「メタアナリシス」の版間の差分
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メタアナリシスという言葉は、情報の収集から吟味解析までの'''[[システマティック・レビュー]]'''と同様に用いられることがある{{sfn|津谷喜一郎|2003}}。厳密に区別する場合、メタアナリシスはデータ解析の部分を指す{{sfn|津谷喜一郎|2003}}。 |
メタアナリシスという言葉は、情報の収集から吟味解析までの'''[[システマティック・レビュー]]'''と同様に用いられることがある{{sfn|津谷喜一郎|2003}}。厳密に区別する場合、メタアナリシスはデータ解析の部分を指す{{sfn|津谷喜一郎|2003}}。 |
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==歴史== |
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20世紀初頭の1904年の報告書にて、イギリスの統計学者の[[カール・ピアソン]]が、臨床試験の結果をメタアナリシスによって最初に分析したとされる<ref name="pmid18065712">{{cite journal |authors=O'Rourke K |title=An historical perspective on meta-analysis: dealing quantitatively with varying study results |journal=J R Soc Med |volume=100 |issue=12 |pages=579–82 |date=December 2007 |pmid=18065712 |pmc=2121629 |doi=10.1177/0141076807100012020 |url=https://doi.org/10.1177%2F0141076807100012020 }}</ref>。その後1920年代には、イギリスの統計学者の[[ロナルド・フィッシャー]]が農業の分野で複数の研究の分析の方法を挙げて、1935年には著書で発表した<ref name="pmid18065712"/>。 |
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==手順== |
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メタアナリシスは、研究の抽出と[[プール解析]]の手順を踏む。この際に、主観的あるいは恣意的なバイアスを避けるのは、[[ランダム化比較試験]](RCT)からの連続である{{sfn|津谷喜一郎、正木朋也|2006|pp=9-12}}。 |
メタアナリシスは、研究の抽出と[[プール解析]]の手順を踏む。この際に、主観的あるいは恣意的なバイアスを避けるのは、[[ランダム化比較試験]](RCT)からの連続である{{sfn|津谷喜一郎、正木朋也|2006|pp=9-12}}。 |
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*研究の抽出:見つかった研究全てを対象とする。恣意的に研究を抽出することを避ける{{sfn|アービング・カーシュ|2010|pp=60-61}}。 |
*研究の抽出:見つかった研究全てを対象とする。恣意的に研究を抽出することを避ける{{sfn|アービング・カーシュ|2010|pp=60-61}}。 |
2019年5月24日 (金) 14:18時点における版
メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。メタ分析、メタ解析とも言う。ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは、根拠に基づく医療 (EBM) において、最も質の高い根拠とされる[2]。
メタアナリシスという言葉は、情報の収集から吟味解析までのシステマティック・レビューと同様に用いられることがある[3]。厳密に区別する場合、メタアナリシスはデータ解析の部分を指す[3]。
歴史
20世紀初頭の1904年の報告書にて、イギリスの統計学者のカール・ピアソンが、臨床試験の結果をメタアナリシスによって最初に分析したとされる[4]。その後1920年代には、イギリスの統計学者のロナルド・フィッシャーが農業の分野で複数の研究の分析の方法を挙げて、1935年には著書で発表した[4]。
1971年にはノーベル化学賞とノーベル平和賞を受賞したライナス・ポーリングが、文献を探索し4件のランダム化比較試験を結合して、ビタミンCの摂取によって、風邪の予防や治療に効果があることが4件のランダム化比較試験を統合した結果によって裏付けられているとした[5]。医学における初期のメタアナリシスのひとつに数えられるものである[6]。なおこの予防効果については賛否両論のある形で研究が続いてきた[7]。
1976年には統計学者のジーン・V・グラスがメタアナリシスという用語を、複数の研究を統合して分析するという意味で説明し、その数年後には医学分野での採用が盛んになった[4]。そして、1990年代初頭までには、文献を偏りなく探索するシステマティックレビューという言葉との混用が見られるようになった[4]。
手順
メタアナリシスは、研究の抽出とプール解析の手順を踏む。この際に、主観的あるいは恣意的なバイアスを避けるのは、ランダム化比較試験(RCT)からの連続である[8]。
- 研究の抽出:見つかった研究全てを対象とする。恣意的に研究を抽出することを避ける[9]。
- プール(pool):データを結合し、治療群と対照群それぞれのエンドポイントの平均値を算出する。
- 効果量(英語: effect size)の算出:治療群と対照群の平均値の差異を標準偏差で割る。効果量の値が、治療がプラスになるのかマイナスになるのかの客観的な尺度として算出される。
ランダム化比較試験において、治療群と対照群の改善度の差異が小さい場合、統計による検出力が低く、統計的有意性のある差異が発見されないことがある。しかし、メタアナリシスによって、母集団の数を大きくすることで、この統計的有意性のある差異が発見される可能性が上がる。
バイアスの問題
製薬会社が自社の医薬品の有効性を良く見せるために、良い結果の研究のみを選択してプール解析を行う場合があるが、厳密にはメタアナリシスではない[9]。
出版バイアス
否定的な結果が論文となって公表されにくいという出版バイアスにより[8]、結合する元のデータに肯定的な結果が多くなってしまう。抗うつ薬のパキシルの否定的な結果のデータの隠ぺいから、薬剤の有効性と危険性が再評価された結果、評価が下がったことから出版バイアスの影響が懸念された[10]。パキシルの不祥事からの議論は、世界医師会や医学雑誌編集者国際委員会による研究の事前登録に関する声明や、2005年の世界保健機関(WHO)や2007年のアメリカ医薬品局(FDA)による研究登録制度の構築につながった[11]。 出版バイアスを軽減する方法の一つに、情報公開法に基づいて、各国の規制機関から薬の認可のために提出された全データを入手し分析する手法がある[12]。
出典
- ^ “SUNY Downstate EBM Tutorial”. library.downstate.edu. 2004年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月3日閲覧。
- ^ 津谷喜一郎、正木朋也 2006, p. 12.
- ^ a b 津谷喜一郎 2003.
- ^ a b c d O'Rourke K (December 2007). “An historical perspective on meta-analysis: dealing quantitatively with varying study results”. J R Soc Med 100 (12): 579–82. doi:10.1177/0141076807100012020. PMC 2121629. PMID 18065712 .
- ^ Pauling L (November 1971). “The significance of the evidence about ascorbic acid and the common cold”. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 68 (11): 2678–81. doi:10.1073/pnas.68.11.2678. PMC 389499. PMID 4941984 .
- ^ Hemilä H (March 2017). “Vitamin C and Infections”. Nutrients 9 (4). doi:10.3390/nu9040339. PMC 5409678. PMID 28353648 .
- ^ Office of Dietary Supplements - Vitamin C (Report). アメリカ国立衛生研究所. 18 September 2018.
- ^ a b 津谷喜一郎、正木朋也 2006, pp. 9–12.
- ^ a b アービング・カーシュ 2010, pp. 60–61.
- ^ Joober, Ridha; Schmitz, Norbert; Annable, Lawrence; Boksa, Patricia (May 2012). “Publication bias: What are the challenges and can they be overcome?”. Journal of Psychiatry & Neuroscience 37 (3): 149–152. doi:10.1503/jpn.120065. PMC 3341407. PMID 22515987 .
- ^ Bian, Zhao-Xiang; Wu, Tai-Xiang (2010). “Legislation for trial registration and data transparency”. Trials 11 (1): 64. doi:10.1186/1745-6215-11-64. PMC 2882906. PMID 20504337 .
- ^ Huedo-Medina, T. B.; Kirsch, I.; Middlemass, J.; Klonizakis, M.; Siriwardena, A. N. (2012). “Effectiveness of non-benzodiazepine hypnotics in treatment of adult insomnia: meta-analysis of data submitted to the Food and Drug Administration”. BMJ 345 (dec17 6): e8343. doi:10.1136/bmj.e8343. PMC 3544552. PMID 23248080 .
参考文献
- アービング・カーシュ『抗うつ薬は本当に効くのか』石黒千秋訳、2010年。ISBN 978-4767809540。
- 津谷喜一郎「EBMにおけるエビデンスの吟味」『Therapeutic Research』第24巻第8号、2003年、1415-22頁、NAID 50000285052。
- 津谷喜一郎、正木朋也「エビデンスに基づく医療(EBM)の系譜と方向性 保健医療評価に果たすコクラン共同計画の役割と未来」(pdf)『日本評価研究』第6巻第1号、2006年3月、3-20頁、NAID 40007259318。