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{{ |
{{redirect5|行為の全般や日本以外の犯罪類型|強姦|強姦罪|強制性交等罪}}{{性的}}{{Law}} |
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{{日本の犯罪 |
{{日本の犯罪 |
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| 罪名 |
| 罪名 = 不同意性交等罪 |
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| 法律・条文 = 刑法177条 |
| 法律・条文 = [[b:刑法第177条|刑法177条]] |
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| 保護法益 |
| 保護法益 = 性的自由 |
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| 主体 |
| 主体 = 人間 |
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| 客体 |
| 客体 = 人間 |
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| 実行行為 |
| 実行行為 = 不同意性交等 |
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| 主観 |
| 主観 = [[故意]]犯 |
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| 結果 |
| 結果 = [[結果]]犯、侵害犯 |
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| 実行の着手 = |
| 実行の着手 = [[性的同意|性的不同意]]の状態で、人間に対して性交等に及んだ時点 |
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| 既遂時期 |
| 既遂時期 = [[性交|性器]]、[[肛門性交|肛門]]又は[[口腔性交|口腔]]への一部挿入時点 |
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| 法定刑 |
| 法定刑 = 5年以上の[[懲役|有期懲役]]。有期懲役刑の上限は20年、加重により30年<ref>刑法12条、14条</ref>。 |
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| 未遂・予備 = 未遂罪 |
| 未遂・予備 = [[未遂]]罪([[b:刑法第180条|180条]]) |
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}} |
}} |
||
'''不同意性交等罪'''(ふどういせいこうとうざい)は、16歳以上の者に対し、後述の8つの要件によって同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性交等を行うこと、または16歳未満の者に対し性交等を行うことを内容とする犯罪類型。 |
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{{日本の刑法}} |
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{{ウィキプロジェクトリンク|刑法 (犯罪)}} |
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'''強制性交等罪'''(きょうせいせいこうとうざい)は、[[暴行]]又は[[脅迫]]を用いて13歳以上の人に[[性交]]、[[肛門性交]]又は[[口腔性交]](以下「'''性交等'''」)をし、または、13歳未満の人間に性交等をすることを内容とする犯罪である。[[b:刑法第177条|刑法177条]]に定められている。 |
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かつての[[#2017年の改正(強制性交等罪に改称)|強制性交等罪]]と[[b:刑法第178条|準強制性交等罪]]を一本化した罪名であり、[[2023年]][[7月13日]]に改正[[刑法 (日本)|刑法]]が施行された<ref name="moj-keiji202307">{{Cite web |url=https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html |title=性犯罪関係の法改正等 Q&A |publisher =法務省(2023年7月) |accessdate=2023-07-13}}</ref><ref name="maeda20230713">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/869a71e3c6698532f24eceb699086c191a414bdd |title=きょうから変わる性犯罪規定 あとで「同意はなかった」と言われたらどうなる? |publisher =Yahoo!([[前田恒彦]]) |date=2023-07-13 |accessdate=2023-07-13}}</ref>。以前の強制・準強制性交等罪では、「[[暴力|暴行]]・[[脅迫]]」を用いることや「[[責任能力#刑法上の責任能力|心神喪失]]・[[抗拒不能]](抵抗ができない状態)」に乗じる/させることが[[構成要件|成立要件]]になっていたが、「被害者の強い抵抗があったかどうかが重視され、司法判断にばらつきがある」「『暴行や脅迫』がなくても[[#「凍りつき」についての指摘|恐怖で体が固まったり]]、相手との関係性で抵抗できないなどの実態がある」として、見直しが求められていた<ref name="nhk-k100141" /><ref name="nhk20230616" /><ref name="asahi20230621" />。不同意性交等罪では、条文に「有効な同意」ができない8つの典型的な場面を挙げ<ref name="ourage320109" />、また婚姻の有無を問わないことを明示し、性交同意年齢を13歳から16歳へと引き上げた。 |
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[[性犯罪]]の中で最も重い犯罪とされる。かつては被害者が女性の場合のみに限定されていた'''強姦罪'''(ごうかんざい)が存在した。改正刑法案が[[2017年]](平成29年)6月16日に可決成立<ref>{{cite web|url=https://mainichi.jp/articles/20170617/k00/00m/040/133000c|title=改正刑法:性犯罪を厳罰化、成立 「非親告罪」化などが柱|accessdate=2017-06-19|date=2017-06-16|work=毎日新聞|publisher=[[毎日新聞社]]}}</ref>、同年6月23日に公布、[[7月13日]]施行され、これにより強姦罪は廃止され継承類型としての本罪が改正施行された。 |
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== 概要 == |
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本罪では、男性が被害者の場合を含めた性別不問の規定となり、また非[[親告罪]]となっている。 |
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===不同意性交等罪=== |
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16歳以上の者に対し暴行・脅迫をはじめ有効な同意のできない8つの要件のいずれかの状況のもと性交等を行うこと、または16歳未満の者に対し同意の有無を問わず性交等を行うことを内容とする犯罪類型である。主体・客体ともに性別不問である。 |
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法定刑は5年以上(20年以下、加重により30年以下)の懲役。 |
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== 強制性交等罪 == |
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暴行又は脅迫を用いて13歳以上の人に性交等をし、または、13歳未満の人間に性交等をすることを内容とする犯罪である。 |
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=== |
====性交等の定義==== |
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「性交等」には、性交、肛門性交、口腔性交のほか体の一部や物を[[膣]]または[[肛門]]に挿入する行為が該当する<ref name="huff20230616" /><ref name="tokyo257161" /><ref name="g21109058" />。性交、肛門性交、口腔性交の定義については[[#強制性交等罪|強制性交等罪]]を参照。 |
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相手の意思に反して性交等を行う者であり性別を問わない。第三者に性交等を行わせた場合も同様である。 |
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====8つの要件==== |
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平成29年刑法改正<ref>以下、2017年(平成29年)7月13日施行の改正刑法を言う。</ref>以前、強姦罪は[[身分犯|真正身分犯]](構成的身分犯)である(最判昭和40年3月30日刑集19巻2号125頁)ので、原則として男性であり、女性は強姦の実行行為である姦淫を行うことはできない(女性は単独で直接[[正犯]]となりえない)と解されていた。一方、刑法65条1項により、男性でなくとも(身分がなくとも)[[共犯]]にはなり得、女性が男性と共謀して被害者を押さえつけたり([[共同正犯]])、女性が別の女性を強姦するよう男性に依頼した場合([[教唆犯]])などが共犯の具体的な例とされていた。 |
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8つの要件には以下の状況が該当する。<br> |
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'''要件として示された具体的な8つの行為や状況<ref name="safeprom2023" />。''' |
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#「暴行や脅迫をする(暴行や脅迫を受ける)」 |
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#「精神的、身体的な障害を生じさせる(心身の障害がある)」 |
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#「[[アルコール]]や[[薬物]]を摂取させる(アルコールや薬物の影響がある)」。<br>相手がアルコールの影響がある場合は要件に該当するが、その上で「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難なほど酔っている」ことが必要である<ref name="moj20230117">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001392956.pdf |title=法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会 第13回会議 議事録 |format=PDF |publisher =法務省 |date=2023-01-17 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref name="CLP20230619">{{Cite web |url=https://www.youtube.com/watch?v=iBOdMCMFQ2U |title=No Means Noの先へ ー"No"も沈黙も同意ではないー |publisher =Choose Life Project |date=2023-06-19 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。つまり、同意しない意志を形成・表明・全うすることが出来る状態にある人と、同意を取った上で行う性交は罪にならない<ref name="PolitasTV20230621" />。場合によっては、[[酔っ払い|酩酊]]の程度が考慮されるなど、個別の事案ごとに証拠に基づいて判断されることになる<ref name="moj20230117" />。 |
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#「眠っているなど、意識がはっきりしていない状態にさせる(意識が不明瞭な状態にある。同意を示すためには、性行為が持つ意味とリスクを十分に理解していることが前提となるため、寝ている人は同意を示すことができない<ref name="pilcon-consent">{{Cite web |url=https://pilcon.org/help-line/consent |title=性的同意 |publisher =NPO法人ピルコン |accessdate=2023-07-02}}</ref>)」 |
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#「拒絶するいとまを与えない(被害者が急に襲われる場合などを想定)」 |
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#「恐怖・驚がくさせる(恐怖・驚がくしている。ショックで体が硬直し、いわゆる[[:en:Freezing_behavior|フリーズ]]([[:en:Rape_paralysis|凍りつき]])状態になった場合などを想定)」 |
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#「[[虐待]]による心理的反応を生じさせる(被害者が長年にわたって[[性的虐待]]を受けることで、拒絶する意思すら生じない場合などを想定)」 |
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#「経済的・社会的関係の地位に基づく影響力で受ける不利益を憂慮させる(不利益を憂慮している。教師から生徒、上司から部下、スポーツの指導者から選手に対する行為などで、断ったら不利益を受ける可能性がある場合)<ref>{{Cite web |url=https://pillnyan.jp/human_rights/1274/ |title=誘う人も誘われる人も知っておきたい「性的同意」って何?! |publisher =ピルにゃん |date=2020-10-21 |accessdate=2023-07-02}}</ref>」 |
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#*以上「1 - 8の行為や状況」または、「[[性的同意#欺瞞とごまかし|わいせつな行為ではないと勘違いさせたり、人違いをさせる/していること]]」により「[[性的同意#ノー・ミーンズ・ノー|性的行為に同意しない意思]]を形成(同意しないことを発想もできない)、表明(同意しないことを言えない)、全うすることが困難(同意しないと言っているのに無視して押し切られる)な状態にさせたり、そうした状態に乗じたりして、[[性行為|性的行為]]をした」場合に処罰される<ref name="moj-keiji202307" /><ref name="maini20230616">{{Cite web |url=https://mainichi.jp/articles/20230615/k00/00m/040/323000c |title=改正刑法成立、強制性交等罪が「不同意性交等罪」に 具体例8項目 |publisher =毎日新聞 |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="nikkei20230224">{{Cite web |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2414H0U3A220C2000000/ |title=強制性交罪を「不同意性交罪」に名称変更 刑法改正案 |publisher =日本経済新聞 |date=2023-02-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。今まで通り、立証責任は検察官にあるため、8類型にプラスして同意がなかった/全う出来なかったことを証明するビデオや元々の関係性、性交後の行動など事実を捜査して、総合的に評価が行われる<ref name="PolitasTV20230621" />。 |
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=== |
===監護者性交等罪=== |
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18歳未満の者に対して、その者を現に監護する者(監護者)であることによる影響力があることに乗じて性交等をした場合には、監護者性交等罪(第179条第2項)に当たる。性交等の定義と法定刑は不同意性交等罪と同一である。 |
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自己の意思に反して性交等の対象となる者であり性別を問わない。 |
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====監護者==== |
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なお、旧強姦罪の客体は女性に限定されており、[[男性]]に性交等を働いても、強姦罪は適用されず、[[強制わいせつ罪]]が適用されていた。これは行為の相手方が13歳未満の男性であっても同様であった。 |
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本条項の主体は、(18歳未満の者を)「現に監護する者」であり、真正身分犯である。「現に監護する者」の範囲に関しては、次の衆議院法務委員会での政府参考人の答弁(抄)によれば、以下の場合が想定されている。<blockquote>2017年(平成29年)6月7日衆議院法務委員会での林眞琴政府参考人の答弁<ref name=":0" /></blockquote><blockquote>…監護するというのは、民法八百二十条に親権の効力と定められているところと同様に監督し、保護することをいいまして、十八歳未満の者を現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者をいいます。</blockquote><blockquote>本罪の現に監護する者に当たるか否かは個別の事案における具体的な事実関係によって判断されることとなりますが、民法における監護の概念に照らしまして、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点でありますとか生活上の指導監督などの精神的な観点、このようなものから依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められるということが必要であると考えております。</blockquote><blockquote>(中略)例えばスポーツのコーチでありますとかあるいは教師など、こういった者についてはやはり通常は、生徒等との間に生活全般にわたる依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められないことから、現に監護する者に当たらない場合が多いと考えております。</blockquote> |
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=== |
====影響力==== |
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「影響力があることに乗じて」については、前記と同じの答弁(抄)によれば、以下の場合が想定されている。<blockquote>2017年(平成29年)6月7日衆議院法務委員会での林眞琴政府参考人の答弁<ref name=":0" /></blockquote><blockquote>乗じてとの用語でございますが、...現に監護する者であることによる影響力が一般的に存在し、当該行為時においても、その影響力を及ぼしている状態で性的行為を行うということを意味します。...性的行為を行う特定の場面におきまして、監護者からこの影響力を利用する具体的な行為がない場合でありましても、このような一般的かつ継続的な影響力を及ぼしている状態であれば、被監護者にとっては監護者の存在を離れて自由な意思決定ができない状態であると言えます。</blockquote><blockquote>その上で、被監護者である十八歳未満の者を現に監護し、保護している立場にある者がこのような影響力を及ぼしている状態で当該十八歳未満の者に対して性的行為をすることは、それ自体が被監護者にとって当該影響力により被監護者が監護者の存在を離れて自由な意思決定ができない状態に乗じていることにほかならないと言えます。 |
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==== 暴行・脅迫 ==== |
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よって、乗じてと言えるためには、性的行為に及ぶ特定の場面において影響力を利用するための具体的な行為は必要なく、影響力を及ぼしている状態で行ったということで足りると考えております。</blockquote> |
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強制性交等の手段としての[[暴行]]又は[[脅迫]]の存在が必要である。なお、暴行又は脅迫者と性交等の実施者が同じである必要はない。 |
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===結果的過重犯=== |
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[[判例]]によれば、旧強姦罪の暴行・脅迫については「相手方の'''反抗を著しく困難にする程度'''のものであれば足りる」として、強盗罪の場合のような、相手方の'''反抗を不能にする程度'''までの暴行・脅迫'''でなくともよい'''とする(最判昭24年5月10日[[刑集]]3巻6号711頁)。現在の判例・解釈の主流は、この判決を基本にしている。 |
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{{Main|不同意性交等致死傷罪}} |
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人の死傷を伴う場合は、結果的加重犯として刑がより重くなる。不同意性交等罪若しくは監護者性交等罪又はこれらの罪の未遂罪を犯しよって人を死傷させた時は、無期又は6年以上の懲役となる。 |
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== 過去の類型 == |
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; (相手方が13歳未満の者の場合) |
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ここでは、過去に規定されていた犯罪類型の法的観点からのそれぞれの罪の概要について述べる。改正の経緯については、後述の節を参照のこと。 |
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: 相手方が13歳未満の者の場合は、脅迫・暴行がなく、または双方の同意があったとしても強制性交等罪を構成する(刑法177条後段)。判断能力の未熟な青少年を法的に保護する趣旨である<ref>西田典之『刑法各論』第三版81頁</ref>。<!-- 説明を混乱させるのでここでは削る ただし、相手が13歳以上だと思い込み、または18歳以上だと虚偽の申告をされ、同意の上で性交した場合は、強制性交等罪の構成要件にあたる事実の認識がないため、故意が認められず本罪には該当しない[要出典] 。ただし監護者性交等罪が成立する場合もある。法定強姦の項目も参照。 --> |
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{|class="wikitable" style="font-size:small;" |
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|+ 強姦罪と強制性交等罪、不同意性交等罪の違い |
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! rowspan="2" | 罪 |
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! rowspan="2" | 適用期間 |
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! colspan="4" | [[構成要件]] |
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! rowspan="2" | [[公訴時効]] |
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! rowspan="2" | [[親告罪]] |
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! rowspan="2" | [[有期刑|有期]][[懲役]] |
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! rowspan="2" |廃止 |
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! rowspan="2" |新設 |
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<!--「構成要件」下段--> |
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!(a) <br>罪名:手段・状況 |
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!(b) <br>性行為 |
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!(c) <br>被害者 |
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!(d) <br>[[性交同意年齢]] |
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!style="white-space:nowrap"|強姦罪<br>(第177条)<br><br>準強姦罪<br>(第178条) |
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|1908年-<br>2017年 |
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|'''強姦罪''':「暴行・脅迫」を用いる<br><br>'''準強姦罪''':「[[責任能力#刑法上の責任能力|心神喪失]]・抗拒不能(抵抗ができない状態)」にする/乗じる<ref name="moj1316277" /><ref>{{Cite web |url=https://kotobank.jp/word/準強姦罪-529845 |title=準強姦罪 |publisher =コトバンク |accessdate=2023-06-30}}</ref> |
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|男性器の挿入が条件<ref name="fairs2020" /><br>姦淫(男性器を女性器に挿入する)<ref name="moj1316277" /> |
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|被害者は女性、加害者は男性のみ<ref name="moj1316277" /> |
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|style="white-space:nowrap"|13歳<br>13歳未満は、<br>'''(a)'''の要件なし、<br>相手が同意していても処罰の対象 |
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|10年 |
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|親告罪<br>(被害者が告訴しなければ、検察は事件を起訴できない)<ref name="moj1316277" /> |
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|2-15年(1908-2004年)<br><br>3-20年(2005-2017年) |
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|<!--((空欄))--> |
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|<!--((空欄))--> |
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!強制性交等罪(第177条)<br><br>準強制性交等罪(第178条第2項)<br> |
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|style="white-space:nowrap;"|2017年-<br>2023年 |
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|'''強制性交等罪''':「暴行・脅迫」を用いる<br><br>'''準強制性交等罪''':「[[責任能力#刑法上の責任能力|心神喪失]]・抗拒不能(抵抗ができない状態)」にする/乗じる<ref name="moj1316277" /><ref name="PolitasTV20230621" /> |
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|男性器の挿入が条件<ref name="fairs2020" /><br>性交、[[肛門性交]]または[[口腔性交]](男性器を女性器や肛門、口腔内に挿入する/させる)<ref name="moj1316277" /><ref name="sonoda20170627" /> |
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|性別を問わない(女性以外も被害者に、男性以外も加害者に)<ref name="moj1316277" /> |
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|13歳<br>(〃) |
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|10年 |
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|'''非親告罪'''<br>(事件の認定をもって、検察は事件を起訴できる)<ref name="moj1316277" /> |
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|5-20年 |
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|法定刑の引き上げに伴い「集団強姦罪」「集団強姦致死傷罪」を廃止<ref name="moj1316277" /> |
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|「'''監護者性交等罪'''」「'''監護者わいせつ罪'''」<br>18歳未満の子どもを監護(生活全般を支える)する親や児童養護施設職員など、その影響力に乗じて性交・わいせつ行為をした者を処罰できる<ref name="moj1316277" /> |
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|- |
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!不同意性交等罪(第177条) |
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|2023年- |
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|'''不同意性交等罪''':「8つの行為や状況」または「わいせつな行為ではないと勘違いさせたり、人違いさせる/していること」により「被害者が同意しない意思を表すことが難しい状態にする/乗じる<ref name="moj1316277" /> |
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|性交、肛門性交または口腔性交に加えて、体の一部(指など)や物を、膣や肛門に挿入する行為も「性交」扱いに<ref name="tokyo257161" /> |
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|性別を問わない<ref name="moj-keiji202307" /> |
|||
|'''16歳'''<br>13未満は、'''(a)'''の要件なし;<br>13-15歳は、5歳以上年上の加害者は'''(a)'''の要件なし、<br>相手が同意していても処罰の対象<ref name="moj-keiji202307" /> |
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|'''15年''' |
|||
|非親告罪 |
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|5-20年 |
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|〔強制性交等罪と準強制性交等を統合〕<ref name="moj-keiji202307" /> |
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|「'''性的面会要求罪'''」「'''[[性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律|性的姿態撮影罪]]'''」<ref name="moj-keiji202307" /> |
|||
|} |
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=== |
===2017年までの類型=== |
||
====強姦罪==== |
|||
平成29年刑法改正において、行為類型が「女子を姦淫した」から「(性別を問わず人に対して)性交、肛門性交又は口腔性交(「'''性交等'''」)をした」に改められた。 |
|||
暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫、または、13歳未満の女子を姦淫することを内容とする犯罪である。法定刑は3年以上20年以下(2004年改正以前は2年以上15年以下)の懲役。 |
|||
姦淫とは、男性生殖器を女性生殖器に挿入すること、つまり性交であり、現在の性交等よりも範囲が限られていた。 |
|||
旧強姦罪の姦淫の定義の下では、男性器の女性器に対する一部挿入で既遂となり、妊娠および射精の有無は問わない(大審院大正2年11月19日判決以後の確定した判例・実務)。<!--出典なしのため一旦削る(判例求む) この定義の下では、『{{独自研究範囲|女性による強姦、男性への強姦には、たとえ性器の著しい損傷があったとしても強姦罪は適用されない(先述)。同様に、男性による淫具を用いた性暴力も強姦罪では処罰されない。また、肛門性交は、被害者が女性であっても強姦罪の適用範囲外である。これらの場合は、[[暴行罪]]か強制わいせつ罪で処罰されることになる。|section=1|date=2015年8月6日 (木) 23:48 (UTC)}}』なる解釈があったが、--> |
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強姦罪は真正身分犯(構成的身分犯)である(最判昭和40年3月30日刑集19巻2号125頁)ので、原則として加害者は男性であり、女性は強姦罪の加害者になりえない(女性は単独で直接正犯となりえない)。一方、刑法65条1項により、女性が加害男性と共謀した場合には強姦罪の[[共犯]]となりうる(最高裁判所昭和40年3月30日判決<ref>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51749 裁判例結果詳細] {{PDFlink|[https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/749/051749_hanrei.pdf 判決文]}} </ref>)。 |
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なお、本罪での性交、肛門性交又は口腔性交のそれぞれについては文理上定義はなく、判例も2018年時点で不明であるが、次の衆議院法務委員会での政府参考人の答弁によれば、以下の場合が想定されている。(後述の[[法制審議会]]第175回会議(2015年(平成27年)10月9日開催)「性犯罪の罰則に関する検討会」における解釈でも同様である)<blockquote>平成29年6月7日衆議院法務委員会(第193回国会法務委員会第21号)での林眞琴政府参考人の答弁<ref>http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/193/0004/19306070004021c.html</ref></blockquote><blockquote>まず、性交とは、膣内に陰茎を入れる行為をいいます。肛門性交とは、肛門内に陰茎を入れる行為をいいます。また、口腔性交とは、口腔内に陰茎を入れる行為をいいます。</blockquote><blockquote>本条におきましては、誰の陰茎を誰の膣内、肛門内、口腔内に入れるかについては文言上限定しておりませんので、自己の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為を含むと解することができると考えて用いておるところでございます。</blockquote><blockquote> したがいまして、今回の法案における性交、肛門性交または口腔性交とは、相手方の膣内、肛門内もしくは口腔内に自己の陰茎を入れる行為のほかに、自己の膣内、肛門内もしくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為を含むものであると考えております。</blockquote>判例が不明のため[[構成要件]]該当性は未確定であるが、この答弁の定義によった場合には、加害・被害側を問わず、行為者が男女間、または男性同士で、陰茎を膣、肛門もしくは口腔に入れ、または陰茎を膣、肛門もしくは口腔に入れさせた場合が対象となる。 |
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よって、[[オーラルセックス]]行為の内、フェラチオ行為でも加害・被害側を問わず対象となるが、[[クンニリングス]]行為の構成要件該当性、行為者が女性同士の場合の構成要件該当性、フェラチオ行為についても、口腔内に陰茎を没入させず、舌で舐める等の行為に留まる場合の構成要件該当性については明言されていない。 |
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強姦罪の客体(被害者)は女性に限定されていた。この点に関して、刑法177条の規定が憲法14条1項の法の下の平等に反しないか争われた裁判では、最高裁判例は違憲ではないとしている(最高裁判所昭和28年6月24日判決<ref>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54422 裁判例結果詳細] {{PDFlink|[https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/422/054422_hanrei.pdf 判決文]}} </ref>)。 |
|||
また、後述の[[法制審議会]]第175回会議(2015年(平成27年)10月9日開催)「性犯罪の罰則に関する検討会」における解釈では、上述「入れ」る場合につき『相手方の膣内、肛門内若しくは口腔内に'''自己若しくは第三者の'''陰茎を入れ、』とし、「入れさせた」場合につき『陰茎を'''自己もしくは第三者の'''膣、肛門もしくは口腔に入れさせた』としている。 |
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強姦に着手し、これを遂げない間に相手を殺害した直後、引き続き姦淫を遂げたときは、相手が既に死亡していても、強姦については既遂罪が成立する(大阪高等裁判所昭和42年5月29日判決<ref>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=22485 裁判例結果詳細] {{PDFlink|[https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/485/022485_hanrei.pdf 判決文]}} </ref>)。 |
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陰茎を模した道具その他器具を入れた場合には本罪を構成しないと考えられる。 |
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強姦罪の暴行・脅迫については「相手方の反抗を著しく困難にする程度のものであれば足りる」として、強盗罪の場合のような、相手方の反抗を不能にする程度までの暴行・脅迫でなくともよいとする(最高裁判所昭和24年5月10日判決<ref>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55338 裁判例結果詳細] {{PDFlink|[https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/338/055338_hanrei.pdf 判決文]}} </ref>)。相手方が13歳未満の女子の場合は、脅迫・暴行がなく、または同意があったとしても強姦罪を構成する(刑法177条後段)。判断能力の未熟な青少年を法的に保護する趣旨である<ref>西田典之『刑法各論』第三版81頁</ref>。 |
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== 準強制性交等 == |
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暴行・脅迫によらない場合も、心神喪失・抗拒不能に乗じ、又は心神喪失・抗拒不能にさせて性交等をした場合は、準強制性交等が成立する(刑法178条2項)。なお、平成29年刑法改正にあわせ、以下の判例等において、「女性」に「人」、「姦淫」に「性交等」、「準強姦罪」に「準強制性交等罪」をそれぞれ読み替えるべく適宜【】内に付記している。 |
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====準強姦罪==== |
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心神喪失とは、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態をいい、抗拒不能とは、心理的・物理的に抵抗ができない状態をいう。睡眠・飲酒酩酊のほか、著しい[[精神障害]]や、[[知的障害]]にある女性【人】に対して姦淫【性交等】を行うことも準強かん罪【準強制性交等罪】に該当する(福岡高裁昭和41年8月31日高集19・5・575)。医師が、性的知識のない女性【人】に対し、薬を入れるのだと誤信させて姦淫【性交等】に及ぶのも準強制性交等罪となる([[大審院]]大正15年6月25日判決刑集5巻285頁)。 |
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暴行・脅迫によらない場合も、女性の心神喪失・抗拒不能に乗じ、又は女性を心神喪失・抗拒不能にさせて姦淫した場合は、準強姦罪が成立した(刑法178条2項)。法定刑は強姦罪と同様。 |
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心神喪失とは、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態をいい、抗拒不能とは、心理的・物理的に抵抗ができない状態をいう。睡眠・飲酒酩酊のほか、著しい精神障害や、知的障害にある女性に対して姦淫を行うことも準強姦罪に該当する(福岡高裁昭和41年8月31日判決<ref>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=23601 裁判例結果詳細] {{PDFlink|[https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/601/023601_hanrei.pdf 判決文]}} </ref>)。 |
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なお、犯人が暴行や脅迫を用いて被害者を気絶(心神喪失)させ、性交等に及んだ場合は、準強制性交等罪ではなく強制性交等罪となる。ただし、「準強制性交等罪」と「強制性交等罪」は共に同一の法定刑となっている。 |
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== |
====集団強姦罪==== |
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2人以上の者が共同して強姦(準強姦含む)した場合、 |
2人以上の者が共同して強姦(準強姦含む)した場合、集団強姦罪として法定刑が加重される。なお、集団強姦罪の場合は、実際に性行為に参加していなくても、その場にいれば成立する。法定刑は4年以上20年以下の懲役。2004年に新設、2017年廃止。 |
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====結果的加重犯(2017年までの類型)==== |
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この規定は、暴力的性犯罪に関する国民の規範意識に鑑み、集団による強姦・準強姦という悪質性<ref>制定の直接の契機となったのは、[[2003年]](平成15年)に発覚した[[スーパーフリー事件]]である。</ref>に対して従来の強姦罪等よりも厳しい刑罰を課す趣旨で設けられたものであるが、平成29年改正により強制性交等罪・準強制性交等罪の法定刑の下限が引き上げられ集団強姦罪の法定刑の下限を超えることとなったので、改正法に吸収される形となり廃止された。 |
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{{Main|不同意性交等致死傷罪}} |
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上記の罪又はその未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合には結果的加重犯として刑が加重される。強姦致死傷罪、準強姦致死傷罪は無期又は5年以上20年以下の懲役(平成16年改正以前は無期又は3年以上15年以下の懲役)、集団強姦致死傷罪は無期又は6年以上の懲役であった。 |
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===2017年から2023年までの類型=== |
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== 監護者性交等 == |
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====強制性交等罪==== |
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<!-- ↑この見出しはリダイレクトされているため安易に変更しないで下さい -->18歳未満の者に対して、その者を現に監護する者(監護者)であることによる影響力があることに乗じて性交等をした場合には、強制性交等罪(第179条第2項)が成立する。なお、同条第1項には、監護者が性交等に至らずともわいせつな行為に及んだ者は、強制わいせつの罪に問われる(監護者わいせつ罪)ことが規定されている<ref>以下、{{Cite web |url=http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10350891 |title=調査と情報第962号|work= |
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13歳以上の者に対し暴行又は脅迫を用いて人に性交等を強い、また暴行・脅迫の有無を問わず13歳未満の者と性交等をすることを内容とする犯罪である。法定刑は5年以上20年以下の懲役。旧強姦罪。 |
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性犯罪規定に係る刑法改正法案の概要|author=前澤貴子 |publisher=[[国立国会図書館]] |accessdate=2017-10-22 }}による。</ref>。監護者わいせつ罪および監護者性交等罪については、脅迫・暴行がなく、または同意があったとしても罪の成立を妨げないと解される。 |
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被害者、加害者ともに性別不問である。 |
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=== 立法趣旨 === |
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平成29年刑法改正において、不同意のわいせつ乃至性交等であっても、監護者と被監護者の間では、脅迫・暴行の事実が認められず、かつては、強姦罪等よりも法定刑の軽い[[児童福祉法]]違反等が適用された例が少なからず見られた。しかし、こうした事案の中には、監護者の庇護がなければ被監護者が生活上の不利益を大きく受けるなど、監護者の要求を拒絶しがたいという事情があるなど、脅迫・暴行と同一視すべきものも見られ、また、監護者が自らの欲望について被監護者をほしいままにするという社会倫理としてもとる面も見られることから、影響力に乗じて性交等を行った場合、強制性交等と同一視したものである。 |
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性交等とは「性交、肛門性交又は口腔性交」である。本罪での「性交、肛門性交又は口腔性交」のそれぞれについては文理上定義はなく、判例も2018年(平成30年)時点で不明であるが、次の衆議院法務委員会での政府参考人の答弁(抄)によれば、以下の場合が想定されている。 |
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=== 監護者 === |
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<blockquote>2017年(平成29年)6月7日衆議院法務委員会での林眞琴政府参考人の答弁<ref name=":0" /></blockquote><blockquote>まず、性交とは、膣内に陰茎を入れる行為をいいます。肛門性交とは、肛門内に陰茎を入れる行為をいいます。また、口腔性交とは、口腔内に陰茎を入れる行為をいいます。</blockquote><blockquote>本条におきましては、誰の陰茎を誰の膣内、肛門内、口腔内に入れるかについては文言上限定しておりませんので、自己の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為を含むと解することができると考えて用いておるところでございます。</blockquote><blockquote> したがいまして、今回の法案における性交、肛門性交または口腔性交とは、相手方の膣内、肛門内もしくは口腔内に自己の陰茎を入れる行為のほかに、自己の膣内、肛門内もしくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為を含むものであると考えております。</blockquote>判例が不明のため[[構成要件]]該当性は不明であるが、''この答弁の定義によった場合には''、加害・被害側を問わず、行為者が男女間、または男性同士で、陰茎を膣、肛門もしくは口腔に入れ、または陰茎を膣、肛門もしくは口腔に入れさせた場合が対象となる。よって、[[オーラルセックス]]行為の内、フェラチオ行為でも加害・被害側を問わず対象となるが、[[クンニリングス]]行為の構成要件該当性、行為者が女性同士の場合の構成要件該当性、またフェラチオ行為についても、口腔内に陰茎を没入させず、舌で舐める等の行為に留まる場合の構成要件該当性については、''この答弁においては明言されておらず、''議論がある<ref name=":1">『性犯罪に関する刑事法検討会 取りまとめ報告書』(2021年5月), 法務省・性犯罪に関する刑事法検討会</ref>。 |
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本条項の主体は、「現に監護する者」であり、[[身分犯|真正身分犯]]である。 |
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また、[[法制審議会]]第175回会議「性犯罪の罰則に関する検討会」における解釈では、「入れさせた」場合につき「陰茎を自己もしくは第三者の膣、肛門もしくは口腔に入れさせた」としている<ref name="moj001161366">{{PDFlink|[https://www.moj.go.jp/content/001161366.pdf 法制審議会 第175回会議配布資料 刑1 諮問第101号]}} - 法務省</ref><ref>[[ペニバン|陰茎を模した道具]][[アナルバイブ|その他器具]]を入れた場合には本罪を構成しないと考えられる。</ref>。 |
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「現に監護する者」の範囲は、[[b:民法第820条|民法第820条]]による[[親権]]の効果としての「監督保護」を行う者をいい、法的権限に拠らなくてもそれと同等の監督保護を行う者を含む。具体的には養親に加え、養護施設等の職員が含まれ得る。一方で、教師等は、この立場から除かれると解されている。 |
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被害者が13歳未満の者の場合は、脅迫・暴行がなく、または双方の同意があったとしても強制性交等罪を構成する。 |
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=== 影響力があることに乗じて === |
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「影響力があることに乗じて」は、明示的に示される必要はなく、暗黙の了解でも足りる。「影響力があることに乗じて」いない例としては、監護者であることを隠匿して性交等に及ぼうとした場合が挙げられている。 |
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== |
====準強制性交等罪==== |
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暴行・脅迫によらない場合も、心神喪失・抗拒不能に乗じ、又は心神喪失・抗拒不能にさせて性交等をした場合には、準強制性交等罪に当たる(刑法178条2項)。被害者が酒や薬物等で抵抗できない状態にされている際に課される<ref name="kyoto875253">{{Cite web |title=「強制性交罪」と「準強制性交罪」の違いとは |url=https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/875253 |website=京都新聞 |access-date=2023-02-09 }}</ref>。課される法定刑は強制性交等罪と同様。旧準強姦罪。 |
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従前から強制わいせつ、ないし強姦の機会に被害者に外傷を生じさせたり死亡させた場合、[[結果的加重犯]]として重い犯罪類型を構成していた。平成29年改正においても同趣旨は継続されている。なお平成29年改正にあわせ、以下の判例等において、「女性」に「人」、「姦淫」に「性交等」、「強姦(致傷)罪」に「強制性交等(致死傷)罪」をそれぞれ読み替えるべく適宜【】内に付記している。 |
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=== |
====結果的加重犯(2017年から2023年までの類型)==== |
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{{Main|不同意性交等致死傷罪}} |
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強制性交等罪、準強制性交等罪若しくは監護者性交等罪又はこれらの未遂罪を犯し、それによって被害者を死亡・負傷させた場合は、強制性交等致死傷罪(刑法181条2項)が成立し、無期又は6年<ref>なお、平成29年改正以前、法定刑の下限は5年であった。</ref>以上の懲役に処せられる。姦淫【性交等】に着手しその途中で死傷させれば、姦淫【性交等】は未遂でも、強姦致傷罪【強制性交等致死傷罪】が既遂で成立する<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=60938 最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)第2294号 窃盜、強姦致傷 昭和34年7月7日 決定 棄却 集刑130号515頁]</ref>。 |
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上記の罪又はその未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合には結果的加重犯として刑が加重される。強制性交等致死傷罪、準強制性交等致死傷罪ともに無期又は6年以上20年以下の懲役であった。 |
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== 性犯罪に関する刑法改正の経緯 == |
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被害者につき、[[処女]]を姦淫して[[処女膜]]を裂傷させた場合は強姦致傷罪【強制性交等致傷罪】に当たる<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=55811 最高裁判所第二小法廷 昭和34年(あ)第1274号 強姦致傷 昭和34年10月28日 決定 棄却 刑集13巻11号3051頁]</ref>。その他、性器、肛門や口腔に裂傷を生じさせた場合も同罪を構成すると考えられる(判例未確定)。姦淫【性交等】の行為そのものや、姦淫【性交等】の手段である暴行・脅迫によって死傷した場合のほか、姦淫【性交等】をされそうになった人が逃走を図り、その途中で体力不足などのために倒れたり、足を踏み外して負傷した場合なども強姦致傷罪【強制性交等致傷罪】が成立する<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51011 最高裁判所第二小法廷 昭和46年(あ)第1051号 強姦致傷 昭和46年9月22日 決定 棄却 刑集25巻6号769頁]等</ref>。また、この罪が成立するための「傷害」の程度については、「強姦行為【強制性交等】を為すに際して相手方に傷害を加えた場合には、たとえその傷害が、『メンタム一回つけただけで後は苦痛を感ぜずに治」つた程度のものであつたとしても』罪が成立するとされている<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=74669 最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)第1260号 強姦致傷 昭和23年7月26日 判決 棄却 集刑第12号831頁]</ref>。 |
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{{日本の刑法}} |
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{{ウィキプロジェクトリンク|刑法 (犯罪)}} |
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[[ファイル:Homusho.jpg|thumb|190px|法務省]] |
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[[明治時代]]に定められた[[性犯罪]]に関する刑法は、性被害当事者が声を上げ、その声を各方面に働きかけた専門家や議員によって改正が実現されてきた<ref name="moj1316277" /><ref name="nhk-k100141">{{Cite web |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230616/k10014101051000.html |title=「同意のない性行為」とは 性犯罪の刑法改正 ポイントを解説 |publisher =NHK |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-28}}</ref><ref name="ourage317469">{{Cite web |url=https://ourage.jp/column/life/daily-tweets/317469/ |title=ブラボー!「エブエブ」&刑法改正。 アワエイジ世代も胸熱! 愛と「同意」のある世界♡ |publisher =[[集英社]][[MyAge]]/[[OurAge]] |date=2023-04-06 |accessdate=2023-07-02}}</ref>。 |
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===年表=== |
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*[[1880年]](明治13年)、[[旧刑法]]に'''強姦罪'''(第348条・349条)が制定された<ref name="safeprom2023">{{Cite web|url=http://plaza.umin.ac.jp/~safeprom/pdf/JSP_2023_16(1).pdf |title=性犯罪処罰規定の見直しの経緯とその議論 ─暴行・脅迫の要件を中心に─(日本大学法学部 西山智之) |format=PDF |publisher =2 日本セーフティプロモーション学会誌 Vol.16(1)2023年4月号 |accessdate=2023-06-30}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.aurora.dti.ne.jp/~mutsumi/study/fudai522.html |title=明治初期の告訴権・親告罪 ― 刑事実体法における関連諸規定の概観 ― |publisher =黒澤睦「明治初期の告訴権・親告罪―刑事実体法における関連諸規定の概観―」富大経済論集第52巻第2号(富山大学経済学部,2006年11月) |accessdate=2023-07-01}}</ref>。 |
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*[[1907年]](明治40年)、現行の刑法が制定され、'''強姦罪'''が規定された(性犯罪処罰規定の基本的な構成要件は2017年まで維持)<ref name="nhk128" /><ref name="PolitasTV20230621" /><ref name="safeprom2023" />。 |
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*[[2004年]](平成16年)、[[懲役]]の下限を2年から3年に引き上げた<ref name="moj001329108" />。衆参両院の法務委員会の附帯決議で、性犯罪の在り方についてさらなる検討が求められた<ref name="ndl962" />。 |
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*[[2010年]](平成22年)、第3次[[男女共同参画基本計画]]で女性に関するあらゆる暴力の根絶が掲げられ、2015年末までに強姦罪などの「非[[親告罪]]化」「[[性交同意年齢]]引き上げ」「暴行・強迫を要する[[構成要件]]の見直しが提案された<ref name="ndl962" />{{sfn|秋山|2019|pp=106-107}}。 |
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*[[2017年]](平成29年)、1907年の制定以来110年ぶりに大幅改正され、強姦罪から'''強制性交罪'''に改称された<ref name="nhk128">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/128/ |title=性犯罪に関する刑法~110年ぶりの改正と残された課題 |publisher =NHK |date=2018-10-22 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref name="sonoda20170627" />。この改正刑法には、多くの課題が残されたとして、施行後3年を目途に実態に即して見直しを行うという[[附則]]が付いた<ref name="nhk128" /><ref name="bunshun36536" /><ref name="yahoo8881" />。 |
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*[[2019年]]3月(平成31年)、[[#2019年3月の無罪判決|性犯罪に関する無罪判決が1ヶ月に4件相次ぎ]]、各地で[[性暴力]]に抗議する「[[フラワーデモ]]」が始まった<ref name="ASN6C6J2LN" /><ref name="topic047" /><ref name="nhk20201113" />。 |
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*[[2020年]](令和2年)、2017年改正法[[附則]]の3年後の見直しに従い、「性犯罪に関する刑事法検討会」が[[法務省]]内に設けられ、性被害当事者団体『[[Spring_(一般社団法人)|一般社団法人Spring]]』の[[山本潤 (看護師)|山本潤]]理事も委員になった<ref name="moj-keiji12_20">{{Cite web |url=https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00020.html |title=性犯罪に関する刑事法検討会 |publisher =法務省 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref name="moj001367726" /><ref name="PolitasTV20230621" />。 |
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*[[2021年]](令和3年)、性暴力被害者の支援などに携わる13団体による「刑法改正市民プロジェクト」が、同意のない性行為を犯罪とする「不同意性交等罪」の創設を求める約6万1千人の署名を[[法務省]]に提出した<ref name="ASP2C3CHKP" /><ref name="Huff20210210" />。 |
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*[[2023年]](令和5年)、強制性交等罪と準強制性交等罪を統合して'''不同意性交等罪'''に改称した<ref name="asahi20230621">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/DA3S15667136.html |title=(社説)不同意性交罪 「身近な犯罪」の根絶を |publisher =朝日新聞 |date=2023-06-21 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="sankei20230620" />。この改正刑法については、5年後に性被害の実態や社会の意識、特に[[性的同意]]についての意識も踏まえて見直しを検討することや、「不同意性交罪」の[[公訴時効]]の延長について、被害申告の困難さに関する調査をするという[[附則]]が付いた<ref name="shugiin211Futai58" /><ref name="nhk20230616" /><ref name="huff20230616" /><ref name="nhk2023-05-24" />。 |
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===2023年改正概要=== |
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なお、強姦致傷罪【強制性交等致傷罪】には[[傷害罪#同時傷害の特例|同時傷害の特例]]の適用はないとした下級審の判決がある<ref>[http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=24065 仙台高等裁判所第二部 昭和32年(う)第366号 強姦致傷被告事件 昭和33年3月13日 判決 高刑11巻4号137頁]</ref>。 |
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不同意性交等罪では、条文に「有効な同意」ができない8つの典型的な場面を例示した<ref name="ourage320109">{{Cite web |url=https://ourage.jp/column/life/daily-tweets/320109/ |title=〈同意の深掘りトーク・後編〉「不同意性交罪」に刑法改正!? で、気になる「こんなときどうする?」 |publisher =[[集英社]][[MyAge]]/[[OurAge]] |date=2023-05-15 |accessdate=2023-07-02}}</ref><ref name="nhk-k100141" />。8つの類型には、「暴力・脅迫」だけでなく、「心身の障害がある場合」「[[アルコール]]・[[薬物]]を摂取している場合」「睡眠・意識不明瞭な場合」「拒絶する隙を与えない不意打ち」「恐怖・驚愕させた場合」「[[虐待]]による心理的反応がある場合」「地位・関係性が対等でない場合」が明記され<ref name="ourage320109" /><ref name="nhk-k100141" /><ref name="aera20230607">{{Cite web |url=https://dot.asahi.com/articles/-/191296 |title=刑法改正案「不同意性交罪」のベースには性被害者たちの切実な声 もう絶望させないでほしい 北原みのり |publisher =AERA |date=2023-06-07 |accessdate=2023-07-03}}</ref>、それに類する行為により「[[性的同意#ノー・ミーンズ・ノー|同意しない意思]]の形成、表明、全う」のいずれかが難しい状態にさせたり、そうした状態に乗じたりして、[[性行為]]をした」場合は処罰される<ref name="maini20230616" /><ref name="nhk20230616" />。 「不同意性交等罪」という名称は、内心(不同意であったこと)のみを[[構成要件|成立要件]]とはしていないが、「同意がない性行為は性犯罪になる」という性犯罪処罰規定の本質をメッセージとして伝えている<ref name="safeprom2023" /><ref name="ourage320109" /><ref name="nhk-k100141" />。被害者が性行為に[[性的同意#ノー・ミーンズ・ノー|不同意]]である客観的な状況を条文の中で明確に規定しているため、法の明確性を守りつつ、これまでは処罰ができなかった加害者に対して適切な処罰が出来るようになる可能性がある<ref name="safeprom2023" /><ref name="nhk-topic040" /><ref name="nhk-k100141" />。 |
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不同意性交等罪では、男性器だけでなく、体の一部(指など)や物を[[膣]]や[[肛門]]に挿入することも「性交」扱いになった<ref name="huff20230616" /><ref name="tokyo257161" /><ref name="g21109058" />。配偶者(夫婦)間の不同意性交等の罪が成立することも明文化された<ref name="g21109058-huhu" />。性的部位や下着などを[[盗撮]]したり拡散することを取り締まる「'''[[性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律|性的姿態撮影罪]]'''」(撮影罪)も新設された<ref name="nhk20230616" /><ref name="47news20230626" /><ref name="jiji20230616" />。[[公訴時効]]は10年から15年に延長され、被害者が未成年の場合は被害だと認識できるまでに時間がかかることなどから、公訴時効の起点を18歳とする<ref name="yomiuri20230617" /><ref name="president69535" /><ref name="bengo16077" />。 |
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=== 殺意がある場合 === |
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殺意をもって人に性交等をし、死亡させた場合、どの条文が適用されるかについて争いがある。まず、刑法181条2項に殺意がある場合を含むと考えるか否かに分かれる。 |
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大人から子どもへの、地位や信頼を利用した[[性暴力]]への対策も強める<ref name="yomiuri20230617" /><ref name="president69535" />。[[性行為|性的行為]]の意味を理解し同意ができるとみなす「[[性的同意年齢#日本|性交同意年齢]]」を13歳から16歳に引き上げ、16歳未満と性的行為を行った場合は、同意の有無に関わらず処罰の対象になる<ref name="yomiuri20230617" /><ref name="president69535" /><ref name="reuters20230616">{{Cite web |url=https://jp.reuters.com/article/idJP2023061601000626 |title=「不同意性交罪」が成立 |publisher =共同通信 |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-24}}</ref>。ただし、13 - 15歳の場合は、5歳以上年上の者が処罰の対象になる<ref name="yomiuri20230617" /><ref name="president69535" />。16歳未満を[[わいせつ]]目的で金銭提供を約束するなどして手なずけ、会うように仕向けたり、性的な[[自分撮り|自撮り画像]]などを送らせることを取り締まる「'''[[グルーミング (性犯罪)|性的面会要求罪]]'''」も新設された<ref name="nhk20230616" /><ref name="47news20230626" /><ref name="jiji20230616" /><ref name="president69535" />。強制わいせつ罪([[b:刑法第176条|刑法第176条]])と準強制わいせつ罪(刑法第178条)も統合し、罪名を「[[不同意わいせつ罪]]」(刑法第176条)に改めた<ref name="yomiuri20230617" />。 |
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181条2項は結果的加重犯である点を重視し、殺意がある場合を含まないという説は更に、強制性交等致死罪と[[殺人罪 (日本)|殺人罪]]の[[観念的競合]]となるという説と、強制性交等罪と殺人罪の観念的競合となるという説に分かれる。判例は前者の説をとっている(大判大正4年12月11日刑録21輯2088頁、最判昭和31年10月25日刑集10巻10号1455頁)。判例に対しては、死の結果を二重評価することになるとの批判があり、結局殺人罪で処断されて刑の不均衡を生じないのであるため、後説によるべきとの指摘がある<ref>大谷實『新版刑法講義各論[追補版]』成文堂、2002年、127頁</ref>。 |
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==条文== |
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一方、181条2項には殺意がある場合を含むという説は更に、強制性交等致死罪の[[単純一罪]]であるという説と、刑のバランスを考えて<ref>強姦致死罪には死刑が規定されていないため、単純な殺人よりも、殺意をもって強姦し死亡させた場合の方が[[法定刑]]が軽くなってしまう。</ref>、強制性交等致死罪と殺人罪の観念的競合となるという説に分かれる。 |
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現行法(2023年7月5日施行)と、各改正ごとの関連条文をそれぞれ示す。 |
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条文中に本来ない文言を付け足したときは〈〉で示し、また、前回改正のものと改正のない条文は同上、省略するときは略と表記する。 |
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===令和5年(2023年)7月5日施行=== |
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*〈[[#平成17年(2005年)1月1日施行|第十二条・第十四条]]・[[#平成7年(1995年)6月1日施行|第十五条]] 同上〉 |
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*([[不同意わいせつ罪|不同意わいせつ]]) |
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第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。<br> |
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一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。<br> |
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二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。<br> |
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三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。<br> |
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四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。<br> |
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五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。<br> |
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六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。<br> |
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七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。<br> |
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八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。<br> |
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2〈略〉<br> |
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3〈略〉<br> |
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*(不同意性交等) |
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第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。<br> |
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2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。<br> |
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3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。 |
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* 第百七十八条 削除 |
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* (監護者わいせつ及び監護者性交等) |
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第百七十九条 〈略・[[不同意わいせつ罪|監護者わいせつ]]の規定〉<br> |
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2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条第一項の例による。 |
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*(未遂罪) |
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第百八十条 第百七十六条、第百七十七条及び前条の罪の未遂は、罰する。 |
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* (十六歳未満の者に対する面会要求等) |
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第百八十二条 わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。<br> |
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一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。<br> |
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二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。<br> |
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三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。<br> |
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2 前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該十六歳未満の者と面会をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。<br> |
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3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。<br> |
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一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。<br> |
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二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。 |
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* (淫行勧誘) |
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第百八十三条 〈[[#平成7年(1995年)6月1日施行 |旧百八十ニ条と同上]]〉 |
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====刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律・令和5年(2023年)6月23日==== |
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== 未遂等・強盗強制性交等罪 == |
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* 第三条 刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)の施行の日(以下この条において「刑法施行日」という。)の前日までの間における第一条の規定による改正後の刑法第百七十六条、第百七十七条及び第百八十二条の規定の適用については、同法第百七十六条第一項及び第百八十二条中「拘禁刑」とあるのは「懲役」と、同法第百七十七条第一項中「有期拘禁刑」とあるのは「有期懲役」とする。刑法施行日以後における刑法施行日前にした行為に対する同法第百七十六条、第百七十七条及び第百八十二条の規定の適用についても、同様とする。 |
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性交等の行為を開始し、あるいはその手段としての暴行・脅迫を開始した時点で強制性交等罪の[[実行の着手]]があったものとされる。よって、性交等が既遂とならなくても、強制性交等未遂罪(刑法177条、180条)が成立し、既遂と同一の法定刑で処罰される。 |
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===過去の条文=== |
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また、強制性交等の故意が認められない場合でも、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪・監護者わいせつ罪(刑法176条・178条1項・179条1項)が成立し得る。 |
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関連する歴代の過去の条文を示す。 |
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==== 明治41年(1908年)10月1日施行 ==== |
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{{See|s:刑法 (公布時)#a12|label 1=第12条1項|s:刑法 (公布時)#a14|label 2=第14条、第15条|s:刑法 (公布時)#a177|label 3=第177条から第180条まで|s:刑法 (公布時)#a182|label 4=第182条および第183条}} |
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====昭和22年(1947年)11月15日施行==== |
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強盗犯人が口封じやその他の理由で強制性交等に及ぶケースもあることから、別途、[[強盗・強制性交等罪]](刑法241条)が定められている。 |
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* 第百八十三条 削除 |
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〈ほか同上。ただし、百八十二条の罰金刑については、以下の通り別の法による特別規定あり。〉<br> |
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; 罰金等臨時措置法・昭和24年(1949年)2月1日施行 |
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* 第一条 経済事情の変動に伴う罰金及び科料の額等に関する特例は、当分の間、この法律の定めるところによる。 |
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* 第二条 罰金は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第十五条及び刑法施行法(明治四十一年法律第二十九号)第二十条の規定にかかわらず、千円以上とする。但し、これを減軽する場合においては、千円以下に下げることができる。 |
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2 〈略〉 |
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* 第三条 左に掲げる罪につき定めた罰金については、それぞれその多額の五十倍に相当する額をもつてその多額とする。<br> |
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一 刑法の罪。但し、第百五十二条の罪を除く。<br> |
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ニ 〈略〉<br> |
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三 〈略〉<br> |
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2 〈略〉 |
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; 罰金等臨時措置法・昭和47年(1972年)7月1日施行 |
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* 第一条 〈同上〉 |
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* 第二条 罰金は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第十五条及び刑法施行法(明治四十一年法律第二十九号)第二十条の規定にかかわらず、四千円以上とする。但し、これを減軽する場合においては、四千円以下に下げることができる。 |
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2〈略〉 |
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* 第三条 左に掲げる罪につき定めた罰金については、それぞれその多額の二百倍に相当する額をもつてその多額とする。<br> |
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一 刑法の罪。但し、第百五十二条の罪を除く。<br> |
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二 〈略〉<br> |
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三 〈略〉<br> |
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2 〈略〉<br> |
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====平成3年(1991年)5月7日施行==== |
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* 第十五条 罰金ハ一万円以上トス但之ヲ減軽スル場合ニ於テハ一万円以下ニ降スコトヲ得 |
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* 第百八十二条 営利ノ目的ヲ以テ淫行ノ常習ナキ婦女ヲ勧誘シテ姦淫セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス |
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〈ほか同上〉 |
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==== 平成7年(1995年)6月1日施行==== |
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*(懲役)<br> |
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第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上十五年以下とする。<br> |
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2〈略〉 |
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* (有期の懲役及び禁錮の加減の限度)<br> |
|||
第十四条 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては二十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。 |
|||
* (罰金)<br> |
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第十五条 罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。 |
|||
*(強姦)<br> |
|||
第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、二年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。 |
|||
*(準強制わいせつ及び準強姦)<br> |
|||
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をし、又は姦淫した者は、前二条の例による。 |
|||
*(未遂罪)<br> |
|||
第百七十九条 前三条の罪の未遂は、罰する。 |
|||
*(親告罪)<br> |
|||
第百八十条 第百七十六条から前条までの罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。<br> |
|||
2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条から前条までの罪については、適用しない。 |
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* ([[淫行勧誘罪|淫行勧誘]]) |
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第百八十二条 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する |
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* 第百八十三条 削除 |
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==== 平成17年(2005年)1月1日施行==== |
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* (懲役)<br> |
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第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。<br> |
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2〈略〉 |
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* (有期の懲役及び禁錮の加減の限度) |
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第十四条 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。<br> |
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2 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。 |
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* (罰金)<br> |
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第十五条 〈同上〉 |
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* (強姦) |
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第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。 |
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* (準強制わいせつ及び準強姦) |
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第百七十八条〈略・[[不同意わいせつ罪|準強制わいせつ]]の規定〉<br> |
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2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。 |
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* (集団強姦等) |
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第百七十八条の二 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。 |
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* (未遂罪) |
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第百七十九条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。 |
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* (親告罪) |
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第百八十条 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。<br> |
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2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。 |
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* (淫行勧誘) |
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第百八十二条〈同上〉 |
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* 第百八十三条 削除 |
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==== 平成29年(2017年)7月13日施行==== |
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== 親告罪 == |
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*〈第十二条・第十四条・第十五条 同上〉 |
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平成29年改正以前は、強制わいせつ罪、強姦罪、準強制わいせつ罪及び準強姦罪は[[親告罪]]であり、被害者(又はその[[法定代理人]]等)の[[告訴]]がなければ[[公訴]]を提起することができなかった(平成29年改正前の刑法180条1項)。これらの犯罪の追及は、社会的評判の失墜などかえって被害者の不利益になることもあったため、訴追するか否かを被害者の意思によることとしたものである。なお、強姦罪は犯人と被害者の間の一定の関係は問わないため、絶対的親告罪に該当していた。 |
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*(強制性交等) |
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第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。 |
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*(準強制わいせつ及び準強制性交等) |
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第百七十八条〈略・[[不同意わいせつ罪|準強制わいせつ]]の規定〉<br> |
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2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。 |
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*(監護者わいせつ及び監護者性交等) |
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第百七十九条 〈略・[[不同意わいせつ罪|監護者わいせつ]]の規定〉<br> |
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2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。 |
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*(未遂罪) |
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第百八十条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。 |
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*(淫行勧誘) |
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第百八十二条 〈同上〉 |
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* 第百八十三条 削除 |
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==1907年の制定(強姦罪)== |
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一方、親告罪であることが、かえって被害者の心理的負担となることや、被害者の選択に拠らせることにより、加害者の逆恨みからの復讐の標的となりかねないなどの問題点<ref>{{Cite web |url=http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00122.html |title=法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第1回会議(平成27年11月2日開催)議事録|work= |
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[[1907年]]の'''強姦罪'''制定時は、加害者は男性に限られ、被害者は女性とされていた<ref name="nhk128" /><ref name="sonoda20170627" />。女性は結婚相手以外の人と性交をしてはいけない「[[姦通]]」といった概念があり、[[家制度]]を守るために、「[[貞操]]」に対する罪として捉えられていた<ref name="nhk128" /><ref name="safeprom2023" /><ref name=gendaihouritsu_p555>{{Citation|和書|editor=[[伊藤正己]]|contribution=強姦罪|title=現代法律百科大辞典|volume=2|date=2000-03-25|publisher=ぎょうせい|isbn=4-324-06036-3|page=555}}</ref><ref>{{Cite book |和書 |title=刑法綱要各論(改訂版) |author=団藤重光|authorlink=團藤重光|year = 1985|publisher = [[創文社]]|page = 472|isbn =978-4423730508 |quote=「他人ノ妻ヲ強姦シタル行為ハ、其ノ貞操ニ対スル本夫ノ権利ヲ侵害スルモノナレハ、本夫モ亦被害者トシテ告訴ヲ為スノ権ヲ有ス。」(大審院判決 大正 5.7.1 刑録 22.1194 )}}</ref>。性は、長らく「権利の問題」ではなく、[[家父長制]]や家族といった「あるべき規範」に縛られ、性暴力は「あってはならないことがおこってしまった」という観点から、被害者が責められ、告発しにくい状況があった<ref name="nhk128" /><ref name="safeprom2023" />。戦後は、「性的自由」の問題とするのが一般的となったが、「強姦」被害者の対象を女性のみにし、男性を含めないのは、女性の貞操への意識を残した差別的取り扱いではないかなどの批判もあった<ref>{{Cite journal|和書|url=https://doi.org/10.34328/jcl.54.1_6 |author=吉田容子 |title=日本における性犯罪の被害実情と処罰にかかわる問題 |journal=刑法雑誌 |ISSN=0022-0191 |publisher=日本刑法学会 |date=2014 |volume=54 |issue=1 |pages=6-29 |naid=130007936555 |doi=10.34328/jcl.54.1_6 |accessdate=2021-12-25|quote=「(強姦罪の)『客体』は、何故、女性だけなのか。男性の性的自由は強制わいせつ罪 (176条)で保護していると説明されるが、女性は176条と177条の双方で客体となる。何故、差を設けるのか」「保護法益を『女性の貞操』と考えれば、以下のとおり説明は容易である」「『客体』及び『実行行為』については、保護法益は『将来男性に嫁ぐ無垢な女性の処女性、夫に従属する貞淑な妻』の保護であり、処女性を失わせる又は妊娠の可能性のある性器結合は、それ以外の性的侵害行為よりも強い非難に値する。これに対し、男性被害や同性間被害は強制わいせつ罪で処罰すれば足りる。」}}</ref><ref name="nhk128" />。 |
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中村幹事による法務省資料1諮問第101号別紙要綱(骨子)第四に関する説明 |publisher=[[法務省]] |accessdate=2017-10-23 }}</ref>があるとするのが政府見解であり、被害者の[[プライバシー]]などの厳格な保護は、別途刑事手続き・裁判手続きにおいて対処されるものとし<ref>{{Cite web |url=http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00122.html |title=法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第1回会議(平成27年11月2日開催)議事録|work= |
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森悦子委員(最高検察庁)、田邊三保子委員(名古屋高等裁判所)発言 |publisher=[[法務省]] |accessdate=2017-10-23 }}</ref>、これらの性犯罪に関し、平成29年改正により非親告罪とした。 |
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=== 2004年の改正 === |
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=== 親告罪から非親告罪へ ===<!-- ここも「法改正の経緯」と重複するかも --> |
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# 強姦罪の[[法定刑]]の下限を、懲役2年以上から3年以上に引き上げた<ref name="moj001329108">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001329108.pdf |title=刑法の性犯罪の法定刑に関する改正経過等 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-06-26}}</ref>。 |
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# '''集団強姦罪'''が新設された<ref name="goo-shudan" /><ref name="moj1316277" /><ref name="okinawa12p" />。単独犯の強姦罪は親告罪で法定刑は3年以上であるのに対し、集団強姦罪は被害者の訴えがなくても検察官が起訴できる非親告罪であり、4年以上の懲役とした<ref name="goo-shudan" /><ref name="moj1316277" /><ref name="okinawa12p" />。 |
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*衆参両議会の法務委員会の附帯決議で、性犯罪の在り方についてさらなる検討が求められた<ref name="ndl962">{{Cite web |url=https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10350891_po_0962.pdf?contentNo=1 |title=性犯罪規定に係る刑法改正法案の概要 |publisher =国⽴国会図書館 調査と情報―ISSUE BRIEF― 第962号 No.962 |date=2017-05-22 |accessdate=2023-06-26}}</ref><ref name="PolitasTV20230621" />。 |
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===集団強姦等罪(2004年創設、2017年廃止)=== |
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強姦致死罪、強姦致傷罪は、立法当時より、非親告罪であるため、告訴の有無に拘らず公訴を提起することができた。また、集団による強姦行為(輪姦)等は性的倫理感から照らして異常な行為であるとの認識があり、昭和33年改正において既に非親告罪となっていた。 |
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2004年の改正の際に、強姦罪等よりも重い刑を科すために創設されたが、[[2017年]]の改正で、強制・準強制性交等罪が非[[親告罪]]になり法定刑が5年以上に引き上げられて、集団強姦罪(旧刑法178条の2)の法定刑の4年以上を超えたため、廃止された<ref name="ndl962" /><ref name="goo-shudan">{{Kotobank|集団強姦等罪|2=}}</ref><ref name="moj1316277">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001316277.pdf |title=見直そう!刑法性犯罪 |format=PDF |publisher =法務省(一般社団法人Spring) |accessdate=2023-02-10}}</ref>。集団強姦等致死傷罪(旧刑法181条3項。無期または6年以上の懲役)も廃止され、強制性交等致死傷罪([[b:刑法第181条|刑法181条]]。無期または6年以上の懲役)に含められた<ref name="ndl962" /><ref name="nipponica554" />。 |
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集団強姦等罪は、2003年5月18日の[[インカレサークル]]の集団強姦事件である[[スーパーフリー事件]]を受けて、2004年の刑法改正で創設された<ref name=":3">{{Cite web |title=スーフリ事件の「和田サン」手記報道 被害者が語る卑劣な手口と“素顔”のギャップ (2019年2月18日) |url=https://www.excite.co.jp/news/article/Real_Live_44156/ |website=エキサイトニュース |access-date=2023-02-07 }}</ref><ref name="okinawa12p">{{Cite journal|和書|author=髙良沙哉 |date=2009-03 |url=https://doi.org/10.34415/00000513 |title=集団強姦罪の制定過程における「性的自由」論議 |journal=沖縄大学法経学部紀要 |ISSN=1346-3128 |publisher=沖縄大学法経学部 |volume=12 |pages=1-12 |doi=10.34415/00000513 |id={{CRID|1390009226862809088}} |ref=harv |accessdate=2023-07-06}}</ref>。2人以上の者が共同して強姦(準強姦含む)した場合に適用され、性別不問で実際に性行為に参加していなくても、その場に居れば刑罰が成立していた<ref>{{cite web |title=川崎逃走男「金は返すから逮捕は勘弁して」 |website=[[日テレNEWS24]] |date=2014-1-11 |url=https://news.livedoor.com/article/detail/8422765/ |accessdate=2014-1-11}}</ref>。 |
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2000年(平成12年)法律第74号の改正により、強姦罪等については6か月の[[告訴期間]]が廃止された([[刑事訴訟法]]235条1項)。 |
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===2010年の第3次男女共同参画基本計画における見直し=== |
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2012年(平成24年)[[憲法学者]]の[[辻村みよ子]]東北大学教授が会長を務める[[内閣府]][[男女共同参画会議]]女性に対する暴力に関する専門調査会で、強姦罪を非親告罪化する法改正を求める報告書が取りまとめられた<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG25036_V20C12A7CR8000/ 「強姦罪「告訴なしで起訴可能に」 内閣府専門調査会が提言 」]日本経済新聞2012/7/25付</ref>。 |
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[[2010年]]、第3次[[男女共同参画基本計画]]で女性に関するあらゆる暴力の根絶が掲げられ、2015年末までに[[強姦]]罪などの「非[[親告罪]]化」「[[性交同意年齢]]引き上げ」「『暴行・強迫』を要する構成要件の見直し」が提案された<ref name="ndl962" />{{sfn|秋山|2019|pp=106-107}}。 |
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# 強姦罪の非[[親告罪]]化(告訴するかどうかの選択を迫られているように感じる被害者の心理的負担。被害者が低年齢の場合、告訴ができるかという懸念の存在)。 |
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# [[性交同意年齢]]の引き上げ(13歳以上であれば性交がどのような行為か理解し、同意を自分で判断できるかが不明。性犯罪は10 -20歳の若年層が最も被害にあいやすい<ref name="moj1316277" />)。 |
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# 「暴行・脅迫」を用いることを要件とする強姦罪の構成要件の見直し(被害者が恐怖や加害者の社会的地位への配慮により抵抗しないこともあるため)。 |
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===国際的観点からの問題点=== |
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2015年(平成27年)8月6日、[[刑法学者]]の[[山口厚]]東京大学名誉教授が座長を務めて性犯罪の厳罰化を議論してきた[[法務省]]性犯罪の罰則に関する検討会でも、被害者の告訴がなくても罪に問えるようにするべき<ref>この場合、犯罪の成立の判断は被害者の感情をくみ取って、これが犯罪を成立させるか行為の文脈的な解釈に応じて司法に委ねられることになる。</ref>だとの意見が多数であった<ref>[http://www.moj.go.jp/content/001154850.pdf 「性犯罪の罰則に関する検討会」取りまとめ報告書] p5 平成27年8月6日性犯罪の罰則に関する検討会</ref>。 |
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性暴力について、日本は[[自由権規約委員会|国連自由権規約委員会]]を始め、多くの国際的な条約機関から法改正の勧告を受けている<ref name="moj001161367">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001161367.pdf |title=国連の各委員会による 性犯罪の罰則等に関する最終見解 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref name="nichibenren2014">{{Cite web|url=https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/liberty_rep6_pam.pdf |title=自由権規約委員会は 日本政府に どのような改善を求めているのか |format=PDF |publisher =日本弁護士連合会 |accessdate=2023-02-07}}</ref>。 |
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*2008年11月、国連自由権規約委員会は、「男女間の性交渉のみをの強姦罪の対象としていること」「攻撃に対する被害者の抵抗が犯罪の要件にされていること」「裁判官が被害者に抵抗したことの証拠を求めること」「被害者が13歳未満である場合以外は告訴が必要なこと」「加害者が公正な処罰を免れること」「被害者の支援が実行されていないこと」「性暴力の専門的な研修を受けた医療者が不足していること」等に懸念を示した<ref name="国際人権(自由権)規約委員会の総括所見">{{PDFlink|[https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/humanrights_library/treaty/data/Concluding_observations_ja.pdf 国際人権(自由権)規約委員会の総括所見]}}</ref> <ref name="国連の自由権規約委員会の2008年10月の最終見解">[http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-1540.html 国連の自由権規約委員会の2008年11月の最終見解]</ref> 。委員会は、[[b:刑法第177条|刑法第177条]]の強姦罪の定義を拡大し、「男性に対する強姦」と共に「[[近親相姦]]」「性交渉以外の性的虐待」も重大な犯罪とし、「被害者が攻撃に対して抵抗したことを立証しなければいけない負担を取り除くこと」「被害者の告訴がなくても起訴できるようにすること」「裁判官や警察官などに対する性暴力についてのジェンダーに配慮した研修を行うこと」を求めた<ref name="国連の自由権規約委員会の2008年10月の最終見解" />。 |
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*2014年、国連自由権規約委員会は、数ある問題点のうち「強姦罪の構成要件(攻撃に対する被害者の抵抗)の見直し」「性交同意年齢の引き上げ」「性犯罪の非[[親告罪]]化」について勧告した<ref name="moj001161367" /><ref name="nichibenren2014" />。 |
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== 2017年の改正(強制性交等罪に改称)== |
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2015年(平成27年)10月9日の[[法制審議会]]への改正諮問の案に、強姦罪等の非親告罪化が盛り込まれた。 |
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強姦罪から「強制性交等罪」、準強姦罪から「準強制性交等罪」に変更された。'''強制'''と'''準強制'''性交等罪の刑の重さ([[量刑]])は同じで、5年以上20年以下の[[有期刑|有期]][[懲役]]である<ref name="ASN3D51MMN" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="kyoto875253">{{Cite web |title=「強制性交罪」と「準強制性交罪」の違いとは |url=https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/875253 |website=京都新聞 |access-date=2023-02-09 }}</ref>。 |
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{{Visible anchor|'''強制性交等罪'''}}([[b:刑法第177条|刑法第177条]]旧規定)は、「暴行・脅迫」を用いた13歳以上の者への[[性交]]や[[肛門性交]]、[[口腔性交]](以下「'''性交等'''」)、13歳未満の者への性交等に対する罪である<ref name="ASN3D51MMN" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="kyoto875253" />。 |
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== 法定刑 == |
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有期[[懲役]]刑の上限は20年(加重により30年)である<ref>刑法12条、14条</ref>。以下、(参考)内の「改正前」とは平成29年改正前を言う。 |
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; 強制性交等罪、準強制性交等罪、[[監護者性交等罪]] |
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: '''5年'''以上の[[懲役|有期懲役]](刑法177条、178条2項、179条2項) |
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::(参考)強姦罪・準強姦罪 3年以上の[[懲役|有期懲役]](改正前刑法177条、178条2項) |
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; 強制性交等致死傷罪、準強制性交等致死傷罪、監護者性交等致死傷罪 |
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: 無期又は'''6年'''以上の懲役(刑法181条2項) |
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::(参考)強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪 無期又は5年以上の懲役(改正前刑法181条2項) |
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; [[強盗・強制性交等罪]] |
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: 無期又は7年以上の懲役(刑法241条1項) |
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::(参考)強盗強姦罪 無期又は7年以上の懲役(改正前刑法241条前段) |
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; [[強盗・強制性交等罪|強盗・強制性交等致死罪]] |
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: 死刑又は無期懲役(刑法241条3項) |
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::(参考)強盗強姦致死罪 死刑又は無期懲役(改正前刑法241条後段) |
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; 集団強姦罪・集団準強姦罪(廃止) |
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: 4年以上の有期懲役(改正前刑法178条の2) |
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; 集団強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪(廃止) |
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: 無期又は6年以上の懲役(改正前刑法181条3項) |
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{{Visible anchor|'''準強制性交等'''}}([[b:刑法第178条|刑法第178条]]旧規定)は、被害者の「心神喪失」や「抗拒不能」な状況に乗じ、またはそのような状態にさせて性交等を行った場合に、「暴行・脅迫」がなくても罪に問えるものである<ref name="ASN3D51MMN" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="kyoto875253" />。準強制性交等の適用範囲は広く、「心神喪失」とは、[[アルコール]]や[[薬物]]・[[精神障害]]・[[失神]]・睡眠・[[酔っ払い|泥酔]]などから、自身の性行為について正常な判断ができない状態にある場合をいい、「抗拒不能」とは、手足を縛られたり、[[催眠|催眠術]]・錯誤・畏怖の状態など、物理的・心理的に抵抗ができない状態にあった場合をいう<ref name="safeprom2023" />{{Refnest|group="注釈"|加害者が自分は医師であると偽り、病気の治療のためには加害者と性交を行う他はないと説明し、心理的に追い込んだ上で性交を行った事件や、[[牧師]]が[[信者]]の少女らに対して、従わなければ地獄に堕ちると説教し、畏怖させた上で性交を行った事件が、準強姦罪として認められている<ref name="safeprom2023" />}}。準強制性交等罪は、強制性交等罪(177条旧規定、強姦罪)よりも「意思に反する性行為」を処罰する際に、広く適用できる条文だが、実際には強制性交等罪の適用が中心で、準強制性交等罪(準強姦罪)の適用は少数にとどまっている<ref name="safeprom2023" />。 |
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=== 減軽 === |
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以上の各罪につき、[[未遂]]の場合でも既遂と同一の法定刑が適用される。 |
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=== 強姦罪からの変更点 === |
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[[量刑|減軽]]を定める罪は[[強盗・強制性交等罪]]だけであり、強盗行為および強制性交等行為の両方とも未遂の場合に裁量的減軽を定める。更に、両方とも未遂であり、なおかつ一方(又は両方)が[[中止未遂]]となった場合には必要的減軽を定める。ただし、致死の結果を生じた場合には[[強盗・強制性交等罪|強盗・強制性交等致死罪]]となり、法定の減軽の対象外となる。 |
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[[2017年]]、性犯罪に関する刑法が[[1907年]]の制定以来110年ぶりに大幅改正され、[[強姦]]を罰する'''強姦罪'''から、より包括的な'''強制性交等罪'''へと改正された<ref name="nhk128">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/128/ |title=性犯罪に関する刑法~110年ぶりの改正と残された課題 |publisher =NHK |date=2018-10-22 |accessdate=2023-02-07}}</ref>。この改正では、「女性以外の被害も対象にする」「[[懲役]]の下限を3年から5年に上げる」「被害者の告訴がなくても起訴できる(非[[親告罪]]化)」「監護者(親や[[養親]])との性交同意年齢引き上げ」といった見直しが行われた<ref name="nhk128" /><ref name="asahi20230621" /><ref name="ASR6675D">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/ASR6675DRR62UPQJ01X.html |title=男性の性被害を認めない社会 元ジャニーズの告白、孤立させないで |publisher =朝日新聞 |date=2023-06-09 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。なお、この改正刑法には「『暴行・脅迫』の要件が据え置かれた」「[[公訴時効]]が短い」「[[性交同意年齢]]が13歳で[[明治時代]]の刑法のまま」など、多くの課題が残されたとして、施行後3年を目途に実態に即して見直しを行うという[[附則]]が付いた<ref name="nhk128" /><ref name="bunshun36536">{{Cite web |url=https://bunshun.jp/articles/-/36536 |title=19歳の娘へ性虐待の実父「逆転有罪」に 地裁の「無罪」で明るみに出た、現行法の問題点 |publisher =文春オンライン |date=2020-03-12 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref name="yahoo8881" />。 |
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改正の要点は以下の通りであった<ref name="nhk128" /><ref name="yahoo8881" /><ref name=":0">{{Cite web |title=第193回国会 法務委員会 第21号(平成29年6月7日) |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419320170607021.htm |website=www.shugiin.go.jp |accessdate=2022-01-29}}</ref><ref>{{Cite web |title=改正刑法施行は7月13日 性犯罪を厳罰化|url=https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H21_T20C17A6CR0000/ |website=日本経済新聞 |date=2017-06-23 |access-date=2023-02-07 }}</ref>。 |
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これ以外の罪については全て裁量的減軽([[酌量減軽]])である。 |
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# 女性以外も被害者として認められるようになった<ref name="nhk128" /><ref name="yahoo8881" /><ref name="sonoda20170627" />。強姦罪では「加害は男性、被害は女性」に限定されていたが<ref name="keihou-goukan">(強姦)[[b:刑法第177条|第177条]]:暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。</ref>、強制性交等罪では、性別を問わず、他人に対して「男性器を[[膣]]や[[肛門性交|肛門]]、[[オーラルセックス|口腔]]内に挿入する/させる行為」をした場合は処罰されることになった<ref name="keihou-kyousei">(強制性交等)[[b:刑法第177条|第177条]]:13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。</ref><ref name="nhk128" /><ref name="yahoo8881" />。強姦罪では、肛門性交や口腔性交に強姦罪は適用されず、刑が軽い[[不同意わいせつ罪|強制わいせつ罪]]が適用されてきた<ref name="sonoda20170627" /><ref name="ndl962" /><ref>東京地判平成4年2月17日参照</ref>。これにより性差が撤廃されたとされ、附帯決議でも「被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程において、男性や[[性的少数者|性的マイノリティ]]に対して偏見に基づく不当な取扱いをしないことを研修等を通じて徹底する」という内容が明記された<ref name="fairs2020">{{Cite web |url=https://fairs-fair.org/「男性器の挿入が条件はおかしい」性犯罪の刑法/ |title=「男性器の挿入が条件はおかしい」性犯罪の刑法改正から3年、取り残された課題とは |publisher =fair |date=2020-09-19 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。一方で、膣や肛門、口腔への「男性器の挿入」が犯罪の成立要件となっているため、指や器具など男性器以外の物を使った場合は、強制性交等罪は適用されない<ref name="huf2020-09-23" />。 |
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=== 国外犯 === |
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# 厳罰化し、 [[法定刑]]の下限を懲役3年以上から5年以上に引き上げ、5年以上20年以下の[[有期刑|有期]][[懲役]]になった<ref name="moj1316277" />。 |
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刑法第三条(国民の[[国外犯]])および第三条の二(国民以外の者の国外犯)の対象である。 |
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# 非[[親告罪]]化し、被害者が告訴しなくても検察が事件を起訴できるようにした<ref name="nhk128" /><ref name="nipponica554" />。性犯罪を親告罪化していた理由は、被害者の名誉やプライバシーを保護することにあった<ref name="sonoda20170627" />。しかし、被害者みずからが被害を訴えなければ加害者を処罰できないため、逆恨みなどを恐れ、訴えることが難しい状況が続いていた<ref name="fairs2020" /><ref name="sonoda20170627" /><ref name="moj1316277" />。法改正で非親告罪に変わり、[[強盗]]などと同じく、被害者が意思を示しているかどうかにかかわらず、事件の認定をもって処罰ができるようになった<ref name="fairs2020" /><ref name="sonoda20170627">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/fb9e7f2d93875c1203ad8125b5232ced6032d055 |title=新しい性犯罪規定(7月13日施行)の概要 |publisher =Yahoo!(園田寿) |date=2017-06-27 |accessdate=2023-06-26}}</ref><ref name="moj1316277" />。 |
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# 強姦罪の法定刑引き上げ及び非[[親告罪]]化により、「集団強姦等罪」を廃止した<ref name="goo-shudan" /><ref name="moj1316277" />。 |
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# 「'''[[監護者性交等罪]]'''」「監護者わいせつ罪」を新設し、18歳未満の子どもを監護(生活全般を支える)する親や児童養護施設職員などが、その影響力に乗じて性交・わいせつ行為を行った場合は、暴行や脅迫がなくても処罰されるようになった<ref name="nhk128" /><ref name="sonoda20170627" />。 |
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# 罪名が[[強姦]]罪から強制性交等罪に改定されたことに伴い、[[b:刑法第178条|刑法178条]]2項の「準強姦罪」(3年以上の懲役)は「'''準強制性交罪'''」(5年以上の懲役)に、[[b:刑法第181条|刑法181条]]の「強姦致死傷罪」(無期または5年以上の懲役)は「'''強制性交等致死傷罪'''」(無期または6年以上の懲役)に、[[b:刑法第241条|刑法241条]]の「強盗強姦罪」(無期または7年以上の懲役)は「'''[[強盗・強制性交等罪]]'''」(無期または7年以上の懲役)に、「強盗強姦致死傷罪」(死刑または無期懲役)は「'''強盗・強制性交等致死傷罪'''」(死刑または無期懲役)へと変更された<ref name="nipponica554" /><ref name="ndl962" />。 |
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#* 「強制性交等致死傷罪」は、強制性交等により被害者を死亡・負傷させた場合に成立し、[[結果的加重犯]]として罪が重くなる<ref>{{Cite web |title=強姦致傷罪という犯罪(園田寿) - 個人 |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/ae539ec4596bbfe9095e3f7b5a52e5f984f17448 |website=Yahoo!ニュース |access-date=2023-02-07 }}</ref>。 |
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#* 「[[強盗・強制性交等罪]]」は、[[強盗]]犯人が強姦をした場合や強姦犯人が強盗をした場合であり、強盗罪や強制性交等罪よりも罪が重くなる<ref name="sonoda20170627" /><ref name="nipponica554" /><ref name="moj1316277" />。結果として死亡させた場合は[[死刑]]または[[懲役#無期懲役|無期懲役]]となる<ref name="sonoda20170627" /><ref name="nipponica554" />。 |
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#* これらの罪は[[未遂]]も処罰される([[b:刑法第180条|刑法180条]]、[[b:刑法第243条|243条]]など)<ref name="nipponica554">{{Cite web |url=https://japanknowledge.com/contents/nipponica/sample_koumoku.html?entryid=554 |title=性犯罪 |publisher =日本大百科全書(ニッポニカ) |accessdate=2023-06-26}}</ref><ref name="ndl962" />。 |
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=== 監護者性交等罪(2017年創設) === |
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== 通説・判例 == |
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{{anchors|監護者性交等}} |
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{{言葉を濁さない|section=1|date=2010年10月}} |
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性[[虐待]]の実情を鑑み、関係性を利用した強姦の中でも特に被害者の拒否が難しいと考えられることや、その後の人生に与える影響の深刻さから、「'''監護者性交等罪'''([[b:刑法第179条|刑法179条]]2項)」「'''監護者わいせつ罪'''([[b:刑法第176条|刑法176条]])」が新設された<ref name="nichibenren2016" /><ref name="nhk128" /><ref name="ogawa20191027">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/5a074f4d886c5d542eeb14c0fc2b5dc6c79d5138 |title=7年ぶりに会った娘に性的行為に及んだ実父「監護者わいせつ」にならず 被害者が直面する「法の壁」 |publisher =Yahoo!(小川たまか) |date=2019-10-27 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。「監護者」とは、親などの生活や生計を共にし、保護・被保護、依存・被依存の関係にある者を監護する者のことである<ref name="nhk128" />。これにより、監護者(実親や[[養親]]、[[児童養護施設|養護施設]]の職員など子どもを監護する立場の人)が、18歳未満の子どもが自分の言葉を信じていることを利用したり、生活の面倒をみているという立場を利用して性交やわいせつな行為をした場合は、「暴行・脅迫」がなく、子どもの同意がある場合も罪に問われることになった<ref name="nichibenren2016" /><ref name="nhk128" /><ref name="ogawa20191027" />。刑法改正前は、親子などの監護者と被監護者の間では、「暴行・脅迫」がない場合は[[強姦]]罪等よりも量刑が軽い[[児童福祉法]]違反(淫行、10年以下の懲役または300万円以下の罰金)で処分される例が多かったが、この法改正により強制性交等罪と同じく5年以上20年以下の[[有期刑|有期]][[懲役]]という重い罰則を科すことが可能となった<ref name="ndl962" /><ref name="ASR5Z5FP">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/ASR5Z5FPRR5RPTIB008.html |title=監護者性交罪「身分なき共犯」を適用 親ではない男を起訴 松江地検 |publisher =朝日新聞 |date=2023-05-30 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref name="3keys-d01">{{Cite web |url=https://3keys.jp/issue/d01/ |title=日本は性犯罪に寛容? ~性交同意年齢は13歳、主要国で最低 |publisher =認定NPO法人3keys |accessdate=2023-06-28}}</ref>。ただし、「監護者」は、同居して子どもの身の回りの世話をしている者に限定されており、その範囲が非常に狭いことが指摘されている<ref name="ndl962" /><ref name="ogawa20191027" />。部会における議論では、被害者に対して強い影響力を持つ[[教員|教師]]、[[スポーツ]][[指導者]]、[[雇用|雇用主]]等も対象に含めるべきとの意見が出たが、具体的な事情を考慮すると規定が曖昧化しかえって抜け道が生じかねない等の理由から、改正法案には含まれなかった<ref name="ndl962" />。被害者団体や支援者らは、そもそも「『暴行・脅迫要件』の立証が課せられる『[[性交同意年齢]](13歳、性行為への同意を自分で判断できるとみなす年齢)』が他国と比べても低すぎること」「監護者以外であっても、地位・関係性を利用した性加害をした場合には、『暴行・脅迫』が無くても罪に問えるように法改正すること」などを求めている<ref name="ogawa20191027" />。2019年の[[フラワーデモ]]のきっかけとなった事案では、父親が精神的支配下に置いていた娘(19歳)の意思に反して性交し、「暴行・強迫要件」による「抗拒不能」にあたらないとして1審で無罪判決になっている<ref name="nhk20201113" /><ref name="west2019">{{Cite web |url=https://www.westlawjapan.com/column-law/2019/190509/ |title=第166号 刑法178条2項の「心理的抗拒不能」の意義 ~名古屋地裁岡崎支部平成31年3月26日判決 準強制性交等被告事件~ |publisher =ウエストロー・ジャパン 株式会社 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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前述の通り、強制性交等罪の暴行・脅迫については「相手方の抗拒を著しく困難ならしめる程度のものであれば足りる」として、[[強盗罪]]にいう暴行・脅迫のような「相手方の抗拒を不能ならしめる程度」までの強度でなくともよいとする(最判昭24年5月10日[[刑集]]3巻6号711頁)。現在の判例・解釈の主流は、この判決を基本にしたものがほとんどとなっている。 |
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<!--(少なくとも前記判例を読む限りこのようなニュアンスは全く読み取れず、この文章では理解に苦しむ。復活させる場合は詳しく加筆求む)しかしながら、この判例は「女性側にも責任がある」とのニュアンスが強く、強姦が女性の性的自由を冒す非常に重要な人権侵害だという認識に欠けるとして、国内外の法曹関係者や有識者・[[フェミニスト]]から強い批判を浴びている。これを受け、--> |
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=== 罪数論 ===<!-- ここでは混同のおそれはないので読み替えは必要なし --> |
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この監護者性交等罪の創設にあたっては、[[日本弁護士連合会]](日弁連)が、「親子間で真摯な性交(子どもがその意味を理解し同意する性交)がないとは言えない」として反対し、被害者支援57団体は「子どもは保護して育ててもらっている親にノーと言えるのだとさえ思っていない」「何をしているのかを理解できず、怖さのあまり、抵抗することも拒否を示すこともできなかった」と抗議を行った<ref name="nichibenren2016">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8fd3efc57e65f5e58c1d686ea786155c0e62a32b |title=性犯罪の厳罰化に日弁連が一部反対の意見書 被害者支援57団体が抗議へ |publisher =Yahoo!(小川たまか) |date=2016-11-15 |accessdate=2023-06-26}}</ref><ref name="moj1316277" /><ref name="CLP20230619" />。 |
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* 強盗犯人が強制性交等し、よって負傷させた場合、[[強盗・強制性交等罪|強盗強姦罪]]の[[単純一罪]]である(大判昭和8年6月29日刑集12巻1269頁)。 |
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* 強姦犯人が強姦後に強盗の故意を生じて金品を強取した場合、強姦罪と[[強盗罪]]の[[併合罪]]となる(最判昭和24年12月24日刑集3巻12号2114頁)。 |
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* 強盗犯人が強姦をし、故意に殺害したときは、[[強盗殺人罪]]と強盗強姦罪の[[観念的競合]]となる(大判大正10年5月13日刑集14巻514頁)のが通説であるが、所論がある。詳細は「[[強盗・強制性交等罪]]」を参照。 |
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=== 2017年の改正の課題 === |
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* 強制性交等罪の「暴行・脅迫」の要件が据え置かれた<ref name="bunshun36536" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="nhk13sai" />。強制性交等罪は、13歳未満の場合は、「暴行・脅迫」がなくても、その事実が立証できれば犯罪となるが<ref name="bunshun36536" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="nhk13sai">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0026/topic029.html |title=性交同意年齢とは?なぜ13歳?世界では…<用語解説> |publisher =NHK |date=2021-10-01 |accessdate=2023-02-10}}</ref>、13歳以上の場合には、「同意していないこと」に加え、加害者が「暴行や脅迫」して犯行に及んだことや、「抵抗できない状態(抗拒不能)につけ込んだ」ことを証明しなくてはならない<ref name="nhk-k100141" /><ref name="nhk13sai" /><ref name="bunshun36536" />。また、犯罪が成立するには、加害者が「被害者の同意がないことや、抗拒不能を認識していること」が必要であり、この認識がなければ、故意が否定されて無罪となることがある<ref name="safeprom2023" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="bunshun36536" /><ref name="ASN3D51MMN" />。この刑法では、どのような行動が犯罪となり、どのような行動なら犯罪とならないのかの基準が明確ではなく、裁判所は証拠から「経験則」に基づいて事実認定をするため、裁判官の「経験則」が異なると、同じ証拠でも異なる判決になっていた<ref name="ASR230J41R1">{{Cite web |url=https://www.asahi.com/articles/ASR230J41R10UTIL007.html |title=性犯罪規定、大幅見直しへ 強制性交罪や性交同意年齢 法制審要綱案 |publisher =朝日新聞 |date=2023-02-03 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref name="bengo4-9625">{{Cite web |url=https://www.bengo4.com/c_1009/n_9625/ |title=性犯罪「無罪判決」相次ぐ 「判断には被害者心理の理解が不可欠」専門家が訴え |publisher=弁護士ドットコム |date=2019-05-12 |accessdate=2023-02-07 }}</ref><ref name="mai20190531">{{Cite web |url=https://mainichi.jp/articles/20190531/ddm/003/040/022000c |title=性暴力事件、相次ぐ無罪判決 「抵抗不能」立証が壁 |publisher =毎日新聞 |date=2019-05-31 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref name="bunshun-kurume">{{Cite web |title=久留米準強姦が逆転有罪 裁判所の「経験則」に変化の兆しか |url=https://bunshun.jp/articles/-/35655 |website=文春オンライン |access-date=2023-02-09 |last=らめーん}}</ref><ref name="ASN3D51MMN">{{Cite web |title=娘に性的暴行、父親に逆転有罪 懲役10年 名古屋高裁|url=https://www.asahi.com/articles/ASN3D51MMN1FOIPE013.html |website=朝日新聞デジタル |date=2020-03-12 |access-date=2023-02-09 }}</ref><ref name="look17419647">{{Cite web |title=12歳娘に性的暴行の父親に逆転有罪判決「一審は評価を誤り」静岡地裁での無罪判決を破棄 |url=https://look.satv.co.jp/_ct/17419647 |website=LOOK |publisher=[[静岡朝日テレビ]]|access-date=2023-02-09 }}</ref>。裁判官の判断が予測できないため、[[監視カメラ]]や[[録音]]、病院の診察内容や診断書等の客観的な「暴行・脅迫」の強い証拠が無い場合、検察は起訴に消極的で、警察は[[被害届]]を受けることに消極的である<ref name="news185_3" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="bunshun36536" /><ref name="rippou_chousa2020" /><ref name="bengo4-9625" /><ref name="shugiin198" /><ref name="yahoo20191130" /><ref name="moj001318165" /><ref name="gov-uk">{{Cite web |url=https://www.gov.uk/government/publications/information-for-victims-of-rape-and-sexual-assault-in-japan/japan-information-for-victims-of-rape-and-sexual-assault |title=Japan: information for victims of rape and sexual assault |publisher =駐日英国大使館 |date=2023-01-26 |accessdate=2023-02-26}}</ref>。性被害者の当事者団体「[[Spring_(一般社団法人)|一般社団法人Spring]]」の調査では、事件を警察に相談した208人のうち、被害届が受理されたのは約半数の104人で、うち14人が検察で不起訴になり、裁判で有罪になったのは8人だった<ref>{{Cite web |url=https://www.moj.go.jp/content/001331610.pdf |title= 性被害の実態調査 アンケート 公訴時効についての報告 |publisher =一般社団法人 Spring |date=2020-10-14 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。性暴力救援センター「SARC」の調査ではセンターに相談した人のうち、警察へ被害届を出したり相談したのは半数以下であり、SARCが警察へ同行支援したケースでは、被害届の不受理が25%、不起訴5.5%、有罪判決2.7%で、被害届を受理しない理由では「暴行・脅迫要件の壁」が目立っていた<ref name="shugiin198">{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419820190515016.htm |title=第198回国会 法務委員会 第16号(令和元年5月15日(水曜日)) |publisher =衆議院 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="yahoo20191130">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/8cba6ab57d4d2a7cb9fad69981030e5f8c01d847 |title=支援団体「被害届の不受理が25%」 実態を明らかにして性犯罪刑法改正の議論を |publisher =Yahoo! |date=2019-11-30 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。法務省の調査では、不起訴処分(嫌疑不十分)になった548件のうち、強制性交罪の不起訴が380件で、内訳は「暴行・脅迫があったと認めるに足りる証拠がない(134件)」「暴行・脅迫が被害者の反抗を著しく困難にさせる程度であったと認めるに足りる証拠がない(54件)」などとなっていて、強制性交罪の不起訴のうち52%が「暴行・脅迫要件」を満たさずに不起訴になっていた<ref name="moj001318165">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001318165.pdf |title=性犯罪に係る不起訴事件調査 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001323986.pdf |title=性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキング グループ取りまとめ報告書概要 資料5-1 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="nhk-topic040" />。 |
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{{独自研究|section=1|date=2015年8月6日 (木) 23:45 (UTC)}} |
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* [[公訴時効]]が短い。強制性交等罪の時効は10年だが、被害者が自分の経験を人に伝えられるまでには長い時間がかかる<ref name="nhk128" />。 |
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* 被疑者・被告人となった男性【人】が合意(いわゆる和姦【和合】)であったと主張する場合、被害者および検察側が暴行・脅迫の事実や、被害者が抵抗した事実の立証を強いられる困難に関する論議は尽きていない。 |
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* [[監護者性交等罪|監護者]]の範囲が狭い<ref name="nhk128" /><ref name="biglobe110000">{{Cite web |url=https://ashita.biglobe.co.jp/entry/2022/02/01/110000 |title=私たちに大切な性に関するコミュニケーション、「性的同意」 |publisher =あしたメディア by BIGLOBE |date=2022-02-01 |accessdate=2023-07-02}}</ref>。日本には教師と生徒、上司と部下、医者と患者、宗教指導者と信者などの「地位・関係性を利用した性加害」を裁ける類型がないため、対等な関係性でない2者間の力関係が考慮されずに裁かれている<ref name="nhk128" /><ref name="moj1316277" /><ref name="fairs2020" />。「地位・関係性を利用した性加害」は、「居場所・仕事を失うかもしれない」などの不安から抵抗することが困難であり、暴行や脅迫がなくても性暴力を行えるという実態を踏まえる必要がある<ref name="nhk128" /><ref name="moj1316277" /><ref name="fairs2020" />。 |
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* 性行為に至る経緯を詳細に調査しないと、合意の有無を判断することは難しい。また、性行為が行われる状況では、通常、目撃者が少ないといった問題もある。 |
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* [[性交同意年齢]](性行為の意味を理解し、同意を自分で判断できるとみなす年齢)が、[[明治時代]]の刑法のまま13歳で据え置かれた<ref name="nhk13sai" />。 |
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* [[身分犯|身分]]が関わる罪(法定性交等罪や監護者性交等罪など)については、被害者の年齢、身分もしくは誰何を知らず、かつ知らなかった事に過失が無いような場合(誤信していた場合など)や、被害者が年齢を偽り、または身分を隠しもしくは偽った場合。ただし、泥酔や薬物等により前後不覚に陥り、それがために[[身分犯|身分]]が関わる罪を犯した場合は[[原因において自由な行為]]の法理が適用され、故意を阻却しないと考えられる。 |
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* [[配偶者]](夫婦)等間の「強制性交等罪」について明文化されていない<ref name="sarc-tokyo">{{Cite web |url=https://sarc-tokyo.org/wp-content/uploads/2021/03/SARC_T_Guide.pdf |title=性暴力被害者支援ガイド |format=PDF |publisher=性暴力救援センター・東京 (SARC東京) |accessdate=2023-02-26}}</ref><ref name="ogawa20191027" />。 |
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*「男性器の挿入」が条件で、指や器具、異物の挿入による性暴力が対象にならない<ref name="fairs2020" /><ref name="huf2020-09-23">{{Cite web |url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f69aa19c5b6a9b19b3e0629 |title=レイプ被害の成立要件「男性器の挿入」。刑法が「実態に見合っていない」被害者らが訴える |publisher =huffingtonpost |date=2020-09-23 |accessdate=2023-06-27}}</ref>。実際に起きている性被害は、男性器を挿入されることだけではなく、特に性的マイノリティーの被害は、男性器が介在しないこともある<ref name="fairs2020" />。当事者などは、「性器規定」を撤廃し、「指や器具等による性暴力」を規定することを求めている<ref name="fairs2020" /><ref name="huf2020-09-23" /><ref name="mainiEN20210403">{{Cite web |url=https://mainichi.jp/english/articles/20210402/p2a/00m/0na/041000c |title=Some rape victims not covered by Japanese law that disregards gender diversity |publisher =THE MAINICHI NEWSPAPERS |date=2021-04-03 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="savvytokyo20191004">{{Cite web |url=https://savvytokyo.com/4-japanese-laws-that-desperately-need-to-be-amended-for-women/ |title=4 Japanese Laws That Desperately Need To Be Amended For Women |publisher =savvytokyo |date=2019-10-04 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="fairs2020" />。 |
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*「障害に乗じた性暴力」を防ぐ規定がなく、準強制性交等罪の構成要件である「[[責任能力#刑法上の責任能力|心神喪失]]・抗拒不能」に乗じたと解釈して、処罰されている<ref name="ASP6G6W75P" />。しかし、障害によっては性暴力自体を認識できなかったり、立証することが難しく、施設関係者や指導的な立場の人との力関係が背景にあることもある<ref name="ASP6G6W75P" />。[[発達障害]]や[[知的障害]]などのある人は性暴力に遭いやすく、障害のある人は、ない人の約2 - 3倍、性暴力を経験している<ref name="change20181211" /><ref>{{Cite web |url=http://allatanys.jp/blogs/18093/ |title=障がいのある子どもの性被害 法整備を急げ |publisher =あらたにす |date=2022-08-20 |accessdate=2023-06-30}}</ref>。性暴力被害者の支援団体は、「地位・関係性に基づく性犯罪として『被害者としての障害児/障害者』の概念を刑法に入れるよう」せめて「『準強制性交等罪』の『抗拒不能』の要件に『被害者が障害児/障害者であること』を盛り込むよう」求めている<ref>{{Cite web |url=http://disabled.shiawasenamida.org/ |title=障がい児者への 性暴力に対する要望 |publisher =特定非営利活動法人しあわせなみだ |accessdate=2023-06-30}}</ref><ref name="ASP6G6W75P">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/ASP6G6W75P6GOIPE02B.html |title=「障害に乗じた性暴力」防げ 刑法改正求める署名を提出 |publisher =朝日新聞 |date=2021-06-14 |accessdate=2023-06-30}}</ref><ref name="change20181211">{{Cite web |url=https://www.change.org/p/障がい特性を踏まえた刑法性犯罪改正を |title=障がい特性を踏まえた刑法性犯罪改正を! |publisher =change.org |date=2018-12-11 |accessdate=2023-06-30}}</ref>。 |
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*刑法改正にあたり、検討会の委員からは「性犯罪に対する対応としては刑法の規定の改正以外にもいろいろある、というより、むしろそちらの方が中心であるべき」「犯罪への対策、その最善のものは社会の在り方のほうを変えること」という発言があり、刑法改正に加え、[[性暴力]]防止のための教育、被害者支援のための[[性暴力#ワンストップ支援センター|ワンストップ支援センター]]の拡充や[[刑事訴訟法#日本の刑事手続|刑事裁判]]における被害者支援の充実等、社会の様々な場面での性犯罪対策が求められた<ref name="ndl962" />。 |
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=== 夫婦間の性的DV === |
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[[File:Purple_ribbon.svg|right|100px|thumb|[[ドメスティックバイオレンス]]の認識を広げるための[[:en:List_of_awareness_ribbons|パープルリボン]]]] |
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=== 平成16年改正まで === |
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2017年の法改正では刑法に明文化されなかったが、現状では夫婦間であっても、[[ドメスティックバイオレンス]](DV、[[家庭内暴力]])に該当する強制性交の罪が問われるという考え方が有力であり、[[内閣府]]は「『嫌がっているのに性的行為を強要する』『[[人工妊娠中絶|中絶]]を強要する』『[[避妊]]に協力しない』といったものは、夫婦間の性交であっても、[[b:刑法第177条|刑法第177条]]の強制性交等罪に当たる場合があります(夫婦だからといって、暴行・脅迫を用いた性交が許されるわけではありません)」と説明している<ref>{{Cite web |url=https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02.html#seiteki |title=ドメスティック・バイオレンス(DV)とは |publisher =内閣府 |accessdate=2023-02-10}}</ref><ref name="nhk20220121">{{Cite web |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220121/k10013434831000.html |title=妻が夫の求めに応じるのは当たり前? 夫婦の間に潜む「性的DV」 |publisher =NHK |date=2022-01-21 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref name="news185_3">{{Cite web |url=https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2019/05/post-185_3.php |title=「私を犯した夫を訴える...」 夫婦間レイプとの向き合い方をフランスと日本から考える |publisher=Newsweek |date=2019-05-23 |accessdate=2023-02-07 }}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www3.nhk.or.jp/news/special/adult-age-reduction/featured-articles/detail/detail_22.html |title=「感情を無にして応じた」 性的DVを受けた女性が語ったこと |publisher =NHK |date=2022-08-31 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。 |
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<!---たとえば金銭的な犯罪が人間の尊厳にかかわる犯罪よりも刑が重いことなどがその理由として挙げられている。---> |
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[[戦前]]は「[[夫婦]]間で強姦罪は成立しない」とする否定説が通説であり、その後も[[家父長制]]よる[[女性差別]]的な価値観やプライベートな問題であることなどから、夫婦間の強制性交の問題が語られることは少なかった<ref name="news185_3" />。そのような中で、徐々に「強姦罪が夫婦間で成立するか」という議論がされ、裁判でも争われるようになった<ref name="news185_3" />{{Refnest|group="注釈"|1986年、[[鳥取地方裁判所]]判決は、夫婦間における強姦について「婚姻が破綻して夫婦たる実質を失い、名ばかりの夫婦にすぎない場合にはもとより、夫婦間に所論の関係はなく、夫が暴行又は脅迫をもって妻を姦淫したときは強姦罪が成立する」と認定した<ref>{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001130514.pdf |title=配偶者間での強姦を成立させた裁判例等 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001329111.pdf |title=配偶者間において強姦罪(改正前の刑法177条前段)の成立を認めた裁判例 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-02-07}}</ref>。[[2007年]]に[[東京高等裁判所]]は、「暴行・脅迫を伴う場合には、適法な権利行使とは認められず、強姦罪が成立する」と判決した<ref name="news185_3" />}}。 |
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政府・与党のプロジェクトチームは2003年9月25日に会合を開き、 |
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# 強姦罪の法定刑を「2年以上の懲役」から「3年以上の懲役」に引き上げる(2年と3年の差は、執行猶予との関係で意味を持つことを期待してのものであり、3年を超過すれば執行猶予がなくなる<ref>3年ちょうどで、初犯の場合だと執行猶予5年を言い渡すこともある。</ref>点で大きな差が生まれる。刑法25条参照。) |
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# 集団強姦罪を新設し、4年以上の懲役とする |
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2023年の法改正で、配偶者(夫婦)間の不同意性交等の罪が成立することが、刑法に明文化された<ref name="g21109058-huhu" />。 |
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などを盛り込んだ、刑法改正案の検討に着手した。これは、[[自由民主党 (日本)|自民党]]の元総務庁長官[[太田誠一]]が、[[与党]]3党の女性議員らに呼びかけて立ち上げたもの。 |
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=== 2019年3月の無罪判決 === |
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同9月30日の参議院本会議において、当時の[[内閣総理大臣]][[小泉純一郎]]は、強姦罪の罰則強化と集団強姦罪の創設について理解を示しながらも、具体的方策については触れなかった。 |
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{{see also|フラワーデモ}} |
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[[ファイル:Flower_demo_Tokyo_2020-11-11.jpg|サムネイル|[[フラワーデモ]]東京の参加者が作ったメッセージボード]] |
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2019年3月、性犯罪に関する無罪判決が4件相次ぎ、刑法の要件が厳しすぎるため加害者が罪を免れているとして、各地で被害の実態を訴える「[[フラワーデモ]]」が始まるきっかけとなった<ref name="ASN6C6J2LN">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/ASN6C6J2LN6CUTIL03M.html |title=「あなたに問題」乗り越え 性暴力の被害者、国を動かす |publisher =朝日新聞 |date=2020-06-11 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref name="nhk20201113">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0014/topic028.html |title=娘への性的暴行 父親の有罪確定へ 最高裁 【vol.103】 |publisher =NHK |date=2020-11-13 |accessdate=2023-02-10}}</ref><ref name="yahoo-tama202012_1">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c08dc20139e71a66f09a905d8d31a055197ad430 |title=実子への強姦事件、父親に逆転有罪判決 フラワーデモきっかけの一件 |publisher =Yahoo! |date=2022-12-21 |accessdate=2023-02-10}}</ref>。特に、19歳の実娘への性的暴行罪が問われた判決では、娘の同意がないと認めながら無罪としたことから大きな波紋を呼んだ<ref name="nhk20201113" /><ref name="bunshun36536" /><ref name="ASN3D51MMN" />。この4件のうち1件は検察官が控訴せず無罪が確定したが、3件は控訴により逆転有罪となった<ref name="ASN3D51MMN" /><ref name="mai20190531" /><ref name="bunshun36536" /><ref name="sankei20210917">{{Cite web |url=https://www.sankei.com/article/20210917-FVWFQD6W3RLCBNBHGZ3LTVV6W4/ |title=長女への性的暴行、父親の逆転有罪確定へ 最高裁 |publisher =産経新聞 |date=2021-09-17 |accessdate=2023-02-10}}</ref>。 |
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* 3月12日、[[テキーラ]]などを大量に飲まされ、酩酊状態で性交をされた準強姦罪が、「女性は『抗拒不能』であったが、被告人は女性が抗拒不能であったことの認識がなく、性交について承諾ありと誤信した」として、故意が否定されて無罪判決になった<ref name="bunshun-kurume" />。2020年2月5日、控訴審が行われ、前回と同じ証拠で逆転有罪判決となった<ref name="bunshun-kurume" />。 |
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* 3月19日、[[静岡地方裁判所]]の裁判員裁判で審議された強制性交等致傷罪が、「被告人の暴行が女性を抵抗困難にした」と認定されたものの、「被告は女性が抵抗困難であったことの認識がなく、故意が認められない」として無罪判決になった<ref name="yahoo-tama202012_2">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/39a714735e16cb53471d35a80d3c06cbaca60aca |title=高裁が被害者の証言に「高度の信用性」を認めた理由ー12歳実子への強姦、父親に逆転有罪判決 |publisher =Yahoo! |date=2022-12-22 |accessdate=2023-02-10}}</ref><ref name="mai20190531" /><ref name="safeprom2023" />。この裁判では検察官が控訴せず、無罪が確定した<ref name="ASN3D51MMN" /><ref name="mai20190531" /><ref name="safeprom2023" />。 |
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* 3月26日、事件当時19歳の実娘が父親に性交をされた準強制性交等罪が、「娘の同意がなく長年の[[虐待]]で父親の精神的支配下に置かれていた」と認定されたものの「抗拒不能だったとはいえない」として無罪判決になった<ref name="nhk20201113" /><ref name="bunshun36536" /><ref name="ASN3D51MMN" />。長女は、中学2年生の頃から性交を含む性的虐待を受け続け、殴る蹴るなどの暴行の存在も認定されていた<ref name="nhk20201113" /><ref name="bunshun36536" />。2020年3月12日、控訴審が行われ、「娘は性的虐待を受け続けたうえ父親から学費や生活費の返済を迫られるなど、要求を拒否できない心理状態だった。性欲のはけ口にした卑劣な犯行で被害者が受けた苦痛は極めて重大で深刻だ」として逆転有罪判決となった<ref name="nhk20201113" /><ref name="bunshun36536" /><ref name="ASN3D51MMN" />。父親は上告したが、棄却され有罪が確定した<ref name="nhk20201113" />。 |
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* 3月28日、事件当時12歳の実娘が父親に性交をされた[[強姦]]罪が、「被害者の証言は信用できない」として、行為があったこと自体が認められず、無罪判決になった<ref name="yahoo-tama202012_2" /><ref name="sankei20210917">{{Cite web |url=https://www.sankei.com/article/20210917-FVWFQD6W3RLCBNBHGZ3LTVV6W4/ |title=長女への性的暴行、父親の逆転有罪確定へ 最高裁 |publisher =産経新聞 |date=2021-09-17 |accessdate=2023-02-10}}</ref>。2020年12月21日、控訴審が行われ、「1審は証拠の評価を誤り、不合理な認定をした」「卑劣で悪質な犯行で常習性も認められる」として逆転有罪判決となった<ref name="look17419647" /><ref name="yahoo-tama202012_2" /><ref>{{Cite web |url=https://www.sankei.com/article/20201224-75YFFMCOBBKWJM5L65CHBTJ5FI/ |title=12歳長女に性的暴行、父親側が上告 |publisher =産経新聞 |date=2020-12-24 |accessdate=2023-02-10}}</ref>。父親は上告したが、棄却され有罪が確定した<ref name="look17419647" /><ref name="yahoo-tama202012_2" /><ref name="safeprom2023" />。 |
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===「凍りつき」についての指摘=== |
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その後、2004年(平成16年)12月の刑法改正で法定刑が引き上げられ、集団強姦等(第178条の2)の規定が設けられた(平成29年法改正で条文廃止)。 |
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{{main|{{仮リンク|レイプまひ|en|Rape_paralysis}}}} |
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強制性交等罪の「暴行・脅迫要件」は、「性行為を犯罪として処罰するには、『[[性的同意#ノー・ミーンズ・ノー|相手が同意していないこと]]』に加えて、加害者が被害者に暴行や脅迫を加えるなどして、『抵抗できない状態につけこんだ』ことが立証されなくてはならない」とあり、司法の場では「被害者が抵抗できたはず」という考えが前提になっている<ref name="nhk-koori202203">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0026/topic049.html |title=神経生理学で読み解く 性暴力被害の“凍りつき”<解説> |publisher =NHK |date=2022-03-04 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。しかし、実際に[[性暴力]]被害を受けたとき、「声が出せない」「体が動かない」「頭の中が真っ白になる」「記憶がない」という『[[:en:Rape_paralysis|凍りつき]]([[:en:Freezing_behavior|フリーズ]])』の反応がおこることが少なくない<ref name="nhk-koori202203" /><ref name="yahoo8881" /><ref name="rippou_chousa2020">{{Cite web|url=https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2020pdf/20200708051.pdf |title=被害の実態に即した性犯罪施策の課題(2) |format=PDF |publisher =立法と調査2020. 7 No. 425 参議院常任委員会調査室・特別調査室 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。[[スウェーデン]]の緊急レイプセンターによると、被害者の7割の人は、恐怖で体が硬直するという調査がある<ref name="vogue20220201" />。また、被害を最小限に抑えるための防衛反応として、速やかに、あるいは積極的に行為に応じてしまう「[[Wikt:迎合|迎合反応]]」が起こることや、身体から意識が切り離される「[[解離 (心理学)|解離]]」が起こることもある<ref name="yahoo8881" /><ref name="moj1316344">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001316344.pdf |title=性犯罪に関する施策検討に向けた 実態調査ワーキンググループ (第10回) |format=PDF |publisher =法務省 |date=2019-10-28 |accessdate=2023-07-01}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://hrn.or.jp/reports/3-9開催ウェビナー「yes-means-yesの実現を求めて」〜国際女/ |title=3/9開催ウェビナー「Yes Means Yes!の実現を求めて」〜国際女性デーイベント〜 |publisher =ヒューマンライツ・ナウ |date=2022-05-31 |accessdate=2023-07-01}}</ref>。戦うか逃げるか、凍りつくか、迎合、解離するかは、体の無意識の反応であり、理性や意志でコントロールできるものではないとされる<ref name="nhk-koori202203" /><ref name="nhk-topic08">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic084.html |title=“同意のない性的行為”は処罰につながる? 弁護士が解説 刑法改正の議論 |publisher =NHK |date=2022-11-04 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref name="moj1316344" /><ref>{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001364351.pdf |title=法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会 第3回会議 議事録 |format=PDF |publisher =法務省 |date=2021-12-27 |accessdate=2023-07-01}}</ref>{{Refnest|group="注釈"|2021年12月に出版された『なぜ私は凍りついたのか [[:en:Polyvagal_theory|ポリヴェーガル理論]]で読み解く性暴力と癒し』の著者は、「被害に遭ったときに抵抗できたかどうかは、人間の生理的反応であり、それを理解してもらうことが、性暴力についての刑法改正の突破口にもなりうる」と述べている<ref name="nhk-koori202203" />}}。 |
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=== 不同意性交等罪を求める動き === |
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=== 夫婦間、DVとの関連 === |
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{{see also|性的同意|{{仮リンク|法律における性的同意|en|Sexual_consent_in_law}}}} |
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夫婦間における強姦について「婚姻が破綻して夫婦たる実質を失い、名ばかりの夫婦にすぎない場合にはもとより、夫婦間に所論の関係はなく、夫が暴行又は脅迫をもって妻を姦淫したときは強姦罪が成立する」と認定した[[1986年]]([[昭和]]61年)の[[鳥取地方裁判所]]判決がある。 |
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[[File:Only Yes Means Yes Campaign.png|thumb|"[[性的同意#イエス・ミーズ・イエス|イエス・ミーンズ・イエス]]"キャンペーンのロゴ]] |
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[[File:Consent-based and coercion-based sexual violence legislation world map.svg|thumb|世界の[[:en:Sexual consent in law|法律における性的同意]] |
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{{legend|#0000FF|性犯罪の成否は[[性的同意#ノー・ミーンズ・ノー|「同意の有無」]]、夫婦間の強姦が違法}} |
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{{legend|#00AA00|性犯罪の成否は「暴行・脅迫の有無」、夫婦間の強姦が違法}} |
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{{legend|#ff00ff|性犯罪の成否は「同意の有無」、夫婦間の強姦が合法}} |
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{{legend|#ff0000|性犯罪の成否は「暴行・脅迫の有無」、夫婦間の強姦が合法}} |
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[[2014年]]に発効した[[イスタンブール条約]](女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する[[欧州評議会]]条約)は、「同意に基づかない性的行為を処罰する規定」を設けるよう締約国に求めている<ref name="yahoo8881" />。多くの欧米諸国では、レイプ罪や強制わいせつ罪は「被害者の同意がない(またはその能力がない)状態での性行為」を成立要件としている<ref name="3keys-d01" />。そして、「[[性的同意#ノー・ミーンズ・ノー|ノー・ミーンズ・ノー]](No means No)=同意のない性行為を処罰する」型だけでなく、「[[性的同意#イエス・ミーズ・イエス|イエス・ミーンズ・イエス]](Yes means Yes)=相手の自発的な参加を確認しない性行為を処罰する」型の性的同意を採用をする国や地域が広がっている<ref name="yahoo8881" /><ref name="bbc20180524">{{Cite web |url=https://www.bbc.com/news/world-europe-44230786 |title=Sweden approves new law recognising sex without consent as rape |publisher =BBC |date=2018-05-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.jcp.or.jp/jcp_with_you/2019/03/nomeansno.html |title=ドイツの性刑法調査に学ぶ「NOmeansNO!」日本の刑法見直しに向けて |publisher =女性のひろば 2018年4月号 |accessdate=2023-02-26}}</ref><ref name="nhk-topic095">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic095.html |title=“同意がない性行為はすべて性的暴行に問える” スペイン 刑法改正の背景に何が |publisher =NHK |date=2023-02-03 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。[[スウェーデン]]や[[スペイン]]、[[フィンランド]]、[[デンマーク]]、[[アイスランド]]などは「Yes means Yes」型の刑法であり、相手が積極的な[[性的同意|同意]]を示さないまま行った性行為はすべて違法とされる<ref name="3keys-d01" /><ref name="yahoo8881" /><ref>{{Cite web |url=https://www.bbc.com/japanese/61603726 |title=性的同意を重視する法律、スペイン議会が承認 性暴力被害を訴えやすく |publisher =BBC |date=2022-05-27 |accessdate=2023-07-01}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://hrn.or.jp/news/22821/ |title=【イベント報告】「YES MEANS YES! 不同意性交に関する刑法規定~デンマーク&スペイン編~」 |publisher =ヒューマンライツ・ナウ |date=2022-10-31 |accessdate=2023-07-01}}</ref><ref name="vogue20220201">{{Cite web |url=https://www.vogue.co.jp/change/article/discussing-sexual-violence-for-the-future-1 |title=No Means No, Yes Means Yes!──伊藤詩織、北原みのり、岸本学、田中俊之と考える「性暴力」。【前編】 |publisher =vogue |date=2022-02-01 |accessdate=2023-07-03}}</ref><ref name="Spring20230616" />。 |
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* [[2020年]]、[[日本学術会議]]は、「刑法改正にあたっては、国際人権基準に則り、諸外国の刑法改正を参考にして、少なくとも『同意の有無』を中核に置く規定(『No means No』型)に刑法を改める必要がある。その上で、「性的自己決定権』の尊重という観点から、可能な限り『Yes means Yes』型(スウェーデン刑法)をモデルとして刑法改正を目指すことが望ましい」と提言した<ref>{{Cite web|url=https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t298-5.pdf |title=「同意の有無」を中核に置く刑法改正に向けて ―性暴力に対する国際人権基準の反映― |format=PDF |publisher =日本学術会議 |date=2020-09-29 |accessdate=2023-07-06}}</ref>。 |
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=== 平成29年改正前規定の問題点 === |
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* [[2021年]]2月10日、性暴力被害者の支援などに携わる13団体による「刑法改正市民プロジェクト」は、同意のない性行為を犯罪とする「不同意性交等罪」の創設を求める約6万1千人の署名を[[法務省]]に提出した<ref name="ASP2C3CHKP">{{Cite web |url=https://www.asahi.com/articles/ASP2C3CHKP2BUTIL03Q.html |title=不同意性交等罪の創設求め署名提出 法務省に6万人分 |publisher =朝日新聞 |date=2021-02-11 |accessdate=2023-02-10}}</ref><ref name="Huff20210210">{{Cite web |url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60220bdbc5b6173dd2f8fd18 |title=「#同意のない性交を性犯罪に」刑法改正求める声広がる。6万筆の署名を国に提出 |publisher =HuffPost |date=2021-02-10 |accessdate=2023-02-10}}</ref>。現行の刑法では、「暴行・脅迫」や「心神喪失・抗拒不能」な状態がないと罪が成立しないため、被害者側は、「地位・関係性を利用した性犯罪」や「[[:en:Rape_paralysis|心身が硬直して動けなくなる]]」などの実態が理解されていないと批判し、「意思に反して」という点だけを構成要件とした「不同意性交罪」を求めている<ref name="ASQBS3QTGQB">{{Cite web |url=https://www.asahi.com/articles/ASQBS3QTGQBGUTIL028.html |title=「不同意性交罪」見送り 刑法改正の試案、暴行・脅迫要件を見直しへ |publisher =朝日新聞 |date=2022-10-24 |accessdate=2023-02-10}}</ref><ref name="itokazuko20220606">{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7d7f3a58ed0bdaf07e2099a1bf9045b32b3d53a2 |title=刑法改正「同意なき性交は処罰を」に暗雲? いったい、法制審議会では何が議論されているか |publisher =Yahoo! |date=2022-06-06 |accessdate=2023-02-10}}</ref>。性的行為における「同意」は、両者に対等な関係性がなければ成立しないが、日本では対等な関係性が築かれていない2人の間の性的行為においても、法が求める「暴行・脅迫要件」により抵抗の有無を被害者が問われ、不同意であったことが認められても、加害者側の「同意していたと思った」という証言によって無罪となる事態が起きている<ref name="yahoo8881" />。加害者自身、それが性暴力だという認識が無いケースも多く、同意に基づかない性的行為は犯罪として罰せられることが明確になれば、加害側の認識不足によって起こる性暴力は減っていくと見られている<ref name="yahoo8881" />。 |
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平成29年改正前の強姦罪に関する確定した判例実務では、男性器が女性器に挿入されたことをもって強姦罪の既遂とする。そのため当初から[[肛門]]に男性器を挿入することを意図した場合や、被害者が男性の場合には強姦罪は適用されず、一般により犯情が軽いとされる強制わいせつ罪にとどまる(前段につき、東京地判平成4年2月17日参照)。 |
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[[2023年]]2月24日、[[法務省]]は改正案に関し、「強制性交罪」を「不同意性交罪」に罪名変更する方針を示した<ref name="yomiuri20230223">{{Cite web |url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20230223-OYT1T50159/ |title=強制性交罪を「不同意性交罪」に罪名変更へ…「同意なしは処罰対象」を明確化 |publisher =読売新聞 |date=2023-02-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="maini20230224"/>。「意思に反して」という点だけで処罰する成立要件は「内心のみを要件にすると処罰範囲が曖昧になる」として見送ったが、要綱でまとめられた条文には「同意しない意思」との文言が使われ、被害者の意思も重視していることが示された<ref name="yomiuri20230223" /><ref name="maini20230224">{{Cite web |url=https://mainichi.jp/articles/20230224/k00/00m/040/226000c |title=強制性交罪を「不同意性交罪」に改称 刑法改正案、被害者に配慮 |publisher =毎日新聞 |date=2023-02-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。このため、被害者側は実質的に同罪を具体化した条文にあたるとして罪名変更を要請し、法務省が検討を重ねていた<ref name="yomiuri20230223" />。 |
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; 関連事件 |
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: 2003年(平成15年)7月29日、多摩地区を中心に15件の婦女暴行を繰り返した36歳(当時)の男性が、[[警視庁]]捜査一課により逮捕された。女性の肛門に男性器を挿入する手口で犯行に及んだため、強制わいせつ致傷の罪に問われたものの、強姦罪は適用出来なかった。加害者は強姦罪になるのを免れるため、肛門を狙ったと警察官に供述している<ref name="「尻」ばかり狙った前代未聞「連続暴行魔」">[https://web.archive.org/web/20030815084755/http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/20030814_21/tempo.html 「尻」ばかり狙った前代未聞「連続暴行魔」]</ref>。 |
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== 2023年の改正(不同意性交等罪に改称)== |
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=== 国際的観点からの問題点 === |
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[[2023年]]2月3日、[[法制審議会]]の部会で、性犯罪の実態に合わせた[[刑法]]改正の要綱案がまとまった<ref name="nhk-new20230203">{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20230203050431/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230203/k10013969661000.html |title=強制性交罪の構成要件など見直し 刑法改正の要綱案まとまる |publisher =NHK |date=2023-02-03 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。<br> |
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日本は、[[国際連合]]自由権規約委員会の2008年11月の最終見解<ref name="国連の自由権規約委員会の2008年10月の最終見解">[http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-1540.html 国連の自由権規約委員会の2008年11月の最終見解]</ref>のパラグラフ14で、刑法第177条の強姦罪の定義に、[[男性]]に対する強姦も含めることを求められるとともに、強姦罪を重大な犯罪として被疑者側の立証責任を回避させるよう求められた。 |
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2月24日、法務省は、「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」を統合して「'''不同意性交等罪'''」に罪名変更する案を示した<ref name="yomiuri20230223" /><ref name="jiji2900021">{{Cite web |url=https://sp.m.jiji.com/article/show/2900021 |title=「不同意性交罪」に名称変更=刑法改正案、強制性交罪から |publisher =時事通信社 |date=2023-02-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="ASR2S4DR7R">{{Cite web |url=https://www.asahi.com/articles/ASR2S4DR7R2SUTIL00X.html |title=「強制性交罪」→「不同意性交罪」に名称変更へ 法務省、刑法改正案 |publisher =朝日新聞 |date=2023-02-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="nhk10013">{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20230224072310/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230224/k10013989921000.html |title=刑法「強制性交罪」を「不同意性交罪」へ変更する案 法務省 |publisher =NHK |date=2023-02-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。<br> |
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3月14日、内閣は刑法改正案を閣議決定し、国会に提出した<ref name="kakugi20230314">[https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2023/kakugi-2023031401.html 令和5年3月14日(火)定例閣議案件 首相官邸HP]</ref><ref name="safeprom2023" /><ref name="jiji20230314">{{Cite web |url=https://sp.m.jiji.com/article/show/2909552|title=「不同意性交罪」に名称変更=刑法改正案、成立要件を具体化|publisher =[[時事通信社|時事通信ニュース]]|date=2023-03-14 |accessdate=2023-03-14}}</ref><ref name="houann1">[https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00198.html 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案]</ref>。<br>6月16日、[[国会]]で法案が可決・成立し、6月23日に[[公布]]、7月13日に施行された<ref name="nhk20230616" /><ref name="ASR7D6H">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/ASR7D6H24R7CUTIL00X.html |title=性犯罪の規定を大幅見直し「不同意性交罪」に 改正刑法、13日施行 |publisher =朝日新聞 |date=2023-07-12 |accessdate=2023-07-13}}</ref><ref name="47news20230626">{{Cite web |url=https://www.47news.jp/9508166.html |title=「不同意性交罪」7月13日施行 「性的姿態撮影罪」も新設 |publisher =共同通信 |date=2023-06-26 |accessdate=2023-06-28}}</ref>。 |
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;強制性交等罪・準強制性交等からの変更点 |
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*'''罪が成立する[[#8つの要件|8つの行為]]や状況を具体化し、「[[性的同意|同意]]のない性行為は許されない」ことを明確にした。'''この8つの行為や状況は、今までの「抗拒不能」要件の解釈として、それぞれの裁判例でゆるやかに解釈して処罰されていた事案を類型化し、判断基準となるよう明確な文言に書き出したものである<ref name="nhk-k100141" /><ref name="PolitasTV20230621">{{Cite web |url=https://www.youtube.com/watch?v=Ktj8ndklnPA&t |title=改正刑法が可決成立 不同意性交等罪実現の意味|2020年から見直しの議論が進んでいた刑法の性犯罪規定改正案が今国会で可決成立。「不同意性交等罪」実現に至る道と残る課題|ゲスト:寺町東子 |publisher =ポリタスTV |date=2023-06-21 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref name="safeprom2023" /><ref name="nhk-topic040">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/minplus/0014/topic040.html |title=「同意のない性交」犯罪化は? どうなる刑法改正【vol.115】 |publisher =NHK |date=2021-02-05 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。「抗拒不能」の解釈は、裁判官や警察官によって大きな幅があったため、判決や被害届の受理などの対応がバラついていた<ref name="nhk-topic040" /><ref name="PolitasTV20230621" />。処罰される範囲が広がったのではないが、条文の中で明文化することにより、警察官の被害届の受理、検察官の起訴、裁判官の有罪にする確率に影響を与え、処罰されるべきものが適切に処罰されるようになる可能性がある<ref name="nhk-topic040" /><ref name="PolitasTV20230621" /><ref name="safeprom2023" /><ref name="nhk-k100141" />。 |
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*'''[[公訴時効]]の延長。'''被害にあってからすぐに訴え出るのが難しいという性被害の特徴を踏まえ、不同意性交等罪について、公訴時効が10年から15年に延長された<ref name="nhk-new20230203" /><ref name="huff20230616">{{Cite web |url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64772329e4b045ce2485cc28 |title=「不同意性交等罪」を創設、性交同意年齢は引き上げ。改正刑法が成立、どう変わる? |publisher =huffingtonpost |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-24}}</ref>。被害者が未成年の場合は、被害だと認識できるまでにより時間がかかることなどから、時効の起点を18歳とする(例えば15歳で被害を受けた場合は、18歳+15年=33歳まで公訴が可能)<ref name="yomiuri20230617">{{Cite web |url=https://www.yomiuri.co.jp/national/20230617-OYT1T50068/ |title=不同意性交罪への名称変更、計8種類の行為や状況を明記…処罰しやすくなる「関係性の悪用」 |publisher =読売新聞 |date=2023-06-17 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="president69535" /><ref name="huff20230616" /><ref name="bengo16077">{{Cite web |url=https://www.bengo4.com/c_1009/n_16077/ |title=性犯罪の刑法改正「時間切れ廃案はありえない」 当事者らが訴え「今国会で成立させて」 |publisher =弁護士ドットコム |date=2023-06-02 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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[[File:Age of consent - Global.svg|thumb|alt=Map of the world's countries, with countries colored by age of consent|世界の[[性交同意年齢]]<br />{{legend inline|#00FFFF|13}} {{legend inline|#00CED1|14}} {{legend inline|#1E90FF|15}} {{legend inline|#0000CD|16}} {{legend inline|#808000|17}} {{legend inline|#32CD32|18}} {{legend inline|#FF1493|結婚しなければならない}} {{legend inline|#b3b3b3|州や行政区によって異なる/曖昧}}]] |
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*'''[[性的同意年齢|性交同意年齢]]の引き上げ。'''「性交同意年齢」(性行為を断る方法や、性行為のリスクに関する正しい知識を持っていると見なされる年齢)を、現在の「13歳以上」から「16歳以上」に引き上げた<ref name="nhk-new20230203" /><ref>{{Cite web |url=https://www.theguardian.com/world/2023/feb/21/japan-poised-to-raise-age-of-consent-from-13-in-overhaul-of-sexual-offence-laws |title=Japan poised to raise age of consent from 13 in overhaul of sexual offence laws |publisher =theguardian |date=2023-02-21 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="jiji20230314"/>。これにより、16歳未満の子どもと性的行為をすると、相手が同意していても処罰の対象になる<ref name="pilcon-consent" />。ただし、13 - 15歳については同世代間の行為は罪に問わず、5歳以上年上の人が対象になる<ref name="jiji20230314"/><ref name="nhk-new20230203" /><ref name="huff20230616" />。13歳未満に対して性的行為を行った場合は、以前と同様に、同意の有無に関わらず罪に問われる<ref name="nhk-new20230203" />。性交同意年齢の変更は、1907年に性犯罪の法律が定められてから初めてである<ref name="bbc65924722" />。 |
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*'''体の一部(指など)や物の挿入も「性交」扱いになった<ref name="huff20230616" /><ref name="tokyo257161">{{Cite web |url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/257161 |title=性行為の「挿入」規定見直し、指や物も処罰対象に「被害者の傷つき考慮された」 改正刑法 |publisher =東京新聞 |date=2023-06-17 |accessdate=2023-06-30}}</ref><ref name="g21109058">{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21109058.htm |title=第二一一回 閣第五八号 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案 |publisher =衆議院 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。'''強制性交等罪は、男性器を[[膣]]や[[肛門性交|肛門]]、[[口腔性交|口腔]]内に挿入する/させる行為を処罰対象としていたが、改正刑法では、「膣または肛門に身体の一部または物を挿入する行為」も性交と同じ扱いにすると定めている<ref name="huff20230616" /><ref name="g21109058" />。これにより、電車内の[[痴漢]]行為などで、相手の膣に指を入れた場合も強制性交の罪になり、5年以上の懲役となる<ref name="CLP20230619" /><ref name="moj001367726">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001367726.pdf |title=法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会 第4回会議 議事録 |format=PDF |publisher =法務省 |date=2022-01-26 |accessdate=2023-06-27}}</ref>。 |
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*配偶者(夫婦)間の強制性交等の罪が成立することが明文化された<ref name="g21109058-huhu">{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21109058.htm |title=第二一一回 閣第五八号 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案 |publisher =衆議院 |quote=第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛(こう)門性交、口腔(くう)性交又は膣(ちつ)若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、'''婚姻関係の有無にかかわらず'''、五年以上の有期拘禁刑に処する。|accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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*被害の[[事情聴取|聴取]]結果を録音・録画した記録媒体を、証拠として出せる特則がついた<ref name="CLP20230619" /><ref name="safeprom2023" />。 |
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*「'''[[グルーミング (性犯罪)|性的面会要求罪]]'''」が新設された<ref name="nhk-k100141" /><ref name="CLP20230619" /><ref name="ben54-257">{{Cite web |url=https://www.ben54.jp/news/257 |title=「撮影罪」「グルーミング罪」新設検討へ 子どもへの「性被害」“抑制”効果は? |publisher =弁護士JP |date=2022-12-15 |accessdate=2023-06-26}}</ref>。16歳未満の子どもに対して[[わいせつ]]目的で、「だましたり誘惑したり、お金を渡す約束などをして会うことを要求した場合や実際に会った場合」「性的な[[自分撮り|自撮り画像]]などを撮らせてSNSやメールなどで送るよう求めた場合」は罪に問われる<ref name="nhk-k100141" /><ref name="CLP20230619" /><ref name="ben54-257" />。面会や画像の「要求」で1年以下の拘禁刑か50万以下、実際に会ったり送らせた場合は2年以下の拘禁刑か100万以下の罰金刑になる<ref name="nhk-k100141" /><ref name="session20230609">{{Cite web |url=https://www.youtube.com/watch?v=ku1k1XEOz5s |title=特集『刑法改正案が廃案の危機。 性犯罪被害者らが今国会での成立を訴える理由』 |publisher =荻上チキ・Session |date=2023-06-09 |accessdate=2023-07-07}}</ref>。ただし、被害者が13 - 15歳の場合は、5歳以上の年齢差を適用の条件としている<ref name="nhk-k100141" />。 |
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*性器や下着、性交の様子などを[[盗撮]]したり、拡散することを取り締まる「'''[[性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律|性的姿態撮影罪(撮影罪)]]'''」が新設された<ref name="nhk20230616">{{Cite web |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230616/k10014101001000.html |title=「不同意性交罪」に罪名変更 改正刑法が可決・成立 参院本会議 |publisher =NHK |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="jiji20230616">{{Cite web |url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2023061600138&g=pol |title=性犯罪、成立要件を明確化 「不同意性交罪」に改称―改正刑法が成立 |publisher =時事通信社 |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="president69535">{{Cite web |url=https://president.jp/articles/-/69535 |title=「ジャニー喜多川氏性暴力疑惑で問題視」専門家が解説する"性的手なずけ"の巧妙な5つのプロセス |publisher =president |date=2023-05-19 |accessdate=2023-06-24}}</ref>。これまでは、各都道府県の[[迷惑防止条例]]違反で規制していたため、[[客室乗務員]]の航空機内での盗撮は、場所が特定できなければ取り締まることができなかった<ref name="nhk-topic079">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic079.html |title=客室乗務員を悩ませる 航空機内での盗撮 |publisher =NHK |date=2022-10-07 |accessdate=2023-07-07}}</ref><ref name="gengo4_16141" />。全国一律の法律になったことで摘発が容易になる<ref name="nhk-topic079" /><ref name="gengo4_16141">{{Cite web |url=https://www.bengo4.com/c_1009/n_16141/ |title=「悲願です」 無法地帯だった「CAの盗撮」、撮影罪の新設で処罰しやすく |publisher =弁護士ドットコム |date=2023-06-17 |accessdate=2023-07-07}}</ref><ref name="nishispo790423" />。罰則も3年以下の[[拘禁刑]]か300万円以下の[[罰金]]に統一され、盗撮画像などの提供や拡散も処罰の対象となる<ref name="nishispo790423">{{Cite web |url=https://nishispo.nishinippon.co.jp/article/790423 |title=撮影罪成立、歓迎と落胆「盗撮許さない社会に」 |publisher =西日本新聞 |date=2017-06-17 |accessdate=2023-07-07}}</ref>。 |
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*5年後に性被害の実態や社会の意識、特に[[性的同意]]についての意識も踏まえて見直しを検討することや、「不同意性交罪」の[[公訴時効|時効]]の延長について、被害申告の困難さに関する調査をするという[[附則]]が付いた<ref name="shugiin211Futai58">{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/houmu9144695215975EA2492589C000322039.htm |title=第211回国会閣法第58号 附帯決議 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議|publisher =衆議院 |accessdate=2023-07-06}}</ref><ref name="nhk20230616" /><ref name="huff20230616" /><ref name="nhk2023-05-24">{{Cite web |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230524/k10014076931000.html |title=刑法改正案 若者の性行為の規定めぐり与野党4党修正協議で合意 |publisher =NHK |date=2023-05-24 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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===2023年の改正の課題=== |
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そもそも男子に対する強姦のみが認められない場合は、[[日本国憲法第14条]]に反し、男女の本質的な扱いの不平等となり、違憲である可能性があった。 |
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性犯罪の被害者などは、改正を評価する一方で、[[公訴時効]]については、被害にあってからすぐに訴え出るのが難しいという性被害の特性から、さらなる延長・撤廃が必要だとしている<ref name="yomiuri20230617" /><ref name="sankei20230620">{{Cite web |url=https://www.sankei.com/article/20230620-J2FBDHEIERKEHCMWWQKMXQ3DOA/ |title=不同意性交罪 国民の意識に沿う改正だ |publisher =産経新聞 |date=2023-06-20 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="20230405event">{{Cite web |url=http://spring-voice.org/news/20230405event-report/ |title=「私たちを“捨象”しないで!~公訴時効見直しのための実態調査等を求める院内集会~」開催のご報告 |publisher =spring |date=2023-06-21 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。また、[[性暴力]]のない社会にするために、「何をしたら加害となり、何をされたら被害なのかについての教育の推進」「加害者への再犯防止のための支援」や、被害者に適切な支援を提供するための「相談窓口の周知」などの必要性も指摘している<ref name="gender20220617">{{Cite web|url=https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/pdf/r04_houkoku/02.pdf |title=若年層の性暴力被害の実態に関する オンラインアンケート及びヒアリング結果<概要> |format=PDF |publisher =内閣府 男女共同参画局 |date=2022-06-17 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="bbc65924722">{{Cite web |url=https://www.bbc.com/japanese/65924722 |title=日本で改正刑法が成立、レイプは「不同意性交罪」に 性交同意年齢も引き上げ |publisher =BBC |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-24}}</ref><ref name="president69535" /><ref name="hrm23928">{{Cite web |url=https://hrn.or.jp/news/23928/ |title=【声明】刑法性犯罪の改正にあたって |publisher =刑法改正市民プロジェクト |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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*[[公訴時効]]が10年から15年に延長されたが、被害者が自分の経験を認めたり、人に伝えられるまでには長い時間がかかるため、公訴時効を撤廃するか、より長くするべきと訴えている<ref name="nhk-new20230203" /><ref name="yomiuri20230617" /><ref name="sankei20230620" />。海外には時効を撤廃した国もあり、日本でも身体の[[殺人罪|殺人]]には公訴時効がない<ref name="CLP20230619" /><ref name="moj1316277" />。 |
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*[[性的同意年齢|性交同意年齢]]を「16歳以上」に引き上げる一方、13 - 15歳の場合は「5歳以上の年長者」を要件としていることについて、「5歳差は大きすぎる」という指摘や、「同年代でも、[[スクールカースト]]による性的いじめがあり、こうした現状を考慮する必要があるのではないか」という指摘がある<ref name="Spring20230616" /><ref name="nhk-new20230203" /><ref name="PolitasTV20230621" /><ref name="ntv20230516">{{Cite web |url=https://news.ntv.co.jp/category/politics/cfcbd04a04b844559d349e55e5c548ac |title=タレントのSHELLYさんが国会へ 「同意ない性行為は的確に処罰を」刑法改正案の審議で |publisher =日テレNEWS |date=2023-05-16 |accessdate=2023-07-02}}</ref>。ただし、[[附帯決議]]では「5歳差は両者に対等な関係がありえないと考える年齢差であり、5歳差未満であれば対等な関係であるとするわけではない」としており、5歳差未満であっても8類型のどれかに当てはまる場合がある<ref name="shugiin211Futai58" />。被害者団体は、5歳差要件の運用で当罰性のある行為が全て処罰されるかを調査し、必要であれば見直しを行うよう求めている<ref name="Spring20230616" />。 |
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*「[[性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律|性的姿態撮影罪(撮影罪)]]」は、[[アスリートの性的画像問題|アスリート盗撮]]が含まれないなど範囲が狭く、選手らは法整備の必要性を訴えている<ref>{{Cite web |url=https://nordot.app/1022251541670395904 |title=アスリート盗撮、置き去り 「撮影罪」新設へ、元選手ら訴え |publisher =共同通信 |date=2023-04-22 |accessdate=2023-07-01}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.bbc.com/japanese/65446382 |title=日本政府が性犯罪規定見直し、今夏成立目指す 性的盗撮を処罰する「撮影罪」新設など |publisher =BBC |date=2023-05-03 |accessdate=2023-07-01}}</ref><ref name="PolitasTV20230621" />。付帯決議にも「アスリートや客室乗務員に対する盗撮が社会問題となっていることを踏まえ、正当な理由がないのに、性的姿態等以外の人の姿態又は部位(衣服により覆われているものを含む)を性的な意図をもって撮影する行為等を規制することについて検討を行うこと」という課題が入った<ref name="shugiin211hutai59">{{Cite web |url=https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/houmu08930B15D5DA811B492589C00032C6C8.htm |title=第211回国会閣法第59号 附帯決議 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案に対する附帯決議 |publisher =衆議院 |accessdate=2023-07-07}}</ref>。 |
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*8類型の1つに留まった「地位・関係性を利用した性犯罪」については、「教師と生徒」「[[障害者]]と[[介護]]者」「施設の職員と入所者」「[[宗教家|宗教指導者]]と[[信者]]」など、明らかに対等性を欠く状況につけこんで性行為をする人について、対象となる関係性を明記した処罰類型の新設を求めている<ref name="CLP20230619" /><ref name="PolitasTV20230621" /><ref name="Spring20230616">{{Cite web|url=http://spring-voice.org/wp-content/uploads/2023/06/【確定版】2023年6月16日%E3%80%80刑法・性犯罪法改正法律案成立を受けてのSpring見解.docx-1.pdf |title=刑法・性犯罪法改正法律案成立をうけて |format=PDF |publisher =spring |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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*障がいがある人への性犯罪規定は、それぞれの障がい特性を踏まえた法設計が必要であるため、その創設に向けた議論の継続を求めている<ref name="Spring20230616" /><ref>{{Cite web |url=https://shiawasenamida.org/障がい特性を踏まえた刑法性犯罪改正を/ |title=障がい特性を踏まえた刑法性犯罪改正を求める要望書 |publisher =特定非営利活動法人 しあわせなみだ. |date=2023-03-12 |accessdate=2023-06-30}}</ref>。 |
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*「被害者が同意しない意思を表すことが難しい状態」にさせた場合は罪に問えるとしたことについては、「積極的な同意がなければ罪に問える」という「[[:en:Sexual_consent#Affirmative:_"yes_means_yes"|Yes means Yes]]」型の刑法を目指して、さらなる見直しを求めている<ref name="nhk-new20230203" /><ref name="Spring20230616" />。 |
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*[[構成要件]]が変わっても、証拠がなければ有罪にならないことは変わらないため、客観的な証拠を残すための検査キットや24時間証拠採取ができる医療機関、[[性暴力#ワンストップ支援センター|ワンストップ支援センター]]における証拠保全体制の強化など、被害者支援の拡充を求めている<ref name="PolitasTV20230621" /><ref>{{Cite web |url=https://thyme.buzz/news-4/ |title=性暴力の証拠。警察に行けなくても残せる体制を全国に!27,893筆の署名と要望書提出 |publisher =THYME |date=2022-09-26 |accessdate=2023-07-01}}</ref>。また、立証責任が検察官にあることも変わらないため、検察官が丁寧で慎重な捜査・審議を行い、冤罪を防ぐための取締りの可視化や弁護人の立会権、勾留期間の短縮などが求められている<ref name="PolitasTV20230621" />。 |
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*刑事弁護士は、新たに設けられた8項目には、要件が明確なものと[[曖昧]]なものが混ざっているとして、「処罰される対象が事実上広がり、[[冤罪|えん罪]]を生むおそれがある」と懸念を示している<ref name="nhk-new20230203" /><ref name="ASR6J6KR">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/ASR6J6KRRR6JUTIL00H.html |title=性被害当事者ら「声届いた」「前進」 改正刑法「要件不明確」の声も |publisher =朝日新聞 |date=2023-06-16 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。この懸念について、元[[刑事]][[裁判官]]で[[法政大学]][[法科大学院]]の水野智幸教授は、「これまで[[裁判官]]が抽象的な条文を基準に考えていたことを明文化した形で、処罰範囲を拡大するものではないと考える」「これまでは何が犯罪か抽象的でわかりづらかったので被害の申告や捜査がしづらい面があったが、それが解消されるので、本来処罰されるべきものがきちんと捜査され、有罪とされるケースは増えるだろう」「具体的な要件を当てはめる際に安易に拡大適用をしてはいけないし、その意識を捜査機関と裁判所が徹底し、本来処罰されるべきでない人が処罰されないようにする必要がある」と述べている<ref name="nhk-k100141" />。 |
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==被害の実態== |
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強姦率の実態では、日本は統計上は発生率が少ない国になっている<ref name="犯罪率統計-国連調査(2000年)とOECDのデータ他">[http://www42.tok2.com/home/seekseek/53.html#G8 犯罪率統計-国連調査(2000年)とOECDのデータ他]</ref>。国際的に、日本は強姦に対しての刑事罰が非常に軽い国である、という批判も受けていた。 |
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{|class="wikitable" style="text-align:right;fon-size:small;float:right;margin:8pt" |
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|+強制性交等の認知件数<ref>{{cite web |url = https://www.npa.go.jp/publications/statistics/sousa/statistics.html |title = 犯罪統計 |publisher = 警察庁 |accessdate = 2022-10-20}}</ref> |
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!rowspan="2"|年度 !!rowspan="2"|認知件数 !! colspan="2"|被疑者 !! colspan="2"|被害者 |
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!男 !! 女 !! 男 !! 女 |
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|2021年 || 1,388 || 1,244 || 7 || 58 || 1,330 |
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|- |
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|2020年 || 1,332 || 1,173 || 4 || 72 || 1,260 |
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|- |
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|2019年 || 1,405 || 1,172 || 6 || 50 || 1,355 |
|||
|- |
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|2018年 || 1,307 || 1,084 || 4 || 56 || 1,251 |
|||
|- |
|||
|2017年 || 1,109 || 906 || 4 || 15 || 1,094 |
|||
|- |
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|2016年 || 989 || 871 || 4 || 0 || 989 |
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|} |
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2020年度に内閣府が行った調査では、異性から無理やり性交された経験があると答えた女性は14人に1人だったが、そのうち警察に相談したのはわずか6.4%である<ref name="heart-net9" /><ref name="nikkei-comemo2022" /><ref name="topic013" />。さらに客観的な証拠が無い場合、被害届が警察に受理されないというケースもあり<ref name="news185_3" /><ref name="bunshun-kurume" /><ref name="bunshun36536" />、「強姦事件」としてカウントされるのは、ほんのわずかである<ref name="heart-net9" /><ref name="nikkei-comemo2022" /><ref name="topic013" />。また、男性は100人に1人が無理やり性交された経験があったが、誰にも相談していない割合が女性よりも高く、被害者の多くが1人で苦しんでいる実態が分かった<ref name="heart-net9">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/heart-net/topics/9/ |title=性暴力被害 |publisher =NHK |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.jiji.com/jc/article?k=2022122800066 |title=男性の性被害、訴えにくく 「誰にも相談せず」が半数超―刑法改正から5年 |publisher =時事通信社 |date=2022-12-28 |accessdate=2023-02-07}}</ref><ref name="topic013">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0026/topic013.html |title=男性の性被害 292人実態調査アンケート結果【vol.131】 |publisher =NHK |date=2021-06-24 |accessdate=2023-02-07}}</ref>。 |
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内閣府の「性犯罪・性暴力被害者のための[[性暴力#ワンストップ支援センター|ワンストップ支援センター]]」の相談件数は2021年度に5万件以上あったが、誰かに相談できた被害者のうち、ワンストップ支援センターに相談した人は0.6%だった<ref name="weekly_data12">{{Cite web |url=https://www.gender.go.jp/research/weekly_data/12.html |title=性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援 センターの全国の相談件数の推移(令和3年度) |publisher =内閣府 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="nhk8891">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0014/topic025.html |title=【相談窓口】性犯罪・性暴力の電話ダイヤルは#8891(はやくワン)! |publisher =NHK |date=2020-10-16 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="yahoo8881" /><ref name="nikkei20221107">{{Cite web |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE063MM0W2A900C2000000/ |title=性被害相談、年5.8万件 「氷山の一角」支援は道半ば |publisher =日本経済新聞 |date=2022-11-07 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。性暴力の被害に遭ったときの対応には、証拠の採取や緊急避妊薬を飲むなど、急を要するものがあるが、性暴力の被害に関する電話相談のうち、72時間以内に寄せられたものは14.7%だった<ref name="nhk8891" /><ref name="yahoo8881">{{Cite web |url=https://creators.yahoo.co.jp/uchidahanae/0200384563 |title=同意のない性交が犯罪にならない現実――13万の署名と共に刑法改正に挑む当事者たち(内田英恵) |publisher =Yahoo! |date=2023-01-28 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。一方で、同年度の警察による強制性交等の認知件数は1388件にとどまっている<ref name="honpen-b1s0502">{{Cite web |url=https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/honpen/b1_s05_02.html |title=第2節 性犯罪・性暴力 |publisher =内閣府 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="yahoo8881" />。 |
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{{See also|強姦の歴史}} |
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[[File:Rape Rate.png|thumb|upright=1.5|right|[[国連薬物犯罪事務所]](UNODC): 人口10万人あたりのレイプ報告件数(2011年)。左から2番目が日本]] |
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=== 平成27年法制審議会への諮問 === |
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国ごとに「強姦事件」が成立する条件が異なるため、日本は統計上は強姦の発生率が低い国になっている<ref name="Rape-Statistics2023">{{Cite web |url=https://worldpopulationreview.com/country-rankings/rape-statistics-by-country |title=Rape Statistics by Country 2023 |publisher =World Population Review |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="nikkei-comemo2022">{{Cite web |url=https://comemo.nikkei.com/n/ne359f4cb837e |title=スウェーデンが、先進国で最悪の「強姦大国」である理由 |publisher =日経COMEMO |date=2022-11-15 |accessdate=2023-02-10}}</ref>。先進国で強姦事件の認知件数が最も多い[[:en:Rape_in_Sweden|スウェーデン]]では、「強姦」は、[[膣]]や[[肛門]]への指や物の挿入や、[[オナニー|自慰]]行為の強制等も含まれる<ref name="nikkei-comemo2022" />。2018年からは「暴行・脅迫要件」も撤廃され、「[[性的同意#イエス・ミーズ・イエス|イエス]]」という自主性を確認できない性行為は犯罪になった<ref name="nikkei-comemo2022" /><ref name="moj1320845">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001320845.pdf |title=スウェーデン性犯罪関連条文和訳(仮訳)※令和元年12月時点 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="hrm2019">{{Cite web|url=http://hrn.or.jp/2019_sex_crime_comparison/download/2019_sex_crime_comparison.pdf |title=性犯罪に関する各国法制度調査報告書 |format=PDF |publisher =2018年10月 国際人権 NGO ヒューマンライツ・ナウ |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="tokyo11839">{{Cite web |url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/11839 |title=スウェーデン「イエス」なき性交は犯罪 国内規定「さらなる改正必要」 |publisher =東京新聞 |date=2020-02-18 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="topic047">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/minplus/0011/topic047.html |title=刑法を知っていますか① YES以外はすべてNO ~スウェーデン“希望の法”~ |publisher =NHK |date=2020-05-01 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://ampmedia.jp/2021/10/09/sex-crimes/ |title=多くの「性犯罪」が処罰されない。先進国と比べて、こんなにも遅れている日本の現状 |publisher =AMP |date=2021-10-09 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。また、被害届を出しやすい環境も整っている<ref name="Black-Box">{{Cite book|和書|author=伊藤詩織 |title=Black Box |publisher=文春文庫 |date=2022-3-8 |page= |isbn=978-4167918484}}</ref>。[[ストックホルム]]のレイプ救急センターは365日24時間体制で被害者を受け入れ、被害から10日後まで[[レイプキット]]による検査ができる<ref name="Black-Box" />。検査結果は6カ月間保管されるため、被害者が検査や治療、カウンセリングを受け、一連の処置が終わった後に警察へ届け出を出すかどうかを考えることができる<ref name="Black-Box" />。男性被害者専門のカウンセラーが対応する男性のレイプ救急センターも併設され、[[トランスジェンダー]]の被害者も受け入れている<ref name="Black-Box" />。子どもへの[[性教育]]も義務化され、危険から身を守る知識を学校で得られるよう、幼稚園の頃から、胸や性器といった他者が触れてはいけない部分があると教えている<ref name="topic047" /><ref>{{Cite web |url=https://note.com/iam_obiringender/n/n854dbf42fcb3 |title=【勉強会】世界の性教育―スウェーデンの性教育では、性的同意が学べる! |publisher =桜美林大学ジェンダー研究会 “I am” |date=2020-11-20 |accessdate=2023-07-01}}</ref>。国際的に性教育は基本的人権の1つとされ、性行為や避妊方法、性暴力、性感染症、ジェンダー論など、[[包括的性教育|包括的な性教育]]をおこなう国は少なくない<ref>{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20201101182633/https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/10/1007.html |title=変わるか?日本の“性教育” |publisher =NHK |date=2020-10-07 |accessdate=2023-06-28}}</ref><ref name="3keys-d01" />。<br>日本においても2023年度から、[[性暴力]]の[[被害者]]、[[加害者]]、[[傍観者]]にならないための新しい教育が始まった<ref name="shueisha65144">{{Cite web |url=https://shueisha.online/culture/65144 |title=特集 大人も知っておきたい性のあれこれ 子どもたちを性暴力の被害者・加害者・傍観者にしないための「生命の安全教育」とは?【保護者が知らない学校教育】 |publisher =集英社オンライン |date=2022-10-22 |accessdate=2023-07-01}}</ref><ref name="mext-anzen">{{Cite web |url=https://www.mext.go.jp/a_menu/danjo/anzen/index.html |title=性犯罪・性暴力対策の強化について |publisher =文部科学省 |accessdate=2023-07-01}}</ref>。発達の段階ごとに「生命の大切さ」「自分や相手を尊重し、大事にすること」「性暴力の根底にある誤った認識や行動」「性暴力が及ぼす影響」「性暴力の被害にあったときの適切な対応の仕方」などを学習する<ref name="shueisha65144" /><ref name="mext-anzen" /><ref name-"moj1362112">{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001362112.pdf |title=性犯罪・性暴力の加害者・被害者・傍 観者にならないための「生命(いのち) の安全教育」の推進 |format=PDF |publisher =法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会 第3回会議配布資料 |accessdate=2023-07-01}}</ref>。[[性犯罪]]の被害者が、学校で性暴力について正しく学んでいたため、[[性暴力#ワンストップ支援センター|ワンストップ支援センター]]に連絡し、事情聴取や刑事裁判を乗り切ることができたという事例も存在する<ref name="safeprom2023" /><ref name="nhk26-topic054">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic054.html |title=“性暴力”裁判 被害女性が語った15分のことば |publisher =NHK |quote=「 大学では、性の問題についてタブー視せず、真面目に議論をするような環境に身を置いていました。正しい性的な知識は恥ずかしいことでも、面白おかしく思うようなことでもありません。防災のように、自分と周囲の人を守ることに繋がるし、正しい性教育を受ければ他者を傷つけたり、自分が性暴力の加害者になることも防いでくれます。性教育は、人権教育だと考えています。そしてこの価値観は、私の大切な友人やパートナーとも共有していました。だから私は被害に遭った時も、取るべき行動がすぐに分かりましたし、非常に早く適切な支援に繋がることができたのです。知識と環境が私を守ってくれたのです」 |date=2022-04-15 |accessdate=2023-07-01}}</ref>。なお、2023年には山中の車内で殴り、殺害をほのめかすなど脅迫のうえ女子大学生に性的暴行を加えた後、行為が同意だった旨の書面を作成させたとして強制性交等致傷と強要罪で男(29)が逮捕された事案もある<ref>{{Cite web |url=https://www.sankei.com/article/20230726-LIJQBIBFQRKUBPT2UGDAU7UTDI/|title=山中の車内で女子大生を性的暴行、行為の「同意書」も書かせる 容疑で男逮捕|publisher =産経新聞 |date=2023-07-26 |accessdate=2024-12-22}}</ref>。 |
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[[法制審議会]]第175回会議(2015年(平成27年)10月9日開催)に対し、「性犯罪の罰則に関する検討会」取りまとめ報告書を受ける形で、強姦罪を含む性犯罪の罰則の改正について諮問がされた<ref>[http://www.moj.go.jp/content/001161366.pdf 法制審議会 第175回会議配布資料 刑1 諮問第101号] - 法務省</ref>。 |
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; 第一 強姦の罪(刑法第百七十七条)の改正 |
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: 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の者を相手方として性交等(相手方の膣内、肛門内若しくは口腔内に自己若しくは第三者の陰茎を入れ、又は自己若しくは第三者の膣内、肛門内若しくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為をいう。以下同じ。)をした者は、五年以上の有期懲役に処するものとすること。 |
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: 十三歳未満の者を相手方として性交等をした者も、同様とすること。 |
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; 第二 準強姦の罪(刑法第百七十八条第二項)の改正 |
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: 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、第一の例によるものとすること。 |
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; 第三 監護者であることによる影響力を利用したわいせつな行為又は性交等に係る罪の新設 |
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: 一 十八歳未満の者に対し、当該十八歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力を利用してわいせつな行為をした者は、刑法第百七十六条の例によるものとすること。 |
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: 二 十八歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力を利用して当該十八歳未満の者を相手方として性交等をした者は、第一の例によるものとすること。 |
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: 三 一及び二の未遂は、罰するものとすること。 |
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; 第四 強姦の罪等の非親告罪化 |
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: 一 刑法第百八十条を削除するものとすること。 |
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: 二 刑法第二百二十九条を次のように改めるものとすること。 |
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: 第二百二十四条の罪及びこの罪を幇助する目的で犯した第二百二十七条第一項の罪並びにこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 |
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; 第五 集団強姦等の罪及び同罪に係る強姦等致死傷の罪(刑法第百七十八条の二及び第百八十一条第三項)の廃止 |
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: 刑法第百七十八条の二及び第百八十一条第三項を削るものとすること。 |
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; 第六 強制わいせつ等致死傷及び強姦等致死傷の各罪(刑法第百八十一条第一項及び第二項)の改正 |
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: 一 刑法第百七十六条若しくは第百七十八条第一項若しくは第三の一の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯しいせつな行為をした者は、刑法第百七十六条の例によるものとすること。 |
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: よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処するものとすること。 |
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: 二 第一、第二若しくは第三の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処するものとすること。 |
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; 第七 強盗強姦及び同致死の罪(刑法第二百四十一条)並びに強盗強姦未遂罪(刑法第二百四十三条)の改正 |
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: 一 次の1に掲げる罪又は次の2に掲げる罪の一方を犯した際に他の一方をも犯した者は、無期又は七年以上の懲役に処するものとすること。ただし、いずれの罪も未遂罪であるときは、その刑を減軽することができるものとすること。 |
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:# 第一若しくは第二の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は第六の二の罪(第三の二の罪に係るものを除き、人を負傷させた場合に限る。) |
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:# 刑法第二百三十六条、第二百三十八条若しくは第二百三十九条の罪若しくはこれらの罪の未遂罪又は同法第二百四十条の罪(人を負傷させた場合に限る。) |
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: 二 一ただし書の場合において、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し又は免除するものとすること。 |
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: 三 一の1に掲げる罪又は一の2に掲げる罪の一方を犯した際に他の一方をも犯し、いずれかの罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処するものとすること。 |
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==被害者になった場合== |
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=== 強姦罪から「強制性交等罪」に変更へ === |
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{{main|{{仮リンク|性的暴行被害者の暴行後の対応|en|Post-assault treatment of sexual assault victims}}|{{仮リンク|レイプの影響と後遺症|en|Effects_and_aftermath_of_rape}}}} |
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法制審議会の諮問により、[[2017年]]([[平成]]29年)3月7日に「[[刑法 (日本)|刑法]]の一部を改正する法律案」として閣議決定され、[[第193回国会]](常会)に提出された<ref>[http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00140.html 刑法の一部を改正する法律案]</ref>。 |
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*ひどい怪我を負わされた場合、迷わず[[救急車]]を呼ぶか、[[救急医療|救急外来]]で手当を受ける<ref name="nagasaki-man" />。 |
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<!-- 以下の各条1.~6.は本文と重複するので削って良いかも? --> |
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**女性被害者の約50%で[[性器]]または性器以外の[[外傷]]が生じる<ref name="msd-pro" />。男性被害者は身体的外傷を負う場合が女性よりも多い<ref name="msd-pro">{{Cite web |url=https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/18-婦人科および産科/ドメスティックバイオレンスおよびレイプ/レイプ被害者の医学的診察#v1065117_ja |title=レイプ被害者の医学的診察 |publisher =MSDマニュアル |accessdate=2023-02-26}}</ref>。 |
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*着替えたり、[[シャワー]]を浴びたり、[[トイレ]]に行かずに、[[性暴力#ワンストップ支援センター|ワンストップ支援センター]]「#8891」または「#8103([[日本の警察|警察]]の[[性暴力]]専門の相談電話)」に連絡する<ref name="kanagawa-higai">{{Cite web |url=http://www.pref.kanagawa.jp/docs/f5g/cnt/f520370/ |title=性犯罪・性暴力の被害にあったら |publisher =神奈川県 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a07_toiawase/victim/yuki.html |title=茨城県警察本部性犯罪被害相談「勇気の電話」 |publisher =茨城県警察 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。 |
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# 強制性交等罪および準強制性交等罪:強姦罪の対象(被害者)が性別不問となり、法定刑が3年以上の有期懲役から、5年以上の有期懲役に引きあげられた(第1及び第2) |
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**着替えた場合は[[衣服]]や持ち物などはそれぞれ未使用の[[ビニール]]袋に入れて口を絞め、体の付着物を拭き取った[[ティッシュペーパー]]なども個別のビニール袋に入れて口を絞める<ref name="kanagawa-higai" /><ref name="fukuoka-vs">{{Cite web |url=https://fukuoka-vs.net/savs/early.html |title=被害後まもない方へ |publisher =性暴力被害者支援センター・ふくおか |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="niigata57865">{{Cite web|url=https://web.archive.org/web/20221123084204/https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/57865.pdf |title=性犯罪被害対応の手引き |format=PDF |publisher =新潟県・新潟県警察 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。 |
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# 監護者わいせつ罪:現に18歳未満の者を監護する者が、その影響力を行使して、当該18歳未満の者にわいせつな行為をすると、強制わいせつと同じ刑になる(第3の1) |
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[[File:Medical professionals learn how to use the Sexual Assault Evidence Collection kit at Camp Phoenix near Kabul, Afghanistan, Aug. 15, 2010 100815-A-GY802-017.jpg|thumb|[[レイプキット]]]] |
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# [[監護者性交等罪]]:現に18歳未満の者を監護する者が、その影響力を行使して、当該18歳未満の者と性交等(強姦罪の対象となる行為)をすると、強姦と同じ刑になる(第3の2) |
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[[File:Emergency contraception 1 pill.jpg|thumb|[[緊急避妊薬]]「ノルレボ錠」]] |
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# [[強盗・強制性交等罪|強盗・強制性交等及び同致死]]:強盗強姦罪などから強盗行為が後か先かによる分類の廃止 |
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*証拠採取のできる医療機関は限られるため、ワンストップ支援センターや警察が紹介する専門の病院を受診する<ref name="niigata57865" /><ref name="gov-uk" />。 |
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# 強姦罪等を非親告罪とする(第4) |
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**性犯罪では、事件捜査の過程で診断書が必要になる場合があり、[[レイプキット]]による加害者の[[DNA]]や[[毛 (動物)|体毛]]などの証拠の採取、警察への連絡、被害者が負傷していたり、他の病気のリスクもあるため、[[緊急避妊薬]]の処方も含めて医師の診察が必要になる<ref name="biz20200729">{{Cite web|url=https://biz-journal.jp/2020/07/post_171066_2.html|title=産婦人科医会副会長、NHKで緊急避妊薬めぐり「安易な考えに流れてしまう」発言が物議|publisher=Business Journal |date=2020-7-29|accessdate=2020-03-31}}</ref><ref name="sarc-tokyo" /><ref name="jaog-zenbun" />。 |
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# 強姦罪の法定刑引き上げ及び非親告罪化により、集団強姦罪を廃止する(第5) |
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**[[性犯罪]]被害の場合には、警察に通報(届出)した場合は、[[緊急避妊薬]]、レイプキットの費用、[[性感染症]]検査費用、[[人工妊娠中絶]]費用、[[初診料]]、[[診断書]]料、[[カウンセリング]]費用について一定額まで公費で負担される<ref name="jaog-zenbun" /><ref>{{Cite web|url=https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/shien/higai/support/josei.html|title=医療費等の助成・病院の紹介・カウンセリング|publisher=警視庁|accessdate=2021-2-10}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/keisatsu/kouhi.html#seihanzai |title=公費負担制度 |publisher =警察庁 |accessdate=2023-02-26}}</ref>。通報は、告訴する・しないとは無関係である<ref name="jaog-zenbun">{{Cite web|url=http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/zenbun.pdf |title=性犯罪・性暴力被害者のための ワンストップ支援センター開設・運営の手引 |format=PDF |publisher =内閣府 犯罪被害者等施策推進室 |accessdate=2023-02-26}}</ref>。 |
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**女性の場合は、[[緊急避妊薬]]が有効な72時間以内に[[産婦人科学|産婦人科]]医を受診する<ref name="gov-uk" />。72時間を経過した場合も、1週間以内であれば[[子宮内避妊器具]](IUD)の留置により妊娠を防ぐことができる場合がある<ref>{{Cite web|url=https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/27179/00000000/manyuaru-gaiyou.pdf |title=被害者の心情に配慮した 性暴力の証拠物取扱いマニュアル (概要版) |format=PDF |publisher =性暴力の証拠物の取扱い検討ワーキングチーム会議 (事務局:大阪府政策企画部青少年・地域安全室) |accessdate=2023-02-26}}</ref>。 |
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強姦罪を定める刑法改正法案は、2017年(平成29年)[[6月16日]]に[[国会 (日本)|国会]]で成立し、[[6月23日]]に公布された。刑法の附則事項に「公布日から起算して20日を経過した日から施行する」と定めており、2017年(平成29年)[[7月13日]]から施行された<ref>{{cite news |
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**男性の場合は、被害部位にもよるが、[[泌尿器科]]あるいは[[肛門科]](消化器外科)を受診する<ref name="nagasaki-man">[https://www.nagasaki-vs.jp/sexual_violence_victim_support/man/ 被害にあわれた男性の方へ|性暴力被害者支援 サポートながさき]</ref><ref>[https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0026/topic020.html #男性の性被害 相談窓口の課題は - NHK みんなでプラス]</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/163/ |title=【性暴力を考えるvol.15】埋もれてきた男性被害 |publisher =NHK |date=2019-09-06 |accessdate=2023-02-26}}</ref>。 |
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| url = http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG23H21_T20C17A6CR0000/ |
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**男女問わず、[[子供|子ども]]が被害を受けた場合は、警察または[[児童相談所]](共通ダイヤル「189」<ref>[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dial_189.html 児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について|厚生労働省]</ref>)に連絡する<ref>[https://joshi-spa.jp/1220578/2 幼稚園でお友達のお尻に石を…「性加害者」になる子どもたち。何が起こっているのか | 女子SPA! | ページ 2]</ref>。[[小児科医]]でも診察対応が可能な場合がある<ref>[https://miyazaki-ped.org/topics/p1105/ 性暴力被害相談電話 | 宮崎県小児科医会]</ref>。 |
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| title = 改正刑法施行は7月13日 性犯罪を厳罰化 |
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**[[性感染症]]の検査は、複数回にわたって行う<ref name="jaog-zenbun" />。被害から2週間後の検査で[[クラミジア]]や[[淋病]]などの感染が分かり、他にも[[梅毒]](1ヶ月後)、[[HIV]]感染症(2ヶ月後)などの検査を受けて早期治療を行う<ref name="sarc-tokyo" />。 |
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| newspaper = [[日本経済新聞]] |
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**[[レイプキット]]:加害者の[[体液]]や体毛を採取してDNA検査をしたり、[[血液]]・[[尿]]検査で[[薬物]]を飲まされていないか調べるなど、証拠保全をする検査一式<ref name="sarc-tokyo"/>。日本では、レイプキットの代金を被害者が先払いするが、警察に通報すれば医療費の払い戻しが受けられる<ref name="Japan2">{{Cite journal|last=Mclean|first=Iain|last2=L'Heureux|first2=Stephan|date=2007|title=Sexual assault aftercare services in Japan and the UK|journal=Japan Forum|volume=19|issue=2|pages=239–256|doi=10.1080/09555800701422852}}</ref><ref name="gov-uk" />。 |
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| publisher = [[日本経済新聞社]] |
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**捜査用薬物検査キット「D1D Plus(ディーワンディープラス)」:2023年4月、「[[デートレイプドラッグ]]」を使った[[性犯罪]]が相次いでいることを受け、都内の全[[警察署]]に配備された<ref name="huff20230523">{{Cite web |url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/keioshicho-seihanzai_jp_646c4b96e4b0bfd644847f7b |title=数分で「デートレイプドラッグ」を鑑定。警視庁が“新キット”を導入。相次ぐ性犯罪を根絶へ |publisher =huffingtonpost |date=2023-05-23 |accessdate=2023-06-25}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.tokyo-np.co.jp/article/247161 |title=「デートレイプドラッグ」簡易検査キット 警視庁が都内の全警察署に配備 薬物使用の性犯罪NO! 相談者の尿で即確認 |publisher =東京新聞 |date=2023-04-30 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。尿に含まれる[[睡眠薬]]などの薬物成分を数分で検査でき、早期に捜査を始められる<ref name="huff20230523" /><ref name="ASR4T3RT2R">{{Cite web |url=https://digital.asahi.com/articles/ASR4T3RT2R4TUTIL006.html |title=デートレイプドラッグ事案の捜査、迅速化へ 簡易検査キット、初開発 |publisher =朝日新聞 |date=2023-04-26 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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| date = 2017-06-23 |
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*[[性暴力#ワンストップ支援センター|ワンストップ支援センター]]「#8891(はやくワンストップ)」は、発信場所から最寄りの支援センターにつながり、専門知識をもった相談員が、被害者の性別やセクシュアリティは問わずに、[[病院]]や警察、[[弁護士]]、その他の関係機関と連携しながら「医師による心身の治療」「相談・カウンセリング等の心理的支援」「捜査関連の支援」「法的支援」などの適切な支援に繋げる<ref name="sarc-tokyo" /><ref name="jaog-zenbun" /><ref>{{Cite web |url=https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/whitepaper/w-2021/html/zenbun/part2/b2_s2_1t03.html |title=第2章 精神的・身体的被害の回復・防止への取組 |publisher =警察庁 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0014/topic025.html |title=【相談窓口】性犯罪・性暴力の電話ダイヤルは#8891(はやくワン)! |publisher =NHK |date=2020-10-16 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0011/topic036.html |title=男性の性被害 全国の相談窓口 ~2021年6月版~【vol.67】 |publisher =NHK |date=2020-03-19 |accessdate=2023-02-26}}</ref>。支援センターでは、無償で裁判所・警察などへの付き添い、各種手続きの手伝いなども行っている<ref>{{Cite web |url=https://www.nnvs.org/shien/about/ |title=全国の「支援センター」で行っている支援 |publisher =全国被害者支援ネットワーク |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="nhk-soudan20221129">{{Cite web |url=https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/R7Y6NGLJ6G/blog/bl/pkEldmVQ6R/bp/pnm9RVl06n/ |title=もしあなたが犯罪被害に遭ったら……支えてくれる“窓口”は |publisher =NHK |date=2022-11-29 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="nhk-gendai20190430">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4315/ |title=“顔見知り”からの性暴力 ~被害者の苦しみ 知ってますか?~ |publisher =NHK |date=2019-04-30 |accessdate=2023-02-24}}</ref>。性犯罪に詳しい弁護士を紹介してもらえることもあり、弁護士費用についても負担を軽減するためのさまざまな法的支援制度がある<ref name="fukuoka-vs" /><ref>{{Cite web|url=https://www.moj.go.jp/content/001291162.pdf |title=法テラス 犯罪被害者支援 |format=PDF |publisher =法務省 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a3bfa57e8920c7b0ec91e738ea46e7e04ab2f116 |title=知られてほしいけど知られていない 性暴力被害に遭ったときの法的支援 |publisher =Yahoo! |date=2019-10-24 |accessdate=2023-02-24}}</ref><ref name="jaog-zenbun" />。 |
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| accessdate = 2017-07-05 |
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**2023年2月現在、ワンストップ支援センターの一部が、24時間365日受付にはなっていないため、緊急時の性被害は、「#8103(ハートさん、警察の性暴力専門の相談電話。各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる)」や110番で警察に連絡して証拠保全と治療を受けることもできる<ref>[https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/index.html#8891 女性に対する暴力の根絶 | 内閣府男女共同参画局]</ref><ref>{{Cite web |url=https://note.com/mimosas_jp/n/nd6cdd6f7c64d |title=【専門家に聞いてみた】被害に遭ったときにするべき対処、「証拠保全」と「アフターピル」について |publisher =非営利団体 mimosas |date=2020-08-13 |accessdate=2023-02-26}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.city.toshima.lg.jp/051/kuse/danjo/dvboshi/1910070745.html |title=性暴力の被害にあわれた方へ |publisher =豊島区 |accessdate=2023-02-26}}</ref>。 |
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}}</ref>。 |
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*様々な事情で電話し辛い場合は、チャットやメールで相談ができる「[[Cure time]](キュアタイム)」に連絡する<ref name="nhk14-topic036" /><ref name="consultation" />。対処法や医療機関の案内のほか、状況に応じて、警察などに連絡する体制も整っている<ref name="nhk14-topic036">[https://www.nhk.or.jp/minplus/0014/topic036.html 性暴力のSNS相談Cure Time 「チャット画面の向こう側」を取材して【vol.111】 - NHK みんなでプラス]</ref><ref name="consultation">{{Cite web |url=https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/avjk/consultation.html |title=性犯罪・性暴力相談窓口 |publisher =法務省 男女共同参画局 |accessdate=2023-06-25}}</ref>。 |
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*[[刑事訴訟法#日本の刑事手続|刑事裁判]]の際は、「被害者の氏名や住所などを明らかにしない」「テレビ電話で繋いだ別室から証言できる」など、犯罪被害者に配慮した取り組みが行われている<ref name="safeprom2023" /><ref>{{Cite web |url=https://www.courts.go.jp/about/hogosisaku/seido/Index.html |title=刑事手続における犯罪被害者のための制度 |publisher =最高裁判所 |accessdate=2023-07-01}}</ref>{{Refnest|group="注釈"|2023年5月10日、被害者の名前や住所が加害者に知られないようにするために、裁判の書類を匿名にする改正刑訴法が成立した<ref>{{Cite web |url=https://www.sankei.com/affairs/news/210518/afr2105180007-n1.html |title=逮捕・起訴状の匿名化諮問へ 法務省、性犯罪被害者ら保護 |publisher =産経新聞 |date=2023-05-18 |accessdate=2023-07-07}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.bengo4.com/c_1009/n_16012/ |title=起訴状から被害者の氏名や住所が消える… 刑訴法改正で秘匿可能に 弁護活動に支障も |publisher =弁護士ドットコム |date=2023-05-18 |accessdate=2023-07-07}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/452761.html |title=「性犯罪・DV被害者 裁判書類も匿名に」(ここに注目!) |publisher =NHK |date=2021-07-27 |accessdate=2023-07-07}}</ref>}}。 |
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== 脚注 == |
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<references /> |
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=== 注釈 === |
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=== 出典 === |
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== 関連項目 == |
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* [[強制わいせつ罪]] |
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* [[b:刑法第177条]] |
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* [[強盗・強制性交等罪]] |
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* [[わいせつ |
* [[不同意わいせつ罪]] |
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* [[強盗・不同意性交等罪]] |
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* [[わいせつ、不同意性交等及び重婚の罪]] |
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* [[強姦]] |
* [[強姦]] |
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* [[性犯罪]] |
* [[性犯罪]] |
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* [[フラワーデモ]] - [[#MeToo]] |
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* [[性的虐待]] |
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* [[Spring_(一般社団法人)|一般社団法人Spring]] |
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* [[児童性的虐待]] |
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* [[:en:Rape_paralysis|レイプまひ]] {{small|(英語版)}} |
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* [[性的同意]] - [[性的同意#ノー・ミーンズ・ノー|ノー・ミーンズ・ノー]] - [[性的同意#イエス・ミーズ・イエス|イエス・ミーズ・イエス]] |
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* [[性的同意年齢]] - [[性的虐待]] - [[児童性的虐待]] - [[グルーミング (性犯罪)]] |
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* [[デートレイプ]] |
* [[デートレイプ]] |
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* [[強姦神話]] - [[:en:Rape_culture|レイプカルチャー]] {{small|(英語版)}} - [[被害者非難]] |
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* [[パターナリズム]] |
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* [[緊急避妊薬]] |
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* [[妊娠]] - [[中絶]] |
* [[妊娠]] - [[中絶]] |
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* [[:en:Laws_regarding_rape|レイプに関する法律]] {{small|(英語版)}} |
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* [[尊属殺重罰規定違憲判決]] |
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* [[レイプキット]] - [[:en:Rape_investigation|レイプの捜査]] {{small|(英語版)}} |
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* |
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* [[:en:Rape_crisis_center|レイプクライシスセンター(RCC)]] {{small|(英語版)}} |
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* [[b:刑法各論|ウィキブックス刑法各論]] |
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* [[:en:Effects_and_aftermath_of_rape|レイプの影響と後遺症]] {{small|(英語版)}} |
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* [[:en:Post-assault_treatment_of_sexual_assault_victims|性暴力被害者の治療法]] {{small|(英語版)}} |
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* [[:en:Causes_of_sexual_violence|性暴力の原因]] {{small|(英語版)}} |
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* [[:en:Initiatives_to_prevent_sexual_violence|性暴力防止への取組]] {{small|(英語版)}} |
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* [[性の権利宣言]] |
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* [[リプロダクティブ・ヘルス・ライツ]](性と生殖に関する健康と権利) |
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* [[尊属殺重罰規定違憲判決]] - 監護者姦淫が事件の原因。 |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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<!---各参考文献が「参考文献 (強姦)」の項目と重複していても、文中に(小倉(1988))のような略式の出典明記があり、消すと出典が分かりづらくなるものがあるので、むやみに消さないこと---> |
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* {{Cite web|url=http://plaza.umin.ac.jp/~safeprom/pdf/JSP_2023_16(1).pdf |title=性犯罪処罰規定の見直しの経緯とその議論 ─暴行・脅迫の要件を中心に─(日本大学法学部 西山智之) |format=PDF |publisher =2 日本セーフティプロモーション学会誌 Vol.16(1)2023年4月号 |accessdate=2023-07-07}} |
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* {{Cite web|url=https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t298-5.pdf |title=提言「同意の有無」を中核に置く刑法改正に向けて ―性暴力に対する国際人権基準の反映― |format=PDF |publisher =日本学術会議 |date=2020-09-29 |accessdate=2023-07-07}} |
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* {{Cite book|和書|author=齋藤梓、大竹裕子 |title=性暴力被害の実際 |publisher=金剛出版 |date=2020-06-22 |page= |isbn=9784772417679}} |
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* {{Cite book|和書|author=[[伊藤和子 (弁護士)|伊藤和子]] |title=なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法 |publisher=ディスカヴァー・トゥエンティワン |date=2019-8-13 |page= |isbn=978-4799325445}} |
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* {{Citation|和書|last=秋山|first=千明|title=女性に対する暴力 被害者学的視点から|publisher=[[尚学社]]|isbn=978-4-86031-156-8|date=2019-01}} |
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* [[前田雅英]] 『刑法各論講義-第3版』 [[東京大学出版会]]、1999年。 |
* [[前田雅英]] 『刑法各論講義-第3版』 [[東京大学出版会]]、1999年。 |
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* [[小倉千加子]]『セックス神話解体新書』[[学陽書房]]、1988年。 |
* [[小倉千加子]]『セックス神話解体新書』[[学陽書房]]、1988年。 |
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<!---各参考文献が「参考文献 (強姦)」の項目と重複していても、文中に(小倉(1988))のような略式の出典明記があり、消すと出典が分かりづらくなるものがあるので、むやみに消さないこと---> |
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== 外部リンク == |
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;被害者になった場合 |
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* [https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧「#8891(はやくワンストップ)」] 内閣府 |
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* [https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html 性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103(ハートさん)」] 警察庁 |
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* [https://curetime.jp/ Cure time] 内閣府による性暴力のSNS相談窓口「[[Cure time|キュアタイム]]」。毎日17 - 21時チャット相談や、24時間メールでの相談が可能 |
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* [https://sarc-tokyo.org/wp-content/uploads/2021/03/SARC_T_Guide.pdf 性暴力被害者支援ガイド] 性暴力救援センター・東京(SARC東京) |
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;性犯罪 |
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* [https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html 性犯罪関係の法改正等 Q&A] [[法務省]] 2023年7月 |
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* [https://www.mext.go.jp/a_menu/danjo/anzen/index.html 性犯罪・性暴力対策の強化について] [[内閣府]]・[[文部科学省]] |
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** [https://www.youtube.com/watch?v=DBqxgs_KV1g 生命(いのち)の安全教育動画教材(高校)] 文部科学省 YouTube |
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* [https://meiiku.com/howtonavi/sexualconsent/ 性的同意はどうやってとればいい?チェックリストや動画で学ぼう] 家庭ではじめる性教育サイト「命育」 |
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* [https://www.moj.go.jp/content/001316277.pdf 見直そう!刑法性犯罪] [[Spring_(一般社団法人)|一般社団法人Spring]] 2018年10月 |
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* [https://www.nhk.or.jp/minplus/0079/ 刑法改正(性犯罪)の記事一覧] NHK |
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** [https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/128/ 性犯罪に関する刑法~110年ぶりの改正と残された課題] NHK 2018/10/22 |
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** [https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230616/k10014101051000.html 「同意のない性行為」とは 性犯罪の刑法改正 ポイントを解説] NHK 2023/6/16 |
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** [https://www.nhk.or.jp/minplus/0026/topic054.html “性暴力”裁判 被害女性が語った15分のことば] NHK |
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2024年12月21日 (土) 16:32時点における最新版
この項目には性的な表現や記述が含まれます。 |
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
不同意性交等罪 | |
---|---|
法律・条文 | 刑法177条 |
保護法益 | 性的自由 |
主体 | 人間 |
客体 | 人間 |
実行行為 | 不同意性交等 |
主観 | 故意犯 |
結果 | 結果犯、侵害犯 |
実行の着手 | 性的不同意の状態で、人間に対して性交等に及んだ時点 |
既遂時期 | 性器、肛門又は口腔への一部挿入時点 |
法定刑 | 5年以上の有期懲役。有期懲役刑の上限は20年、加重により30年[1]。 |
未遂・予備 | 未遂罪(180条) |
不同意性交等罪(ふどういせいこうとうざい)は、16歳以上の者に対し、後述の8つの要件によって同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性交等を行うこと、または16歳未満の者に対し性交等を行うことを内容とする犯罪類型。
かつての強制性交等罪と準強制性交等罪を一本化した罪名であり、2023年7月13日に改正刑法が施行された[2][3]。以前の強制・準強制性交等罪では、「暴行・脅迫」を用いることや「心神喪失・抗拒不能(抵抗ができない状態)」に乗じる/させることが成立要件になっていたが、「被害者の強い抵抗があったかどうかが重視され、司法判断にばらつきがある」「『暴行や脅迫』がなくても恐怖で体が固まったり、相手との関係性で抵抗できないなどの実態がある」として、見直しが求められていた[4][5][6]。不同意性交等罪では、条文に「有効な同意」ができない8つの典型的な場面を挙げ[7]、また婚姻の有無を問わないことを明示し、性交同意年齢を13歳から16歳へと引き上げた。
概要
[編集]不同意性交等罪
[編集]16歳以上の者に対し暴行・脅迫をはじめ有効な同意のできない8つの要件のいずれかの状況のもと性交等を行うこと、または16歳未満の者に対し同意の有無を問わず性交等を行うことを内容とする犯罪類型である。主体・客体ともに性別不問である。
法定刑は5年以上(20年以下、加重により30年以下)の懲役。
性交等の定義
[編集]「性交等」には、性交、肛門性交、口腔性交のほか体の一部や物を膣または肛門に挿入する行為が該当する[8][9][10]。性交、肛門性交、口腔性交の定義については強制性交等罪を参照。
8つの要件
[編集]8つの要件には以下の状況が該当する。
要件として示された具体的な8つの行為や状況[11]。
- 「暴行や脅迫をする(暴行や脅迫を受ける)」
- 「精神的、身体的な障害を生じさせる(心身の障害がある)」
- 「アルコールや薬物を摂取させる(アルコールや薬物の影響がある)」。
相手がアルコールの影響がある場合は要件に該当するが、その上で「同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難なほど酔っている」ことが必要である[12][13]。つまり、同意しない意志を形成・表明・全うすることが出来る状態にある人と、同意を取った上で行う性交は罪にならない[14]。場合によっては、酩酊の程度が考慮されるなど、個別の事案ごとに証拠に基づいて判断されることになる[12]。 - 「眠っているなど、意識がはっきりしていない状態にさせる(意識が不明瞭な状態にある。同意を示すためには、性行為が持つ意味とリスクを十分に理解していることが前提となるため、寝ている人は同意を示すことができない[15])」
- 「拒絶するいとまを与えない(被害者が急に襲われる場合などを想定)」
- 「恐怖・驚がくさせる(恐怖・驚がくしている。ショックで体が硬直し、いわゆるフリーズ(凍りつき)状態になった場合などを想定)」
- 「虐待による心理的反応を生じさせる(被害者が長年にわたって性的虐待を受けることで、拒絶する意思すら生じない場合などを想定)」
- 「経済的・社会的関係の地位に基づく影響力で受ける不利益を憂慮させる(不利益を憂慮している。教師から生徒、上司から部下、スポーツの指導者から選手に対する行為などで、断ったら不利益を受ける可能性がある場合)[16]」
- 以上「1 - 8の行為や状況」または、「わいせつな行為ではないと勘違いさせたり、人違いをさせる/していること」により「性的行為に同意しない意思を形成(同意しないことを発想もできない)、表明(同意しないことを言えない)、全うすることが困難(同意しないと言っているのに無視して押し切られる)な状態にさせたり、そうした状態に乗じたりして、性的行為をした」場合に処罰される[2][17][18]。今まで通り、立証責任は検察官にあるため、8類型にプラスして同意がなかった/全う出来なかったことを証明するビデオや元々の関係性、性交後の行動など事実を捜査して、総合的に評価が行われる[14]。
監護者性交等罪
[編集]18歳未満の者に対して、その者を現に監護する者(監護者)であることによる影響力があることに乗じて性交等をした場合には、監護者性交等罪(第179条第2項)に当たる。性交等の定義と法定刑は不同意性交等罪と同一である。
監護者
[編集]本条項の主体は、(18歳未満の者を)「現に監護する者」であり、真正身分犯である。「現に監護する者」の範囲に関しては、次の衆議院法務委員会での政府参考人の答弁(抄)によれば、以下の場合が想定されている。
2017年(平成29年)6月7日衆議院法務委員会での林眞琴政府参考人の答弁[19]
…監護するというのは、民法八百二十条に親権の効力と定められているところと同様に監督し、保護することをいいまして、十八歳未満の者を現に監護する者とは、十八歳未満の者を現に監督し、保護している者をいいます。
本罪の現に監護する者に当たるか否かは個別の事案における具体的な事実関係によって判断されることとなりますが、民法における監護の概念に照らしまして、現にその者の生活全般にわたって、衣食住などの経済的な観点でありますとか生活上の指導監督などの精神的な観点、このようなものから依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められ、かつ、その関係に継続性が認められるということが必要であると考えております。
(中略)例えばスポーツのコーチでありますとかあるいは教師など、こういった者についてはやはり通常は、生徒等との間に生活全般にわたる依存、被依存ないし保護、被保護の関係が認められないことから、現に監護する者に当たらない場合が多いと考えております。
影響力
[編集]「影響力があることに乗じて」については、前記と同じの答弁(抄)によれば、以下の場合が想定されている。
2017年(平成29年)6月7日衆議院法務委員会での林眞琴政府参考人の答弁[19]
乗じてとの用語でございますが、...現に監護する者であることによる影響力が一般的に存在し、当該行為時においても、その影響力を及ぼしている状態で性的行為を行うということを意味します。...性的行為を行う特定の場面におきまして、監護者からこの影響力を利用する具体的な行為がない場合でありましても、このような一般的かつ継続的な影響力を及ぼしている状態であれば、被監護者にとっては監護者の存在を離れて自由な意思決定ができない状態であると言えます。
その上で、被監護者である十八歳未満の者を現に監護し、保護している立場にある者がこのような影響力を及ぼしている状態で当該十八歳未満の者に対して性的行為をすることは、それ自体が被監護者にとって当該影響力により被監護者が監護者の存在を離れて自由な意思決定ができない状態に乗じていることにほかならないと言えます。 よって、乗じてと言えるためには、性的行為に及ぶ特定の場面において影響力を利用するための具体的な行為は必要なく、影響力を及ぼしている状態で行ったということで足りると考えております。
結果的過重犯
[編集]人の死傷を伴う場合は、結果的加重犯として刑がより重くなる。不同意性交等罪若しくは監護者性交等罪又はこれらの罪の未遂罪を犯しよって人を死傷させた時は、無期又は6年以上の懲役となる。
過去の類型
[編集]ここでは、過去に規定されていた犯罪類型の法的観点からのそれぞれの罪の概要について述べる。改正の経緯については、後述の節を参照のこと。
罪 | 適用期間 | 構成要件 | 公訴時効 | 親告罪 | 有期懲役 | 廃止 | 新設 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(a) 罪名:手段・状況 |
(b) 性行為 |
(c) 被害者 |
(d) 性交同意年齢 | |||||||
強姦罪 (第177条) 準強姦罪 (第178条) |
1908年- 2017年 |
強姦罪:「暴行・脅迫」を用いる 準強姦罪:「心神喪失・抗拒不能(抵抗ができない状態)」にする/乗じる[20][21] |
男性器の挿入が条件[22] 姦淫(男性器を女性器に挿入する)[20] |
被害者は女性、加害者は男性のみ[20] | 13歳 13歳未満は、 (a)の要件なし、 相手が同意していても処罰の対象 |
10年 | 親告罪 (被害者が告訴しなければ、検察は事件を起訴できない)[20] |
2-15年(1908-2004年) 3-20年(2005-2017年) |
||
強制性交等罪(第177条) 準強制性交等罪(第178条第2項) |
2017年- 2023年 |
強制性交等罪:「暴行・脅迫」を用いる 準強制性交等罪:「心神喪失・抗拒不能(抵抗ができない状態)」にする/乗じる[20][14] |
男性器の挿入が条件[22] 性交、肛門性交または口腔性交(男性器を女性器や肛門、口腔内に挿入する/させる)[20][23] |
性別を問わない(女性以外も被害者に、男性以外も加害者に)[20] | 13歳 (〃) |
10年 | 非親告罪 (事件の認定をもって、検察は事件を起訴できる)[20] |
5-20年 | 法定刑の引き上げに伴い「集団強姦罪」「集団強姦致死傷罪」を廃止[20] | 「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」 18歳未満の子どもを監護(生活全般を支える)する親や児童養護施設職員など、その影響力に乗じて性交・わいせつ行為をした者を処罰できる[20] |
不同意性交等罪(第177条) | 2023年- | 不同意性交等罪:「8つの行為や状況」または「わいせつな行為ではないと勘違いさせたり、人違いさせる/していること」により「被害者が同意しない意思を表すことが難しい状態にする/乗じる[20] | 性交、肛門性交または口腔性交に加えて、体の一部(指など)や物を、膣や肛門に挿入する行為も「性交」扱いに[9] | 性別を問わない[2] | 16歳 13未満は、(a)の要件なし; 13-15歳は、5歳以上年上の加害者は(a)の要件なし、 相手が同意していても処罰の対象[2] |
15年 | 非親告罪 | 5-20年 | 〔強制性交等罪と準強制性交等を統合〕[2] | 「性的面会要求罪」「性的姿態撮影罪」[2] |
2017年までの類型
[編集]強姦罪
[編集]暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫、または、13歳未満の女子を姦淫することを内容とする犯罪である。法定刑は3年以上20年以下(2004年改正以前は2年以上15年以下)の懲役。
姦淫とは、男性生殖器を女性生殖器に挿入すること、つまり性交であり、現在の性交等よりも範囲が限られていた。
強姦罪は真正身分犯(構成的身分犯)である(最判昭和40年3月30日刑集19巻2号125頁)ので、原則として加害者は男性であり、女性は強姦罪の加害者になりえない(女性は単独で直接正犯となりえない)。一方、刑法65条1項により、女性が加害男性と共謀した場合には強姦罪の共犯となりうる(最高裁判所昭和40年3月30日判決[24])。
強姦罪の客体(被害者)は女性に限定されていた。この点に関して、刑法177条の規定が憲法14条1項の法の下の平等に反しないか争われた裁判では、最高裁判例は違憲ではないとしている(最高裁判所昭和28年6月24日判決[25])。
強姦に着手し、これを遂げない間に相手を殺害した直後、引き続き姦淫を遂げたときは、相手が既に死亡していても、強姦については既遂罪が成立する(大阪高等裁判所昭和42年5月29日判決[26])。
強姦罪の暴行・脅迫については「相手方の反抗を著しく困難にする程度のものであれば足りる」として、強盗罪の場合のような、相手方の反抗を不能にする程度までの暴行・脅迫でなくともよいとする(最高裁判所昭和24年5月10日判決[27])。相手方が13歳未満の女子の場合は、脅迫・暴行がなく、または同意があったとしても強姦罪を構成する(刑法177条後段)。判断能力の未熟な青少年を法的に保護する趣旨である[28]。
準強姦罪
[編集]暴行・脅迫によらない場合も、女性の心神喪失・抗拒不能に乗じ、又は女性を心神喪失・抗拒不能にさせて姦淫した場合は、準強姦罪が成立した(刑法178条2項)。法定刑は強姦罪と同様。
心神喪失とは、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態をいい、抗拒不能とは、心理的・物理的に抵抗ができない状態をいう。睡眠・飲酒酩酊のほか、著しい精神障害や、知的障害にある女性に対して姦淫を行うことも準強姦罪に該当する(福岡高裁昭和41年8月31日判決[29])。
集団強姦罪
[編集]2人以上の者が共同して強姦(準強姦含む)した場合、集団強姦罪として法定刑が加重される。なお、集団強姦罪の場合は、実際に性行為に参加していなくても、その場にいれば成立する。法定刑は4年以上20年以下の懲役。2004年に新設、2017年廃止。
結果的加重犯(2017年までの類型)
[編集]上記の罪又はその未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合には結果的加重犯として刑が加重される。強姦致死傷罪、準強姦致死傷罪は無期又は5年以上20年以下の懲役(平成16年改正以前は無期又は3年以上15年以下の懲役)、集団強姦致死傷罪は無期又は6年以上の懲役であった。
2017年から2023年までの類型
[編集]強制性交等罪
[編集]13歳以上の者に対し暴行又は脅迫を用いて人に性交等を強い、また暴行・脅迫の有無を問わず13歳未満の者と性交等をすることを内容とする犯罪である。法定刑は5年以上20年以下の懲役。旧強姦罪。
被害者、加害者ともに性別不問である。
性交等とは「性交、肛門性交又は口腔性交」である。本罪での「性交、肛門性交又は口腔性交」のそれぞれについては文理上定義はなく、判例も2018年(平成30年)時点で不明であるが、次の衆議院法務委員会での政府参考人の答弁(抄)によれば、以下の場合が想定されている。
2017年(平成29年)6月7日衆議院法務委員会での林眞琴政府参考人の答弁[19]
まず、性交とは、膣内に陰茎を入れる行為をいいます。肛門性交とは、肛門内に陰茎を入れる行為をいいます。また、口腔性交とは、口腔内に陰茎を入れる行為をいいます。
本条におきましては、誰の陰茎を誰の膣内、肛門内、口腔内に入れるかについては文言上限定しておりませんので、自己の膣内等に被害者の陰茎を入れる行為を含むと解することができると考えて用いておるところでございます。
したがいまして、今回の法案における性交、肛門性交または口腔性交とは、相手方の膣内、肛門内もしくは口腔内に自己の陰茎を入れる行為のほかに、自己の膣内、肛門内もしくは口腔内に相手方の陰茎を入れる行為を含むものであると考えております。
判例が不明のため構成要件該当性は不明であるが、この答弁の定義によった場合には、加害・被害側を問わず、行為者が男女間、または男性同士で、陰茎を膣、肛門もしくは口腔に入れ、または陰茎を膣、肛門もしくは口腔に入れさせた場合が対象となる。よって、オーラルセックス行為の内、フェラチオ行為でも加害・被害側を問わず対象となるが、クンニリングス行為の構成要件該当性、行為者が女性同士の場合の構成要件該当性、またフェラチオ行為についても、口腔内に陰茎を没入させず、舌で舐める等の行為に留まる場合の構成要件該当性については、この答弁においては明言されておらず、議論がある[30]。
また、法制審議会第175回会議「性犯罪の罰則に関する検討会」における解釈では、「入れさせた」場合につき「陰茎を自己もしくは第三者の膣、肛門もしくは口腔に入れさせた」としている[31][32]。
被害者が13歳未満の者の場合は、脅迫・暴行がなく、または双方の同意があったとしても強制性交等罪を構成する。
準強制性交等罪
[編集]暴行・脅迫によらない場合も、心神喪失・抗拒不能に乗じ、又は心神喪失・抗拒不能にさせて性交等をした場合には、準強制性交等罪に当たる(刑法178条2項)。被害者が酒や薬物等で抵抗できない状態にされている際に課される[33]。課される法定刑は強制性交等罪と同様。旧準強姦罪。
結果的加重犯(2017年から2023年までの類型)
[編集]上記の罪又はその未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合には結果的加重犯として刑が加重される。強制性交等致死傷罪、準強制性交等致死傷罪ともに無期又は6年以上20年以下の懲役であった。
性犯罪に関する刑法改正の経緯
[編集]日本の刑法 |
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明治時代に定められた性犯罪に関する刑法は、性被害当事者が声を上げ、その声を各方面に働きかけた専門家や議員によって改正が実現されてきた[20][4][34]。
年表
[編集]- 1880年(明治13年)、旧刑法に強姦罪(第348条・349条)が制定された[11][35]。
- 1907年(明治40年)、現行の刑法が制定され、強姦罪が規定された(性犯罪処罰規定の基本的な構成要件は2017年まで維持)[36][14][11]。
- 2004年(平成16年)、懲役の下限を2年から3年に引き上げた[37]。衆参両院の法務委員会の附帯決議で、性犯罪の在り方についてさらなる検討が求められた[38]。
- 2010年(平成22年)、第3次男女共同参画基本計画で女性に関するあらゆる暴力の根絶が掲げられ、2015年末までに強姦罪などの「非親告罪化」「性交同意年齢引き上げ」「暴行・強迫を要する構成要件の見直しが提案された[38][39]。
- 2017年(平成29年)、1907年の制定以来110年ぶりに大幅改正され、強姦罪から強制性交罪に改称された[36][23]。この改正刑法には、多くの課題が残されたとして、施行後3年を目途に実態に即して見直しを行うという附則が付いた[36][40][41]。
- 2019年3月(平成31年)、性犯罪に関する無罪判決が1ヶ月に4件相次ぎ、各地で性暴力に抗議する「フラワーデモ」が始まった[42][43][44]。
- 2020年(令和2年)、2017年改正法附則の3年後の見直しに従い、「性犯罪に関する刑事法検討会」が法務省内に設けられ、性被害当事者団体『一般社団法人Spring』の山本潤理事も委員になった[45][46][14]。
- 2021年(令和3年)、性暴力被害者の支援などに携わる13団体による「刑法改正市民プロジェクト」が、同意のない性行為を犯罪とする「不同意性交等罪」の創設を求める約6万1千人の署名を法務省に提出した[47][48]。
- 2023年(令和5年)、強制性交等罪と準強制性交等罪を統合して不同意性交等罪に改称した[6][49]。この改正刑法については、5年後に性被害の実態や社会の意識、特に性的同意についての意識も踏まえて見直しを検討することや、「不同意性交罪」の公訴時効の延長について、被害申告の困難さに関する調査をするという附則が付いた[50][5][8][51]。
2023年改正概要
[編集]不同意性交等罪では、条文に「有効な同意」ができない8つの典型的な場面を例示した[7][4]。8つの類型には、「暴力・脅迫」だけでなく、「心身の障害がある場合」「アルコール・薬物を摂取している場合」「睡眠・意識不明瞭な場合」「拒絶する隙を与えない不意打ち」「恐怖・驚愕させた場合」「虐待による心理的反応がある場合」「地位・関係性が対等でない場合」が明記され[7][4][52]、それに類する行為により「同意しない意思の形成、表明、全う」のいずれかが難しい状態にさせたり、そうした状態に乗じたりして、性行為をした」場合は処罰される[17][5]。 「不同意性交等罪」という名称は、内心(不同意であったこと)のみを成立要件とはしていないが、「同意がない性行為は性犯罪になる」という性犯罪処罰規定の本質をメッセージとして伝えている[11][7][4]。被害者が性行為に不同意である客観的な状況を条文の中で明確に規定しているため、法の明確性を守りつつ、これまでは処罰ができなかった加害者に対して適切な処罰が出来るようになる可能性がある[11][53][4]。
不同意性交等罪では、男性器だけでなく、体の一部(指など)や物を膣や肛門に挿入することも「性交」扱いになった[8][9][10]。配偶者(夫婦)間の不同意性交等の罪が成立することも明文化された[54]。性的部位や下着などを盗撮したり拡散することを取り締まる「性的姿態撮影罪」(撮影罪)も新設された[5][55][56]。公訴時効は10年から15年に延長され、被害者が未成年の場合は被害だと認識できるまでに時間がかかることなどから、公訴時効の起点を18歳とする[57][58][59]。
大人から子どもへの、地位や信頼を利用した性暴力への対策も強める[57][58]。性的行為の意味を理解し同意ができるとみなす「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げ、16歳未満と性的行為を行った場合は、同意の有無に関わらず処罰の対象になる[57][58][60]。ただし、13 - 15歳の場合は、5歳以上年上の者が処罰の対象になる[57][58]。16歳未満をわいせつ目的で金銭提供を約束するなどして手なずけ、会うように仕向けたり、性的な自撮り画像などを送らせることを取り締まる「性的面会要求罪」も新設された[5][55][56][58]。強制わいせつ罪(刑法第176条)と準強制わいせつ罪(刑法第178条)も統合し、罪名を「不同意わいせつ罪」(刑法第176条)に改めた[57]。
条文
[編集]現行法(2023年7月5日施行)と、各改正ごとの関連条文をそれぞれ示す。 条文中に本来ない文言を付け足したときは〈〉で示し、また、前回改正のものと改正のない条文は同上、省略するときは略と表記する。
令和5年(2023年)7月5日施行
[編集]第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2〈略〉
3〈略〉
- (不同意性交等)
第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
- 第百七十八条 削除
- (監護者わいせつ及び監護者性交等)
第百七十九条 〈略・監護者わいせつの規定〉
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条第一項の例による。
- (未遂罪)
第百八十条 第百七十六条、第百七十七条及び前条の罪の未遂は、罰する。
- (十六歳未満の者に対する面会要求等)
第百八十二条 わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
2 前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該十六歳未満の者と面会をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
3 十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為(第二号に掲げる行為については、当該行為をさせることがわいせつなものであるものに限る。)を要求した者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 性交、肛門性交又は口腔性交をする姿態をとってその映像を送信すること。
二 前号に掲げるもののほか、膣又は肛門に身体の一部(陰茎を除く。)又は物を挿入し又は挿入される姿態、性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部をいう。以下この号において同じ。)を触り又は触られる姿態、性的な部位を露出した姿態その他の姿態をとってその映像を送信すること。
- (淫行勧誘)
第百八十三条 〈旧百八十ニ条と同上〉
刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律・令和5年(2023年)6月23日
[編集]- 第三条 刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)の施行の日(以下この条において「刑法施行日」という。)の前日までの間における第一条の規定による改正後の刑法第百七十六条、第百七十七条及び第百八十二条の規定の適用については、同法第百七十六条第一項及び第百八十二条中「拘禁刑」とあるのは「懲役」と、同法第百七十七条第一項中「有期拘禁刑」とあるのは「有期懲役」とする。刑法施行日以後における刑法施行日前にした行為に対する同法第百七十六条、第百七十七条及び第百八十二条の規定の適用についても、同様とする。
過去の条文
[編集]関連する歴代の過去の条文を示す。
明治41年(1908年)10月1日施行
[編集]昭和22年(1947年)11月15日施行
[編集]- 第百八十三条 削除
〈ほか同上。ただし、百八十二条の罰金刑については、以下の通り別の法による特別規定あり。〉
- 罰金等臨時措置法・昭和24年(1949年)2月1日施行
- 第一条 経済事情の変動に伴う罰金及び科料の額等に関する特例は、当分の間、この法律の定めるところによる。
- 第二条 罰金は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第十五条及び刑法施行法(明治四十一年法律第二十九号)第二十条の規定にかかわらず、千円以上とする。但し、これを減軽する場合においては、千円以下に下げることができる。
2 〈略〉
- 第三条 左に掲げる罪につき定めた罰金については、それぞれその多額の五十倍に相当する額をもつてその多額とする。
一 刑法の罪。但し、第百五十二条の罪を除く。
ニ 〈略〉
三 〈略〉
2 〈略〉
- 罰金等臨時措置法・昭和47年(1972年)7月1日施行
- 第一条 〈同上〉
- 第二条 罰金は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第十五条及び刑法施行法(明治四十一年法律第二十九号)第二十条の規定にかかわらず、四千円以上とする。但し、これを減軽する場合においては、四千円以下に下げることができる。
2〈略〉
- 第三条 左に掲げる罪につき定めた罰金については、それぞれその多額の二百倍に相当する額をもつてその多額とする。
一 刑法の罪。但し、第百五十二条の罪を除く。
二 〈略〉
三 〈略〉
2 〈略〉
平成3年(1991年)5月7日施行
[編集]- 第十五条 罰金ハ一万円以上トス但之ヲ減軽スル場合ニ於テハ一万円以下ニ降スコトヲ得
- 第百八十二条 営利ノ目的ヲ以テ淫行ノ常習ナキ婦女ヲ勧誘シテ姦淫セシメタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス
〈ほか同上〉
平成7年(1995年)6月1日施行
[編集]- (懲役)
第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上十五年以下とする。
2〈略〉
- (有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
第十四条 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては二十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。
- (罰金)
第十五条 罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。
- (強姦)
第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、二年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
- (準強制わいせつ及び準強姦)
第百七十八条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をし、又は姦淫した者は、前二条の例による。
- (未遂罪)
第百七十九条 前三条の罪の未遂は、罰する。
- (親告罪)
第百八十条 第百七十六条から前条までの罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条から前条までの罪については、適用しない。
- (淫行勧誘)
第百八十二条 営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する
- 第百八十三条 削除
平成17年(2005年)1月1日施行
[編集]- (懲役)
第十二条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
2〈略〉
- (有期の懲役及び禁錮の加減の限度)
第十四条 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
2 有期の懲役又は禁錮を加重する場合においては三十年にまで上げることができ、これを減軽する場合においては一月未満に下げることができる。
- (罰金)
第十五条 〈同上〉
- (強姦)
第百七十七条 暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
- (準強制わいせつ及び準強姦)
第百七十八条〈略・準強制わいせつの規定〉
2 女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による。
- (集団強姦等)
第百七十八条の二 二人以上の者が現場において共同して第百七十七条又は前条第二項の罪を犯したときは、四年以上の有期懲役に処する。
- (未遂罪)
第百七十九条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。
- (親告罪)
第百八十条 第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
2 前項の規定は、二人以上の者が現場において共同して犯した第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪については、適用しない。
- (淫行勧誘)
第百八十二条〈同上〉
- 第百八十三条 削除
平成29年(2017年)7月13日施行
[編集]- 〈第十二条・第十四条・第十五条 同上〉
- (強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
- (準強制わいせつ及び準強制性交等)
第百七十八条〈略・準強制わいせつの規定〉
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
- (監護者わいせつ及び監護者性交等)
第百七十九条 〈略・監護者わいせつの規定〉
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
- (未遂罪)
第百八十条 第百七十六条から前条までの罪の未遂は、罰する。
- (淫行勧誘)
第百八十二条 〈同上〉
- 第百八十三条 削除
1907年の制定(強姦罪)
[編集]1907年の強姦罪制定時は、加害者は男性に限られ、被害者は女性とされていた[36][23]。女性は結婚相手以外の人と性交をしてはいけない「姦通」といった概念があり、家制度を守るために、「貞操」に対する罪として捉えられていた[36][11][61][62]。性は、長らく「権利の問題」ではなく、家父長制や家族といった「あるべき規範」に縛られ、性暴力は「あってはならないことがおこってしまった」という観点から、被害者が責められ、告発しにくい状況があった[36][11]。戦後は、「性的自由」の問題とするのが一般的となったが、「強姦」被害者の対象を女性のみにし、男性を含めないのは、女性の貞操への意識を残した差別的取り扱いではないかなどの批判もあった[63][36]。
2004年の改正
[編集]- 強姦罪の法定刑の下限を、懲役2年以上から3年以上に引き上げた[37]。
- 集団強姦罪が新設された[64][20][65]。単独犯の強姦罪は親告罪で法定刑は3年以上であるのに対し、集団強姦罪は被害者の訴えがなくても検察官が起訴できる非親告罪であり、4年以上の懲役とした[64][20][65]。
集団強姦等罪(2004年創設、2017年廃止)
[編集]2004年の改正の際に、強姦罪等よりも重い刑を科すために創設されたが、2017年の改正で、強制・準強制性交等罪が非親告罪になり法定刑が5年以上に引き上げられて、集団強姦罪(旧刑法178条の2)の法定刑の4年以上を超えたため、廃止された[38][64][20]。集団強姦等致死傷罪(旧刑法181条3項。無期または6年以上の懲役)も廃止され、強制性交等致死傷罪(刑法181条。無期または6年以上の懲役)に含められた[38][66]。
集団強姦等罪は、2003年5月18日のインカレサークルの集団強姦事件であるスーパーフリー事件を受けて、2004年の刑法改正で創設された[67][65]。2人以上の者が共同して強姦(準強姦含む)した場合に適用され、性別不問で実際に性行為に参加していなくても、その場に居れば刑罰が成立していた[68]。
2010年の第3次男女共同参画基本計画における見直し
[編集]2010年、第3次男女共同参画基本計画で女性に関するあらゆる暴力の根絶が掲げられ、2015年末までに強姦罪などの「非親告罪化」「性交同意年齢引き上げ」「『暴行・強迫』を要する構成要件の見直し」が提案された[38][39]。
- 強姦罪の非親告罪化(告訴するかどうかの選択を迫られているように感じる被害者の心理的負担。被害者が低年齢の場合、告訴ができるかという懸念の存在)。
- 性交同意年齢の引き上げ(13歳以上であれば性交がどのような行為か理解し、同意を自分で判断できるかが不明。性犯罪は10 -20歳の若年層が最も被害にあいやすい[20])。
- 「暴行・脅迫」を用いることを要件とする強姦罪の構成要件の見直し(被害者が恐怖や加害者の社会的地位への配慮により抵抗しないこともあるため)。
国際的観点からの問題点
[編集]性暴力について、日本は国連自由権規約委員会を始め、多くの国際的な条約機関から法改正の勧告を受けている[69][70]。
- 2008年11月、国連自由権規約委員会は、「男女間の性交渉のみをの強姦罪の対象としていること」「攻撃に対する被害者の抵抗が犯罪の要件にされていること」「裁判官が被害者に抵抗したことの証拠を求めること」「被害者が13歳未満である場合以外は告訴が必要なこと」「加害者が公正な処罰を免れること」「被害者の支援が実行されていないこと」「性暴力の専門的な研修を受けた医療者が不足していること」等に懸念を示した[71] [72] 。委員会は、刑法第177条の強姦罪の定義を拡大し、「男性に対する強姦」と共に「近親相姦」「性交渉以外の性的虐待」も重大な犯罪とし、「被害者が攻撃に対して抵抗したことを立証しなければいけない負担を取り除くこと」「被害者の告訴がなくても起訴できるようにすること」「裁判官や警察官などに対する性暴力についてのジェンダーに配慮した研修を行うこと」を求めた[72]。
- 2014年、国連自由権規約委員会は、数ある問題点のうち「強姦罪の構成要件(攻撃に対する被害者の抵抗)の見直し」「性交同意年齢の引き上げ」「性犯罪の非親告罪化」について勧告した[69][70]。
2017年の改正(強制性交等罪に改称)
[編集]強姦罪から「強制性交等罪」、準強姦罪から「準強制性交等罪」に変更された。強制と準強制性交等罪の刑の重さ(量刑)は同じで、5年以上20年以下の有期懲役である[73][74][33]。
強制性交等罪(刑法第177条旧規定)は、「暴行・脅迫」を用いた13歳以上の者への性交や肛門性交、口腔性交(以下「性交等」)、13歳未満の者への性交等に対する罪である[73][74][33]。
準強制性交等(刑法第178条旧規定)は、被害者の「心神喪失」や「抗拒不能」な状況に乗じ、またはそのような状態にさせて性交等を行った場合に、「暴行・脅迫」がなくても罪に問えるものである[73][74][33]。準強制性交等の適用範囲は広く、「心神喪失」とは、アルコールや薬物・精神障害・失神・睡眠・泥酔などから、自身の性行為について正常な判断ができない状態にある場合をいい、「抗拒不能」とは、手足を縛られたり、催眠術・錯誤・畏怖の状態など、物理的・心理的に抵抗ができない状態にあった場合をいう[11][注釈 1]。準強制性交等罪は、強制性交等罪(177条旧規定、強姦罪)よりも「意思に反する性行為」を処罰する際に、広く適用できる条文だが、実際には強制性交等罪の適用が中心で、準強制性交等罪(準強姦罪)の適用は少数にとどまっている[11]。
強姦罪からの変更点
[編集]2017年、性犯罪に関する刑法が1907年の制定以来110年ぶりに大幅改正され、強姦を罰する強姦罪から、より包括的な強制性交等罪へと改正された[36]。この改正では、「女性以外の被害も対象にする」「懲役の下限を3年から5年に上げる」「被害者の告訴がなくても起訴できる(非親告罪化)」「監護者(親や養親)との性交同意年齢引き上げ」といった見直しが行われた[36][6][75]。なお、この改正刑法には「『暴行・脅迫』の要件が据え置かれた」「公訴時効が短い」「性交同意年齢が13歳で明治時代の刑法のまま」など、多くの課題が残されたとして、施行後3年を目途に実態に即して見直しを行うという附則が付いた[36][40][41]。
改正の要点は以下の通りであった[36][41][19][76]。
- 女性以外も被害者として認められるようになった[36][41][23]。強姦罪では「加害は男性、被害は女性」に限定されていたが[77]、強制性交等罪では、性別を問わず、他人に対して「男性器を膣や肛門、口腔内に挿入する/させる行為」をした場合は処罰されることになった[78][36][41]。強姦罪では、肛門性交や口腔性交に強姦罪は適用されず、刑が軽い強制わいせつ罪が適用されてきた[23][38][79]。これにより性差が撤廃されたとされ、附帯決議でも「被害の相談、捜査、公判のあらゆる過程において、男性や性的マイノリティに対して偏見に基づく不当な取扱いをしないことを研修等を通じて徹底する」という内容が明記された[22]。一方で、膣や肛門、口腔への「男性器の挿入」が犯罪の成立要件となっているため、指や器具など男性器以外の物を使った場合は、強制性交等罪は適用されない[80]。
- 厳罰化し、 法定刑の下限を懲役3年以上から5年以上に引き上げ、5年以上20年以下の有期懲役になった[20]。
- 非親告罪化し、被害者が告訴しなくても検察が事件を起訴できるようにした[36][66]。性犯罪を親告罪化していた理由は、被害者の名誉やプライバシーを保護することにあった[23]。しかし、被害者みずからが被害を訴えなければ加害者を処罰できないため、逆恨みなどを恐れ、訴えることが難しい状況が続いていた[22][23][20]。法改正で非親告罪に変わり、強盗などと同じく、被害者が意思を示しているかどうかにかかわらず、事件の認定をもって処罰ができるようになった[22][23][20]。
- 強姦罪の法定刑引き上げ及び非親告罪化により、「集団強姦等罪」を廃止した[64][20]。
- 「監護者性交等罪」「監護者わいせつ罪」を新設し、18歳未満の子どもを監護(生活全般を支える)する親や児童養護施設職員などが、その影響力に乗じて性交・わいせつ行為を行った場合は、暴行や脅迫がなくても処罰されるようになった[36][23]。
- 罪名が強姦罪から強制性交等罪に改定されたことに伴い、刑法178条2項の「準強姦罪」(3年以上の懲役)は「準強制性交罪」(5年以上の懲役)に、刑法181条の「強姦致死傷罪」(無期または5年以上の懲役)は「強制性交等致死傷罪」(無期または6年以上の懲役)に、刑法241条の「強盗強姦罪」(無期または7年以上の懲役)は「強盗・強制性交等罪」(無期または7年以上の懲役)に、「強盗強姦致死傷罪」(死刑または無期懲役)は「強盗・強制性交等致死傷罪」(死刑または無期懲役)へと変更された[66][38]。
監護者性交等罪(2017年創設)
[編集]性虐待の実情を鑑み、関係性を利用した強姦の中でも特に被害者の拒否が難しいと考えられることや、その後の人生に与える影響の深刻さから、「監護者性交等罪(刑法179条2項)」「監護者わいせつ罪(刑法176条)」が新設された[82][36][83]。「監護者」とは、親などの生活や生計を共にし、保護・被保護、依存・被依存の関係にある者を監護する者のことである[36]。これにより、監護者(実親や養親、養護施設の職員など子どもを監護する立場の人)が、18歳未満の子どもが自分の言葉を信じていることを利用したり、生活の面倒をみているという立場を利用して性交やわいせつな行為をした場合は、「暴行・脅迫」がなく、子どもの同意がある場合も罪に問われることになった[82][36][83]。刑法改正前は、親子などの監護者と被監護者の間では、「暴行・脅迫」がない場合は強姦罪等よりも量刑が軽い児童福祉法違反(淫行、10年以下の懲役または300万円以下の罰金)で処分される例が多かったが、この法改正により強制性交等罪と同じく5年以上20年以下の有期懲役という重い罰則を科すことが可能となった[38][84][85]。ただし、「監護者」は、同居して子どもの身の回りの世話をしている者に限定されており、その範囲が非常に狭いことが指摘されている[38][83]。部会における議論では、被害者に対して強い影響力を持つ教師、スポーツ指導者、雇用主等も対象に含めるべきとの意見が出たが、具体的な事情を考慮すると規定が曖昧化しかえって抜け道が生じかねない等の理由から、改正法案には含まれなかった[38]。被害者団体や支援者らは、そもそも「『暴行・脅迫要件』の立証が課せられる『性交同意年齢(13歳、性行為への同意を自分で判断できるとみなす年齢)』が他国と比べても低すぎること」「監護者以外であっても、地位・関係性を利用した性加害をした場合には、『暴行・脅迫』が無くても罪に問えるように法改正すること」などを求めている[83]。2019年のフラワーデモのきっかけとなった事案では、父親が精神的支配下に置いていた娘(19歳)の意思に反して性交し、「暴行・強迫要件」による「抗拒不能」にあたらないとして1審で無罪判決になっている[44][86]。
この監護者性交等罪の創設にあたっては、日本弁護士連合会(日弁連)が、「親子間で真摯な性交(子どもがその意味を理解し同意する性交)がないとは言えない」として反対し、被害者支援57団体は「子どもは保護して育ててもらっている親にノーと言えるのだとさえ思っていない」「何をしているのかを理解できず、怖さのあまり、抵抗することも拒否を示すこともできなかった」と抗議を行った[82][20][13]。
2017年の改正の課題
[編集]- 強制性交等罪の「暴行・脅迫」の要件が据え置かれた[40][74][87]。強制性交等罪は、13歳未満の場合は、「暴行・脅迫」がなくても、その事実が立証できれば犯罪となるが[40][74][87]、13歳以上の場合には、「同意していないこと」に加え、加害者が「暴行や脅迫」して犯行に及んだことや、「抵抗できない状態(抗拒不能)につけ込んだ」ことを証明しなくてはならない[4][87][40]。また、犯罪が成立するには、加害者が「被害者の同意がないことや、抗拒不能を認識していること」が必要であり、この認識がなければ、故意が否定されて無罪となることがある[11][74][40][73]。この刑法では、どのような行動が犯罪となり、どのような行動なら犯罪とならないのかの基準が明確ではなく、裁判所は証拠から「経験則」に基づいて事実認定をするため、裁判官の「経験則」が異なると、同じ証拠でも異なる判決になっていた[88][89][90][74][73][91]。裁判官の判断が予測できないため、監視カメラや録音、病院の診察内容や診断書等の客観的な「暴行・脅迫」の強い証拠が無い場合、検察は起訴に消極的で、警察は被害届を受けることに消極的である[92][74][40][93][89][94][95][96][97]。性被害者の当事者団体「一般社団法人Spring」の調査では、事件を警察に相談した208人のうち、被害届が受理されたのは約半数の104人で、うち14人が検察で不起訴になり、裁判で有罪になったのは8人だった[98]。性暴力救援センター「SARC」の調査ではセンターに相談した人のうち、警察へ被害届を出したり相談したのは半数以下であり、SARCが警察へ同行支援したケースでは、被害届の不受理が25%、不起訴5.5%、有罪判決2.7%で、被害届を受理しない理由では「暴行・脅迫要件の壁」が目立っていた[94][95]。法務省の調査では、不起訴処分(嫌疑不十分)になった548件のうち、強制性交罪の不起訴が380件で、内訳は「暴行・脅迫があったと認めるに足りる証拠がない(134件)」「暴行・脅迫が被害者の反抗を著しく困難にさせる程度であったと認めるに足りる証拠がない(54件)」などとなっていて、強制性交罪の不起訴のうち52%が「暴行・脅迫要件」を満たさずに不起訴になっていた[96][99][53]。
- 公訴時効が短い。強制性交等罪の時効は10年だが、被害者が自分の経験を人に伝えられるまでには長い時間がかかる[36]。
- 監護者の範囲が狭い[36][100]。日本には教師と生徒、上司と部下、医者と患者、宗教指導者と信者などの「地位・関係性を利用した性加害」を裁ける類型がないため、対等な関係性でない2者間の力関係が考慮されずに裁かれている[36][20][22]。「地位・関係性を利用した性加害」は、「居場所・仕事を失うかもしれない」などの不安から抵抗することが困難であり、暴行や脅迫がなくても性暴力を行えるという実態を踏まえる必要がある[36][20][22]。
- 性交同意年齢(性行為の意味を理解し、同意を自分で判断できるとみなす年齢)が、明治時代の刑法のまま13歳で据え置かれた[87]。
- 配偶者(夫婦)等間の「強制性交等罪」について明文化されていない[101][83]。
- 「男性器の挿入」が条件で、指や器具、異物の挿入による性暴力が対象にならない[22][80]。実際に起きている性被害は、男性器を挿入されることだけではなく、特に性的マイノリティーの被害は、男性器が介在しないこともある[22]。当事者などは、「性器規定」を撤廃し、「指や器具等による性暴力」を規定することを求めている[22][80][102][103][22]。
- 「障害に乗じた性暴力」を防ぐ規定がなく、準強制性交等罪の構成要件である「心神喪失・抗拒不能」に乗じたと解釈して、処罰されている[104]。しかし、障害によっては性暴力自体を認識できなかったり、立証することが難しく、施設関係者や指導的な立場の人との力関係が背景にあることもある[104]。発達障害や知的障害などのある人は性暴力に遭いやすく、障害のある人は、ない人の約2 - 3倍、性暴力を経験している[105][106]。性暴力被害者の支援団体は、「地位・関係性に基づく性犯罪として『被害者としての障害児/障害者』の概念を刑法に入れるよう」せめて「『準強制性交等罪』の『抗拒不能』の要件に『被害者が障害児/障害者であること』を盛り込むよう」求めている[107][104][105]。
- 刑法改正にあたり、検討会の委員からは「性犯罪に対する対応としては刑法の規定の改正以外にもいろいろある、というより、むしろそちらの方が中心であるべき」「犯罪への対策、その最善のものは社会の在り方のほうを変えること」という発言があり、刑法改正に加え、性暴力防止のための教育、被害者支援のためのワンストップ支援センターの拡充や刑事裁判における被害者支援の充実等、社会の様々な場面での性犯罪対策が求められた[38]。
夫婦間の性的DV
[編集]2017年の法改正では刑法に明文化されなかったが、現状では夫婦間であっても、ドメスティックバイオレンス(DV、家庭内暴力)に該当する強制性交の罪が問われるという考え方が有力であり、内閣府は「『嫌がっているのに性的行為を強要する』『中絶を強要する』『避妊に協力しない』といったものは、夫婦間の性交であっても、刑法第177条の強制性交等罪に当たる場合があります(夫婦だからといって、暴行・脅迫を用いた性交が許されるわけではありません)」と説明している[108][109][92][110]。
戦前は「夫婦間で強姦罪は成立しない」とする否定説が通説であり、その後も家父長制よる女性差別的な価値観やプライベートな問題であることなどから、夫婦間の強制性交の問題が語られることは少なかった[92]。そのような中で、徐々に「強姦罪が夫婦間で成立するか」という議論がされ、裁判でも争われるようになった[92][注釈 2]。
2023年の法改正で、配偶者(夫婦)間の不同意性交等の罪が成立することが、刑法に明文化された[54]。
2019年3月の無罪判決
[編集]2019年3月、性犯罪に関する無罪判決が4件相次ぎ、刑法の要件が厳しすぎるため加害者が罪を免れているとして、各地で被害の実態を訴える「フラワーデモ」が始まるきっかけとなった[42][44][113]。特に、19歳の実娘への性的暴行罪が問われた判決では、娘の同意がないと認めながら無罪としたことから大きな波紋を呼んだ[44][40][73]。この4件のうち1件は検察官が控訴せず無罪が確定したが、3件は控訴により逆転有罪となった[73][90][40][114]。
- 3月12日、テキーラなどを大量に飲まされ、酩酊状態で性交をされた準強姦罪が、「女性は『抗拒不能』であったが、被告人は女性が抗拒不能であったことの認識がなく、性交について承諾ありと誤信した」として、故意が否定されて無罪判決になった[74]。2020年2月5日、控訴審が行われ、前回と同じ証拠で逆転有罪判決となった[74]。
- 3月19日、静岡地方裁判所の裁判員裁判で審議された強制性交等致傷罪が、「被告人の暴行が女性を抵抗困難にした」と認定されたものの、「被告は女性が抵抗困難であったことの認識がなく、故意が認められない」として無罪判決になった[115][90][11]。この裁判では検察官が控訴せず、無罪が確定した[73][90][11]。
- 3月26日、事件当時19歳の実娘が父親に性交をされた準強制性交等罪が、「娘の同意がなく長年の虐待で父親の精神的支配下に置かれていた」と認定されたものの「抗拒不能だったとはいえない」として無罪判決になった[44][40][73]。長女は、中学2年生の頃から性交を含む性的虐待を受け続け、殴る蹴るなどの暴行の存在も認定されていた[44][40]。2020年3月12日、控訴審が行われ、「娘は性的虐待を受け続けたうえ父親から学費や生活費の返済を迫られるなど、要求を拒否できない心理状態だった。性欲のはけ口にした卑劣な犯行で被害者が受けた苦痛は極めて重大で深刻だ」として逆転有罪判決となった[44][40][73]。父親は上告したが、棄却され有罪が確定した[44]。
- 3月28日、事件当時12歳の実娘が父親に性交をされた強姦罪が、「被害者の証言は信用できない」として、行為があったこと自体が認められず、無罪判決になった[115][114]。2020年12月21日、控訴審が行われ、「1審は証拠の評価を誤り、不合理な認定をした」「卑劣で悪質な犯行で常習性も認められる」として逆転有罪判決となった[91][115][116]。父親は上告したが、棄却され有罪が確定した[91][115][11]。
「凍りつき」についての指摘
[編集]強制性交等罪の「暴行・脅迫要件」は、「性行為を犯罪として処罰するには、『相手が同意していないこと』に加えて、加害者が被害者に暴行や脅迫を加えるなどして、『抵抗できない状態につけこんだ』ことが立証されなくてはならない」とあり、司法の場では「被害者が抵抗できたはず」という考えが前提になっている[117]。しかし、実際に性暴力被害を受けたとき、「声が出せない」「体が動かない」「頭の中が真っ白になる」「記憶がない」という『凍りつき(フリーズ)』の反応がおこることが少なくない[117][41][93]。スウェーデンの緊急レイプセンターによると、被害者の7割の人は、恐怖で体が硬直するという調査がある[118]。また、被害を最小限に抑えるための防衛反応として、速やかに、あるいは積極的に行為に応じてしまう「迎合反応」が起こることや、身体から意識が切り離される「解離」が起こることもある[41][119][120]。戦うか逃げるか、凍りつくか、迎合、解離するかは、体の無意識の反応であり、理性や意志でコントロールできるものではないとされる[117][121][119][122][注釈 3]。
不同意性交等罪を求める動き
[編集]2014年に発効したイスタンブール条約(女性に対する暴力と家庭内暴力の防止と撲滅に関する欧州評議会条約)は、「同意に基づかない性的行為を処罰する規定」を設けるよう締約国に求めている[41]。多くの欧米諸国では、レイプ罪や強制わいせつ罪は「被害者の同意がない(またはその能力がない)状態での性行為」を成立要件としている[85]。そして、「ノー・ミーンズ・ノー(No means No)=同意のない性行為を処罰する」型だけでなく、「イエス・ミーンズ・イエス(Yes means Yes)=相手の自発的な参加を確認しない性行為を処罰する」型の性的同意を採用をする国や地域が広がっている[41][123][124][125]。スウェーデンやスペイン、フィンランド、デンマーク、アイスランドなどは「Yes means Yes」型の刑法であり、相手が積極的な同意を示さないまま行った性行為はすべて違法とされる[85][41][126][127][118][128]。
- 2020年、日本学術会議は、「刑法改正にあたっては、国際人権基準に則り、諸外国の刑法改正を参考にして、少なくとも『同意の有無』を中核に置く規定(『No means No』型)に刑法を改める必要がある。その上で、「性的自己決定権』の尊重という観点から、可能な限り『Yes means Yes』型(スウェーデン刑法)をモデルとして刑法改正を目指すことが望ましい」と提言した[129]。
- 2021年2月10日、性暴力被害者の支援などに携わる13団体による「刑法改正市民プロジェクト」は、同意のない性行為を犯罪とする「不同意性交等罪」の創設を求める約6万1千人の署名を法務省に提出した[47][48]。現行の刑法では、「暴行・脅迫」や「心神喪失・抗拒不能」な状態がないと罪が成立しないため、被害者側は、「地位・関係性を利用した性犯罪」や「心身が硬直して動けなくなる」などの実態が理解されていないと批判し、「意思に反して」という点だけを構成要件とした「不同意性交罪」を求めている[130][131]。性的行為における「同意」は、両者に対等な関係性がなければ成立しないが、日本では対等な関係性が築かれていない2人の間の性的行為においても、法が求める「暴行・脅迫要件」により抵抗の有無を被害者が問われ、不同意であったことが認められても、加害者側の「同意していたと思った」という証言によって無罪となる事態が起きている[41]。加害者自身、それが性暴力だという認識が無いケースも多く、同意に基づかない性的行為は犯罪として罰せられることが明確になれば、加害側の認識不足によって起こる性暴力は減っていくと見られている[41]。
2023年2月24日、法務省は改正案に関し、「強制性交罪」を「不同意性交罪」に罪名変更する方針を示した[132][133]。「意思に反して」という点だけで処罰する成立要件は「内心のみを要件にすると処罰範囲が曖昧になる」として見送ったが、要綱でまとめられた条文には「同意しない意思」との文言が使われ、被害者の意思も重視していることが示された[132][133]。このため、被害者側は実質的に同罪を具体化した条文にあたるとして罪名変更を要請し、法務省が検討を重ねていた[132]。
2023年の改正(不同意性交等罪に改称)
[編集]2023年2月3日、法制審議会の部会で、性犯罪の実態に合わせた刑法改正の要綱案がまとまった[134]。
2月24日、法務省は、「強制性交等罪」と「準強制性交等罪」を統合して「不同意性交等罪」に罪名変更する案を示した[132][135][136][137]。
3月14日、内閣は刑法改正案を閣議決定し、国会に提出した[138][11][139][140]。
6月16日、国会で法案が可決・成立し、6月23日に公布、7月13日に施行された[5][141][55]。
- 強制性交等罪・準強制性交等からの変更点
- 罪が成立する8つの行為や状況を具体化し、「同意のない性行為は許されない」ことを明確にした。この8つの行為や状況は、今までの「抗拒不能」要件の解釈として、それぞれの裁判例でゆるやかに解釈して処罰されていた事案を類型化し、判断基準となるよう明確な文言に書き出したものである[4][14][11][53]。「抗拒不能」の解釈は、裁判官や警察官によって大きな幅があったため、判決や被害届の受理などの対応がバラついていた[53][14]。処罰される範囲が広がったのではないが、条文の中で明文化することにより、警察官の被害届の受理、検察官の起訴、裁判官の有罪にする確率に影響を与え、処罰されるべきものが適切に処罰されるようになる可能性がある[53][14][11][4]。
- 公訴時効の延長。被害にあってからすぐに訴え出るのが難しいという性被害の特徴を踏まえ、不同意性交等罪について、公訴時効が10年から15年に延長された[134][8]。被害者が未成年の場合は、被害だと認識できるまでにより時間がかかることなどから、時効の起点を18歳とする(例えば15歳で被害を受けた場合は、18歳+15年=33歳まで公訴が可能)[57][58][8][59]。
- 性交同意年齢の引き上げ。「性交同意年齢」(性行為を断る方法や、性行為のリスクに関する正しい知識を持っていると見なされる年齢)を、現在の「13歳以上」から「16歳以上」に引き上げた[134][142][139]。これにより、16歳未満の子どもと性的行為をすると、相手が同意していても処罰の対象になる[15]。ただし、13 - 15歳については同世代間の行為は罪に問わず、5歳以上年上の人が対象になる[139][134][8]。13歳未満に対して性的行為を行った場合は、以前と同様に、同意の有無に関わらず罪に問われる[134]。性交同意年齢の変更は、1907年に性犯罪の法律が定められてから初めてである[143]。
- 体の一部(指など)や物の挿入も「性交」扱いになった[8][9][10]。強制性交等罪は、男性器を膣や肛門、口腔内に挿入する/させる行為を処罰対象としていたが、改正刑法では、「膣または肛門に身体の一部または物を挿入する行為」も性交と同じ扱いにすると定めている[8][10]。これにより、電車内の痴漢行為などで、相手の膣に指を入れた場合も強制性交の罪になり、5年以上の懲役となる[13][46]。
- 配偶者(夫婦)間の強制性交等の罪が成立することが明文化された[54]。
- 被害の聴取結果を録音・録画した記録媒体を、証拠として出せる特則がついた[13][11]。
- 「性的面会要求罪」が新設された[4][13][144]。16歳未満の子どもに対してわいせつ目的で、「だましたり誘惑したり、お金を渡す約束などをして会うことを要求した場合や実際に会った場合」「性的な自撮り画像などを撮らせてSNSやメールなどで送るよう求めた場合」は罪に問われる[4][13][144]。面会や画像の「要求」で1年以下の拘禁刑か50万以下、実際に会ったり送らせた場合は2年以下の拘禁刑か100万以下の罰金刑になる[4][145]。ただし、被害者が13 - 15歳の場合は、5歳以上の年齢差を適用の条件としている[4]。
- 性器や下着、性交の様子などを盗撮したり、拡散することを取り締まる「性的姿態撮影罪(撮影罪)」が新設された[5][56][58]。これまでは、各都道府県の迷惑防止条例違反で規制していたため、客室乗務員の航空機内での盗撮は、場所が特定できなければ取り締まることができなかった[146][147]。全国一律の法律になったことで摘発が容易になる[146][147][148]。罰則も3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金に統一され、盗撮画像などの提供や拡散も処罰の対象となる[148]。
- 5年後に性被害の実態や社会の意識、特に性的同意についての意識も踏まえて見直しを検討することや、「不同意性交罪」の時効の延長について、被害申告の困難さに関する調査をするという附則が付いた[50][5][8][51]。
2023年の改正の課題
[編集]性犯罪の被害者などは、改正を評価する一方で、公訴時効については、被害にあってからすぐに訴え出るのが難しいという性被害の特性から、さらなる延長・撤廃が必要だとしている[57][49][149]。また、性暴力のない社会にするために、「何をしたら加害となり、何をされたら被害なのかについての教育の推進」「加害者への再犯防止のための支援」や、被害者に適切な支援を提供するための「相談窓口の周知」などの必要性も指摘している[150][143][58][151]。
- 公訴時効が10年から15年に延長されたが、被害者が自分の経験を認めたり、人に伝えられるまでには長い時間がかかるため、公訴時効を撤廃するか、より長くするべきと訴えている[134][57][49]。海外には時効を撤廃した国もあり、日本でも身体の殺人には公訴時効がない[13][20]。
- 性交同意年齢を「16歳以上」に引き上げる一方、13 - 15歳の場合は「5歳以上の年長者」を要件としていることについて、「5歳差は大きすぎる」という指摘や、「同年代でも、スクールカーストによる性的いじめがあり、こうした現状を考慮する必要があるのではないか」という指摘がある[128][134][14][152]。ただし、附帯決議では「5歳差は両者に対等な関係がありえないと考える年齢差であり、5歳差未満であれば対等な関係であるとするわけではない」としており、5歳差未満であっても8類型のどれかに当てはまる場合がある[50]。被害者団体は、5歳差要件の運用で当罰性のある行為が全て処罰されるかを調査し、必要であれば見直しを行うよう求めている[128]。
- 「性的姿態撮影罪(撮影罪)」は、アスリート盗撮が含まれないなど範囲が狭く、選手らは法整備の必要性を訴えている[153][154][14]。付帯決議にも「アスリートや客室乗務員に対する盗撮が社会問題となっていることを踏まえ、正当な理由がないのに、性的姿態等以外の人の姿態又は部位(衣服により覆われているものを含む)を性的な意図をもって撮影する行為等を規制することについて検討を行うこと」という課題が入った[155]。
- 8類型の1つに留まった「地位・関係性を利用した性犯罪」については、「教師と生徒」「障害者と介護者」「施設の職員と入所者」「宗教指導者と信者」など、明らかに対等性を欠く状況につけこんで性行為をする人について、対象となる関係性を明記した処罰類型の新設を求めている[13][14][128]。
- 障がいがある人への性犯罪規定は、それぞれの障がい特性を踏まえた法設計が必要であるため、その創設に向けた議論の継続を求めている[128][156]。
- 「被害者が同意しない意思を表すことが難しい状態」にさせた場合は罪に問えるとしたことについては、「積極的な同意がなければ罪に問える」という「Yes means Yes」型の刑法を目指して、さらなる見直しを求めている[134][128]。
- 構成要件が変わっても、証拠がなければ有罪にならないことは変わらないため、客観的な証拠を残すための検査キットや24時間証拠採取ができる医療機関、ワンストップ支援センターにおける証拠保全体制の強化など、被害者支援の拡充を求めている[14][157]。また、立証責任が検察官にあることも変わらないため、検察官が丁寧で慎重な捜査・審議を行い、冤罪を防ぐための取締りの可視化や弁護人の立会権、勾留期間の短縮などが求められている[14]。
- 刑事弁護士は、新たに設けられた8項目には、要件が明確なものと曖昧なものが混ざっているとして、「処罰される対象が事実上広がり、えん罪を生むおそれがある」と懸念を示している[134][158]。この懸念について、元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は、「これまで裁判官が抽象的な条文を基準に考えていたことを明文化した形で、処罰範囲を拡大するものではないと考える」「これまでは何が犯罪か抽象的でわかりづらかったので被害の申告や捜査がしづらい面があったが、それが解消されるので、本来処罰されるべきものがきちんと捜査され、有罪とされるケースは増えるだろう」「具体的な要件を当てはめる際に安易に拡大適用をしてはいけないし、その意識を捜査機関と裁判所が徹底し、本来処罰されるべきでない人が処罰されないようにする必要がある」と述べている[4]。
被害の実態
[編集]年度 | 認知件数 | 被疑者 | 被害者 | ||
---|---|---|---|---|---|
男 | 女 | 男 | 女 | ||
2021年 | 1,388 | 1,244 | 7 | 58 | 1,330 |
2020年 | 1,332 | 1,173 | 4 | 72 | 1,260 |
2019年 | 1,405 | 1,172 | 6 | 50 | 1,355 |
2018年 | 1,307 | 1,084 | 4 | 56 | 1,251 |
2017年 | 1,109 | 906 | 4 | 15 | 1,094 |
2016年 | 989 | 871 | 4 | 0 | 989 |
2020年度に内閣府が行った調査では、異性から無理やり性交された経験があると答えた女性は14人に1人だったが、そのうち警察に相談したのはわずか6.4%である[160][161][162]。さらに客観的な証拠が無い場合、被害届が警察に受理されないというケースもあり[92][74][40]、「強姦事件」としてカウントされるのは、ほんのわずかである[160][161][162]。また、男性は100人に1人が無理やり性交された経験があったが、誰にも相談していない割合が女性よりも高く、被害者の多くが1人で苦しんでいる実態が分かった[160][163][162]。
内閣府の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」の相談件数は2021年度に5万件以上あったが、誰かに相談できた被害者のうち、ワンストップ支援センターに相談した人は0.6%だった[164][165][41][166]。性暴力の被害に遭ったときの対応には、証拠の採取や緊急避妊薬を飲むなど、急を要するものがあるが、性暴力の被害に関する電話相談のうち、72時間以内に寄せられたものは14.7%だった[165][41]。一方で、同年度の警察による強制性交等の認知件数は1388件にとどまっている[167][41]。
国ごとに「強姦事件」が成立する条件が異なるため、日本は統計上は強姦の発生率が低い国になっている[168][161]。先進国で強姦事件の認知件数が最も多いスウェーデンでは、「強姦」は、膣や肛門への指や物の挿入や、自慰行為の強制等も含まれる[161]。2018年からは「暴行・脅迫要件」も撤廃され、「イエス」という自主性を確認できない性行為は犯罪になった[161][169][170][171][43][172]。また、被害届を出しやすい環境も整っている[173]。ストックホルムのレイプ救急センターは365日24時間体制で被害者を受け入れ、被害から10日後までレイプキットによる検査ができる[173]。検査結果は6カ月間保管されるため、被害者が検査や治療、カウンセリングを受け、一連の処置が終わった後に警察へ届け出を出すかどうかを考えることができる[173]。男性被害者専門のカウンセラーが対応する男性のレイプ救急センターも併設され、トランスジェンダーの被害者も受け入れている[173]。子どもへの性教育も義務化され、危険から身を守る知識を学校で得られるよう、幼稚園の頃から、胸や性器といった他者が触れてはいけない部分があると教えている[43][174]。国際的に性教育は基本的人権の1つとされ、性行為や避妊方法、性暴力、性感染症、ジェンダー論など、包括的な性教育をおこなう国は少なくない[175][85]。
日本においても2023年度から、性暴力の被害者、加害者、傍観者にならないための新しい教育が始まった[176][177]。発達の段階ごとに「生命の大切さ」「自分や相手を尊重し、大事にすること」「性暴力の根底にある誤った認識や行動」「性暴力が及ぼす影響」「性暴力の被害にあったときの適切な対応の仕方」などを学習する[176][177][178]。性犯罪の被害者が、学校で性暴力について正しく学んでいたため、ワンストップ支援センターに連絡し、事情聴取や刑事裁判を乗り切ることができたという事例も存在する[11][179]。なお、2023年には山中の車内で殴り、殺害をほのめかすなど脅迫のうえ女子大学生に性的暴行を加えた後、行為が同意だった旨の書面を作成させたとして強制性交等致傷と強要罪で男(29)が逮捕された事案もある[180]。
被害者になった場合
[編集]- ひどい怪我を負わされた場合、迷わず救急車を呼ぶか、救急外来で手当を受ける[181]。
- 着替えたり、シャワーを浴びたり、トイレに行かずに、ワンストップ支援センター「#8891」または「#8103(警察の性暴力専門の相談電話)」に連絡する[183][184]。
- 証拠採取のできる医療機関は限られるため、ワンストップ支援センターや警察が紹介する専門の病院を受診する[186][97]。
- 性犯罪では、事件捜査の過程で診断書が必要になる場合があり、レイプキットによる加害者のDNAや体毛などの証拠の採取、警察への連絡、被害者が負傷していたり、他の病気のリスクもあるため、緊急避妊薬の処方も含めて医師の診察が必要になる[187][101][188]。
- 性犯罪被害の場合には、警察に通報(届出)した場合は、緊急避妊薬、レイプキットの費用、性感染症検査費用、人工妊娠中絶費用、初診料、診断書料、カウンセリング費用について一定額まで公費で負担される[188][189][190]。通報は、告訴する・しないとは無関係である[188]。
- 女性の場合は、緊急避妊薬が有効な72時間以内に産婦人科医を受診する[97]。72時間を経過した場合も、1週間以内であれば子宮内避妊器具(IUD)の留置により妊娠を防ぐことができる場合がある[191]。
- 男性の場合は、被害部位にもよるが、泌尿器科あるいは肛門科(消化器外科)を受診する[181][192][193]。
- 男女問わず、子どもが被害を受けた場合は、警察または児童相談所(共通ダイヤル「189」[194])に連絡する[195]。小児科医でも診察対応が可能な場合がある[196]。
- 性感染症の検査は、複数回にわたって行う[188]。被害から2週間後の検査でクラミジアや淋病などの感染が分かり、他にも梅毒(1ヶ月後)、HIV感染症(2ヶ月後)などの検査を受けて早期治療を行う[101]。
- レイプキット:加害者の体液や体毛を採取してDNA検査をしたり、血液・尿検査で薬物を飲まされていないか調べるなど、証拠保全をする検査一式[101]。日本では、レイプキットの代金を被害者が先払いするが、警察に通報すれば医療費の払い戻しが受けられる[197][97]。
- 捜査用薬物検査キット「D1D Plus(ディーワンディープラス)」:2023年4月、「デートレイプドラッグ」を使った性犯罪が相次いでいることを受け、都内の全警察署に配備された[198][199]。尿に含まれる睡眠薬などの薬物成分を数分で検査でき、早期に捜査を始められる[198][200]。
- ワンストップ支援センター「#8891(はやくワンストップ)」は、発信場所から最寄りの支援センターにつながり、専門知識をもった相談員が、被害者の性別やセクシュアリティは問わずに、病院や警察、弁護士、その他の関係機関と連携しながら「医師による心身の治療」「相談・カウンセリング等の心理的支援」「捜査関連の支援」「法的支援」などの適切な支援に繋げる[101][188][201][202][203]。支援センターでは、無償で裁判所・警察などへの付き添い、各種手続きの手伝いなども行っている[204][205][206]。性犯罪に詳しい弁護士を紹介してもらえることもあり、弁護士費用についても負担を軽減するためのさまざまな法的支援制度がある[185][207][208][188]。
- 様々な事情で電話し辛い場合は、チャットやメールで相談ができる「Cure time(キュアタイム)」に連絡する[212][213]。対処法や医療機関の案内のほか、状況に応じて、警察などに連絡する体制も整っている[212][213]。
- 刑事裁判の際は、「被害者の氏名や住所などを明らかにしない」「テレビ電話で繋いだ別室から証言できる」など、犯罪被害者に配慮した取り組みが行われている[11][214][注釈 4]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 加害者が自分は医師であると偽り、病気の治療のためには加害者と性交を行う他はないと説明し、心理的に追い込んだ上で性交を行った事件や、牧師が信者の少女らに対して、従わなければ地獄に堕ちると説教し、畏怖させた上で性交を行った事件が、準強姦罪として認められている[11]
- ^ 1986年、鳥取地方裁判所判決は、夫婦間における強姦について「婚姻が破綻して夫婦たる実質を失い、名ばかりの夫婦にすぎない場合にはもとより、夫婦間に所論の関係はなく、夫が暴行又は脅迫をもって妻を姦淫したときは強姦罪が成立する」と認定した[111][112]。2007年に東京高等裁判所は、「暴行・脅迫を伴う場合には、適法な権利行使とは認められず、強姦罪が成立する」と判決した[92]
- ^ 2021年12月に出版された『なぜ私は凍りついたのか ポリヴェーガル理論で読み解く性暴力と癒し』の著者は、「被害に遭ったときに抵抗できたかどうかは、人間の生理的反応であり、それを理解してもらうことが、性暴力についての刑法改正の突破口にもなりうる」と述べている[117]
- ^ 2023年5月10日、被害者の名前や住所が加害者に知られないようにするために、裁判の書類を匿名にする改正刑訴法が成立した[215][216][217]
出典
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関連項目
[編集]- b:刑法第177条
- 不同意わいせつ罪
- 強盗・不同意性交等罪
- わいせつ、不同意性交等及び重婚の罪
- 強姦
- 性犯罪
- フラワーデモ - #MeToo
- 一般社団法人Spring
- レイプまひ (英語版)
- 性的同意 - ノー・ミーンズ・ノー - イエス・ミーズ・イエス
- 性的同意年齢 - 性的虐待 - 児童性的虐待 - グルーミング (性犯罪)
- デートレイプ
- 強姦神話 - レイプカルチャー (英語版) - 被害者非難
- 緊急避妊薬
- 妊娠 - 中絶
- レイプに関する法律 (英語版)
- レイプキット - レイプの捜査 (英語版)
- レイプクライシスセンター(RCC) (英語版)
- レイプの影響と後遺症 (英語版)
- 性暴力被害者の治療法 (英語版)
- 性暴力の原因 (英語版)
- 性暴力防止への取組 (英語版)
- 性の権利宣言
- リプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)
- 尊属殺重罰規定違憲判決 - 監護者姦淫が事件の原因。
参考文献
[編集]- “性犯罪処罰規定の見直しの経緯とその議論 ─暴行・脅迫の要件を中心に─(日本大学法学部 西山智之)” (PDF). 2 日本セーフティプロモーション学会誌 Vol.16(1)2023年4月号. 2023年7月7日閲覧。
- “提言「同意の有無」を中核に置く刑法改正に向けて ―性暴力に対する国際人権基準の反映―” (PDF). 日本学術会議 (2020年9月29日). 2023年7月7日閲覧。
- 齋藤梓、大竹裕子『性暴力被害の実際』金剛出版、2020年6月22日。ISBN 9784772417679。
- 伊藤和子『なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019年8月13日。ISBN 978-4799325445。
- 秋山千明『女性に対する暴力 被害者学的視点から』尚学社、2019年1月。ISBN 978-4-86031-156-8。
- 前田雅英 『刑法各論講義-第3版』 東京大学出版会、1999年。
- 小倉千加子『セックス神話解体新書』学陽書房、1988年。
外部リンク
[編集]- 被害者になった場合
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター一覧「#8891(はやくワンストップ)」 内閣府
- 性犯罪被害相談電話全国共通番号「#8103(ハートさん)」 警察庁
- Cure time 内閣府による性暴力のSNS相談窓口「キュアタイム」。毎日17 - 21時チャット相談や、24時間メールでの相談が可能
- 性暴力被害者支援ガイド 性暴力救援センター・東京(SARC東京)
- 性犯罪
- 性犯罪関係の法改正等 Q&A 法務省 2023年7月
- 性犯罪・性暴力対策の強化について 内閣府・文部科学省
- 生命(いのち)の安全教育動画教材(高校) 文部科学省 YouTube
- 性的同意はどうやってとればいい?チェックリストや動画で学ぼう 家庭ではじめる性教育サイト「命育」
- 見直そう!刑法性犯罪 一般社団法人Spring 2018年10月
- 刑法改正(性犯罪)の記事一覧 NHK
- 性犯罪に関する刑法~110年ぶりの改正と残された課題 NHK 2018/10/22
- 「同意のない性行為」とは 性犯罪の刑法改正 ポイントを解説 NHK 2023/6/16
- “性暴力”裁判 被害女性が語った15分のことば NHK