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{{出典の明記|date=2017年5月}}
{{Infobox 山
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|名称 = 藻岩山
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|座標 = {{ウィキ座標2段度分秒|43|01|21|N|141|19|20|E|}}<ref name=Sanseido>{{cite book |和書 |editor=徳久球雄・石井光造・武内正 |title=三省堂 日本山名事典 |edition=改訂版 |year=2011 |publisher=[[三省堂]] |isbn=978-4-385-15428-2 |page=1035}}</ref>
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'''藻岩山'''(もいわやま)は、[[北海道]][[札幌市]]の中心部から南西約5[[キロメートル]]([[札幌駅]]の南西6km<ref name=concise>{{Cite book |和書 |editor=三省堂編集所 |title=コンサイス日本地名事典 |edition=第5版 |year=2007 |publisher=三省堂 |isbn=978-4-385-16051-1 |page=1222}}</ref>)に位置する<ref name=asahi20120430>{{Cite web|和書|editor=[[朝日新聞社]] |date=2012-04-30 |url=https://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/46529affec3c64cc16108505b7b84785 |title=いつもそこに 藻岩山物語 (1) 自然の植物園 クマにも言い分あり |website=[[gooブログ]] |accessdate=2018-09-06}}</ref>標高531[[メートル]] (530.9m<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、64頁</ref><ref name=kodansha1995>{{Cite book |和書 |year=1995 |title=日本の天然記念物 |publisher=[[講談社]] |isbn=4-06-180589-4 |pages=220-222}}</ref>〈531.03m<ref name=sanpo1>{{Cite book |和書 |editor=北海道高等学校日本史教育研究会編 |year=2006 |title=北海道の歴史散歩 |publisher=[[山川出版社]] |series=歴史散歩 1 |isbn=4-634-24601-5 |pages=113・126-127頁}}</ref>〉) の山<ref name=sanseido />。


== 概要 ==
'''藻岩山'''(もいわやま)は、[[北海道]][[札幌市]]の中心部から南西約5[[キロメートル]]に位置する<ref name="asahi20120430">{{Cite web |editor=[[朝日新聞社]] |date=2012-04-30 |url=https://blog.goo.ne.jp/ivelove/e/46529affec3c64cc16108505b7b84785 |title=いつもそこに 藻岩山物語 (1) 自然の植物園 クマにも言い分あり |website=[[gooブログ]] |accessdate=2018-09-06}}</ref>標高531[[メートル]] (530.9m<ref name=kodansha1995>{{Cite book |和書 |year=1995 |title=日本の天然記念物 |publisher=[[講談社]] |isbn=4-06-180589-4 |page=222}}</ref>) の山である<ref name=Sanseido />。[[索道|ロープウェイ]]や[[自動車道]]が通り<ref name=Sanseido />、[[展望台]]と[[スキー場]]によって、札幌市民と観光客の行楽地となっている。
藻岩山には[[索道|ロープウェイ]]や[[自動車道]]が通り<ref name=sanseido />、[[展望台]]や冬季は[[スキー場]]により、札幌市民や観光客の行楽地となっている<ref name=concise />。


[[ファイル:藻岩山展望台 (moiwa Mountain) - panoramio (1).jpg|thumb|山頂展望台より[[石狩平野]]の眺望(2012年4月)]]
[[山頂]]に登るには、[[登山道]]のほか、北側から[[#もいわ山ロープウェイ|もいわ山ロープウェイ]]と[[#もーりすカー|もーりすカー]](ケーブルカー)を乗り継ぐか、あるいは南側から[[藻岩山観光自動車道]](冬季休業)で中腹まで至り、「もーりすカー」に乗り換えて行くことができる。ともに有料。山頂展望台からは[[石狩平野]]、そして[[石狩湾]]までを一望することができ、夜には札幌市街の[[夜景]]を楽しめる<ref name=Sapporo_ravel>{{Cite web |url=http://www.sapporo.travel/find/nature-and-parks/mount_moiwayama/ |title=藻岩山・札幌もいわ山ロープウェイ |website=ようこそSAPPORO |publisher=札幌観光協会 |accessdate=2018-09-06}}</ref>。
[[山頂]]に登るには、北側から「[[#札幌もいわ山ロープウェイ|もいわ山ロープウェイ]]」と「[[#もーりすカー|もーりすカー]]」([[ケーブルカー]])を乗り継ぐか<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、6・18頁</ref>、あるいは南側から「[[藻岩山観光自動車道]]」(冬季休業)で中腹まで至り、「もーりすカー」に乗り換えて行くことができる。ともに有料。また、5つの[[登山道]]も整備されている<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、4頁</ref><ref name=pasco>{{Cite web|和書|year=2004 |author=[[札幌市]]建設局みどりの推進部みどりの推進課 |url=http://www2.wagamachi-guide.com/sapporo_koen/apps/list.asp?mode=2&ID=1600005 |title=自然歩道 藻岩山ルート <自然歩道> |website=公園検索システム |publisher=[[パスコ (航空測量)|パスコ]] |accessdate=2019-01-20}}</ref>。


[[ファイル:From Mt Moiwa Sapporo01s3200.jpg|thumb|山頂展望台から望む[[札幌市]]街の[[夜景]](2009年10月)]]
山頂から南東方向には[[札幌藻岩山スキー場]]がある。札幌の中心部から近いという立地もあって、多くの市民や外国人を含む観光客でにぎわう。2017年度の来訪者は約90万6000人<ref>【おもてなし魅せどころ】藻岩山(札幌市)輝く夜の札幌 絶景かな『[[日経MJ]]』2018年11月19日(観光・インバウンド面)。</ref>。
山頂展望台からは[[石狩平野]]、そして[[石狩湾]]までを一望することができ、夜には札幌市街の[[夜景]]を楽しめる<ref name=sapporo_travel>{{Cite web|和書|url=https://yakei.jp/official/list.html |title=藻岩山・札幌もいわ山ロープウェイ |website=ようこそSAPPORO |publisher=札幌観光協会 |accessdate=2018-09-06}}</ref>。夜景は、[[函館市]]の[[函館山]]、[[小樽市]]の[[天狗山 (小樽市)|天狗山]]とともに「北海道三大夜景」の1つとされ<ref name=sanpo1 />、日本の「夜景100選」にも認定されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://yakei.jp/official/list.html |title=夜景スポット認定地リスト |website=日本新三大夜景 |publisher=新日本三大夜景・夜景100選事務局 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。また、札幌市は[[2015年]]([[平成]]27年)より「日本新三大夜景都市」に認定されている<ref>{{Cite web|和書|url=http://jptop3.yakeikentei.jp/ |title=日本新三大夜景 |publisher=夜景観光コンベンション・ビューロー |accessdate=2019-01-20}}</ref>。


札幌市[[南区 (札幌市)|南区]]北部に位置し<ref name=concise />、都心部から近く[[札幌市電|市電]]やバスでアクセスしやすい立地もあって、多くの市民や外国人を含む観光客でにぎわう。[[2017年]](平成29年)度の来訪者は約90万6000人<ref>{{Cite news |title=輝く夜の札幌 絶景かな 藻岩山(札幌市) おもてなし魅せどころ |newspaper=[[日経MJ]](観光・インバウンド面) |date=2019-11-19 |publisher=[[日本経済新聞社]] |url=https://www.nikkei.com/article/DGXKZO37865920W8A111C1H91A00/ |accessdate=2019-01-20}}</ref>。山頂の南東方向に[[札幌藻岩山スキー場]]がある。

[[小惑星]][[藻岩_(小惑星)|(5146) Moiwa]]は藻岩山に因んで命名された<ref>{{cite web|url=https://www.minorplanetcenter.net/db_search/show_object?object_id=5146 |title=(5146) Moiwa = 1974 DC2 = 1974 DE2 = 1975 LH = 1980 RS6 = 1980 TX6 = 1988 JU2 = 1992 BP|accessdate=2022-08-28}}</ref>。
== 地質と地形 ==
== 地質と地形 ==
[[ファイル:MoiwaYama2005-1-9.jpg|thumb|left|200px|[[円山 (札幌市)|円山]]の頂上から見た藻岩山と[[豊平川]][[扇状地]](2005年1月)]]
[[ファイル:MoiwaYama2005-1-9.jpg|thumb|[[円山 (札幌市)|円山]]の頂上から見た藻岩山と[[豊平川]][[扇状地]](2005年1月)]]
藻岩山の基盤を構成する地質は、650-300万年前<ref name="guide_34">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、34頁</ref>、[[第三紀]]の[[中新世]]末から[[鮮新世]]に<ref name="bunko77_109">[[#bunko77|札幌市教育委員会 (1996)]]、109頁</ref>浅い海底に溶岩が噴出した際に形成された[[西野 (札幌市)|西野]]層と称される[[堆積岩]]であり<ref>[[#bunko77|札幌市教育委員会 (1996)]]、22・107頁</ref>、[[角閃石]][[デイサイト]]質溶岩・貫入岩、[[ハイアロクラスタイト]](水冷破砕岩<ref>[[#bunko77|札幌市教育委員会 (1996)]]、22頁</ref>)、[[安山岩]]質[[凝灰岩|軽石凝灰岩]]、[[泥岩]]からなる<ref>[[#museum|札幌市博物館活動センター (2007)]]、53・55・57-58頁</ref>。その後、280-230万年前にかけて<ref name="guide_34" />、鮮新世末から[[第四紀]]の[[更新世]]初頭に起きた<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、67頁</ref><ref>[[#bunko77|札幌市教育委員会 (1996)]]、22・109・282頁</ref>三度の[[噴火]]により安山岩質溶岩が噴出し、山体を作った<ref name="guide_34" /><ref>[[#bunko77|札幌市教育委員会 (1996)]]、16・109頁</ref>。最も古い下部の藻岩溶岩 3(軍艦岬溶岩<ref>[[#museum|札幌市博物館活動センター (2007)]]、52-53・57頁</ref>)は「軍艦岬」と呼ばれる北尾根突端部に見られるが、山体の大部分は2度目の噴火による山頂付近から北側尾根にかけての<ref name="museum_54">[[#museum|札幌市博物館活動センター (2007)]]、54頁</ref>藻岩溶岩 2(藻岩山溶岩 II<ref name="museum_54・57">[[#museum|札幌市博物館活動センター (2007)]]、54・57頁</ref>)に覆われる<ref name="bunko77_109" />。山頂から南側の[[尾根]]沿いには最も新しい藻岩溶岩 1(藻岩山溶岩 I<ref name="museum_54・57" />)が認められる<ref name="bunko77_109" />。
[[ファイル:From Mt Moiwa Sapporo01s3200.jpg|thumb|right|200px|山頂展望台から望む札幌市街[[夜景]](2009年10月)]]

[[ファイル:MoiwaYama2004-5-8.jpg|thumb|right|200px|春の藻岩山と豊平川(2004年5月)]]
藻岩山は[[後志山地]]の東端に位置する<ref>[[#bunko77|札幌市教育委員会 (1996)]]、102・107頁</ref>。藻岩山の山頂からは、[[堆積物#崖錐堆積物|崖錐状堆積物]]<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、77頁</ref>(山麓緩斜面[[堆積物]]<ref name="museum_54" />)の見られる幅広い[[谷]]を挟んで、南東に向けて尾根が北側と南側に並んで延びる<ref name="bunko77_109" />。藻岩山の北東面は直線状の斜面を形成し、[[豊平川]][[扇状地]]面(札幌面)に接している<ref>[[#bunko77|札幌市教育委員会 (1996)]]、110頁</ref>。山麓に近いところが[[山鼻]]という地区で<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、28-35頁</ref>、その北方に札幌市中心部が発展している。市街にビルが立ち並ぶ以前に札幌の人々が馴染んだ藻岩山の姿は、この方面から見たものである。
山の基盤を構成する地質は、[[第三紀]]の[[中新世]]末から[[鮮新世]]に浅い海底に噴出した溶岩でできた[[西野 (札幌市)|西野]]層である。その後[[第四紀]]に起きた三度の[[噴火]]により[[安山岩]]が噴出し、山体を作った。山体の大部分は2回目の噴火による。
山は幅広い[[谷]]を挟んで[[尾根]]を東と南東に伸ばす。北東面は直線状斜面を形成し、[[豊平川]][[扇状地]]に面している。山麓に近いところが[[山鼻]]という地域で、その北方に札幌市中心部が発展している。市街にビルが立ち並ぶ以前に札幌の人々が馴染んだ藻岩山の姿は、この方面から見たものである。


[[ファイル:MoiwaYama2004-5-8.jpg|thumb|藻岩山と豊平川(2004年5月)]]
東に延びる尾根は札幌市街方面から見ると、裾野で長く平らに延び、先端が急に落ちて見える。この姿が明治時代の[[軍艦]]の舳の形に似ていたことから尾根の先端は「軍艦岬」と呼ばれた<ref>{{Cite web|url=http://www.city.sapporo.jp/minami/gaiyo/saihakken/1210.html|title=軍艦岬|publisher=札幌市南区|accessdate=2018-11-24}}</ref>。[[岬]]とは呼ばれるが、崖下には海や湖はなく、[[山鼻川]]が流れている。南東側の尾根の先端は「割栗岬」と呼ばれ<ref name="10mantsubo">{{Cite web|url=http://www.city.sapporo.jp/minami/yawa/mokuji/26jumantsubo/10mantsubo.html|title=10万坪開拓から 南区開拓夜話|publisher=札幌市南区|accessdate=2018-11-24}}</ref>、崖下を[[豊平川]]が流れる。2つの尾根に挟まれた浅い谷は[[藻岩下]]という地区で<ref name="10mantsubo"/>、山鼻川が流れ出る。地形上古くから交通の要衝であり、明治6年に[[東本願寺]]が[[本願寺道路]](山鼻 - [[八垂別]]間「ハッタルベツ新道」)を開削した後、[[石山 (札幌市)|石山]]からの[[札幌軟石]]の輸送にも使われた。現在は[[国道230号]]が通る<ref name="10mantsubo"/>。北西と西は[[後志山地]]で、藻岩山は山地の東の端に位置する。
北側の尾根は、札幌市街方面から見ると裾野が長く緩やかに延び、先端が[[岬]]のように急に落ちて見える<ref name="guide_21">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、21頁</ref>。この姿が[[軍艦]]の舳先の形に似ていたことから<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、207頁</ref><ref>[[#yamazaki|山崎 (1995)]]、82頁</ref>、北尾根の先端は[[明治]]時代より「軍艦岬」と呼ばれた<ref name="guide_21" /><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.sapporo.jp/minami/gaiyo/saihakken/1210.html |title=軍艦岬(南区再発見) |date=2018-08-27 |website=[[南区 (札幌市)|南区]] |publisher=[[札幌市]] |accessdate=2019-01-20}}</ref>。岬と呼ばれるが、崖下は海や湖ではなく[[山鼻川]]が流れている<ref name="guide_21" />。南側の尾根の先端は「割栗岬(わりぐりみさき)」と呼ばれ<ref name=minami2011>{{Cite web|和書|url=http://www.city.sapporo.jp/minami/yawa/mokuji/26jumantsubo/10mantsubo.html |title=10万坪開拓から(南区開拓夜話) |website=南区 |publisher=札幌市 |accessdate=2019-01-20}}</ref>、崖下を豊平川が流れる<ref>{{Cite web|和書|year=2010 |url=http://sapporo-scenic.com/wordpress/wp-content/uploads/2013/04/san10-sept.pdf |format=PDF |title=SAN 2010年秋号 - 南区キーワード 割栗(わりぐり) |publisher=[[東海大学]]地域連携研究グループ SAN(サウスエリアネットワーク) |page=7 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。2つの尾根に挟まれた浅い谷は[[藻岩下]]という地区で<ref name=minami2011 />、山鼻川が流れ出る<ref name="yamazaki_85">[[#yamazaki|山崎 (1995)]]、85頁</ref>。軍艦岬から割栗岬に至るこの地は地形上古くから交通の要衝であり<ref name="yamazaki_85" />、[[1870年]](明治3年)に[[東本願寺]]が「[[本願寺道路]]」(山鼻 - [[八垂別]]〈はったりべつ、現在の[[川沿]]〉間「ハッタルベツ新道」)を開削した後、[[石山 (札幌市)|石山]]からの[[札幌軟石]]の輸送などにも使われた<ref name=minami2011 />。現在は[[国道230号]]が通じている<ref>[[#yamazaki|山崎 (1995)]]、89-92頁</ref>。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
=== インカルシペ ===
現在の藻岩山は、[[アイヌ|アイヌ民族]]から[[アイヌ語]]で「インカルシペ」(いつも登って見張りをするところ)と呼ばれていた<ref name=Sapporo_ravel />。この山はアイヌにとっての[[聖地]]であり<ref name="hokkaido20120503">(いつもそこに 藻岩山物語: 4)祈りの山 観音像、街を見守る/北海道 北海道新聞 2012年05月03日 北海道朝刊 27頁 1道 写図有(全744字)</ref>、尊い神の山であった<ref name=Sapporo_ravel />。山腹にはカムイシュネ(神の灯火)が灯るさまが眺められたという。山鳴りがする時は[[天然痘]](疱瘡)の流行の兆しとして警戒し、本当に疱瘡の流行が始まればこの山に逃げ込み、神の加護を願った。しかし[[明治]]時代、[[入植]]した[[和人]]たちは「モイワ」(小さな山<ref name=kodansha2003>{{Cite book|和書 |year=2003 |title=自然紀行 日本の天然記念物 |publisher=講談社 |isbn=4-06-211899-8 |page=28}}</ref>)と呼ばれていた隣の小山とインカルシペを取り違え、インカルシペを藻岩山、モイワを[[円山 (札幌市)|円山]]と呼び習わし、やがて誤解されたまま地名として定着してしまった。この藻岩山は札幌に近いこと、近くの豊平川を用いた[[水運]]が利用できることから、明治時代には南側で[[木材]]が伐採され、[[北の沢川]]から豊平川、[[創成川]]を経由して札幌まで流された。
現在の藻岩山は、[[アイヌ|アイヌ民族]]から[[アイヌ語]]で「インカル<small>シ</small>ペ<ref>{{Cite journal |和書 |title=藻岩山の歴史 |journal=広報さっぽろ |issue=2008年2月号 |page=2 |publisher=札幌市 |url=https://www.city.sapporo.jp/somu/koho-shi/200802/documents/200802mina02.pdf |format=PDF |accessdate=2019-01-20}}</ref>(インカルシュペ<ref name=densetsu>{{Cite book |和書 |author1=更科源蔵 |authorlink1=更科源蔵 |author2=安藤美紀夫 |authorlink2=安藤美紀夫 |title=北海道の伝説 |year=1977 |publisher=[[角川書店]] |series=日本の伝説 17 |pages=60-61}}</ref><ref name=yamakei>{{Cite book |和書 |editor=[[山と溪谷社]]編 |origyear=1992 |year=1998 |title=山溪カラー名鑑 日本の山1000 |edition=改訂第2版 |publisher=山と溪谷社 |isbn=4-635-09025-6 |page=66}}</ref>)」(いつも登って見張りをするところ)と呼ばれていた<ref name=sapporo_travel /><ref name="bunko12_13">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、13頁</ref>。この山はアイヌにとっての[[聖地]]であり<ref name="hokkaido20120503">(いつもそこに 藻岩山物語: 4)祈りの山 観音像、街を見守る/北海道 [[北海道新聞]] 2012年05月03日 北海道朝刊 27頁 1道 写図有</ref>、尊い神の山であった<ref name=sapporo_travel /><ref name="bunko12_13" />。異変があると山腹にカムイシュネ(神の炬火)が灯るさまが眺められたという<ref name=densetsu /><ref >{{Cite web|和書|url=http://www.city.sapporo.jp/minami/yawa/mokuji/35mountains/sukidesufurusatono.html |title=好きですふるさとの山々(南区開拓夜話) |website=南区 |publisher=札幌市 |accessdate=2019-01-22}}</ref>。山鳴りがするような時は、大[[吹雪]]や[[天然痘]](疱瘡)の流行などの兆しとして警戒し<ref name=densetsu /><ref name="bunko12_13" />、本当に天然痘の流行が始まればこの山に逃げ込み、神の加護を願った<ref>{{Cite book |和書 |author=更科源蔵 |origyear=1971 |year=1981 |title=アイヌ伝説集 |publisher=みやま書房 |series=更科源蔵アイヌ関係著作集 I |page=158}}</ref>。[[江戸時代]][[幕末|末期]]、[[松浦武四郎]]は、[[1859年]]([[安政]]6年)の『後方羊蹄日誌』<ref>{{Cite web|和書|url=https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2535685 |title=後方羊蹄日誌 |website=国立国会図書館デジタルコレクション |publisher=[[国立国会図書館]] |accessdate=2019-01-20}}</ref>において、「エンガルシベ」は往古より深く信仰される山であり、ここに「蝦夷総鎮守の宮」を建てるよう意見を記している<ref name="bunko12_13" />。


明治時代に[[入植地|入植]]した初期の[[和人]]たちは、インカルシペ山(インカルシペヌプリ<ref name=asahi20120430 />)の意味および発音から、当初は「眺臨山」や「笑柯山(えんがるやま)<ref>{{Cite web|和書|year=2010 |url=http://blog.canpan.info/sinrinkankyo/img/moiwayama(konan).pdf |format=PDF |title=藻岩山の話 |publisher=北海道林業技士会 |accessdate=2019-01-20}}</ref>」と称した<ref name="bunko12_13" />。しかし、「モイワ」(小さな山<ref>{{Cite book|和書 |year=2003 |title=自然紀行 日本の天然記念物 |publisher=講談社 |isbn=4-06-211899-8 |page=28}}</ref>)と呼ばれていた隣の小山に「円山」の字があてられると、「円山」はモイワやインカルシペのある山岳の総称ともなった<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、13・16・97頁</ref>。やがてモイワとインカルシペを取り違え、「インカルシペ」を藻岩山、「モイワ」を[[円山 (札幌市)|円山]]と呼び習わすようになり、そのまま地名として定着してしまった<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、13・237頁</ref>。
[[1886年]](明治19年)、麓にある[[新善光寺 (札幌市)|新善光寺]]によって山頂までの参道が整備される<ref name="hokkaido20120503"/>。また、各所に[[西国三十三所|西国三十三所観音霊場]]を模倣して33体の[[観音菩薩|観音]]像が置かれ、[[1900年]](明治33年)になってから山頂に石堂が作られた<ref name="hokkaido20120503"/>。以来、6月1日には「藻岩山山開き」として、新善光寺の信者が山頂に参拝する行事が毎年行われている<ref name="hokkaido20120503"/>。石堂はその後、山頂の別の場所に移設されて、今日の浄土宗観音寺藻岩観音奥之院になっている<ref name="hokkaido20120503"/>。山頂までの参道は今日の登山道となった<ref name="hokkaido20120503"/>。


=== 藻岩原始林 ===
北東斜面には[[シナノキ]]、[[ミズナラ]]、[[ダケカンバ]]などの[[広葉樹]]が生い茂る「藻岩原始林」があり、[[1915年]]([[大正]]4年)に[[北海道庁]]より原生天然保護林に指定された後、[[1921年]](大正10年)[[3月3日]]、「[[円山原始林]]」とともに北海道で最初の[[天然記念物]]に指定された<ref name=kodansha1995 />。指定区域は284.7[[ヘクタール]] (284.68ha<ref name=maruyama-moiwa>{{Cite web |url=https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunkazai/pdf/documents/20maruyama-moiwa.pdf |format=PDF |title=国指定 天然記念物 円山原始林/藻岩原始林 |publisher=[[札幌市]] |accessdate=2018-09-06}}</ref>) であり<ref name=kodansha1995 />、天然記念物になる以前、[[開拓使]]時代から伐採などの利用が禁止され、今日に至るが、一度も人の手が入ったことのないという厳密な意味での[[原始林]]ではなく、[[原生林]]に近い[[天然林]]にあたる<ref name=maruyama-moiwa />。南西斜面の原生林は明治時代の数度の[[山火事]]により焼失し、[[太平洋戦争]]後はスキー場などに利用されている<ref name=kodansha1995 />。
[[開拓使]]は[[1871年]](明治4年)より7種([[イチイ]]・[[ハリギリ]]・[[イヌエンジュ]]・[[ヤマグワ]]・[[トドマツ]]・[[カツラ (植物)|カツラ]]<ref>{{Cite book |和書 |editor=[[札幌市]][[教育委員会]]編 |year=1989 |title=開拓使時代 |series=さっぽろ文庫50 |publisher=[[北海道新聞社]] |isbn=4-89363-049-0 |pages=207-208}}</ref>・[[エゾヤマザクラ]])の[[立木]]の伐採を禁じ、[[1873年]](明治6年)に官林を定めると、藻岩山や円山は禁伐林として保護された<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、15-16頁</ref>。しかし、[[1882年]](明治15年)の開拓使の廃止による[[三県一局時代]]を経て[[北海道庁 (1886-1947)|北海道庁]]([[1886年]]〈明治19年〉-[[1887年]]〈明治20年〉)となると、樹木の伐採禁止は緩和され、[[針葉樹]]など一部が伐採されるようになる<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、17頁</ref>。明治時代中頃には南側で[[木材]]が伐採され、この藻岩山は札幌に近いこと、近くの豊平川を用いた[[水運]]が利用できることから、[[北の沢川]]から豊平川、[[創成川]]を経由して札幌まで流された。


[[1892年]](明治25年)に来日した[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の[[植物学者]][[チャールズ・スプレイグ・サージェント|サージェント]]は<ref name="bunko12_17-18・113-114">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、17-18・113-114頁</ref>、[[札幌農学校]]出身で藻岩・円山を研究フィールドとした植物学者の[[宮部金吾]]の案内で藻岩山を訪れ<ref name=menu_05>{{Cite web|和書|url=http://sizen.kei1.org/menu_05.html |title=21.札幌の自然が生んだ植物学、昆虫学の“知の巨人” |year=2012 |website=誇ろう・つなごう・札幌の自然 |publisher=札幌市政研究所 |accessdate=2019-01-20}}</ref>、その狭い地域における植生の多様性を『日本森林植物誌』({{lang-en-short|“Forest flora of Japan”}}、[[1894年]])で世界的にも珍しいと紹介した<ref name="bunko12_17-18・113-114" />。その後、明治時代末から[[大正]]時代初頭になると北海道の主な原始林の保存が検討され、北東斜面にある[[シナノキ]]、[[ミズナラ]]、[[ダケカンバ]]などの[[広葉樹]]が生い茂る「藻岩原始林」が、[[1915年]](大正4年)に北海道庁より原生天然保護林<ref group="注">[[1913年]](大正2年)-[[1915年]](大正4年)にかけて原生天然保護林を全道11か所選定。</ref>に指定された<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、18-19頁</ref>。その後、[[1921年]](大正10年)[[3月3日]]、「[[円山原始林]]」とともに北海道で最初の[[天然記念物]]([[史蹟名勝天然紀念物保存法|史蹟名勝天然紀念物]]<ref name=yamakei />)に指定された<ref name=kodansha1995 /><ref name="bunko12_19">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、19頁</ref>。指定区域は284.7[[ヘクタール]]<ref name=kodansha1995 /> (284.68ha<ref name=pasco /><ref name=maruyama-moiwa>{{Cite web|和書|url=https://www.city.sapporo.jp/shimin/bunkazai/pdf/documents/20maruyama-moiwa.pdf |format=PDF |title=国指定 天然記念物 円山原始林/藻岩原始林 |publisher=札幌市 |accessdate=2018-09-06}}</ref>) の[[日本の国有林|国有林]]であり<ref name="bunko12_146">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、146頁</ref>、天然記念物になる以前、開拓使時代から伐採などの利用が禁止されてから今日まで、一度も人の手が入ったことのないという厳密な意味での[[原始林]]ではなく<ref name="bunko12_19" />、[[原生林]]に近い[[天然林]]にあたる<ref name=pasco /><ref name=maruyama-moiwa />。[[1969年]](昭和44年)11月、[[文部省]]と[[北海道教育委員会]]により<ref name=bunko45>{{Cite book |和書 |editor=[[札幌市]][[教育委員会]]編 |year=1988 |title=札幌の碑 |series=[[さっぽろ文庫]]45 |publisher=[[北海道新聞社]] |isbn=4-89363-044-X |page=206}}</ref>「天然記念物 藻岩山原始林」碑が、藻岩山山頂<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.sapporo.jp/minami/gaiyo/meisho/0503070.html |title=天然記念物藻岩原始林碑(ふるさと小百科) |date=2016-03-01 |website=南区 |publisher=札幌市 |accessdate=2018-11-11}}</ref>、ロープウェイ終点広場<ref name=bunko45 />、慈恵会病院登山口<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、262・265頁</ref><ref name="guide_8-9">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、8-9頁</ref>に建立されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.sapporo.jp/minami/ishibumi/chiku0103.html |title=天然記念物藻岩原始林(碑) |date=2011-02-25 |website=南区 |publisher=札幌市 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。
[[ファイル:moiwa-heiwa-tower.JPG|thumb|140px|藻岩山[[仏舎利塔]]]]
山麓には、白い[[仏舎利塔]](通称「平和の塔」、正式名称「札幌平和塔」)が建っている。太平洋戦争の犠牲者の冥福と世界・日本の平和を祈る目的で、[[日本山妙法寺]]の[[藤井日達]]の発願により、[[1961年]]([[昭和]]36年)に建立された。[[インド]]の[[ジャワハルラール・ネルー|ネール]]首相から贈られた[[仏舎利]]が安置されている。


南(南西)斜面の原生林は明治時代の数度の[[山火事]]により焼失し、天然記念物区域に指定されておらず<ref name="bunko12_19" />、[[太平洋戦争]]後はスキー場などに利用された<ref name=kodansha1995 />。
平和の塔の南側の平地(ロープウェイの沿線の真下の部分)には、かつて「森永牧場」と呼ばれる地区があり、北海道の形状をした浅い池が存在していた。現在は撤去され、「はらっぱ」と呼ばれる広場になっている。


=== 藻岩観音 ===
[[連合国軍占領下の日本|戦後占領期]]には山腹(ロープウェイ沿線の北側)を切り拓いた進駐軍専用の[[札幌スキー場]]が建設され、長野の志賀高原スキー場と並んで日本初のスキーリフトが導入された。現在は植生がある程度回復しており、スキーリフトの台座などの遺構が残るのみである。
山麓にある[[新善光寺 (札幌市)|新善光寺]]の初代住職が、[[1885年]](明治18年)に北海道新西国三十三番観音安置の許可を受けたことより、山道が開かれ<ref name="bunko12_222-223・233・241">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、222-223・233・241頁</ref>、1886年(明治19年)、参道が整備されると<ref name="hokkaido20120503" />、同年6月1日に山開き大祭がとり行なわれた<ref name="bunko12_222-223・233・241" />。[[1901年]](明治34年)には2代住職により<ref name="bunko12_233">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、233頁</ref><ref name=minami2016a>{{Cite web|和書|url=https://www.city.sapporo.jp/minami/gaiyo/meisho/0503115.html |title=藻岩観音奥の院(ふるさと小百科) |date=2016-03-01 |website=南区 |publisher=札幌市 |accessdate=2019-01-20}}</ref>、各所に[[西国三十三所|西国三十三所観音霊場]]を模した33体の[[観音菩薩|観音]]像が置かれ<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、224-225・233頁</ref>、山頂に石堂が造られた<ref name="bunko12_233" />。以来、6月1日には「藻岩山山開き」として、信者が山頂に参拝する行事が毎年行われ<ref name="hokkaido20120503" />、明治時代末頃には、山開きは札幌の年中行事として親しまれた<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、223頁</ref>。参道の幅は[[1932年]](昭和7年)に拡張された<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、263頁</ref>。その後、石堂は観光施設建設のために<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、225頁</ref>山頂の別の場所に移設され、[[1973年]]([[昭和]]48年)に六角堂として再建された後<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、205頁</ref>、山開き大祭108回となった[[1992年]](平成4年)に本格的建築として落成し、今日の[[新善光寺 (札幌市)#奥の院|藻岩観音奥の院]](正式名称「浄土宗観音寺藻岩観音奥之院」)になった<ref name="hokkaido20120503" /><ref name=minami2016a />。堂内には竜頭観音が安置されており<ref>[[#yamazaki|山崎 (1995)]]、18頁</ref>、堂の傍らにある水かけ観音は、かつての石堂に安置された石像である<ref name=minami2016a />。山頂に至る藻岩観音の参道は、今日の主要な藻岩山登山道(慈啓会病院前コース)となっている<ref name="hokkaido20120503" /><ref name="guide_8-9" />。


=== 旧札幌スキー場 ===
現在、[[プロテスタント]]のローズガーデンクライスト[[教会]]がある隣接地は、山麓の観光スポット[[ちざきバラ園]]であったが、[[2009年]]([[平成]]21年)に閉園した<ref name="hokkaido20120503"/>。
[[連合国軍占領下の日本|戦後占領期]]の[[1946年]](昭和21年)に北東の山腹(ロープウェイ沿線の北側)を切り拓いた[[進駐軍]]専用の[[札幌スキー場]]が建設されるとともに<ref name="consultants">{{Cite journal |和書 |author=真田英夫 |year=2007 |title=堂垣内尚弘先生の足跡を訪ねて (ii) - 札幌スキー場の建設 |journal=コンサルタンツ北海道 |issue=112 |pages=39-43 |publisher=[[日本技術士会]]北海道本部 |url=http://www.ipej-hokkaido.jp/ch/ch112/p039.pdf |format=PDF |accessdate=2019-01-20}}</ref>、[[1946年]](昭和21年)12月、日本初のスキーリフトが導入された<ref>{{Cite journal|和書|author=柴田高 |title=ポストバブル期のスキー場経営の成功要因 (久木田重和教授退任記念号) |journal=東京経大学会誌. 経営学 |ISSN=1348-6411 |publisher=東京経済大学経営学会 |year=2014 |issue=284 |pages=165-186 |naid=120005556920 |url=https://hdl.handle.net/11150/7633 |accessdate=2021-09-01}}</ref>。当時、宮部金吾およびその後の[[舘脇操]]が同地の保全を提唱した<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、114-115頁</ref>。そして、[[1958年]](昭和33年)の[[第13回国民体育大会]]における使用を最後に、自然保護のため立ち入りが禁止されたことで<ref name="consultants" />、現在は植生がある程度回復しており<ref name="bunko12_102-103">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、102-103頁</ref>、スキーリフトの台座などの遺構が残るのみである。


なお、第二スキーコースの上部は藻岩山山頂コースとして札幌市交通局(1985年からは札幌交通開発公社<ref>{{Cite web|和書|title=会社概要 - 会社沿革 |url=https://sapporo-dc.co.jp/about/history/ |website=株式会社札幌振興公社 |access-date=2023-01-06 |language=ja}}</ref>)の運営により[[2005年]](平成17年)までチェアリフトが設置され、冬季にはスキーコースとして活用された。
=== 消滅集落 ===
[[2015年]](平成27年)国勢調査によれば、行政町名としての「藻岩山」地域は、調査時点で人口0人の[[消滅集落]]となっている<ref name="kokusei2015-01-a">{{Cite report |author=総務省統計局統計調査部国勢統計課 |authorlink=http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka.htm |date=2017-01-27 |title=平成27年国勢調査小地域集計01北海道《年齢(5歳階級),男女別人口,総年齢及び平均年齢(外国人-特掲)-町丁・字等》 |url=http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_csvDownload_&fileId=000007841019&releaseCount=1 |publisher=総務省 |format=CSV |accessdate=2017-05-20 }}</ref>。


=== 仏舎利塔 ===
== もいわ山ロープウェイ ==
[[ファイル:Moiwayama Ropeway (4thgen).JPG|thumb|right|200px|4代目藻岩山ロープウェイ(2015年9月)]]
[[ファイル:moiwa-heiwa-tower.JPG|thumb|150 px|札幌[[仏舎利塔]]]]
北東側の山麓に近い標高178メートルの位置に<ref name="new20180503">{{Cite news |title=<札幌低山めぐり1> 平和の塔・天神山 |work=[[北海道新聞]] どうしん電子版 |date=2018-05-03 |url=https://www.hokkaido-np.co.jp/movies/detail/5779207008001 |accessdate=2019-01-20}}</ref>、白い[[仏舎利塔]](通称「納骨堂」、「平和の塔」、正式名称「札幌平和塔」)が建っている。[[太平洋戦争]]の犠牲者の冥福と世界・日本の平和を祈る目的で、[[日本山妙法寺]]の[[藤井日達]]の発願により、[[1959年]](昭和34年)に建立され<ref name=yamazaki_50>[[#yamazaki|山崎 (1995)]]、50頁</ref><ref name="news19581126">{{Cite news |title=藻岩山に平和塔 仏舎利まつる 来年7月までに完成 |newspaper=北海道新聞 |date=1958-11-26 |url=http://archives.city.sapporo.jp/Culture/scrap/scrap_photo_view.jsp?img=803_0038.jpg?1543470895636&title=%91%94%8A%E2%8ER%82%C9%95%BD%98a%93%83%81A%95%A7%8E%C9%97%98%82%DC%82%C2%82%E9%81A%97%88%94N7%8C%8E%82%DC%82%C5%82%C9%8A%AE%90%AC |accessdate=2018-11-11}}</ref>、その後、改装されている<ref>{{Cite web|和書|url=http://ohoka-inst.com/sapporo_bussharitou.html |title=札幌仏舎利塔(北海道札幌市) |year=2012 |publisher=[[大岡實]]建築研究所 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。高さ33メートル、基底幅28メートル<ref name=yamazaki_50 />。[[インド]]の[[ジャワハルラール・ネルー|ネール]]首相から贈られた[[仏舎利]]が安置されている<ref name="news19581126" />。
最初に[[ロープウェイ]]が建設されたのは[[1958年]](昭和33年)で、3線交走式で6人乗り小型の[[ゴンドラ]]30台が片道10分で登り下りしていた。[[1971年]](昭和46年)に4線交走式で66人乗りの2台(こぶし号、はるにれ号)へと替わり、時間も片道5分に短縮された。以前は山上の駅から[[チェアリフト|リフト]]に乗って頂上に至っていたが、老朽化のため[[2005年]](平成17年)4月より休止。代わりに無料[[シャトルバス]]を走らせ、冬季には[[雪上車]]<ref group="注">4箇所の[[タイヤ]]を[[無限軌道]]台車に交換した[[マイクロバス]]([[三菱・ローザ]]4WDの[[改造車]])。</ref>が運行していた。


この平和塔の南側の中腹(ロープウェイの沿線下付近)には、かつて[[エゾシカ]]園が設けられていたが<ref>{{Cite news |title=藻岩山に観光用の牧場 |newspaper=北海道新聞 |date=1966-01-05 |url=http://archives.city.sapporo.jp/Culture/scrap/scrap_photo_view.jsp?img=897_0013.jpg?1547945461748&title=%91%94%8A%E2%8ER%82%C9%8A%CF%8C%F5%97p%82%CC%96q%8F%EA |accessdate=2019-01-20}}</ref>、その後、「森永牧場」([[1966年]]〈昭和41年〉[[森永乳業]]開設<ref>{{Cite web|和書|url=https://shashi.shibusawa.or.jp/details_nenpyo.php?sid=1510&query=&class=&d=all&page=141 |title=森永乳業(株)『森永乳業五十年史』(1967.09) -年表 |website=[[渋沢栄一|渋沢]]社史データベース |publisher=[[渋沢栄一記念財団]] |accessdate=2019-01-20}}</ref>)と呼ばれる[[乳牛]]牧場となり、北海道の形状をした浅い池も存在していた<ref>{{Cite news |title=藻岩山に“乳牛牧場” |newspaper=北海道新聞 |date=1966-05-25 |url=http://archives.city.sapporo.jp/Culture/scrap/scrap_photo_view.jsp?img=901_0059.jpg?1547945461748&title=%91%94%8A%E2%8ER%82%C9%81h%93%FB%8B%8D%96q%8F%EA%81h |accessdate=2019-01-20}}</ref>。現在は撤去され、跡地は「はらっぱ」と呼ばれる広場になっている<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、261頁</ref>。
[[2011年]](平成23年)12月23日より施設を改装し、および新型ゴンドラにリニューアルされた。「もいわ山麓駅」から「もいわ中腹駅」間を運行し、中腹駅より「もーりすカー」に乗換えが可能である。2基あるゴンドラはそれぞれ藻岩山に生息する[[エゾフクロウ]](灰色)、[[エゾリス]](オレンジ色)をイメージしている。

* 乗車定員 - 66名
また、山麓の観光スポットとして「[[ちざきバラ園]]」があったが、[[2009年]](平成21年)10月に閉園した<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.hokkaido-konosha.co.jp/topics/?tid=113 |title=ちざきバラ園閉園のご案内 |date=2009-11-25 |publisher=北海道興農社 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。現在、同地にはローズガーデンクライスト[[教会]]([[2010年]]〈平成22年〉6月完成<ref>{{cite web |url=https://www.sowaproject.jp/about-us/history/ |title=HISTORY |date=2009-11-25 |publisher=創和プロジェクト |accessdate=2019-01-20}}</ref>)が建つ。

=== 藻岩山神社 ===
ロープウェイ中腹駅の近隣にある藻岩山神社は、[[1987年]](昭和62年)に建立されたもので<ref name=minami2016b>{{Cite web|和書|url=https://www.city.sapporo.jp/minami/gaiyo/meisho/0503118.html |title=藻岩山神社(ふるさと小百科) |date=2016-03-01 |website=南区 |publisher=札幌市 |accessdate=2019-02-24}}</ref>、現在の[[中央区 (札幌市)|中央区]][[伏見 (札幌市)|伏見]]の山麓に位置する[[札幌伏見稲荷神社]]の境外[[摂末社|末社]]となる。[[オーストリア=ハンガリー帝国]]の軍人[[テオドール・エードラー・フォン・レルヒ|レルヒ]]からスキーを学んだ学生数人が[[1912年]](明治45年)3月に藻岩山スキー登山を決行したことが北海道の山スキーの発祥とされることから<ref name="bunko12_27">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、27頁</ref>、伏見稲荷大神とともに、[[ウル (北欧神話)|ウル]]の神([[北欧神話]]のスキーの神)、レルヒの神(スキー術を伝授したレルヒ)、[[アベリー・ブランデージ|ブランデージ]]の神([[1972年札幌オリンピック|札幌オリンピック]]時の[[国際オリンピック委員会]]〈IOC〉会長)を祀り、藻岩山スキー客の無病息災と安全を祈願して建立された<ref name=minami2016b />。

=== 行政区域としての「藻岩山」地区 ===
[[2015年]](平成27年)[[国勢調査 (日本)|国勢調査]]によれば、行政町名としての「藻岩山」地域は、調査時点で人口0人である<ref>{{Cite report |和書 |author=総務省統計局統計調査部国勢統計課 |authorlink=統計局 |date=2017-01-27 |title=平成27年国勢調査 小地域集計(総務省統計局) 第3表 年齢(5歳階級), 男女別人口, 総年齢及び平均年齢(外国人-特掲)-町丁・字等 |url=https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files/data?fileid=000007841019&rcount=1 |publisher=[[総務省]] |format=CSV |accessdate=2017-05-20}}</ref>。

== 自然 ==
=== 気象 ===
最寄りの観測地点からの気温推定値を以下に示す。
<center>
{| class="wikitable"
|+藻岩山の気温推定値<ref name="guide_37">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、37頁</ref>
|-
! 地点
! 標高(m)
! 年平均気温(℃)
! 最寒月均気温(℃)
! 最暖月均気温(℃)
|-
| align= | 藻岩山山頂<ref group="注">推定値(気温低減率0.65℃/100m)。</ref>
| align="center" | 531
| align="center" | 5.4
| align="center" | -6.9
| align="center" | 19.0
|-
| align= | 札幌市中央区
| align="center" | 17
| align="center" | 8.9
| align="center" | -3.6
| align="center" | 22.3
|-
|}
</center>

積雪は、札幌藻岩山スキー場の最上部では市街地に比べておよそ30センチメートル多い<ref name="guide_37" />。また、木々が芽吹く季節である4-5月は平均風速が大きく、それにより山頂や尾根沿いでは偏形樹(風衝樹形)が見られる<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、60頁</ref>。

=== 植物 ===
樹木は100種余り([[高木]]41種、[[低木]]54種、[[つる植物]]12種、計107種<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、100頁</ref>)の数多くの樹種が認められる<ref>{{Cite book |和書 |editor=小学館「[[さわやか自然百景]]」編集部 |year=2015 |title=NHK「さわやか自然百景」 ゆるり散策ガイド〈春〉 |publisher=[[小学館]] |isbn=978-4-09-103760-2 |pages=186-189}}</ref>。冷温帯性の[[落葉広葉樹林]]が最も多く<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、36・42頁</ref>、伐採の影響が見られない北・東斜面などには[[イタヤカエデ]](エゾイタヤ)・シナノキ林が広がり、ミズナラや[[ホオノキ]]などが多様に混生しており<ref name="guide_42">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、42頁</ref>、山頂付近にはダケカンバ林が見られる<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、43・60頁</ref>。尾根沿いや伐採の影響より再生した[[二次林]]は若いミズナラ林となる<ref name="guide_42" />。軍艦岬の沢沿いなどには[[カツラ (植物)|カツラ]]林がある<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、99-100頁</ref>。

発見地などにちなんだ和名・学名が以下の植物につく<ref name=menu_05 />。

; 藻岩や関連する和名・学名(太字)をもつ植物<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、105-106頁</ref>
* [[モイワナズナ|'''モイワ'''ナズナ]] ''[[w:Draba|Draba]] sachalinensis'' (F. Schmidt) Trautv. - [[アブラナ目]][[アブラナ科]]。
* [[モイワシャジン|'''モイワ'''シャジン]] ''[[ツリガネニンジン属|Adenophora]] pereskiifolia'' (Fisch. ex Roem. et Schult.) Fisch. ex Loudon - [[キキョウ目]][[キキョウ科]]。
* [[モイワラン|'''モイワ'''ラン]] ''[[サイハイラン属|Cremastra]] aphylla'' [[遊川知久|Yukawa]] - [[キジカクシ目]][[ラン科]]。
* [[オオバボダイジュ#下位分類|'''モイワ'''ボダイジュ]] ''Tilia maximowicziana'' [[白沢保美|Shirasawa]] var. ''yesoana'' ([[中井猛之進|Nakai]]) Tatewaki - [[アオイ目]][[アオイ科]]。[[オオバボダイジュ]]の変種。
* [[ヤマハナソウ|'''ヤマハナ'''ソウ]] ''[[ユキノシタ属|Saxifraga]] sachalinensis'' F.Schmidt [[ユキノシタ目]][[ユキノシタ科]]。かつての[[山鼻|山鼻村]]で宮部金吾により採取されたことによる。

=== 動物 ===
藻岩山周辺の大型[[哺乳類]]としては、[[エゾシカ]]のほか[[ヒグマ]]も挙げられる<ref name="guide_90-91">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、90-91頁</ref>。[[リス]]類は、[[エゾリス]]、[[エゾシマリス]]のほか[[エゾモモンガ]]が生息する<ref name="guide_84-85">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、84-85頁</ref>。また、[[エゾユキウサギ]]も認められるが、[[キタキツネ]]の増加により減少したといわれる<ref name="bunko12_130-132">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、127-128頁</ref>。このほか[[特定外来生物]]である[[アライグマ]]も定着・拡大している<ref name="guide_94">[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、94頁</ref>。[[ネズミ]]類は、[[アカネズミ属|アカネズミ類]]である[[ヒメネズミ]]、ハントウアカネズミ(カラフトアカネズミ)、[[アカネズミ]](エゾアカネズミ)<ref name="bunko12_123">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、123頁</ref>、{{仮リンク|ヤチネズミ属|en|Red-backed vole|label=ヤチネズミ類}}の[[エゾヤチネズミ]]が生息するほか、{{仮リンク|ヒメヤチネズミ|en|Northern red-backed vole}}(ミカドネズミ)も認められている<ref>{{Cite journal|和書|author=太田嘉四夫 |title=北海道産ネズミ類の生態的分布の研究 |journal=北海道大學農學部 演習林研究報告 |issn=03676129 |publisher=北海道大学農学部演習林 |year=1968 |month=dec |volume=26 |issue=1 |pages=223-295 |naid=120000965063 |url=https://hdl.handle.net/2115/20866 |accessdate=2021-06-01}}</ref>。また、ネズミとは別系統である[[トガリネズミ|トガリネズミ類]]として[[バイカルトガリネズミ]](エゾトガリネズミ)、[[オオアシトガリネズミ]]が生息する<ref name="bunko12_127-128">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、127-128頁</ref>。

=== 鳥類 ===
鳥類は藻岩山・円山でほぼ同様に<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、146-148頁</ref>120種余りが認められ、夏鳥を含む繁殖期に種数および個体数が最大になる<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、96頁</ref>。特に天然記念物の[[クマゲラ]]の繁殖例が有名であるが稀であり<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、151頁</ref><ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、106頁</ref>、減少が懸念される[[ヨタカ]]や[[エゾライチョウ]]も[[1980年]](昭和55年)以降の記録としてあるが[[21世紀]]以降は不明である<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、96-97頁</ref>。[[留鳥]]としては、[[カラ類]]、[[キツツキ科|キツツキ類]]、[[ヒヨドリ]]、[[シメ]]、[[カケス]](ミヤマカケス)、[[猛禽類]]の[[フクロウ]](エゾフクロウ)や[[タカ科|タカ類]]などが生息する<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、97-99・102頁</ref>。また、多くの夏鳥が繁殖するほか<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、100-101頁</ref>、[[渡り鳥]]の要地として多くの旅鳥も見られ、冬鳥としては、[[ツグミ]]、[[レンジャク科|レンジャク類]]、[[アトリ科|アトリ類]]などが知られる<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、145-146・156-158頁</ref><ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、97・102頁</ref>。

=== 昆虫 ===
昆虫は藻岩山で数千種が確認されている<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、123頁</ref>。[[チョウ目|チョウ類]]は藻岩山・円山に約90種が生息する<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、177頁</ref>。日本の[[国蝶]]である[[オオムラサキ]]が一部で観察され<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、21・110-111頁</ref>、多くの[[ミドリシジミ#ミドリシジミ類|ミドリシジミ類]]([[ゼフィルス]]〈''Zephyrus''〉)をはじめ<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、112-113頁</ref>、ウスバシロチョウ類({{仮リンク|ウスバシロチョウ属|en|Parnassius|label=パルナシウス}}〈''Parnassius''〉)を含む[[アゲハチョウ]]のほか、本州では高地に生息する[[チョウ]]も見られる<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、186-189頁</ref>。

[[1926年]](大正15年)8月4日に藻岩山で採集された1雌の[[昆虫標本|標本]]より、[[1935年]](昭和10年)に新種として発表された[[エゾムモントゲヒゲトラカミキリ]] ''Grammographus jezoensis'' ([[松下眞幸|Matsushita]] & [[玉貫公一|Tamanuki]], 1935) は、その後一度も見つかっておらず<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、184頁</ref>、その[[タイプ (分類学)|タイプ標本]]も行方不明のため正体不明とされる<ref>{{Cite web|和書|url=https://japanesebeetles.jimdo.com/%E7%9B%AE%E9%8C%B2/114-%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%82%AD%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%82%B7%E7%A7%91/114-6-%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%82%AD%E3%83%AA%E4%BA%9C%E7%A7%91/ |title=114.6 Subfamily Cerambycinae Latreille, 1802 / カミキリ亜科 |year=2017 |website=日本列島の甲虫全種目録 (2018年) |publisher=japanesebeetles.jimdo.com |accessdate=2019-01-20}}</ref>。また、[[札幌農学校]](のちの[[北海道大学]])卒業生・教授で、藻岩山・円山を研究調査地とした<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、169頁</ref>昆虫学者の[[松村松年]]らにより、多くの昆虫に採集地の藻岩山にちなんだ和名・学名がつく<ref name=menu_05 />。

; 藻岩を和名・学名(太字)にもつ昆虫<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、122頁</ref>
* [[モイワサナエ|'''モイワ'''サナエ]] ''Davidius '''moiwanus moiwanus''''' ([[奥村定一|Okumura]], 1935)<ref name="bunko12_170">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、170頁</ref> - [[トンボ目]][[サナエトンボ科]]。
* [[モイワキジラミ|'''モイワ'''キジラミ]] ''[[w:Psylla|Psylla]] '''moiwasana''''' [[桑山茂|Kuwayama]], 1908 - [[カメムシ目]]{{仮リンク|キジラミ|en|Jumping plant louse|label=キジラミ科}}。
* [[アブラムシ]]の1種 ''Semiaphis '''moiwaensis''''' [[高橋尚孝|Takahashi]], 1965 - カメムシ目。
* [[モイワウスバカゲロウ|'''モイワ'''ウスバカゲロウ]] ''Epacanthaclisis '''moiwana''''' ([[岡本半次郎|Okamoto]], 1905)<ref name="bunko12_170" /> - [[アミメカゲロウ目]][[ウスバカゲロウ科]]。
* [[オナガカツオゾウムシ]] ''[[w:Lixus (beetle)|Lixus]] '''moiwanus''''' [[河野広道|Kono]], 1928 - [[コウチュウ目]][[ゾウムシ科]]。
* [[モイワハバチ|'''モイワ'''ハバチ]](モイワナガハバチ) ''Strongylogaster '''moiwana''''' Matsumura, 1912<ref name="bunko12_170" /> - [[ハチ目]]{{仮リンク|ハバチ科|en|Tenthredinidae}}。
* [[フシダカヒメバチ族|フシダカヒメバチ]]の1種 ''Sychnostigma '''moiwanum''''' (Matsumura, 1912) - ハチ目[[ヒメバチ科]]。
* [[モイワマルズオナガヒメバチ|'''モイワ'''マルズオナガヒメバチ]] ''[[w:Xorides|Xorides]] sepulchralis'' ([[w:August Holmgren|Holmgren]], 1860) - ハチ目ヒメバチ科。
* [[コンボウアメバチ亜科|コンボウアメバチ]]の1種 ''Erigorgus '''moiwana''''' ([[内田登一|Uchida]], 1928) - ハチ目ヒメバチ科。
* [[モイワケンヒメバチ|'''モイワ'''ケンヒメバチ]] ''Arotes albicinctus '''moiwanus''''' (Matsumura, 1912)<ref name="bunko12_170" /> - ハチ目ヒメバチ科。
* [[モイワヒメバチ|'''モイワ'''ヒメバチ]] ''Protichneumon''' moiwanus''''' (Matsumura, 1912)<ref name="bunko12_170" /> - ハチ目ヒメバチ科。
* [[モイワガガンボ|'''モイワ'''ガガンボ]] ''[[w:Tipula|Tipula]] '''moiwana''''' (Matsumura, 1916)<ref name="bunko12_170" /> - [[ハエ目]][[ガガンボ科]]。
* [[ヒメガガンボ亜科|ヒメガガンボ]]の1種 ''[[w:Limonia (fly)|Limonia]] '''moiwana''''' ([[w:Charles Paul Alexander|Alexander]], 1924) - ハエ目ガガンボ科。
* [[モイワエゾカ|'''モイワ'''エゾカ]] ''Pachyneura fasciata'' ([[ヨハン・ウィルヘルム・ゼタールステッド|Zetterstedt]], 1838 - ハエ目{{仮リンク|キノコバエモドキ科|en|Pachyneuridae}}。
* [[ミツボシキアブモドキ]] ''[[w:Xylomya|Xylomya]] '''moiwana''''' (Matsumura, 1915)<ref name="bunko12_170" /> - ハエ目{{仮リンク|キアブモドキ科|en|Xylomyidae}}。
* [[アシブトオドリバエ]] ''[[w:Empis|Empis]] '''moiwasana''''' (Matsumura, 1915) - ハエ目[[オドリバエ科]]。

== 登山 ==
藻岩山には自然学習歩道が整備され、山麓から中腹までロープウェイ、中腹から山頂展望台までミニケーブルカーが整備されている<ref>{{Cite journal |和書 |title=藻岩山が生まれ変わります |journal=広報さっぽろ |issue=2010年4月号 |page=7 |publisher=札幌市 |url=https://www.city.sapporo.jp/somu/koho-shi/201004/documents/201004_07_1.pdf |format=PDF |accessdate=2020-12-15}}</ref>。

=== 登山道 ===
自然歩道を利用して藻岩山山頂に至る総延長12.5メートルの5つの登山コースが整備される<ref name=pasco />。
<center>
{| class="wikitable"
|+自然歩道 藻岩山ルート<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、4-17頁</ref><ref>{{Cite web|和書|url=http://moiwa.sapporo-dc.co.jp/mountain/index.html |title=もいわ山の自然・登山 - もいわ山登山道5コース |website=札幌もいわ山ロープウェイ |publisher=札幌振興公社 |accessdate=2019-01-20}}</ref>
|-
! コース
! 距離(-山頂)
! 時間(登り)
! 時間(下り)
! ルート(入口-山頂)
|-
| align= | 慈恵会病院前コース
| align="center" | 2.9km
| align="center" | 70分
| align="center" | 50分
| align="center" | 1.8km-馬の背-1.1km
|-
| align= | 旭山記念公園コース
| align="center" | 4.0km
| align="center" | 110分
| align="center" | 90分
| align="center" |2.4km-T6分岐-0.5km-馬の背-1.1km
|-
| align= | スキー場コース
| align="center" | 2.5km
| align="center" | 90分
| align="center" | 60分
| align="center" | 2.5km
|-
| align= | 小林峠コース
| align="center" | 4.5km
| align="center" | 90分
| align="center" | 80分
| align="center" | 2.9km-T6分岐-0.5km-馬の背-1.1km
|-
| align= | 北の沢コース
| align="center" | 2.4km
| align="center" | 60分
| align="center" | 50分
| align="center" | 1.3km-馬の背-1.1km
|}
</center>

; 慈恵会病院前コース
: 慈啓会病院前より入り、北麓の登山口となる藻縁山(そうえんざん)観音寺から33体の観音像が安置され、参道として整備された由緒のある登山道である<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、260-262頁</ref>。

; 旭山記念公園コース
: [[旭山記念公園]]前の登山口および園内より通じており、T6分岐で小林峠コースと合流し、馬の背分岐で慈恵会病院前コースと合流する<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、10-11頁</ref>。

; スキー場コース
: 南麓の札幌藻岩山スキー場入口より尾根に登り、稜線沿いに兎平(うさぎだいら)、ロープウェイ中腹駅を経て山頂に至る。スキー場の休業期は場内を歩くこともできる<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、12-13頁</ref>。

; 小林峠コース
: 西麓の[[こばやし峠|小林峠]]付近に登山口があり、T6分岐で旭山記念公園コースと合流し、馬の背分岐で慈恵会病院前コースなどと合流する<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、16-17頁</ref>。

; 北の沢コース
: 南西側の北の沢の禅宗寺より入った西麓に登山口があり、馬の背付近の分岐で慈恵会病院前コースなどと合流する<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、14-15頁</ref>。

このほかロープウェイと山麓駅周辺には、[[札幌市水道記念館|水道記念館]]まで往復約30分のコースや、平和塔を経由して一周する約60分のコースなどもある<ref>[[#guide|さっぽろ自然調査館 (2013)]]、18-19頁</ref>。なお、軍艦岬からの登山道は廃道となっている<ref name="guide_21" />。

=== 札幌もいわ山ロープウェイ ===
[[File:Moiwayama Ropeway (4thgen).JPG|thumb|ロープウェイ4代目ゴンドラ(2015年9月)]]
[[File:Moiwayama Ropeway2.jpg|thumb|4代目ゴンドラ(2024年5月)]]
[[File:Moiwayama Ropeway Mid-slope station.jpg|thumb|ロープウェイ中腹駅]]

最初に[[札幌市交通局]]によって[[ロープウェイ]]が建設されたのは、観光自動車道と同じ1958年(昭和33年)で、7月5日より運行が開始された。3線並列循環式で、色とデザインが[[札幌市交通局330形電車|市電330形]]を彷彿とさせる38人乗りの小型のゴンドラ30台が1分間隔で発車し、高低差366メートル、全長(傾斜長)約1,200メートルを片道10分で登り下りしていた<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、215-217頁</ref>。この「藻岩山ロープウェイ」は、[[1972年]](昭和47年)の札幌冬季オリンピック開催を迎えるにあたり、より安全性の向上を図るため[[1970年]](昭和45年)9月に運行を中止<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、217-218頁</ref>。翌[[1971年]](昭和46年)に4線交走式で66人乗りのゴンドラ2台(こぶし号・はるにれ号)へと代わり、時間も片道5分に短縮された<ref name="bunko12_218">[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、218頁</ref>。

以前は、山上の「中腹展望台駅」から[[チェアリフト|リフト]]に乗って山頂展望台に至っていた<ref name=Nakajima>{{Cite book |和書 |author=中島信 |year=2010 |title=日本のロープウェイ・ゴンドラ 全ガイド |publisher=千早書房 |isbn=978-4-88492-444-7 |pages=16-17}}</ref>。[[1975年]](昭和50年)、[[1976年]](昭和51年)にリフトの大改修が行われたが<ref name="bunko12_218" />、その後、老朽化のため[[2005年]](平成17年)4月より休止。代わりに無料[[シャトルバス]]「もーりす号」を走らせ、冬季には[[雪上車]]<ref group="注">4か所の[[タイヤ]]を[[無限軌道]]台車に交換した[[マイクロバス]]([[三菱・ローザ]]4WDの[[改造車]])。</ref>が運行していた<ref name=Nakajima />。

[[2010年]](平成22年)4月より施設を休止して改装・整備された後、[[2011年]](平成23年)12月23日より再開し、ゴンドラもまた新型にリニューアルされた。2基のゴンドラはそれぞれ藻岩山に生息するエゾフクロウ(銀色)、エゾリス(オレンジ色)をイメージしている。「もいわ山麓駅」から「もいわ中腹駅」間を運航し、中腹駅より「もーりすカー」に乗換えが可能である<ref name=201112moiwa>{{Cite web|和書|author=北海道ファンマガジン編集部 |url=https://pucchi.net/hokkaido/newstopics/201112moiwa.php |title=もいわ山観光施設リニューアルオープン! ミニケーブルカーも登場 |website=[[北海道ファンマガジン]] |publisher=北海道リレーション |accessdate=2019-01-20}}</ref>。

; 設備概要<ref>{{Cite web|和書|url=https://mt-moiwa.jp/facility/st-foothill/ropeway/ |title=ロープウェイ乗り場 - 札幌もいわ山ロープウェイ |website=札幌もいわ山ロープウェイ |publisher=札幌振興公社 |accessdate=2024-09-28}}</ref>
* 運行間隔 - 15分
* 乗車定員 - 最大66名
* 乗車時間 - 約5分
* 乗車時間 - 約5分
* 距離 - 1.2km
* 利用料金
* 時速 - 18km/h
** 往復 - 一般1,100円、団体(15名以上)880円
** 片道 - 一般600円、団体(15名以上)480円
** 年間パスポート(下記もーりすカーも利用可能) - おとな2,800円、こども1,400円、65歳以上2,500円
{{-}}


; 営業時間<ref name="price">{{Cite web|和書|url=https://mt-moiwa.jp/guide/ |title=営業時間・料金 |website=札幌もいわ山ロープウェイ |publisher=札幌振興公社 |accessdate=2024-09-28}}</ref>
== もーりすカー ==
* 夏期(4月〜11月) 10:30〜22:00 ※上り最終21:30
[[ファイル:Moiwayama Morris Car.JPG|thumb|right|200px|もーりすカー(2015年9月)]]
* 冬期(12月〜3月) 11:00〜22:00 ※上り最終21:30
従来の[[チェアリフト]]に替わり、2011年(平成23年)12月23日のもいわ山観光施設リニューアルとともに開通した、密閉型[[キャビン]]を持つミニ[[ケーブルカー]]。ロープウェイの乗換駅となる「もいわ中腹駅」から山頂展望台「もいわ山頂駅」間の約240メートルを運行している。「もーりす」とは藻岩山の[[キャラクター]]名。
* ゴールデンウィークや8月の土日祝日には延長営業を行う。また、元日には夜間運行を行う。
* 運転速度 - 12.6km/h

; 利用料金<ref name="price"/>
* 往復 - 一般1,400円、小学生以下700円
* 片道 - 一般700円、小学生以下350円
* 往復セット(ロープウェイ + もーりすカー) - 一般2,100円、小学生以下1,050円
* 片道セット(ロープウェイ + もーりすカー) - 一般1,050円、小学生以下530円
* 団体(15名以上)割引、シニア割引、修学旅行料金の設定あり

; アクセス
[[札幌市電]]「[[ロープウェイ入口停留場|ロープウェイ入口]]」電停下車、無料シャトルバス乗車2分、または徒歩10分<ref>{{Cite web |url=https://mt-moiwa.jp/access/shuttlebus-tram/ |title=アクセス 市電/無料シャトルバスで |access-date=2024-09-14 |publisher=札幌もいわ山ロープウェイ}}</ref>。

=== ミニケーブルカー(もーりすカー) ===
[[File:Moiwayama Morris Car.JPG|thumb|もーりすカー(2015年9月)]]
[[File:Moiwayama Morris Car2.jpg|thumb|山麓側から見たもーりすカー(2024年5月)]]
[[File:Moiwayama Morris Car3.jpg|thumb|他所とは異なり両脇にケーブルがある]]
従来の[[チェアリフト]]に代わり、2011年(平成23年)12月23日の藻岩山の観光施設リニューアルとともに開通した<ref name=201112moiwa />。

スイス製のキャビンを持つ2両編成のミニケーブルカー<ref name=moriss>{{Cite web|和書|url=https://mt-moiwa.jp/facility/st-midslope/moriss/|title=ミニケーブルカー |website=札幌もいわ山ロープウェイ |publisher=札幌振興公社 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。機構は[[日本ケーブル]]製で、線路の両脇にあるケーブルで移動する複式単線方式の傾斜地輸送設備である<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nipponcable.com/recruit/works/|title=実績|publisher=日本ケーブル|accessdate=2024-09-28}}</ref>。キャビンは[[ブランコ]]のように吊るされており、線路の[[縦断勾配|勾配]]が途中で変わっても水平を保つようになっている。
[[建築基準法]]に基づく[[エレベーター]]としての扱いで、[[斜行エレベーター]](鋼索式エレベーター)の一種である{{要出典|date=2024-09-28}}。

ロープウェイの乗換駅となる「もいわ中腹駅」から山頂展望台「もいわ山頂駅」間の約230メートルを運行している<ref name=moriss/>。愛称の「もーりす」は藻岩山の[[キャラクター]]名<ref>{{Cite web|和書|url=https://kawaii.hokkaido.jp/character/morisu/ |title=もーりす |website=カワイイ!!北海道 |publisher= KAWAii!Hokkaido |accessdate=2019-01-20}}</ref>。
登場当時は専ら「もーりすカー」の名称が使われていたが<ref>{{Cite web|和書|url=http://moiwa.sapporo-dc.co.jp/guide/moriss.html|title=藻岩山のもーりすカーの乗り場|publisher=札幌振興公社|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130629055547/http://moiwa.sapporo-dc.co.jp/guide/moriss.html|archivedate=2013-06-29|accessdate=2024-09-28}}</ref>、近年は「ミニケーブルカー」と案内されている<ref name=moriss/>。

; 設備概要<ref name=moriss />
* [[編成 (鉄道)|編成]] - 2両
* [[編成 (鉄道)|編成]] - 2両
* 運行間隔 - 15分
* 乗車定員 - 1両30名×2両(1回60名の輸送が可能)
* 乗車時間 - 約70秒
* 乗車定員 - 最大60名(1両30名×2両)
* 乗車時間 - 約1分40秒
* 利用料金
* 距離 - 約230m
** 往復 - 一般600円、団体(15名以上)480円
* 時速 - 12.6km/h
** 片道 - 一般300円、団体(15名以上)240円

; 利用料金<ref name=price />
* 往復 - 一般700円、小学生以下350円
* 片道 - 一般350円、小学生以下180円
* ロープウェイとのセット料金あり(上述)
* 団体(15名以上)割引、シニア割引、修学旅行料金の設定あり

{{-}}
{{-}}

== 藻岩山観光自動車道 ==
{{main|藻岩山観光自動車道}}
[[1958年]](昭和33年)夏開催の北海道大博覧会を視野に、観光と市勢の伸展を目的として[[1957年]](昭和32年)より藻岩山の中腹に至るロープウェイとともに山頂を通る観光[[有料道路]]の新設が進められ<ref>{{Cite news |title=観光地になる藻岩山 |newspaper=北海道新聞 |date=1958-06-07 |url=http://archives.city.sapporo.jp/Culture/scrap/scrap_photo_view.jsp?img=781_0044.jpg?1543274773701&title=%8A%CF%8C%F5%92n%82%C9%82%C8%82%E9%91%94%8A%E2%8ER |accessdate=2019-01-20}}</ref>、[[陸上自衛隊]]の手により<ref>[[#bunko12|札幌市教育委員会 (1980)]]、216頁</ref>同年10月末には貫通し<ref>{{Cite news |title=藻岩観光道路が貫通 |newspaper=北海道新聞 |date=1957-11-01 |url=http://archives.city.sapporo.jp/Culture/scrap/scrap_photo_view.jsp?img=791_0003.jpg?1543307135572&title=%91%94%8A%E2%8A%CF%8C%F5%93%B9%98H%82%AA%8A%D1%92%CA |accessdate=2019-01-20}}</ref>、翌[[1958年]](昭和33年)7月、[[北ノ沢]]から山頂までの[[自動車道]]が開通した<ref>{{Cite news |title=札幌を一望に… 藻岩山ドライブ・ウェー来月開通 |newspaper=北海道新聞 |date=1957-01-29 |url=http://archives.city.sapporo.jp/Culture/scrap/scrap_photo_view.jsp?img=798_0017.jpg?1543274336629&title=%8ED%96y%82%F0%88%EA%96 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。

その後、観光自動車道は[[2011年]](平成23年)の藻岩山山頂施設の改装に伴い、中腹駐車場までに縮小された<ref>{{Cite web|和書|url=http://moiwa.sapporo-dc.co.jp/guide/index.html |title=施設ガイド - 自然を守る取り組み |website=札幌もいわ山ロープウェイ |publisher=札幌振興公社 |accessdate=2019-01-20}}</ref>。


== 旧藻岩ドリームランド ==
== 旧藻岩ドリームランド ==
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かつてロープウェイ乗り場の傍らに、[[ゴーカート]]場や[[プール]]、[[アーチェリー]]場といった遊具・施設のほか、[[エゾリス]]園を備えた「藻岩ドリームランド」という遊園地施設が存在したが、[[1977年]](昭和52年)に閉園。その後撤去され、往時の面影を残していない。[[ジェットコースター]]や[[観覧車]]などの遊具施設は、[[北海道大博覧会 (1968年)|北海道百年記念北海道大博覧会]]真駒内会場「子供の世界のファミリーランド」から移設された。


== 藻岩山の日 ==
== 藻岩山の日 ==
藻岩山山開き(6月1日)の前日である5月31日が、偶然にも標高の531メートルに符合することから、近年は毎年5月31日が「藻岩山の日」(「もいわ山の日」され、この前後の数日には藻岩山観光運営委員会が企画したイベントが催されている。
藻岩山山開き(6月1日)の前日である5月31日が、標高の531メートルに符合することから、近年は毎年5月31日「もいわ山の日」として、この前後の数日には藻岩山観光運営委員会が企画したイベントが催されている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.moiwayama.net/event/201605.html |title=もーりす通信 - 第11回 もいわ山の日 |publisher=藻岩山観光運営委員会 |accessdate=2019-01-20}}</ref>


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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=== 出典 ===
=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* 『藻岩・円山』[[札幌市]][[教育委員会]]編さっぽろ文庫12([[北海道新聞社]]、[[1980年]])。{{ASIN|B000J880DW}}
* {{Cite book |和書 |editor=[[札幌市]][[教育委員会]]編 |year=1980 |title=藻岩・円山 |series=[[さっぽろ文庫]]12 |publisher=[[北海道新聞社]] |asin=B000J880DW |ref=bunko12}}
* 『地形と地質』札幌市教育委員会編さっぽろ文庫77(北海道新聞社、[[1996年]])。ISBN 4-89363-076-8
* {{Cite book |和書 |editor=札幌市教育委員会編 |year=1996 |title=地形と地質 |series=さっぽろ文庫77 |publisher=北海道新聞社 |isbn=4-89363-076-8 |ref=bunko77}}
* {{Cite book |和書 |author=山崎長吉 |year=1995 |title=さっぽろ歴史散歩 山の辺の道 - 定山渓紀行 |publisher=[[北海道出版企画センター]] |isbn=4-8328-9502-8 |ref=yamazaki}}
* {{Cite book |和書 |editor=札幌市博物館活動センター編 |year=2007 |title=札幌市大型動物化石総合調査報告書 - サッポロカイギュウとその時代の解明 |edition=報告書PDF版 |url=http://www.city.sapporo.jp/museum/info/library.html |format=PDF |accessdate=2019-01-20 |publisher=[[札幌市]] |ref=museum}}
* {{Cite book |和書 |editor=さっぽろ自然調査館編著 |year=2013 |title=自然ガイド 藻岩山・円山 |publisher=北海道新聞社 |isbn=978-4-89453-703-3 |ref=guide}}

== 関連項目 ==
* [[藻岩山観光自動車道]]
* [[札幌藻岩山スキー場]]
* [[新善光寺 (札幌市)]]
* [[札幌スキー場]]
* [[ちざきバラ園]]
* [[藻岩]]
* [[藻岩下]]
* [[山鼻川]]
* [[山鼻]]
* [[円山町 (北海道)]]


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{citation |url=http://maps.gsi.go.jp/?ll=43.02222222222222,141.32222222222222&z=15#15/43.019051/141.323447/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1 |title=札幌(札幌) - 地理院地図 |website=地理院地図(電子国土Web) |publisher=[[国土地理院]]}}
* {{citation |url=https://maps.gsi.go.jp/?ll=43.02222222222222,141.32222222222222&z=15#15/43.019051/141.323447/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0f1 |title=札幌(札幌) - [[地理院地図]] |website=地理院地図(電子国土Web) |publisher=[[国土地理院]]}}
* {{citation |url=https://web.archive.org/web/20071105053343/https://www.nhk.or.jp/sawayaka/contents/program/2007/06/20070610_moiwayama.html |title=春 札幌・藻岩山(2007年6月10日放送) |website=[[さわやか自然百景]] |publisher=[[日本放送協会|NHK(日本放送協会)]]}}
* {{citation |url=http://www.moiwayama.net/ |title=SAPPORO もいわ山公式サイト もーりす通信}}
* {{citation |url=http://www.sapporo-dc.co.jp/index.html |title=札幌振興}}
* {{citation |url=http://www.moiwayama.net/ |title=SAPPORO もいわ山式サイト もーりす通信 |publisher=藻岩山観光運営委員会}}
* {{citation |url=http://moiwa.sapporo-dc.co.jp/index.html |title=もいわ山ロープウェイ |publisher=[http://www.sapporo-dc.co.jp/index.html 札幌振興公社]}}
* {{citation |url=http://archives.city.sapporo.jp/Culture/photolibrary/photoLib_detail_view.jsp?img=../image/photoLib/AD364190.jpg?1543699640226&title=%91%94%8A%E2%8Eq%8B%9F%97V%89%80%92n&sdate=1977/5/22&address=%8ED%96y%8Es%93%EC%8B%E6&cr=%8ED%96y%8Es |title=藻岩子供遊園地 |date=1977-05-22 |website=札幌市公文書館 |publisher=[[札幌市]]}} - 写真


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2024年12月7日 (土) 14:03時点における最新版

藻岩山
藻岩山(2009年3月)
標高 531 m
所在地 日本の旗 日本
北海道札幌市南区
位置 北緯43度01分21秒 東経141度19分20秒 / 北緯43.02250度 東経141.32222度 / 43.02250; 141.32222座標: 北緯43度01分21秒 東経141度19分20秒 / 北緯43.02250度 東経141.32222度 / 43.02250; 141.32222[1]
山系 後志山地
種類 複成火山
最新噴火 280-230万年前
藻岩山の位置(札幌市内)
藻岩山
藻岩山 (札幌市)
藻岩山の位置(札幌市内)
藻岩山
藻岩山 (札幌市)
藻岩山の位置(北海道内)
藻岩山
藻岩山 (北海道)
プロジェクト 山
テンプレートを表示

藻岩山(もいわやま)は、北海道札幌市の中心部から南西約5キロメートル札幌駅の南西6km[2])に位置する[3]標高531メートル (530.9m[4][5]〈531.03m[6]〉) の山[1]

概要

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藻岩山にはロープウェイ自動車道が通り[1]展望台や冬季はスキー場により、札幌市民や観光客の行楽地となっている[2]

山頂展望台より石狩平野の眺望(2012年4月)

山頂に登るには、北側から「もいわ山ロープウェイ」と「もーりすカー」(ケーブルカー)を乗り継ぐか[7]、あるいは南側から「藻岩山観光自動車道」(冬季休業)で中腹まで至り、「もーりすカー」に乗り換えて行くことができる。ともに有料。また、5つの登山道も整備されている[8][9]

山頂展望台から望む札幌市街の夜景(2009年10月)

山頂展望台からは石狩平野、そして石狩湾までを一望することができ、夜には札幌市街の夜景を楽しめる[10]。夜景は、函館市函館山小樽市天狗山とともに「北海道三大夜景」の1つとされ[6]、日本の「夜景100選」にも認定されている[11]。また、札幌市は2015年平成27年)より「日本新三大夜景都市」に認定されている[12]

札幌市南区北部に位置し[2]、都心部から近く市電やバスでアクセスしやすい立地もあって、多くの市民や外国人を含む観光客でにぎわう。2017年(平成29年)度の来訪者は約90万6000人[13]。山頂の南東方向に札幌藻岩山スキー場がある。

小惑星(5146) Moiwaは藻岩山に因んで命名された[14]

地質と地形

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円山の頂上から見た藻岩山と豊平川扇状地(2005年1月)

藻岩山の基盤を構成する地質は、650-300万年前[15]第三紀中新世末から鮮新世[16]浅い海底に溶岩が噴出した際に形成された西野層と称される堆積岩であり[17]角閃石デイサイト質溶岩・貫入岩、ハイアロクラスタイト(水冷破砕岩[18])、安山岩軽石凝灰岩泥岩からなる[19]。その後、280-230万年前にかけて[15]、鮮新世末から第四紀更新世初頭に起きた[20][21]三度の噴火により安山岩質溶岩が噴出し、山体を作った[15][22]。最も古い下部の藻岩溶岩 3(軍艦岬溶岩[23])は「軍艦岬」と呼ばれる北尾根突端部に見られるが、山体の大部分は2度目の噴火による山頂付近から北側尾根にかけての[24]藻岩溶岩 2(藻岩山溶岩 II[25])に覆われる[16]。山頂から南側の尾根沿いには最も新しい藻岩溶岩 1(藻岩山溶岩 I[25])が認められる[16]

藻岩山は後志山地の東端に位置する[26]。藻岩山の山頂からは、崖錐状堆積物[27](山麓緩斜面堆積物[24])の見られる幅広いを挟んで、南東に向けて尾根が北側と南側に並んで延びる[16]。藻岩山の北東面は直線状の斜面を形成し、豊平川扇状地面(札幌面)に接している[28]。山麓に近いところが山鼻という地区で[29]、その北方に札幌市中心部が発展している。市街にビルが立ち並ぶ以前に札幌の人々が馴染んだ藻岩山の姿は、この方面から見たものである。

藻岩山と豊平川(2004年5月)

北側の尾根は、札幌市街方面から見ると裾野が長く緩やかに延び、先端がのように急に落ちて見える[30]。この姿が軍艦の舳先の形に似ていたことから[31][32]、北尾根の先端は明治時代より「軍艦岬」と呼ばれた[30][33]。岬と呼ばれるが、崖下は海や湖ではなく山鼻川が流れている[30]。南側の尾根の先端は「割栗岬(わりぐりみさき)」と呼ばれ[34]、崖下を豊平川が流れる[35]。2つの尾根に挟まれた浅い谷は藻岩下という地区で[34]、山鼻川が流れ出る[36]。軍艦岬から割栗岬に至るこの地は地形上古くから交通の要衝であり[36]1870年(明治3年)に東本願寺が「本願寺道路」(山鼻 - 八垂別〈はったりべつ、現在の川沿〉間「ハッタルベツ新道」)を開削した後、石山からの札幌軟石の輸送などにも使われた[34]。現在は国道230号が通じている[37]

歴史

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インカルシペ

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現在の藻岩山は、アイヌ民族からアイヌ語で「インカル[38](インカルシュペ[39][40])」(いつも登って見張りをするところ)と呼ばれていた[10][41]。この山はアイヌにとっての聖地であり[42]、尊い神の山であった[10][41]。異変があると山腹にカムイシュネ(神の炬火)が灯るさまが眺められたという[39][43]。山鳴りがするような時は、大吹雪天然痘(疱瘡)の流行などの兆しとして警戒し[39][41]、本当に天然痘の流行が始まればこの山に逃げ込み、神の加護を願った[44]江戸時代末期松浦武四郎は、1859年安政6年)の『後方羊蹄日誌』[45]において、「エンガルシベ」は往古より深く信仰される山であり、ここに「蝦夷総鎮守の宮」を建てるよう意見を記している[41]

明治時代に入植した初期の和人たちは、インカルシペ山(インカルシペヌプリ[3])の意味および発音から、当初は「眺臨山」や「笑柯山(えんがるやま)[46]」と称した[41]。しかし、「モイワ」(小さな山[47])と呼ばれていた隣の小山に「円山」の字があてられると、「円山」はモイワやインカルシペのある山岳の総称ともなった[48]。やがてモイワとインカルシペを取り違え、「インカルシペ」を藻岩山、「モイワ」を円山と呼び習わすようになり、そのまま地名として定着してしまった[49]

藻岩原始林

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開拓使1871年(明治4年)より7種(イチイハリギリイヌエンジュヤマグワトドマツカツラ[50]エゾヤマザクラ)の立木の伐採を禁じ、1873年(明治6年)に官林を定めると、藻岩山や円山は禁伐林として保護された[51]。しかし、1882年(明治15年)の開拓使の廃止による三県一局時代を経て北海道庁1886年〈明治19年〉-1887年〈明治20年〉)となると、樹木の伐採禁止は緩和され、針葉樹など一部が伐採されるようになる[52]。明治時代中頃には南側で木材が伐採され、この藻岩山は札幌に近いこと、近くの豊平川を用いた水運が利用できることから、北の沢川から豊平川、創成川を経由して札幌まで流された。

1892年(明治25年)に来日したアメリカ植物学者サージェント[53]札幌農学校出身で藻岩・円山を研究フィールドとした植物学者の宮部金吾の案内で藻岩山を訪れ[54]、その狭い地域における植生の多様性を『日本森林植物誌』(: “Forest flora of Japan”1894年)で世界的にも珍しいと紹介した[53]。その後、明治時代末から大正時代初頭になると北海道の主な原始林の保存が検討され、北東斜面にあるシナノキミズナラダケカンバなどの広葉樹が生い茂る「藻岩原始林」が、1915年(大正4年)に北海道庁より原生天然保護林[注 1]に指定された[55]。その後、1921年(大正10年)3月3日、「円山原始林」とともに北海道で最初の天然記念物史蹟名勝天然紀念物[40])に指定された[5][56]。指定区域は284.7ヘクタール[5] (284.68ha[9][57]) の国有林であり[58]、天然記念物になる以前、開拓使時代から伐採などの利用が禁止されてから今日まで、一度も人の手が入ったことのないという厳密な意味での原始林ではなく[56]原生林に近い天然林にあたる[9][57]1969年(昭和44年)11月、文部省北海道教育委員会により[59]「天然記念物 藻岩山原始林」碑が、藻岩山山頂[60]、ロープウェイ終点広場[59]、慈恵会病院登山口[61][62]に建立されている[63]

南(南西)斜面の原生林は明治時代の数度の山火事により焼失し、天然記念物区域に指定されておらず[56]太平洋戦争後はスキー場などに利用された[5]

藻岩観音

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山麓にある新善光寺の初代住職が、1885年(明治18年)に北海道新西国三十三番観音安置の許可を受けたことより、山道が開かれ[64]、1886年(明治19年)、参道が整備されると[42]、同年6月1日に山開き大祭がとり行なわれた[64]1901年(明治34年)には2代住職により[65][66]、各所に西国三十三所観音霊場を模した33体の観音像が置かれ[67]、山頂に石堂が造られた[65]。以来、6月1日には「藻岩山山開き」として、信者が山頂に参拝する行事が毎年行われ[42]、明治時代末頃には、山開きは札幌の年中行事として親しまれた[68]。参道の幅は1932年(昭和7年)に拡張された[69]。その後、石堂は観光施設建設のために[70]山頂の別の場所に移設され、1973年昭和48年)に六角堂として再建された後[71]、山開き大祭108回となった1992年(平成4年)に本格的建築として落成し、今日の藻岩観音奥の院(正式名称「浄土宗観音寺藻岩観音奥之院」)になった[42][66]。堂内には竜頭観音が安置されており[72]、堂の傍らにある水かけ観音は、かつての石堂に安置された石像である[66]。山頂に至る藻岩観音の参道は、今日の主要な藻岩山登山道(慈啓会病院前コース)となっている[42][62]

旧札幌スキー場

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戦後占領期1946年(昭和21年)に北東の山腹(ロープウェイ沿線の北側)を切り拓いた進駐軍専用の札幌スキー場が建設されるとともに[73]1946年(昭和21年)12月、日本初のスキーリフトが導入された[74]。当時、宮部金吾およびその後の舘脇操が同地の保全を提唱した[75]。そして、1958年(昭和33年)の第13回国民体育大会における使用を最後に、自然保護のため立ち入りが禁止されたことで[73]、現在は植生がある程度回復しており[76]、スキーリフトの台座などの遺構が残るのみである。

なお、第二スキーコースの上部は藻岩山山頂コースとして札幌市交通局(1985年からは札幌交通開発公社[77])の運営により2005年(平成17年)までチェアリフトが設置され、冬季にはスキーコースとして活用された。

仏舎利塔

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札幌仏舎利塔

北東側の山麓に近い標高178メートルの位置に[78]、白い仏舎利塔(通称「納骨堂」、「平和の塔」、正式名称「札幌平和塔」)が建っている。太平洋戦争の犠牲者の冥福と世界・日本の平和を祈る目的で、日本山妙法寺藤井日達の発願により、1959年(昭和34年)に建立され[79][80]、その後、改装されている[81]。高さ33メートル、基底幅28メートル[79]インドネール首相から贈られた仏舎利が安置されている[80]

この平和塔の南側の中腹(ロープウェイの沿線下付近)には、かつてエゾシカ園が設けられていたが[82]、その後、「森永牧場」(1966年〈昭和41年〉森永乳業開設[83])と呼ばれる乳牛牧場となり、北海道の形状をした浅い池も存在していた[84]。現在は撤去され、跡地は「はらっぱ」と呼ばれる広場になっている[85]

また、山麓の観光スポットとして「ちざきバラ園」があったが、2009年(平成21年)10月に閉園した[86]。現在、同地にはローズガーデンクライスト教会2010年〈平成22年〉6月完成[87])が建つ。

藻岩山神社

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ロープウェイ中腹駅の近隣にある藻岩山神社は、1987年(昭和62年)に建立されたもので[88]、現在の中央区伏見の山麓に位置する札幌伏見稲荷神社の境外末社となる。オーストリア=ハンガリー帝国の軍人レルヒからスキーを学んだ学生数人が1912年(明治45年)3月に藻岩山スキー登山を決行したことが北海道の山スキーの発祥とされることから[89]、伏見稲荷大神とともに、ウルの神(北欧神話のスキーの神)、レルヒの神(スキー術を伝授したレルヒ)、ブランデージの神(札幌オリンピック時の国際オリンピック委員会〈IOC〉会長)を祀り、藻岩山スキー客の無病息災と安全を祈願して建立された[88]

行政区域としての「藻岩山」地区

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2015年(平成27年)国勢調査によれば、行政町名としての「藻岩山」地域は、調査時点で人口0人である[90]

自然

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気象

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最寄りの観測地点からの気温推定値を以下に示す。

藻岩山の気温推定値[91]
地点 標高(m) 年平均気温(℃) 最寒月均気温(℃) 最暖月均気温(℃)
藻岩山山頂[注 2] 531 5.4 -6.9 19.0
札幌市中央区 17 8.9 -3.6 22.3

積雪は、札幌藻岩山スキー場の最上部では市街地に比べておよそ30センチメートル多い[91]。また、木々が芽吹く季節である4-5月は平均風速が大きく、それにより山頂や尾根沿いでは偏形樹(風衝樹形)が見られる[92]

植物

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樹木は100種余り(高木41種、低木54種、つる植物12種、計107種[93])の数多くの樹種が認められる[94]。冷温帯性の落葉広葉樹林が最も多く[95]、伐採の影響が見られない北・東斜面などにはイタヤカエデ(エゾイタヤ)・シナノキ林が広がり、ミズナラやホオノキなどが多様に混生しており[96]、山頂付近にはダケカンバ林が見られる[97]。尾根沿いや伐採の影響より再生した二次林は若いミズナラ林となる[96]。軍艦岬の沢沿いなどにはカツラ林がある[98]

発見地などにちなんだ和名・学名が以下の植物につく[54]

藻岩や関連する和名・学名(太字)をもつ植物[99]

動物

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藻岩山周辺の大型哺乳類としては、エゾシカのほかヒグマも挙げられる[100]リス類は、エゾリスエゾシマリスのほかエゾモモンガが生息する[101]。また、エゾユキウサギも認められるが、キタキツネの増加により減少したといわれる[102]。このほか特定外来生物であるアライグマも定着・拡大している[103]ネズミ類は、アカネズミ類であるヒメネズミ、ハントウアカネズミ(カラフトアカネズミ)、アカネズミ(エゾアカネズミ)[104]ヤチネズミ類英語版エゾヤチネズミが生息するほか、ヒメヤチネズミ英語版(ミカドネズミ)も認められている[105]。また、ネズミとは別系統であるトガリネズミ類としてバイカルトガリネズミ(エゾトガリネズミ)、オオアシトガリネズミが生息する[106]

鳥類

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鳥類は藻岩山・円山でほぼ同様に[107]120種余りが認められ、夏鳥を含む繁殖期に種数および個体数が最大になる[108]。特に天然記念物のクマゲラの繁殖例が有名であるが稀であり[109][110]、減少が懸念されるヨタカエゾライチョウ1980年(昭和55年)以降の記録としてあるが21世紀以降は不明である[111]留鳥としては、カラ類キツツキ類ヒヨドリシメカケス(ミヤマカケス)、猛禽類フクロウ(エゾフクロウ)やタカ類などが生息する[112]。また、多くの夏鳥が繁殖するほか[113]渡り鳥の要地として多くの旅鳥も見られ、冬鳥としては、ツグミレンジャク類アトリ類などが知られる[114][115]

昆虫

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昆虫は藻岩山で数千種が確認されている[116]チョウ類は藻岩山・円山に約90種が生息する[117]。日本の国蝶であるオオムラサキが一部で観察され[118]、多くのミドリシジミ類ゼフィルスZephyrus〉)をはじめ[119]、ウスバシロチョウ類(パルナシウス英語版Parnassius〉)を含むアゲハチョウのほか、本州では高地に生息するチョウも見られる[120]

1926年(大正15年)8月4日に藻岩山で採集された1雌の標本より、1935年(昭和10年)に新種として発表されたエゾムモントゲヒゲトラカミキリ Grammographus jezoensis (Matsushita & Tamanuki, 1935) は、その後一度も見つかっておらず[121]、そのタイプ標本も行方不明のため正体不明とされる[122]。また、札幌農学校(のちの北海道大学)卒業生・教授で、藻岩山・円山を研究調査地とした[123]昆虫学者の松村松年らにより、多くの昆虫に採集地の藻岩山にちなんだ和名・学名がつく[54]

藻岩を和名・学名(太字)にもつ昆虫[124]

登山

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藻岩山には自然学習歩道が整備され、山麓から中腹までロープウェイ、中腹から山頂展望台までミニケーブルカーが整備されている[126]

登山道

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自然歩道を利用して藻岩山山頂に至る総延長12.5メートルの5つの登山コースが整備される[9]

自然歩道 藻岩山ルート[127][128]
コース 距離(-山頂) 時間(登り) 時間(下り) ルート(入口-山頂)
慈恵会病院前コース 2.9km 70分 50分 1.8km-馬の背-1.1km
旭山記念公園コース 4.0km 110分 90分 2.4km-T6分岐-0.5km-馬の背-1.1km
スキー場コース 2.5km 90分 60分 2.5km
小林峠コース 4.5km 90分 80分 2.9km-T6分岐-0.5km-馬の背-1.1km
北の沢コース 2.4km 60分 50分 1.3km-馬の背-1.1km
慈恵会病院前コース
慈啓会病院前より入り、北麓の登山口となる藻縁山(そうえんざん)観音寺から33体の観音像が安置され、参道として整備された由緒のある登山道である[129]
旭山記念公園コース
旭山記念公園前の登山口および園内より通じており、T6分岐で小林峠コースと合流し、馬の背分岐で慈恵会病院前コースと合流する[130]
スキー場コース
南麓の札幌藻岩山スキー場入口より尾根に登り、稜線沿いに兎平(うさぎだいら)、ロープウェイ中腹駅を経て山頂に至る。スキー場の休業期は場内を歩くこともできる[131]
小林峠コース
西麓の小林峠付近に登山口があり、T6分岐で旭山記念公園コースと合流し、馬の背分岐で慈恵会病院前コースなどと合流する[132]
北の沢コース
南西側の北の沢の禅宗寺より入った西麓に登山口があり、馬の背付近の分岐で慈恵会病院前コースなどと合流する[133]

このほかロープウェイと山麓駅周辺には、水道記念館まで往復約30分のコースや、平和塔を経由して一周する約60分のコースなどもある[134]。なお、軍艦岬からの登山道は廃道となっている[30]

札幌もいわ山ロープウェイ

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ロープウェイ4代目ゴンドラ(2015年9月)
4代目ゴンドラ(2024年5月)
ロープウェイ中腹駅

最初に札幌市交通局によってロープウェイが建設されたのは、観光自動車道と同じ1958年(昭和33年)で、7月5日より運行が開始された。3線並列循環式で、色とデザインが市電330形を彷彿とさせる38人乗りの小型のゴンドラ30台が1分間隔で発車し、高低差366メートル、全長(傾斜長)約1,200メートルを片道10分で登り下りしていた[135]。この「藻岩山ロープウェイ」は、1972年(昭和47年)の札幌冬季オリンピック開催を迎えるにあたり、より安全性の向上を図るため1970年(昭和45年)9月に運行を中止[136]。翌1971年(昭和46年)に4線交走式で66人乗りのゴンドラ2台(こぶし号・はるにれ号)へと代わり、時間も片道5分に短縮された[137]

以前は、山上の「中腹展望台駅」からリフトに乗って山頂展望台に至っていた[138]1975年(昭和50年)、1976年(昭和51年)にリフトの大改修が行われたが[137]、その後、老朽化のため2005年(平成17年)4月より休止。代わりに無料シャトルバス「もーりす号」を走らせ、冬季には雪上車[注 3]が運行していた[138]

2010年(平成22年)4月より施設を休止して改装・整備された後、2011年(平成23年)12月23日より再開し、ゴンドラもまた新型にリニューアルされた。2基のゴンドラはそれぞれ藻岩山に生息するエゾフクロウ(銀色)、エゾリス(オレンジ色)をイメージしている。「もいわ山麓駅」から「もいわ中腹駅」間を運航し、中腹駅より「もーりすカー」に乗換えが可能である[139]

設備概要[140]
  • 運行間隔 - 15分
  • 乗車定員 - 最大66名
  • 乗車時間 - 約5分
  • 距離 - 1.2km
  • 時速 - 18km/h
営業時間[141]
  • 夏期(4月〜11月) 10:30〜22:00 ※上り最終21:30
  • 冬期(12月〜3月) 11:00〜22:00 ※上り最終21:30
  • ゴールデンウィークや8月の土日祝日には延長営業を行う。また、元日には夜間運行を行う。
利用料金[141]
  • 往復 - 一般1,400円、小学生以下700円
  • 片道 - 一般700円、小学生以下350円
  • 往復セット(ロープウェイ + もーりすカー) - 一般2,100円、小学生以下1,050円
  • 片道セット(ロープウェイ + もーりすカー) - 一般1,050円、小学生以下530円
  • 団体(15名以上)割引、シニア割引、修学旅行料金の設定あり
アクセス

札幌市電ロープウェイ入口」電停下車、無料シャトルバス乗車2分、または徒歩10分[142]

ミニケーブルカー(もーりすカー)

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もーりすカー(2015年9月)
山麓側から見たもーりすカー(2024年5月)
他所とは異なり両脇にケーブルがある

従来のチェアリフトに代わり、2011年(平成23年)12月23日の藻岩山の観光施設リニューアルとともに開通した[139]

スイス製のキャビンを持つ2両編成のミニケーブルカー[143]。機構は日本ケーブル製で、線路の両脇にあるケーブルで移動する複式単線方式の傾斜地輸送設備である[144]。キャビンはブランコのように吊るされており、線路の勾配が途中で変わっても水平を保つようになっている。 建築基準法に基づくエレベーターとしての扱いで、斜行エレベーター(鋼索式エレベーター)の一種である[要出典]

ロープウェイの乗換駅となる「もいわ中腹駅」から山頂展望台「もいわ山頂駅」間の約230メートルを運行している[143]。愛称の「もーりす」は藻岩山のキャラクター[145]。 登場当時は専ら「もーりすカー」の名称が使われていたが[146]、近年は「ミニケーブルカー」と案内されている[143]

設備概要[143]
  • 編成 - 2両
  • 運行間隔 - 15分
  • 乗車定員 - 最大60名(1両30名×2両)
  • 乗車時間 - 約1分40秒
  • 距離 - 約230m
  • 時速 - 12.6km/h
利用料金[141]
  • 往復 - 一般700円、小学生以下350円
  • 片道 - 一般350円、小学生以下180円
  • ロープウェイとのセット料金あり(上述)
  • 団体(15名以上)割引、シニア割引、修学旅行料金の設定あり

藻岩山観光自動車道

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1958年(昭和33年)夏開催の北海道大博覧会を視野に、観光と市勢の伸展を目的として1957年(昭和32年)より藻岩山の中腹に至るロープウェイとともに山頂を通る観光有料道路の新設が進められ[147]陸上自衛隊の手により[148]同年10月末には貫通し[149]、翌1958年(昭和33年)7月、北ノ沢から山頂までの自動車道が開通した[150]

その後、観光自動車道は2011年(平成23年)の藻岩山山頂施設の改装に伴い、中腹駐車場までに縮小された[151]

旧藻岩ドリームランド

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藻岩山ロープウェイ山ろく遊園地
施設情報
愛称 藻岩山ドリームランド
事業主体 札幌市交通局
開園 1959年[152]
閉園 1977年[152]
所在地 北海道札幌市南区
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かつてロープウェイ山麓駅の傍らより、ジェットコースター[153]ゴーカート観覧車、洋弓(アーチェリー)場といった遊具施設のほか、エゾシカ園を備えた[154]「藻岩山ドリームランド」(藻岩山ロープウェイ山ろく遊園地)という施設が存在したが、1977年(昭和52年)に閉園。その後撤去され、往時の面影はない。ジェットコースターや観覧車などの遊具施設は、北海道百年記念北海道大博覧会真駒内会場「子供の世界のファミリーランド」から移設されたものであった。

藻岩山の日

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藻岩山山開き(6月1日)の前日である5月31日が、標高の531メートルに符合することから、近年は毎年5月31日を「もいわ山の日」として、この前後の数日には藻岩山観光運営委員会が企画したイベントが催されている[155]

脚注

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注釈

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  1. ^ 1913年(大正2年)-1915年(大正4年)にかけて原生天然保護林を全道11か所選定。
  2. ^ 推定値(気温低減率0.65℃/100m)。
  3. ^ 4か所のタイヤ無限軌道台車に交換したマイクロバス三菱・ローザ4WDの改造車)。

出典

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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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