[[オリオン座]]にある[[恒星]]で、全天に21個あるの[[1等星]]の1つである。[[おおいぬ座]]の[[シリウス]]、[[こいぬ座]]の[[プロキオン]]とともに、'''[[冬の大三角]]'''を形成している。[[バイエル符号]]での名称は'''オリオン座α星'''で、この表記での英語名は「Alpha Orionis」または「α Orionis」。「Alpha Ori」や「α Ori」と略される事もある。 |
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[[File:Star-sizes.jpg|thumb|400px|【主な星の大きさの比較】<br /> |
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== 概要 == |
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オリオン座の中では[[リゲル]]に次いで2番目に明るい{{refnest|group="注"|name="注3"|『2008年 天文観測年表』の175頁に掲載されている半規則型及び不規則型変光星の一覧表ではベテルギウスの変光範囲は0.0等 - 1.3等となっており{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}、同書182頁に掲載されている5.05等より明るい恒星の一覧表{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=182}}及び189頁に掲載されている3.0等より明るい恒星の一覧表{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=189}}ではリゲルの明るさは0.12等となっており、極大期に限りベテルギウスはバイエル符号の順番通りオリオン座で最も明るく輝く。}}。赤みがかった[[半規則型変光星]](SRC)で、見かけの明るさは0.0 - 1.3[[等級 (天文)|等級]]の間で変化する{{R|GCVS}}{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}。[[近赤外線]]波長では全天で最も明るい恒星となる。 |
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[[スペクトル分類]]M1-2型の[[赤色超巨星]]に分類されるベテルギウスは、肉眼で観望できる恒星の中では[[直径の大きい恒星の一覧|最も直径が大きい恒星]]の1つである。仮にベテルギウスを[[太陽系]]の中心に置いた場合、その大きさは[[小惑星帯]]を超えたあたりにまで及び、[[水星]]、[[金星]]、[[地球]]、[[火星]]の軌道を超え、[[木星]]軌道をも超える可能性がある。しかし、[[銀河系]]においてはベテルギウスの他にも[[ケフェウス座ミュー星|ケフェウス座μ星]]や[[おおいぬ座VY星]]などの赤色超巨星がいくつか存在していることが知られている。[[質量]]は太陽の10倍弱から20倍強の範囲であると計算されている。地球からは640[[光年]]離れていると計算されており、その場合、[[絶対等級]]は-5.5等級となる。ベテルギウスは1000万年も絶たないうちに急速な進化を遂げており、おそらく10万年以内に[[超新星|超新星爆発]]を起こしてその一生を終えることが予想されている。オリオン座のベルトを構成している3つの恒星も属している{{仮リンク|オリオン座OBアソシエーション|en|Orion OB1 Association}}に起源を持ち、そこから飛び出していった[[逃走星]]であり、約30 km/sの速度で星間空間を移動しているため、4光年を超える大きさの[[バウショック]]を形成している。 |
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ベテルギウスは1920年にその[[光球]]の角直径が測定され、太陽以外で角直径が測定された初めての恒星である。その後の研究では、非球面性や[[周辺減光]]、[[脈動変光星|恒星の脈動]]、および異なる波長での外観の変化により、報告されたベテルギウスの角直径は0.042 - 0.056[[秒角]]の範囲となっている。ベテルギウスより大きい角直径を持つ事が知られている恒星は太陽と[[かじき座R星]]のみである。また、恒星自身の{{仮リンク|質量放出|en|Stellar mass loss}}によって引き起こされる、ベテルギウス自身の250倍の大きさを持つ複雑で非対称な{{仮リンク|星周外層|en|Circumstellar envelope}}に包まれている。 |
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== 観測の歴史 == |
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ベテルギウスとその赤みがかった色は古代から注目されてきた。古代ローマの[[天文学者]]である[[クラウディオス・プトレマイオス]]はその色を「ὑπόκιρρος(''hypókirrhos'')」と表現した。この用語は後に[[ウルグ・ベク]]が出版した星表である『''Zij-i Sultani''』の翻訳者によって[[ラテン語]]で「''rubedo''」と呼ばれた{{R|Allen}}<ref>''Stella lucida in umero dextro, quae ad rubedinem vergit.'' "Bright star in right shoulder, which inclines to ruddiness."</ref>。rubedoは英語では「ruddiness」と呼ばれ「赤味」や「(頬などが)赤い様子」を意味する。現在の[[スペクトル分類|星の分類]]の体系が形作られる前であった19世紀に、[[イタリア]]の天文学者[[アンジェロ・セッキ]]はベテルギウスを「[[スペクトル分類#セッキの分類|クラスIII]](赤色から橙色の恒星)」の恒星のプロトタイプの1つとして分類した<ref>{{cite journal|last=Brück|first=H. A.|title=P. Angelo Secchi, S. J. 1818–1878|work=Spectral Classification of the Future, Proceedings of the IAU Colloq. 47|location=Vatican City|year=1979|editor=M. F. McCarthy|editor2=A. G. D. Philip|editor3=G. V. Coyne|pages=7–20|bibcode=1979RA......9....7B}}</ref>。それとは対照的に、プトレマイオスがベテルギウス観測する3世紀前に[[中華人民共和国|中国]]の天文学者は黄色いベテルギウスを観測したと言われている。これが事実である場合、[[西暦紀元]]の初め頃ではベテルギウスが[[黄色超巨星]]の段階にあったことを示している可能性があり<ref>{{cite journal|author=Reed Business Information|url=https://books.google.com/books?id=L4NTyHivbV8C&pg=PA238|title=Ancient Chinese Suggest Betelgeuse is a Young Star|page=238|journal=New Scientist|year=1981|volume=92|issue=1276}}</ref>、現在の研究に基づく黄色超巨星の周りの複雑な星周環境を考慮すると、実際にそうであった可能性はあるとされている{{R|Levesque2010}}。 |
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=== 初期の発見 === |
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[[File:John Herschel 1846 (cropped).png|thumb|left|upright=0.8|ジョン・ハーシェル]] |
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ベテルギウスの明るさの変化は、1836年に[[ジョン・ハーシェル]]によって発見され{{R|Okazaki}}、1849年に彼が出版した著書『天文学概要』(''Outlines of Astronomy'')で発表された。1836年から1840年にかけて観測を行い、彼は1837年10月と1839年11月にベテルギウスの明るさが[[リゲル]]を上回った時にその明るさの大きな変化に気づいた{{R|Wilk1999}}。その後10年間は観測を休止していたが、1849年に、その3年後である1852年に変光のピークに達した別の短い変光サイクルに注目した。その後の観測では、数年の間隔で異常に明るい視等級の極大を記録したが、1957年から1967年まではわずかな変動しか見られなかった。[[アメリカ変光星観測者協会]](AAVSO)の記録では1933年と1942年に最大極大視等級0.2等、1927年と1941年に最低極小視等級1.2等が観測されている<ref>{{cite web|author=Davis, Kate|url=http://www.aavso.org/vsots_alphaori|title=Variable Star of the Month: Alpha Orionis|publisher=[[アメリカ変光星観測者協会|American Association of Variable Star Observers]] (AAVSO)|year=2000|accessdate=2020-02-28}}</ref>{{R|Burnham}}。この明るさの変動は、[[ヨハン・バイエル]]が1603年に出版した『[[ウラノメトリア]]』で、通常ではベテルギウスより明るいリゲル(β星)に匹敵する明るさを持つとしてベテルギウスをα星に指定した理由かもしれない<ref>{{cite book|title=The Hundred Greatest Stars|author=Kaler, James B.|year=2002|publisher=Copernicus Books|location=New York|isbn=978-0-387-95436-3|page=33}}</ref>。[[北極圏]]から見たベテルギウスの赤い色とリゲルより高い天球上での位置から、[[イヌイット]]はベテルギウスをより明るい恒星であるとみなし、現地で呼ばれた名称の1つは「大きな星」を意味する「''Ulluriajjuaq''」であった{{R|inuit}}。 |
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1920年に、[[アルバート・マイケルソン]]と[[フランシス・ピーズ]]は[[ウィルソン山天文台]]にある口径2.5 mの[[ウィルソン山天文台#100インチ (2.5 m) フッカー望遠鏡|フッカー望遠鏡]]の前面に直径6 mの[[干渉法|干渉計]]を取り付けた。[[ジョン・オーガスト・アンダースン]]の助けも借りて、3人はこの干渉計を用いてベテルギウスの角直径を0.047[[秒角]]と測定した。当時測定された[[年周視差]]0.018ミリ秒に基づくと、ベテルギウスの直径は3億8400万 km(2.58 [[天文単位|au]])となる{{R|Michelson1921}}。しかし、[[周辺減光]]と測定の誤差により、この測定の精度には[[不確実性]]が生じた。 |
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1950年代と1960年代には、{{仮リンク|ストラトスコープ|en|Stratoscope}}計画と1958年の[[マーティン・シュヴァルツシルト]]と[[プリンストン大学]]の研究者Richard Härmの著書『''Structure and Evolution of the Stars''』の出版という、赤色超巨星の恒星[[対流]]理論に影響を与える2つの発展が見られた{{R|BruceMedal}}<ref>{{cite book|author=Schwarzschild, Martin|title=Structure and Evolution of the Stars|publisher=Princeton University Press|year=1958|bibcode =1958ses..book.....S|isbn=978-0-486-61479-3}}</ref>。この本は、コンピューター技術を応用して恒星のモデルを作成する方法に関するアイデアを広めることになり、一方でストラトスコープは、乱気流の上の望遠鏡搭載気球から撮影することで、それまでに見られなかった太陽の[[粒状斑]]や[[太陽黒点|黒点]]の高画質画像を作成した。これにより、太陽表面の対流の存在を確認することができた{{R|BruceMedal}}。 |
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=== 撮影技術の飛躍 === |
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[[File:Betelgeuse pulsating UV (HST).jpg|thumb|right|1998年から1999年にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した、スペクトル線プロファイルから非対称の脈動を起こしていることを示すベテルギウスの[[紫外線]]画像]] |
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1970年代の天文学者Antoine Labeyrieによる、[[シーイング]]によって引き起こされるぼかし効果を大幅に削減した[[スペックル・イメージング|スペックル干渉法]]の発案から始まり、人類の天体画像撮影技術は大きな進化を遂げた。地上の[[望遠鏡]]の光学的[[分解能]]が向上したことで、ベテルギウスの[[光球]]のより正確な測定が可能になった<ref>{{cite journal|author=Labeyrie, A.|title=Attainment of Diffraction Limited Resolution in Large Telescopes by Fourier Analysing Speckle Patterns in Star Images|year=1970|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=6|page=85|bibcode=1970A&A.....6...85L}}</ref>{{R|Bonneau1973}}。[[ハワイ]]の[[ウィルソン山天文台]]、[[マクドナルド天文台]]、[[マウナケア天文台群]]にある[[赤外線望遠鏡]]の改良に伴って、天体物理学者らは超巨星を取り巻く複雑な星周殻(Circumstellar shells)を観測し{{R|Sutton1977}}<ref>{{cite journal|author=Bernat, A. P.|author2=Lambert, D. L.|title=Observations of the circumstellar gas shells around Betelgeuse and Antares|year=1975|journal=Astrophysical Journal|volume=201|pages=L153–L156|doi=10.1086/181964|bibcode=1975ApJ...201L.153B}}</ref><ref>{{cite journal|author=Dyck, H. M.|author2=Simon, T.|title=Circumstellar dust shell models for Alpha Orionis|year=1975|journal=Astrophysical Journal|volume=195|pages=689–693|doi=10.1086/153369|bibcode=1975ApJ...195..689D}}</ref>、その結果、対流に起因する巨大な気泡の存在が疑われるようになった<ref>{{cite journal|author=Boesgaard, A. M.|author2=Magnan, C.|title=The circumstellar shell of alpha Orionis from a study of the Fe II emission lines|year=1975|journal=Astrophysical Journal|volume=198|issue=1|pages=369–371, 373–378|doi=10.1086/153612|bibcode=1975ApJ...198..369B}}</ref>。しかし、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、ベテルギウスが[[開口マスキング干渉法]]の通常観測対象になったことから可視光線および赤外線画像の面で大きな躍進があった。John E. Baldwinと[[キャヴェンディッシュ研究所]]宇宙物理学部門に在籍するその同僚らによって開発されたこの新しい技術は、望遠鏡の瞳面にいくつかの穴が開いている小さなマスクを取り付けて[[開口 (光学)|開口]]を特別な干渉計アレイに変換するというものである<ref>{{cite web|url=http://astro.cornell.edu/~dbernat/apm.html#|author=Bernat, David|title=Aperture Masking Interferometry|year=2008|work=Ask An Astronomer|publisher=Cornell University Astronomy|accessdate=2020-02-28}}</ref>。この技術は、光球上の明るいスポットの存在を明らかにしながら、いくつかのベテルギウスの最も正確な測定値の測定に貢献した{{R|Buscher1990}}<ref>{{cite journal|author=Wilson, R. W.|author2=Dhillon, V. S.|author3=Haniff, C. A.|title=The changing face of Betelgeuse|year=1997|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=291|issue=4|page=819|bibcode=1997MNRAS.291..819W|doi=10.1093/mnras/291.4.819}}</ref>。これらは太陽以外では初めて得られた恒星円盤の光学および赤外線画像であり、最初は地上の干渉計で撮影していたが、後に[[イギリス]]の[[ケンブリッジ]]にあるCOAST望遠鏡によって高解像度の画像が撮影されている。これらの機器で観測された「明るいパッチ」もしくは「ホットスポット」と呼ばれる領域は、1975年にマーティン・シュヴァルツシルトが提唱した恒星の表面を支配する大規模な対流セルに関する理論を裏付けることになった{{R|Tuthill1997|Schwarzschild1975}}。 |
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1995年、[[ハッブル宇宙望遠鏡]]のFaint Object Camera(FOC)は、地上の干渉計よりも優れた解像度でベテルギウスの紫外線画像を撮影した{{R|Gilliland1996|hubble}}。これは、太陽以外の恒星の円盤像を従来の望遠鏡で撮影した初めての画像であった{{R|Gilliland1996|hubble}}。紫外線は[[地球の大気]]に吸収されてしまうため、紫外線での観測は[[宇宙望遠鏡]]で行うのが最適とされている<ref>{{cite book|editor=A. N. Cox|title=Allen's Astrophysical Quantities|year=2000|publisher=Springer-Verlag|location=New York|isbn=978-0-387-98746-0}}</ref>。以前に撮影されていた画像と同じように、ハッブルの画像にもベテルギウスを四等分したとき南西側の領域に見える、周囲より温度が2,000 [[ケルビン|K]]高いことを示すホットスポットが確認された<ref>{{cite book|author=Petersen, Carolyn Collins|author2=Brandt, John C.|url=https://archive.org/details/hubblevisionfurt0000pete|publisher=Cambridge University Press|title=Hubble Vision: Further Adventures with the Hubble Space Telescope|location=Cambridge, England|year=1998|edition=2nd|pages=[https://archive.org/details/hubblevisionfurt0000pete/page/91 91–92]|isbn=978-0-521-59291-8}}</ref>。その後、ハッブル宇宙望遠鏡の{{仮リンク|ゴダード高解像度分光器|en|Goddard High Resolution Spectrograph}}(HRS)によって得られたベテルギウスの紫外線[[スペクトル]]から、そのホットスポットがベテルギウスの[[自転軸]]の1つであることが示唆された。これにより、ベテルギウスの自転軸の地球に対する傾斜角は約20度、[[天の北極]]からの位置角は約55度であるとされた<ref>{{cite journal|author=Uitenbroek, Han|author2=Dupree, Andrea K.|author3=Gilliland, Ronald L.|url=http://iopscience.iop.org/1538-3881/116/5/2501/fulltext|title=Spatially Resolved Hubble Space Telescope Spectra of the Chromosphere of α Orionis|year=1998|journal=The Astronomical Journal|volume=116|issue=5|pages=2501–2512|doi=10.1086/300596|bibcode=1998AJ....116.2501U}}</ref>。 |
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=== 2000年代の研究 === |
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2000年12月に公開された研究で、ベテルギウスの角直径が[[ウィルソン山天文台#干渉計|赤外空間干渉計]](ISI)を用いた中間赤外線波長での観測で測定され、その結果、ベテルギウスの角直径は80年前のマイケルソンの測定結果と概ね一致する55.2 ± 0.5 [[秒 (角度)|ミリ秒]]と推定された{{R|Michelson1921|Weiner2000}}。この研究結果の出版地点では、[[ヒッパルコス衛星]]の観測から推定されていたベテルギウスの年周視差7.63 ± 1.64 ミリ秒に基づいて、ベテルギウスの推定半径は5億3856万 km(3.6 au)とされた。しかし2009年に公開された赤外線干渉の研究で、1993年以降、ベテルギウスは著しく減光することなく大きさが15%収縮しており、しかも加速的に収縮していると発表された{{R|ng20090611|UC Berkeley|Townes2009}}。その後の観測からは、ベテルギウスの見かけ上の収縮は広範囲に広がっている[[恒星大気]]のセル活動に起因している可能性が示唆されている{{R|Ravi2011}}。 |
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その直径に加えて、ベテルギウスの広がった恒星大気の複雑な変遷についても疑問が生じていた。[[銀河]]を構成する物質は、[[恒星進化論|恒星が形成されたり破壊される]]につれて再利用されており、赤色超巨星はその主な貢献者となっているが、質量が失われるプロセスについては分かっていない<ref>{{cite journal|author=Bernat, Andrew P.|title=The Circumstellar Shells and Mass Loss Rates of Four M Supergiants|year=1977|journal=Astrophysical Journal|volume=213|pages=756–766|doi=10.1086/155205|bibcode=1977ApJ...213..756B}}</ref>。しかし、干渉法技術の進歩により、天文学者らはこの難題を解決しつつある。2009年7月に[[ヨーロッパ南天天文台]](ESO)が公開した、地上にある[[超大型望遠鏡VLT|VLTI]]干渉計が撮影した画像から、30 auに渡って周囲の恒星大気へ放出されている広大なガスのプルームの存在が示された{{R|Kervella2009}}。この放出範囲は太陽から[[海王星]]までの距離に匹敵し、ベテルギウスの周囲の恒星大気で発生する複数の事象の1つである。天文学者は、ベテルギウスの周囲に少なくとも6つの殻があることを確認している。恒星の進化の末期における質量放出の謎を解けば、これらの巨星の爆発的な終焉を促進させる要因が明らかになるかもしれない{{R|UC Berkeley}}。 |
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=== 2019年から2020年にかけての減光 === |
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[[File:Betelgeuse AAVSO 2019.jpg|thumb|left|アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)による2018年8月から2020年2月までのベテルギウスのVバンドでの視等級の変化。2019年末頃から大きく減光していることが分かる。]] |
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[[File:Eso2003c.jpg|thumb|right|400px|ヨーロッパ南天天文台の[[:en:Spectro-Polarimetric High-Contrast Exoplanet Research|SPHERE]]が撮影した2019年1月(左)と12月(右)のベテルギウスの比較 |
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]] |
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[[File:Betelgeuse.jpg|thumb|right|upright=1.2|通常のオリオン座(左)と2020年初頭に撮影されたベテルギウスが大きく減光した時のオリオン座(右)の比較]] |
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ベテルギウスは脈動する[[半規則型変光星]](SRC)なので、その大きさや温度の変化により複数のサイクルで明るさが変化しているが{{R|GCVS|Dolan2016}}、2019年末頃からベテルギウスは大きく[[減光]]し始め、2020年1月までにベテルギウスの視等級は0.5等級から1.5等級へと明るさにして約2.5倍暗くなり、1月30日には[[光電測光]]や眼視での観測結果からベテルギウスが2等星にまで暗くなったことが確実となった{{R|astroarts20200205}}。同年2月には{{仮リンク|The Astronomer's Telegram|en|The Astronomer's Telegram}}にて記録的な極小視等級1.614等級を記録し、さらに暗くなっていることが報告されている<ref>{{cite news|last=Guinan|first=Edward F.|last2=Wasatonic|first2=Richard J.|title=ATel #13439 Betelgeuse Updates - 1 February 2020; 23:20 UT|url=http://www.astronomerstelegram.org/?read=13439|work=The Astronomer's Telegram|date=2020-02-01|accessdate=2020-02-28}}</ref>。ベテルギウスは現在、最近25年間の研究において「最も暗く低温」な状態にあるとされ、また、半径が収縮していると計算されている。[[天文雑誌]]の[[アストロノミー]]はこのベテルギウスの減光を「奇妙な減光」と述べており{{R|Dec2019-AstroMag}}、これは差し迫っているベテルギウスの[[超新星|超新星爆発]]の予兆ではないかという憶測が一般的に推論されている{{R|Cnet201912}}<ref>{{cite web|author=Erick Mack|url=https://www.cnet.com/news/betelgeuse-star-acting-like-its-about-to-explode-even-if-odds-say-its-not/|title=Betelgeuse star acting like it's about to explode, even if the odds say it isn't|website=CNET|date=2019-12-27|accessdate=2020-02-28}}</ref>。この減光によりベテルギウスは[[明るい恒星の一覧|全天で最も明るく見える恒星]]で上位10位以内の1つであったのが、20位以下にまで降格することになり{{R|AT-20191223}}、近くに見える[[アルデバラン]](0.86等級)と比べても著しく暗くなった{{R|earthsky}}。天文学者らは今後約10万年以内に発生すると予想されているベテルギウスの超新星爆発が現在、切迫しているとは考えづらいという見解を示しているが{{R|NG-20191226|Dec2019-ABC}}、大手メディアの報道では、ベテルギウスで超新星爆発が起きようとしているという推論が議論されている{{R|NG-20191226|Dec2019-ABC|Dec2019-WaPo|Dec2019-NYP}}<ref>{{cite web|url=https://www.cnn.co.jp/fringe/35147489.html|title=オリオン座のベテルギウスに異変、超新星爆発の前兆か天文学者|website=CNN.co.jp|date=2019-12-27|accessdate=2020-02-28}}</ref>。 |
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2020年2月14日、[[ヨーロッパ南天天文台]]は、[[チリ]]・[[パラナル天文台]]の[[超大型望遠鏡VLT|超大型望遠鏡]] (VLT) による撮像を公開した{{R|ESO20200214}}。系外惑星探索機器SPHERE (Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch instrument) による画像では、2019年1月から12月にベテルギウスの明るさと形状が大きく変化したことが示された。また、中間赤外線撮像分光装置VISIR (VLT Imager and Spectrometer for mid Infrared) の画像では、ベテルギウスから放出されるダストプルームを捉えた{{R|ESO20200214}}。 |
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このベテルギウスの変光は[[ビラノバ大学]]の天文学者Richard Wasatonic、Edward Guinan、そしてアマチュア天文家のThomas Calderwoodは、通常の5.9年周期の変光サイクルと通常より大きく減光する425日周期の変光サイクルの極小期が一致したことが、この大幅な減光の原因であると理論化している{{R|AT-20191223}}。他に考えられる要因として、巨大な対流セルが移動、収縮、膨張したことで起こる表面温度の低下、または地球方向へのダストの放出の結果とする仮説が立てられている{{R|ESO20200214|earthsky}}。 |
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2020年2月17日に、ベテルギウスの明るさがこの約10日間変化しておらず、増光に転じる兆候が示された<ref>{{cite web|author=Bruce Dorminey|url=https://www.forbes.com/sites/brucedorminey/2020/02/17/betelgeuse-has-finally-stopped-dimming-says-astronomer/#80156477945b|work=[[フォーブス (雑誌)|Forbes]]|title=Betelgeuse Has Finally Stopped Dimming, Says Astronomer|date=2020-02-17|accessdate=2020-02-28}}</ref>。そして2月22日に、ベテルギウスの減光が完全に止まり、増光に転じ始めた可能性が報告された<ref>{{cite news|last=Guinan|first=Edward|last2=Wasatonic|first2=Richard|last3=Calderwood|first3=Thomas|last4=Carona|first4=Donald|url=http://www.astronomerstelegram.org/?read=13512|title=ATel #13512 - The Fall and Rise in Brightness of Betelgeuse|work=The Astronomer's Telegram|date=2020-02-22|accessdate=2020-02-28}}</ref>。2月24日には、過去50年間の観測から、ベテルギウスの赤外線での外観に有意な変化が検出されなかったと報告された。これは2019年から2020年にかけてのベテルギウスの大幅な視覚的減光とは無関係であるとされ、中心核の崩壊が差し迫っているわけではないことを示唆している<ref>{{cite news|author=Gehrz, R.D. ''et al.''|title=ATel #13518 - Betelgeuse remains steadfast in the infrared|url=http://www.astronomerstelegram.org/?read=13518|work=The Astronomer's Telegram|date=2020-02-24|accessdate=2020-02-28}}</ref>。2月26日、天文学者らはスペクトルにおいてベテルギウスの塵の前駆物質の1つである大量の[[酸化チタン]](TiO)の存在が報告され、ベテルギウスが冷却している可能性があることが示唆された<ref>{{cite news|author=Sbordone, Luca ''et al.''|title=ATel #13525 - A high-resolution, high S/N, optical HARPS public spectrum of Betelgeuse during minimum|url=http://www.astronomerstelegram.org/?read=13525|work=The Astronomer's Telegram|date=2020-02-26|accessdate=2020-02-28}}</ref>。 |
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== 観測 == |
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[[File:Orion Head to Toe.jpg|thumb|right|upright=0.9|ベテルギウス(左上)と[[オリオン座分子雲]]の高密度星雲を写した画像]] |
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独特な赤橙色を放つため、ベテルギウスは冬の夜空では簡単に見つけることができる。[[冬の大三角]]を構成する3つの恒星のうちの1つで、[[冬のダイヤモンド]]の中心にある。毎年1月初め頃になると、日没直後に東の空から昇るベテルギウスを観測できる。9月中旬から翌年の3月中旬にかけては(12月中旬頃が最適)、南緯82度以南の[[南極大陸]]を除いて、世界中のほぼ全ての地域で観測できる。5月では北半球の中緯度、6月では南半球で日没後に、西の地平線近くでベテルギウスを短時間見ることができ、数ヶ月後にまた日の出前に東の地平線近くに再び現れるようになる。6月から7月にかけては南緯70度から80度の南極地域の正午の時間帯(太陽が地平線より下にある場合のみ)を除いて肉眼では観測できなくなる(望遠鏡を用いれば昼間に観測できる)。 |
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ベテルギウスの見かけの明るさは0.0 - 1.3等級の範囲で変化する{{R|GCVS}}。最も明るくなる極大期にはリゲルや[[カペラ]]よりも明るくなり、全天で6番目に明るい恒星になる期間もある。最も暗くなる極小期では[[デネブ]]や[[みなみじゅうじ座ベータ星|みなみじゅうじ座β星]]よりも暗くなり、全天で20番目の明るさにまで後退する{{R|Burnham}}。 |
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ベテルギウスのB-V[[色指数 (天文)|色指数]]は1.85で{{R|yale}}、これは恒星が顕著に赤みがかっていることを示す数値である。光球の周りには恒星大気が広がっており、この大気は[[スペクトル]]上で[[スペクトル#吸収線スペクトル|吸収線]]っではなく強い[[スペクトル#輝線スペクトル|輝線]]を示す。これは恒星の周辺が厚い気体の外層に囲まれているときに発生する現象である。この広がったガス状大気は光球の[[視線速度]]の変動に応じてベテルギウスから遠ざかる方向に移動することが観測されている。ベテルギウスは[[近赤外線]]光源としては全天で最も明るい天体で、{{仮リンク|Jバンド|en|J band (infrared)}}での明るさは-2.99等級に達する<ref>{{cite web|author=Cutri, R.|author2=Skrutskie. M.|url=http://www.ipac.caltech.edu/2mass/releases/allsky/doc/sec1_6b.html#satr1|title=Very Bright Stars in the 2MASS Point Source Catalog (PSC)|publisher=The Two Micron All Sky Survey at IPAC|date=2009-09-07|accessdate=2020-02-28}}</ref>。このことから、ベテルギウスが放出している[[放射エネルギー]]のうち、[[可視光線]]として放射されるのは全体の約13%ということになる。仮に人間が全ての波長の光を認識できたら、ベテルギウスが全天で最も明るい恒星になっていたであろう{{R|Burnham}}。 |
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{{仮リンク|Catalog of Components of Double and Multiple Stars|en|Catalog of Components of Double and Multiple Stars}}(CCDM)では、ベテルギウスの周りにある5個の暗い見かけの伴星がリストアップされている。それらの恒星はベテルギウスから0.1 - 174.4秒角離れており、いずれも10等級より暗い<ref>{{cite web|title=CCDM (Catalog of Components of Double & Multiple stars (Dommanget+ 2002)|work=[[VizieR]]|publisher=CDS|url=http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-S?CCDM%20J05552%2b0724AP |accessdate=2020-02-28}}</ref><!-- <ref>{{cite journal|last=Mason|first=Brian D.|last2=Wycoff|first2=Gary L.|last3=Hartkopf|first3=William I.|last4=Douglass|first4=Geoffrey G.|last5=Worley|first5=Charles E.|title=The 2001 US Naval Observatory Double Star CD-ROM. I. The Washington Double Star Catalog|year=2001|journal=The Astronomical Journal|volume=122|issue=6|pages=3466|doi=10.1086/323920|bibcode=2001AJ....122.3466M}}</ref> -->。 |
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=== 恒星系 === |
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ベテルギウスは一般的に単独の孤立した[[逃走星]]であると考えられており、現在はどの[[星団]]または星形成領域にも関連付けられておらず、ベテルギウスがどこで形成されたかは不明である{{R|VanLoon2013}}。 |
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1985年にベテルギウスには2つの[[分光連星|分光伴星]]の存在が示されている。1968年から1983年までのベテルギウスの[[偏光]]データの分析により、約2.1年の周期でベテルギウスを[[公転]]している密接する伴星が存在することが示されている。[[スペックル・イメージング|スペックル干渉法]]を用いて、研究チームは2つの伴星のうち近い方はベテルギウスに対する位置角が273度で、0.06 ± 0.01[[秒 (角度)|秒]](~9 au)離れている潜在的にベテルギウスの[[彩層]]の中に位置する軌道を持ち、そして遠い方の伴星は位置角278度で、0.51 ± 0.01秒(~77 au)離れていると推定した<ref>{{cite journal|author=Karovska, M.|author2=Noyes, R. W.|author3=Roddier, F.|author4=Nisenson, P.|author5=Stachnik, R. V.|title=On a Possible Close Companion to α Ori|year=1985|journal=Bulletin of the American Astronomical Society|volume=17|page=598|bibcode=1985BAAS...17..598K}}</ref><ref>{{cite journal|author=Karovska, M.|author2=Nisenson, P.|author3=Noyes, R.|title=On the alpha Orionis triple system|year=1986|journal=Astrophysical Journal|volume=308|pages=675–685|doi=10.1086/164497|bibcode=1986ApJ...308..260K}}</ref>。しかし、さらなる研究ではこれらの伴星の証拠は見つかっておらず、これらの伴星の存在は現在では否定されているが{{R|Wilson1992}}、全体的な流動に寄与している密接する伴星が存在している可能性は完全には排除できていない{{R|Haubois2009}}。1980年代および1990年代時点の技術をはるかに超えたベテルギウスとその周辺の高解像度干渉法を用いても、そのような伴星は検出されていない{{R|Kervella2009|Montargès2016}}。 |
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=== 距離の測定 === |
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[[File:USA.NM.VeryLargeArray.02.jpg|thumb|right|[[アメリカ国立電波天文台]]の[[超大型干渉電波望遠鏡群]](VLA)を用いて2008年にベテルギウスまでの距離の推定値が算出された]] |
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1838年に[[フリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセル]]が初めて[[年周視差]]の測定に成功して以来、天文学者らはベテルギウスまでの距離の測定に困惑してきた。恒星までの距離を知ることで、[[光度 (天文学)|光度]]などの恒星に関する他のパラメーターの精度が向上させることができる。また、角直径と組み合せれば恒星の物理半径と[[有効温度]]の計算にも使用できる。光度と[[天然存在比|同位体存在量]]は、恒星の年齢や[[質量]]を推定するのにも使用できる{{R|Harper2008}}。 |
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1920年に最初の干渉研究がベテルギウスの直径測定で行われたとき、年周視差は18.0ミリ秒と仮定された。この場合、ベテルギウスまでの距離は約180[[光年]](約56[[パーセク]])となり、この値によりベテルギウスの不正確な半径の他にベテルギウスに関する様々な特性がもたらされた。それ以来、ベテルギウスまでの距離を測定するための継続的な作業が行われ、約1,300光年(約400パーセク)という数値が提案された{{R|Harper2008}}。 |
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1997年に[[ヒッパルコス星表]]が発表される前は、ベテルギウスまでの距離について矛盾する2つの測定値があった。一方は1991年に測定された年周視差9.8 ± 4.7ミリ秒に基づく約330光年(約102パーセク)という推定で<ref>{{cite journal|author=van Altena, W. F.|author2=Lee, J. T.|author3=Hoffleit, D.|title=Yale Trigonometric Parallaxes Preliminary|year=1995|journal=Yale University Observatory (1991)|volume=1174|page=0|bibcode=1995yCat.1174....0V}}</ref>、もう一方は[[:en:Hipparcos#Hipparcos Input Catalogue|Hipparcos Input Catalogue]]に記録された年周視差5 ± 4ミリ秒に基づく約650光年(約200パーセク)とする推定だった<ref>{{cite web|url=http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-S?HIC%2027989|title=Hipparcos Input Catalogue, Version 2 (Turon+ 1993)|work=VizieR|publisher=CDS|year=1993|accessdate=2020-02-28}}</ref>。この両者の推定値は[[不確実性]]が大きく、研究者らはこの不確実性を考慮して広範囲の距離推定値を採用していたため、ベテルギウスの特性の計算には大きなばらつきがあった{{R|Harper2008}}。 |
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[[ヒッパルコス (人工衛星)|ヒッパルコス]]による測定結果は1997年に発表された。測定されたベテルギウスの年周視差は7.63 ± 1.64ミリ秒で、これを基に計算すると距離は約427光年(約131パーセク)になり、それ以前の推定値よりも不確実性は小さくなった<ref>{{cite journal|last=Perryman|first=M. A. C.|last2=Lindegren|first2=L.|last3=Kovalevsky|first3=J.|last4=Hoeg|first4=E.|last5=Bastian|first5=U.|last6=Bernacca|first6=P. L.|last7=Crézé|first7=M.|last8=Donati|first8=F.|last9=Grenon|first9=M.|title=The Hipparcos Catalogue|year=1997|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=323|pages=L49–L52|bibcode=1997A&A...323L..49P}}</ref>。しかし、ベテルギウスのような変光星のヒッパルコスによる測定結果を後に検証したところ、これらの測定値の不確実性が過小評価されていたことが判明した<ref>{{cite journal|author=Eyer, L.|author2=Grenon, M.|title=Problems Encountered in the Hipparcos Variable Stars Analysis|year=2000|journal=Delta Scuti and Related Stars, Reference Handbook and Proceedings of the 6th Vienna Workshop in Astrophysics|volume=210|page=482|bibcode=2000ASPC..210..482E|isbn=978-1-58381-041-5|arxiv=astro-ph/0002235}}</ref>。2007年には、改善された測定値として6.55 ± 0.82ミリ秒が算出され、それを基に496 ± 65光年(152 ± 20パーセク)という推定値が得られた<ref>{{citation|title=Validation of the new Hipparcos reduction|last1=van Leeuwen|first1=F.|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=474|issue=2|pages=653–664|date=2007|arxiv=0708.1752|bibcode=2007A&A...474..653V|doi=10.1051/0004-6361:20078357}}</ref>。 |
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2008年に[[超大型干渉電波望遠鏡群]](VLA)を使用して行われた測定では、ベテルギウスの年周視差は5.07 ± 1.10ミリ秒、距離は642 ± 147光年(197 ± 45パーセク)という結果が示された{{R|Harper2008}}。研究者のGraham Harperは「修正されたヒッパルコスによるベテルギウスの年周視差は、オリジナルの結果(427光年)よりも遠方の距離を示した(520光年)。しかし、[[位置天文学]]的に解決するには依然として2.4ミリ秒の大きな{{仮リンク|宇宙雑音|en|Cosmic noise}}が必要である。これらの結果を考えると、ヒッパルコスのデータにはまだ起源不明の系統的誤差が含まれていることは明らかだ。」と指摘している。無線データにも系統的誤差は生じるが、Harperのソリューションはデータセットを組み合わせてそのような誤差を軽減することが期待されている。[[アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計]](ALMA)と{{仮リンク|MERLIN|label=e-MERLIN|en|MERLIN}}による観測では、年周視差4.51 ± 0.80ミリ秒および距離724{{+-|111|156}}光年(222{{+-|34|48}}パーセク)という値が得られている<ref>{{cite journal|last=Harper|first=G. M.|last2=Brown|first2=A.|last3=Guinan|first3=E. F.|last4=O'Gorman|first4=E.|last5=Richards|first5=A. M. S.|last6=Kervella|first6=P.|last7=Decin|first7=L.|url=https://lirias.kuleuven.be/handle/123456789/591314|title=An Updated 2017 Astrometric Solution for Betelgeuse|year=2017|journal=The Astronomical Journal|volume=154|issue=1|pages=11|doi=10.3847/1538-3881/aa6ff9|bibcode=2017AJ....154...11H|arxiv=1706.06020}}</ref>。 |
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[[欧州宇宙機関]](ESA)が現在運用している[[ガイア計画]]では、搭載されている機器の限界から、6等級より明るい恒星に対しては良質な測定結果が得られることは期待されていなかったが<ref>{{cite web|url=http://www.rssd.esa.int/index.php?page=Science_Performance&project=GAIA|title=Science Performance|publisher=[[欧州宇宙機関|European Space Agency]]|date=2013-02-19|accessdate=2020-02-28}}</ref>、実際に運用したところ、3等級程度の恒星でも良質な測定結果が示されている。明るい恒星の強行観測は、最終結果が全ての明るい恒星で利用可能であることを意味し、ベテルギウスの年周視差は現在すでに測定されているものよりも遥かに正確な測定値として公開されるとされているが<ref>{{cite journal|author=T. Prusti|author2=GAIA Collaboration|title=The ''Gaia'' mission|year=2016|journal=Astronomy and Astrophysics|url http://www.aanda.org/articles/aa/pdf/forth/aa29272-16.pdf|format=PDF|volume=595|pages=A1|doi=10.1051/0004-6361/201629272|bibcode=2016A&A...595A...1G|arxiv=1609.04153}}</ref>、現時点ではガイア計画による測定結果の中にベテルギウスのデータは含まれていない<ref>{{cite web|url=https://gea.esac.esa.int/archive/|title=Welcome to the Gaia Archive|website=Gaia archive|accessdate=2020-02-28}}</ref>。 |
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=== 変光 === |
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[[File:Light curve of Betelgeuse.png|thumb|left|upright=1.2|アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)による1988年12月から2002年8月までのベテルギウスの[[光度曲線]]]] |
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ベテルギウスは変光に顕著な周期性があるが、変光の度合いや周期の長さがその都度異なることもある[[半規則型変光星]]に分類される。その中でもベテルギウスは視等級の変動が1等級程度で、変光周期が数十日から数百日程度の脈動する赤色超巨星が分類されるSRC型に当てはまる{{R|GCVS|AAVSO alf Ori|Samus2009}}。 |
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ベテルギウスは通常、0.5等級に近い範囲でわずかに明るさが変動するが、極端な場合には極大期で0.0等級まで明るくなり、極小期で1.3等級まで暗くなることもある{{R|GCVS|AAVSO alf Ori}}{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}。ベテルギウスは[[変光星総合カタログ]](GCVS)に記載されており、変光周期は2,335日(6.4年)とされているが{{R|GCVS|Samus2009}}、より詳細な分析では周期400日近くのメインサイクルと周期2,100日(5.75年)前後のより長い二次サイクルとに分けれることが示されている{{R|Montargès2016|Kiss2006}}。しかし上記のように、信頼性のある記録の中で最も暗い1.614等級という視等級も記録されている。 |
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赤色超巨星の対称的な脈動すなわち動径脈動(Radial pulsation)については十分にモデル化されており、数百日間の変光周期は通常、[[基準振動|基本的]]で最初の[[倍音]]の脈動によるものであることが示されている<ref>{{cite journal|last=Guo|first=J. H.|last2=Li|first2=Y.|title=Evolution and Pulsation of Red Supergiants at Different Metallicities|year=2002|journal=The Astrophysical Journal|volume=565|issue=1|pages=559–570|doi=10.1086/324295|bibcode=2002ApJ...565..559G}}</ref>。ベテルギウスのスペクトル中に見られる[[スペクトル線]]には、明るさの変化に大まかに対応している[[視線速度]]の変化を示す[[ドップラー効果]]が見られる。これはベテルギウスの大きさの変動の性質を示しているが、大きさに対応する温度とスペクトルの変動は明確に見受けられていない<ref>{{cite journal|last=Goldberg|first=L.|title=The variability of alpha Orionis|year=1984|journal=Astronomical Society of the Pacific|volume=96|pages=366|doi=10.1086/131347|bibcode=1984PASP...96..366G}}</ref>。ベテルギウスの直径の変動は直接測定されてもいる{{R|Ravi2011}}。 |
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周期が長い二次サイクルの発生要因は不明で、動径脈動では説明することができない{{R|Kiss2006}}。ベテルギウスの干渉観測では、恒星の直径の大部分を占め、それぞれが恒星の全光度の5 - 10%を放射し、大規模な対流セルによって形成されるホットスポットによって生じていることが示されている{{R|Haubois2009|Montargès2016}}。周期が長い二次サイクルの要因を説明できる1つの理論として、恒星の自転と組み合わせて進化したそのような対流セルによって引き起こされるというものがある{{R|Kiss2006}}。他にも、密接した未知の伴星との相互作用、質量損失に影響する彩層の磁気活動、または[[星震学#波のタイプ|gモード]]のような非動径脈動(Non-radial pulsations)によるとする理論もある<ref>{{cite journal|last=Wood|first=P. R.|last2=Olivier|first2=E. A.|last3=Kawaler|first3=S. D.|title=Long Secondary Periods in Pulsating Asymptotic Giant Branch Stars: An Investigation of their Origin|year=2004|journal=The Astrophysical Journal|volume=604|issue=2|pages=800|doi=10.1086/382123|bibcode=2004ApJ...604..800W}}</ref>。 |
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2016年現在の変光範囲は0.0等 - 1.3等となっている。肉眼で観測できる数少ない変光星の一つであり、[[北半球]]における[[冬]]([[南半球]]では[[夏]])の[[半規則型変光星]]の中では、最もはっきりとした変光を示す。北半球における冬(南半球では夏)に見える半規則型変光星には、他に[[オリオン座W星]]{{efn2|W Ori:212日周期で5.5等 - 6.9等の間を変光<ref name="AAVSO W Ori">[http://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=23069 VSX : Detail for W Ori] - アメリカ変光星観測者協会公式サイト内のページ。</ref>、スペクトル型はC5,4(ハーバード方式ではN5){{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}。}}や[[うさぎ座RX星]]{{efn2|RX Lep:79.54日周期で5.12等 - 6.65等の間を変光<ref name="AAVSO RX Lep">[http://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=17295 VSX : Detail for RX Lep] - アメリカ変光星観測者協会公式サイト内のページ。</ref>、スペクトル型はM6III{{R|AAVSO RX Lep}}。}}、[[いっかくじゅう座V523星]]{{efn2|V523 Mon:34.14日周期で6.95等 - 7.45等の間を変光<ref name="AAVSO V523 Mon">[http://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=19351 VSX : Detail for V0523 Mon] - アメリカ変光星観測者協会公式サイト内のページ。</ref>、スペクトル型はM5III{{R|AAVSO V523 Mon}}。}}などがあるが{{efn2|ただし、赤色超巨星のベテルギウスと異なりオリオン座W星・うさぎ座RX星・いっかくじゅう座V523星はいずれも[[赤色巨星]]であり、3個とも半規則型変光星内での細分類はSRB型である{{R|AAVSO W Ori|AAVSO RX Lep|AAVSO V523 Mon}}。}}、3個ともベテルギウスほど明確な光度変化は見られない。 |
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=== 直径 === |
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{{See also|[[直径の大きい恒星の一覧]]}} |
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1920年12月13日に、太陽以外の恒星では初めての光球の角直径の測定がベテルギウスで行われた{{R|Michelson1921}}。当時の干渉法技術はまだ初期の段階であったが、この測定には成功した。研究者らは均一な恒星円盤モデルを用いて、ベテルギウスの角直径が0.047秒であると測定したが、[[周辺減光]]により周辺が暗くなるため実際にはそれよりも17%大きくなるとして、ベテルギウスの角直径を0.055秒と推定した{{R|Michelson1921|Townes2009}}。それ以降に行われた他の研究で求められたベテルギウスの角直径は0.042 - 0.069秒の範囲だった{{R|Bonneau1973|Weiner2000|Balega1982}}。これらのデータをベテルギウスまでの距離の推定範囲180 - 815光年と組み合わせるとベテルギウスの半径は1.2 - 8.9 au(1億7600万 - 13億3100万 km)となる。それと比較して、太陽から[[火星]]までは1.5 au、[[小惑星帯]]にある[[ケレス (準惑星)|ケレス]]までは2.7 au、[[木星]]までは5.2 au離れている。仮に太陽系において太陽をベテルギウスに置き換えると、光球の大きさは木星軌道を超え、9.5 au離れた[[土星]]軌道付近にまで達する可能性がある。 |
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[[File:Betelgeuse radio wavelengths.jpg|thumb|right|upright=1.2|1998年に撮影されたベテルギウスの光球の大きさ(黒円)と恒星大気への強制対流の効果を示した電波画像]] |
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ベテルギウスには以下の理由により、正確な直径を測定するのが困難だった。 |
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# ベテルギウスは脈動星なので、時間とともにその直径が変化する。 |
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# 周辺減光により縁部が暗くなると発光する色が変化し、中心から離れるにつれて明るさが暗くなるので、ベテルギウスには定義可能な「縁」が無い。 |
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# ベテルギウスは表面から放出された物質、つまり光を吸収もしくは放出する物質で構成された星周外層に包まれているため、光球の範囲を定義することが難しい{{R|UC Berkeley}}。 |
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# [[電磁スペクトル]]内の様々な波長で直径の測定を行うことができるが、報告される直径の測定値には30 - 35%もの差が生じる場合もあり、また、恒星の見かけの大きさは観測する波長によって異なるため、これらの測定結果を比較することは困難である{{R|UC Berkeley}}。研究では、測定されたベテルギウスの角直径は紫外線波長でかなり大きくなるが、近赤外線波長では見かけの大きさは小さくなり、中赤外線波長では再び大きく見えるようになることが示されている{{R|Gilliland1996|Perrin2004}}<ref>{{cite web|last=Young|first=John|url=http://www.mrao.cam.ac.uk/telescopes/coast/betel.html|title=Surface Imaging of Betelgeuse with COAST and the WHT|publisher=[[ケンブリッジ大学|University of Cambridge]]|date=2006-11-24|accessdate=2020-02-28|deadurl=yes|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070614111315/http://www.mrao.cam.ac.uk/telescopes/coast/betel.html|archivedate=2007-06-14|quote=Images of hotspots on the surface of Betelgeuse taken at visible and infra-red wavelengths using high resolution ground-based interferometers}}</ref>。 |
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# 乱流が[[角分解能]]を低下させるため、[[シーイング|大気の揺らぎ]]が地上の望遠鏡から得られる画像の分解能を制限させてしまう{{R|Buscher1990}}。 |
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これらの問題を解決するために。研究者は様々な解決策を採用している。1868年に[[アルマン・フィゾー]]によって初めて考案された天文干渉法は、現在の望遠鏡の性能を大幅に改良することを可能にさせ、さらに1880年代の[[マイケルソン干渉計]]の発明につながり、ベテルギウスの最初の直径測定にも至った独創的な概念であった<ref>{{cite journal|author=Perrin, Guy|author2=Malbet, Fabien|title=Observing with the VLTI|year=2003|journal=EAS Publications Series|volume=6|page=3|doi=10.1051/eas/20030601|bibcode=2003EAS.....6D...3P}}</ref>。1つではなく2つの目で物体を認識すると人間の[[空間認識能力|奥行き感覚]]が向上するように、フィゾーは恒星の空間分光分布に関する情報をもたらす干渉を得るために、1つではなく2つの開口部から恒星を観察することを提案した。その後科学は急速に進化し、複数の開口部がある干渉計がスペックル・イメージングの撮影に使用されるようになり、フーリエ解析を用いて合成して高解像度のポートレートを作成している<ref>{{cite web|author=Nemiroff, R.; Bonnell, J., eds.|url=https://apod.nasa.gov/apod/ap120421.html|title=3 ATs|work=[[Astronomy Picture of the Day]]|publisher=NASA|date=2012-04-21|accessdate=2020-02-28|quote=Photograph showing three of the four enclosures which house 1.8 meter Auxiliary Telescopes (ATs) at the Paranal Observatory in the Atacama Desert region of Chile.}}</ref>。1990年代に行われたベテルギウスのホットスポットはこの方法論で特定された<ref>{{cite journal|author=Worden, S.|title=Speckle Interferometry|year=978|journal=New Scientist|volume=78|pages=238–240|bibcode=1978NewSc..78..238W}}</ref>。その他の技術的革新として、[[補償光学]]<ref>{{cite book|author=Roddier, F.|title=Ground-Based Interferometry with Adaptive Optics|year=1999|journal=Working on the Fringe: Optical and IR Interferometry from Ground and Space. Proceedings from ASP Conference|volume=194|page=318|isbn=978-1-58381-020-0|bibcode=1999ASPC..194..318R}}</ref>、[[ハッブル宇宙望遠鏡]]や[[スピッツァー宇宙望遠鏡]]のような[[宇宙望遠鏡]]{{R|Gilliland1996}}<ref>{{cite web|url=http://www.jpl.nasa.gov/news/features.cfm?feature=2132|title=Top Five Breakthroughs From Hubble's Workhorse Camera|publisher=NASA Jet Propulsion Laboratory, California Institute of Technology|date=2009-05-04|accessdate=2020-02-28}}</ref>、3つの望遠鏡から照射される光線を同時に組み合わせることでミリ秒単位の空間分解能を達成できるAstronomical Multi-BEam Recombiner(AMBER)<ref>{{cite web|author=Melnick, J.|author2=Petrov R.|author3=Malbet, F.|url=http://www.eso.org/public/news/eso0706/|title=The Sky Through Three Giant Eyes, AMBER Instrument on VLT Delivers a Wealth of Results|publisher=European Southern Observatory|date=2007-02-23|accessdate=2020-02-28}}</ref><ref>{{cite journal|author=Wittkowski, M.|title=MIDI and AMBER from the User's Point of View|year=2007|journal=New Astronomy Reviews|volume=51|issue=8–9|pages=639–649|doi=10.1016/j.newar.2007.04.005|bibcode=2007NewAR..51..639W}}</ref>が含まれる。 |
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電磁スペクトルのどの部分で(可視光域か、近赤外域か、または中赤外域か)最も正確にベテルギウスの直径を測定できるかについては、未だに議論が続いている。ベテルギウスは56.6 ± 1.0ミリ秒の角直径を持つと測定された。2000年には54.7 ± 0.3ミリ秒と測定されているが、この測定値は中赤外線では目立たないホットスポットの影響は無視している{{R|Weiner2000}}。また、理論上の周辺減光による減光の差し引きを含めると角直径は55.2 ± 0.5ミリ秒とされた。以前の推定値では、2008年にHarperが仮定した642 ± 147光年(197 ± 45パーセク){{R|Smith2009}}というベテルギウスまでの距離を用いて、半径は太陽と木星間の距離にほぼ等しい5.6 auすなわち1,200 [[太陽半径]](''R''<sub>☉</sub>)に相当するとされた。それを基に木星軌道とほぼ同じ大きさのベテルギウスを描いた図が2009年に天文雑誌アストロノミー、その翌年に[[Astronomy Picture of the Day]](APOD)に掲載された<ref>{{cite web|url=http://www.astronomy.com/en/News-Observing/News/2009/06/Red%20giant%20star%20Betelgeuse%20in%20the%20constellation%20Orion%20is%20mysteriously%20shrinking.aspx|title=Red Giant Star Betelgeuse in the Constellation Orion is Mysteriously Shrinking|website=Astronomy Magazine|year=2009|accessdate=2020-02-28}}</ref><ref>{{cite web|author=Nemiroff, R.; Bonnell, J., eds.|url=http://apod.nasa.gov/apod/ap100106.html|title=The Spotty Surface of Betelgeuse|work=Astronomy Picture of the Day|publisher=NASA|date=2010-01-06|accessdate=2020-02-28}}</ref>。 |
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2004年、近赤外線を用いてより正確な光球の角直径測定を行ったPerrinが率いる研究チームは、その角直径を43.33 ± 0.04ミリ秒と測定した{{R|Perrin2004}}。この研究では、観測する波長が異なるとベテルギウスの直径の測定値も異なってくる理由についても説明されている。恒星は大きく温度が高い広がった恒星大気を通じて観測される。短波長(可視スペクトル)では光が大気で散乱されるため、わずかに直径が大きく見えるようになり、一方で近赤外波長(KバンドおよびLバンド)では、光の散乱は無視できるので本来の光球を直接見ることできる。そして、中赤外波長では、散乱が再び起きるようになり、また、暖かい大気の[[熱放射]]によって見かけの直径が大きくなることが示された{{R|Perrin2004}}。 |
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[[File:Orion's Big Head Revealed in Infrared.jpg|thumb|right|ベテルギウスと[[オリオン座ラムダ星|λ星]]と[[オリオン座ガンマ星|γ星]]の周囲に広がる[[星雲]]の赤外線画像]] |
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2009年に公開された[[:en:Infrared Optical Telescope Array|Infrared Optical Telescope Array]](IOTA)とVLTIを使用した研究により、Perrinらによる分析が強く支持され、ベテルギウスの角直径が42.57 - 44.28ミリ秒と比較的狭い誤差範囲で求められた{{R|Haubois2009|Hernandez2009}}。2011年には2009年に発表された角直径の測定結果を裏付ける、近赤外波長としては3番目に測定された、周辺減光しているベテルギウスの角直径の推定値として42.49 ± 0.06ミリ秒が得られている{{R|Ohnaka2011}}。その結果として、2004年にPerrinらが報告した角直径43.33ミリ秒と2007年にヒッパルコスの観測データを基にvan Leeuwenが報告したベテルギウスまでの距離496 ± 65光年(152 ± 20パーセク)とを組み合わせると、近赤外波長におけるベテルギウスの光球の半径は3.4 auすなわち730太陽半径(5億860万 km)となる{{R|Kervella2011}}。2014年に発表された論文では、VLTIに搭載されたAMBERを用いて行われたHバンドとKバンドでの観測を用いて、42.28ミリ秒(明るさが一様で周辺減光がないとすると41.01ミリ秒に相当)という角直径が導き出された<ref>{{cite journal|author=Montargès, M.|author2=Kervella, P.|author3=Perrin, G.|author4=Ohnaka, K.|author5=Chiavassa, A.|author6=Ridgway, S. T.|author7=Lacour, S.|title=Properties of the CO and H2O MOLsphere of the red supergiant Betelgeuse from VLTI/AMBER observations|year=2014|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=572|pages=id.A17|bibcode=2014A&A...572A..17M|doi=10.1051/0004-6361/201423538|arxiv=1408.2994}}</ref>。 |
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同じく2009年の研究では、1993年から2009年にかけてベテルギウスの半径が約15%も収縮しており、しかも加速的に収縮しているらしいことがわかった{{R|ng20090611|Townes2009}}<ref>{{cite web|last=Cowen|first=Ron|url=http://www.sciencenews.org/view/generic/id/44573/title/Betelgeuse_shrinks|title=Betelgeuse Shrinks: The Red Supergiant has Lost 15 Percent of its Size|website=ScienceNews.org|date=2009-06-10|accessdate=2020-02-28|quote=The shrinkage corresponds to the star contracting by a distance equal to that between Venus and the Sun, researchers reported June 9 at an American Astronomical Society meeting and in the June 1 Astrophysical Journal Letters.}}</ref>。この研究では、これまで発表されてきたほとんどの研究とは異なり、特定の波長のみで観測された15年分の観測データを研究対象とした。それまでの研究では、複数の波長で観測された連続で1 - 2年分のデータが調査されていたが、多くの場合において非常にばらつきのある結果となっていた。ベテルギウスの見かけの大きさは、1993年の測定では56.0 ± 0.1ミリ秒だったのが2008年の測定では47.0 ± 0.1ミリ秒になっており、約15年間の間にほぼ0.9 au(1億3464万 km)も収縮したことになる。この観測結果が天文学者らが理論化してきたような光球のリズミカルな膨張と収縮の証拠であるかどうかは完全にはわかっていないが、もしそうであるならば周期的なサイクルが存在する可能性があるが、研究グループを率いたTownesは仮にそのようなサイクルがあるとするなら、その周期はおそらく数十年に及ぶとしている{{R|Townes2009}}。他に考えられる要因として、対流によって光球の突出が起きている可能性や、非対称の形状であることから恒星が自転軸を中心に自転すると膨張と収縮が起きることによる可能性がある<ref>{{cite web|author=Courtland, Rachel|url=https://www.newscientist.com/article/dn17282-betelgeuse-the-incredible-shrinking-star.html|title=Betelgeuse: The incredible Shrinking Star?|work=New Scientist|publisher=Reed Business Information Ltd.|year=2009|accessdate=2020-02-28}}</ref>。 |
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ベテルギウスの膨張と収縮の可能性を示唆している中赤外波長での測定値と、光球が比較的一定の直径を持つことを示唆している近赤外波長での測定値の違いに関する議論はまだ解決されていない。2012年に発表された論文で、[[カリフォルニア大学バークレー校]]の研究チームは測定値が「光球上の冷たく光学的に厚い物質の挙動に支配されている」と報告し、恒星の見かけ上の膨張と収縮は光球自体ではなく、周囲の外殻の活動によるものである可能性を示した{{R|Ravi2011}}。この結論がさらに裏付けられれば、ベテルギウスの平均角直径がPerrinらが推定した43.33ミリ秒に近いことを示唆することになり、ベテルギウスの大きさはHarperらが報告したもの(643光年)よりも短い距離496光年と仮定すると3.4 au(730太陽半径)となる。ガイア計画で、ベテルギウスの大きさを計算する際に使用する距離の仮定値を明らかにできるかもしれない。 |
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かつては太陽以外ではベテルギウスが最も大きい角直径を持つと考えられていたが、1997年に[[かじき座R星]]の角直径が57.0 ± 0.5ミリ秒と測定されたことで、太陽以外で最大の角直径を持つ恒星ではなくなった。しかし、かじき座R星は地球から約200光年と近く、ベテルギウスまでの距離の約3分の1程度しか離れていない<ref>{{cite journal|author=Bedding, T. R.|last2=Zijlstra|first2=A. A.|last3=Von Der Luhe|first3=O.|last4=Robertson|first4=J. G.|last5=Marson|first5=R. G.|last6=Barton|first6=J. R.|last7=Carter|first7=B. S.|title=The Angular Diameter of R Doradus: a Nearby Mira-like Star|year=1997|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=286|issue=4|pages=957–962|doi=10.1093/mnras/286.4.957|bibcode=1997MNRAS.286..957B|arxiv=astro-ph/9701021}}</ref>。 |
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一般的に大きく低温の恒星の半径はロスランド半径(Rosseland radius)で報告されており、3分の2の特定の[[光学的深さ]]での光球の半径として定義されている。これは、恒星の有効温度とボロメトリック光度から計算された半径に対応する。ロスランド半径は直接測定された半径とは異なるが、角直径測定に使われる波長に応じて広く使用されている換算係数である<ref>{{cite journal|last=Dyck|first=H. M.|last2=Van Belle|first2=G. T.|last3=Thompson|first3=R. R.|title=Radii and Effective Temperatures for K and M Giants and Supergiants. II|year=1998|journal=The Astronomical Journal|volume=116|issue=2|pages=981|doi=10.1086/300453|bibcode=1998AJ....116..981D|citeseerx=10.1.1.24.1889}}</ref>。例えば、角直径が55.6ミリ秒と測定された場合、平均ロスランド直径は56.2ミリ秒となる。2016年に発表された、広がった外層ではない、ベテルギウスの光球の角直径測定から得られたロスランド半径は6億1735万 km(4.13 au、887太陽半径)であった{{R|Dolan2016}}。 |
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== 物理的特性 == |
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[[File:Comparison of planets and stars (2017 update).png|left|thumb|350px|いくつかの恒星と太陽系の惑星との相対的な大きさの比較(2017年10月時点のデータに基づいている)<br /><small> |
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1. [[水星]] < [[火星]] < [[金星]] < [[地球]]<br /> |
1. [[水星]] < [[火星]] < [[金星]] < [[地球]]<br /> |
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2. [[地球]] < [[海王星]] < [[天王星]] < [[土星]] < [[木星]]<br /> |
2. [[地球]] < [[海王星]] < [[天王星]] < [[土星]] < [[木星]]<br /> |
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3. [[木星]] < [[ウ |
3. [[木星]] < [[プロキシマ・ケンタウリ]] < [[太陽]] < [[シリウス]]<br /> |
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4. [[シリウス]] < [[ポルックス (恒星)|ポルックス]] < [[アークトゥルス]] < [[アルデバラン]]<br /> |
4. [[シリウス]] < [[ポルックス (恒星)|ポルックス]] < [[アークトゥルス]] < [[アルデバラン]]<br /> |
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5. [[アルデバラン]] < [[リゲル]] < [[アンタレス]] < '''ベテルギウス'''<br /> |
5. [[アルデバラン]] < [[リゲル]] < [[アンタレス]] < '''ベテルギウス'''<br /> |
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6. '''ベテルギウス''' < [[ |
6. '''ベテルギウス''' < [[はくちょう座V1489星]] < [[ケフェウス座VV星]]A < [[おおいぬ座VY星]] < [[たて座UY星]]</small>]] |
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[[File:Mukyv354.png|right|thumb|250x250px|ベテルギウス、[[ガーネット・スター]](ケフェウス座μ星)、[[はくちょう座KY星]]、[[ケフェウス座V354星]]の大きさの比較(2005年時点のデータに基づく)]] |
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ベテルギウスは[[スペクトル分類]]においてM1-M2Ia-Iab型の、非常に巨大で明るい低温の恒星である[[赤色超巨星]]に分類される{{R|simbad}}。スペクトル分類における「M」はベテルギウスが[[スペクトル分類#M型星|M型星]]に属する赤色の恒星で、表面温度が低いことを意味している。「Ia-Iab」もしくは「Ia-ab」という接尾辞は[[スペクトル分類#ヤーキスのスペクトル分類|恒星の光度階級]]を示しており、ベテルギウスは「明るい[[超巨星]](Ia型)」と「中間の明るさの超巨星(Iab型)」の間の特性を持つことを意味する。1943年以来、ベテルギウスは他の恒星をスペクトル分類で分類する際の安定したアンカーポイントの1つとして機能してきた<ref>{{cite journal|author=Garrison, R. F.|url=http://www.astro.utoronto.ca/~garrison/mkstds.html|title=Anchor Points for the MK System of Spectral Classification|year=1993|journal=Bulletin of the American Astronomical Society|volume=25|page=1319|bibcode=1993AAS...183.1710G}}</ref>。 |
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表面温度、直径、および距離の不確実性が大きいため、ベテルギウスの正確な光度を測定することは困難だが、2012年の研究では距離を652光年(200パーセク)と仮定して光度を126,000[[太陽光度]](''L''<sub>☉</sub>)と見積った{{R|LeBertre2012}}。表面温度は、2001年の研究で3,250 - 3,690 [[ケルビン|K]]と報告されている。しかし、この範囲外の数値が報告されることもあり、大気中の脈動により数値は大きく変動しているとされている{{R|Dolan2016}}。最も最近報告されたベテルギウスの[[自転]]速度は5 km/sで、これは特性がベテルギウスと似ている[[アンタレス]]の20 km/sよりもかなり遅い<ref>{{cite web|url=http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-S?HR%206134|title=Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed. (Hoffleit+, 1991)|work=VizieR|publisher=CDS|accessdate=2020-02-28}}</ref>。<!-- The rotation period depends on Betelgeuse's size and orientation to Earth, but it has been calculated to take {{val|8.4|u=years}} to turn on its axis.{{R|Dolan2016}} --> |
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'''ベテルギウス'''{{R|nao_ac}}(Betelgeuse)は、'''オリオン座α星'''、[[オリオン座]]の[[恒星]]で全天21の1等星の1つ。[[おおいぬ座]]の[[シリウス]]、[[こいぬ座]]の[[プロキオン]]とともに、'''[[冬の大三角]]'''を形成している。 |
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2004年に、コンピューターシミュレーションを使用して行われた研究で、ベテルギウスは自転していなくてもその広がった大気により大規模な[[恒星活動|磁気活動]]が発生する可能性があると推測された。恒星大気は適度に強い磁場でも恒星の塵、恒星風、質量損失の特性に有意な影響を与える可能性がある要因とされている<ref>{{cite journal|author=Dorch, S. B. F.|url=http://www.astro.ku.dk/~dorch/paper/copies/Dorch2004.pdf|format=PDF|title=Magnetic Activity in Late-type Giant Stars: Numerical MHD Simulations of Non-linear Dynamo Action in Betelgeuse|year=2004|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=423|issue=3|pages=1101–1107|doi=10.1051/0004-6361:20040435|bibcode=2004A&A...423.1101D|arxiv=astro-ph/0403321}}</ref>。[[ピク・デュ・ミディ|ピク・デュ・ミディ天文台]]にある[[:en:Bernard Lyot Telescope|Bernard Lyot望遠鏡]]で2010年に行われた一連の分光偏光観測で、ベテルギウスの表面に弱い[[磁場]]が存在していることが明らかになり、巨大な対流運動が小規模な[[ダイナモ効果]]を引き起こせることが示唆されている<ref>{{cite journal|author=Aurière, M|author2=Donati, J. -F.|author3=Konstantinova-Antova, R.|author4=Perrin, G.|author5=Petit, P.|author6=Roudier, T.|title=The Magnetic Field of Betelgeuse : a Local Dynamo from Giant Convection Cells?|year=2010|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=516|page=L2|doi=10.1051/0004-6361/201014925|bibcode=2010A&A...516L...2A|arxiv=1005.4845}}</ref>。 |
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== 概要 == |
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[[スペクトル分類|M型]]の[[赤色超巨星]]。また、[[変光星]]でもあり、星自体の形状が変化する[[脈動変光星]]、中でも[[半規則型変光星|半規則的に変光するSRC型]]に分類されている{{R|GCVS|AAVSO alf Ori}}{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}。これらの特徴から[[主系列星]]を終えた進化段階にあると考えられている。 |
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星座中最も明るいとされる[[バイエル符号]]αが付けられているが、極大期を除いてβ星の[[リゲル]]より暗い{{refnest|group="注"|name="注3"|『2008年 天文観測年表』の175頁に掲載されている半規則型及び不規則型変光星の一覧表ではベテルギウスの変光範囲は0.0等 - 1.3等となっており{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}、同書182頁に掲載されている5.05等より明るい恒星の一覧表{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=182}}及び189頁に掲載されている3.0等より明るい恒星の一覧表{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=189}}ではリゲルの明るさは0.12等となっており、極大期に限りベテルギウスはバイエル符号の順番通りオリオン座で最も明るく輝く。}}。 |
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=== 質量 === |
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ベテルギウスの周囲を[[公転]]する伴星が知られていないため、その質量を直接計算することはできない。理論的モデリングからはベテルギウスの質量は9.5[[太陽質量]](''M''<sub>☉</sub>)や、21太陽質量といった一致しない推定値が算出されていた{{R|Neilson2011}}。より古い研究では5 - 30太陽質量の範囲とされていた<ref>{{cite arxiv|last=Posson-Brown|first=Jennifer|last2=Kashyap|first2=Vinay L.|last3=Pease|first3=Deron O.|last4=Drake|first4=Jeremy J.|year=2006|title=Dark Supergiant: Chandra's Limits on X-rays from Betelgeuse|eprint=astro-ph/0606387|version=v2|bibcode=2006astro.ph..6387P}}</ref>。太陽の90,000 - 150,000倍の光度を持つことを考えると、ベテルギウスの初期の質量は15 - 20太陽質量であったと計算されている{{R|Smith2009}}。2011年に超巨星の質量を決定させる新たな方法が提案された。その方法による狭いHバンド干渉計を使った恒星の強度プロファイル(Intensity profile)の観測と光球測定で求められたベテルギウスの半径測定値6億4328万 km(3.4 au、955太陽半径)に基づいて、ベテルギウスの現在の質量は11.6太陽質量、上限値16.6太陽質量、下限値7.7太陽質量であると求められた{{R|Neilson2011}}。進化軌跡へのモデル適合からは、初期のベテルギウスの質量は20太陽質量で、現在の質量は19.4 - 19.7太陽質量であるという値が得られている{{R|Dolan2016}}。 |
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[[ファイル:Betelgeuse IR inv (30368513560).jpg|thumb|光源を白黒反転表示させて撮影した画像。(撮影年月日不明)]] |
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=== 距離 === |
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[[2008年]]になり、定説となっていた約427[[光年]]という推定距離が大幅に改められ約642光年となった{{R|HarperBrown2008}}。 |
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=== 運動 === |
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[[File:Orion OB1 & 25 Ori Group.png|right|thumb|180px|オリオン座OB1アソシエーション]] |
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ベテルギウスの変光は、イギリスが当時植民地だった[[南アフリカ共和国|南アフリカ]]に設置した天文台で、[[1836年]]に[[ジョン・ハーシェル]]によって発見された{{R|Okazaki}}。天文台での観測は航海に役立てるためのものであり、ハーシェルは星の明るさを測定していたところ、ベテルギウスの変光に気が付いたのである。2016年現在の変光範囲は0.0等 - 1.3等となっている{{R|GCVS|AAVSO alf Ori}}{{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}。肉眼で観測できる数少ない変光星の一つであり、[[北半球]]における[[冬]]([[南半球]]では[[夏]])の[[半規則型変光星]]の中では、最もはっきりとした変光を示す。北半球における冬(南半球では夏)に見える半規則型変光星には、他に[[オリオン座W星]]{{refnest|group="注"|name="注4"|W Ori:212日周期で5.5等 - 6.9等の間を変光<ref name="AAVSO W Ori">[http://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=23069 VSX : Detail for W Ori] - アメリカ変光星観測者協会公式サイト内のページ。</ref>、スペクトル型はC5,4(ハーバード方式ではN5){{Sfn|天文観測年表編集委員会|2007|page=175}}。}}や[[うさぎ座RX星]]{{refnest|group="注"|name="注5"|RX Lep:79.54日周期で5.12等 - 6.65等の間を変光<ref name="AAVSO RX Lep">[http://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=17295 VSX : Detail for RX Lep] - アメリカ変光星観測者協会公式サイト内のページ。</ref>、スペクトル型はM6III<ref name="AAVSO RX Lep"/>。}}、[[いっかくじゅう座V523星]]{{refnest|group="注"|name="注6"|V523 Mon:34.14日周期で6.95等 - 7.45等の間を変光<ref name="AAVSO V523 Mon">[http://www.aavso.org/vsx/index.php?view=detail.top&oid=19351 VSX : Detail for V0523 Mon] - アメリカ変光星観測者協会公式サイト内のページ。</ref>、スペクトル型はM5III<ref name="AAVSO V523 Mon"/>。}}などがあるが{{refnest|group="注"|name="注7"|但し赤色超巨星のベテルギウスと異なりオリオン座W星・うさぎ座RX星・いっかくじゅう座V523星はいずれも[[赤色巨星]]であり、3個とも半規則型変光星内での細分類はSRB型である<ref name="AAVSO W Ori"/><ref name="AAVSO RX Lep"/><ref name="AAVSO V523 Mon"/>。}}、3個ともベテルギウスほど明確な光度変化は見られない。 |
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ベテルギウスの[[運動学|運動]]は複雑なものになっている。現在の位置と[[固有運動]]から、時間を遡ってベテルギウスの位置をたどっていくと、ベテルギウスは銀河面から945光年(290パーセク)離れた場所に位置していたことになる。そこには[[星形成|星形成領域]]が無いため、恒星が形成されるとは信じられない領域であった。特に[[超長基線アレイ]](VLBA)による測定から、ベテルギウスと[[オリオン大星雲|オリオン星雲星団]](ONC、Orion OB1dとも呼ばれる)は1,268 - 1,350光年(389 - 414パーセク)離れていることが示されているため、投影されたベテルギウスの軌跡は[[:en:25 Orionis|オリオン座25番星サブアソシエーション]]やベテルギウスよりかなり若いオリオン星雲星団とも交差していないとみられている。そのため、ベテルギウスは形成以降、常に現在のような運動をしているとは限らず、おそらく近くの恒星の超新星爆発の影響などを受けて進路を時折変えた可能性がある{{R|Harper2008|Reynolds1979}}。2013年1月に[[ハーシェル宇宙望遠鏡]]が観測を行ったところ、ベテルギウスの恒星風が周囲の[[星間物質]]に衝突していることが明らかになった<ref>{{cite journal|last=Decin|first=L.|last2=Cox|first2=N. L. J.|last3=Royer|first3=P.|last4=Van Marle|first4=A. J.|last5=Vandenbussche|first5=B.|last6=Ladjal|first6=D.|last7=Kerschbaum|first7=F.|last8=Ottensamer|first8=R.|last9=Barlow|first9=M. J.|last10=Blommaert|first10=J. A. D. L.|last11=Gomez|first11=H. L.|last12=Groenewegen|first12=M. A. T.|last13=Lim|first13=T.|last14=Swinyard|first14=B. M.|last15=Waelkens|first15=C.|last16=Tielens|first16=A. G. G. M.|title=The enigmatic nature of the circumstellar envelope and bow shock surrounding Betelgeuse as revealed by Herschel. I. Evidence of clumps, multiple arcs, and a linear bar-like structure|year=2012|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=548|pages=A113|doi=10.1051/0004-6361/201219792|bibcode=2012A&A...548A.113D|arxiv=1212.4870}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.astroarts.co.jp/news/2013/01/23betelgeuse/index-j.shtml|title=ベテルギウスの行く手をはばむ?謎の壁|website=AstroArts|date=2013-01-23|accessdate=2020-02-28}}</ref>。 |
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最もあり得るベテルギウスの星形成シナリオは、ベテルギウスが{{仮リンク|オリオン座OB1アソシエーション|en|Orion OB1 Association}}から飛び出した[[逃走星]]であるというものである。元々、ベテルギウスはオリオン座OB1アソシエーションの一部である「Orion OB1a」内の大質量の恒星から成る[[多重星]]のメンバーで、形成から800 - 850万年が経過していると考えられているが{{R|Dolan2016}}、その大質量がゆえに急速な進化を遂げた{{R|Harper2008}}。2015年に、H. BouyとJ. Alvesはベテルギウスが新たに発見された「Taurion OB Association」と呼ばれる[[アソシエーション (天文学)|アソシエーション]]のメンバーである可能性を示唆した<ref>{{cite journal|last=Bouy|first=H.|last2=Alves|first2=J.|title=Cosmography of OB stars in the solar neighbourhood|year=2015|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=584|id=A26|pages=13|doi=10.1051/0004-6361/201527058|bibcode=2015A&A...584A..26B}}</ref>。 |
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=== 直径 === |
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ベテルギウスを[[太陽系]]の中心に置いたとすると、[[火星]]軌道を大きく超え、[[木星]]軌道の近くまで達する{{R|apod20100106}}。また、ベテルギウスは地球からの見かけの大きさ([[視直径]])が[[太陽]]を除いて全天で最も大きい恒星である。 |
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=== 星周環境の変遷 === |
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[[1920年]]に[[アルバート・マイケルソン]]と[[フランシス・ピーズ]]は[[ウィルソン山天文台]]の[[ウィルソン山天文台#100インチ (2.5 m) フッカー望遠鏡|フッカー望遠鏡]](2.5m反射望遠鏡)に[[干渉計]]を取り付け、その視直径が約0.047秒であることを見出した。これは、400km離れた所に置いた野球ボールと同程度である。[[1970年代]]に[[:en:Antoine Émile Henry Labeyrie|アントニー・ラベイリ]]は[[スペックル・イメージング|スペックル干渉法]]によって、ベテルギウスの実際の星像を得ることに成功している。 |
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[[File:ESO-Betelgeuse.jpg|left|thumb|200px|ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTが撮影した、ベテルギウスを取り囲む円盤と広がった恒星大気を写した画像]] |
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[[恒星進化論|恒星の進化]]の後期段階では、ベテルギウスのような大質量星は質量損失の割合が高くなっていき、10,000年ごとに太陽1個分程度の質量を失っていくとされており、周囲に絶え間なく変化する複雑な星周環境を生み出している。2009年に発表された論文では、恒星の質量損失が「初期から現在までの宇宙の進化、そして[[惑星]]形成や[[生命]]の発生そのものを理解するための鍵」であると言及されている<ref>{{cite journal|author=Ridgway, Stephen|last2=Aufdenberg|first2=Jason|last3=Creech-Eakman|first3=Michelle|last4=Elias|first4=Nicholas|last5=Howell|first5=Steve|last6=Hutter|first6=Don|last7=Karovska|first7=Margarita|last8=Ragland|first8=Sam|last9=Wishnow|first9=Ed|title=Quantifying Stellar Mass Loss with High Angular Resolution Imaging|year=2009|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=247|page=247|bibcode=2009astro2010S.247R|arxiv=0902.3008}}</ref>。しかし、その物理的メカニズムについてはよく分かっていない{{R|Kervella2011}}。[[マーティン・シュヴァルツシルト]]が最初に超巨星周辺の巨大な対流セルの理論を提案したとき、彼はそれがベテルギウスのような進化した超巨星の質量損失の原因である可能性があると主張した{{R|Schwarzschild1975}}。最近の研究でこの主張は裏付けられているが、対流の構造、質量損失のメカニズム、広がった恒星大気中の塵の形成方法、およびII型超新星という劇的な最期を迎える条件については依然として不確実性がある{{R|Kervella2011}}。2001年にGraham Harperらは、ベテルギウスが10,000年ごとに0.03太陽質量を恒星風として放出されていると推定したが<ref>{{cite journal|author=Harper, Graham M.|author2=Brown, Alexander|author3=Lim, Jeremy|title=A Spatially Resolved, Semiempirical Model for the Extended Atmosphere of α Orionis (M2 Iab)|year=2001|journal=The Astrophysical Journal|volume=551|issue=2|pages=1073–1098|doi=10.1086/320215|bibcode=2001ApJ...551.1073H}}</ref>、2009年以降の研究によりベテルギウスに関する全ての数値が不確実になってしまう一時的な質量損失の証拠が得られた{{R|Ohnaka2009}}。 |
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[[File:Betelgeuse Plume eso0927d.jpg|thumb|right|表面に巨大な「泡」が発生し、太陽系でいう海王星軌道付近に相当する自身の半径の6倍以上先にまで放出されるガスのプルームを持つベテルギウスを示したヨーロッパ南天天文台によるイラスト]] |
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[[1995年]]には[[ハッブル宇宙望遠鏡]]により、太陽以外の恒星では初めて、干渉法によらずに直接その姿が撮影された{{R|hubble}}。 |
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天文学者らがこの問題を解くことはそう遠くないことかもしれない。現在、少なくともベテルギウスの半径の6倍に及ぶ巨大なガスのプルームが存在していることが発見されており、ベテルギウスが全ての方向に均等に物質を放出しているわけではないことが示されている{{R|Kervella2009}}。プルームの存在は、赤外線観測でしばしば観測される光球の球状対称性がプルームに近い環境下では保存されないことを意味している。ベテルギウスの形状の非対称性は異なる波長による観測で報告されていたが、VLTの補償光学装置(NACO)によりこの非対称性の特性が注目されている。このような非対称の質量損失を引き起こす可能性がある2つのメカニズムとして、大規模な対流セルによるというものと自転によって生じる可能性がある極質量損失(Polar mass loss)によるというものがある{{R|Kervella2009}}。ヨーロッパ南天天文台のAMBERを用いてさらに詳しく調べたところ、広がった恒星大気中のガスが上下に激しく動き、ベテルギウス自身と同程度の大きさの「泡」が生成されていることが観測された。そのような恒星の大変動は、Kervellaによって観測された大規模なプルーム放出を支持するものとして結論付けられた{{R|Ohnaka2009}}。 |
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==== 非対称の対流セル ==== |
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光球に加えてベテルギウスの大気にある、MOL球(MOLsphere)もしくは分子環境(Molecular environment)、気体外層(Gaseous envelope)、[[彩層]]、ダスト環境(Dust environment)、および[[一酸化炭素]]で構成される2つの外殻(「S1」と「S2」と呼ばれる)という6つの要素が存在していることが特定されている。これらの要素の一部は非対称であることが知られており、他の要素は互いに重なり合っている{{R|Haubois2009}}。 |
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[[File:ESO Paranal Platform.jpg|thumb|left|[[チリ]]の[[パラナル天文台]]にある、ヨーロッパ南天天文台の超巨大望遠鏡VLTの外観]] |
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光球からベテルギウスの半径の約0.45倍(~2 - 3 au)離れたところには'''MOL球'''もしくは'''分子環境'''と呼ばれる分子層がある。調査によると、この層は[[水蒸気]]と一酸化炭素で構成されており、有効温度は約1,500 ± 500 Kとされている{{R|Haubois2009}}<ref>{{cite journal|author=Tsuji, T.|title=Water on the Early M Supergiant Stars α Orionis and μ Cephei|year=2000|journal=The Astrophysical Journal|volume=538|issue=2|pages=801–807|doi=10.1086/309185|bibcode=2000ApJ...538..801T}}</ref>。水蒸気の存在は、1960年代に行われた2つのストラトスコープ計画によるスペクトル分析で初めて検出されていたが、数十年に渡って無視されていた。MOL球には、塵粒子の形成を説明できる分子である[[一酸化ケイ素]](SiO)や[[酸化アルミニウム]](Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)も含まれている{{R|Haubois2009}}。 |
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[[File:Eso-paranal-16.jpg|thumb|left|VLTにある4つの口径8.2 mのユニット望遠鏡のうちの1つの外観]] |
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より温度が低い別の領域にある非対称の'''気体外層'''は、光球から数倍(~10 - 40 au)離れている。[[炭素]]に対して酸素、特に[[窒素]]が豊富に含まれている。これらの組成異常は、ベテルギウス内部からの[[CNOサイクル]]によって処理された物質による汚染が原因である可能性がある{{R|Haubois2009}}<ref>{{cite journal|author=Lambert, D. L.|author2=Brown, J. A.|author3=Hinkle, K. H.|author4=Johnson, H. R.|title=Carbon, Nitrogen, and Oxygen Abundances in Betelgeuse|year=1984|journal=Astrophysical Journal|volume=284|pages=223–237|doi=10.1086/162401|bibcode=1984ApJ...284..223L}}</ref>。 |
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1998年に撮影された電波望遠鏡の画像で、ベテルギウスは非常に複雑な大気を有していることが確認された{{R|NRAO}}。表面温度は3,450 ± 850 Kで、表面の温度に近いが、同じ領域にある周囲のガスと比べると遥かに低温である{{R|NRAO}}<ref>{{cite journal|author=Lim, Jeremy|author2=Carilli, Chris L.|author3=White, Stephen M.|author4=Beasley, Anthony J.|author5=Marson, Ralph G.|title=Large Convection Cells as the Source of Betelgeuse's Extended Atmosphere|year=1998|journal=Nature|volume=392|issue=6676|pages=575–577|doi=10.1038/33352|bibcode=1998Natur.392..575L}}</ref>。VLAの画像では、この低温のガスが外側に広がるにつれてさらに徐々に冷えることが示されている。この特性がベテルギウスの大気の中で最も豊富な構成要素であることが判明し、これは予想外なことではあったが、この研究を行った研究チームのリーダーであるJeremy Limは「これにより、赤色超巨星の大気に関する基本的な理解が変わるだろう」と説明している{{R|NRAO}}。また、「表面近くの高温に加熱されたガスにより恒星の大気が均一に膨張する代わりに、いくつかの巨大な対流セルが恒星の表面から大気中にガスを推進させているようだ」と述べている{{R|NRAO}}。このガスの成分として炭素と窒素を含む可能性があり、地球から見て恒星の南西方向に光球の半径の6倍以上に広がっている、2009年にKervellaらによって発見された明るいプルームが存在しているところと同じ領域にある{{R|Haubois2009}}。 |
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ベテルギウスの彩層は、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されたFaint Object Camera(FOC)によって紫外線波長を用いて観測された。その画像からはまた、ベテルギウスを四等分したとき、南西側に明るい領域が存在することが明らかになった{{R|Lobel2004}}。1996年に測定された彩層の平均半径は光球の2.2倍(~10 au)で、温度は5,500 K未満とされた{{R|Haubois2009}}<ref>{{cite journal|author=Dupree, Andrea K.|author2=Gilliland, Ronald L.|title=HST Direct Image of Betelgeuse|year=1995|journal=Bulletin of the American Astronomical Society|volume=27|page=1328|bibcode=1995AAS...187.3201D|quote=Such a major single feature is distinctly different from scattered smaller regions of activity typically found on the Sun although the strong ultraviolet flux enhancement is characteristic of stellar magnetic activity. This inhomogeneity may be caused by a large scale convection cell or result from global pulsations and shock structures that heat the chromosphere." }}</ref>。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている高精度分光計STIS(宇宙望遠鏡撮像分光器)を用いて行われた2004年の観測では、ベテルギウスから少なくとも1秒角離れた領域でも暖かい彩層[[プラズマ]]の存在が示された。 ベテルギウスまでの距離を642光年(197パーセク)と仮定すると、彩層の大きさは最大200 auになる{{R|Lobel2004}}。この観測により、温かい彩層プラズマが気体外層内の冷たいガスと周囲のダストセル内のダストと空間的に重なり合っており、共存していることが決定的に示された{{R|Haubois2009|Lobel2004}}。 |
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[[File:Nebula around Betelgeuse.jpg|thumb|VLTによって撮影されたベテルギウスの周囲の複雑なガスとダストのセル構造を写した赤外線画像。[[:File:Nebula and betelgeuse VLT.jpg|中央にある赤い円]]は光球の大きさを表す]] |
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ベテルギウスを取り巻くダスト(塵)から成るセル(殻)構造は1977年に初めて存在が主張され、成熟した恒星の周りにあるダストのセル構造はしばしば光球による寄与を超える大量の[[放射線]]を放出することが指摘された。[[ヘテロダイン|ヘテロダイン干渉計]]を使用したところ、ベテルギウスは想定される半径に応じて半径の12倍を超える領域、すなわち太陽系でいう[[エッジワース・カイパーベルト]]が存在する領域に相当するおよそ50 - 60 au離れた位置から、その過剰な放射線の大部分を放出していると結論付けられた{{R|Sutton1977|Haubois2009}}。しかしそれ以来、様々な波長で行われたダスト外層の研究では明らかに異なる結果がもたらされてきた。1990年代の研究では、ダストのセル構造の内側半径は0.5 - 1.0秒、すなわち100 - 200 auであると測定された{{R|Skinner1997}}<ref>{{cite journal|author=Danchi, W. C.|author2=Bester, M.|author3=Degiacomi, C. G.|author4=Greenhill, L. J.|author5=Townes, C. H.|title=Characteristics of Dust Shells around 13 Late-type Stars|year=1994|journal=The Astronomical Journal|volume=107|issue=4|pages=1469–1513|doi=10.1086/116960|bibcode=1994AJ....107.1469D}}</ref>。これらの研究は、ベテルギウスを取り巻くダスト環境が静的ではないことを示している。1994年には、ベテルギウスは散発的に数十年に渡ってダストを生成し、その後不活性化したことが報告された。そして1997年には、1年間でのダストセルの形態の著しい変化が注目され、セルが光球のホットスポットによって強く影響を受けるベテルギウスの放射場によって非対称に照らされていることが示唆された{{R|Skinner1997}}。1984年に巨大な非対称ダストセルがベテルギウスから1パーセク(3.26光年)離れた位置ナイルと報告されたが、最近の研究ではその存在を裏付けることはできなかった。しかし、同年に発表された別の論文では、ベテルギウスの片側方向へ約4光年離れた位置に3つのダストセルが発見されたと述べられており、これはベテルギウスが移動すると外層がはがれていくことを示唆している<ref>{{cite journal|author=Baud, B.|last2=Waters|first2=R.|last3=De Vries|first3=J.|last4=Van Albada|first4=G. D.|last5=Boulanger|first5=F.|last6=Wesselius|first6=P. R.|last7=Gillet|first7=F.|last8=Habing|first8=H. J.|last9=Van Der Kruit|first9=P. C.|title=A Giant Asymmetric Dust Shell around Betelgeuse|year=1984|journal=Bulletin of the American Astronomical Society|volume=16|page=405|bibcode=1984BAAS...16..405B}}</ref><ref>{{cite journal|author=David, L.|author2=Dooling, D.|title=The Infrared Universe|year=1984|journal=Space World|volume=2|pages=4–7|bibcode=1984SpWd....2....4D}}</ref>。 |
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一酸化炭素で構成されている2つの外殻の正確な大きさはわかっていないが、予備的な推定では片方はベテルギウスから1.5 - 4.0秒角まで、もう片方は7.0秒角まで伸びていると考えられている<ref>{{cite journal|author=Harper, Graham M.|last2=Carpenter|first2=Kenneth G.|last3=Ryde|first3=Nils|last4=Smith|first4=Nathan|last5=Brown|first5=Joanna|last6=Brown|first6=Alexander|last7=Hinkle|first7=Kenneth H.|last8=Stempels|first8=Eric|title=UV, IR, and mm Studies of CO Surrounding the Red Supergiant α Orionis (M2 Iab)|year=2009|journal=AIP Conference Proceedings|volume=1094|pages=868–871|doi=10.1063/1.3099254|bibcode=2009AIPC.1094..868H}}</ref>。ベテルギウスの半径に置き換えると、ベテルギウスに近い方の外殻は半径の50 - 150倍(~300 - 800 au)、遠い方は250倍(~1,400 au)となる。太陽系の[[ヘリオポーズ]]が太陽から約100 au離れていると推定されているため、遠い方の外殻は[[太陽圏]]の14倍先まで伸びていることになる。 |
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==== 超音速のバウショック ==== |
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ベテルギウスは秒速30 kmもの[[超音速]]で星間空間を移動しているため、周囲に[[バウショック]]が発生している{{R|Mohamed2012}}<ref>{{cite book|author=Lamers, Henny J. G. L. M.|author2=Cassinelli, Joseph P.|title=Introduction to Stellar Winds|year=1999|publisher=Cambridge University Press|location=Cambridge, UK|isbn=978-0-521-59565-0|bibcode=1999isw..book.....L}}</ref>。バウショックはベテルギウスそのものではなく、秒速17 kmの速度で星間空間に大量のガスを放出させる強力な[[恒星風]]によって生じており、周辺の物質が過熱されることで赤外線で観測できるようになる<ref>{{cite web|url=http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Akari_infrared_space_telescope_latest_science_highlights|title=Akari Infrared Space Telescope: Latest Science Highlights|publisher=European Space Agency|date=2008-11-19|accessdate=2020-02-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110217144724/http://www.esa.int/esaSC/SEMCJT4DHNF_index_1.html|archivedate=2011-02-17}}</ref>。ベテルギウスが非常に明るいため、1997年で初めてベテルギウスのバウショックが撮影された。距離を642光年と仮定すると、この[[彗星]]状の構造の幅は少なくとも4光年はあると推定されている<ref>{{cite journal|author=Noriega-Crespo, Alberto|author2=van Buren, Dave|author3=Cao, Yu|author4=Dgani, Ruth|title=A Parsec-Size Bow Shock around Betelgeuse|year=1997|journal=Astronomical Journal|volume=114|pages=837–840|doi=10.1086/118517|bibcode=1997AJ....114..837N|quote=Noriega in 1997 estimated the size to be 0.8 parsecs, having assumed the earlier distance estimate of 400 ly. With a current distance estimate of 643 ly, the bow shock would measure ~1.28 parsecs or over 4 ly}}</ref>。 |
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2012年に行われた[[流体力学]]的シミュレーションでは、ベテルギウスのバウショックの年齢が30,000年未満と非常に若く、ベテルギウスが異なる特性を持つ星間空間に移動したのがごく最近である可能性、もしくはベテルギウスが生成する恒星風を変化させるような重大な変化を受けた可能性の2つが示唆されている<ref>{{cite web|author=Newton, Elizabeth|title=This Star Lives in Exciting Times, or, How Did Betelgeuse Make that Funny Shape?|url=http://astrobites.com/2012/04/26/this-star-lives-in-exciting-times-or-how-did-betelgeuse-make-that-funny-shape/|publisher=Astrobites|date=2012-04-26|accessdate=2020-02-28|archiveurl=https://web.archive.org/web/20120430035007/http://astrobites.com/2012/04/26/this-star-lives-in-exciting-times-or-how-did-betelgeuse-make-that-funny-shape/|archivedate=2012-04-30|deadurl=yes}}</ref>。2012年に発表された論文で、このバウショックはベテルギウスが[[青色巨星]]へ[[赤色巨星]]に進化したときに発生したとする仮説が提案された。ベテルギウスのような恒星の進化の後期段階にある恒星は「[[ヘルツシュプルング・ラッセル図]](HR図)上で青い恒星が位置する部分から赤い恒星が位置する部分へ、もしくはその逆方向に移動する際に恒星は急速に遷移し、恒星風やバウショックが急速に変化する」ことが証拠として挙げられている{{R|Mohamed2012}}<ref>{{cite journal|last=MacKey|first=Jonathan|last2=Mohamed|first2=Shazrene|last3=Neilson|first3=Hilding R.|last4=Langer|first4=Norbert|last5=Meyer|first5=Dominique M.-A.|title=Double Bow Shocks Around Young, Runaway Red Supergiants: Application to Betelgeuse|year=2012|journal=The Astrophysical Journal|volume=751|issue=1|pages=L10|doi=10.1088/2041-8205/751/1/L10|bibcode=2012ApJ...751L..10M|arxiv=1204.3925}}</ref>。将来の研究でこの仮説が裏付けられれば、ベテルギウスはその進路に沿って最大で3太陽質量程度の物質を200,000 au近くに渡って散乱させ続けたことになる。 |
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=== 超新星爆発の予兆観測 === |
=== 超新星爆発の予兆観測 === |
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ベテルギウスが主系列星の段階に入ったのは約1000万年前と推定されているが、質量の大きな恒星ほど[[原子核融合|核融合]]反応が激しく進行するため短命な一生となる。ベテルギウスの質量は太陽の約20倍もあり、かつ脈動変光するほど赤色超巨星として不安定であることから、地球周辺でII型[[超新星]]爆発を起こすであろう赤色超巨星の一つに挙げられている。 |
ベテルギウスが主系列星の段階に入ったのは約1000万年前と推定されているが、質量の大きな恒星ほど[[原子核融合|核融合]]反応が激しく進行するため短命な一生となる。ベテルギウスの質量は太陽の約20倍もあり、かつ脈動変光するほど赤色超巨星として不安定であることから、地球周辺でII型[[超新星]]爆発を起こすであろう赤色超巨星の一つに挙げられている。 |
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2009年の観測では、15年前の測定時と比べて15%も小さくなっており、しかも加速的に収縮しているらしいことがわかった{{R|ng20090611}}。ただし、これは星から直径の二、三倍離れた距離にある分子などの層を中赤外線で観測した結果であり、近赤外線による星本体の観測では変化は見られなかった{{R|nomoto}}。[[2010年]][[1月]]の[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]の観測では、ベテルギウスが変形している事が示され |
2009年の観測では、15年前の測定時と比べて15%も小さくなっており、しかも加速的に収縮しているらしいことがわかった{{R|ng20090611}}。ただし、これは星から直径の二、三倍離れた距離にある分子などの層を中赤外線で観測した結果であり、近赤外線による星本体の観測では変化は見られなかった{{R|nomoto}}。[[2010年]][[1月]]の[[アメリカ航空宇宙局|NASA]]の観測では、ベテルギウスが変形している事が示され。これは、ガスが恒星表面から流出し表面温度が不均一になるなど、星自体が不安定な状態にあることを意味し{{R|apod20100106}}、さらに近年の観測や研究により、その形状は球形ではなく、大きな瘤状のものをもった形状であるとされている。 |
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2019年、[[ビラノバ大学]]の12月の観測から、10月時点に比べて明るさが半分になり、[[明るい恒星の一覧|全天で最も明るい星]]の21位にまで下がったと報告された{{R|Cnet201912}}。2020年2月14日、[[ヨーロッパ南天天文台]]は、[[チリ]]・[[パラナル天文台]]の[[超大型望遠鏡VLT|超大型望遠鏡]] (VLT) による撮像を公開した{{R|ESO20200214}}。系外惑星探索機器SPHERE (Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch instrument) による画像では、2019年1月から12月にベテルギウスの明るさと形状が大きく変化したことが示された。また、中間赤外線撮像分光装置VISIR (VLT Imager and Spectrometer for mid Infrared) の画像では、ベテルギウスから放出されるダストプルームを捉えた{{R|ESO20200214|afpbb20200217}}。これらの観測結果による明るさや形状の変化が、ベテルギウスが[[超新星爆発]]を起こす予兆であるとは考えられておらず、巨大な対流セルが移動、収縮、膨張したことで起こる表面温度の低下、または地球方向へのダストの放出の結果とする仮説が立てられている{{R|ESO20200214}}。 |
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=== 超新星爆発の地球への影響の予測 === |
=== 超新星爆発の地球への影響の予測 === |
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しかし近年の研究により、超新星爆発の際のガンマ線放出については、恒星の自転軸から2°の範囲で[[指向性]]があることがわかっている。実際、NASAの[[ハッブル宇宙望遠鏡]]でベテルギウスの自転が観測され、その結果ベテルギウスの自転軸は地球から20°ずれており、ガンマ線バーストが直撃する心配は無いとされた。ただし、超新星爆発時のかなり大きな質量変動とそれに伴う自転軸の変化が予想できないこと、ガンマ線放出指向性の理論的・実験的な根拠がはっきりしないことから、直撃の可能性について確実なことは知られていない。 |
しかし近年の研究により、超新星爆発の際のガンマ線放出については、恒星の自転軸から2°の範囲で[[指向性]]があることがわかっている。実際、NASAの[[ハッブル宇宙望遠鏡]]でベテルギウスの自転が観測され、その結果ベテルギウスの自転軸は地球から20°ずれており、ガンマ線バーストが直撃する心配は無いとされた。ただし、超新星爆発時のかなり大きな質量変動とそれに伴う自転軸の変化が予想できないこと、ガンマ線放出指向性の理論的・実験的な根拠がはっきりしないことから、直撃の可能性について確実なことは知られていない。 |
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超新星爆発した際の明るさについては、[[SN 1054]]と同規模の爆発と仮定すると、地球からベテルギウスまでの距離は、かに星雲までの距離のほぼ{{frac|1|10}}であるため明るさは100倍程度と概算できる。SN 1054は-6等級以上の明るさだったと推定されるので、100倍だと-11等級を超える明るさとなる。これは半月よりも明るく、数日間は昼でも小さい点として輝いて見える。ある予測では、4か月ほど明るさを維持したまま青白色から赤色へ色が変化し、その後急速に減光して4年後には肉眼で |
超新星爆発した際の明るさについては、[[SN 1054]]と同規模の爆発と仮定すると、地球からベテルギウスまでの距離は、かに星雲までの距離のほぼ{{frac|1|10}}であるため明るさは100倍程度と概算できる。SN 1054は-6等級以上の明るさだったと推定されるので、100倍だと-11等級を超える明るさとなる。これは半月よりも明るく、数日間は昼でも小さい点として輝いて見える。ある予測では、4か月ほど明るさを維持したまま青白色から赤色へ色が変化し、その後急速に減光して4年後には肉眼でも見えなくなるであろうという。 |
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爆発後は[[ブラックホール]]にはならず、[[中性子星]]となると考えられている{{R| |
爆発後は[[ブラックホール]]にはならず、[[中性子星]]となると考えられている{{R|Dolan2016}}。 |
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== 名称 == |
== 名称 == |
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; ベテルギウス |
; ベテルギウス |
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:; 綴り |
:; 綴り |
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:: 原綴りの Betelgeuse は[[英語]]の文献によく見られる綴りで、[[[ビートルジュース]]]{{R|Kusaka}}のほか、様々に発音される。これは[[フランス語]]綴りの Bételgeuse から来ている<ref name="研究社新英和大事典">小稲義男(編代) 『[[研究社]] 新英和大辞典』(第5版)、研究社、1980年、202頁。</ref>。Betelgeux とも綴る |
:: 原綴りの Betelgeuse は[[英語]]の文献によく見られる綴りで、[[[ビートルジュース]]]{{R|Kusaka}}のほか、様々に発音される。これは[[フランス語]]綴りの Bételgeuse から来ている<ref name="研究社新英和大事典">小稲義男(編代) 『[[研究社]] 新英和大辞典』(第5版)、研究社、1980年、202頁。</ref>。Betelgeux とも綴る{{R|研究社新英和大事典}}<ref name="星座巡禮">野尻抱影 『星座巡禮』 (改訂7版)、[[研究社]]、1931年、8頁他。</ref>。 |
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:: [[ドイツ語]]では Beteigeuze と綴るのが一般的で、[ベタイゴイュツェ(ー)] というように発音される<ref>相良守峯(編)『木村・相良独和辞典』(新訂版第一12刷)博友社、223頁。</ref>。それ以前の[[ラテン語]]の文献では Betelgeuze と綴られた。他にもさまざまな異綴りがある。 |
:: [[ドイツ語]]では Beteigeuze と綴るのが一般的で、[ベタイゴイュツェ(ー)] というように発音される<ref>相良守峯(編)『木村・相良独和辞典』(新訂版第一12刷)博友社、223頁。</ref>。それ以前の[[ラテン語]]の文献では Betelgeuze と綴られた。他にもさまざまな異綴りがある。 |
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:; 仮名表記 |
:; 仮名表記 |
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:: 現在では、ほぼ「ベテルギウス」で定着している。[[野尻抱影]]は著書や時期によって「ベテルゲウズ」<ref name="星座巡禮" />{{Sfn|野尻抱影|2002|p=18}}、「ベテルヂュース」<ref name="星座風景">野尻抱影 『星座風景』、[[研究社]]、1931年、216頁他。</ref><ref name="星座神話">野尻抱影 『星座神話』、研究社、1933年、196頁。</ref><ref name="日本の星">野尻抱影 『日本の星』 研究社、1936年、245頁。</ref>、「ベテルギュース」などと表記している。天文書以外では、しばしば「'''ペ'''テルギウス」と誤記されることもある。他にも「ベデルギウス」、「ベテルギウズ」といった<!--誤記とおぼしき-->表記も見られる。 |
:: 現在では、ほぼ「ベテルギウス」で定着している。[[野尻抱影]]は著書や時期によって「ベテルゲウズ」<ref name="星座巡禮" />{{Sfn|野尻抱影|2002|p=18}}、「ベテルヂュース」<ref name="星座風景">野尻抱影 『星座風景』、[[研究社]]、1931年、216頁他。</ref><ref name="星座神話">野尻抱影 『星座神話』、研究社、1933年、196頁。</ref><ref name="日本の星">野尻抱影 『日本の星』 研究社、1936年、245頁。</ref>、「ベテルギュース」などと表記している。天文書以外では、しばしば「'''ペ'''テルギウス」と誤記されることもある。他にも「ベデルギウス」、「ベテルギウズ」といった<!--誤記とおぼしき-->表記も見られる。 |
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:; 語源 |
:; 語源 |
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:: ベテルギウスの語源は、日本では「巨人の腋(わき)の下」の意味の[[アラビア語]] Ibṭ al Jauzah [イブト・アル=ジャウザー] から来ているとされている{{R|Hara}}{{Sfn|野尻抱影|2002|p=18}}ことが多いが、この説は日本国外では有力ではない。それは、アラビアにおいてこの星に「巨人の腋の下」という意味の名前がつけられていない - 実証がない - からである。そもそも、アル=ジャウザーに「巨人」という意味はない。アル=ジャウザーは、アラビアの古い伝承に登場する女人名で固有名詞であり、どのような意味合い持っていたのか失伝していてわからない<ref>山本啓二 (1991) 「アラビアの星座」『星の手帖』 第53号(1991年夏号)[[小尾信彌]]・[[古在由秀]]・[[藤井旭]]・[[村山定男]]編、[[河出書房新社]]、22頁。</ref>{{R|Suzuki |
:: ベテルギウスの語源は、日本では「巨人の腋(わき)の下」の意味の[[アラビア語]] Ibṭ al Jauzah [イブト・アル=ジャウザー] から来ているとされている{{R|Hara}}{{Sfn|野尻抱影|2002|p=18}}ことが多いが、この説は日本国外では有力ではない。それは、アラビアにおいてこの星に「巨人の腋の下」という意味の名前がつけられていない - 実証がない - からである。そもそも、アル=ジャウザーに「巨人」という意味はない。アル=ジャウザーは、アラビアの古い伝承に登場する女人名で固有名詞であり、どのような意味合い持っていたのか失伝していてわからない<ref>山本啓二 (1991) 「アラビアの星座」『星の手帖』 第53号(1991年夏号)[[小尾信彌]]・[[古在由秀]]・[[藤井旭]]・[[村山定男]]編、[[河出書房新社]]、22頁。</ref>{{R|Suzuki|Kondo}}。アラビア語の[[語根]] j-w-z に「中央」という意味がある{{R|Kunitzsch}}ことから、[[リチャード・ヒンクリー・アレン|アレン]]は「中央のもの」と解釈し{{R|Allen}}またこれとは別に、G・A・デーヴィス Jr は「白い帯をした羊」と解釈している{{R|Hara}}。 |
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:: 実証的な見地からは、「ジャウザーの手」を意味するこの星のアラビア名の一つ、Yad al-Jawzā' [ヤド・アル=ジャウザー] に由来するとする説が有力視されている。この説は、ドイツでは20世紀の中頃には既に知られていた{{R|Kunitzsch59}}が、1980年代になると英米でも知られるところとなり{{R|Kunitzsch}}、日本でも2000年代になってようやく知られるところとなった{{R|History|Kondo}}<ref>廣瀬匠 (2011) 「近代学問の基礎を築いた - イスラム世界の天文学 Part2」『月刊[[星ナビ]]』第128号(2011年7月号)、66頁。</ref>。アラビア文字の"[[ي|ﻴ]]" (y) と"[[ب|ﺒ]]" (b) は[[ドット符号|ドット]]が1つか2つかの違いだけなので、写本の段階でか、ラテン語に翻訳する段階で誤写されたのではないかと考えられている{{R|Kunitzsch|Kondo}}。 |
:: 実証的な見地からは、「ジャウザーの手」を意味するこの星のアラビア名の一つ、Yad al-Jawzā' [ヤド・アル=ジャウザー] に由来するとする説が有力視されている。この説は、ドイツでは20世紀の中頃には既に知られていた{{R|Kunitzsch59}}が、1980年代になると英米でも知られるところとなり{{R|Kunitzsch}}、日本でも2000年代になってようやく知られるところとなった{{R|History|Kondo}}<ref>廣瀬匠 (2011) 「近代学問の基礎を築いた - イスラム世界の天文学 Part2」『月刊[[星ナビ]]』第128号(2011年7月号)、66頁。</ref>。アラビア文字の"[[ي|ﻴ]]" (y) と"[[ب|ﺒ]]" (b) は[[ドット符号|ドット]]が1つか2つかの違いだけなので、写本の段階でか、ラテン語に翻訳する段階で誤写されたのではないかと考えられている{{R|Kunitzsch|Kondo}}。 |
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:: 他にも、アラビア語の Bayt al-Jawzā' ([バイト・アル=ジャウザー]、直訳すれば「双子の家」だが、ここでは[[サイン (占星術)|黄道十二宮]]の1つ「[[双児宮]]」のこと)とするなどの説<ref>鈴木駿太郎 『星の事典』(改訂2版)、恒星社厚生閣、1979年、218頁。</ref>もある。 |
:: 他にも、アラビア語の Bayt al-Jawzā' ([バイト・アル=ジャウザー]、直訳すれば「双子の家」だが、ここでは[[サイン (占星術)|黄道十二宮]]の1つ「[[双児宮]]」のこと)とするなどの説<ref>鈴木駿太郎 『星の事典』(改訂2版)、恒星社厚生閣、1979年、218頁。</ref>もある。 |
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この和名は[[治承・寿永の乱|源平合戦]]にちなむ[[紅白]]に由来するものだが、当初は現在と逆の解釈があった。 |
この和名は[[治承・寿永の乱|源平合戦]]にちなむ[[紅白]]に由来するものだが、当初は現在と逆の解釈があった。 |
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[[岐阜県]]において、平家星・源氏星という方言が見つかっている |
[[岐阜県]]において、平家星・源氏星という方言が見つかっている{{R|新・星座めぐり|日本星名辞典|星の方言集}}。これは1950年に[[野尻抱影]]に報告された方言であり{{refnest|group="注"|name="注9"|北尾は発見者を香田としている<ref name="kitao1" />。香田まゆみ(または寿男)は昭和25年に源氏星をベテルギウスと特定した古老の存在を野尻に報告している<ref name="日本星名辞典" /><ref name="星の方言集" />。}}、ベテルギウスの赤色と[[リゲル]]の白色を[[平家]]と[[源氏]]の旗色になぞらえた表現に由来したと解釈されている。野尻は農民の星の色を見分けた目の良さに感心し、それ以後は[[天文博物館五島プラネタリウム]]で解説する際には、平家星・源氏星という名称を使用するようになった{{R|日本星名辞典|星の方言集}}。 |
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天文誌、図鑑、野尻抱影や[[藤井旭]]の著書をはじめ、多くの本で、ベテルギウスの和名を「'''平家星'''」と特定した上で、岐阜の方言であるとしている |
天文誌、図鑑、野尻抱影や[[藤井旭]]の著書をはじめ、多くの本で、ベテルギウスの和名を「'''平家星'''」と特定した上で、岐阜の方言であるとしている{{R|新・星座めぐり|日本星名辞典|星の方言集}}<ref>藤井旭著 『宇宙大全』441項 / 同著『全天星座百科』150項 / 同著『星座大全』35-36項</ref><ref>[[講談社]]、[[林完次]]著『21世紀星空早見ガイド』50項</ref>(ただし、岐阜県の[[揖斐郡]][[横蔵村]](現[[揖斐川町]])においてベテルギウスを源氏星とする村の古老が一名いたことが野尻抱影によって紹介されており{{R|日本星名辞典|星の方言集}}、民俗学の見地から異論を唱える研究者もいる<ref group="注" name="注9"/>)。 |
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増田正之は1985年に、[[富山県]][[高岡市]]の市立伏木小学校において、ベテルギウスを平家星とした方言を見つけている<ref>増田正之『ふるさとの星 続越中の星ものがたり』15項および、巻末 富山県星の一覧表3項</ref>。 |
増田正之は1985年に、[[富山県]][[高岡市]]の市立伏木小学校において、ベテルギウスを平家星とした方言を見つけている<ref>増田正之『ふるさとの星 続越中の星ものがたり』15項および、巻末 富山県星の一覧表3項</ref>。 |
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また、[[滋賀県|滋賀]]の[[虎姫町|虎姫]](現・[[長浜市]])でベテルギウスを'''金脇'''(きんわき)とする方言が発見されている。これは、[[オリオン座]]の三つ星の脇にある関係とベテルギウスの金色とリゲルの白色とを見分けた表現から来ている。このように星を色で見分けた表現は、世界的に類を見ないと言われている<ref name="日本星名 |
また、[[滋賀県|滋賀]]の[[虎姫町|虎姫]](現・[[長浜市]])でベテルギウスを'''金脇'''(きんわき)とする方言が発見されている。これは、[[オリオン座]]の三つ星の脇にある関係とベテルギウスの金色とリゲルの白色とを見分けた表現から来ている。このように星を色で見分けた表現は、世界的に類を見ないと言われている<ref name="日本星名辞典" />。 |
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その他、ベテルギウスが含まれた[[アステリズム]]の方言は[[星・星座に関する方言#オリオン座|ベテルギウス関係の方言]]を参照。 |
その他、ベテルギウスが含まれた[[アステリズム]]の方言は[[星・星座に関する方言#オリオン座|ベテルギウス関係の方言]]を参照。 |
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; 北尾浩一の見解 |
; 北尾浩一の見解 |
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: 北尾浩一は、著書の中で揖斐地方で発見された'''源氏星'''(げんじぼし)をベテルギウスとして分類している<ref name="kitao1">北尾浩一 「表6 暮らしと星空を重ね合わせる過程に於いて形成された星名: (1) イメージに関連するもの」 『天文民俗学序説 - 星・人・暮らし』 〈学術叢書〉 学術出版会、2006年、39頁</ref><ref |
: 北尾浩一は、著書の中で揖斐地方で発見された'''源氏星'''(げんじぼし)をベテルギウスとして分類している<ref name="kitao1">北尾浩一 「表6 暮らしと星空を重ね合わせる過程に於いて形成された星名: (1) イメージに関連するもの」 『天文民俗学序説 - 星・人・暮らし』 〈学術叢書〉 学術出版会、2006年、39頁</ref><ref>北尾浩一 「天文民俗学試論 (102) :35 星・人・暮らしの事典 (1) オリオン座2」 『[[天界 (雑誌)|天界]]』 第87巻第976号(2006年9月号)、[[東亜天文学会]]、568頁</ref><ref group="注" name="注9"/>。 |
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: 多くの書籍で、平家星がベテルギウスを示す岐阜の方言とされている事について、野尻抱影の著書における村の古老の証言と逆であると指摘している。北尾は再調査を行い、発見地とされる揖斐地方では一般的に認識されている[[源氏|源]][[平家|平]]の旗印の色とは逆であったことを確認している<ref name="kitao3">北尾浩一 [http://www.geocities.jp/north_tail_kk/genjiboshi.html 「『源氏星』と『平家星』」] 『天界』 第86巻第966号(2005年11月号)、東亜天文学会、648頁。</ref>。この見解が最初に発表されたのは2005年であり、野尻は既に亡くなっていた。野尻は平家星をベテルギウスと特定したが、香田より第一報を受けた後、1000回を超えるやり取りの後、初めて信用したと証言されている |
: 多くの書籍で、平家星がベテルギウスを示す岐阜の方言とされている事について、野尻抱影の著書における村の古老の証言と逆であると指摘している。北尾は再調査を行い、発見地とされる揖斐地方では一般的に認識されている[[源氏|源]][[平家|平]]の旗印の色とは逆であったことを確認している<ref name="kitao3">北尾浩一 [http://www.geocities.jp/north_tail_kk/genjiboshi.html 「『源氏星』と『平家星』」] 『天界』 第86巻第966号(2005年11月号)、東亜天文学会、648頁。</ref>。この見解が最初に発表されたのは2005年であり、野尻は既に亡くなっていた。野尻は平家星をベテルギウスと特定したが、香田より第一報を受けた後、1000回を超えるやり取りの後、初めて信用したと証言されている{{R|kitao3}}。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
=== 注釈 === |
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<ref name="注2">光年はパーセク×3.2615638より計算。なお、距離を年周視差より求めた場合は、約500[[光年]](約150[[パーセク]])となる。</ref> |
<ref name="注2">光年はパーセク×3.2615638より計算。なお、距離を年周視差より求めた場合は、約500[[光年]](約150[[パーセク]])となる。</ref> |
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=== 出典 === |
=== 出典 === |
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<ref name="Samus2009">{{cite journal|last=Samus|first=N. N.|last2=Durlevich|first2=O. V. ''et al.''|title=VizieR Online Data Catalog: General Catalogue of Variable Stars (Samus+ 2007-2013)|year=2009|journal=VizieR On-line Data Catalog: B/GCVS. Originally Published in: 2009yCat....102025S|volume=1|pages=B/gcvs|bibcode=2009yCat....102025S}}</ref> |
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<ref name="Dolan2016">{{cite journal|last=Dolan|first=Michelle M.|last2=Mathews|first2=Grant J.|last3=Lam|first3=Doan Duc|last4=Lan|first4=Nguyen Quynh|last5=Herczeg|first5=Gregory J.|last6=Dearborn|first6=David S. P.|title=Evolutionary Tracks for Betelgeuse|year=2016|journal=The Astrophysical Journal|volume=819|issue=1|pages=7|doi=10.3847/0004-637X/819/1/7|bibcode=2016ApJ...819....7D|arxiv=1406.3143}}</ref> |
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<ref name="Neilson2011">{{cite conference|author=Neilson, H. R.|author2=Lester, J. B.|author3=Haubois, X.|title=Weighing Betelgeuse: Measuring the Mass of α Orionis from Stellar Limb-darkening|year=2011|journal=Astronomical Society of the Pacific|conference=9th Pacific Rim Conference on Stellar Astrophysics. Proceedings of a conference held at Lijiang, China in 14–20 April 2011. ASP Conference Series|page=117|volume=451|bibcode=2011ASPC..451..117N|arxiv=1109.4562}}</ref> |
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<ref name="Lobel2000">{{cite journal|author=Lobel, Alex|author2=Dupree, Andrea K.|url=http://iopscience.iop.org/0004-637X/545/1/454/pdf/51504.web.pdf|format=PDF|title=Modeling the Variable Chromosphere of α Orionis|year=2000|journal=The Astrophysical Journal|volume=545|issue=1|pages=454–74|bibcode=2000ApJ...545..454L|doi=10.1086/317784}}</ref> |
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<ref name="Kervella2009">{{cite journal|last=Kervella|first=P.|last2=Verhoelst|first2=T.|last3=Ridgway|first3=S. T.|last4=Perrin|first4=G.|last5=Lacour|first5=S.|last6=Cami|first6=J.|last7=Haubois|first7=X.|title=The Close Circumstellar Environment of Betelgeuse. Adaptive Optics Spectro-imaging in the Near-IR with VLT/NACO|year=2009|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=504|issue=1|pages=115–125|doi=10.1051/0004-6361/200912521|bibcode=2009A&A...504..115K|arxiv=0907.1843}}</ref> |
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<ref name="Keenan1989">{{cite journal|last=Keenan|first=Philip C.|last2=McNeil|first2=Raymond C.|title=The Perkins catalog of revised MK types for the cooler stars|year=1989|journal=Astrophysical Journal Supplement Series|volume=71|pages=245|doi=10.1086/191373|bibcode=1989ApJS...71..245K}}</ref> |
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<ref name="Smith2009">{{cite journal|author=Smith, Nathan|author2=Hinkle, Kenneth H.|author3=Ryde, Nils|title=Red Supergiants as Potential Type IIn Supernova Progenitors: Spatially Resolved 4.6 μm CO Emission Around VY CMa and Betelgeuse|year=2009|journal=The Astronomical Journal|volume=137|issue=3|pages=3558–3573|doi=10.1088/0004-6256/137/3/3558|bibcode=2009AJ....137.3558S|arxiv=0811.3037}}</ref> |
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<ref name="Ramírez2000">{{cite journal|author=Ramírez, Solange V.|url=http://iopscience.iop.org/0004-637X/537/1/205/pdf/50790.web.pdf|format=PDF|title=Stellar Iron Abundances at the Galactic Center|year=2000|journal=The Astrophysical Journal|volume=537|issue=1|pages=205–220|doi=10.1086/309022|bibcode=2000ApJ...537..205R|arxiv=astro-ph/0002062|last2=Sellgren|first2=K.|last3=Carr|first3=John S.|last4=Balachandran|first4=Suchitra C.|last5=Blum|first5=Robert|last6=Terndrup|first6=Donald M.|last7=Steed|first7=Adam}}</ref> |
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<ref name="Levesque2010">{{cite journal|author=Levesque, E. M.|title=The Physical Properties of Red Supergiants|year=2010|journal=Astronomical Society of the Pacific|conference=Hot and Cool: Bridging Gaps in Massive Star Evolution ASP Conference Series|volume=425|page=103|bibcode=2010ASPC..425..103L|arxiv=0911.4720}}</ref> |
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<ref name="Wilk1999">{{cite journal|last=Wilk|first=Stephen R.|title=Further Mythological Evidence for Ancient Knowledge of Variable Stars|year=1999|journal=The Journal of the American Association of Variable Star Observers|volume=27|issue=2|pages=171–174|bibcode=1999JAVSO..27..171W}}</ref> |
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<ref name="Burnham">{{cite book|first=Robert|last=Burnham|authorlink=ロバート・バーナム・ジュニア |
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|title=Burnham's Celestial Handbook: An Observer's Guide to the Universe Beyond the Solar System, Volume 2 |
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<ref name="inuit">{{cite book|last=MacDonald|first=John|title=The Arctic sky: Inuit astronomy, star lore, and legend|url=https://archive.org/details/arcticskyinuitas0000macd/page/52|publisher = Royal Ontario Museum/Nunavut Research Institute|location=Toronto, Ontario/Iqaluit, NWT|year=1998|isbn=978-0-88854-427-8|pages=[https://archive.org/details/arcticskyinuitas0000macd/page/52 52–54, 119]}}</ref> |
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<ref name="Michelson1921">{{cite journal|last1=Michelson|first1=Albert Abraham|last2=Pease|first2=Francis G.|authorlink1=アルバート・マイケルソン|authorlink2=フランシス・ピーズ|title=Measurement of the diameter of Alpha Orionis with the interferometer|year=1921|journal=Astrophysical Journal|volume=53|issue=5|pages=249-259|doi=10.1086/142603|pmid=16586823| bibcode = 1921ApJ....53..249M|quote=The 0.047 arcsecond measurement was for a uniform disk. In the article Michelson notes that limb darkening would increase the angular diameter by about 17%, hence 0.055 arcseconds|pmc=1084808}}</ref> |
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<ref name="BruceMedal">{{cite web|author=Tenn, Joseph S.|url=http://www.phys-astro.sonoma.edu/BruceMedalists/|work=The Bruce Medalists|title=Martin Schwarzschild 1965|publisher=Astronomical Society of the Pacific (ASP)|year=2009|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="Bonneau1973">{{cite journal|author=Bonneau, D.|author2=Labeyrie, A.|title=Speckle Interferometry: Color-Dependent Limb Darkening Evidenced on Alpha Orionis and Omicron Ceti|year=1973|journal=Astrophysical Journal|volume=181|page=L1|bibcode=1973ApJ...181L...1B|doi=10.1086/181171}}</ref> |
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<ref name="Sutton1977">{{cite journal|author=Sutton, E. C.|author2=Storey, J. W. V.|author3=Betz, A. L.|author4=Townes, C. H.|author5=Spears, D. L.|title=Spatial Heterodyne Interferometry of VY Canis Majoris, Alpha Orionis, Alpha Scorpii, and R Leonis at 11 Microns|year=1977|journal=Astrophysical Journal Letters|volume=217|pages=L97–L100|doi=10.1086/182547|bibcode=1977ApJ...217L..97S}}</ref> |
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<ref name="Buscher1990">{{cite journal|author=Buscher, D. F.|author2=Baldwin, J. E.|author3=Warner, P. J.|author4=Haniff, C. A.|title=Detection of a bright feature on the surface of Betelgeuse|year=1990|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=245|page=7|bibcode=1990MNRAS.245P...7B}}</ref> |
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<ref name="Tuthill1997">{{cite journal|author=Tuthill P. G.|author2=Haniff, C. A.|author3=Baldwin, J. E.|title=Hotspots on late-type supergiants|year=1997|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=285|issue=3|pages=529–539|doi=10.1093/mnras/285.3.529|bibcode=1997MNRAS.285..529T}}</ref> |
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<ref name="Schwarzschild1975">{{cite journal |
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|last=Schwarzschild|first=Martin|authorlink=マーティン・シュヴァルツシルト |
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|title=On the Scale of Photospheric Convection in Red Giants and Supergiants |
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|journal=[[アストロフィジカルジャーナル|The Astrophysical Journal]]|year=1975|volume=195|issue=1|pages=137-144 |
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|doi=10.1086/153313|bibcode=1975ApJ...195..137S}}</ref> |
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<ref name="Gilliland1996">{{cite journal|author=Gilliland, Ronald L.|author2=Dupree, Andrea K.|url=http://iopscience.iop.org/1538-4357/463/1/L29/pdf/5023.pdf|format=PDF|title=First Image of the Surface of a Star with the Hubble Space Telescope|year=1996|journal=Astrophysical Journal Letters|volume=463|issue=1|pages=L29|doi=10.1086/310043|bibcode=1996ApJ...463L..29G|quote=The yellow/red "image" or "photo" of Betelgeuse commonly seen is not a picture of the red supergiant, but a mathematically generated image based on the photograph. The photograph was of much lower resolution: The entire Betelgeuse image fit within a 10x10 pixel area on the [[ハッブル宇宙望遠鏡|Hubble Space Telescope]]s Faint Object Camera. The images were oversampled by a factor of 5 with bicubic spline interpolation, then deconvolved.}}</ref> |
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<ref name="hubble">{{Cite web |
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|date=1996-12-10 |
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|url=http://hubblesite.org/newscenter/archive/releases/1996/04/ |
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|title= Hubble Space Telescope Captures First Direct Image of a Star |
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|publisher=[[NASA]] |
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|work=HubbleSite| |
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<ref name="Weiner2000">{{cite journal|last=Weiner|first=J.|last2=Danchi|first2=W. C.|last3=Hale|first3=D. D. S.|last4=McMahon|first4=J.|last5=Townes|first5=C. H.|last6=Monnier|first6=J. D.|last7=Tuthill|first7=P. G.|url=http://iopscience.iop.org/0004-637X/544/2/1097/pdf/52233.web.pdf|format=PDF|title=Precision Measurements of the Diameters of α Orionis and ο Ceti at 11 Microns|year=2000|journal=The Astrophysical Journal|volume=544|issue=2|pages=1097–1100|doi=10.1086/317264|bibcode=2000ApJ...544.1097W}}</ref> |
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<ref name="UC Berkeley">{{cite web|author=Sanders, Robert|url=http://www.berkeley.edu/news/media/releases/2009/06/09_betelim.shtml|title=Red Giant Star Betelgeuse Mysteriously Shrinking|work=UC Berkeley News|publisher=UC Berkeley|date=2009-06-09|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="Townes2009">{{cite journal|author=Townes, C. H.|author2=Wishnow, E. H.|author3=Hale, D. D. S.|author4=Walp, B.|url=http://iopscience.iop.org/1538-4357/697/2/L127/pdf/apjl_697_2_127.pdf|format=PDF|title=A Systematic Change with Time in the Size of Betelgeuse|year=2009|journal=The Astrophysical Journal Letters|volume=697|issue=2|pages=L127–128|doi=10.1088/0004-637X/697/2/L127|bibcode=2009ApJ...697L.127T}}</ref> |
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<ref name="Ravi2011>{{cite journal|author=Ravi, V.|author2=Wishnow, E.|author3=Lockwood, S.|author4=Townes, C.|title=The Many Faces of Betelgeuse|year=2011|journal=Astronomical Society of the Pacific|page=1025|volume=448|bibcode=2011ASPC..448.1025R|arxiv=1012.0377}}</ref> |
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<ref name="astroarts20200205">{{cite web|url=https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11087_betelgeuse|title=2等星に陥落!ベテルギウス減光のゆくえ|website=[[アストロアーツ|AstroArts]]|date=2020-02-05|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="Dec2019-AstroMag">{{cite news|last=Carlson|first=Erika K.|url=http://www.astronomy.com/news/2019/12/betelgueses-bizarre-dimming-has-astronomers-scratching-their-heads|title=Betelguese's bizarre dimming has astronomers scratching their heads|work=Astronomy|date=2019-12-27|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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|title=Betelgeuse star acting like it's about to explode, even if the odds say it isn't |
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|publisher=[[CNET]] |
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<ref name="AT-20191223">{{cite news|last=Guinan|first=Edward F.|last2=Wasatonic|first2=Richard J.|last3=Calderwood|first3=Thomas J.|url=http://www.astronomerstelegram.org/?read=13365|title=ATel #13365 - Updates on the "Fainting" of Betelgeuse|work=The Astronomer's Telegram|date=2019-12-23|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="earthsky">{{cite web|author=Deborah Byrd|url=https://earthsky.org/space/betelgeuse-fainting-probably-not-about-to-explode|title=Betelgeuse is 'fainting' but (probably) not about to explode|website=Earthsky|date=2019-12-23|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="NG-20191226">{{cite news|last=Drake|first=Nadia|url=https://www.nationalgeographic.com/science/2019/12/betelgeuse-is-acting-strange-astronomers-are-buzzing-about-supernova/|title=A giant star is acting strange, and astronomers are buzzing - The red giant Betelgeuse is the dimmest seen in years, prompting some speculation that the star is about to explode. Here's what we know.|work=National Geographic Society|date=2019-12-26|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="Dec2019-WaPo">{{cite news|last=Kaplan|first=Sarah|url=https://www.washingtonpost.com/science/2019/12/27/is-betelgeuse-one-skys-brightest-stars-brink-supernova/|title=Is Betelgeuse, one of the sky's brightest stars, on the brink of a supernova?|newspaper=[[ワシントンポスト|The Washington Post]]|date=2019-12-27|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="Dec2019-NYP">{{cite news|last=Sparks|first=Hannah|url=https://nypost.com/2019/12/26/massive-betelgeuse-star-in-orion-constellation-due-for-explosive-supernova/|title=Massive 'Betelgeuse' star in Orion constellation due for explosive supernova|newspaper=The New York Post|date=2019-12-26|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="ESO20200214">{{cite web |
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|title=ESO Telescope Sees Surface of Dim Betelgeuse |
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|publisher=[[ヨーロッパ南天天文台|ESO]] |
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<ref name="VanLoon2013">{{cite journal|last=Van Loon|first=J. Th.|title=Betelgeuse and the Red Supergiants|year=2013|journal=Betelgeuse Workshop 2012. Edited by P. Kervella|volume=60|pages=307–316|doi=10.1051/eas/1360036|bibcode=2013EAS....60..307V|arxiv=1303.0321|citeseerx=10.1.1.759.580}}</ref> |
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<ref name="Wilson1992">{{cite journal|author=Wilson, R. W.|author2=Baldwin, J. E.|author3=Buscher, D. F.|author4=Warner, P. J.|title=High-resolution imaging of Betelgeuse and Mira|year=1992|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=257|issue=3|pages=369–376|doi=10.1093/mnras/257.3.369|bibcode=1992MNRAS.257..369W}}</ref> |
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<ref name="Haubois2009">{{cite journal|last=Haubois|first=X.|last2=Perrin|first2=G.|last3=Lacour|first3=S.|last4=Verhoelst|first4=T.|last5=Meimon|first5=S.|last6=Mugnier|first6=L.|last7=Thiébaut|first7=E.|last8=Berger|first8=J. P.|last9=Ridgway|first9=S. T.|title=Imaging the Spotty Surface of Betelgeuse in the H Band|year=2009|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=508|issue=2|pages=923–932|doi=10.1051/0004-6361/200912927|bibcode=2009A&A...508..923H|arxiv=0910.4167}}</ref> |
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<ref name="Montargès2016">{{cite journal|last=Montargès|first=M.|last2=Kervella|first2=P.|last3=Perrin|first3=G.|last4=Chiavassa|first4=A.|last5=Le Bouquin|first5=J.-B.|last6=Aurière|first6=M.|last7=López Ariste|first7=A.|last8=Mathias|first8=P.|last9=Ridgway|first9=S. T.|last10=Lacour|first10=S.|last11=Haubois|first11=X.|last12=Berger|first12=J.-P.|title=The close circumstellar environment of Betelgeuse. IV. VLTI/PIONIER interferometric monitoring of the photosphere|year=2016|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=588|pages=A130|doi=10.1051/0004-6361/201527028|bibcode=2016A&A...588A.130M|arxiv=1602.05108}}</ref> |
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<ref name="Harper2008">{{cite journal|last=Harper|first=Graham M.|last2=Brown|first2=Alexander|last3=Guinan|first3=Edward F. |
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|title=A New VLA-Hipparcos Distance to Betelgeuse and its implications |
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|doi=10.1088/0004-6256/135/4/1430|2008AJ....135.1430H}}</ref> |
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<ref name="Kiss2006">{{cite journal|last=Kiss|first=L. L.|last2=Szabó|first2=Gy. M.|last3=Bedding|first3=T. R.|title=Variability in red supergiant stars: Pulsations, long secondary periods and convection noise|year=200|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=372|issue=4|pages=1721–17346|doi=10.1111/j.1365-2966.2006.10973.x|bibcode=2006MNRAS.372.1721K|arxiv=astro-ph/0608438}}</ref> |
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<ref name="Balega1982">{{cite journal|author=Balega, Iu.|author2=Blazit, A.|author3=Bonneau, D.|author4=Koechlin, L.|author5=Labeyrie, A.|author6=Foy, R..|title=The angular diameter of Betelgeuse|year=1982|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=115|issue= 2|pages=253–256|bibcode=1982A&A...115..253B}}</ref> |
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<ref name="Perrin2004">{{cite journal|author=Perrin, G.|author2=Ridgway, S. T.|author3=Coudé du Foresto, V.|author4=Mennesson, B.|author5=Traub, W. A.|author6=Lacasse, M. G.|title=Interferometric Observations of the Supergiant Stars α Orionis and α Herculis with FLUOR at IOTA|year=2004|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=418|issue=2|pages=675–685|doi=10.1051/0004-6361:20040052|bibcode=2004A&A...418..675P|arxiv=astro-ph/0402099|quote=Assuming a distance of 197 ± 45 pc, an angular distance of 43.33 ± 0.04 mas would equate to a radius of 4.3 AU or 920 ''R''<sub>☉</sub>}}</ref> |
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<ref name="Hernandez2009">{{cite journal|author=Hernandez Utrera, O.|author2=Chelli, A.|url=http://www.astroscu.unam.mx/rmaa/RMxAC..37/PDF/RMxAC..37_ohernandez.pdf|format=PDF|title=Accurate Diameter Measurement of Betelgeuse Using the VLTI/AMBER Instrument|year=2009|journal=Revista Mexicana de Astronomía y Astrofísica (Serie de Conferencias)|volume=37|pages=179–180|bibcode=2009RMxAC..37..179H}}</ref> |
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<ref name="Ohnaka2011">{{cite journal|display-authors=1 |
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|title=Imaging the dynamical atmosphere of the red supergiant Betelgeuse in the CO first overtone lines with VLTI/AMBER |
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|journal=[[アストロノミー・アンド・アストロフィジックス|Astronomy and Astrophysics]]|year=2011|volume=529|pages=A163 |
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|doi=10.1051/0004-6361/201016279|bibcode=2011A&A...529A.163O|arxiv=1104.0958 |
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|quote=We derive a uniform-disk diameter of 42.05 ± 0.05 mas and a power-law-type limb-darkened disk diameter of 42.49 ± 0.06 mas and a limb-darkening parameter of (9.7 ± 0.5){{e|-2}}}}</ref> |
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<ref name="Kervella2011">{{cite journal|last=Kervella|first=P.|last2=Perrin|first2=G.|last3=Chiavassa|first3=A.|last4=Ridgway|first4=S. T.|last5=Cami|first5=J.|last6=Haubois|first6=X.|last7=Verhoelst|first7=T.|title=The close circumstellar environment of Betelgeuse|year=2011|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=531|pages=A117|doi=10.1051/0004-6361/201116962|arxiv=1106.5041}}</ref> |
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<ref name="LeBertre2012">{{cite journal|last=Le Bertre|first=T.|last2=Matthews|first2=L. D.|last3=Gérard| first3=E.|last4=Libert|first4=Y.|title=Discovery of a detached H I gas shell surrounding α Orionis|year=2012|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=422|issue=4|pages=3433|doi=10.1111/j.1365-2966.2012.20853.x|bibcode=2012MNRAS.422.3433L|arxiv=1203.0255}}</ref> |
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<ref name="Reynolds1979">{{cite journal|last=Reynolds|first=R. J.|last2=Ogden|first2=P. M.|title=Optical evidence for a very large, expanding shell associated with the I Orion OB association, Barnard's loop, and the high galactic latitude H-alpha filaments in Eridanus|year=1979|journal=The Astrophysical Journal|volume=229|pages=942|doi=10.1086/157028|bibcode=1979ApJ...229..942R}}</ref> |
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<ref name="Ohnaka2009">{{cite journal|display-authors=1 |
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|title=Spatially Resolving the Inhomogeneous Structure of the Dynamical Atmosphere of Betelgeuse with VLTI/AMBER |
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|journal=[[アストロノミー・アンド・アストロフィジックス|Astronomy and Astrophysics]]|year=2009|volume=503|issue=1|pages=183-195 |
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|doi=10.1051/0004-6361/200912247|bibcode=2009A&A...503..183O|arxiv=0906.4792}}</ref> |
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<ref name="NRAO">{{cite web|author=Dave Finley|url=http://www.nrao.edu/pr/1998/betel/|title=VLA Shows "Boiling" in Atmosphere of Betelgeuse|publisher=National Radio Astronomy Observatory|date=1998-04-08|accessdate=2020-02-28}}</ref> |
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<ref name="Lobel2004">{{cite journal|author=Lobel, A.|author2=Aufdenberg, J.|author3=Dupree, A. K.|author4=Kurucz, R. L.|author5=Stefanik, R. P.|author6=Torres, G.|title=Spatially Resolved STIS Spectroscopy of Betelgeuse's Outer Atmosphere|year=2004|journal=Proceedings of the 219th Symposium of the IAU|volume=219|page=641|doi=10.1017/s0074180900182671|bibcode=2004IAUS..219..641L|arxiv=astro-ph/0312076|quote=In the article, Lobel ''et al.'' equate 1 arcsecond to approximately 40 stellar radii, a calculation which in 2004 likely assumed a Hipparcos distance of 131 pc (430 ly) and a photospheric diameter of 0.0552" from Weiner et al.}}</ref> |
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<ref name="Skinner1997">{{cite journal|author=Skinner, C. J.|last2=Dougherty|first2=S. M.|last3=Meixner|first3=M.|last4=Bode|first4=M. F.|last5=Davis|first5=R. J.|last6=Drake|first6=S. A.|last7=Arens|first7=J. F.|last8=Jernigan|first8=J. G.|title=Circumstellar Environments – V. The Asymmetric Chromosphere and Dust Shell of Alpha Orionis|year=1997|journal=Monthly Notices of the Royal Astronomical Society|volume=288|issue=2|pages=295–306|doi=10.1093/mnras/288.2.295|bibcode=1997MNRAS.288..295S}}</ref> |
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<ref name="Mohamed2012">{{cite journal|author=Mohamed, S.|author2=Mackey, J.|author3=Langer, N.|title=3D Simulations of Betelgeuse's Bow Shock|year=2012|journal=Astronomy and Astrophysics|volume=541|pages=A1|doi=10.1051/0004-6361/201118002|bibcode=2012A&A...541A...1M|arxiv=1109.1555}}</ref> |
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<ref name="Allen">{{cite book|authorlink=リチャード・ヒンクリー・アレン| author=Allen, Richard Hinckley | year=1963 | origyear=1899 | title=Star Names: Their Lore and Meaning | edition=rep. | publisher=Dover Publications Inc. | location=New York | url=https://archive.org/details/starnamestheirlo00alle/page/310 | isbn=978-0-486-21079-7 | pages=[https://archive.org/details/starnamestheirlo00alle/page/310 310–12] }} {{cite book, ''Star Names: Their Lore and Meaning'', (rep.), New York, 1963, pp. 310-, 403.</ref> |
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* {{Cite book|和書|author=野尻抱影|title=新星座巡礼|publisher=[[中央公論新社]]|series=中公文庫 BIBLIO|date=2002-11-1|isbn=978-4122041288|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|editor=天文観測年表編集委員会|title=2008年 天文観測年表|publisher=[[地人書館]]|date=2007-11-20|edition=初版第1刷|isbn=978-4-8052-0789-5|ref=harv}} |
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||
* 野本 陽代:「ベテルギウスの超新星爆発 加速膨張する宇宙の発見」、幻冬舎新書、ISBN 978-4344982390(2011年11月29日)。 |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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* [https://www.astroarts.co.jp/news/2013/01/23betelgeuse/index-j.shtml ベテルギウスの行く手をはばむ?謎の壁] |
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* [https://www.aavso.org/vsots_alphaori Alpha Orionis (Betelgeuse)] - アメリカ変光星観測者協会 (AAVSO) |
* [https://www.aavso.org/vsots_alphaori Alpha Orionis (Betelgeuse)] - アメリカ変光星観測者協会 (AAVSO) |
||
* G. Perrin, S.T. Ridgway, V. Coudé du Foresto, B. Mennesson, W.A. Traub, M.G. Lacasse, [https://arxiv.org/abs/astro-ph/0402099v1 "Interferometric observations of the supergiant stars α Orionis and α Herculis with FLUOR at IOTA"], ''Astronomy & Astrophysics'', '''418''' (2004) 675-685. |
* G. Perrin, S.T. Ridgway, V. Coudé du Foresto, B. Mennesson, W.A. Traub, M.G. Lacasse, [https://arxiv.org/abs/astro-ph/0402099v1 "Interferometric observations of the supergiant stars α Orionis and α Herculis with FLUOR at IOTA"], ''Astronomy & Astrophysics'', '''418''' (2004) 675-685. |
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* [https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/11106_betelgeuse 減光とともに形も変わったベテルギウス] - [[アストロアーツ]] |
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2020年2月29日 (土) 03:02時点における版
ベテルギウス[1] Betelgeuse[2][3] | ||
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2017年にアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)によって撮影されたベテルギウス
(提供: ALMA/E. O’Gorman/P. Kervella) | ||
仮符号・別名 | オリオン座α星[4] | |
星座 | オリオン座 | |
見かけの等級 (mv) | 0.42[4] 0.0 - 1.3(変光)[5] | |
視直径 | 0.034 - 0.047″ | |
変光星型 | 半規則型変光星 (SRC)[5][6][7] | |
分類 | 赤色超巨星[4] | |
位置 元期:J2000.0[4] | ||
赤経 (RA, α) | 05h 55m 10.30536s[4] | |
赤緯 (Dec, δ) | +07° 24′ 25.4304″[4] | |
赤方偏移 | 0.000073[4] | |
視線速度 (Rv) | 21.91 km/s[4] | |
固有運動 (μ) | 赤経: 27.54 ミリ秒/年[4] 赤緯: 11.30 ミリ秒/年[4] | |
年周視差 (π) | 6.55 ± 0.83ミリ秒[4] (誤差12.7%) | |
距離 | 642.53 ± 146.77 光年 (197 ± 45 パーセク)[8][注 1] | |
絶対等級 (MV) | -5.5[注 2] | |
ベテルギウスの位置
| ||
物理的性質 | ||
半径 | 887 ± 203 R☉[9] 955 ± 217 R☉[10] | |
質量 | 11.6+5.0 −3.9 M☉[10] | |
表面重力 | -0.5 (log g)[11] | |
自転周期 | 5 km/s[12] | |
スペクトル分類 | M1-M2Ia-Iab[4][13] | |
光度 | 90,000 - 150,000 L☉[14] | |
表面温度 | 3,590 K[10] | |
色指数 (B-V) | +1.85[15] | |
色指数 (U-B) | +2.06[15] | |
色指数 (R-I) | +1.28[15] | |
金属量[Fe/H] | 0.05[16] | |
年齢 | 800 - 850 万年[9] | |
他のカタログでの名称 | ||
メンカブ オリオン座58番星[4] BD +07 1055[4], FK5 224[4] HD 39801[4], HIP 27989[4] HR 2061[4], SAO 113271[4] |
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ベテルギウス[17](英語: Betelgeuse)はオリオン座にある恒星で、全天に21個あるの1等星の1つである。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに、冬の大三角を形成している。バイエル符号での名称はオリオン座α星で、この表記での英語名は「Alpha Orionis」または「α Orionis」。「Alpha Ori」や「α Ori」と略される事もある。
概要
オリオン座の中ではリゲルに次いで2番目に明るい[注 3]。赤みがかった半規則型変光星(SRC)で、見かけの明るさは0.0 - 1.3等級の間で変化する[5][18]。近赤外線波長では全天で最も明るい恒星となる。
スペクトル分類M1-2型の赤色超巨星に分類されるベテルギウスは、肉眼で観望できる恒星の中では最も直径が大きい恒星の1つである。仮にベテルギウスを太陽系の中心に置いた場合、その大きさは小惑星帯を超えたあたりにまで及び、水星、金星、地球、火星の軌道を超え、木星軌道をも超える可能性がある。しかし、銀河系においてはベテルギウスの他にもケフェウス座μ星やおおいぬ座VY星などの赤色超巨星がいくつか存在していることが知られている。質量は太陽の10倍弱から20倍強の範囲であると計算されている。地球からは640光年離れていると計算されており、その場合、絶対等級は-5.5等級となる。ベテルギウスは1000万年も絶たないうちに急速な進化を遂げており、おそらく10万年以内に超新星爆発を起こしてその一生を終えることが予想されている。オリオン座のベルトを構成している3つの恒星も属しているオリオン座OBアソシエーションに起源を持ち、そこから飛び出していった逃走星であり、約30 km/sの速度で星間空間を移動しているため、4光年を超える大きさのバウショックを形成している。
ベテルギウスは1920年にその光球の角直径が測定され、太陽以外で角直径が測定された初めての恒星である。その後の研究では、非球面性や周辺減光、恒星の脈動、および異なる波長での外観の変化により、報告されたベテルギウスの角直径は0.042 - 0.056秒角の範囲となっている。ベテルギウスより大きい角直径を持つ事が知られている恒星は太陽とかじき座R星のみである。また、恒星自身の質量放出によって引き起こされる、ベテルギウス自身の250倍の大きさを持つ複雑で非対称な星周外層に包まれている。
観測の歴史
ベテルギウスとその赤みがかった色は古代から注目されてきた。古代ローマの天文学者であるクラウディオス・プトレマイオスはその色を「ὑπόκιρρος(hypókirrhos)」と表現した。この用語は後にウルグ・ベクが出版した星表である『Zij-i Sultani』の翻訳者によってラテン語で「rubedo」と呼ばれた[21][22]。rubedoは英語では「ruddiness」と呼ばれ「赤味」や「(頬などが)赤い様子」を意味する。現在の星の分類の体系が形作られる前であった19世紀に、イタリアの天文学者アンジェロ・セッキはベテルギウスを「クラスIII(赤色から橙色の恒星)」の恒星のプロトタイプの1つとして分類した[23]。それとは対照的に、プトレマイオスがベテルギウス観測する3世紀前に中国の天文学者は黄色いベテルギウスを観測したと言われている。これが事実である場合、西暦紀元の初め頃ではベテルギウスが黄色超巨星の段階にあったことを示している可能性があり[24]、現在の研究に基づく黄色超巨星の周りの複雑な星周環境を考慮すると、実際にそうであった可能性はあるとされている[25]。
初期の発見
ベテルギウスの明るさの変化は、1836年にジョン・ハーシェルによって発見され[26]、1849年に彼が出版した著書『天文学概要』(Outlines of Astronomy)で発表された。1836年から1840年にかけて観測を行い、彼は1837年10月と1839年11月にベテルギウスの明るさがリゲルを上回った時にその明るさの大きな変化に気づいた[27]。その後10年間は観測を休止していたが、1849年に、その3年後である1852年に変光のピークに達した別の短い変光サイクルに注目した。その後の観測では、数年の間隔で異常に明るい視等級の極大を記録したが、1957年から1967年まではわずかな変動しか見られなかった。アメリカ変光星観測者協会(AAVSO)の記録では1933年と1942年に最大極大視等級0.2等、1927年と1941年に最低極小視等級1.2等が観測されている[28][29]。この明るさの変動は、ヨハン・バイエルが1603年に出版した『ウラノメトリア』で、通常ではベテルギウスより明るいリゲル(β星)に匹敵する明るさを持つとしてベテルギウスをα星に指定した理由かもしれない[30]。北極圏から見たベテルギウスの赤い色とリゲルより高い天球上での位置から、イヌイットはベテルギウスをより明るい恒星であるとみなし、現地で呼ばれた名称の1つは「大きな星」を意味する「Ulluriajjuaq」であった[31]。
1920年に、アルバート・マイケルソンとフランシス・ピーズはウィルソン山天文台にある口径2.5 mのフッカー望遠鏡の前面に直径6 mの干渉計を取り付けた。ジョン・オーガスト・アンダースンの助けも借りて、3人はこの干渉計を用いてベテルギウスの角直径を0.047秒角と測定した。当時測定された年周視差0.018ミリ秒に基づくと、ベテルギウスの直径は3億8400万 km(2.58 au)となる[32]。しかし、周辺減光と測定の誤差により、この測定の精度には不確実性が生じた。
1950年代と1960年代には、ストラトスコープ計画と1958年のマーティン・シュヴァルツシルトとプリンストン大学の研究者Richard Härmの著書『Structure and Evolution of the Stars』の出版という、赤色超巨星の恒星対流理論に影響を与える2つの発展が見られた[33][34]。この本は、コンピューター技術を応用して恒星のモデルを作成する方法に関するアイデアを広めることになり、一方でストラトスコープは、乱気流の上の望遠鏡搭載気球から撮影することで、それまでに見られなかった太陽の粒状斑や黒点の高画質画像を作成した。これにより、太陽表面の対流の存在を確認することができた[33]。
撮影技術の飛躍
1970年代の天文学者Antoine Labeyrieによる、シーイングによって引き起こされるぼかし効果を大幅に削減したスペックル干渉法の発案から始まり、人類の天体画像撮影技術は大きな進化を遂げた。地上の望遠鏡の光学的分解能が向上したことで、ベテルギウスの光球のより正確な測定が可能になった[35][36]。ハワイのウィルソン山天文台、マクドナルド天文台、マウナケア天文台群にある赤外線望遠鏡の改良に伴って、天体物理学者らは超巨星を取り巻く複雑な星周殻(Circumstellar shells)を観測し[37][38][39]、その結果、対流に起因する巨大な気泡の存在が疑われるようになった[40]。しかし、1980年代後半から1990年代初頭にかけて、ベテルギウスが開口マスキング干渉法の通常観測対象になったことから可視光線および赤外線画像の面で大きな躍進があった。John E. Baldwinとキャヴェンディッシュ研究所宇宙物理学部門に在籍するその同僚らによって開発されたこの新しい技術は、望遠鏡の瞳面にいくつかの穴が開いている小さなマスクを取り付けて開口を特別な干渉計アレイに変換するというものである[41]。この技術は、光球上の明るいスポットの存在を明らかにしながら、いくつかのベテルギウスの最も正確な測定値の測定に貢献した[42][43]。これらは太陽以外では初めて得られた恒星円盤の光学および赤外線画像であり、最初は地上の干渉計で撮影していたが、後にイギリスのケンブリッジにあるCOAST望遠鏡によって高解像度の画像が撮影されている。これらの機器で観測された「明るいパッチ」もしくは「ホットスポット」と呼ばれる領域は、1975年にマーティン・シュヴァルツシルトが提唱した恒星の表面を支配する大規模な対流セルに関する理論を裏付けることになった[44][45]。
1995年、ハッブル宇宙望遠鏡のFaint Object Camera(FOC)は、地上の干渉計よりも優れた解像度でベテルギウスの紫外線画像を撮影した[46][47]。これは、太陽以外の恒星の円盤像を従来の望遠鏡で撮影した初めての画像であった[46][47]。紫外線は地球の大気に吸収されてしまうため、紫外線での観測は宇宙望遠鏡で行うのが最適とされている[48]。以前に撮影されていた画像と同じように、ハッブルの画像にもベテルギウスを四等分したとき南西側の領域に見える、周囲より温度が2,000 K高いことを示すホットスポットが確認された[49]。その後、ハッブル宇宙望遠鏡のゴダード高解像度分光器(HRS)によって得られたベテルギウスの紫外線スペクトルから、そのホットスポットがベテルギウスの自転軸の1つであることが示唆された。これにより、ベテルギウスの自転軸の地球に対する傾斜角は約20度、天の北極からの位置角は約55度であるとされた[50]。
2000年代の研究
2000年12月に公開された研究で、ベテルギウスの角直径が赤外空間干渉計(ISI)を用いた中間赤外線波長での観測で測定され、その結果、ベテルギウスの角直径は80年前のマイケルソンの測定結果と概ね一致する55.2 ± 0.5 ミリ秒と推定された[32][51]。この研究結果の出版地点では、ヒッパルコス衛星の観測から推定されていたベテルギウスの年周視差7.63 ± 1.64 ミリ秒に基づいて、ベテルギウスの推定半径は5億3856万 km(3.6 au)とされた。しかし2009年に公開された赤外線干渉の研究で、1993年以降、ベテルギウスは著しく減光することなく大きさが15%収縮しており、しかも加速的に収縮していると発表された[52][53][54]。その後の観測からは、ベテルギウスの見かけ上の収縮は広範囲に広がっている恒星大気のセル活動に起因している可能性が示唆されている[55]。
その直径に加えて、ベテルギウスの広がった恒星大気の複雑な変遷についても疑問が生じていた。銀河を構成する物質は、恒星が形成されたり破壊されるにつれて再利用されており、赤色超巨星はその主な貢献者となっているが、質量が失われるプロセスについては分かっていない[56]。しかし、干渉法技術の進歩により、天文学者らはこの難題を解決しつつある。2009年7月にヨーロッパ南天天文台(ESO)が公開した、地上にあるVLTI干渉計が撮影した画像から、30 auに渡って周囲の恒星大気へ放出されている広大なガスのプルームの存在が示された[12]。この放出範囲は太陽から海王星までの距離に匹敵し、ベテルギウスの周囲の恒星大気で発生する複数の事象の1つである。天文学者は、ベテルギウスの周囲に少なくとも6つの殻があることを確認している。恒星の進化の末期における質量放出の謎を解けば、これらの巨星の爆発的な終焉を促進させる要因が明らかになるかもしれない[53]。
2019年から2020年にかけての減光
ベテルギウスは脈動する半規則型変光星(SRC)なので、その大きさや温度の変化により複数のサイクルで明るさが変化しているが[5][9]、2019年末頃からベテルギウスは大きく減光し始め、2020年1月までにベテルギウスの視等級は0.5等級から1.5等級へと明るさにして約2.5倍暗くなり、1月30日には光電測光や眼視での観測結果からベテルギウスが2等星にまで暗くなったことが確実となった[57]。同年2月にはThe Astronomer's Telegramにて記録的な極小視等級1.614等級を記録し、さらに暗くなっていることが報告されている[58]。ベテルギウスは現在、最近25年間の研究において「最も暗く低温」な状態にあるとされ、また、半径が収縮していると計算されている。天文雑誌のアストロノミーはこのベテルギウスの減光を「奇妙な減光」と述べており[59]、これは差し迫っているベテルギウスの超新星爆発の予兆ではないかという憶測が一般的に推論されている[60][61]。この減光によりベテルギウスは全天で最も明るく見える恒星で上位10位以内の1つであったのが、20位以下にまで降格することになり[62]、近くに見えるアルデバラン(0.86等級)と比べても著しく暗くなった[63]。天文学者らは今後約10万年以内に発生すると予想されているベテルギウスの超新星爆発が現在、切迫しているとは考えづらいという見解を示しているが[64][65]、大手メディアの報道では、ベテルギウスで超新星爆発が起きようとしているという推論が議論されている[64][65][66][67][68]。
2020年2月14日、ヨーロッパ南天天文台は、チリ・パラナル天文台の超大型望遠鏡 (VLT) による撮像を公開した[69]。系外惑星探索機器SPHERE (Spectro-Polarimetric High-contrast Exoplanet REsearch instrument) による画像では、2019年1月から12月にベテルギウスの明るさと形状が大きく変化したことが示された。また、中間赤外線撮像分光装置VISIR (VLT Imager and Spectrometer for mid Infrared) の画像では、ベテルギウスから放出されるダストプルームを捉えた[69]。
このベテルギウスの変光はビラノバ大学の天文学者Richard Wasatonic、Edward Guinan、そしてアマチュア天文家のThomas Calderwoodは、通常の5.9年周期の変光サイクルと通常より大きく減光する425日周期の変光サイクルの極小期が一致したことが、この大幅な減光の原因であると理論化している[62]。他に考えられる要因として、巨大な対流セルが移動、収縮、膨張したことで起こる表面温度の低下、または地球方向へのダストの放出の結果とする仮説が立てられている[69][63]。
2020年2月17日に、ベテルギウスの明るさがこの約10日間変化しておらず、増光に転じる兆候が示された[70]。そして2月22日に、ベテルギウスの減光が完全に止まり、増光に転じ始めた可能性が報告された[71]。2月24日には、過去50年間の観測から、ベテルギウスの赤外線での外観に有意な変化が検出されなかったと報告された。これは2019年から2020年にかけてのベテルギウスの大幅な視覚的減光とは無関係であるとされ、中心核の崩壊が差し迫っているわけではないことを示唆している[72]。2月26日、天文学者らはスペクトルにおいてベテルギウスの塵の前駆物質の1つである大量の酸化チタン(TiO)の存在が報告され、ベテルギウスが冷却している可能性があることが示唆された[73]。
観測
独特な赤橙色を放つため、ベテルギウスは冬の夜空では簡単に見つけることができる。冬の大三角を構成する3つの恒星のうちの1つで、冬のダイヤモンドの中心にある。毎年1月初め頃になると、日没直後に東の空から昇るベテルギウスを観測できる。9月中旬から翌年の3月中旬にかけては(12月中旬頃が最適)、南緯82度以南の南極大陸を除いて、世界中のほぼ全ての地域で観測できる。5月では北半球の中緯度、6月では南半球で日没後に、西の地平線近くでベテルギウスを短時間見ることができ、数ヶ月後にまた日の出前に東の地平線近くに再び現れるようになる。6月から7月にかけては南緯70度から80度の南極地域の正午の時間帯(太陽が地平線より下にある場合のみ)を除いて肉眼では観測できなくなる(望遠鏡を用いれば昼間に観測できる)。
ベテルギウスの見かけの明るさは0.0 - 1.3等級の範囲で変化する[5]。最も明るくなる極大期にはリゲルやカペラよりも明るくなり、全天で6番目に明るい恒星になる期間もある。最も暗くなる極小期ではデネブやみなみじゅうじ座β星よりも暗くなり、全天で20番目の明るさにまで後退する[29]。
ベテルギウスのB-V色指数は1.85で[15]、これは恒星が顕著に赤みがかっていることを示す数値である。光球の周りには恒星大気が広がっており、この大気はスペクトル上で吸収線っではなく強い輝線を示す。これは恒星の周辺が厚い気体の外層に囲まれているときに発生する現象である。この広がったガス状大気は光球の視線速度の変動に応じてベテルギウスから遠ざかる方向に移動することが観測されている。ベテルギウスは近赤外線光源としては全天で最も明るい天体で、Jバンドでの明るさは-2.99等級に達する[74]。このことから、ベテルギウスが放出している放射エネルギーのうち、可視光線として放射されるのは全体の約13%ということになる。仮に人間が全ての波長の光を認識できたら、ベテルギウスが全天で最も明るい恒星になっていたであろう[29]。
Catalog of Components of Double and Multiple Stars(CCDM)では、ベテルギウスの周りにある5個の暗い見かけの伴星がリストアップされている。それらの恒星はベテルギウスから0.1 - 174.4秒角離れており、いずれも10等級より暗い[75]。
恒星系
ベテルギウスは一般的に単独の孤立した逃走星であると考えられており、現在はどの星団または星形成領域にも関連付けられておらず、ベテルギウスがどこで形成されたかは不明である[76]。
1985年にベテルギウスには2つの分光伴星の存在が示されている。1968年から1983年までのベテルギウスの偏光データの分析により、約2.1年の周期でベテルギウスを公転している密接する伴星が存在することが示されている。スペックル干渉法を用いて、研究チームは2つの伴星のうち近い方はベテルギウスに対する位置角が273度で、0.06 ± 0.01秒(~9 au)離れている潜在的にベテルギウスの彩層の中に位置する軌道を持ち、そして遠い方の伴星は位置角278度で、0.51 ± 0.01秒(~77 au)離れていると推定した[77][78]。しかし、さらなる研究ではこれらの伴星の証拠は見つかっておらず、これらの伴星の存在は現在では否定されているが[79]、全体的な流動に寄与している密接する伴星が存在している可能性は完全には排除できていない[80]。1980年代および1990年代時点の技術をはるかに超えたベテルギウスとその周辺の高解像度干渉法を用いても、そのような伴星は検出されていない[12][81]。
距離の測定
1838年にフリードリヒ・ヴィルヘルム・ベッセルが初めて年周視差の測定に成功して以来、天文学者らはベテルギウスまでの距離の測定に困惑してきた。恒星までの距離を知ることで、光度などの恒星に関する他のパラメーターの精度が向上させることができる。また、角直径と組み合せれば恒星の物理半径と有効温度の計算にも使用できる。光度と同位体存在量は、恒星の年齢や質量を推定するのにも使用できる[8]。
1920年に最初の干渉研究がベテルギウスの直径測定で行われたとき、年周視差は18.0ミリ秒と仮定された。この場合、ベテルギウスまでの距離は約180光年(約56パーセク)となり、この値によりベテルギウスの不正確な半径の他にベテルギウスに関する様々な特性がもたらされた。それ以来、ベテルギウスまでの距離を測定するための継続的な作業が行われ、約1,300光年(約400パーセク)という数値が提案された[8]。
1997年にヒッパルコス星表が発表される前は、ベテルギウスまでの距離について矛盾する2つの測定値があった。一方は1991年に測定された年周視差9.8 ± 4.7ミリ秒に基づく約330光年(約102パーセク)という推定で[82]、もう一方はHipparcos Input Catalogueに記録された年周視差5 ± 4ミリ秒に基づく約650光年(約200パーセク)とする推定だった[83]。この両者の推定値は不確実性が大きく、研究者らはこの不確実性を考慮して広範囲の距離推定値を採用していたため、ベテルギウスの特性の計算には大きなばらつきがあった[8]。
ヒッパルコスによる測定結果は1997年に発表された。測定されたベテルギウスの年周視差は7.63 ± 1.64ミリ秒で、これを基に計算すると距離は約427光年(約131パーセク)になり、それ以前の推定値よりも不確実性は小さくなった[84]。しかし、ベテルギウスのような変光星のヒッパルコスによる測定結果を後に検証したところ、これらの測定値の不確実性が過小評価されていたことが判明した[85]。2007年には、改善された測定値として6.55 ± 0.82ミリ秒が算出され、それを基に496 ± 65光年(152 ± 20パーセク)という推定値が得られた[86]。
2008年に超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を使用して行われた測定では、ベテルギウスの年周視差は5.07 ± 1.10ミリ秒、距離は642 ± 147光年(197 ± 45パーセク)という結果が示された[8]。研究者のGraham Harperは「修正されたヒッパルコスによるベテルギウスの年周視差は、オリジナルの結果(427光年)よりも遠方の距離を示した(520光年)。しかし、位置天文学的に解決するには依然として2.4ミリ秒の大きな宇宙雑音が必要である。これらの結果を考えると、ヒッパルコスのデータにはまだ起源不明の系統的誤差が含まれていることは明らかだ。」と指摘している。無線データにも系統的誤差は生じるが、Harperのソリューションはデータセットを組み合わせてそのような誤差を軽減することが期待されている。アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)とe-MERLINによる観測では、年周視差4.51 ± 0.80ミリ秒および距離724+111
−156光年(222+34
−48パーセク)という値が得られている[87]。
欧州宇宙機関(ESA)が現在運用しているガイア計画では、搭載されている機器の限界から、6等級より明るい恒星に対しては良質な測定結果が得られることは期待されていなかったが[88]、実際に運用したところ、3等級程度の恒星でも良質な測定結果が示されている。明るい恒星の強行観測は、最終結果が全ての明るい恒星で利用可能であることを意味し、ベテルギウスの年周視差は現在すでに測定されているものよりも遥かに正確な測定値として公開されるとされているが[89]、現時点ではガイア計画による測定結果の中にベテルギウスのデータは含まれていない[90]。
変光
ベテルギウスは変光に顕著な周期性があるが、変光の度合いや周期の長さがその都度異なることもある半規則型変光星に分類される。その中でもベテルギウスは視等級の変動が1等級程度で、変光周期が数十日から数百日程度の脈動する赤色超巨星が分類されるSRC型に当てはまる[5][6][7]。
ベテルギウスは通常、0.5等級に近い範囲でわずかに明るさが変動するが、極端な場合には極大期で0.0等級まで明るくなり、極小期で1.3等級まで暗くなることもある[5][6][18]。ベテルギウスは変光星総合カタログ(GCVS)に記載されており、変光周期は2,335日(6.4年)とされているが[5][7]、より詳細な分析では周期400日近くのメインサイクルと周期2,100日(5.75年)前後のより長い二次サイクルとに分けれることが示されている[81][91]。しかし上記のように、信頼性のある記録の中で最も暗い1.614等級という視等級も記録されている。
赤色超巨星の対称的な脈動すなわち動径脈動(Radial pulsation)については十分にモデル化されており、数百日間の変光周期は通常、基本的で最初の倍音の脈動によるものであることが示されている[92]。ベテルギウスのスペクトル中に見られるスペクトル線には、明るさの変化に大まかに対応している視線速度の変化を示すドップラー効果が見られる。これはベテルギウスの大きさの変動の性質を示しているが、大きさに対応する温度とスペクトルの変動は明確に見受けられていない[93]。ベテルギウスの直径の変動は直接測定されてもいる[55]。
周期が長い二次サイクルの発生要因は不明で、動径脈動では説明することができない[91]。ベテルギウスの干渉観測では、恒星の直径の大部分を占め、それぞれが恒星の全光度の5 - 10%を放射し、大規模な対流セルによって形成されるホットスポットによって生じていることが示されている[80][81]。周期が長い二次サイクルの要因を説明できる1つの理論として、恒星の自転と組み合わせて進化したそのような対流セルによって引き起こされるというものがある[91]。他にも、密接した未知の伴星との相互作用、質量損失に影響する彩層の磁気活動、またはgモードのような非動径脈動(Non-radial pulsations)によるとする理論もある[94]。
2016年現在の変光範囲は0.0等 - 1.3等となっている。肉眼で観測できる数少ない変光星の一つであり、北半球における冬(南半球では夏)の半規則型変光星の中では、最もはっきりとした変光を示す。北半球における冬(南半球では夏)に見える半規則型変光星には、他にオリオン座W星[注 4]やうさぎ座RX星[注 5]、いっかくじゅう座V523星[注 6]などがあるが[注 7]、3個ともベテルギウスほど明確な光度変化は見られない。
直径
1920年12月13日に、太陽以外の恒星では初めての光球の角直径の測定がベテルギウスで行われた[32]。当時の干渉法技術はまだ初期の段階であったが、この測定には成功した。研究者らは均一な恒星円盤モデルを用いて、ベテルギウスの角直径が0.047秒であると測定したが、周辺減光により周辺が暗くなるため実際にはそれよりも17%大きくなるとして、ベテルギウスの角直径を0.055秒と推定した[32][54]。それ以降に行われた他の研究で求められたベテルギウスの角直径は0.042 - 0.069秒の範囲だった[36][51][98]。これらのデータをベテルギウスまでの距離の推定範囲180 - 815光年と組み合わせるとベテルギウスの半径は1.2 - 8.9 au(1億7600万 - 13億3100万 km)となる。それと比較して、太陽から火星までは1.5 au、小惑星帯にあるケレスまでは2.7 au、木星までは5.2 au離れている。仮に太陽系において太陽をベテルギウスに置き換えると、光球の大きさは木星軌道を超え、9.5 au離れた土星軌道付近にまで達する可能性がある。
ベテルギウスには以下の理由により、正確な直径を測定するのが困難だった。
- ベテルギウスは脈動星なので、時間とともにその直径が変化する。
- 周辺減光により縁部が暗くなると発光する色が変化し、中心から離れるにつれて明るさが暗くなるので、ベテルギウスには定義可能な「縁」が無い。
- ベテルギウスは表面から放出された物質、つまり光を吸収もしくは放出する物質で構成された星周外層に包まれているため、光球の範囲を定義することが難しい[53]。
- 電磁スペクトル内の様々な波長で直径の測定を行うことができるが、報告される直径の測定値には30 - 35%もの差が生じる場合もあり、また、恒星の見かけの大きさは観測する波長によって異なるため、これらの測定結果を比較することは困難である[53]。研究では、測定されたベテルギウスの角直径は紫外線波長でかなり大きくなるが、近赤外線波長では見かけの大きさは小さくなり、中赤外線波長では再び大きく見えるようになることが示されている[46][99][100]。
- 乱流が角分解能を低下させるため、大気の揺らぎが地上の望遠鏡から得られる画像の分解能を制限させてしまう[42]。
これらの問題を解決するために。研究者は様々な解決策を採用している。1868年にアルマン・フィゾーによって初めて考案された天文干渉法は、現在の望遠鏡の性能を大幅に改良することを可能にさせ、さらに1880年代のマイケルソン干渉計の発明につながり、ベテルギウスの最初の直径測定にも至った独創的な概念であった[101]。1つではなく2つの目で物体を認識すると人間の奥行き感覚が向上するように、フィゾーは恒星の空間分光分布に関する情報をもたらす干渉を得るために、1つではなく2つの開口部から恒星を観察することを提案した。その後科学は急速に進化し、複数の開口部がある干渉計がスペックル・イメージングの撮影に使用されるようになり、フーリエ解析を用いて合成して高解像度のポートレートを作成している[102]。1990年代に行われたベテルギウスのホットスポットはこの方法論で特定された[103]。その他の技術的革新として、補償光学[104]、ハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡のような宇宙望遠鏡[46][105]、3つの望遠鏡から照射される光線を同時に組み合わせることでミリ秒単位の空間分解能を達成できるAstronomical Multi-BEam Recombiner(AMBER)[106][107]が含まれる。
電磁スペクトルのどの部分で(可視光域か、近赤外域か、または中赤外域か)最も正確にベテルギウスの直径を測定できるかについては、未だに議論が続いている。ベテルギウスは56.6 ± 1.0ミリ秒の角直径を持つと測定された。2000年には54.7 ± 0.3ミリ秒と測定されているが、この測定値は中赤外線では目立たないホットスポットの影響は無視している[51]。また、理論上の周辺減光による減光の差し引きを含めると角直径は55.2 ± 0.5ミリ秒とされた。以前の推定値では、2008年にHarperが仮定した642 ± 147光年(197 ± 45パーセク)[14]というベテルギウスまでの距離を用いて、半径は太陽と木星間の距離にほぼ等しい5.6 auすなわち1,200 太陽半径(R☉)に相当するとされた。それを基に木星軌道とほぼ同じ大きさのベテルギウスを描いた図が2009年に天文雑誌アストロノミー、その翌年にAstronomy Picture of the Day(APOD)に掲載された[108][109]。
2004年、近赤外線を用いてより正確な光球の角直径測定を行ったPerrinが率いる研究チームは、その角直径を43.33 ± 0.04ミリ秒と測定した[99]。この研究では、観測する波長が異なるとベテルギウスの直径の測定値も異なってくる理由についても説明されている。恒星は大きく温度が高い広がった恒星大気を通じて観測される。短波長(可視スペクトル)では光が大気で散乱されるため、わずかに直径が大きく見えるようになり、一方で近赤外波長(KバンドおよびLバンド)では、光の散乱は無視できるので本来の光球を直接見ることできる。そして、中赤外波長では、散乱が再び起きるようになり、また、暖かい大気の熱放射によって見かけの直径が大きくなることが示された[99]。
2009年に公開されたInfrared Optical Telescope Array(IOTA)とVLTIを使用した研究により、Perrinらによる分析が強く支持され、ベテルギウスの角直径が42.57 - 44.28ミリ秒と比較的狭い誤差範囲で求められた[80][110]。2011年には2009年に発表された角直径の測定結果を裏付ける、近赤外波長としては3番目に測定された、周辺減光しているベテルギウスの角直径の推定値として42.49 ± 0.06ミリ秒が得られている[111]。その結果として、2004年にPerrinらが報告した角直径43.33ミリ秒と2007年にヒッパルコスの観測データを基にvan Leeuwenが報告したベテルギウスまでの距離496 ± 65光年(152 ± 20パーセク)とを組み合わせると、近赤外波長におけるベテルギウスの光球の半径は3.4 auすなわち730太陽半径(5億860万 km)となる[112]。2014年に発表された論文では、VLTIに搭載されたAMBERを用いて行われたHバンドとKバンドでの観測を用いて、42.28ミリ秒(明るさが一様で周辺減光がないとすると41.01ミリ秒に相当)という角直径が導き出された[113]。
同じく2009年の研究では、1993年から2009年にかけてベテルギウスの半径が約15%も収縮しており、しかも加速的に収縮しているらしいことがわかった[52][54][114]。この研究では、これまで発表されてきたほとんどの研究とは異なり、特定の波長のみで観測された15年分の観測データを研究対象とした。それまでの研究では、複数の波長で観測された連続で1 - 2年分のデータが調査されていたが、多くの場合において非常にばらつきのある結果となっていた。ベテルギウスの見かけの大きさは、1993年の測定では56.0 ± 0.1ミリ秒だったのが2008年の測定では47.0 ± 0.1ミリ秒になっており、約15年間の間にほぼ0.9 au(1億3464万 km)も収縮したことになる。この観測結果が天文学者らが理論化してきたような光球のリズミカルな膨張と収縮の証拠であるかどうかは完全にはわかっていないが、もしそうであるならば周期的なサイクルが存在する可能性があるが、研究グループを率いたTownesは仮にそのようなサイクルがあるとするなら、その周期はおそらく数十年に及ぶとしている[54]。他に考えられる要因として、対流によって光球の突出が起きている可能性や、非対称の形状であることから恒星が自転軸を中心に自転すると膨張と収縮が起きることによる可能性がある[115]。
ベテルギウスの膨張と収縮の可能性を示唆している中赤外波長での測定値と、光球が比較的一定の直径を持つことを示唆している近赤外波長での測定値の違いに関する議論はまだ解決されていない。2012年に発表された論文で、カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは測定値が「光球上の冷たく光学的に厚い物質の挙動に支配されている」と報告し、恒星の見かけ上の膨張と収縮は光球自体ではなく、周囲の外殻の活動によるものである可能性を示した[55]。この結論がさらに裏付けられれば、ベテルギウスの平均角直径がPerrinらが推定した43.33ミリ秒に近いことを示唆することになり、ベテルギウスの大きさはHarperらが報告したもの(643光年)よりも短い距離496光年と仮定すると3.4 au(730太陽半径)となる。ガイア計画で、ベテルギウスの大きさを計算する際に使用する距離の仮定値を明らかにできるかもしれない。
かつては太陽以外ではベテルギウスが最も大きい角直径を持つと考えられていたが、1997年にかじき座R星の角直径が57.0 ± 0.5ミリ秒と測定されたことで、太陽以外で最大の角直径を持つ恒星ではなくなった。しかし、かじき座R星は地球から約200光年と近く、ベテルギウスまでの距離の約3分の1程度しか離れていない[116]。
一般的に大きく低温の恒星の半径はロスランド半径(Rosseland radius)で報告されており、3分の2の特定の光学的深さでの光球の半径として定義されている。これは、恒星の有効温度とボロメトリック光度から計算された半径に対応する。ロスランド半径は直接測定された半径とは異なるが、角直径測定に使われる波長に応じて広く使用されている換算係数である[117]。例えば、角直径が55.6ミリ秒と測定された場合、平均ロスランド直径は56.2ミリ秒となる。2016年に発表された、広がった外層ではない、ベテルギウスの光球の角直径測定から得られたロスランド半径は6億1735万 km(4.13 au、887太陽半径)であった[9]。
物理的特性
ベテルギウスはスペクトル分類においてM1-M2Ia-Iab型の、非常に巨大で明るい低温の恒星である赤色超巨星に分類される[4]。スペクトル分類における「M」はベテルギウスがM型星に属する赤色の恒星で、表面温度が低いことを意味している。「Ia-Iab」もしくは「Ia-ab」という接尾辞は恒星の光度階級を示しており、ベテルギウスは「明るい超巨星(Ia型)」と「中間の明るさの超巨星(Iab型)」の間の特性を持つことを意味する。1943年以来、ベテルギウスは他の恒星をスペクトル分類で分類する際の安定したアンカーポイントの1つとして機能してきた[118]。
表面温度、直径、および距離の不確実性が大きいため、ベテルギウスの正確な光度を測定することは困難だが、2012年の研究では距離を652光年(200パーセク)と仮定して光度を126,000太陽光度(L☉)と見積った[119]。表面温度は、2001年の研究で3,250 - 3,690 Kと報告されている。しかし、この範囲外の数値が報告されることもあり、大気中の脈動により数値は大きく変動しているとされている[9]。最も最近報告されたベテルギウスの自転速度は5 km/sで、これは特性がベテルギウスと似ているアンタレスの20 km/sよりもかなり遅い[120]。
2004年に、コンピューターシミュレーションを使用して行われた研究で、ベテルギウスは自転していなくてもその広がった大気により大規模な磁気活動が発生する可能性があると推測された。恒星大気は適度に強い磁場でも恒星の塵、恒星風、質量損失の特性に有意な影響を与える可能性がある要因とされている[121]。ピク・デュ・ミディ天文台にあるBernard Lyot望遠鏡で2010年に行われた一連の分光偏光観測で、ベテルギウスの表面に弱い磁場が存在していることが明らかになり、巨大な対流運動が小規模なダイナモ効果を引き起こせることが示唆されている[122]。
質量
ベテルギウスの周囲を公転する伴星が知られていないため、その質量を直接計算することはできない。理論的モデリングからはベテルギウスの質量は9.5太陽質量(M☉)や、21太陽質量といった一致しない推定値が算出されていた[10]。より古い研究では5 - 30太陽質量の範囲とされていた[123]。太陽の90,000 - 150,000倍の光度を持つことを考えると、ベテルギウスの初期の質量は15 - 20太陽質量であったと計算されている[14]。2011年に超巨星の質量を決定させる新たな方法が提案された。その方法による狭いHバンド干渉計を使った恒星の強度プロファイル(Intensity profile)の観測と光球測定で求められたベテルギウスの半径測定値6億4328万 km(3.4 au、955太陽半径)に基づいて、ベテルギウスの現在の質量は11.6太陽質量、上限値16.6太陽質量、下限値7.7太陽質量であると求められた[10]。進化軌跡へのモデル適合からは、初期のベテルギウスの質量は20太陽質量で、現在の質量は19.4 - 19.7太陽質量であるという値が得られている[9]。
運動
ベテルギウスの運動は複雑なものになっている。現在の位置と固有運動から、時間を遡ってベテルギウスの位置をたどっていくと、ベテルギウスは銀河面から945光年(290パーセク)離れた場所に位置していたことになる。そこには星形成領域が無いため、恒星が形成されるとは信じられない領域であった。特に超長基線アレイ(VLBA)による測定から、ベテルギウスとオリオン星雲星団(ONC、Orion OB1dとも呼ばれる)は1,268 - 1,350光年(389 - 414パーセク)離れていることが示されているため、投影されたベテルギウスの軌跡はオリオン座25番星サブアソシエーションやベテルギウスよりかなり若いオリオン星雲星団とも交差していないとみられている。そのため、ベテルギウスは形成以降、常に現在のような運動をしているとは限らず、おそらく近くの恒星の超新星爆発の影響などを受けて進路を時折変えた可能性がある[8][124]。2013年1月にハーシェル宇宙望遠鏡が観測を行ったところ、ベテルギウスの恒星風が周囲の星間物質に衝突していることが明らかになった[125][126]。
最もあり得るベテルギウスの星形成シナリオは、ベテルギウスがオリオン座OB1アソシエーションから飛び出した逃走星であるというものである。元々、ベテルギウスはオリオン座OB1アソシエーションの一部である「Orion OB1a」内の大質量の恒星から成る多重星のメンバーで、形成から800 - 850万年が経過していると考えられているが[9]、その大質量がゆえに急速な進化を遂げた[8]。2015年に、H. BouyとJ. Alvesはベテルギウスが新たに発見された「Taurion OB Association」と呼ばれるアソシエーションのメンバーである可能性を示唆した[127]。
星周環境の変遷
恒星の進化の後期段階では、ベテルギウスのような大質量星は質量損失の割合が高くなっていき、10,000年ごとに太陽1個分程度の質量を失っていくとされており、周囲に絶え間なく変化する複雑な星周環境を生み出している。2009年に発表された論文では、恒星の質量損失が「初期から現在までの宇宙の進化、そして惑星形成や生命の発生そのものを理解するための鍵」であると言及されている[128]。しかし、その物理的メカニズムについてはよく分かっていない[112]。マーティン・シュヴァルツシルトが最初に超巨星周辺の巨大な対流セルの理論を提案したとき、彼はそれがベテルギウスのような進化した超巨星の質量損失の原因である可能性があると主張した[45]。最近の研究でこの主張は裏付けられているが、対流の構造、質量損失のメカニズム、広がった恒星大気中の塵の形成方法、およびII型超新星という劇的な最期を迎える条件については依然として不確実性がある[112]。2001年にGraham Harperらは、ベテルギウスが10,000年ごとに0.03太陽質量を恒星風として放出されていると推定したが[129]、2009年以降の研究によりベテルギウスに関する全ての数値が不確実になってしまう一時的な質量損失の証拠が得られた[130]。
天文学者らがこの問題を解くことはそう遠くないことかもしれない。現在、少なくともベテルギウスの半径の6倍に及ぶ巨大なガスのプルームが存在していることが発見されており、ベテルギウスが全ての方向に均等に物質を放出しているわけではないことが示されている[12]。プルームの存在は、赤外線観測でしばしば観測される光球の球状対称性がプルームに近い環境下では保存されないことを意味している。ベテルギウスの形状の非対称性は異なる波長による観測で報告されていたが、VLTの補償光学装置(NACO)によりこの非対称性の特性が注目されている。このような非対称の質量損失を引き起こす可能性がある2つのメカニズムとして、大規模な対流セルによるというものと自転によって生じる可能性がある極質量損失(Polar mass loss)によるというものがある[12]。ヨーロッパ南天天文台のAMBERを用いてさらに詳しく調べたところ、広がった恒星大気中のガスが上下に激しく動き、ベテルギウス自身と同程度の大きさの「泡」が生成されていることが観測された。そのような恒星の大変動は、Kervellaによって観測された大規模なプルーム放出を支持するものとして結論付けられた[130]。
非対称の対流セル
光球に加えてベテルギウスの大気にある、MOL球(MOLsphere)もしくは分子環境(Molecular environment)、気体外層(Gaseous envelope)、彩層、ダスト環境(Dust environment)、および一酸化炭素で構成される2つの外殻(「S1」と「S2」と呼ばれる)という6つの要素が存在していることが特定されている。これらの要素の一部は非対称であることが知られており、他の要素は互いに重なり合っている[80]。
光球からベテルギウスの半径の約0.45倍(~2 - 3 au)離れたところにはMOL球もしくは分子環境と呼ばれる分子層がある。調査によると、この層は水蒸気と一酸化炭素で構成されており、有効温度は約1,500 ± 500 Kとされている[80][131]。水蒸気の存在は、1960年代に行われた2つのストラトスコープ計画によるスペクトル分析で初めて検出されていたが、数十年に渡って無視されていた。MOL球には、塵粒子の形成を説明できる分子である一酸化ケイ素(SiO)や酸化アルミニウム(Al2O3)も含まれている[80]。
より温度が低い別の領域にある非対称の気体外層は、光球から数倍(~10 - 40 au)離れている。炭素に対して酸素、特に窒素が豊富に含まれている。これらの組成異常は、ベテルギウス内部からのCNOサイクルによって処理された物質による汚染が原因である可能性がある[80][132]。
1998年に撮影された電波望遠鏡の画像で、ベテルギウスは非常に複雑な大気を有していることが確認された[133]。表面温度は3,450 ± 850 Kで、表面の温度に近いが、同じ領域にある周囲のガスと比べると遥かに低温である[133][134]。VLAの画像では、この低温のガスが外側に広がるにつれてさらに徐々に冷えることが示されている。この特性がベテルギウスの大気の中で最も豊富な構成要素であることが判明し、これは予想外なことではあったが、この研究を行った研究チームのリーダーであるJeremy Limは「これにより、赤色超巨星の大気に関する基本的な理解が変わるだろう」と説明している[133]。また、「表面近くの高温に加熱されたガスにより恒星の大気が均一に膨張する代わりに、いくつかの巨大な対流セルが恒星の表面から大気中にガスを推進させているようだ」と述べている[133]。このガスの成分として炭素と窒素を含む可能性があり、地球から見て恒星の南西方向に光球の半径の6倍以上に広がっている、2009年にKervellaらによって発見された明るいプルームが存在しているところと同じ領域にある[80]。
ベテルギウスの彩層は、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されたFaint Object Camera(FOC)によって紫外線波長を用いて観測された。その画像からはまた、ベテルギウスを四等分したとき、南西側に明るい領域が存在することが明らかになった[135]。1996年に測定された彩層の平均半径は光球の2.2倍(~10 au)で、温度は5,500 K未満とされた[80][136]。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている高精度分光計STIS(宇宙望遠鏡撮像分光器)を用いて行われた2004年の観測では、ベテルギウスから少なくとも1秒角離れた領域でも暖かい彩層プラズマの存在が示された。 ベテルギウスまでの距離を642光年(197パーセク)と仮定すると、彩層の大きさは最大200 auになる[135]。この観測により、温かい彩層プラズマが気体外層内の冷たいガスと周囲のダストセル内のダストと空間的に重なり合っており、共存していることが決定的に示された[80][135]。
ベテルギウスを取り巻くダスト(塵)から成るセル(殻)構造は1977年に初めて存在が主張され、成熟した恒星の周りにあるダストのセル構造はしばしば光球による寄与を超える大量の放射線を放出することが指摘された。ヘテロダイン干渉計を使用したところ、ベテルギウスは想定される半径に応じて半径の12倍を超える領域、すなわち太陽系でいうエッジワース・カイパーベルトが存在する領域に相当するおよそ50 - 60 au離れた位置から、その過剰な放射線の大部分を放出していると結論付けられた[37][80]。しかしそれ以来、様々な波長で行われたダスト外層の研究では明らかに異なる結果がもたらされてきた。1990年代の研究では、ダストのセル構造の内側半径は0.5 - 1.0秒、すなわち100 - 200 auであると測定された[137][138]。これらの研究は、ベテルギウスを取り巻くダスト環境が静的ではないことを示している。1994年には、ベテルギウスは散発的に数十年に渡ってダストを生成し、その後不活性化したことが報告された。そして1997年には、1年間でのダストセルの形態の著しい変化が注目され、セルが光球のホットスポットによって強く影響を受けるベテルギウスの放射場によって非対称に照らされていることが示唆された[137]。1984年に巨大な非対称ダストセルがベテルギウスから1パーセク(3.26光年)離れた位置ナイルと報告されたが、最近の研究ではその存在を裏付けることはできなかった。しかし、同年に発表された別の論文では、ベテルギウスの片側方向へ約4光年離れた位置に3つのダストセルが発見されたと述べられており、これはベテルギウスが移動すると外層がはがれていくことを示唆している[139][140]。
一酸化炭素で構成されている2つの外殻の正確な大きさはわかっていないが、予備的な推定では片方はベテルギウスから1.5 - 4.0秒角まで、もう片方は7.0秒角まで伸びていると考えられている[141]。ベテルギウスの半径に置き換えると、ベテルギウスに近い方の外殻は半径の50 - 150倍(~300 - 800 au)、遠い方は250倍(~1,400 au)となる。太陽系のヘリオポーズが太陽から約100 au離れていると推定されているため、遠い方の外殻は太陽圏の14倍先まで伸びていることになる。
超音速のバウショック
ベテルギウスは秒速30 kmもの超音速で星間空間を移動しているため、周囲にバウショックが発生している[142][143]。バウショックはベテルギウスそのものではなく、秒速17 kmの速度で星間空間に大量のガスを放出させる強力な恒星風によって生じており、周辺の物質が過熱されることで赤外線で観測できるようになる[144]。ベテルギウスが非常に明るいため、1997年で初めてベテルギウスのバウショックが撮影された。距離を642光年と仮定すると、この彗星状の構造の幅は少なくとも4光年はあると推定されている[145]。
2012年に行われた流体力学的シミュレーションでは、ベテルギウスのバウショックの年齢が30,000年未満と非常に若く、ベテルギウスが異なる特性を持つ星間空間に移動したのがごく最近である可能性、もしくはベテルギウスが生成する恒星風を変化させるような重大な変化を受けた可能性の2つが示唆されている[146]。2012年に発表された論文で、このバウショックはベテルギウスが青色巨星へ赤色巨星に進化したときに発生したとする仮説が提案された。ベテルギウスのような恒星の進化の後期段階にある恒星は「ヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)上で青い恒星が位置する部分から赤い恒星が位置する部分へ、もしくはその逆方向に移動する際に恒星は急速に遷移し、恒星風やバウショックが急速に変化する」ことが証拠として挙げられている[142][147]。将来の研究でこの仮説が裏付けられれば、ベテルギウスはその進路に沿って最大で3太陽質量程度の物質を200,000 au近くに渡って散乱させ続けたことになる。
超新星爆発の予兆観測
ベテルギウスが主系列星の段階に入ったのは約1000万年前と推定されているが、質量の大きな恒星ほど核融合反応が激しく進行するため短命な一生となる。ベテルギウスの質量は太陽の約20倍もあり、かつ脈動変光するほど赤色超巨星として不安定であることから、地球周辺でII型超新星爆発を起こすであろう赤色超巨星の一つに挙げられている。
2009年の観測では、15年前の測定時と比べて15%も小さくなっており、しかも加速的に収縮しているらしいことがわかった[52]。ただし、これは星から直径の二、三倍離れた距離にある分子などの層を中赤外線で観測した結果であり、近赤外線による星本体の観測では変化は見られなかった[148]。2010年1月のNASAの観測では、ベテルギウスが変形している事が示され。これは、ガスが恒星表面から流出し表面温度が不均一になるなど、星自体が不安定な状態にあることを意味し[149]、さらに近年の観測や研究により、その形状は球形ではなく、大きな瘤状のものをもった形状であるとされている。
超新星爆発の地球への影響の予測
ベテルギウスが超新星爆発をする際には地球にも何らかの影響を及ぼすであろうと言われていた。これは、ガンマ線により、オゾン層が傷つき穴が空くか消滅し、地球および生命体へ有害な宇宙線が多量に降り注ぐとされているからである[注 8]。
しかし近年の研究により、超新星爆発の際のガンマ線放出については、恒星の自転軸から2°の範囲で指向性があることがわかっている。実際、NASAのハッブル宇宙望遠鏡でベテルギウスの自転が観測され、その結果ベテルギウスの自転軸は地球から20°ずれており、ガンマ線バーストが直撃する心配は無いとされた。ただし、超新星爆発時のかなり大きな質量変動とそれに伴う自転軸の変化が予想できないこと、ガンマ線放出指向性の理論的・実験的な根拠がはっきりしないことから、直撃の可能性について確実なことは知られていない。
超新星爆発した際の明るさについては、SN 1054と同規模の爆発と仮定すると、地球からベテルギウスまでの距離は、かに星雲までの距離のほぼ1⁄10であるため明るさは100倍程度と概算できる。SN 1054は-6等級以上の明るさだったと推定されるので、100倍だと-11等級を超える明るさとなる。これは半月よりも明るく、数日間は昼でも小さい点として輝いて見える。ある予測では、4か月ほど明るさを維持したまま青白色から赤色へ色が変化し、その後急速に減光して4年後には肉眼でも見えなくなるであろうという。
爆発後はブラックホールにはならず、中性子星となると考えられている[9]。
名称
固有名
- ベテルギウス
-
- 綴り
- 原綴りの Betelgeuse は英語の文献によく見られる綴りで、[ビートルジュース][150]のほか、様々に発音される。これはフランス語綴りの Bételgeuse から来ている[151]。Betelgeux とも綴る[151][152]。
- ドイツ語では Beteigeuze と綴るのが一般的で、[ベタイゴイュツェ(ー)] というように発音される[153]。それ以前のラテン語の文献では Betelgeuze と綴られた。他にもさまざまな異綴りがある。
- 仮名表記
- 現在では、ほぼ「ベテルギウス」で定着している。野尻抱影は著書や時期によって「ベテルゲウズ」[152][154]、「ベテルヂュース」[155][156][157]、「ベテルギュース」などと表記している。天文書以外では、しばしば「ペテルギウス」と誤記されることもある。他にも「ベデルギウス」、「ベテルギウズ」といった表記も見られる。
- 語源
- ベテルギウスの語源は、日本では「巨人の腋(わき)の下」の意味のアラビア語 Ibṭ al Jauzah [イブト・アル=ジャウザー] から来ているとされている[1][154]ことが多いが、この説は日本国外では有力ではない。それは、アラビアにおいてこの星に「巨人の腋の下」という意味の名前がつけられていない - 実証がない - からである。そもそも、アル=ジャウザーに「巨人」という意味はない。アル=ジャウザーは、アラビアの古い伝承に登場する女人名で固有名詞であり、どのような意味合い持っていたのか失伝していてわからない[158][159][160]。アラビア語の語根 j-w-z に「中央」という意味がある[2]ことから、アレンは「中央のもの」と解釈し[21]またこれとは別に、G・A・デーヴィス Jr は「白い帯をした羊」と解釈している[1]。
- 実証的な見地からは、「ジャウザーの手」を意味するこの星のアラビア名の一つ、Yad al-Jawzā' [ヤド・アル=ジャウザー] に由来するとする説が有力視されている。この説は、ドイツでは20世紀の中頃には既に知られていた[161]が、1980年代になると英米でも知られるところとなり[2]、日本でも2000年代になってようやく知られるところとなった[162][160][163]。アラビア文字の"ﻴ" (y) と"ﺒ" (b) はドットが1つか2つかの違いだけなので、写本の段階でか、ラテン語に翻訳する段階で誤写されたのではないかと考えられている[2][160]。
- 他にも、アラビア語の Bayt al-Jawzā' ([バイト・アル=ジャウザー]、直訳すれば「双子の家」だが、ここでは黄道十二宮の1つ「双児宮」のこと)とするなどの説[164]もある。
2016年6月30日、国際天文学連合の恒星の固有名に関するワーキンググループは、Betelgeuse をオリオン座α星の固有名として正式に承認した[3]。
- Menkab
- ベテルギウスの別名としては、この星のもう1つのアラビア名 Mankib al-Jawzā' ([マンキブ・アル=ジャウザー]、「ジャウザーの肩」の意)から来た Menkab [メンカブ] がある[165]。この星の位置と混同されて、ベテルギウスの意味とされることもある[166]。
中国名
中国では参宿第四星(參宿四)。
和名
ベテルギウスの和名は「平家星」(へいけぼし)とされている[167][168][169][170][171][172]。
この和名は源平合戦にちなむ紅白に由来するものだが、当初は現在と逆の解釈があった。
岐阜県において、平家星・源氏星という方言が見つかっている[171][173][174]。これは1950年に野尻抱影に報告された方言であり[注 9]、ベテルギウスの赤色とリゲルの白色を平家と源氏の旗色になぞらえた表現に由来したと解釈されている。野尻は農民の星の色を見分けた目の良さに感心し、それ以後は天文博物館五島プラネタリウムで解説する際には、平家星・源氏星という名称を使用するようになった[173][174]。
天文誌、図鑑、野尻抱影や藤井旭の著書をはじめ、多くの本で、ベテルギウスの和名を「平家星」と特定した上で、岐阜の方言であるとしている[171][173][174][176][177](ただし、岐阜県の揖斐郡横蔵村(現揖斐川町)においてベテルギウスを源氏星とする村の古老が一名いたことが野尻抱影によって紹介されており[173][174]、民俗学の見地から異論を唱える研究者もいる[注 9])。
増田正之は1985年に、富山県高岡市の市立伏木小学校において、ベテルギウスを平家星とした方言を見つけている[178]。
また、滋賀の虎姫(現・長浜市)でベテルギウスを金脇(きんわき)とする方言が発見されている。これは、オリオン座の三つ星の脇にある関係とベテルギウスの金色とリゲルの白色とを見分けた表現から来ている。このように星を色で見分けた表現は、世界的に類を見ないと言われている[173]。
その他、ベテルギウスが含まれたアステリズムの方言はベテルギウス関係の方言を参照。
- 北尾浩一の見解
- 北尾浩一は、著書の中で揖斐地方で発見された源氏星(げんじぼし)をベテルギウスとして分類している[175][179][注 9]。
- 多くの書籍で、平家星がベテルギウスを示す岐阜の方言とされている事について、野尻抱影の著書における村の古老の証言と逆であると指摘している。北尾は再調査を行い、発見地とされる揖斐地方では一般的に認識されている源平の旗印の色とは逆であったことを確認している[180]。この見解が最初に発表されたのは2005年であり、野尻は既に亡くなっていた。野尻は平家星をベテルギウスと特定したが、香田より第一報を受けた後、1000回を超えるやり取りの後、初めて信用したと証言されている[180]。
脚注
注釈
- ^ 光年はパーセク×3.2615638より計算。なお、距離を年周視差より求めた場合は、約500光年(約150パーセク)となる。
- ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
- ^ 『2008年 天文観測年表』の175頁に掲載されている半規則型及び不規則型変光星の一覧表ではベテルギウスの変光範囲は0.0等 - 1.3等となっており[18]、同書182頁に掲載されている5.05等より明るい恒星の一覧表[19]及び189頁に掲載されている3.0等より明るい恒星の一覧表[20]ではリゲルの明るさは0.12等となっており、極大期に限りベテルギウスはバイエル符号の順番通りオリオン座で最も明るく輝く。
- ^ W Ori:212日周期で5.5等 - 6.9等の間を変光[95]、スペクトル型はC5,4(ハーバード方式ではN5)[18]。
- ^ RX Lep:79.54日周期で5.12等 - 6.65等の間を変光[96]、スペクトル型はM6III[96]。
- ^ V523 Mon:34.14日周期で6.95等 - 7.45等の間を変光[97]、スペクトル型はM5III[97]。
- ^ ただし、赤色超巨星のベテルギウスと異なりオリオン座W星・うさぎ座RX星・いっかくじゅう座V523星はいずれも赤色巨星であり、3個とも半規則型変光星内での細分類はSRB型である[95][96][97]。
- ^ 過去の地球における生物大量絶滅の説の一つに、ガンマ線バーストの直撃が原因ではないかというものがある。
- ^ a b c 北尾は発見者を香田としている[175]。香田まゆみ(または寿男)は昭和25年に源氏星をベテルギウスと特定した古老の存在を野尻に報告している[173][174]。
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関連項目
外部リンク
- ベテルギウスの行く手をはばむ?謎の壁
- Alpha Orionis (Betelgeuse) - アメリカ変光星観測者協会 (AAVSO)
- G. Perrin, S.T. Ridgway, V. Coudé du Foresto, B. Mennesson, W.A. Traub, M.G. Lacasse, "Interferometric observations of the supergiant stars α Orionis and α Herculis with FLUOR at IOTA", Astronomy & Astrophysics, 418 (2004) 675-685.