コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「科学における不正行為」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
2015年10月15日 (木) 07:30‎ (UTC) の版に戻す。その後の加筆部分が意味不明のため
Cutrotom (会話 | 投稿記録)
 
(100人を超える利用者による、間の497版が非表示)
1行目: 1行目:
'''科学における不正行為'''(かがくにおけるふせいこうい、{{lang-en-short|scientific misconduct}})とは、[[科学]]の[[学問]]としての[[規範]]や、[[研究]]を行う際に守るべき[[研究倫理]]基準に対し、違反する[[行為]]のことである<ref group="注">規範とは「行動や判断の基準となる模範手本」のこと出典:大辞泉</ref>
'''科学における不正行為'''(かがくにおけるふせいこうい、{{lang-en-short|scientific misconduct}})とは、[[科学]]の[[学問]]としての[[規範]]や、[[研究]]を行う際に守るべき[[研究倫理]]基準に対し、違反する行為のことを指す'''研究不正'''けんきゅうふせいともいう


== 概説 ==
== 定義 ==
[[ランセット]]誌では以下の[[定義]]が紹介されている<ref>{{cite journal|author=|year=|date=July 1999|title=Handling of scientific dishonesty in the Nordic countries|url=https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(98)07133-5/fulltext|journal=Lancet|volume=354|issue=9172|page=|pages=57&ndash;61|doi=|pmid=10406378|vauthors=}}</ref>。
科学における不正行為としては、実験のデータの[[改竄]](かいざん)や[[捏造]](ねつぞう)、他人の[[論文]]の[[剽窃]](ひょうせつ)、他の[[科学者]]のアイディアの盗用、実験データを記録した媒体([[USBメモリ]]、[[CD-R]]など)の窃盗およびコピー、[[#ギフトオーサーシップ|ギフトオーサーシップ]]などがある。
* [[デンマーク]] の定義:科学的メッセージの改竄(かいざん)や歪曲をもたらす故意または重大な過失。科学者に誤った信用や注目が与えられること。
* [[スウェーデン]]の定義:データの捏造による意図的な研究プロセスの歪曲。他の研究者の原稿や出版物からのデータ、文章、仮説、方法の盗用。その他の方法での研究プロセスの歪曲。


== よくある誤解 ==
科学による不正行為は、科学界を揺るがす[[事件]]となることもあり、そうした場合には[[報道機関]]などを通じて世間の人々にも知れ渡ることになる。


=== 定義 ===
=== 再現性の欠如との混同 ===
[[再現性]]の欠如はしばしば研究不正として捉えられるが、これは別個の概念である<ref name=":02">{{Cite book|title=研究不正と歪んだ科学 STAP細胞事件を超えて|url=|publisher=日本評論社|date=2019.11|isbn=978-4-535-78767-4|oclc=1130748385|others=|year=}}</ref>。但し、再現性がありコアデータのインパクトも大きい論文の場合、研究不正が看過されることはある。例えば[[メンデルの法則|メンデルの遺伝法則]]の論文は統計学的に疑問視されていたことがあるが<ref name="fisher36">{{cite journal|last1=Fisher|first1=R.A.|year=1936|title=Has Mendel's work been rediscovered?|url=https://hdl.handle.net/2440/15123|journal=Annals of Science|volume=1|issue=2|pages=115–137|doi=10.1080/00033793600200111}}</ref>、疑問視されていた最中においても賞賛された<ref name="ikari" />。また、日本の衆議院では、2015年の[[匿名Aによる論文大量不正疑義事件|匿名Aの事件]]の際に、研究不正の調査に再実験が含まれ得るとの答弁が[[文部科学省]]の政務官からなされている<ref name=":11" />。文部科学省が2006年に作成した研究不正調査についてのガイドラインにも、再現性を示す機会を保障するとの記載が含まれている<ref>{{Cite web|和書|title=4 告発等に係る事案の調査:文部科学省 |url=https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu12/houkoku/attach/1334658.htm |website=www.mext.go.jp |access-date=2023-03-07}}</ref>。
[[ランセット]]誌の "Handling of Scientific Misconduct in Scandinavian countries" では以下のように簡単に[[定義]]している<ref>{{cite pmid|10406378}}</ref>。(1999年のCOPEリポートでも再掲載されている<ref>{{cite journal |title=Coping with fraud |work=The COPE Report 1999 |pages=11–18 |url=http://www.publicationethics.org.uk/reports/1999/1999pdf3.pdf |format=PDF |archiveurl=http://web.archive.org/web/20070928151119/http://www.publicationethics.org.uk/reports/1999/1999pdf3.pdf |quote=It is 10 years, to the month, since Stephen Lock ... Reproduced with kind permission of the Editor, The Lancet. |archivedate=2007-09-28 |accessdate=2006-09-02}}</ref>。)
* [[デンマーク]]の定義:科学者の[[故意]]もしくは重大な[[過失]]による、[[虚偽]]の科学的メッセージ、偽の評判、強調。
* [[スウェーデン]]の定義:虚偽のデータ、文章、仮説、他の研究者による原稿や論文により、研究過程を故意にゆがめること。もしくは、他の方法で、研究過程を故意にゆがめること。
<!--
「{{要出典範囲|過失によるものは不正行為に該当しないと定義される。|date=2014年4月}}」{{誰|date=2014年4月}}{{いつ|date=2014年4月}}
-->
=== 要因 ===
W.ブロードとN.ウェイドの著書『[[背信の科学者たち|背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか]]』には、不正行為が行われる要因・背景・政治力学が多数挙げてある。詳しく調べてみると、様々な立場にある科学者の様々な思惑が働いている、ということになるようだ(『[[背信の科学者たち]]』の記事を参照)。


=== 論文撤回との混同 ===
[[書籍]]によって挙げる要因は異なっているが、様々な要因の中で、科学の「加熱した競争」が[[研究者]]に与える心理的な圧迫は、しばしば挙げられている。井山・金森の本でも、科学者が不正行為を犯してしまう要因のひとつとして「論文を書くか、さもなくば破滅するか (publish or perish)」と表現される「加熱した競争」を挙げた<ref name ="kagakuron">{{Cite |和書 |author = 井山弘幸・金森修 |title = 現代科学論 科学をとらえ直そう |date = 2000 |edition = 初版 |pages = 81 |publisher = [[新曜社]] |isbn = 4-7885-0740-4 |ref = harv }}</ref>。山崎茂明の『科学者の不正行為―捏造・偽造・盗用』でも「publish or perish syndrome」には言及されている<ref>山崎 茂明『科学者の不正行為―捏造・偽造・盗用』丸善、2002年</ref>。(今では科学における不正行為の古典的な事件としてもしばしば言及される)1974年にネズミの皮膚にマーカーペンで黒い点を複数描き、皮膚移植が成功したかのように装う事件を起こしたウィリアム・サマーリンも「共同研究における上司からの重圧があった」と陳述していた<ref name="kagakuron" />。
日本における研究不正の深刻さが、[[撤回監視|Retraction Watch]]が作成する個人別撤回論文数ランキング<ref name=":22">{{Cite web |title=The Retraction Watch Leaderboard |url=https://retractionwatch.com/the-retraction-watch-leaderboard/ |website=Retraction Watch |date=2015-06-16 |access-date=2022-12-15 |language=en-US}}</ref>の上位の大半が日本人であることを根拠に主張されていることがしばしばある<ref>{{Cite web|和書|title=学術研究フォーラム 第7回学術シンポジウム 科学研究のよりよき発展と倫理の確立を目指して」(日本学術振興会学術システム研究センターの黒木登志夫相談役の資料) |url=https://www.jsps.go.jp/j-kousei/sinpojium2015.html |website=www.jsps.go.jp |access-date=2022-12-15 |publisher=日本学術振興会 |date=2015-11-27}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=研究不正 - 科学者の捏造、改竄、盗用 |url=https://www.worldcat.org/oclc/948050482 |publisher=中公新書 |date=2016.4 |location= |isbn=978-4-12-102373-5 |oclc=948050482 |others= |last2= |year= |author=黒木登志夫}}</ref><ref>{{Cite web |title=Researcher at the center of an epic fraud remains an enigma to those who exposed him |url=https://www.science.org/content/article/researcher-center-epic-fraud-remains-enigma-those-who-exposed-him |website=www.science.org |access-date=2022-12-15 |language=en |date=2018-8-17}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン(榎木英介) - 個人 |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b428793f7c3ca5470978eb8494820741dae7e84b |website=Yahoo!ニュース |access-date=2022-12-15 |language=ja |date=2018-08-22}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=日本は「科学論文の捏造大国」とみられている |url=https://toyokeizai.net/articles/-/237652 |website=東洋経済オンライン |date=2018-09-19 |access-date=2022-12-15 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=相次ぐ論文不正 背景に研究費獲得への焦りか 京都大不正 |url=https://mainichi.jp/articles/20190326/k00/00m/040/329000c |website=毎日新聞 |access-date=2022-12-15 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ネイチャー誌が糾弾~日本発最悪の研究不正が暴く日本の大学の「不備」(榎木英介) - 個人 |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/a7fb2e4f80351e10639881e5aa44cd8aa703ab50 |website=Yahoo!ニュース |access-date=2022-12-15 |language=ja |date=2019-06-26}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=日本が世界トップの論文不正大国になってしまった理由 |url=https://diamond.jp/articles/-/213446 |website=ダイヤモンド・オンライン |date=2019-09-02 |access-date=2022-12-15 |language=ja}}</ref><ref name=":02" /><ref>{{Cite web|和書|title=日本で研究不正がはびこり、ノーベル賞級研究が不可能である理由 |url=https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2020/10/post-94838.php |website=Newsweek日本版 |date=2020-10-28 |access-date=2022-12-15 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=【多言数窮】|(株)時評社 |url=https://www.jihyo.co.jp/topics/tagen-suukyuu202101.html |website=www.jihyo.co.jp |access-date=2022-12-15 |date=2021-02-01 |author=大石久和}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=大規模研究不正ふたたび〜医学界は自浄能力を示せるか(榎木英介) - 個人 |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0a2b60c36d38e67c5ed2ef98a9f0aaa9b83a7150 |website=Yahoo!ニュース |access-date=2022-12-15 |language=ja |date=2021-05-29}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=科学の森:国民の安全脅かす「研究不正」 倫理向上願いサイト開設8年 |url=https://mainichi.jp/articles/20220421/ddm/016/040/012000c |website=毎日新聞 |access-date=2022-12-15 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=研究不正 {{!}} 中国新聞デジタル |url=https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/242918 |website=研究不正 {{!}} 天風録、中国新聞デジタル |access-date=2022-12-15 |language=ja |date=2022-11-28}}</ref><ref>{{Cite book|和書 |title=あなたの知らない研究グレーの世界 |date=2023-11-6 |year=2023 |publisher=中外医学社 |page=13 |isbn=978-4498148482}}</ref>。しかしながら、論文が撤回される理由は研究不正だけではない。また、不正論文を撤回することは、不正論文を看過することより倫理的に望ましい行為である。撤回論文数が多くなる国を目指すべきという考え方もある<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/meetings/annual/2018/program/index.html |title=2018年 日本分子生物学会 ワークショップ 3AW-14 生命科学分野における実践的研究倫理教育を目指して オーガナイザー池上徹、原田英美子(演者の一人がフロアから述べた意見) |access-date=2022-11-06 |publisher=日本分子生物学会}}</ref>。撤回論文数のランキングの解釈は慎重に行わなければならない<ref>{{Cite web|和書|title=国際競争時代の研究公正 (『研究不正と歪んだ科学: STAP細胞事件を超えて』出版記念シンポジウム)中村征樹の総合討論での発言 |url=https://www.kaseiken.org/2020/01/15/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%AB%B6%E4%BA%89%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%85%AC%E6%AD%A3-%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E3%81%A8%E6%AD%AA%E3%82%93%E3%81%A0%E7%A7%91%E5%AD%A6-stap%E7%B4%B0%E8%83%9E%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%A6-%E5%87%BA%E7%89%88%E8%A8%98%E5%BF%B5%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0-%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/ |website=カセイケン(一般社団法人科学・政策と社会研究室) |date=2020-01-15 |access-date=2022-11-06 |language=ja-JP |quote=}}</ref>。


=== 現状の防止策 ===
== 分類 ==
* データの[[捏造 (科学)|捏造]](ねつぞう、Fabrication)
科学の研究結果は、論文として発表される前にその分野の[[専門家]]による[[査読]]が行われ、研究の妥当性が問われるが、査読は「各[[研究者]]が倫理的行動をとること」を前提としているため、実験結果の捏造やデータの改竄、他人の研究の盗用などを発見する機能は果たしていない。
*データの[[改竄]](かいざん、Falsification)
* データの[[盗用]](とうよう、Plagiarism)・[[剽窃]](ひょうせつ)
* 他の[[科学者]]のアイデアの盗用
*[[二重投稿]]
*[[捕食雑誌]]への意図的な出版
* [[ギフト・オーサーシップ|ギフトオーサーシップ]]
* [[ゴーストライター|ゴーストオーサーシップ]]
* [[査読]]不正
*[[利益相反行為|利益相反]]の非開示
*研究資金の不正使用
*データ・ドレッジング([[P値|p-ハッキング]])<ref>{{Cite book|和書 |title=本当の声を求めて 野蛮な常識を疑え |year=2024 |publisher=青山ライフ出版(SIBAA BOOKS) |author=前田なお}}</ref>
捏造、改竄、盗用の3つは英語の頭文字をとって[[FFP]]と呼ばれ、研究不正の中でも特に重大なものと考えられている<ref>{{Cite journal|last=中村|first=征樹|last2=ナカムラ|first2=マサキ|last3=Nakamura|first3=Masaki|date=2011-12-25|title=研究不正への対応を超えて : リサーチ・インテグリティ・アプローチとその含意|url=https://hdl.handle.net/11094/23321|journal=メタフュシカ|volume=42|pages=31–46|doi=10.18910/23321}}</ref>。


産総研の夏目徹は、捏造は(1)ボトムアップ出来心型、(2)ボトムアップ確信犯型、(3)トップダウン恫喝型、(4)トップダウン洗脳型の4つに大別できるとの分析を[[日本分子生物学会|分子生物学会]]で披露し、話題となった<ref name=":0">{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/doc/081209_wakate_sympo_all_final.pdf |title=2008年12月 日本分子生物学会 若手教育シンポジウム 記録全文 『今こそ示そう科学者の良心2008 -みんなで考える科学的不正問題-」 |access-date=2022-10-30 |publisher=分子生物学会 |date=2008-12-09}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=「研究不正4つのパターン」捏造を目にした研究者が明かす(AERA 2014年6月23日号掲載) |url=https://dot.asahi.com/articles/-/120885 |website=AERA dot. (アエラドット) |date=2014-06-18 |access-date=2022-11-19 |language=ja}}</ref>。
[[自然科学]]の世界では、不正行為の防止の機能も大いに期待しつつ'''[[実験ノート]]'''がとられてきた歴史がある。不正行為を働けないよう、実験ノートは「書く作法」が細かく決められていて、世界的に見て今でも原則的に[[手書き]]で、誰が書いたか[[筆跡]]で分かるように書くのが標準的な[[方法]]である。


== 頻度 ==
[[筆記用具]]は、原則として[[ペン]]や[[ボールペン]]など[[インク]]を用いたものを用い、一旦書きこんだ内容を訂正する場合は、[[修正ペン]]などで消してしまったりせず、(もともと書かれていた内容が判るように)二重打ち消し線を上に引く(そして、日本では訂正印を押す)。原則的にノートに空白は開けず、やむを得ずページを飛ばす場合は大きく斜線などを引き、飛ばしたページに後から書きこむことはできない形にする。いつ書かれた記述なのか細かく[[日付]]、[[時刻]]を書き込む。そしてノートの最も下の段に本人の署名(または押印)し、本人以外に記述内容を確認してもらったうえでその人の署名まで残す。
2002年に[[アメリカ国立衛生研究所]]がアンケートを行ったところ、33%の人が過去3年間に何らかの不正行為をしたことがあると回答した<ref>{{Cite journal|last=Martinson|first=Brian C.|last2=Anderson|first2=Melissa S.|last3=de Vries|first3=Raymond|date=2005-06|title=Scientists behaving badly|url=https://www.nature.com/articles/435737a|journal=Nature|volume=435|issue=7043|pages=737–738|language=en|doi=10.1038/435737a|issn=1476-4687}}</ref>。2013年の[[日本分子生物学会]]のアンケートでは、10.1%の人が所属研究室で研究不正を目撃したことがあると回答した<ref name=":9">{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/doc/enq2013/all.pdf |title=第36回日本分子生物学会・年会企画 アンケート 集計結果 |accessdate=2020-11-10 |publisher=日本分子生物学会}}</ref>。


近年登場した[[論文工場]]<ref>{{Cite journal|last=Else|first=Holly|last2=Van Noorden|first2=Richard|date=2021-03-23|title=The fight against fake-paper factories that churn out sham science|url=https://www.nature.com/articles/d41586-021-00733-5|journal=Nature|volume=591|issue=7851|pages=516–519|language=en|doi=10.1038/d41586-021-00733-5}}</ref>と[[捕食雑誌]]<ref>{{Cite journal|last=Grudniewicz|first=Agnes|last2=Moher|first2=David|last3=Cobey|first3=Kelly D.|last4=Bryson|first4=Gregory L.|last5=Cukier|first5=Samantha|last6=Allen|first6=Kristiann|last7=Ardern|first7=Clare|last8=Balcom|first8=Lesley|last9=Barros|first9=Tiago|date=2019-12|title=Predatory journals: no definition, no defence|url=https://www.nature.com/articles/d41586-019-03759-y|journal=Nature|volume=576|issue=7786|pages=210–212|language=en|doi=10.1038/d41586-019-03759-y}}</ref>により、原理的にはこの世の100%近い論文が完全な虚偽論文になる可能性がある。日本分子生物学会の欧文誌では、2020年の時点で投稿論文の過半数が[[論文工場]]由来と推定されている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/doc/2021/2021-12-03-web.pdf |title=組織的にニセ論文を「製造」しているpaper mill |access-date=2022-11-23 |publisher=日本分子生物学会 |author=湯浅 達朗 |date=2021-12-03}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=驚きの論文工場。中国発「フェイクペーパー」が増殖中 |url=https://newspicks.com/news/6609758/ |website=NewsPicks |date=2022-01-24 |access-date=2022-11-20 |last=NewsPicks編集部}}</ref>。
これだけ[[情報技術|IT]]化が進み、[[パーソナルコンピュータ|PC]]が普及しているにもかかわらず、今でも科学者らが実験ノートを原則的に「紙への手書き」としているのは、手書きは(きちんとした書法を守ると)改ざんしにくい、つまり不正防止の効果があると認められているためであり、さらに、科学者から見ると、正しい書き方を守った手書きの実験ノートを残していれば、何かの時に研究の不正を疑われた時に、自分が潔白であることを証明するための有力な(そして多くの場合、ほとんど唯一の)証拠、身を守るための道具となるからだ。


=== 捏造・改竄・盗用 ===
つまり、手書きの実験ノートは「不正行為を防止する機能」と(不正行為をやっていない場合は)「不正行為のないことを証明する機能」、それら二つの機能を同時に果たす、非常に重要なアイテムなのである。科学者から見ると実験ノートは、不正行為に関して「自分の身の潔白を証明」するための重要なアイテムであり、職業生命や人生がかかっているともいえる重要なアイテムなのである。論文内容などをきっかけにして不正行為の嫌疑が科学者にかけられ、いよいよ調査が始まると、多くの場合その科学者は実験ノートの提出を求められることになる。
[[エリザベス・ビク]]は、20,000報の論文を目視した結果、4%の医学論文に不自然な改変や重複使用が疑われる画像データを見つけたことを2016年に発表した<ref>[http://www.nature.com/news/problematic-images-found-in-4-of-biomedical-papers-1.19802 Problematic images found in 4% of biomedical papers] Nature News 22 April 2016 2016年12月9日閲覧</ref><ref name=":20">{{Cite journal|last=Bik|first=Elisabeth M.|last2=Casadevall|first2=Arturo|last3=Fang|first3=Ferric C.|editor-last=Sibley|editor-first=L. David|date=2016-07-06|title=The Prevalence of Inappropriate Image Duplication in Biomedical Research Publications|url=https://journals.asm.org/doi/10.1128/mBio.00809-16|journal=mBio|volume=7|issue=3|pages=e00809–16|language=en|doi=10.1128/mBio.00809-16|issn=2161-2129}}</ref>。疑惑画像が見つかる確率が最も低い国は日本だった<ref name=":20" />。
<!--
日本の[[理学部]]などでは不正行為に関して学生に対して十分に指導をしていないことがある/多い。大量に渡す冊子の一部にそれが書かれていることがあるが、面と向かって、時間をしっかりとって科学者の倫理規範に関する指導をしていないケースは多い。よってそうした規範意識が欠落した学生が毎年のように大量に生み出されている。また(困ったことに)指導教官自身がずさんな指導しか受けたことがなく、やってはいけないことを理解していない場合や、(調べてみると困ったことに、実は)指導教官自身が科学における不正行為をこっそりやってきた過去を持っている場合がある<ref group="注">日本の過去の事件で、関係者の責任を追及する中で、教官もやってはいけない基本的なことを全然理解していなかった、と釈明した、非常にずさんな事例が何件もある。</ref>。指導教官自身が規範に違反した過去を持っていたり、やってはいけないことを理解していないと、自然と学生に対する指導も手抜きになったり、やらないで済ませてしまう傾向が生まれる。
-->
=== 起きている頻度 ===
[[コロラド大学]]の[[微生物]]研究者[[アーネスト・ボレク]]はこう述べた。


=== 二重投稿 ===
{{Quotation|曖昧でいい加減なデータが科学誌にそのまま掲載されるケースが、最近ますます増えている。}}
2008年のNature誌の記事では、発表論文の1%程度が二重投稿との推計が紹介された<ref>{{cite journal|author=Mounir Errami, Harold Garner|year=2008|title=A tale of two citations|url=https://doi.org/10.1038/451397a|journal=Nature|volume=451|pages=397-399}}</ref>。


=== ギフトオーサーシップ ===
[[ノーベル賞|ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した[[サルバドル・ルリア]]はこう述べた。
2020年~2021年に行われた調査によると、貢献のない論文の著者になった自覚があると回答した研究者の割合は、米国では約55%、欧州では約69%であった<ref>{{Cite journal|last=Singh Chawla|first=Dalmeet|date=2023-01-05|title=Unearned authorship pervades science|url=https://www.nature.com/articles/d41586-023-00016-1|journal=Nature|language=en|doi=10.1038/d41586-023-00016-1}}</ref>。


=== 再現性の欠如(参考) ===
{{Quotation|共同研究者のひとりが実験データを捏造したため、高い評価を受けている科学者らが研究データを撤回するはめになった事例を私はいくつも知っている<ref name="mendelson204">ロバート・メンデルソン『医者が患者をだますとき』p.204</ref>。}}
2012年、製薬企業アムジェンが調べたところ、有名なガン研究の論文の89%に再現性が無かった<ref>{{Cite journal|last=Wadman|first=Meredith|date=2013-08-01|title=NIH mulls rules for validating key results|url=http://www.nature.com/news/nih-mulls-rules-for-validating-key-results-1.13469|journal=Nature News|volume=500|issue=7460|pages=14|language=en|doi=10.1038/500014a}}</ref>。


2015年、有名な心理学の論文のうち再現が取れたのは39%という報告がなされた<ref>{{Cite journal|last=Collaboration|first=Open Science|date=2015-08-28|title=Estimating the reproducibility of psychological science|url=https://science.sciencemag.org/content/349/6251/aac4716|journal=Science|volume=349|issue=6251|language=en|doi=10.1126/science.aac4716|issn=0036-8075|pmid=26315443}}</ref>。
[[アメリカ科学基準局]]の[[リチャード・ロバーツ]]はこう述べた。


2021年、ガン研究の有名論文53報に掲載された193個の実験のうち半分以上の実験について再現を確認できなかったという報告がなされた<ref>{{Cite journal|last=Errington|first=Timothy M|last2=Denis|first2=Alexandria|last3=Perfito|first3=Nicole|last4=Iorns|first4=Elizabeth|last5=Nosek|first5=Brian A|editor-last=Rodgers|editor-first=Peter|editor2-last=Franco|editor2-first=Eduardo|date=2021-12-07|title=Challenges for assessing replicability in preclinical cancer biology|url=https://doi.org/10.7554/eLife.67995|journal=eLife|volume=10|pages=e67995|doi=10.7554/eLife.67995|issn=2050-084X}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Mullard|first=Asher|date=2021-12-09|title=Half of top cancer studies fail high-profile reproducibility effort|url=https://www.nature.com/articles/d41586-021-03691-0|journal=Nature|volume=600|issue=7889|pages=368–369|language=en|doi=10.1038/d41586-021-03691-0}}</ref><ref>{{Cite web |title=More than half of high-impact cancer lab studies could not be replicated in controversial analysis |url=https://www.science.org/content/article/more-half-high-impact-cancer-lab-studies-could-not-be-replicated-controversial-analysis |website=www.science.org |accessdate=2022-02-05 |language=en}}</ref>。実験条件を問い合わせても著者から協力が全く得られない割合は32%であった。
{{Quotation|科学者が科学誌に発表するデータの半分、あるいはそれ以上が無効である。研究者が正確にデータを測定したという証拠もなければ、首尾一貫して研究が行われたという証拠もないのが現状だ<ref name="mendelson205">ロバート・メンデルソン『医者が患者をだますとき』p.205</ref>。}}


== 深刻さ ==
不正行為を伴う研究報告は日常茶飯事のように行われているのである<ref name="mendelson204" />。
研究不正問題の深刻さについては、肯定的な意見と否定的な意見が存在している。


== 捏造・改竄 ==
=== 肯定的 ===
捏造や改竄が露見すると、本人のみならず科学界全体の信用を著しく損ねるため、不正行為を働いた者がそのまま研究者として科学界に留まることはもはや不可能である。科学者生命が終わるとともに、社会全般での信用も失い、以降の発言力も著しく低下する。また、[[懲戒解雇]]などで地位を失い、社会的な状況も相当に厳しくなる。さらに、不正行為を働いた研究者を<!--本人が不正行為をはたらいていなくとも、-->管理すべき立場の人間もその責任を追及されることがある。


* 2013年の[[日本分子生物学会]]のアンケートでは、97.5%の人が研究不正は大きな問題だと思うと回答した(「ライフサイエンスにおいて、研究不正は大きな問題だと思いますか?」という質問に対して、81.6%が「そう思う」、15.9%が「ある程度そう思う」)<ref name=":9" />。
これら行為は人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げ冒涜するものであり、不正行為は科学そのものに対する背信行為とみなされる。文部科学省のガイドライン<ref>[http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu12/houkoku/06082316.htm 研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて] 研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書</ref>では、不正行為への対処は一義的には、まずは研究者自らの規律、ならびに研究者コミュニティ、大学・研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされるべきであるとする。懸賞論文や競争的研究資金の公金が支出されているものについて不正が発覚した場合は、真偽が判明するまでは一時的に資金支出が停止され、不正と認定された場合には悪質性や重大性の程度により全部または一部が返還請求される。一方で不正は行われなかったと認定された場合は、研究費支出の停止や採択の保留等の措置を解除し、名誉回復措置等を講じるものとしている。
* 2015年1月30日、文部科学大臣[[下村博文]]は、「STAP細胞論文をはじめとする研究不正、これは科学技術に対する国民の信頼を揺るがす問題であると深刻に受け止めております」と記者会見で述べた<ref>{{Cite web|和書|title=下村博文文部科学大臣記者会見録(平成27年1月30日):文部科学省 |url=https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11373293/www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1354511.htm |website=warp.ndl.go.jp |access-date=2023-08-19}}</ref>。


=== 否定的 ===
捏造した結果や[[改竄]]を元に公的な[[助成金]]などを申請し受けていた場合は、補助金適正化法違反に該当し、研究者本人や所属する大学は研究費の不正使用として返還・罰則の対象となる。また国の補助金以外の場合には詐欺(刑法246条)に問われる可能性がある<ref>[http://www.chikyu.ac.jp/sci_et_soc/Archives/Document/hakuraku3.pdf 「学問と社会のあり方」研究会 第5回研究会「どうして日本の科学政策は現場とズレる? 研究費配分と研究不正を例に」総合地球環境学研究所研究推進戦略センター 桃木暁子]</ref>。


* 2014年4月28日、[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP騒動]]の最中に[[山中伸弥|ノーベル賞受賞者]]に対する[[匿名Aによる論文大量不正疑義事件|匿名Aの指摘]]が報道された際、[[日本放送協会|NHK]]のアナウンサーであった[[大越健介]]は揚げ足取りと表現した{{要出典|date=2023年8月|title=}}<ref>{{Cite web|和書|title=https://twitter.com/madam0523/status/460766449884078080 |url=https://twitter.com/madam0523/status/460766449884078080 |website=Twitter |access-date=2023-08-21 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=itest.5ch.net |url=https://itest.5ch.net/mastiff/test/read.cgi/livenhk/1398676952/ |website=5ちゃんねる |access-date=2023-08-21 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=itest.5ch.net |url=https://itest.5ch.net/mastiff/test/read.cgi/livenhk/1398685994/ |website=5ちゃんねる |access-date=2023-08-21 |language=ja}}</ref>。
[[黄禹錫]]による「[[黄禹錫#ES細胞論文不正事件|ES細胞論文の捏造事件]]」のように、科学における不正行為によって偽の情報(特に画期的だと思わせるような成果)が出回ると、しばしば、その偽情報に基づいて世界中の研究グループが、それに追随する様々な研究を(1グループごとに)数千万円〜数億円単位の予算を投入して行うことになるが、結果としてそれらの罪のない研究グループの研究までが水泡に帰すことになる。結局、世界全体で莫大な額の研究資金や資源が浪費されてしまうことになり、さらに、追随した研究者たちは貴重な年月を棒に振り経歴にも傷がつき、被害は甚大なものになる。
* 2015年3月10日、NHKの[[クローズアップ現代]]で、[[浅島誠]]は「でっちあげの研究というか悪い研究をしている人はそんなに増えているわけではない、そのことは理解しておいてほしい」と発言した<ref name=":62" />。


== 原因 ==
科学者によって捏造されたデータを根拠として科学雑誌・専門誌などで流布した嘘の知識は、科学的であると主張されていながら後で確かめられる証拠が無く、[[疑似科学]]である<ref>マイケル・フリードランダー『きわどい科学 ウソとマコトの境域を探る』pp.269-273、p.327</ref>とされている。
2013年の[[日本分子生物学会]]のアンケートでは、個人に原因があると考える人と構造に原因があると考える人がほぼ同数であった<ref name=":9" />。


[[ドナルド・クレッシー]]によると、組織が絡んだ犯罪は、「機会(実行を可能にする機会・手段)」「動機(実行に至った事情)」「正当化(自らを納得させる理由付け)」 の3つの要素が満たされた時に起こる。研究不正の場合、このうち動機については「[[:en:Publish_or_perish|publish or perish]]」と呼ばれる研究者の過酷な競争に原因があるとする見方がある<ref name="kagakuron">{{Cite|和書|ref=harv|title=現代科学論 科学をとらえ直そう|author=井山弘幸・金森修|year=2000|edition=初|publisher=[[新曜社]]|pages=81|isbn=4-7885-0740-4}}</ref>。近年、特に日本では[[大学改革]]が行われた2004年以降、大学や研究者は、暗闇の中で一筋の光を見つけていくような<ref>{{Cite web|和書|title=馳浩文部科学大臣記者会見録(平成27年10月7日):文部科学省 |url=https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11373293/www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1362623.htm |website=warp.ndl.go.jp |access-date=2022-11-18 |quote=(馳浩文部科学大臣の発言)目の前にある経済成長に資するとか短期的なものではなくて、長期的な視野に立った世界的な発明でありますし、それは後世に伝わるものであるという評価をいただいていると思います。この地道な、「地道にこつこつ」というのはどこかで聞いたことがありますけれども、研究者の皆さんは、本当に、暗闇の中で一筋の光を見つけていくような、時には大胆な、その論を研究によって、実験によって裏打ちするような途方もない御努力の中での、もしかしたらみんながみんな成果を挙げることはできないけれども、たった一つの成果が本当に世界のために、人類のために、宇宙のために役に立つというのがノーベル賞の一つの評価でありますから(中略)また今、研究されている方々にも、大変であり、本当に先の見えない研究かもしれませんが、必ず遠くに、きっと成果を得ることができて、それは誰かのためになると、そんな考え方といったものを、科学技術研究開発の行政においては、その志をしっかり研究者の皆さんには持っていていただきたいです。}}</ref>知的で自由なものから、発表論文のメトリクスで定量的に評価される産業的な監視対象<ref>{{Cite web |title=Research Integrity and Article Retractions with Dr Marie Soulière |url=https://sciencetalks.org/podcast-interview-marie-souliere-part-1/ |website=ScienceTalks |date=2022-03-14 |access-date=2022-12-08 |language=en-US |quote=I remember clearly in the interview I had with a higher researcher who was supposed to make a decision on the application, and at the end, his final comment was, your application is really great, but you have not published in Nature or Science, so I don’t think you will get that fellowship.}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=大学10兆円ファンド、有力論文「5年1000本」を選考基準 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE151N90V11C22A1000000/ |website=日本経済新聞 |date=2022-11-15 |access-date=2022-11-18 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=日本医療研究開発機構 中長期目標 : 健康・医療 - 内閣府 |url=https://www8.cao.go.jp/iryou/mid_long_term_goal.html |website=www8.cao.go.jp |access-date=2022-11-18 |language=ja |quote=(国立研究開発法人日本医療研究開発機構の中長期目標<令和4年7月6日変更>の10ページ)
== 剽窃・複製・二重投稿 ==
令和6年度までの成果目標(KPI)を以下のとおり設定する。(中略)研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 400件
出典を明らかにせず、他人の論文を転用する行為は、[[剽窃]]として捏造と同様に社会的な制裁を受ける。
(国立研究開発法人日本医療研究開発機構の中長期目標<令和4年7月6日変更>の12ページ)
令和6年度までの成果目標(KPI)を以下のとおり設定する。(中略)研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 900件
(国立研究開発法人日本医療研究開発機構の中長期目標<令和4年7月6日変更>の13ページ)
令和6年度までの成果目標(KPI)を以下のとおり設定する。(中略)研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 400件}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=歳出改革部会(令和4年11月14日開催)資料一覧 |url=https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseik20221114.html |website=財務省 |access-date=2022-11-18 |language=ja |quote=(資料2「文教・科学技術」の26ページ目)研究開発費に対して注目度の高い論文(Top10%論文)の数が少なく、論文の生産性が主要先進国に比べて低水準となっており、研究開発の投資効果の引上げが課題。}}</ref>に変質しているのである。


[[査読]]に原因があるとする見方がある。論文業績が重視されるに従い査読が研究者の生殺与奪を決定するようになったため、査読のやり取りは、新しく生まれた知見を真剣に討議できる知的な楽しみから、生計を維持するための奴隷的な作業になった。研究室主催者の意向が実際には査読者の意見ということも多くなった。査読者のコメントによって研究不正が誘導され得るため、リバイス時は捏造のリスクが上がる<ref>{{Cite web|和書 |title=研究不正をさせないためのラボの条件 {{!}} 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ |url=https://web.archive.org/web/20160405093708/https://mitsuhiro.exblog.jp/25053580/ |website=生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ |access-date=2022-11-15 |language=ja |author=[[柳田充弘]](文化勲章受章者)}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/investigation/20071213_sympo_kagakusha_ryoshin.pdf |title=日本分子生物学会 若手教育シンポジウム 2007年『‐今こそ示そう科学者の良心‐みんなで考える科学的不正問題‐』 |access-date=2022-11-16 |publisher=日本分子生物学会 |quote=(加藤の発言)論文が通る前は、危ないですよね。リバイスで論文が来てということと、あと、それはだからボスもすごく気をつけなきゃいけないし、やっている本人もちゃんと考えなきゃいけないと思うんですけど。}}</ref>。2022年にeLife誌が査読過程におけるリジェクトの廃止を発表したこと<ref>{{Cite journal|last=Else|first=Holly|date=2022-11-03|title=eLife won’t reject papers once they are under review — what researchers think|url=https://www.nature.com/articles/d41586-022-03534-6|journal=Nature|language=en|doi=10.1038/d41586-022-03534-6}}</ref>は、この原因を取り除くことにつながる可能性がある。
自己の過去の業績を複製したり、ほぼ同じデータを細部のみを訂正して新規の論文として発表することも、[[複製]]あるいは[[二重投稿]]として不正行為と見なされる<ref>{{cite journal|author=Mounir Errami, Harold Garner|title=A tale of two citations|journal=Nature|volume=451|pages=397-399|year=2008|url= http://dx.doi.org/10.1038/451397a }}</ref>。


製薬企業等の特定の組織から研究費を受け取る場合、研究者はその特定の組織が有利になる論文を発表する傾向があると言われている(詳しくは[[利益相反]]を参照のこと)。[[ワセダクロニクル|Tansa(旧ワセダクロニクル)]]らが作成している製薬マネーデータベース『YEN FOR DOCS』<ref>{{Cite web|和書|title=製薬マネーデータベース YEN FOR DOCS |url=https://yenfordocs.jp/ |website=製薬マネーデータベース YEN FOR DOCS |access-date=2022-11-22 |language=ja}}</ref>は、1割程度の学会理事が多額の金銭を製薬会社から受領していることを明らかにしている<ref>{{Cite web|和書|title=講師謝金、学会理事1割に集中 「処方ゆがむ恐れ」 医師NGO調査 |url=https://mainichi.jp/articles/20190622/k00/00m/040/112000c |website=毎日新聞 |access-date=2022-12-10 |language=ja |date=2019-06-22}}</ref>。
== ギフトオーサーシップ ==
論文の成立に直接貢献していない者が、あたかも「論文の共同執筆者」であるかのように名を連ねるという不正行為。研究室の責任者の立場にいる者などが行うことが多い。これは、立場の強い者が[[政治力]]を行使して名を表示させるケースである。


== 告発と調査 ==
極端なケースだと、[[ロシア連邦|露]]・[[モスクワ]]の[[有機元素化合物研究所]] (IOC) の研究員[[ユーリ・ストルチコフ]]が10年間で948本もの論文の共著になっているが、これはIOCの施設を利用する見返りとしてIOCの人間を共著者に入れるのが慣習化していたことによるものであった<ref name="ignobel">『イグ・ノーベル賞』、マーク・エーブラハムズ。阪急コミュニケーションズ。</ref>。なおこの件でストルチコフは[[イグノーベル賞]]を受賞している<ref name="ignobel" />。
松澤孝明による数十カ国の分析によると、告発の受付と調査を担う研究公正システムは、タイプ1「調査権限を有する,国として立法化された集権システム」、タイプ2「研究資金配分機関や個々の機関とは異なる,監督のための法律によらない組織からなるシステム」、タイプ3「独立した研究公正監督組織やコンプライアンス機能がないシステム」の3つに分類される<ref>{{Cite journal|和書|author=松澤孝明 |year=2014 |url=https://doi.org/10.1241/johokanri.56.766 |title=諸外国における国家研究公正システム(2) 特徴的な国家研究公正システムモデルの比較分析 |journal=情報管理 |ISSN=0021-7298 |publisher=国立研究開発法人 科学技術振興機構 |volume=56 |issue=11 |pages=766-781 |doi=10.1241/johokanri.56.766 |CRID=1390001205508341376}}</ref>。例えば米国はタイプ1を採用しており、[[研究公正局]]などが疑義の連絡や告発を受け付けて調査を行う。現状の日本はタイプ3を採用している。


=== 日本の場合 ===
論文執筆者自らが利益を供与されることを期待し、論文の成立に貢献していない人物の名前を表示するケースもある。同一の研究室やグループ内の複数の科学者が、相互の論文に共同執筆者として名を連ね合い、[[共犯]]的に互いの業績数を水増しするケースもある。


==== 告発先 ====
科学者の間では、「名誉のオーサーシップ (honorary authorship)」あるいは「ギフトオーサーシップ (gift authorship)」と呼ぶことで、これらの不正な行為を隠蔽する者がいる。公的機関は「この行為は、どのような名称で呼ぼうとも実質的に不正行為には変わりない」と判断している。
不正の疑義に関する調査は研究者が所属する大学や研究機関が実施するのが原則である<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf |title=「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日 文部科学大臣決定) |accessdate=2021-01-10 |publisher=文部科学省}}</ref>。文部科学省や日本学術振興会などにも告発の受付窓口があるものの、告発文書を大学や研究機関へ回付するだけに留まる。


==== 調査のプロセス ====
== 研究費 ==
まず告発された研究機関内の研究者で構成される予備調査委員会により調査がなされる。本格的な調査が必要と判断された場合に限り、外部有識者を交えた本調査委員会が組織される。本調査で不正が認定された場合、研究機関は文部科学省及び研究資金配分機関に当該調査結果を報告するものとされている。
公的機関から与えられる研究費はその金額と用途が細かく限定されており、研究費を名目外の用途に使用した場合も不正行為である。不正行為を働いていて論文撤回などになり結果としてまともな成果を残せなかった者は、不正発覚後に、雇用主である研究所などから、在籍期間中に使用した研究費の返還を求められそれを支払わなければならないことがある(すでにそうした事例はある)。また、研究費を不正な論文などを根拠として公的機関に請求した場合も、単なる科学内部の不正行為としては処理されず、法律に違反した[[犯罪]]行為として厳正に[[刑罰|処罰]]される可能性もある。


==== 論点・問題点 ====
== 医学研究と不正行為 ==
タイプ3を採用していることによって、次の2つの問題が発生している:(1)調査の限界、(2)利益相反。
[[新薬]]の[[臨床試験]]で、デタラメな使用量、データの改変と捏造、[[ダンピング]]が繰り返し行われていることが、[[アメリカ食品医薬品局]]が詳細な調査を行った時に明らかになった<ref name="mendelson204" />。


===== 【調査の限界】 =====
ケースウェスタン・リザーブ大学教授の{{仮リンク|サミュエル・エプスティン|en|Samuel Epstein}}はこう述べた。
日本の大学や研究機関は、警察のような捜査権は有していない。そのため、被告発者の善意がなければ不正の証拠は提出されない。例えば[[加藤茂明|東京大学分子細胞生物学研究所の事件]]では、最後まで調査に非協力的であった人たちは不正を認定されなかった<ref>{{Cite web|和書|title=国際競争時代の研究公正 (『研究不正と歪んだ科学: STAP細胞事件を超えて』出版記念シンポジウム) 榎木英介の発言 |url=https://www.kaseiken.org/2020/01/15/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%AB%B6%E4%BA%89%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%85%AC%E6%AD%A3-%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E3%81%A8%E6%AD%AA%E3%82%93%E3%81%A0%E7%A7%91%E5%AD%A6-stap%E7%B4%B0%E8%83%9E%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%A6-%E5%87%BA%E7%89%88%E8%A8%98%E5%BF%B5%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0-%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/ |website=カセイケン(一般社団法人科学・政策と社会研究室) |date=2020-01-15 |access-date=2022-10-21 |language=ja-JP}}</ref>。このような本末転倒な状況を解決するため、捜査権を持つ警察が関与するべきという意見もある<ref name=":18">{{Cite web|和書|title=1‐3‐2.研究ネカトは警察が捜査せよ! {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_ffp_crime.html |access-date=2022-11-06 |language=ja}}</ref>。一方、[[山中伸弥|あるノーベル賞受賞者]]は「証拠(実験ノート)を出さなければ不正とみなす」という意見を2014年の国会で述べた<ref>{{Cite web|和書|title=小保方晴子の呪い…iPS山中教授に飛び火した「データ捏造疑惑」実験ノートも不備 |url=https://www.j-cast.com/tv/2014/05/02203862.html |website=J-CAST テレビウォッチ |date=2014-05-02 |access-date=2022-11-06 |language=ja}}</ref>。証拠を出さないことをもって不正を認定することの法的妥当性については懸念もあるが<ref>{{Cite web|和書|title=研究不正の防止や対応の強化で議論百出(2015年2月5日に日本学術会議が主催した学術フォーラム「科学研究における健全性の向上」の取材記事) |url=https://scienceportal.jst.go.jp/explore/reports/20150209_01/ |website=Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 |access-date=2022-11-06 |language=ja-jp |date=2015-02-09 |author=小川 明}}</ref>、認定は可能との判例も地方裁判所で1例ある<ref>{{Cite web|和書|title=研究活動の不正、論文不正を理由とする懲戒解雇-立証責任の所在はどのように理解されるのか - 弁護士 師子角允彬のブログ |url=https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2022/10/21/015330 |website=弁護士 師子角允彬のブログ |date=2022-10-20 |access-date=2022-11-19 |language=ja |last=sskdlawyer}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=研究不正に対する調査協力義務 - 弁護士 師子角允彬のブログ |url=https://sskdlawyer.hatenablog.com/entry/2022/10/22/015447 |website=弁護士 師子角允彬のブログ |date=2022-10-21 |access-date=2022-11-19 |language=ja |last=sskdlawyer}}</ref>。


===== 【利益相反】 =====
{{Quotation|[[米国科学アカデミー|アメリカ科学アカデミー]]は[[利権]]関係が複雑に絡みあった組織である。例えば、[[食品添加物]]の問題を決定するパネル討論会なのに、その構成メンバーが当の規制対象の業界代表者であったり、それの息のかかった者たちで占められてしまっている、というような事例が非常に多い。アメリカでは、金さえ積めば、自分たちに都合のいいデータを入手することができるのだ<ref name="mendelson204" />。}}
告発を受けた研究機関には、不正を認定すれば自らの評価が悪化するという利益相反がある<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fusei/__icsFiles/afieldfile/2019/07/16/1418732_01.pdf|title=「諸外国の研究公正の推進に関する調査・分析業務 成果報告書」(平成30年度 文部科学省 委託事業)|accessdate=2021-01-10|publisher=文部科学省}}</ref>。例えば、告発を受けた大学・研究機関内部の研究者で構成される予備調査委員会が「論文の結論には影響しない軽微なものであるため不正はなかった」「掲載済みの論文に対する不正の疑いに関する調査は、当機構(研究機関)ではなく掲載した学術誌が責任をもって行うべき」といった解釈を行い、本調査を実施しなかった事例が2020年にあった<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.paleokantogeo.org/post-3093/|title=「チバニアン」GSSP申請論文における特定不正行為の告発と、その後の研究機関の回答について|publisher=古関東深海盆ジオパーク推進協議会|accessdate=2021-03-19}}</ref>。このような利益相反の問題を解決するには、米国の[[研究公正局]]のような第三者機関の設置、すなわちタイプ3のシステムからの脱却が必要である。第三者機関は警察<ref name=":18" />でもよいかもしれない。日本でも第三者機関についての議論は行われてきたが<ref name=":03">{{Cite news|last=八田|first=浩輔|date=2013-12-12|script-title=|language=|title=研究不正:自浄期待は「理想論」 日本分子生物学会が防止策を議論|agency=|newspaper=毎日新聞|archive-url=http://scienceandtechnology.jp/archives/2036|url=http://mainichi.jp/shimen/news/20131212ddm013040013000c.html|archive-date=2013-12-24|quote=}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/doc/2013forum/session6_full.pdf |title=2013年 分子生物学会理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」6.まとめ、今後の課題と次のアクション |access-date=2022-11-18 |publisher=日本分子生物学会 |quote=}}</ref>、「国の関与を強めると研究現場が萎縮する」とする意見も根強く、第三者機関の設置はこれまで見送られている<ref name=":15">[https://web.archive.org/web/20150129114541/http://www.asahi.com/articles/DA3S11574888.html 不正防止へ、みえぬ有効策 ネットで指摘増える 「STAP論文」1年]朝日新聞 竹石涼子、野瀬輝彦、合田禄 2015年1月29日 2022年11月19日閲覧</ref>。[[文部科学省|文科省]]幹部は[[匿名Aによる論文大量不正疑義事件|匿名Aの事件]]の際に「(第三者機関が設置されても)告発が増えれば対応しきれない」とも述べている<ref name=":15" />。


== 対策 ==
不正行為が行われる理由の一つには、医者が[[製薬会社]]に雇われて(=金をもらい)、新薬認可の基準に合格するような研究報告ばかりを作成するという事情があるからだという<ref name="mendelson204" />。
米国では1970年代半ばに研究不正が社会問題になったため、1980年頃から対策が進められてきた<ref>{{Cite journal|和書|author=小竹雅子 |date=2022-11 |url=https://doi.org/10.20801/jsrpim.37.3_371 |title=米国の大学における研究倫理教育の制度化過程を辿る:1980年代以降の主要な変化とその要因を中心として |journal=研究 技術 計画 |ISSN=0914-7020 |publisher=研究・イノベーション学会 |volume=37 |issue=3 |pages=371-383 |doi=10.20801/jsrpim.37.3_371 |CRID=1390857063658341248}}</ref>。一方、日本では研究不正が表沙汰になることは最近まであまりなかった<ref name=":11" />。2013年のNature誌の記事においては、[[科学技術振興機構]]が研究不正を認定した数が1957年の設立以来ゼロであることが批判されていた<ref>{{Cite journal|date=2013-04|title=A record made to be broken|url=https://www.nature.com/articles/496005a|journal=Nature|volume=496|issue=7443|pages=5–5|language=en|doi=10.1038/496005a|issn=1476-4687}}</ref>。そのような状態だった昔に比べれば、現状把握と対策が今の日本で行われていることは間違いない。一方、文科省の職員が、対策の方法に悩んでいることや、現状を深刻に見ていることが報道などで明らかにされている<ref>{{Cite book|和書|title=AERA 2013年8月26日号「急増する大学論文不正と研究者の競争激化」|url=https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=15203|language=ja|publisher=朝日新聞出版}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/doc/2013forum/session4_full.pdf |title=日本分子生物学会 2013年 理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」セッション 4. 研究不正を防ぐ研究費配分システム |access-date=2022-11-19 |publisher=日本分子生物学会 |date=2013-12-04 |quote=}}</ref>。すなわち、現在の日本の対策は、十分効果があると評価されているわけではない。


=== 教育 ===
科学論文や科学記事が、そもそも基本的に信用できるのかどうかを見極めるには、研究者の資金源がどこかを注釈などで調べる必要がある<ref name="mendelson205" />。例えば、薬の安全性に関する論文やデータであるにもかかわらず、その研究資金が[[製薬会社]]から出ている場合は、信憑性に乏しい<ref name="mendelson205" />。また、不正行為が行われる他の理由としては、研究者が、国(政府)からの[[助成金]]を獲得することだけを目的として研究報告を作成することが頻繁にあるためだという<ref name="mendelson204" />。研究に従事する研究者同士は馴れ合いの関係にあるため、同僚がデタラメな実験をしてインチキな研究報告を書いていても、見て見ぬふりをしているという<ref name="mendelson204" />。
[[研究倫理]]教育は世界各国で行われている<ref>{{Cite web|和書|title=海外の教材(THE LAB以外) │ 研究公正ポータル │ 国立研究開発法人 科学技術振興機構 |url=https://www.jst.go.jp/kousei_p/measuretutorial/mt_oversea.html |website=研究公正ポータル |access-date=2022-12-10 |language=ja}}</ref>。日本では、[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP]]事件を契機として、公的研究費を用いる研究者に対して受講が義務化された。公正研究推進協会(APRIN)という研究倫理教育を考える一般財団法人も設立された<ref>{{Cite web|和書|title=公正研究推進協会 {{!}} APRIN |url=https://www.aprin.or.jp/ |access-date=2022-11-22 |language=ja}}</ref>。しかしながら、[[日本分子生物学会]]で研究倫理教育を担当していた[[加藤茂明|東京大学分子細胞生物学研究所の研究室]]において大量の不正論文が見つかった事件<ref name=":62" /><ref name=":12" /><ref name=":2">[http://mbsj.jp/meetings/annual/2012/kinkyu_forum_record.pdf 緊急フォーラム「研究不正を考える -PIの立場から、若手の立場から-」全文記録] 分子生物学会(2012.12.11)(PDF 330KB) 2016年12月6日閲覧</ref>を踏まえると、研究倫理教育で防止できるとは考えにくい。事実、事態を受けて研究倫理教育をさらに強化していた渦中の東京大学分子細胞生物学研究所で、2016年に2件目の大きな不正事件が発覚した<ref name="inagaki_special">[https://www.nhk.or.jp/special/detail/20171210.html NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~] NHK 2017年12月10日</ref>。しかし、現在も有志は教育手法の模索を続けている<ref>{{Cite web|和書|url=https://jsa.gr.jp/04pub/2021/JJS202105harada.pdf |title=ポストコロナ時代の研究倫理教育 ─効果的な遠隔講義の立案に向けて. 日本の科学者 Vol.56 No.5 May 2021 |access-date=2022-11-20 |publisher=日本科学者会議 |author=原田英美子、池上徹}}</ref><ref name=":16">{{Cite web|和書|url=https://researchmap.jp/7000024000/presentations/9845011/attachment_file.pdf |title=2018年11月30日 日本分子生物学会ワークショップ 生命科学分野における実践的研究倫理教育を目指して 研究不正問題の包括的理解と 実践的な解決法の探索 |access-date=2022-11-20 |publisher=researchmap.jp |author=原田 英美子}}</ref>。


=== 実験ノートやデータの保管の義務化 ===
医師や医学研究者のモラルはすでに崩壊してしまっている、というロバート・メンデルソンの言もある<ref>ロバート・メンデルソン『医者が患者をだますとき』p.206-207</ref>。
[[実験ノート]]をしっかり書き、それを管理することが防止につながるとする意見がある。[[日本学術会議]]は、研究活動を記録した[[実験ノート]]、論文等を発表する根拠となった文書・数値・画像等、研究に関わる資料等を原則10年間保存することを義務づけるガイドラインを2015年に提唱した<ref>[https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-k150306.pdf 科学研究における健全性の向上について] 平成27年(2015年)3月6日 日本学術会議</ref>。


=== 処罰 ===
== 特許権・特許明細書における捏造 ==
国により異なるが、[[刑事]][[刑罰|罰]]による[[収監]]<ref>{{Cite web|和書|title=エリック・ポールマン(Eric T. Poehlman)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Eric_Poehlman.html |date=2018-02-02 |accessdate=2020-11-10 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)(米)改訂 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Dong-Pyou_Han.html |date=2015-07-15 |accessdate=2020-11-10 |language=ja}}</ref>や[[医師免許]]剥奪<ref name=":4">{{Cite web|和書|title=ヨン・スドベ (Jon Sudbø) (ノルウェー)改訂 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Jon_Sudbo.html |date=2018-05-15 |accessdate=2020-11-10 |language=ja}}</ref><ref name=":5">{{Cite web|和書|title=エリアス・アルサブティ (Elias Alsabti)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Elias_Alsabti.html |date=2018-10-12 |accessdate=2020-11-10 |language=ja}}</ref><ref name=":6">{{Cite web|和書|title=アンドリュー・ウェイクフィールド (Andrew Wakefield)(英)改訂 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_andrew_wakefield.html |date=2018-04-15 |accessdate=2020-11-10 |language=ja}}</ref>が行われる場合もある。[[中華人民共和国]]では[[死刑]]も定められている<ref>{{Cite news|title=研究不正を犯したら~死刑もある中国、おとがめなしの日本(榎木英介) - Yahoo!ニュース|url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/808f49922f12bd7343456e11af4d38e111566796|work=Yahoo!ニュース 個人|accessdate=2020-11-10|language=ja-JP}}</ref>。日本では死刑は定められていないが(関係者が[[自殺|自死]]したケースは複数存在する<ref name=":13">{{Cite web|和書|title=1‐5‐9.研究ネカトで自殺者をだすな! |url=https://haklak.com/page_Suicide.html |website=研究倫理(ネカト、研究規範) |accessdate=2019-05-04 |language=ja |publisher=白楽ロックビル}}</ref>)、不正が公に認定された場合は何らかの人事処分と公的研究費申請資格の停止が一般に行われている。[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP]]事件のようにメディアに盛んに報じられた場合は、大きな社会的制裁を受ける。
[[特許]]の審査においては基本的に書面主義が採られており、書類上の一貫性が保たれていれば、発明の実施可能性や記述の科学的な正確性について、[[査読]]や[[追試]]などによる検証は行われない。このため、金銭・利益優先で「架空のデータ」を用いた出願などの問題行為がまかり通ってしまっているとの指摘がある{{refnest|group="注"|特許においての争点は新規性であり、データの正確性でないこと。またそのために不正確であったり捏造データを用いた出願が横行し、それによって学会・産業界がデータの再現性をめぐる混乱を来たすことが指摘されている<ref name=huiir2007>[http://www.iir.hit-u.ac.jp/iir-w3/Mr%20Morioka_IIR-Decennial-Symposium_2007.03.04-05.pdf 知的財産からみたライフサイエンス分野の知識創造と活用のありかた] 味の素(株)知的財産センター 森岡一 2007年3月5日{{リンク切れ|date=2012年12月}}</ref>。}}。


=== 評価方法の改革 ===
これらの検証は、特許の審査においては書類上その発明が実施可能と認められない場合([[特許法]]36条)や、発明の実施可能性について第三者からの情報提供があった場合(特許法施行規則13条の2)に行われ、特許法194条には、その手段として、有識者への調査依頼なども定められている。また、より一般的には、特許が認められた後において、第三者が発明の実施可能性を理由として特許無効の[[行政審判|審判]]を提起した際に行われる。さらに、刑事上は、虚偽の記載等の[[詐欺]]行為によって特許を受けた場合には、いわゆる特許詐欺罪に問われ、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる(特許法197条)。特許詐欺罪は特許審査官を欺罔する罪であり、国家的権威・機能の阻害から保護することが立法の目的<ref>特許庁編「工業所有権法逐条解説第15版」P.485</ref>である。
論文の定量的な評価に基づいている研究者の評価体系を、別のものへと変更する試みが欧州では始まっている<ref>{{Cite web|和書|title=論文の査読「自作自演」 新たな研究不正発覚、遠い根絶への道(写真=共同) |url=https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD27A6X0X20C23A1000000/ |website=日本経済新聞 |date=2023-03-02 |access-date=2023-03-07 |language=ja}}</ref>。


[[エリザベス・ビク]]は、研究の評価体系を、再現性が確認された実績に基づくものに移行する必要があると主張している<ref name=":17">{{Cite news |title=Opinion {{!}} Science Has a Nasty Photoshopping Problem |url=https://www.nytimes.com/interactive/2022/10/29/opinion/science-fraud-image-manipulation-photoshop.html |work=The New York Times |date=2022-10-29 |access-date=2022-11-04 |issn=0362-4331 |language=en-US |first=Elisabeth |last=Bik |archive-url=https://web.archive.org/web/20221031020644/https://www.nytimes.com/interactive/2022/10/29/opinion/science-fraud-image-manipulation-photoshop.html |archive-date=2022-10-29}}</ref>。背景には、[[人工知能]]の利用拡大<ref>{{Cite web |title=AI Holds Potential to Support Ethical Principles in Hematology—but There’s a Dark Side |url=https://web.archive.org/web/20220611151057/https://www.ajmc.com/view/ai-holds-potential-to-support-ethical-principles-in-hematology-but-there-s-a-dark-side |website=web.archive.org |date=2022-06-11 |access-date=2022-11-22 |publisher=The American Journal of Managed Care}}</ref>によって、このままでは人間が真贋を見抜けない虚偽論文に学術界が占有されるという危機がある。
出願する上で重要となるのは、多くの観点からの請求項を含む[[特許請求の範囲]](クレーム)や、上位概念的な請求項から実施例に対応した請求項まで多段階にわたる特許請求の範囲を、出願時に作成することである。幅の広いクレームを作成することによって、より権利範囲の広い特許を取得することができるため、実際には実験を行っていない範囲についてまで実施例として記載するなど、明らかに科学的手法を逸脱した記述の体裁が積極的に採用されることがある{{要出典|date=2012年12月}}<ref group="注">例えば、実際にはある素材の組成として物質Aを20〜30%含む場合しか実験していないのに、10〜50%含む場合も実施例として記載することにより、権利範囲を拡張することがある{{要出典|date=2012年12月}}。</ref>。また、技術的な詳細の機微(ノウハウ)を可能な限り隠匿することで追従者の追跡を遅らせる意図から、実際には実験を行っていないにもかかわらず、利用可能性のある要素すべてを網羅したり、数値範囲を広く記載するケースも多い{{要出典|date=2012年12月}}<ref group="注">例えば、ある素材を焼成するのにA元素にB元素を[[ドーパント]]として利用する場合、B元素を隠匿する目的で同族元素を列挙したり{{要出典|date=2012年12月}}、ドープ量の比率を0.1〜30.0%、より適切には0.3〜10.0%などと実態を可能な限り把握されない工夫がなされる{{要出典|date=2012年12月}}。</ref>。この様な状況が野放し{{要出典|date=2012年12月}}とされているため、もはや特許公報は技術文献としての意味をなさなくなっている。


=== 対策への苦言 ===
このような虚偽の記載を含んでいる発明が特許された場合であっても、特許の権利範囲は、特許権を実際に行使する場合に判断される。つまり、特許制度においては、権利付与時には書面上の審査がなされ、実際の権利行使時に書面中のデータなどの真正性が吟味とされるというシステムが実務上確立してしまっている{{要出典|date=2012年12月}}。しかしながら、現在、家電をはじめとする製品開発・技術は複雑化の一途を辿っており、一つの商品を製造するのに何百という特許を侵害する可能性を内包している。さらに、近年の[[特許侵害訴訟]]の乱発や[[パテントトロール]]の存在などを鑑みれば、無効事由を持つ特許に対して、本来必要でない、何ら生産性のない特許訴訟や警告書などに開発メーカーや技術者が対応を迫られる事が多発し、逆に新規の技術開発や量産・実施を阻害してしまっている。そのため、今後は審査の質の向上や、進歩性を初めとする審査基準の見直し、罰則の強化、明細書記載方法(本当に実施成功例なのか明確にするなど)等、抜本的な対策が望まれる{{誰2|date=2012年12月}}。
研究不正への対策が進むと若手研究者などが萎縮しチャレンジ精神が失われるという意見もある<ref>{{Cite web|和書|title=研究不正「基盤むしばむ」 首相、総合科技会議で対策指示 |url=https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG14049_U4A410C1CR8000/ |website=日本経済新聞 |date=2014-04-14 |access-date=2022-11-05 |language=ja}}</ref>。


== 周囲の研究不正に気付く方法 ==
科学や学術論文の執筆の領域では、公表時点で[[捏造]]や[[改竄]]が問題になる。したがって、特許出願と同様の感覚で不正なデータを含む論文を公表した場合、科学の世界では科学の世界なりの処分が下る。ただし、近年、実験データを捏造して特許を出願した大学の研究者が処分された例なども出てきており、特許出願であるからデータの捏造が認められるという感覚は通用しなくなってきている<ref>[http://innovation.nikkeibp.co.jp/mailbn/20061122-00.html 産学連携と知財戦略 第11回「明細書におけるデータ捏造問題」] 先端技術事業化メールマガジン 第94号、日経BP社 産学連携事務局、2006年11月22日{{リンク切れ|date=2012年12月}}</ref>。
キャリアの浅い人が業界の慣行と研究不正を区別することは、一般的には難しい<ref name=":8">{{Cite journal|author=田中智之|year=2021|title=「研究不正」を見つけたら……|journal=現代化学|volume=604|page=30-33}}</ref>。多くの場合、かなりの時間が経ってから気付くことになる。


[[出版後査読]]の役割を果たしている[[パブピア|PubPeer]]には、多数の論文について疑惑の指摘を含めたコメントが掲載されている<ref>{{Cite web|和書|title=1‐5‐6 パブピア(PubPeer) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_pubpeer.html |access-date=2022-11-23 |language=ja}}</ref>。PubPeerを著者名や論文のタイトルで検索し、コメントの内容を吟味して判断することは可能かもしれない。
== 不正行為の具体例 ==

<!-- 最近の日本人による不正行為は行為者の実名を記載しないほうが無難。要注意。記載するとWikipediaのプライバシー規定違反とされ特定版削除になる可能性がある。その場合、記載後の編集が失われるとともに、削除の処分が確定するまでに日数がかかりその間の編集も不可能になるため。-->
[[撤回監視|Retraction Watch]]は撤回論文のデーターベースを作っている<ref>{{Cite web |title=Retraction Watch Database |url=http://retractiondatabase.org/RetractionSearch.aspx? |website=retractiondatabase.org |access-date=2022-11-04}}</ref>。検索し、論文の様態や撤回の理由を吟味して判断することは可能かもしれない。
{| class="wikitable" style="font-size:small;"

|-
== 巻き込まれた時の心構え ==
!style="width:4em;"|時期
弱い立場の大学院生や[[ポスドク]]が研究不正に巻き込まれ、追試も出来ないような状態になると、過失がなくても多大な損害を受ける。もっとも大きな影響は、他人と協力することや科学全般についての[[絶望]]といった心の傷であると言われる<ref>{{Cite web |title=When Your Supervisor Is Accused of Research Misconduct |url=https://www.the-scientist.com/careers/when-your-supervisor-is-accused-of-research-misconduct-67581 |website=The Scientist Magazine® |accessdate=2020-11-06 |language=en}}</ref>。[[白楽ロックビル]]によると、政府や大学は、巻き込まれた大学院生やポスドクに対する手当や対応基準を用意していない。周辺の教員が個々に対応しているのが現状である<ref>{{Cite web|和書|title=7-64 ネカト被災者 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_2020_zimmer.html |date=2020-11-05 |accessdate=2020-11-07 |author=白楽ロックビル|authorlink=白楽ロックビル|language=ja}}</ref>。
!style="width:11em;"|事件名<br />関係者名

!style="width:8em;"|研究所<br />大学
The Lab<ref>{{Cite web |url=https://lab.jst.go.jp/ |title=The Lab |accessdate=2020-11-10 |publisher=国立研究開発法人科学技術振興機構}}</ref>という研究不正に巻き込まれることを疑似体験できる米国の教材において、どのような選択肢を選んでも大学院生にはハッピーエンドがないことを[[科学技術振興機構]]は認めている<ref>{{Cite web|和書|url=https://confit.atlas.jp/guide/organizer/mbsj/mbsj2018/subject/2F3-1/search?searchType=only&initFlg=false&query=&title=&author=%E9%AB%98%E6%9F%B3+%E5%85%83%E9%9B%84&affiliation=&authorSelect=%E9%AB%98%E6%9F%B3+%E5%85%83%E9%9B%84 |title=「The Lab: Avoiding Research Misconduct」の体験 |accessdate=2020-11-10 |publisher=日本分子生物学会2018年年会}}</ref>。

仮に所属研究室の不正に気付いた場合は、研究室の運命を左右する問題を一人で背負うことは危険であるので、研究不正行為が行われている場から離れた後に信頼できる機関に情報提供することが望ましいとされる<ref>{{Cite book|title=科学者の研究倫理|date=2018-06-08|year=|publisher=東京化学同人|author=田中智之・小出隆規・安井裕之|pages=99|isbn=978-4807909476}}</ref>。研究室から離れるには、研究不正を訴えるより人間関係の悪化を訴える方が容易と言われる<ref name=":8" />。

[[内部告発]]は報復される危険性を伴う。告発により被告発者以外の組織構成員も被害を被る可能性があるため、報復する動機を持ち得るのは被告発者だけではない。純粋な被害者であっても、加害者の濡れ衣を着させられる可能性はある。データを捏造する人間や組織が無実の人の罪を捏造しない保証はない。

研究不正の疑惑がある研究室であっても、意義ある研究活動は可能かもしれない。例えば、疑惑が公に指摘されたり、論文撤回が行われたりしている研究室からノーベル賞の成果が生まれている例は多数存在する<ref>{{Cite journal|last=Katsnelson|first=Alla|date=2010-09-23|title=Nobel-winning brain researcher retracts two papers|url=https://www.nature.com/articles/news.2010.489|journal=Nature|language=en|doi=10.1038/news.2010.489|issn=1476-4687}}</ref><ref>{{Cite news|title=京大 山中教授が自身の論文巡り会見|newspaper=[[NHK]]|date=2014-4-28|url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140428/k10014091181000.html|access-date=2022-8-28|archive-url=https://web.archive.org/web/20140501050729/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140428/k10014091181000.html|archive-date=2014-5-1}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=論文9本に捏造や改ざん、熊本大院教授らの不正認定:朝日新聞デジタル |url=https://web.archive.org/web/20150322092603/http://www.asahi.com/articles/ASH3N648DH3NTIPE036.html |website=web.archive.org |date=2015-03-22 |access-date=2022-11-13}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=マイケル・ロスバッシュ(Michael Rosbash)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_michael_rosbash.html |access-date=2022-11-13 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ルイ・イグナロ(Louis Ignarro)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_louis_ignarro.html |access-date=2022-11-13 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Wang|first=Jishu|last2=Shinkura|first2=Reiko|last3=Muramatsu|first3=Masamichi|last4=Nagaoka|first4=Hitoshi|last5=Kinoshita|first5=Kazuo|last6=Honjo|first6=Tasuku|date=2008-01-04|title=Identification of a specific domain required for dimerization of activation-induced cytidine deaminase|url=https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18210667/|journal=The Journal of Biological Chemistry|volume=283|issue=1|pages=660|doi=10.1016/S0021-9258(20)71425-0|issn=0021-9258|pmid=18210667}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=マーティン・エヴァンズ(Martin Evans)(英)ノーベル賞受賞者 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_martin_evans.html |access-date=2022-11-13 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Jaakkola|first=Panu|last2=Mole|first2=David R.|last3=Tian|first3=Ya-Min|last4=Wilson|first4=Michael I.|last5=Gielbert|first5=Janine|last6=Gaskell|first6=Simon J.|last7=Kriegsheim|first7=Alexander von|last8=Hebestreit|first8=Holger F.|last9=Mukherji|first9=Mridul|date=2001-04-20|title=Targeting of HIF-α to the von Hippel-Lindau Ubiquitylation Complex by O 2 -Regulated Prolyl Hydroxylation|url=https://pubpeer.com/publications/4A1C3DA72976E304A92E8F4523E752|journal=Science(PubPeer)|language=en}}</ref><ref name=":10" /><ref>{{Cite web|和書|title=化学:フランシス・アーノルド(Frances Arnold)、インハ・チョ(Inha Cho、조인하、曹仁河)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_frances_arnold.html |access-date=2022-11-13 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=化学:フレイザー・ストッダート(Fraser Stoddart)(米)ノーベル賞受賞者 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_fraser_stoddart.html |access-date=2023-10-04 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ブルース・ボイトラー(Bruce Beutler)(米)ノーベル賞受賞者 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_bruce_beutler.html |access-date=2023-10-04 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)(米)、マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)(英) ノーベル賞受賞者 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_robert_lefkowitz.html |access-date=2023-10-05 |language=ja}}</ref>。

研究不正事件に巻き込まれてもキャリアが完全に閉ざされるわけではない。[[加藤茂明|東京大学の研究不正事件]]に巻き込まれて博士号が取り消された学生が5年後に再び博士号を取得した例もある<ref>{{Citation|title=次世代シーケンサーによる遺伝子解析の精度保証に関する研究|last=藤木|first=亮次|date=2020-03-03|url=https://doi.org/10.15083/0002004215|publisher=東京大学|language=ja|doi=10.15083/0002004215|access-date=2022-10-24}}</ref>。

== 具体例 ==
{{Anchors|不正行為の具体例}}<!-- 最近の日本人による不正行為は行為者の実名を記載しないほうが無難。要注意。記載するとWikipediaのプライバシー規定違反とされ特定版削除になる可能性がある。その場合、記載後の編集が失われるとともに、削除の処分が確定するまでに日数がかかりその間の編集も不可能になるため。-->全てを列挙することは現実的ではないので、(1)自殺者を含む死者を出した事件、(2)10名以上の健康被害を出した事件、(3)金銭的な影響が100億円を超える事件、(4)複数の国の複数の主要報道機関から数ヶ月以上記事が出稿された事件、(5)20報以上の論文に関わる事件、(6)過去に類似例のない事件、(7)極端に不適切な事後対応が行われた事件、(8)政府の政策や研究制度の変更を促した事件をここでは取り上げる。最終的に不正が認定されなかった事件を含む。

尚、[[お茶の水女子大学]]名誉教授の[[白楽ロックビル]]は、世界各国の研究不正の情報を日々収集し更新する巨大なデータベース<ref>{{Cite web|和書|title=白楽の研究者倫理 {{!}} ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)・クログレイ・性不正(含・セクハラ)・アカハラ・・・白楽ロックビルのバイオ政治学 |url=https://haklak.com/ |access-date=2022-11-22 |language=ja}}</ref><ref name=":19">{{Cite web|和書|title=「ネカト許さない文化を」 告発続ける75歳 日本は研究不正大国 |url=https://web.archive.org/web/20220318070521/https://mainichi.jp/articles/20220318/k00/00m/040/101000c |website=毎日新聞 |accessdate=2022-03-20 |language=ja |author=鳥井真平 |date=2022-03-18}}</ref>を作成している。

{| class="wikitable" style="font-size:small"
! style="width:4em" |時期
! style="width:11em" |事件名<br />関係者名
! style="width:8em" |研究所<br />大学
!事件内容
!事件内容
!style="width:17em;"|補記
|-
|-
!1909年
!1909年
|'''[[ピルトダウン人]]事件'''<ref name="ishiguro33">石黒武彦『科学の社会化シンドローム』p.33</ref>
|'''[[ピルトダウン人]]事件'''
|
|1909年から1912年にかけてイギリスで{{仮リンク|チャールズ・ドーソン|en|Charles Dawson}}によって旧石器時代の人骨が"発見"され、「ピルトダウン人」と名づけられたが、捏造された偽造化石の可能性が当初から疑われていた。偽造であったことが判明したのは、1953年になってのことである。
|
|
|1909年から1912年にかけてイギリスで[[チャールズ・ドーソン]]によって旧石器時代の人骨が"発見"され、「ピルトダウン人」と名づけられたが、捏造された偽造化石の可能性が当初から疑われていた。1953年に初めて偽造と判明した。
|-
|-
!1926年
!1926年
|'''サンバガエル捏造事件'''
|'''サンバガエル捏造事件'''
|
|
|オーストリアの遺伝学者{{仮リンク|パウル・カンメラー|en|Paul Kammerer}}は、19世紀初頭にラマルクが唱えた[[用不用説]]を証明するために、サンバガエルを水中で交尾させることで婚姻瘤の発現が見られることを発表。ところが、他の研究者の検証によって婚姻瘤がカエルの足に着色することによる捏造だったことが判明。カンメラーは自らを陥れるための陰謀だと主張したが、ピストル自殺した<ref name="mendelson205" />。
|オーストリアの遺伝学者{{仮リンク|パウル・カンメラー|en|Paul Kammerer}}は、19世紀初頭にラマルクが唱えた[[用不用説]]を証明するために、サンバガエルを水中で交尾させることで婚姻瘤の発現が見られることを発表。ところが、他の研究者の検証によって婚姻瘤がカエルの足に着色することによる捏造だったことが判明。カンメラーは自らを陥れるための陰謀だと主張したが受け入れられず、ピストル自殺した<ref>{{Cite web|和書|title=パウル・カンメラー(Paul Kammerer)(オーストリア) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_paul_kammerer.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。
|「[[ネオ・ラマルキズム]]」の項も参照。
「[[ネオ・ラマルキズム]]」の項も参照。
|-
|-
!1933
!1953
|'''DNAの二重らせん構造'''
|'''長崎医大博士号贈収賄事件'''
|
|[[長崎医科大学 (旧制)|長崎医科大学]]
|[[ロザリンド・フランクリン]]の上司の[[モーリス・ウィルキンス|モーリス・ウィルキンズ]]は、フランクリンが得た[[DNA]]の[[X線写真]]「[[:en:Photo_51|photo51]]」を、フランクリンに知らせることなく[[ジェームズ・ワトソン]]に見せた。ワトソンは写真に写る黒い十字の模様がらせん構造を示していることに瞬時に気づき、[[フランシス・クリック]]と共にDNAの二重らせん構造のモデルを[[Nature (journal)|Nature]]誌に直ちに発表した<ref>{{Cite journal|last=Watson|first=J. D.|last2=Crick|first2=F. H. C.|date=1953-04|title=Molecular Structure of Nucleic Acids: A Structure for Deoxyribose Nucleic Acid|url=https://www.nature.com/articles/171737a0|journal=Nature|volume=171|issue=4356|pages=737–738|language=en|doi=10.1038/171737a0|issn=1476-4687}}</ref>。
|長崎医科大学[[教授]]だった[[勝矢信司]]は、[[1926年]]に同大教授に赴任して暫くして博士論文の指導や添削の謝礼として指導下の学生や博士号を取得する開業医から謝礼を受け取っていたが、やがてエスカレートして刀剣の鑑定料として多額の謝礼を受け取るばかりか、調度品を贈られたり旅行などで供応行為を受けていた。[[1933年]]に勝矢への贈収賄が発覚し、勝矢の指導下で[[医学博士]]を授与された開業医が検挙。更に勝矢ばかりか同大教授だった[[浅田一]]・[[赤松宗二]]も捜査を受け、勝矢ら三教授は辞任した(後に勝矢は免職処分となる)<ref name="nagasaki">科学朝日編『スキャンダルの科学史』pp.266-276 なお、勝矢は[[古川竹二]]が主張していた[[血液型性格分類]]を批判し、古川の主張を支持していた浅田と事ある毎に対立していた。</ref>。
ワトソンとクリックとウィルキンズは1962年にDNAの構造の解明によって[[ノーベル賞]]を受賞した。フランクリンは1958年に卵巣がんで死亡していた。
|この事件の背景には長崎医大内での浅田ら[[東京大学|東京帝大]]出身教授と勝矢ら[[京都大学|京都帝大]]出身教授の対立があり、それが博士論文の審査にまで影響して公平性を失しているとの開業医の[[仮処分]](結局却下)を切っ掛けとして発覚した。事態の発覚に伴い、学生や同窓生から全教授の辞任を要求する声が挙がり、一時は教授ばかりか[[准教授|助教授]]・[[講師 (教育)|講師]]・[[助教|助手]]全員が辞表を提出する事態に発展。[[文部省]]は勝矢と彼の実弟を含めた四教授を辞職させ、小室要学長を更迭・[[高山正雄]]を新学長に就任させた。<ref name="nagasaki" />
ワトソンは1968年の著書でフランクリンの写真をこっそり見たことを明かし、作家の[[:en:Anne_Sayre|アン・セイヤー]]などから盗用であるとの非難を浴びた<ref>{{Cite book|和書|title=ロザリンド・フランクリンとDNA―ぬすまれた栄光|date=1979-6-1|year=1979|publisher=草思社}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=「二重らせん」のワトソンとクリックを告発する理由 {{!}} MRのための読書論 {{!}} ミクスOnline |url=https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=37584 |website=www.mixonline.jp |access-date=2022-12-08}}</ref>。
|-
|-
!1974年
!1974年
|'''[[サマーリン事件]]'''<ref name="ishiguro33" />
|'''[[サマーリン事件]]'''
|{{仮リンク|メモリアル・スローン・ケタリング癌研究所|en|Memorial Sloan Kettering Cancer Center}}
|{{仮リンク|メモリアル・スローン・ケタリング癌研究所|en|Memorial Sloan Kettering Cancer Center}}
|'''{{仮リンク|ウィリアム・サマーリン|en|William Summerlin}}'''が、ネズミの皮膚にマーカーペンで黒い点を複数描き、皮膚移植が成功したかのように見せかけた。
|[[ウィリアム・サマーリン]]が、ネズミの皮膚にマーカーペンで黒い点を複数描き、皮膚移植が成功したかのように見せかけた<ref>{{Cite web|和書|title=ウィリアム・サマリン(William Summerlin)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_william_summerlin.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>
|
|-
|-
!1980年
!1980年
|'''アルサブティ事件'''
|'''アルサブティ事件'''
|
|
|イラクからヨルダンを経てアメリカ合衆国へ留学した医師{{仮リンク|エリアス・アルサブティ|en|Elias Alsabti}}は、テンプル大学に研究職のポストを得るものの成績が振るわず失職。その後、ジェファーソン医科大学へ移籍したが、そこで実験データの捏造が発覚。大学を追われつもの研究機関を転々とするものの、その際に無名の学術雑誌に掲載されていた論文を多数盗用し別の無名の学術雑誌に投稿することを繰り返した。そのうち60数件が実際に掲載されアルサブティの実績となってしまったものの、アルサブティの技能の拙さに不審を感じた同僚研究者の調査や元の論文著者の抗議から事態が発覚。医師免許を剥奪された。
|イラクからヨルダンを経てアメリカ合衆国へ留学した医師[[エリアス・アルサブティ]]は、[[テンプル大学]]に研究職のポストを得るものの成績が振るわず失職。その後、[[ジェファーソン医科大学]]へ移籍したが、そこで実験データの捏造が発覚。大学を追われいくつもの研究機関を転々とするものの、その際に無名の学術雑誌に掲載されていた論文を多数盗用し別の無名の学術雑誌に投稿することを繰り返した。そのうち60数件が実際に掲載されアルサブティの実績となってしまったものの、アルサブティの技能の拙さに不審を感じた同僚研究者の調査や元の論文著者の抗議から事態が発覚。医師免許を剥奪された<ref name=":5" />
|「[[査読]]」の項も参照。
|-
|-
!1981年
!1981年
|'''スペクター事件'''
|'''スペクター事件'''
|[[コーネル大学]]
|[[コーネル大学]]
|コーネル大学の大学院生マーク・スペクター (Mark Spector) は、ガン発生のメカニズムについて新発見をしたと発表。指導教授{{仮リンク|エフレイム・ラッカー|en|Efraim Racker}}の指導の下スペクターは次から次へと成果を挙げたものの、実験データの不自然さと追試が成功しなかったことから実験データの捏造が発覚。論文が撤回されたばかりか経歴詐称までも判明し、スペクターは退学処分となった。
|コーネル大学の大学院生[[マーク・スペクター]] (Mark Spector) は、ガン発生のメカニズムについて新発見をしたと発表。指導教授{{仮リンク|エフレイム・ラッカー|en|Efraim Racker}}の指導の下スペクターは次から次へと成果を挙げたものの、実験データの不自然さと追試が成功しなかったことから実験データの捏造が発覚。[[撤回 (論文)|論文が撤回]]されたばかりか経歴詐称までも判明し、スペクターは退学処分となった<ref>{{Cite web|和書|title=マーク・スペクター(Mark Spector)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Mark_Spector.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>
|福岡伸一著「世界は分けてもわからない」に概要が記されている。
|-
|-
!1981年
!1981年
|'''クローンマウス事件'''<ref name="ishiguro33" />
|'''クローンマウス事件'''
|
|[[ジェネーブ大学]]の{{仮リンク|カール・イルメンゼー|de|Karl Illmensee}}と[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[ジャクソン研究所]]のピーター・ホッペは、1977年に[[ハツカネズミ]]の体細胞から[[細胞核]]の[[移植]]によって[[クローン]]生物を生成することができると発表。これまで[[哺乳類|哺乳動物]]では不可能といわれていたクローンが哺乳動物でも可能ということで世界的に反響をもたらしたが、他の実験者による再現実験では成功せずさらにイルメンゼーがデータを故意に操作していたとの内部告発もあり、1981年にイルメンゼーの一連の研究は'''「捏造とは断定できないものの、信頼性に重大な疑問が残る」'''という調査結果を発表。イルメンゼーへの研究助成は打ち切られ、その後大学の職を辞することとなった。
|
|
|[[ジェネーブ大学]]の{{仮リンク|カール・イルメンゼー|de|Karl Illmensee}}と[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[ジャクソン研究所]]のピーター・ホッペは、1977年に[[ハツカネズミ]]の体細胞から[[細胞核]]の[[移植 (生物)|移植]]によって[[クローン]]生物を生成することができると発表。これまで[[哺乳類]]では不可能といわれていたクローンが、哺乳動物でも可能ということで世界的に反響をもたらしたが、他の実験者による再現実験では成功せず、さらにイルメンゼーがデータを故意に操作していたとの内部告発もあり、1981年にイルメンゼーの一連の研究は「捏造とは断定できないものの、信頼性に重大な疑問が残る」という調査結果を発表。イルメンゼーへの研究助成は打ち切られ、その後大学の職を辞する事となった。この事件以降、一時的にクローン生物研究は世界的に下火となった。
|-
|-
!1986年
!1986年
|'''ボルティモア事件'''<ref name="ishiguro33" />
|'''ボルティモア事件'''
|[[マサチューセッツ工科大学]]
|[[マサチューセッツ工科大学]]
|免疫学者'''{{仮リンク|テレザ・イマニシ=カリ|en|Thereza Imanishi-Kari}}'''がデータを捏造したと部下が告発したが、イマニシの属していた研究室の主宰者だった'''[[デビッド・ボルティモア]]'''がその告発を受け入れなかった。一度は有罪とされたが、再審査においては「証拠はつからなかった」として告発は却下された。
|免疫学者[[テレザ・イマニシ=カリ]]がデータを捏造したと部下が告発したが、イマニシの属していた研究室の主宰者だった[[デビッド・ボルティモア]](ノーベル賞受賞者)がその告発を受け入れなかった。一度は有罪とされたが、再審査においては「証拠はつからなかった」として告発は却下された。
|この事件で真相究明が難航したことが、アメリカ合衆国の[[研究公正局]] ([[ORI]]) の前身となった機関である科学公正局の設立のきっかけとなったとも言われることがある。
この事件で真相究明が難航したことが、アメリカ合衆国の[[研究公正局]] ([[ORI]]) の前身となった機関である科学公正局の設立のきっかけとなったとも言われることがある。
|-
!1992年
|'''異常なオーサーシップ'''
|[[:en:Nesmeyanov_Institute_of_Organoelement_Compounds|有機元素化合物研究所]]
|露・モスクワの有機元素化合物研究所 (IOC) の[[ユーリイ・ストルチコフ|研究員]]は、10年間で948本もの論文の「共著」になっている。これは「IOCの施設を利用する見返りとして、IOCの人間を共著者に入れるのが慣習化していた」ことによるものであった。この件で研究員は1992年に[[イグノーベル賞]]を受賞した<ref name="ignobel">『イグ・ノーベル賞』、マーク・エーブラハムズ。阪急コミュニケーションズ。</ref>。ギフトオーサーシップの究極的な例として取り上げられることがある。
|-
|-
!1994年
!1994年
|'''ピアース事件'''<ref name="ishiguro33" />
|'''ピアース事件'''
|
|
|イギリスの産科医師ピアース (Malcolm Pearce) が、臨床例を捏造して、それをもとに論文を作成し、自身が編集委員を務める英国産科婦人科学会誌に発表した。編集委員長を論文共著者としていたが (= gift authership)、その編集委員長が辞任した。
|イギリスの産科医師ピアース (Malcolm Pearce) が、臨床例を捏造して、それをもとに論文を作成し、自身が編集委員を務める英国産科婦人科学会誌に発表した。編集委員長を論文共著者としていたが (= gift authership)、その編集委員長が辞任した<ref>{{Cite web|和書|title=マルコム・ピアース(Malcolm Pearce)(英)改訂 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_malcolm_pearce.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>
|英国が科学者による不正行為の対策に本格的に取り組むきっかけとなったともいわれる。
英国が科学者による不正行為の対策に本格的に取り組むきっかけとなったともいわれる。
|-
|-
!1997年
!1997年
|'''ヘルマン・ブラッハ事件'''<ref name="ishiguro33" />
|'''ヘルマン・ブラッハ事件'''
|[[ウルム大学]]・リューベック大学
|
|'''{{仮リンク|フリードヘルム・ヘルマン|de|Friedhelm Herrmann}}''''''マリオン・ブラッハ''' (Marion Brach) が、1988年から1996年の間に発表した細胞成長に関する37論文で、デジタル画像の捏造やデータ操作・偽造が行われたことが、両者の研究スタッフからの[[内部告発]]によって発覚。ヘルマンとブラッハは[[詐欺]]の容疑で起訴されたが、結局援助されていた資金を返還することで和解した。
|{{仮リンク|フリードヘルム・ヘルマン|de|Friedhelm Herrmann}}とマリオン・ブラッハ (Marion Brach) が、1988年から1996年の間に発表した細胞成長に関する37論文で、デジタル画像の捏造やデータ操作・偽造が行われたことが、両者の研究スタッフからの[[内部告発]]によって発覚。ヘルマンとブラッハは[[詐欺]]の容疑で起訴されたが、結局援助されていた資金を返還することで和解した<ref>{{Cite web|和書|title=フリートヘルム・ヘルマン(Friedhelm Herrmann)、マリオン・ブラッハ(Marion Brach)(独) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_herrmann_brach.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>
|ヘルマンとブラッハの研究はドイツ研究基金とドイツ癌研究援助基金から多額の資金援助を受けていたこともあり、5年後に発覚したベル研シェーン事件を含めてドイツ科学界に大きな影響を及ぼした。
ヘルマンとブラッハの研究はドイツ研究基金とドイツ癌研究援助基金から多額の資金援助を受けていたこともあり、5年後に発覚したベル研シェーン事件を含めてドイツ科学界に大きな影響を及ぼした<ref>{{Cite journal|author=藤井基貴、山本隆太 |date=2014-07-01 |title=ドイツにおける研究倫理への取り組み(1) : 「DFG 提言」(1998)および「補遺」(2013)の検討を中心に |url=https://doi.org/10.14945/00007855 |journal=静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会・自然科学篇|volume=64|pages=113–130|language=ja|doi=10.14945/00007855 |ISSN=1884-3492 |CRID=1390853649734028544}}</ref>
|-
!1998年
|'''{{仮リンク|MMRワクチン捏造論文事件|en|MMR vaccine controversy}}'''
|ロイヤル・フリー病院
|[[アンドリュー・ウェイクフィールド]]の「[[新三種混合ワクチン]]の[[予防接種]]で[[自閉症]]になる」という論文が『[[ランセット]]』に掲載された。12人の子供の患者を対象に研究し、「腸疾患」と「自閉症」と「三種混合ワクチン」が関連した新しい病気「自閉症的全腸炎({{en|autistic enterocolitis}})」を発見したと報告した。この論文掲載に対して『ランセット』は激しい批判に晒された。<br />2004年2月に『ランセット』は、同論文の一部撤回を発表し、2010年に『ランセット』は、この論文を正式に撤回した<ref>{{Cite news|url=https://www.afpbb.com/articles/-/2690341?pid=5270873|title=英医学誌、自閉症と新三種混合ワクチンの関係示した論文を撤回|work=AFPBB News|publisher=フランス通信社|date=2010-02-03|accessdate=2013-01-18}}</ref><ref name=":6" />。
[[イギリス]]・[[アメリカ合衆国]]・[[カナダ]]・[[オーストラリア]]・[[ニュージーランド]]において、ワクチン接種が激減、[[麻疹]] に感染する[[子供]]が増加した。<br />アンドリュー・ウェイクフィールドは、[[イギリス]]の医師免許剥奪の懲戒処分を受けた。
|-
|-
!2000年
!2000年
|'''[[旧石器捏造事件]]'''<ref name="ishiguro33" />
|'''[[旧石器捏造事件]]'''
|東北旧石器文化研究所
|
|[[藤村新一|東北旧石器文化研究所の副理事長]]が30年ほど前から発見していた旧石器が捏造であったことが、毎日新聞の2000年11月5日朝刊掲載のスクープによって暴露された<ref>{{Cite web|和書|title=これが石器を埋める現場 |url=https://web.archive.org/web/20001205200100/https://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/iseki/g/index.html |website=web.archive.org |date=2000-12-05 |access-date=2022-11-17 |publisher=毎日新聞}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=隠された事実を暴き、歴史の歪曲正す {{!}} ジャーナリズムの軌跡 過去の受賞作を振り返る |url=https://www.pressnet.or.jp/journalism/locus/interview_3.html |website=ジャーナリズムの力(日本新聞協会) |access-date=2022-11-17 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=旧石器捏造事件 発覚(2000年11月5日:毎日新聞) |url=http://yamatetsu1441.livedoor.blog/archives/25667494.html |website=YAMATETSU物語 |access-date=2022-11-17 |language=ja |last=yamatetsu1441}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=閼伽出甕 特集:「旧石器発掘ねつ造」事件 |url=https://www2m.biglobe.ne.jp/~Accord/SP/netuzou.htm |website=www2m.biglobe.ne.jp |access-date=2022-11-17}}</ref>。
|'''[[藤村新一]]'''が30年ほど前から発見していた旧石器の発見が捏造であったことが暴露された。影響が大きく、歴史教科書の修正をも余儀なくされた。
発覚の影響は大きく、歴史の[[文部科学省検定済教科書|検定済教科書]]の記述削除を余儀なくされた。
|
|-
|-
!2002年
!2002年
|'''[[ヘンドリック・シェーン|ベル研シェーン事件]]'''<ref name="ishiguro33" />
|'''ベル研究所の事件'''
|[[ベル研究所]]
|[[ベル研究所]]
|ベル研究所の科学者'''[[ヘンドリック・シェーン]]'''が作成し2000年から2001年にかけて『サイエンス』誌に掲載された論文10編および『ネイチャー』誌掲載の論文7編が、後に捏造であることが判明し、全て撤回された。
|[[ベル研究所]]の[[ヘンドリック・シェーン|研究員]]が作成した、2000年から2001年にかけて『サイエンス』誌に掲載された論文10編および『ネイチャー』誌掲載の論文7編が全て捏造であることが判明し、全て撤回された。研究員はこの一件でベル研究所を解雇され、[[コンスタンツ大学]]からは博士の学位を剥奪された<ref>{{Cite book|和書|title=論文捏造|url=https://www.worldcat.org/oclc/676031339|publisher=中央公論新社|date=2006|location=Tōkyō|isbn=4-12-150226-4|oclc=676031339|others=|author=村松秀}}</ref>
[[日本放送協会|NHK]]の村松秀らがこの事件について作成した番組<ref>NHK BSドキュメンタリー『史上空前の論文捏造』(2004年。[[ヘンドリック・シェーン|有機物高温超電導]]の事件を扱った50分の番組。論文捏造の数と撤回論文の数の相関を断じるような間違った主張を含んではいる。村松秀著『論文捏造』の元。2005年にはNHK-BS1 ハイビジョン特集で90分に拡大したものを放送。)</ref>は、多くの国際賞(バンフ・テレビ祭最優秀賞、アメリカ国際フィルム・ビデオ祭クリエイティブ・エクセレンス賞、アルジャジーラ国際テレビ番組制作コンクール銅賞)と科学技術映像祭・文部科学大臣賞を受賞した。
|[[ヘンドリック・シェーン]]はこの一件で、[[ベル研究所]]を解雇され、[[コンスタンツ大学]]からは博士の学位を剥奪された<ref name=ce_news20040617>{{Cite news |url= http://pubs.acs.org/cen/news/8224/8224physicist.html |title= DISGRACED PHYSICIST STRIPPED OF PH.D. DEGREE |newspaper=Chemical & Engineering News|date=2004-06-17|accessdate=2014-07-01}}</ref>。
|-
|-
!2002年7月
!2002年
|'''[[:en:Victor Ninov|Victor Ninov]]'''
|'''[[ヴィクトル・ニノフ]]'''
|[[バークレー研究所]]
|[[バークレー研究所]]
|1999年に最重元素([[超ウラン元素]])が発見されたとしていた研究の実験データが偽造されていたと判明し、論文を撤回<ref name="ishiguro8">石黒武彦『科学の社会化シンドローム』p.8</ref>。
|1999年に最重元素([[超ウラン元素]])が発見されたとしていた研究の実験データが偽造されていたと判明し、論文を撤回<ref name="ishiguro8">石黒武彦『科学の社会化シンドローム』p.8</ref>。
|
|-
|-
!200412月
!2005
|
|[[理化学研究所]]
|実験データが改ざんされた不正論文があったとして記者発表されたが、裁判の結果、2010年4月に記者発表は取り消された。
|
|-
!2005年6月
|'''[[大阪大学医学部論文不正事件]]'''
|'''[[大阪大学医学部論文不正事件]]'''
|[[大阪大学]]
|[[大阪大学]]
|2005年6月に、作られたはずのノックアウトマウスが存在しなかったため、Nature Medicine誌の論文が撤回された。大阪大学は、筆頭著者の大学院生を実行犯と認定し、監督者の教員2名を停職処分にした。停職処分を受けた教員の1名が大学院生から600万円の金銭を受け取っていたことも調査過程で明らかになっていた。大学院生は教員2名に損害賠償を求める裁判を起こしたが、敗訴した<ref>{{Cite journal|last=重秋|first=菊地|date=2010-12-01|title=我が国における研究不正(ミスコンダクト)等の概観 : 新聞報道記事から(その2) |url=https://saigaku.repo.nii.ac.jp/records/607 |journal=埼玉学園大学紀要. 人間学部篇 |volume=10|pages=283–296|language=ja |CRID=1050564287951803264}}</ref>。
|2005年6月に、実験データの不適切な掲載を理由として、大阪大学医学部教授の[[下村伊一郎]](内分泌・代謝内科)や[[竹田潤二]](発生工学)らが発表していたNature Medicine誌の論文 (Nat Med. 2004 Nov;10(11):1208-15.) が撤回された<ref>Nature Medicine誌の論文撤回告知: [http://www.nature.com/nm/journal/v11/n6/full/nm0605-691a.html]</ref>。さらに、撤回されたNature Medicine誌の論文の筆頭著者の医学部生が執筆していた別のCancer Science誌での筆頭著者論文 (Cancer Sci. 2005 Jun;96(6):377.) も、不適切なデータが掲載されていたとして撤回された<ref>Cancer Science誌の論文撤回告知: [http://onlinelibrary.wiley.com/resolve/openurl?genre=article&sid=nlm:pubmed&issn=1347-9032&date=2005&volume=96&issue=6&spage=377]</ref><ref name="ishiguro8" />。2006年に、大阪大学は、竹田を1カ月の停職処分、下村教授を14日間の停職処分にした<ref>[http://www.47news.jp/CN/200602/CN2006021501003005.html データ捏造で2教授停職 大阪大、肥満研究論文]([[47NEWS]] 2006年2月15日)</ref>。撤回された2論文の筆頭著者の学生は、「実験に使ったマウスはいないので、実験を再現できない。実験の記録ノートもない」と話した<ref>[http://web.archive.org/web/20050525115727/http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20050519k0000e040043000c.html データ改ざん:米医学誌への論文取り下げる 大阪大学]([[MSN産経ニュース|MSN毎日インタラクティブ]] 2005年05月25日時点のアーカイブ)</ref><ref>論文捏造([[2006年]][[9月]]、[[中公新書|中公新書ラクレ]])村松秀</ref>。さらに、下村の研究室から発表されたScience誌の論文 (Science. 2005 Jan 21;307(5708):426-30) も、再現性が取れなかったとして、2007年10月に撤回された<ref>[http://www.sciencemag.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=17962537 Retraction of Fukuhara et al., Science 307 (5708) 426-430.]</ref><ref>[http://www.the-scientist.com/?articles.view/articleNo/25600/title/Visfatin-study-retracted-from-Science/ Visfatin study retracted from Science Osaka researchers retract disputed paper but claim results are valid]</ref>。
尚、処分を受けた教員の1名が責任著者を務めるScience誌の論文が、再現が取れなかったとして2007年10月に撤回された。このScience誌の論文には、Nature Medicine誌の論文の不正で実行犯と認定された筆頭著者は関与していなかった。Science誌の論文の撤回の際には、大阪大学医学部の教授会において、責任著者の退職を求める怒号が飛び交った{{要出典|date=2022年11月|title=日経バイオテックに記事が出ていたと記憶しています。}}。
|

また、この責任著者や、Nature Medicine誌の筆頭著者を実行犯と認定した調査委員会の委員長は、後に[[匿名Aによる論文大量不正疑義事件]]で複数の論文について告発を受けた<ref name="confidential">[https://archive.is/20151213003337/http://medical-confidential.com/confidential/2015/02/post-909.html 記者会見でも決着つかぬJ-ADNI事件「不都合な真実」 旧帝大でまたも不正が発覚] 集中 Medical Confidential 2015年2月 (8巻2号 pp.25-27) 2022年11月23日閲覧</ref><ref>{{Cite web|和書|title=障がいを持つ子供たちの野球教室が開催されました |url=https://amitohyama.exblog.jp/23598230/ |website=桜吹雪 |access-date=2022-11-16 |language=ja |last=amitohyama}}</ref>。
|-
|-
!2005年7月
!2005年
|'''[[多比良和誠|東京大学工学部のRNA研究室の事件]]'''
|
|[[ノースカロライナ大学]]
|1997年に刊行され、その後227回も引用された、コカイン症候群についての論文を撤回<ref name="ishiguro8" />。
|
|-
!2005年9月
|'''[[多比良和誠]]'''<br />'''川崎広明'''
|[[東京大学]]
|[[東京大学]]
|教授の2人の部下、K1とK2が異常なペースで[[RNA]]に関する論文を発表していた。教授は2人のことを強く信用していた<ref name=":0" />。しかし、サンプルの譲渡を依頼されると「冷蔵庫が爆発した」という理由で断るなどしていたため{{要出典|date=2022年11月|title=くだけた話ですが有名な話ではあるので、どこかに出典が一つくらいあることを期待します}}、業界では疑惑が長らく囁かれていた<ref>{{Cite web|和書 |title=なぜデータ捏造をするのか {{!}} 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ |url=https://web.archive.org/web/20060212162036/https://mitsuhiro.exblog.jp/3444218/ |website=生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ |access-date=2022-11-06 |language=ja |last=yanagidamitsuhiro |date=2006-01-28}}</ref>。Nature誌の論文でHes1遺伝子を同名の別の遺伝子と取り違えていたこと<ref>{{Cite journal|date=2003-11|title=Retraction Note to: Hes1 is a target of microRNA-23 during retinoic-acid-induced neuronal differentiation of NT2 cells|url=https://www.nature.com/articles/nature02141|journal=Nature|volume=426|issue=6962|pages=100–100|language=en|doi=10.1038/nature02141|issn=1476-4687}}</ref>は疑惑を決定的にし、日本RNA学会が東京大学に調査を依頼した。K2が反証として提示したABIのシークエンサーのデータが、データ作成当時はABIから販売されていなかったはずの新しいバージョンのソフトウェアを用いて作られたものであったことなどから、2006年3月に「データは偽造された可能性が高い」とされた<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400008387.pdf|title=日本 RNA 学会から再現性に疑惑が指摘された論文に関する最終調査報告|accessdate=2020-11-10|publisher=東京大学}}</ref>。
|遺伝子の働きを制御する[[リボ核酸]]に関する論文について、疑義が浮上。2006年3月に「データは偽造された可能性が高い」とされた<ref name="47n">{{cite news|title =元教授解雇、二審も支持 「助手の実験、確認怠る」|url = http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010112401000944.html|publisher = [[47NEWS]]|date = 2010年11月24日| accessdate = 2014年1月17日}}</ref><ref name="ishiguro8" />。
|この不正行為から多比良は懲戒解雇されたが、解雇は不当として大学と裁判で争っているものの一審・二審ともに教授側の責任を認め「解雇は妥当」と結論付けた。
この不正行為から東京大学教授とK2を懲戒解雇たが<ref>NHKクローズアップ現代『[https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/2348/ 揺らぐ科学の信頼~東大・論文ねつ造疑惑~]』(2007年)</ref>教授は解雇は不当として東京大学と裁判で争った。一審・二審ともに教授側の責任を認め「解雇は妥当」と結論付けた<ref name="47n">{{cite news|title=元教授解雇、二審も支持 「助手の実験、確認怠る」|url=http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010112401000944.html|publisher=[[47NEWS]]|date=2010年11月24日|accessdate=2014年1月17日|newspaper=|archive-date=2010年11月27日|archive-url=https://web.archive.org/web/20101127173606/http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010112401000944.html}}</ref>。尚、K1は調査の時点で東大の外部に異動しており、調査対象にはなっていない
|-
!2005年10月
|
|[[マサチューセッツ工科大学]]
|複数の論文や申請書に偽造データを使ったとして、新進の免疫学者が罷免された<ref name="ishiguro8" />。
|
|-
!2005年12月
|
|[[京都大学]]
|ある教授の論文が、研究室の助手のデータを無断で使用して書かれたものだったと判明し、停職3ヶ月の処分となった<ref name="ishiguro8" />。
|
|-
|-
!2005年12月
!2005年
|'''[[黄禹錫]]'''<ref name="ishiguro33" />
|'''[[黄禹錫#ES細胞論文不正事件|ES細胞論文不正事件]]'''
|[[ソウル大学]]
|[[ソウル大学]]
|'''ファン・ウソク'''(黄禹錫)が行っていた[[胚性幹細胞|クローン胚ES細胞]]研究に疑義が発生。2006年1月に調査委員会により捏造だと断定され、論文は撤回<ref name="ishiguro8" />。
|[[黄禹錫]](ファン・ウソク)が行っていた[[胚性幹細胞|クローン胚ES細胞]]研究に疑義が発生。2006年1月に調査委員会により捏造だと断定され、論文は撤回された<ref>{{Cite book|和書|title=国家を騙した科学者―「ES細胞」論文捏造事件の真相|url=https://www.worldcat.org/oclc/1006961547|publisher=牧野出版|date=2006.10|isbn=4-89500-095-8|oclc=1006961547|others=Sonju I, 成柱 李, 淵弘 裴}}</ref>。


[[黄禹錫]]この一件で、研究助成金など8億3500万ウォン(約6500万円)を騙し取ったと認定され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた<ref name=yomiuri20091026>{{cite news|url = http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20091026-OYT1T01010.htm|title = 論文捏造・黄教授に猶予判決、科学への貢献を考慮|work = YOMIURI ONLINE|publisher = [[読売新聞社]]|date = 2009-10-26|accessdate = 2009-10-26}}</ref><ref name=mainichi20091026>{{cite news|url = http://mainichi.jp/select/world/news/20091027k0000m030041000c.html|title = 韓国:ES細胞論文捏造の黄元教授に有罪…ソウル中央地裁|publisher = [[毎日新聞]]|date = 2009-10-26|accessdate = 2009-10-26}}</ref>
黄禹錫は研究助成金など8億3500万ウォン(約6500万円)を騙し取ったと認定され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。

|捏造が認定されたものの、NT-1株についての物質特許とES細胞の作成方法について、[[2011年]]に[[カナダ]]、[[2014年]]に[[アメリカ]]で特許が成立している。なお、[[韓国]]ではNT-1株の存在が認められておらず、訴訟が続いている<ref>{{Cite news|title=論文ねつ造した韓国人学者のES細胞 米国で特許取得|date=2014-02-11|url=http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/02/11/2014021103466.html}}</ref>。
捏造が認定されたものの、[[NT-1株]]についての物質特許とES細胞の作成方法について、[[2011年]]に[[カナダ]]、[[2014年]]に[[アメリカ]]で特許が成立している。なお、[[韓国]]ではNT-1株の存在が認められておらず、訴訟が続いている<ref>{{Cite news|title=論文ねつ造した韓国人学者のES細胞 米国で特許取得|date=2014-02-11|url=https://jp.yna.co.kr/view/AJP20140211002600882|newspaper=聯合ニュース}}</ref>。後の検証でES細胞の作製と世界初となるヒトの単為生殖に成功していたことは認められたが、論文が不正であり、論文に記された作成に至る経過とは関係なく偶然できた物と検証されたため、世界初の業績であるとはみなされていない<ref name="theregister">{{cite web |url=http://www.theregister.com/2007/08/03/hwang_parthenogenesis/ |title=Stem cell fraudster made 'virgin birth' breakthrough |accessdate=2014-05-03 |author=Williams, Christoper |date=August 3, 2007 |work=The Register |archiveurl=https://web.archive.org/web/20071223185237/http://www.theregister.co.uk/2007/08/03/hwang_parthenogenesis/ |archivedate=2007-12-23 |deadurl=no}}</ref>。
|-
|-
!2006年1月
!2006年
|'''[[:en:Jon Sudbø|Jon Sudbø]]'''
|'''[[:en:Jon Sudbø|Jon Sudbø]]'''
|ノルウェー・ラジウム病院
|ノルウェー・ラジウム病院
|口腔ガンに関する[[:en:Jon Sudbø|Jon Sudbø]]らの医学論文において、偽造データが使われていたことが判明<ref>[http://www.senkensoi.net/old/ssnet/backnumber/topic/060120.html ノルウェーでも研究論文の捏造問題が浮上] 先見創意の会</ref><ref name="ishiguro8" />。
|[[口腔癌]]に関する[[:en:Jon Sudbø|Jon Sudbø]]らの医学論文において、偽造データが使われていたことが判明<ref>[https://web.archive.org/web/20160308113242/http://www.senkensoi.net/old/ssnet/backnumber/topic/060120.html ノルウェーでも研究論文の捏造問題が浮上] 先見創意の会</ref><ref name="ishiguro8" /><ref name=":4" />。
|
|-
|-
!2006年1月
!2006年
|'''大阪大学大学院生命機能研究科'''
|'''杉野明雄'''
|[[大阪大学]]
|[[大阪大学]]
|助手を含む複数の共同論文著者らは、研究データを教授に改竄され、そのデータを含む論文を投稿されたと指摘した。助手はその後、毒物の[[アジ化ナトリウム]]を飲み自殺した。論文の不正は認定され、教授は懲戒解雇された。公開された調査報告書には教授が自殺した助手に宛て送っていたEメールが掲載されており、そこには「図9は、ご指摘の通り私がデータを捏造しました」などの生々しい文面が含まれていた<ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20071024154619/http:/www.fbs.osaka-u.ac.jp/reports/FinalReport20060921.pdf|title=不正行為があった疑いのある2論文に関する調査報告書 大阪大学大学院生命機能研究科 研究公正委員会|accessdate=2020-12-05|publisher=大阪大学}}</ref>。
|大阪大学大学院生命機能研究科教授の[[杉野明雄]]による論文不正が発覚し、懲戒解雇された。杉野の研究室の男性助手を含む複数の共同論文著者らは、研究データを杉野に改ざんされ、論文を米国の生物化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー (Journal of Biological Chemistry)」誌に投稿されたと指摘していた。男性助手はその後、毒物の[[アジ化ナトリウム]]を飲み自殺した<ref>朝日新聞(2006年09月06日):阪大教授らの論文に「疑問」 指摘の助手が自殺</ref><ref>産経新聞(2006年09月07日):阪大助手自殺 米科学雑誌論文取り下げ「データに改竄」訴え</ref><ref>[https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2003/8831/ 日経バイオテック(2006年09月08日): 大阪大学で助手が自殺、論文データ改ざんの疑いで大学が調査]</ref><ref>[http://www.nig.ac.jp/labs/NigPrjct/sensai/vol02/greeting/greeting.html 染色体サイクル]</ref>。
この事件は[[日本分子生物学会]]で研究不正問題に関するシンポジウム<ref name=":102">{{Cite web|和書|title=若手教育シンポジウム - 日本分子生物学会 |url=https://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/wakate_sympo.html |website=www.mbsj.jp |access-date=2022-10-18 |date=2007}}</ref>が開かれる契機となった。
|
|-
|-
!2006年2月
!2006年
|'''[[松本和子|政府要職者]]の不正'''
|'''下村伊一郎、竹田潤二'''
|[[大阪大学]]
|[[早稲田大学]]
|研究費の大量流用が行われた。内閣府の[[総合科学技術会議]]議員や[[文部科学省]]の研究不正防止を検討する委員会主査代理などの要職も務めていた者の事件であったことから、この事件は国の研究資金の管理が厳しくなる大きな契機となった。
|大阪大学大学院生命機能研究科個体機能学講座病態医科学研究室。PTENマウス論文の捏造。
|
|-
|-
!2008
!2007
|'''鹿児島大学医学部第三内科'''
|'''論文贈収賄事件'''
|[[名古屋市立大学]]
|[[鹿児島大学]]
|鹿児島大学医学部の助教が発表した論文について、その論文を掲載した米国の学術誌から疑義の照会が2007年9月3日に届いた。助教は11月1日に自殺した。鹿児島大学は、助教が14本の論文で改ざんを行ったことを2008年5月16日に発表した<ref>{{Cite web|和書|title=鹿児島大学の事件 |url=https://shinka3.exblog.jp/8892836/ |website=5号館を出て |access-date=2022-11-17 |language=ja |last=stochinai}}</ref><ref name=":13" />。
|名古屋市立大学大学院医学研究科において、博士課程の論文審査をめぐる贈収賄が発覚した。名古屋市立大学教授の[[伊藤誠]]は、学位論文を提出した者から現金を受け取っていたとされ、名古屋地方裁判所で有罪判決を受けた<ref>[http://university.main.jp/blog6/archives/2008/07/post_304.html 名古屋市大元教授に有罪判決 医学博士号汚職事件] 全国国公私立大学の事件情報</ref>。
|
|-
!2007年
|'''東北大学助教'''
|[[東北大学]]
|2007年10月22日、鹿児島大学出身の東北大学助教の論文に不正が疑われるデータがあることが[[2ちゃんねる]]の「『どーすればなくなるか?捏造。』【参十三報目】」の430番目のレスで指摘された{{要出典|date=2022年11月|title=}}。
助教は2008年の[[日本細菌学会|細菌学会]]黒屋奨学賞を受賞した。受賞直後に疑義の指摘が学会員から細菌学会へなされた。細菌学会は16報の不正の疑いを認め、文科省と東北大学に伝達した。

東北大学は助教を2009年12月に懲戒解雇し、助教は東北大学を訴えた。仙台地裁は、助教の仮処分申請を受け、2010年5月14日に助教の解雇を無効とし、賃金の仮払いを命じる決定を出した。裁判官は「従前の実験データと類似したデータが、事後の実験でも得られることがあり得る。実験データを流用した不正行為の真偽は不明」と指摘し、また助教の再実験の申し出を東北大学が拒否したことは問題があったと認定した<ref>{{Cite news|title=<東北大>論文データ転用で助教の解雇は無効 仙台地裁|newspaper=毎日新聞|date=2010-05-18|author=須藤唯哉}}</ref>。

しかし結局1審の裁判で助教は敗訴した。控訴審でも判決は覆らず、懲戒解雇の取り消しと1000万円の慰謝料の支払いは認められなかった<ref>{{Cite web|和書|title=【魚拓】河北新報 東北のニュース/「東北大の判断は適正」元助教の控訴棄却 解雇無効訴訟 |url=https://megalodon.jp/2013-0608-1305-15/www.kahoku.co.jp/news/2013/06/20130608t13018.htm |website=ウェブ魚拓 |access-date=2022-11-17}}</ref>。

2018年に博士号の取り消しが行われた<ref>{{Cite web|和書|title=博士学位の取消しについて |url=https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2018/02/news20180221-01.html |website=東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY- |access-date=2022-11-18 |language=ja}}</ref>。
|-
!2007年
|'''東北大学総長'''
|[[東北大学]]
|東北大学の総長に対して研究不正の疑義が内外から寄せられ<ref>{{Cite book|title=東北大総長おやめください―研究不正と大学の私物化|url=https://www.worldcat.org/oclc/752004793|publisher=社会評論社|date=|location=|isbn=978-4-7845-1481-6|oclc=752004793|others=|year=2011}}</ref>、様々な調査が行われたが、総長が自ら辞職することはなかった。東北大学の総長は告発した教授に対して名誉毀損の訴訟を起こした。
|-
|-
!2010年
!2010年
|'''[[アニリール・セルカン]]'''
|'''[[アニリール・セルカン|自称宇宙飛行士候補]]'''
|[[東京大学]][[JAXA]]
|[[東京大学]][[宇宙航空研究開発機構]]
|東京大学大学院工学系研究科の助教であった[[アニリール・セルカン]]の経歴詐称、業績の捏造、剽窃が判明。学位取り消し懲戒解雇相当の処分が下された<ref>[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_220723_j.html 東京大学記者発表:アニリール・セルカン元東京大学工学系研究科助教に係る論文の不正行為に関する調査報告について]</ref>。
|東京大学大学院工学系研究科の[[アニリール・セルカン|助教]]の経歴詐称、業績の捏造、剽窃が判明した東大史上初の学位取り消し懲戒解雇相当の処分が下された<ref>[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_220723_j.html 元東京大学工学系研究科助教に係る論文の不正行為に関する調査報告について]</ref>。
この事件の追及は主に[[11jigen]]により行われた。これから2014年までの約5年間に日本で発生し公になった研究不正事件の発覚と告発の大半は11jigenが関与したものである。
|
|-
|-
!2010年
!2010年
|'''森直樹'''
|'''[[森直樹 (微生物学者)|琉球大学教授]]'''
|[[琉球大学]]
|[[琉球大学]]
|修士論文や博士論文の発表会における学生の他律的な言動を見れば、何かが起きていることは誰もが容易に認識できる状態であった<sup class="Template-Fact plainlinks">[''[[wikipedia:「要出典」をクリックされた方へ|<span title="この記述には信頼できる情報源の提示が求められています。(y年m月)" style="white-space:nowrap">要出典</span>]]'']</sup>。しかし大学は放置し、論文が出ていることをもって表彰すらしていた。
|琉球大学教授の[[森直樹]]らの研究論文にデータ流用などの不正があった恐れがあるとして、論文が投稿された学術誌から指摘を3月に受け、同大学は4月に調査委を設置。38編の論文について不正があるとの調査結果が発表され、森は8月に一旦懲戒解雇処分となったが、その後の訴訟の結果、和解が成立し解雇処分は無効となった。また、内部調査では不正ではないとされていた琉球大学学長自身が共著として名を連ねていた論文が、外部調査委により不正と認定され、内部調査の在り方へ疑念が広がった<ref name="ishiguro100">沖縄タイムス:琉大論文不正:“ドタバタ劇”に募る不信(2011年6月30日)</ref>。
論文が投稿された学術誌から2010年3月に指摘を受け、同大学は4月に調査委を設置した。38編の論文について不正があるとの調査結果が発表され、[[森直樹 (微生物学者)|教授]]は8月に一旦懲戒解雇処分となった。しかし、その後の訴訟の結果、和解が成立し解雇処分は無効となった。また、内部調査では不正ではないとされていた琉球大学学長自身が共著として名を連ねていた論文が、外部調査委により不正と認定され、内部調査の在り方へ疑念が広がった<ref name="ishiguro100">沖縄タイムス:琉大論文不正:“ドタバタ劇”に募る不信(2011年6月30日)</ref>。
|

撤回された論文が博士号の根拠となっていた元学生については、博士号の取り消しが検討された。琉球大学は2011年1月12日に一部の元学生の博士号取り消しの方針を固め、2011年1月21日に文部科学省に連絡した。文部科学省は、方針を再考するよう琉球大学に促した。琉球大学は、2011年3月に、論文を訂正すれば博士号を取り消さない方針を決定した<ref>{{Cite journal|last=重秋|first=菊地|date=2016-12-01|title=我が国における研究不正(ミスコンダクト)等の概観 : 新聞報道記事から(その7) |url=https://saigaku.repo.nii.ac.jp/records/476 |journal=埼玉学園大学紀要. 人間学部篇|volume=16|pages=131–144|language=ja |CRID=1050001337998345088}}</ref>。

[[11jigen]]は前所属の[[長崎大学]]に別の論文の告発を行い、長崎大学は不正を認定した。解雇処分無効後の琉球大学の再雇用は長崎大学が不正を認定した論文を根拠に行われたので、11jigenは琉球大学はこの教授の再処分ができるはずだと2013年7月26日に主張した<ref name="ikari" />。後に教授は科研費申請資格の停止処分を受けた。
|-
|-
!2011
!2012
|'''[[加藤茂明|東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野]]'''
|'''服部良之'''
|[[獨協医科大学]]
|[[東京大学]]
|2011年の年末から2012年の年初にかけて、[[2ちゃんねる]]の「捏造、不正論文総合スレ4」と「捏造、不正論文総合スレ5」に、[[加藤茂明|東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野]]が発表した20報以上の論文に不正が疑われるデータが掲載されていることが書き込まれた<ref name="tanaka2015">[https://megalodon.jp/2022-0103-1408-13/https://journal.skeptics.jp:443/journal24_tanaka.pdf インターネットにおける論文不正発覚史] [[田中嘉津夫]], Journal of the [[Japan Skeptics]], 24号, 4-9 (2015)</ref><ref name=":3">[http://www.molcom.jp/item_detail/178719/ 特集 不正の構図] 医療タイムス No.2123 pp.7 2013年9月2日 2016年12月6日閲覧</ref>。[[11jigen]]が告発を行った。この研究室は、生命科学の業界では最も多くの公的予算を獲得していた研究室の一つであり、日本分子生物学会で若手を対象とした研究倫理教育をも担当していたため<ref name=":102" />、日本分子生物学会では非常に大きな問題になった<ref name=":12">{{Cite web|和書|url=https://www.mbsj.jp/misc/youbou_20121108.pdf |title=「論文不正問題に関する早急な情報開示の要望書」 |access-date=2022-11-13 |publisher=日本分子生物学会 |date=2012-11-08}}</ref><ref name=":2" /><ref>{{Cite web|和書|title=理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」開催報告 - 日本分子生物学会 |url=https://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/2013forum.html |website=www.mbsj.jp |access-date=2022-10-18 |date=2013-12-03}}</ref>。東大の調査は3年に及び、最終的に33報の不正行為を2014年12月26日に認定した<ref name=":62">{{Cite web|和書|title=論文不正は止められるのか ~始まった防止への取り組み~ |url=https://web.archive.org/web/20190514140437/https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3628/1.html |website=NHK クローズアップ現代+ 2015年3月10日(火)放送 |accessdate=2019-11-19 |last= |publisher=}}</ref>。不正行為の認定にあたって、東大総長は自らをも処分した<ref name=":1">[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_261226_j.html 記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告( 最終 )」の実施について] 平成26年12月26日 2016年12月6日閲覧</ref>。研究室の出身者が異動していた筑波大学や群馬大学でも関連して調査や処分が行われた。この事件は東大史上最悪の不祥事と呼ばれる<ref name="sentaku12953">{{Cite web|和書|title=「ペテン師」だらけの東大医学部 |url=https://www.sentaku.co.jp/articles/view/12953 |website=【公式】三万人のための総合情報誌『選択』- 選択出版 |access-date=2022-10-20 |language=ja |date=2013年8月}}</ref>。
|獨協医科大学教授の服部良之らの研究論文にデータ捏造などの不正があった恐れがあるとして同医大が調査委員会を設置し、4月末、服部を諭旨退職にした<ref name="ishiguro101">読売新聞:論文不正、諭旨退職に…独協医大(2011年6月27日)</ref>。
2024年6月に発刊された生化学誌<ref>{{Cite web |title=公益社団法人 日本生化学会 » Blog Archive » 「生化学」誌96巻3号電子版発刊のご案内 |url=https://www.jbsoc.or.jp/notice/jbs96-3.html |access-date=2024-07-10 |language=ja}}</ref>の紙冊子において、2024年11月の日本生化学会大会で行われる核内受容体のシンポジウムで[[加藤茂明|核内情報研究分野の主催者]]がオーガナイザーを務めることが記載された。一方、日本生化学会大会のホームページ<ref>{{Cite web |title=プログラム - 第97回日本生化学会大会 |url=https://aeplan.jp/jbs2024/program/ |date=2024-04-16 |access-date=2024-07-10 |language=ja}}</ref>ではその記載が伏せられている。
|
|-
|-
!2012年
!2012年
|'''[[藤井善隆]]'''
|'''[[藤井善隆|172本の麻酔論文]]'''
|[[東邦大学]]
|[[東京医科歯科大学]]・[[筑波大学]]・[[東邦大学]]
|東邦大学の准教授で[[日本麻酔科学会]]に所属する医師[[藤井善隆]]が、1991年から2011年に発表した論文212本のうち172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を日本麻酔科学会の調査特別委員会が発表した。藤井は同年2月に東邦大で書いた論文に研究手続き違反があったとして、諭旨免職処分となり、同年8月には日本麻酔科学会も自主的に退会した<ref>[http://www.anesth.or.jp/news2012/20120830.html 元会員の論文捏造に関する理事会声明]</ref>。
|東邦大学の[[藤井善隆|准教授]]が発表した論文212本のうち172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を日本麻酔科学会が2012年に発表した。准教授は同年2月に東邦大学を諭旨免職処分となり、同年8月には日本麻酔科学会も自主的に退会した<ref>[https://web.archive.org/web/20150506125709/http://www.anesth.or.jp/news2012/20120830.html 元会員の論文捏造に関する理事会声明]</ref>。
「[[リトラクション・ウォッチ|リトラクションウォッチ]]」によると、この准教授は、撤回論文数の個人別ランキング<ref name=":22" />で長らく世界1位であった。2023年7月に同じく麻酔科のドイツ人に撤回論文数を抜かれ世界2位となったことがリトラクションウォッチから発表された<ref>{{Cite web |title=The new retraction record holder is a German anesthesiologist, with 184 |url=https://retractionwatch.com/2023/07/12/the-new-retraction-record-holder-is-a-german-anesthesiologist-with-184/ |website=Retraction Watch |date=2023-07-12 |access-date=2023-07-15 |language=en-US |first=Author Adam |last=Marcus}}</ref>。
|前述のアルサブティ事件同様、[[査読]]による[[篩]]の限界が露呈されることとなった。
|-
|-
!2012年
!2012年
|'''[[ムン・ヒンイン]]'''
|'''[[ムン・ヒンイン|大規模な査読偽装]]'''
|[[東亜大学校]]
|[[東亜大学校]]
|韓国、釜山の東亜大学校教授の[[ムン・ヒンイン]]が、科学論文を科学雑誌に投稿した際に、ムン自身が管理できるようにしていた偽名科学者のメールアドレスを、論文の査読者の連絡先として推薦し、自分自身で論文査読し、論文を受理させるという前代未聞の研究不正が発覚し合計35報のムンの論文が撤回された<ref>Josh Fischman, [http://chronicle.com/article/Fake-Peer-Reviews-the-Latest/134784/ "Fake Peer Reviews, the Latest Form of Scientific Fraud, Fool Journals"], ''Chronicle of Higher Education'', 30 September 2012</ref><ref>David Wagner, [http://www.theatlanticwire.com/technology/2012/08/researcher-peer-review-thyself/56163/ "Researcher, Peer Review Thyself"], ''Atlantic Monthly'', 24 August 2012</ref><ref>論文撤回告知: Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry誌 [http://informahealthcare.com/doi/full/10.3109/14756366.2012.712024]</ref><ref>論文撤回告知: International Journal of Food Sciences and Nutrition [http://informahealthcare.com/doi/abs/10.3109/09637486.2012.710054]</ref><ref>論文撤回告知: the Journal of Ethnopharmacology誌 [http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378874105000309]</ref><ref>論文撤回告知: FEBS Letters誌 [http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014579306000068]</ref><ref>論文撤回告知: Phytotherapy Research誌 #1 [http://journals.ohiolink.edu/ejc/article.cgi?issn=0951418x&issue=v20i0008&article=714_reomafhscphf]</ref><ref>論文撤回告知: Phytotherapy Research誌 #2 [http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ptr.2150/abstract]</ref><ref>論文撤回告知: Pharmaceutical Biology誌 #2 [http://informahealthcare.com/doi/abs/10.3109/13880209.2012.712023]</ref><ref>[http://retractionwatch.com/2012/09/17/retraction-count-for-scientist-who-faked-emails-to-do-his-own-peer-review-grows-to-35/#more-9761 Retraction count grows to 35 for scientist who faked emails to do his own peer review] Retraction Watch</ref>。
|韓国、釜山の[[ムン・ヒンイン|東亜大学校教授]]が、論文を科学雑誌に投稿した際に、自身が管理できるようにしていた偽名科学者のメールアドレスを査読者の連絡先として推薦し、自分自身で査読し受理させるという前代未聞の研究不正が発覚した。合計35報の論文が撤回された<ref>[http://retractionwatch.com/2012/09/17/retraction-count-for-scientist-who-faked-emails-to-do-his-own-peer-review-grows-to-35/#more-9761 Retraction count grows to 35 for scientist who faked emails to do his own peer review] Retraction Watch</ref><ref>{{Cite web|和書|title=ヒュンイン・ムン(문형인、Hyung-In Moon)(韓国) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Hyung-In_Moon.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。
|
|-
!2012年3月
|'''岡嶋研二'''<br />'''原田直明'''
|[[名古屋市立大学]]
|名古屋市立大学の調査委員会は、1997年から2011年に発表された名古屋市立大大学院医学研究科教授の[[岡嶋研二]]、准教授の[[原田直明]](二人は熊本大大学院医学薬学研究部に2005年まで在籍)の論文19本に実験画像の捏造や流用などの研究不正があったことを公表した。同大は、不正を主導したとして原田を懲戒解雇処分に、監督責任として岡嶋を停職6カ月の処分とした。熊本大学の調査委員会も同日、上記二人を含む合計4人が、熊大在籍中に論文不正に関与していたと発表した<ref>中日新聞(2012年3月17日):名市大調査委、教授らの論文捏造断定</ref><ref>[http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20120321145744594 中日新聞(2012年3月20日):論文捏造で准教授を解雇 教授を停職6カ月 名市大が懲戒処分]</ref><ref>[http://kumanichi.com/news/local/main/20120319007.shtml 熊本日日新聞(2012年3月19日)元熊大の准教授らを処分 論文捏造で名古屋市大]</ref><ref>時事通信(2012年3月19日):捏造画像で論文投稿=准教授を解雇-名古屋市大</ref><ref>中日新聞(2012年3月20日):名市大論文捏造、准教授を解雇</ref><ref>読売新聞(2012年3月20日):データ捏造の准教授を懲戒解雇…名古屋市立大</ref><ref>毎日新聞(2012年3月20日):論文捏造:名市大准教授、懲戒解雇 老化研究で画像改ざん</ref>。
|
|-
!2012年
|'''[[森口尚史]]'''
|[[東京大学医学部附属病院]]
|東京大学医学部附属病院特任研究員の[[森口尚史]]がiPS細胞を使った世界初の臨床応用として心筋移植手術を6件実施したと発表したが、うち、5件が虚偽であることが発覚し、東京大学医学部附属病院から懲戒免職処分を受けた<ref>[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_250920_j.html 東京大学記者発表:森口尚史氏による研究活動の不正行為に関する調査報告]</ref>。
|
|-
!2013年4月
|'''京都府立医科大学における論文不正事件'''
|[[京都府立医科大学]]
|京都府立医科大学の調査委員会(委員長は、木下茂副学長)は、循環器・腎臓教室の元教授の研究室から発表された14報の基礎研究論文に実験画像の改竄などの研究不正が見つかったとし、同教授に退職金の返還を求めることを発表した<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1103W_R10C13A4CC1000/ 日本経済新聞(2013年4月11日):元教授が14論文で不正 京都府立医大、退職金返還要求へ]</ref><ref>読売新聞(2013年4月12日):元教授の14論文に捏造・改ざん…京都府医大</ref>。一方、同教授は、画像の捏造や改竄については否定し、大学のずさんな調査で事実誤認がなされたと、大学を批判した<ref>[http://www.nikkei.com/article/DGXNZO53883090S3A410C1CC1000/ 日本経済新聞(2013年4月12日):改ざん「絶対にない」 京都府立医大元教授がコメント]</ref><ref>時事通信(2013年4月12日):元教授、論文14本不正=動物の幹細胞移植でも-京都府立医大</ref>。
|
|-
|-
!2013年
!2013年
|'''[[ディオバン事件]]'''
|'''[[ディオバン事件]]'''
|[[京都府立医科大学]]<br />[[東京慈恵会医科大学|慈恵医科大学]]<br />[[滋賀医科大学]]<br />[[千葉大学]]<br />[[名古屋大学]]
|[[京都府立医科大学]][[東京慈恵会医科大学]][[滋賀医科大学]][[千葉大学]][[名古屋大学]]
|バルサルタン(商品名ディオバン)という[[ノバルティスファーマ]]が販売していた降圧剤についての臨床試験の論文が、[[京都府立医科大学]]・[[東京慈恵会医科大学]]・[[千葉大学]]・[[名古屋大学]]・[[滋賀医科大学]]から同時期に別々に発表された。一部の論文はディオバンが他の降圧剤に比べて脳卒中の割合等を大きく下げるというような画期的なデータを含んでいた。桑島巖は当初よりこの論文の内容を憂慮する発言を学会でしていたが<ref>{{Cite web|和書|title=(2)第二部 対談 ─由井芳樹 × 桑島 巖(司会) [特別企画:ディオバン事件 問題点と教訓を考える]|Web医事新報{{!}}日本医事新報社 |url=https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?page=2&id=6027 |website=www.jmedj.co.jp |access-date=2022-10-18 |date=2016-06-18}}</ref>、大きな動きは起こることなく、ディオバンは論文の恩恵を受けたまま1兆円を超える売り上げを上げた。しかしながら、由井芳樹が論文データの統計的な不自然さをLancet誌で指摘したのをを契機として<ref>{{Cite journal|last=Yui|first=Yoshiki|date=2012-04-14|title=Concerns about the Jikei Heart Study|url=https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)60599-6/abstract|journal=The Lancet|volume=379|issue=9824|pages=e48|language=English|doi=10.1016/S0140-6736(12)60599-6|issn=0140-6736|pmid=22500880}}</ref>、5つの大学のいずれの論文にも不正があることが判明し、また、いずれの論文の作成にもノバルティスファーマの社員が関わっているという利益相反の問題が発覚した<ref>{{Cite book|和書|title=偽りの薬 バルサルタン臨床試験疑惑を追う|url=https://www.worldcat.org/oclc/900809554|publisher=毎日新聞社|date=2014.11|isbn=978-4-620-32282-7|oclc=900809554|others=Toshiyasu Kawachi, Kosuke Hatta, 敏康 河内, 浩輔 八田}}</ref><ref>TBS報道特集『相次ぐ論文不正!ある医師の証言・・・データ改ざんの背景を探る』(2013年)</ref>。
|京都府立医科大学教授の[[松原弘明]]らが行った[[高血圧治療薬]](降圧剤)[[バルサルタン]](商品名「[[ディオバン]]」)の臨床研究において、その薬に有利になるようにデータが人為的に操作されていた<ref name="msn2013_1212_1403_09">[http://megalodon.jp/2013-1212-1403-09/sankei.jp.msn.com/science/news/130712/scn13071200400000-n1.htm MSN産経ニュース「降圧剤の臨床データ、人為操作を確認 京都府立医大が謝罪 製薬会社に有利な結果」]</ref>。一例を挙げるとカルテには記載がなかった病気が論文データには作為的に書きこまれており、そうした捏造によって「他の降圧剤に比べ脳疾患や心臓病のリスクが減る」などと虚偽の結論を導きだしていた<ref name="msn2013_1212_1403_09" />。松原は2月に辞職した<ref name="msn2013_1212_1403_09" />。問題が報道され社会問題化してから、京都府立医科大学が正しいデータを使い検証し、この論文に書かれているような結果は得られなかったのでそれを7月に発表し、病院長・[[学長]]・副学長らが報道陣の前で[[謝罪]]した<ref name="msn2013_1212_1403_09" />。この臨床研究には、この薬の販売元の製薬会社である[[ノバルティスファーマ]]の日本法人社員が、その肩書を伏せて研究にかかわっていた<ref name="msn2013_1212_1403_09" />。そしてこの問題の社員は京都府立医科大の臨床研究だけでなく[[東京慈恵会医科大学|慈恵医科大学]]、[[千葉大学]]、[[名古屋大学]]、[[滋賀医科大学]]で行われた臨床研究にも、ノバルティス社所属という身分を隠して参加し、論文作成にも関与していた<ref name="msn2013_1212_1917_10">[http://megalodon.jp/2013-1212-1917-10/sankei.jp.msn.com/affairs/news/130906/crm13090617310006-n1.htm MSN産経ニュース「英医学誌、慈恵医大論文も撤回」]</ref>。イギリスの一流医学誌『[[ランセット]]』は、大学による調査によってデータの操作が明白になったことなどを受けて「研究の信頼性を疑うのに十分だ」とし、以前に同誌に掲載した慈恵医大などが作成した論文などの撤回措置を取ることになった<ref name="msn2013_1212_1917_10" />。
この一連の不正論文によって安価な降圧剤が使われなくなったため、日本の医療費は数百億円~数千億円が無駄になったと言われる。ノバルティスファーマは国庫への返金や還元は行っていない。
|

|-
ノバルティスファーマの社員は厚生労働省から刑事告発を受け、刑事裁判が行われた。社員が改ざんをしたことは認定されたが、告発の対象である[[薬事法]]違反に関しては無罪となった。論文の責任著者たちへの刑事告発は行われていない。
!2013年

|'''東京大学分子細胞生物学研究所における論文不正事件<br />[[加藤茂明]]研究室'''<ref>[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/pdf/20131226_01_frontpage_jp.pdf 「記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における論文不正に関する調査(中間報告)」の実施について」] 東京大学</ref>
千葉大学を除いて論文の責任著者は引責した。千葉大学は、東京大学に異動していた論文の[[小室一成|責任著者]]を処分するよう東大に勧告したが<ref>{{Cite web|和書 |url=https://web.archive.org/web/20161014205043/https://www.chiba-u.ac.jp/others/topics/files/20140715vart_1.pdf |title=臨床研究「VART study」に関する国立大学法人千葉大学 研究活動の不正行為対策委員会最終報告 |access-date=2022-11-07 |publisher=千葉大学 |date=2014-07-15}}</ref>、東大はこの責任著者の処分を行わず<ref>{{Cite web|和書|title=臨床研究「Valsartan Amlodipine Randomized Trial」に関する調査結果概要 |url=https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/p01_270331.html |website=東京大学 |accessdate=2020-11-09 |language=ja}}</ref>、2023年6月13日には教育研究評議会において責任著者に名誉教授の称号を授与することを決定した<ref>{{Cite web|和書|title=令和5年度名誉教授の称号授与 |url=https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/n_z1401_00010.html |website=東京大学 |access-date=2023-07-09 |language=ja}}</ref>。
|[[東京大学分子細胞生物学研究所]]

|東京大学分子細胞生物学研究所における論文不正に関する、科学研究行動規範委員会による調査の中間報告において、1996年〜2011年に発表された51報の論文に科学的な適切性を欠いた画像データの使用がされていたと判断され、合計210カ所の画像の流用、転用、貼り合わせ、不掲載、消去、過度な調整など認められることが発表された。また、そのうち43報には、画像編集ソフトで複数の画像を貼り合わせ一つの画像に見せかけるなどの操作があり、研究不正(改ざん)と判断され、残り8論文は不注意によるものだとされた。また、平成25年12月11日現在で、すでに13報の論文が当事者らにより撤回されている<ref>[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_251226_j.html 記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所旧加藤研究室における論文不正に関する調査(中間報告)」の実施について] 東京大学</ref>。
[[毎日新聞]]の河内敏康と八田浩輔は、この事件についての一連の報道によって日本医学ジャーナリスト協会賞を受賞した。
|この一件で、加藤は東京大学教授を依願退職した。

千葉大学の論文の責任著者が出した別の基礎研究の論文についても、[[11jigen]]によって告発が行われた<ref name="gendai">[https://gendai.media/articles/-/36074 〈クスリの闇第4弾!〉「疑惑の降圧剤バルサルタン」&「保険診療費」に群がった学者を直撃] FRIDAY 講談社 2013年6月14日号 2016年12月6日閲覧</ref><ref>{{Cite web |title=Suspicions Raised About Another Japanese Cardiovascular Researcher |url=https://www.forbes.com/sites/larryhusten/2013/05/10/suspicions-raised-about-another-japanese-cardiovascular-researcher/ |website=Forbes |access-date=2022-11-22 |language=en |first=Larry |last=Husten |date=2013-05-10}}</ref>。
|-
|-
!2014年
!2014年
|'''学長による報復懲戒解雇疑惑'''
|'''[[柳澤純]]研究室'''<ref>[http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140331/k10013398881000.html 「筑波大 3論文で画像「改ざん」」] 日本放送協会 2014年3月31日</ref>
|[[岡山大学]]
|[[筑波大学]]生命環境系<br />[[国立環境研究所]]
|2014年2月10日、[[岡山大学病院]]に勤務する教授らが執筆者となっている2006年発表の[[ステロイドホルモン]]に関する論文についての不正を、同大学医歯薬学総合研究科の教授2人が学内の調査委員会に告発したことが[[週刊ポスト]]に掲載された<ref>{{Cite web|和書|title=製薬会社と医学部の癒着 現役国立大学教授が実名で現状告発 |url=https://www.news-postseven.com/archives/20140210_240621.html?DETAIL |website=NEWSポストセブン |access-date=2022-11-12 |language=ja |date=2014-02-10}}</ref>。この論文には当時の岡山大学長が関わっていた。調査委は実際に切り貼りがあったと確認したにもかかわらず、本来必要となるデータと照合しないまま不正なしと判断し、文部科学省のガイドラインに則して調査結果は公表しなかったことが、[[2016年]][[1月4日]]付の毎日新聞の報道で発覚した<ref>[https://mainichi.jp/articles/20160103/k00/00e/040/086000c 論文不正 告発に生データ見ず「適正」 岡山大調査委] 毎日新聞 2016年1月4日</ref>。そして、告発をした2名の教授は懲戒解雇の処分をされた<ref>{{Cite web|和書|title=炎上岡山大学~研究不正疑義申し立てた教授が解雇される(榎木英介) - Yahoo!ニュース|url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/60826bb2c31461438058bb0050366149c1750e45|website=Yahoo!ニュース 個人|accessdate=2020-11-06|language=ja}}</ref>。解雇は「論文不正があった」と記者に情報提供を行うなど大学の名誉や信用を傷つけた点や部下の教員にハラスメントを行ったとして、停職9か月の懲戒処分にするなどの点から大学教授に必要な適性を欠いていることから解雇となった。なお本件は裁判となったが、裁判所は大学側の訴えを認め、解雇された教授2人の地位保全は棄却しており、法的には「報復」と断定できない。
|2012年に論文の不正が指摘され、大学が調査委員会を設置。論文に用いられていた4つの画像に改ざんが発見された<ref>[http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/051b1c863be2c942ffc5bfad6d7b84ce.pdf 「本学生命環境系教授及び元講師論文に関する調査結果について」] 国立大学法人筑波大学 2014年3月31日</ref>。
文部科学省のガイドラインでは、論文に不正がなかったと判断した場合は調査結果の公表はしないと定められており、大学側はそれに沿っての対応であった。この点は調査が所属機関に有利になるよう進められる、あるいは、杜撰な調査で不正が見逃されるなどしたとしても外部からの検証が困難になる問題点が指摘された<ref>[https://mainichi.jp/articles/20160103/k00/00e/040/088000c 岡山大論文 「シロ」判定 文科省指針では公表不要] 毎日新聞 2016年1月4日</ref>。
|この一件で、柳澤純は筑波大学教授を依願退職した。村山明子は筑波大学講師を辞職。立石幸代は国立環境研究所を雇い止め(事実上の解雇)。後に柳澤純は停職6月相当、村山明子は諭旨解雇相当、国立環境研究所は頬被りし立石幸代を処分しなかった<ref>[http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/p201407221600p.pdf 「本学元教員の研究不正に関する処分の検討結果について 」] [http://www.webcitation.org/6UCsdozX6 (写し)]筑波大学 2014年7月22日</ref><ref>[http://www.tsukuba.ac.jp/wp-content/uploads/af444edae7f265802fb47e3e26143939.pdf 「本学生命環境系教授及び元講師論文に関する調査報告書」] [http://www.webcitation.org/6UCskd5g5 (写し)]筑波大学 2014年3月31日</ref>。

岡山大学は、2023年の別件の論文不正疑惑では被疑者の不正を認定し、懲戒解雇にしたため<ref name="NCVC_20230324">{{Cite web|和書|url=https://www.ncvc.go.jp/topics/topics_37208/ |title=研究所元職員による研究活動上の特定不正行為及び倫理指針不適合について |date=2023-03-24 |publisher=国立循環器病研究センター |archiveurl=https://web.archive.org/web/20230416190222/https://www.ncvc.go.jp/topics/topics_37208/ |archivedate=2023-04-16 |accessdate=2023-04-16}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rsk/396034 |title=岡山大学・神谷厚範教授 がんの論文で捏造113か所 実験に使われたマウスは13分の1以下 |website=TBS・JNN NEWS DIG |publisher=RSK山陽放送 |date=2023-03-24 |accessdate=2023-03-30 |archiveurl= |archivedate= }}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/ASR3S6D24R3SPLBJ00D.html |title=岡山大教授が論文で捏造113カ所 調査に「データは地震で壊れた」 |website=朝日新聞デジタル |publisher=朝日新聞社 |date=2023-03-24 |accessdate=2023-03-30 |archiveurl= |archivedate= }}</ref><ref>{{Cite news |url=https://www.sankei.com/article/20230417-S3DH24JMENLATIPMH3BHHRPT64/ |title=論文捏造で教授懲戒解雇 岡山大、本人弁明せず |newspaper=産経新聞 |date=2023-04-17 |accessdate=2023-04-17}}</ref>、研究不正を認定しない大学というわけではない。
|-
|-
!2014年
!2014年
|'''[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP細胞]]事件'''
|'''[[小保方晴子]]博士論文盗用剽窃事件([[早稲田大学博士論文不正問題]])'''
|[[理化学研究所]]・[[ハーバード大学]]・[[東京女子医科大学]]
|[[早稲田大学]]
|2014年1月末に[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP研究]]が発表され、論文の筆頭著者は一夜にして時代の寵児になった。しかしながら、数週間後には様々な論文不正の疑義が発覚し、[[11jigen]]が決定的な不正の証拠を3月9日に指摘し、騒動の末、論文は撤回された。この騒動はメディアで極めて盛んに取り上げられ<ref>[https://s3-us-west-2.amazonaws.com/jnpc-prd-public-oregon/files/2014/11/jnpc-b-201411.pdf 座談会「最先端研究どう伝える STAP報道の現場から」(PDF 4.5MB)] 日本記者クラブ会報 2014年11月10日第537号</ref>、理化学研究所に関連する法案の提出延期や理化学研究所のセンターが解体される事態にまで発展した。NHKスペシャル「[[調査報告 STAP細胞 不正の深層]]」が放送された直後の8月5日に、筆頭著者を指導した論文の[[笹井芳樹|共著者の一人]]は[[自殺]]を遂げた。
|[[小保方晴子]]が[[2011年]]3月に学位取得した博士論文<ref name="obokata201103">{{Cite web
毎日新聞の須田桃子はこの事件の取材過程を記した書籍<ref>{{Cite book|和書|title=捏造の科学者 STAP細胞事件|url=https://www.worldcat.org/oclc/915457148|date=2014|location=Tōkyō|isbn=978-4-16-390191-6|oclc=915457148|first=Momoko|last=Suda|last2=須田桃子|publisher=文藝春秋}}</ref>を出版し、[[大宅壮一ノンフィクション賞]]と[[科学ジャーナリスト賞|科学ジャーナリスト大賞]]を受賞した。筆頭著者は書籍「[[あの日]]」を出版し、自身の不正を否定した。自殺をした共著者の妻である未亡人は、STAP細胞が本当はあるというのであれば筆頭著者は小説を書く前に実験をしてほしいと述べた<ref>{{Cite web|和書|title=(2ページ目)「STAP細胞はありましたか」小保方女史へ笹井未亡人からの代表質問 |url=https://www.dailyshincho.jp/article/2019/01140556/ |website=デイリー新潮 |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。
|last = 小保方|first = 晴子|date = 2011-03|url = http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/36341/1/Gaiyo-5627.pdf|title = 三胚葉由来組織に共通した万能性体性幹細胞の探索|format = PDF|publisher = 早稲田大学大学院 先端理工学研究科|date = 2010-12|accessdate = 2014-01-30}}</ref>について、約20ページ分の文章が<ref name=Dcopy>[http://stapcells.up.seesaa.net/image/Background.pdf Isolation of pluripotent adult stem cells discovered from tissues derived from all three germ layers]</ref>、幹細胞に関する一般向けウェブサイト<ref>{{Cite web|date=2009-04-21
|url=http://stemcells.nih.gov/info/basics/pages/basics1.aspx|title=Stem Cell Basics
|work=Stem Cell Information|publisher=[[アメリカ国立衛生研究所|National Institutes of Health]]|language=[[英語]]|accessdate = 2014-03-11}}</ref>からの[[コピー・アンド・ペースト]]であること<ref>{{Cite web|date = 2014-03-11|url = http://www.asahi.com/articles/ASG3C72D1G3CULZU00Q.html|title = 小保方さん博士論文、20ページ酷似 米サイトの文章と|work = [[朝日新聞デジタル]]|publisher = [[朝日新聞社]]|accessdate = 2014-03-11}}</ref><ref>{{Cite web|author = 根本毅・吉田卓矢|date = 2014-03-12|url = http://mainichi.jp/select/news/20140312k0000m040149000c.html|title = STAP細胞:小保方さん博士論文 米文書と同一記述|work = [[毎日jp|毎日新聞]]|publisher = [[毎日新聞社]]|accessdate = 2014-03-12}}</ref><ref name="chunichi20140312">{{Cite web|date = 2014-03-12|url = http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140312063300954/|title = 小保方氏の博士論文 20ページが米研究所文書と酷似|work = [[中日新聞|中日メディカルサイト]]|publisher = [[中日新聞社]]|accessdate = 2014-03-12
}}</ref>、論文の画像がバイオ系企業ウェブサイトの画像<ref>{{Cite web|url = http://www.primarycell.com/hanbai/kan_saibokit.html|title = 細胞製造・販売事業|publisher = [[コスモ・バイオ|コスモ・バイオプライマリーセル事業部]]|accessdate = 2014-03-13}}</ref>に酷似していること<ref>{{Cite web|author = [[共同通信社|共同通信]]|date = 2014-03-13|url =http://www.47news.jp/CN/201403/CN2014031301001383.html|title = 博士論文画像もコピーか STAP細胞の小保方氏|work = [[47NEWS]]|publisher = [[全国新聞ネット]]|language = [[日本語]]|accessdate = 2014-03-13}}</ref><ref name="jiji20140313">{{Cite web|date = 2014-03-13|url = http://www.jiji.com/jc/zc?k=201403/2014031300906|title = 博士論文、他にも流用か=企業HPと画像酷似、STAP小保方氏|work = [[時事ドットコム]]|publisher = [[時事通信社]]|accessdate = 2014-03-13}}</ref><ref name="sankei20140313">{{Cite web|date = 2014-03-13|url = http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140313/wlf14031312200010-n1.htm|title = 博士論文画像もコピー? ネット上で指摘|work = [[msn産経ニュース]]|publisher = [[産経デジタル]]|accessdate = 2014-03-13}}</ref>{{refnest|group="注"|コスモ・バイオの担当者は、画像は自社で[[2007年]]6月に撮影したもので、小保方に提供したことはないことを証言した<ref name="sankei20140313" />。一方、小保方が博士論文を提出したのが[[2011年]]2月であったため<ref name=Dcopy />、小保方がコスモ・バイオのウェブサイトから画像をコピーしたのではないかと指摘された。}}、参考文献リストを別の論文からコピー・アンド・ペーストしたため意味不明な内容になっている、などが指摘された<ref>{{Cite web|author=浅井文和|date=2014-03-12|url=http://www.asahi.com/articles/ASG3D32NBG3DULBJ002.html|title=小保方さんの博士論文、参考文献リストもコピペか|work=[[朝日新聞デジタル]]|publisher=[[朝日新聞社]]|accessdate=2014-03-12}}</ref>。


11jigenはこの事件における自身の活動の反響の大きさに戸惑い、引退を検討していることを[[読売新聞]]で表明した<ref name="taimen">読売新聞朝刊 2014年4月2日</ref>。
また、副査である外部審査委員が論文を読んでないこと{{refnest|group="注"|論文の副査を務めたはずの[[チャールズ・バカンティ]]は、「博士論文を見せられたことも読むように頼まれたこともない」と取材に答えた<ref name=nature_20140312/>。}}も報道されており、審査過程にも疑問があがっている<ref name=nature_20140312>{{Cite news|url=http://www.nature.com/news/stem-cell-method-faces-fresh-questions-1.14895|title=Stem-cell method faces fresh questions|author=David Cyranoski|date=2014-03-18|accessdate=2014-06-29}}</ref>。これらの指摘を受けて大学院先進理工学研究科は予備調査を進め、[[3月17日]]に調査委員設置を大学に要請。[[3月31日]]には調査委員会が設置され、処分を検討することになった<ref name="chunichi20140312" /><ref>{{Cite news|date = 2014-03-26|url = http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014032600400|title = 早大が本格調査へ=小保方氏の博士論文|newspaper = 時事ドットコム|publisher = [[時事通信社]]|accessdate = 2014-03-26}}</ref><ref>{{Cite web|title=早稲田大学大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会の設置について|author=早稲田大学|date=2014-03-28|url=http://www.waseda.jp/jp/news13/140328_committee.html|accessdate=2014-06-30}}</ref>。
<!-- 事件の内容と補記の境界 -->
|本件は[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP研究]]の不正疑惑に伴い発覚しており、博士論文に関連した論文<ref>{{Cite journal|author = H. Obokata, et al.|title = The potential of stem cells in adult tissues representative of the three germ layers|journal = Tissue Engineering Part A|volume = 17|number = 5-6|month = [[3月|March]]|year = [[2011年|2011]]|pages = 607-615|url= http://dx.doi.org/10.1089/ten.TEA.2010.0385 }}{{en}}</ref>においても、[[遺伝子]]の解析結果を示す画像を不適切に使い回していることが発覚<ref name="yomiuri20140319">{{Cite web|date = 2014-03-19|url = http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20140319-OYT1T00449.htm|title = 小保方さん筆頭著者論文、米大教授が訂正|work = [[YOMIURI ONLINE]]|publisher = [[読売新聞グループ本社]]||accessdate = 2014-03-19}}</ref><ref name="asahi20140319">{{Cite web|date = 2014-03-19|url = http://www.asahi.com/articles/ASG3M3C38G3MPLBJ001.html|title = 小保方氏の留学中の論文、画像使い回しか 共著者が訂正|work = [[朝日新聞デジタル]]|publisher = [[朝日新聞社]]||accessdate = 2014-03-19}}</ref><ref name="suda20140319">{{Cite news|author = 須田桃子|date = 2014-03-19|url = http://mainichi.jp/select/news/20140319k0000e040186000c.html|title = 論文:STAP以外でも訂正…小保方さんら研究チーム|newspaper = [[毎日jp|毎日新聞]]|publisher = [[毎日新聞社]]|accessdate = 2014-03-19}}</ref>。[[2014年]]3月に共著者の[[チャールズ・バカンティ]]は、実験データを示す複数の画像や画像の説明内容を訂正している<ref name="yomiuri20140319"/><ref name="asahi20140319"/><ref name="suda20140319"/><ref>{{Cite news|url = http://www.47news.jp/CN/201403/CN2014031901001020.html|title = 小保方氏の論文、共著者が訂正 11年に専門誌に発表|newspaper = 47News|agency = [[共同通信社]]|date = 2014-03-19|accessdate = 2014-03-19}}</ref><ref>{{Cite journal|author = C. A. Vacanti et al.|title = Erratum: The Potential of Stem Cells in Adult Tissues Representative of the Three Germ Layers|journal = Tissue Engineering Part A|month=[[3月|March]]|year=[[2014年|2014]]|url= http://dx.doi.org/10.1089/ten.TEA.2014.0122 }}</ref>。
|-
|-
!2014年
!2014年
|'''[[早稲田大学理工学術院|先進理工学研究科]]博士論文における盗用剽窃事件([[早稲田大学博士論文不正問題]])'''
|'''[[早稲田大学博士論文不正問題]]'''
|[[早稲田大学]]
|[[早稲田大学]]
|小保方が所属していた研究室を中心に、他の学生の博士論文においても盗用剽窃が発した。このため[[早稲田大学]]は、[[早稲田大学理工学術院|先進理工学研究科]]280本の博士論文調査することになった<ref>{{Cite news|date = 2014-04-07|url = http://www.asahi.com/articles/ASG4735VTG47ULBJ004.html|title = 早稲田大、博士論文280本を調査 不正の疑い指摘受け|author = 合田禄|newspaper = [[朝日新聞]]}}</ref>。
|STAP事件の騒動の最中、[[小保方晴子|STAP細胞論文の筆頭著者]]の早稲田大学博士論文の背景の数十ページ海外の公的文書のほぼ完全な剽窃であることを[[11jigen]]が2014年3月11日に見つけた。これを契機として、11jigenは早稲田大学先進理工学研究科のの多数の学生の博士論文においても同様に大量の盗用剽窃が行われていることを2014年3月中にした。このため[[早稲田大学]]は、[[早稲田大学理工学術院|先進理工学研究科]]280本の博士論文調査を行った<ref>{{Cite news|date=2014-04-07|url=http://www.asahi.com/articles/ASG4735VTG47ULBJ004.html|title=早稲田大、博士論文280本を調査 不正の疑い指摘受け|author=合田禄|newspaper=[[朝日新聞]]|access-date=2022年3月7日|archive-date=2014年5月1日|archive-url=https://web.archive.org/web/20140501063251/http://www.asahi.com/articles/ASG4735VTG47ULBJ004.html}}</ref>。早稲田大学は、62件の学位論文を訂正したが、STAP細胞論文の筆頭著者以外の学位の取り消しは行わなかったことを発表した<ref name="waseda62">[https://archive.is/EUz0f 博士学位論文の訂正について] 早稲田大学先進理工学部 2017年3月27日 2017年9月29日閲覧</ref>。
|
|-
|-
!2014
!2015
|'''[[匿名Aによる論文大量不正疑義事件]]'''
|'''[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP]]研究不正事件'''<br />([[小保方晴子]]、他)
|[[札幌医科大学]]・[[東北大学]]・[[東京慈恵会医科大学]]・[[東京大学]]・[[東京医科歯科大学]]・[[慶應義塾大学]]・[[日本大学]]・[[金沢大学]]・[[名古屋大学]]・[[京都大学]]・[[京都府立医科大学]]・[[大阪大学]]・[[大阪医科薬科大学|大阪医科大学]]・[[近畿大学]]・[[関西医科大学]]・[[徳島大学]]・[[九州大学]]・[[杏林大学]]・[[立命館大学]]・[[広島大学]]・[[長崎国際大学]]・[[宮城県立病院機構]]宮城県立がんセンター・[[国立感染症研究所]]・[[国立病院機構京都医療センター]]・[[理化学研究所]]
|[[理化学研究所]]
|日本全国の様々な研究機関から発表された約80本の[[医学]]系の論文において、不正な人為的加工や流用などが疑われる画像データが掲載されていることが、2013年の[[日本分子生物学会]]年会のために開設された[[ウェブサイト]]「日本の科学を考える」の「捏造問題にもっと怒りを」というトピック<ref name="ikari">[https://archive.md/VD4Cn 捏造問題にもっと怒りを] 日本の科学を考える 2016年12月6日閲覧。メンデルについての記述は、近藤滋の2013年7月30日のコメントにある。</ref>のコメント欄に、「匿名A」を名乗る人物によって、2014年12月30日から2015年1月3日の間に相次いで指摘された。2015年1月6日には同様の趣旨の匿名告発が[[文部科学省]]に対して文書で行われた。
|[[2014年]]1月末に[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP研究]]が発表されたが、様々な論文不正の疑義から6月に論文は撤回され<ref name=mainichi0604>{{Cite news|title=STAP細胞:研究白紙に、主論文撤回 小保方氏が同意|newspaper=[[毎日新聞]] |date=2014-06-04|url=http://mainichi.jp/select/news/20140604k0000e040197000c.html |accessdate=2014-06-04}}</ref><ref>{{Cite news|title=Genetic tests suggest STAP stem cells ‘never existed’|date=2014-06-03|newspaper=NATURE NEWS BLOG|url=http://blogs.nature.com/news/2014/06/genetic-tests-suggest-stap-stem-cells-never-existed.html|accessdate=2014-06-07}}{{en icon}}</ref><ref name=naturelastremaining>{{Cite news|title=Last remaining support for controversial stem-cell papers collapses|date=2014-06-04|newspaper=NATURE NEWS BLOG|url=http://blogs.nature.com/news/2014/06/last-remaining-support-for-controversial-stem-cell-papers-collapses.html|accessdate=2014-06-07}}{{en icon}}</ref><ref name=20140604p2g00m0dm070000c>{{Cite news|title=STAP cell research to fall apart as authors consent to retraction|date=2014-06-04|newspaper=Mainichi Japan|url=http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20140604p2g00m0dm070000c.html|accessdate=2014-06-07}}{{en icon}}</ref>、[[7月2日]]には[[ネイチャー]]により取り下げられた<ref name=natureeditional20140702>{{Cite news|newspaper=NATURE EDITORIAL Sharing|title=STAP retracted - Two retractions highlight long-standing issues of trust and sloppiness that must be addressed|date=2014-07-02|url=http://www.nature.com/news/stap-retracted-1.15488|accessdate=2014-07-03}}</ref><ref name=jiji20140702>{{Cite news|title=共著者ら「深くおわび」=STAP論文撤回で|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2014070200928|date=2014-07-02|newspaper=|時事通信社|accessdate=2014-07-02}}</ref>。
2015年1月9日から報道が始まり、STAP事件よりはるかにスキャンダラスかつ重大な事件に発展する可能性も言及された<ref name=":14">[http://www.mag2.com/p/news/4412 【超STAP事件】日本の学会は捏造論文だらけ!大スキャンダルに発展か] 「むしマガ」Vol.272 2015年1月11日</ref>。衆議院でも議論が行われた<ref name=":11">[https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/023318920150519003.htm 第189回国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号] 衆議院 2015年5月19日 2022年11月20日閲覧. </ref>。
<!--<ref name=nekei20140630>{{Cite news|title=STAP論文、ネイチャーが撤回 週内にも 理研、再現実験は継続|date=2014-06-30|newspaper=日本経済新聞 電子版|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG29004_Z20C14A6MM8000/?dg=1|accessdate=2014-06-30}}</ref><ref name=mainichi20140630>{{Cite news|title=STAP細胞:ネイチャーが論文撤回へ 研究成果白紙に|date=2014-06-30|newspaper=毎日新聞|author=八田浩輔、須田桃子|url=http://mainichi.jp/select/news/m20140630k0000e040147000c.html|accessdate=2014-06-30}}</ref>。-->

最も多い28本の疑義が指摘された大阪大学は、責任著者が別の論文捏造事件で懲戒解雇された1本の論文を除く27本について予備調査を行い、1本については疑義を否定し、7本については不注意による誤使用と判断し、残りの19本については「データが残っていないため不正の事実が確認できず、これ以上の調査は困難」として調査を打ち切った<ref>{{Cite web|和書|title=すっきりしないけど、阪大疑惑論文の調査打ち切り |url=https://archive.ph/QraW1 |website=archive.ph |access-date=2022-11-14 |publisher=産経新聞}}</ref>。12本の疑義が指摘された東京大学は、予備調査の結果、全ての論文について不正行為が存在する疑いはないと発表した<ref name="tokyo20150731">[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_270731_01_j.html インターネット上で指摘のあった論文の画像データに係る調査結果について] 東京大学 2015年7月31日</ref>。

参議院議員の[[櫻井充]]は、参議院議長への[[質問主意書]]において、東京大学は調査の内容を全く明らかにしていないと指摘した。また、調査責任者は被告発者と親しい医学部の研究者が務めたという情報を明らかにした<ref name="sakurai20161012">[https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/192/meisai/m192008.htm 東京大学の研究不正の調査のあり方に関する質問主意書] 参議院 2016年10月12日</ref>。


「匿名A」は研究不正に関する匿名掲示板で以前から知られた存在だった<ref name=":14" /><ref name="ikari" />。[[11jigen]]が過去に告発してきた論文の少なくとも一部は、匿名Aがオリジナルの疑義の指摘を匿名掲示板で行ったものと推測される<ref>{{Cite web|和書|title=https://twitter.com/lemonstoism/status/553562288804753408 |url=https://twitter.com/lemonstoism/status/553562288804753408 |website=Twitter |access-date=2022-11-22 |language=ja |date=2015-01-09 |quote=そういえば近年の研究不正のオリジナルの指摘は匿名A氏が多い。2013年のバルサルタン事件の頃に2chのスレがネオになってから、ほとんど匿名A氏が指摘している。 |publisher=世界変動展望}}</ref>{{要出典|date=2022年11月|title=}}。
[[理化学研究所]]の調査により、5月に[[小保方晴子]]による画像2点の不正、及び[[笹井芳樹]]と[[若山照彦]]の監督責任が確定し、懲戒委員会で処分が検討されていた。しかし調査委員会の解散後も論文不正以外の実験への疑惑が生じ、各種遺伝子解析からES細胞やTS細胞による捏造の疑いが強まっていた{{Sfn|日経サイエンス号外|2014}}{{Sfn|古田彩|詫摩雅子|2014d}}{{refnest|group="注"|現在も科学的に否定されている状態であり<ref name=nikkei20140624>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG2200H_T20C14A6TJM000/?dg=1 |title=STAP、「正体はES細胞」見方強まる(Q&A)|newspaper=[[日本経済新聞]] |date=2014-06-24 |accessdate=2014-06-24}}</ref><ref name=sankei20140616>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140616/wlf14061620400028-n1.htm |title=「〝できる〟と言うのは小保方氏1人」 若山教授会見|newspaper=[[産経新聞]] |date=2014-06-16 |accessdate=2014-06-16}}</ref>、STAP細胞がないと言い切ることはできないがその存在を証明する証拠がない状態が続いている<ref name=nature20140623>{{Cite news|url=http://www.nature.com/news/gene-tests-suggest-acid-bath-stem-cells-never-existed-1.15425|title=Gene tests suggest acid-bath stem cells never existed Cells purportedly made with 'STAP' method came from the wrong mice, tests show|author=David Cyranoski|newspaper=NATURE BREAKING NEWS|date=2014-06-17|id={{DOI|10.1038/nature.2014.15425}}|accessdate=2014-06-22}}{{en icon}}</ref><ref name=asahi_takeichi>{{Cite news|url=http://www.asahi.com/articles/ASG6M4G9YG6MUGTB00F.html?iref=com_alist_6_01|newspaper=朝日新聞|title=STAP有無「結論まだ早い」理研再生研の竹市氏|date=2014-06-16|accessdate=2014-06-20}}</ref><ref name=hakushin01>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG19012_Z10C14A6PE8000/?dg=1 |title=誰も あると思ってない 幻のSTAP(ルポ迫真) |newspaper=[[日本経済新聞]] |date=2014-06-23 |accessdate=2014-06-23}}</ref><ref name=nikkei20140624/><ref name=sankei20140616/>。}}。


「匿名A」は、[[大阪大学医学部]]は疑惑の画像が見つかる確率が他と比較して異常に高かったと主張した<ref name=":14" />。
小保方逮捕の可能性も報道されていた中<ref>{{Cite news|title=理研小保方晴子氏に詐欺容疑での逮捕・立件も?|url=http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20140625_12|date=2014-06-25|newspaper=さくらフィナンシャルニュース|accessdate=2014-06-25}}</ref><ref>{{Cite news|title=逮捕の可能性が取りざたされる小保方晴子氏と理研に長期の法廷闘争を回避させる日本的な背景|url=http://www.sakurafinancialnews.com/news/9999/20140628_6|date=2014-06-28|newspaper=さくらフィナンシャルニュース|accessdate=2014-06-28}}</ref><ref>{{Cite news|title=小保方晴子氏の逮捕情報が巷に|url= http://news.livedoor.com/article/detail/8973637/|date=2014-06-25|newspaper=Livedoorニュース|accessdate=2014-06-25}}</ref>、理化学研究所は[[6月30日]]には科学的な疑義に対する予備調査を開始。合わせて[[7月1日]]から検証実験へ小保方を参加させることになり、現在は処分の検討が停止している<ref>{{Cite press release|date=2014-06-30|publisher=独立行政法人理化学研究所|title=STAP細胞に関する問題に対する理研の対応について|url=http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20140630_1/|accessdate=2014-06-30}}</ref>。最中、8月5日に[[笹井芳樹]]が自殺をした<ref>[http://www.asahi.com/articles/ASG853DJ9G85PIHB005.html 「理研の笹井芳樹氏が自殺 先端医療センター関連施設内」]朝日新聞2014年8月5日</ref>。
<!--
事件の内容と補記の境界
-->
|この騒動は多くのメディアで盛んに取り上げられるとともに<ref name=tachibana201406>{{Cite journal|和書|author=[[立花隆]]|title=日本再生・三十八 疑惑の細胞のこと|journal=[[文藝春秋]]|volume=92|number=7|pages=77-79|date=2014-06}}</ref>、法案提出延期や、センター解体が提言される事態にも発展<ref name=hayashi20140608>{{Cite news|title=「解体提言は不当」理研再生研幹部研究員・林氏に聞く|author=岩崎昂志|url=http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201406/0007062656.shtml|date=2014-06-18|newpaper=神戸新聞|accessdate=2014-06-18}}</ref>し、行政や政治家も関係する事件となった<ref name=hakushin03>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGKDZO73278070V20C14A6EA1000/|title=幻のSTAP(3) まな板の上の鯉|date=2014-06-25|newspaper=日本経済新聞|accessdate=2014-06-25}}</ref>。また、ネットの集合知や内部告発による不正の解明も話題になり{{Sfn|中山敬一|2014}}<ref name=hakushin05>{{Cite news|url=http://www.nikkei.com/article/DGKDZO73394820X20C14A6EA1000/|title=幻のSTAP(5) 集合知の審判|newspaper=日本経済新聞|date=2014-06-27}}</ref><ref>{{Cite news|title=嘘とポエムと内部告発|author=小野昌弘|2014-06-8|newspaper=Yahoo News|url=http://bylines.news.yahoo.co.jp/onomasahiro/20140608-00036149/}}{{ja icon}}</ref>、研究者倫理や科学界のあり方にも課題を投げかけている{{Sfn|中山敬一|2014}}{{Sfn|佐倉統|片瀬久美子|八代嘉美|2014}}<ref name=tahara_maru>{{Cite news|title=STAP騒動…日本の科学はダメなのか?|newspaper=東洋経済オンライン|date=2014-06-30|url=http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140630-00041333-toyo-nb|accessdate=2014-06-30}}</ref>。現在では[[ヘンドリック・シェーン|シェーン事件]]や[[黄禹錫|ファン・ウソク事件]]と共に'''世界三大研究不正の一つ'''とみなされつつある{{refnest|group="注"|出典は<ref name=huffingtonpost20140614>{{Cite news|url =http://www.huffingtonpost.jp/2014/06/14/stap-cells-text_n_5494275.html|title=STAP細胞論文、世界一の不正で「教科書に載る」可能性もこれからの日本の論文にも影響|newspaper=ハフポスト|publisher=[[朝日新聞社]]|date=2014-06-14|accessdate=2014-06-14}}</ref><ref name=nikkeibp0613>{{Cite news |url=http://www.nikkeibp.co.jp/article/news/20140613/402566/|title=STAP論文を「世界三大研究不正」の1つに認定|newspaper=日経BPネット |date=2014-06-13|accessdate=2014-06-13}}</ref><ref name=yahoo0614>{{Cite news |url=http://bylines.news.yahoo.co.jp/dandoyasuharu/20140614-00036372/|title=STAP細胞が『世界3大研究不正』とされた衝撃|newspaper=Yahooニュース|date=2014-06-14|accessdate=2014-06-14}}</ref><ref name=neclassic0615>{{Cite news |url=http://newclassic.jp/15604|title=科学界の「世界の三大不正」とは?小保方晴子氏問題、「シェーン事件以上」との指摘も|newspaper=newclassic|date=2014-06-15|accessdate=2014-06-15}}</ref><ref name=deutchewelle20140606>{{Cite news |url=http://www.dw.de/from-stem-cells-to-physics-fraudulent-science-results-are-plenty-but-hard-to-find/a-17687505|title=From stem cells to physics fraudulent science results are plenty but hard to find |newspaper=Deutsche Welle |date=2014-06-06|accessdate=2014-06-06}}</ref><ref name=bioedge20140406>{{Cite news |url=http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10920|title=Stem cell debacle deja vu |newspaper=Bio Edge|date=2014-04-06|accessdate=2014-04-06}}</ref>を参照。加えて、小保方自身の学生時代からの不正の数々、関係者の人数や疑惑の数々、国政や社会への影響、事後対応のまずさや隠蔽の疑い等、その事件の規模から'''世界最大の研究不正事件'''と目されている<ref name=huffingtonpost20140614/><ref name=neclassic0615/>}}。
|-
|-
!2015年
!2015年
|'''論文不正指摘問題'''
|'''セラノス事件'''
|[[セラノス|セラノス社]]
|[[東京大学]]・[[大阪大学]]など
|スタンフォード大学を中退した19歳の女性が2003年にベンチャー企業をシリコンバレーに設立した。自社で開発した小型診断器により1滴の血液で200種類の病気の診断が安価にできると主張し、会社の時価総額は一時期1兆円を超えた。しかし、2015年に社員による内部告発が[[ウォール・ストリート・ジャーナル|Wall Street Journal]]に掲載され、血液検査に信憑性がないことが明らかとなった<ref>{{Cite book|和書|title=BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相|url=https://www.worldcat.org/oclc/1243300383|isbn=978-4-08-786126-6|oclc=1243300383|others=Miwa Seki, Yuko Sakurai, John Carreyrou, 美和 関, 祐子 櫻井|publisher=集英社}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=企業:血液検査(Blood tests):セラノス社(Theranos)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Blood_Theranos.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。2018年に会社は解散し、社長および社長と恋人関係にあった幹部は起訴された。社長は禁固11年の判決を受けた。
|東京大学や大阪大学の研究グループが発表した生命科学系の論文のうち約80本について、人為的な加工や剽窃などが疑われる画像が掲載されていることが相次いでインターネット上で指摘された<ref>[http://www.sankei.com/west/news/150109/wst1501090044-n1.html ネットで論文画像の「類似」、「匿名A」が指摘 東大や阪大などの生命科学系約80本] 産経新聞 2015年1月9日</ref>。これを受け大阪大学のほか、[[九州大学]]が論文の予備調査を開始<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20150203k0000m040098000c.html 阪大:「ネットで不正指摘」…関連論文の予備調査を開始] 毎日新聞 2015年2月3日</ref><ref>[http://www.sankei.com/west/news/150206/wst1502060054-n1.html 不正の疑いで論文7本を予備調査 九州大] 産経新聞 2015年2月6日</ref>。このうち大阪大学は2015年[[4月8日]]までに、「データが残っていないため不正の事実が確認できず、これ以上の調査は困難」として調査を打ち切った<ref>[http://mainichi.jp/select/news/20150409k0000m040063000c.html 大阪大:論文疑惑 予備調査27本の調査打ち切り] 毎日新聞 2015年4月8日</ref>。
|
|-
!2016年
|'''[[Ordinary_researchers]]による東京大学への論文不正疑義事件'''
|[[東京大学]]
|2016年8月末に、東京大学が医学系の論文不正の予備調査を行なっていることが報道された。2016年9月20日に、東京大学は、捏造及び改ざんの疑いがあるという匿名の申立てが2016年8月にあった6名の22報の論文について、本格的な調査を行なうことを明らかにした<ref>[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_280920_02_j.html 匿名による申立て事案にかかる本調査への移行について] 東京大学広報室 2016年9月20日</ref>。
2017年8月3日、東京大学は、分子細胞生物学研究所の5報の論文を不正と認定し<ref name="inagaki_special" />、[[東京大学医学部|医学部]]の論文については全て不正なしと一行だけ記載した文書を公開した<ref name="UT_watanabe_decision">[http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_290801_j.html 記者会見「22報論文の研究不正の申立てに関する調査報告」の実施について] 東京大学 2017年8月1日 2017年8月17日閲覧</ref><ref name="takuma_watanabe_decision">[https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/339c5fd4b08533fddb30d5e9069bab70ccacee30 論文不正の告発を受けた東京大学(3) 告発通りに図版の誤りはあったが……] Yahoo news 詫摩雅子 2017年8月14日 2017年8月17日閲覧</ref>。調査報告書の全文は、大部分が黒塗りの状態で後日公開された<ref name="UT_Investigation_black">[http://scienceandtechnology.jp/wp-content/uploads/22%E5%A0%B1%E8%AB%96%E6%96%87%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8.pdf 22報論文に関する調査報告] 東京大学 2018年3月17日閲覧</ref>。

東京大学の池上徹は、分子細胞生物学研究所の助教が研究不正とはやや言い難いデータを基に処分されたことは、医学部が全て不正なしとされたことと比較すると不合理であると2018年の分子生物学会で主張した<ref>{{Cite web|和書|url=https://confit.atlas.jp/guide/organizer/mbsj/mbsj2018/subject/3P-0804/search?searchType=only&initFlg=false&query=&title=&author=%E6%B1%A0%E4%B8%8A+%E5%BE%B9&affiliation= |title=3P-0804 生命科学分野における研究不正事案の分析 何が不正行為なのか |accessdate=2020-11-10 |publisher=日本分子生物学会}}</ref>。
|-
!2017年
|'''[[東北地方太平洋沖地震]]及び[[熊本地震 (2016年)|熊本地震]]等の地震波データ捏造問題'''
|[[大阪大学]]など
|2017年9月27日、[[土木学会]]のホームページに突如記事が掲載された<ref name="doboku">[https://archive.is/68i62 熊本地震本震の臨時観測公開データの問題について] 土木学会地震工学委員会のホームページ (2017年9月27日) 2017年9月29日閲覧</ref>。内容は、[[大阪大学]]准教授らが2016年に米国地震学会誌Seismological Research Lettersに論文発表した[[熊本地震 (2016年)|熊本地震]]の波形データについて重要な匿名の情報提供があり、深刻に受け止めて公的な対応を検討しているというものだった。
2019年1月26日、[[東北地方太平洋沖地震]]([[東日本大震災]])の地震波データについても不正をしていた疑いが強いことが報じられた<ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20190207160846/http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019012601001985.html |title=元准教授、東日本大震災も不正か 熊本地震で捏造指摘 |date=2019-01-26 |accessdate=2019-01-29 |website=東京新聞 TOKYO Web |language=ja}}</ref>。

2019年3月15日、大阪大学は調査結果を公表し、5報の論文に捏造や改ざんなどの不正行為が認定された<ref>{{Cite web|和書|title=研究活動上の特定不正行為に関する調査結果について|url=https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2019/03/15_01|website=大阪大学|date=2019-03-15|accessdate=2019-03-16}}</ref>。調査中に准教授が死亡したため、[[北海道南西沖地震]]や[[阪神・淡路大震災|阪神大震災]]等を扱っていた残りの論文については判定留保又は判定不能となった。
|-
!2017年
|'''骨粗鬆症予防のガイドライン'''
|[[弘前大学]]
|弘前大学の教授が筆頭著者である14報の論文に不正が認定された<ref>{{Cite web|和書|title=研究活動の不正行為に関する調査結果について |url=https://www.hirosaki-u.ac.jp/30242/ |website=弘前大学 |date=2017-11-15 |access-date=2022-11-15 |language=ja}}</ref>。教授は自殺した<ref>{{Cite web |url=https://www.science.org/doi/10.1126/science.361.6403.636 |title=Tide of lies |access-date=2022-11-16 |publisher=Science}}</ref>。撤回論文数は100報を超えている<ref>{{Cite web|和書|title=「撤回論文数」世界ランキング {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_ranking_leaderboard.html |access-date=2022-11-15 |language=ja}}</ref>。論文は[[骨粗鬆症]]予防のガイドラインにも影響を与えるものだった<ref>{{Cite web|和書|title=サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン(榎木英介) - 個人 |url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b428793f7c3ca5470978eb8494820741dae7e84b |website=Yahoo!ニュース |access-date=2022-11-15 |language=ja}}</ref>。
|-
!2017年
|'''[[:pt:Oona_Lönnstedt|マイクロプラスチックの研究]]'''
|[[ウプサラ大学]]
|[[マイクロプラスチック]]が稚魚に影響の成長に悪影響を与えるというScience誌の論文に不正が認定された。この論文はマイクロプラスチックを規制する根拠になっていた<ref>{{Cite web|和書|title=ウウナ・ロンステット(Oona M. Lönnstedt)(スウェーデン)改訂 {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_Oona_Lonnstedt.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。
|-
!2019年
|'''[[:en:Halden_Reactor|ハルデン原子炉]]'''
|ノルウェーエネルギー技術研究所
|1990年から2005年の間にハルデン原子炉で行なった核燃料試験の結果が捏造されていたことが2020年5月に発表された<ref>{{Cite web|和書|title=企業:データねつ造(data fabrication)、ハルデン原子炉(Halden reactor)(ノルウェー) {{!}} 白楽の研究者倫理|url=https://haklak.com/page_2019_halden.html|date=2020-08-30|accessdate=2020-11-10|language=ja}}</ref>。この捏造データの調査が開始されたことは、日本の原子力規制委員会も2019年8月には把握していた<ref>{{Cite web|和書|url=https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11460267/www.nsr.go.jp/data/000281301.pdf |title=原子力施設等におけるトピックス (令和元年7月29日~8月18日) |accessdate=2020-11-11 |publisher=原子力規制委員会}}</ref>。2019年1月の原子力規制委員会の記者会見では、ハルデン原子炉の廃止が突然決まったことについて海外でも危機感を持たれていることが報告されていた<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nsr.go.jp/data/000259607.pdf |title=原子力規制委員会記者会見録(平成31年1月23日(水)14:30~) |accessdate=2020-11-11 |publisher=原子力規制委員会}}</ref>。
2021年10月14日に原子力規制委員会で行われた第50回技術情報検討会において、安全性についての大きな影響はないという見解が示された<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nra.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/gijyutu_jyouhou/120000085.html |title=第50回技術情報検討会 |access-date=2022-09-08 |publisher=原子力規制委員会}}</ref>。
|-
!2020年
|'''パンデミック発生時における治療薬の臨床試験'''
|[[:en:Surgisphere|サージスフィア社]]
|2020年の[[新型コロナウイルス]]のパンデミック当初、[[ドラッグリポジショニング]]による治療薬の探索が世界各地で行われた。その過程で、米国サージスフィア社などが、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、イベルメクチン等の薬剤の効果を調べた論文を2020年5月に[[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン|New England Journal of Medicine誌]]や[[ランセット|Lancet誌]]などの著名な雑誌等に掲載した。米国大統領がヒドロキシクロロキンを予防薬として飲んでいると発言したこともあり、論文は大きな注目を集め、これらの薬剤の投与が広く行われた。しかし、2020年5月末に一部の専門家からサージスフィア社に対する疑義が表明され<ref>{{Cite journal|last=James Watson on the behalf of 182 signatories|date=2020-05-28|title=An open letter to Mehra et al and The Lancet|url=https://zenodo.org/record/3865253#.YNs92pj7TIX}}</ref>、2020年6月には、ガーディアン誌が、サージスフィア社がアダルトコンテンツのモデルを含む10人程度の従業員からなる小さな会社であり、データの信用性が疑わしいことを報道した<ref>{{Cite web|title=Surgisphere: governments and WHO changed Covid-19 policy based on suspect data from tiny US company|url=http://www.theguardian.com/world/2020/jun/03/covid-19-surgisphere-who-world-health-organization-hydroxychloroquine|website=the Guardian|date=2020-06-03|accessdate=2021-06-29|language=en}}</ref>。これを受けて論文は撤回された<ref>{{Cite web|和書|title=政治化された「エビデンス」 新型コロナ研究不正疑惑の波紋 {{!}} 欧州ニュースアラカルト {{!}} 八田浩輔|url=https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200612/pol/00m/010/006000c|website=毎日新聞「政治プレミア」|accessdate=2021-06-29|language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|title=新型コロナ 英文誌での論文撤回 ここから私たちが学ぶべきこと(忽那賢志) - Yahoo!ニュース|url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/bd8779dc5d113f5996f1963f76313b206c86b853|website=Yahoo!ニュース 個人|accessdate=2021-06-29|language=ja}}</ref><ref>{{Cite web|title=Who’s to blame? These three scientists are at the heart of the Surgisphere COVID-19 scandal|url=https://www.sciencemag.org/news/2020/06/whos-blame-these-three-scientists-are-heart-surgisphere-covid-19-scandal|website=Science {{!}} AAAS|date=2020-06-08|accessdate=2021-06-29|language=en|first=Charles|last=PillerJun. 8}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=サパン・デサイー(Sapan Desai)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_sapan_desai.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。
|-
!2020年
|'''肺がんの臨床試験'''
|[[大阪大学]]・[[国立循環器病研究センター]]
|2015年から行われていた「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP(ハンプ)投与の多施設共同ランダム化第Ⅱ相比較試験(JANP study)」の根拠となる論文に不正があったことが2020年08月18日に発表された<ref>{{Cite web|和書|title=研究活動上の特定不正行為に関する調査結果について|url=https://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2020/08/20200818001|website=大阪大学|accessdate=2020-11-06}}</ref>。この論文の筆頭著者については、[[大量訂正 (論文)|大量訂正]]の問題が過去に指摘されていた<ref>{{Cite web|title=A 2015 PNAS paper is six pages long. Its correction is four pages long.|url=https://retractionwatch.com/2018/08/07/a-2015-pnas-paper-is-six-pages-long-its-correction-is-four-pages-long/|website=Retraction Watch|date=2018-08-07|accessdate=2020-11-06|language=en-US|first=Author Alison|last=McCook}}</ref>。2021年に捏造と改ざんが認定され、論文は撤回された<ref>{{Cite web|和書|url=https://web.archive.org/web/20210130081340/http://www.ncvc.go.jp/topics/files/20210130.pdf|title=国立循環器病センター調査報告書|accessdate=2021-02-02 }}</ref>。JANP studyは中止され、10件の健康被害が確認された<ref name=":7">{{Cite web|和書|url=https://archive.vn/zAeqr |title=不正論文もとに臨床研究、参加した患者に影響は?阪大 |accessdate=2021-02-02 |publisher=朝日新聞}}</ref>。
|-
!2020年
|'''前年のノーベル賞受賞者2名への大量疑義'''
|[[ジョンズ・ホプキンズ大学]]・[[オックスフォード大学]]
|2020年のノーベル賞ウィークの最中、2019年のノーベル医学生理学賞受賞者2名の60報以上の論文に不自然な酷似画像等があることが[[パブピア|PubPeer]]で指摘された<ref>{{Cite web |title=Gregg Semenza: real Nobel Prize and unreal research data |url=https://web.archive.org/web/20211214001255/https://forbetterscience.com/2020/10/07/gregg-semenza-real-nobel-prize-and-unreal-research-data/ |website=For Better Science |date=2020-10-07 |accessdate=2020-11-06 |language=en |first=Leonid |last=Schneider}}</ref><ref name=":10">{{Cite web|和書|title=グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_gregg_semenza.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。ノーベル賞の受賞対象となったScience誌の論文<ref>{{Cite journal|last=Jaakkola|first=Panu|last2=Mole|first2=David R.|last3=Tian|first3=Ya-Min|last4=Wilson|first4=Michael I.|last5=Gielbert|first5=Janine|last6=Gaskell|first6=Simon J.|last7=Kriegsheim|first7=Alexander von|last8=Hebestreit|first8=Holger F.|last9=Mukherji|first9=Mridul|date=2001-04-20|title=Targeting of HIF-α to the von Hippel-Lindau Ubiquitylation Complex by O 2 -Regulated Prolyl Hydroxylation|url=https://www.science.org/doi/10.1126/science.1059796|journal=Science|volume=292|issue=5516|pages=468–472|language=en|doi=10.1126/science.1059796|issn=0036-8075}}</ref>に対しても指摘があった。
2022年10月22日、17報の論文が撤回されたことが報じられた<ref>{{Cite journal|last=Else|first=Holly|date=2022-10-21|title=Dozens of papers co-authored by Nobel laureate raise concerns|url=https://www.nature.com/articles/d41586-022-03032-9|journal=Nature|language=en|doi=10.1038/d41586-022-03032-9}}</ref>。
|-
!2020年
|'''学術誌が圧力をかけられ論文撤回'''
|[[エルゼビア|エルゼビア社]]
|肝臓病を患った24歳の女性が服用していた[[ハーバライフ]]社のサプリメントに有害物質が含まれていたという論文がエルゼビア社の雑誌から2018年に発表された。著者には非がなかったが、圧力をかけられたエルゼビア社は論文を撤回した<ref>{{Cite web |title=Paper about Herbalife®-related patient death removed after company threatens to sue the journal |url=https://scienceintegritydigest.com/2020/12/20/paper-about-herbalife-related-patient-death-removed-after-company-threatens-to-sue-the-journal/ |website=Science Integrity Digest |date=2020-12-20 |access-date=2022-11-05 |language=en |first=Author |last=eliesbik}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=無罪:シリアック・フィリップス(Cyriac Philips)(インド) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_cyriac_philips.html |access-date=2022-11-12 |language=ja}}</ref>。
|-
!2022年
|'''17歳の新入生の告発による学長の辞任'''
|[[スタンフォード大学]]
|ジャーナリストの両親のもとに生まれた[[:en:Theo_Baker|テオ・ベーカー]]は、スタンフォード大学に入学した直後の2022年の秋に、スタンフォードの学長について[[PubPeer]]に疑惑が出ていることを卒業生の先輩から教えてもらった<ref name=":25">{{Cite news |title=Meet the student who helped boot the president of Stanford |url=https://www.washingtonpost.com/media/2023/07/28/theo-baker-stanford-president-tessier-lavigne/ |work=Washington Post |date=2023-07-30 |access-date=2023-08-04 |issn=0190-8286 |language=en-US |first=Lisa |last=Bonos}}</ref>。[[PubPeer]]の指摘は2015年頃から始まっていた。テオ・ベーカーは調査を行い、2022年の11月末に、学長が2000年頃から[[Science]]誌や[[セル (雑誌)|Cell]]誌などに発表した[[神経科学]]に関する論文の疑惑について、[[:en:The_Stanford_Daily|Stanford Daily誌]]に記事を書いた<ref name=":21">{{Cite web |title=Stanford president’s research under investigation |url=https://stanforddaily.com/2022/11/29/stanford-presidents-research-under-investigation-for-scientific-misconduct-university-admits-mistakes/ |website=The Stanford Daily |date=2022-11-29 |access-date=2022-12-08 |language=en-US}}</ref>。スタンフォード大学は学長の就任前にこの疑惑を検討しており、学長はScience誌に訂正を依頼したが、Science誌はミスによりその訂正を掲載しなかったとされている<ref name=":23">{{Cite web |title=Stanford misconduct probe of president stumbles as new journal launches inquiry |url=https://www.science.org/content/article/stanford-misconduct-probe-president-stumbles-new-journal-launches-inquiry |website=www.science.org |access-date=2022-12-08 |language=en}}</ref>。Genentech社が2009年のアルツハイマーに関する[[ネイチャー|Nature]]誌の論文について2011年に社内で検討し虚偽のデータを発見していたことも2023年2月に報じられた<ref>{{Cite web |title=Review found ‘falsified data’ in Stanford President’s research, colleagues allege |url=https://stanforddaily.com/2023/02/17/internal-review-found-falsified-data-in-stanford-presidents-alzheimers-research-colleagues-allege/ |date=2023-02-17 |access-date=2023-02-25 |language=en-US}}</ref>。2023年7月に、[[ランディ・シェクマン|ノーベル賞受賞者]]を含むScientific Panelistによる調査結果<ref>{{Cite web |url=https://boardoftrustees.stanford.edu/wp-content/uploads/sites/5/2023/07/Scientific-Panel-Final-Report.pdf |title=Report of the Scientific Panel of the Special Committee of the Stanford University Board of Trustees |access-date=2023-07-21 |publisher=Stanford University}}</ref>と、学長の辞任が発表された(教授の地位には留まる)<ref>{{Cite news |title=Stanford President Will Resign After Report Found Flaws in His Research |url=https://www.nytimes.com/2023/07/19/us/stanford-president-resigns-tessier-lavigne.html |work=The New York Times |date=2023-07-19 |access-date=2023-07-19 |issn=0362-4331 |language=en-US |first=Stephanie |last=Saul}}</ref>。テオ・ベーカーはこの報道で[[ジョージ・ポルク賞]]を受賞した。テオ・ベーカーは、ロサンゼルス・タイムズのインタビューにおいて、シリコンバレー最大手の弁護士事務所を介した脅迫を受けたことや、作業に1000時間以上を費やしたこと、[[エリザベス・ビク]]以外の大半は実名ではサポートしてくれなかったこと、大学の学業にも励んでいることを明らかにした<ref>{{Cite web |title=Q&A: How this Stanford freshman brought down the president of the university |url=https://www.latimes.com/science/story/2023-07-21/how-stanford-freshman-brought-down-university-president |website=Los Angeles Times |date=2023-07-21 |access-date=2023-07-24}}</ref>。
テオ・ベーカーは、2023年の夏はドイツに滞在し、ウクライナとの戦争に使用する武器をロシアに提供している企業について追及を行っている<ref name=":25" />。
|-
!2022年
|'''インカレ査読不正'''
|[[福井大学]]・[[千葉大学]]・[[金沢大学]]・[[浜松医科大学]]
|ムーンショットと呼ばれる内閣府の大型研究費を獲得していた福井大学教授は、査読誌に投稿した複数の論文について、査読者になりえる千葉大学教授、金沢大学教授、および浜松医科大学教授に査読コメントの草稿を提供していた。その草稿は、福井大学教授が論文の複数の共著者に指示して書かせていたものだった。千葉大学教授、金沢大学教授、および浜松医科大学教授は、その草稿を利用して査読誌に査読コメントを回答していた<ref>{{Cite web|和書|title=金沢大、浜松医大の元教授も関与 福井大査読偽装、計6本に |url=https://mainichi.jp/articles/20221219/k00/00m/040/178000c |website=毎日新聞 |access-date=2023-01-14 |language=ja |date=2022-12-20}}</ref>。
|-
!2023年
|'''宇宙飛行士の不正隠蔽'''
|[[筑波大学]]・[[宇宙航空研究開発機構]]
|宇宙航空研究開発機構(JAXA)所属の[[宇宙飛行士]]が代表者を務める大型研究事業(科研費新学術領域研究)において、データの捏造が行われていたことが2022年に報道された。報道当初においては、論文化がなされていないデータの捏造であり、特定不正行為には当たらないと説明されていた。しかしながら、2023年に、一部のデータが筑波大学から論文として発表されていたことが発覚した<ref>{{Cite web|和書|title=古川宇宙飛行士の研究で筑波大が論文発表、「不正なし」に異論 |url=https://mainichi.jp/articles/20230111/k00/00m/040/262000c |website=毎日新聞 |access-date=2023-01-14 |language=ja}}</ref>。
|-
!2023年
|'''首脳陣への疑義の多発'''
|[[国立循環器病研究センター]]
|2023年に、以下の国立循環器病研究センターの幹部6人について、合計41報(重複除く)の論文不正疑惑が岩澤倫彦などによって報じられた<ref>{{Cite web|和書|title=ケン・スズキ(Ken Suzuki、鈴木 憲)(英、日本) {{!}} 白楽の研究者倫理 |url=https://haklak.com/page_ken_suzuki.html |access-date=2023-08-04 |language=ja}}</ref><ref name=":24">{{Cite web|和書|title=「心臓病の最高権威」に研究論文の改ざん疑惑 最新AIが見抜いた阪大研究者たちの「画像加工・再利用」の手口 |url=https://www.news-postseven.com/archives/20230721_1889371.html?DETAIL |website=NEWSポストセブン |access-date=2023-07-21 |language=ja |author=岩澤倫彦・週刊ポスト}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=「心臓病の最高権威」国循・大津欣也理事長に研究論文捏造・改ざん疑惑、直撃取材に語ったこと |url=https://www.news-postseven.com/archives/20230721_1889372.html?DETAIL |website=NEWSポストセブン |access-date=2023-07-21 |language=ja |author=岩澤倫彦・週刊ポスト}}</ref><ref name=":26">{{Cite web|和書|title=心臓病の最高権威「国立循環器病研究センター」幹部6人に論文不正疑惑“画像の使い回し”か(NEWSポストセブン) |url=https://news.yahoo.co.jp/articles/e5511f9077afb0e1b6ffd71844e553379aab4c11 |website=Yahoo!ニュース |access-date=2023-09-29 |language=ja}}</ref>。

* 理事長
* 理事(ナンバー3)
* 創薬オミックス解析センター長(理事長特任補佐)
* 副所⻑(告発直後にロンドン大学に異動)
* 副院長
* 副院長(弁膜症センター長)

尚、国立循環器病研究センターは、この6人の疑惑とは別に、元室長の研究不正について2023年6月に懲戒解雇相当の処分を行っていた<ref>{{Cite web|和書|title=国立循環器病研究センター元室長 懲戒解雇相当の処分に|NHK 関西のニュース |url=https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230601/2000074124.html |website=NHK NEWS WEB |access-date=2023-07-21 |last=日本放送協会}}</ref>。また、この表で上述されている2020年に発表された肺がんの臨床試験の不正についても、別の元室長に2021年3月に懲戒解雇相当の処分を行っていた<ref>{{Cite web|和書|title=国循の元室長ら、論文不正で処分 |url=https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70504250Q1A330C2CR8000/ |website=日本経済新聞 |date=2021-03-31 |access-date=2023-07-21 |language=ja}}</ref>。すなわち、短期間に不正や疑惑の報道が高位職に多発している。

[[上昌広]]は、[[大阪大学医学部]]循環器内科において20年前から不正行為が受け継がれていた可能性を指摘した<ref name=":24" />。
|-
!2023年
|'''線虫を用いた癌検査キット'''
|HIROTSUバイオサイエンス
|[[線虫]]の[[嗅覚]]研究で[[ネイチャー|Nature誌]]に論文<ref>{{Cite journal|last=|first=|last2=|first2=|last3=|first3=|last4=|first4=|date=2004-12|title=Corrigendum: The Ras–MAPK pathway is important for olfaction in Caenorhabditis elegans|url=https://www.nature.com/articles/nature03169|journal=Nature|volume=432|issue=7017|pages=653–653|language=en|doi=10.1038/nature03169|issn=1476-4687}}</ref>を発表するなどしていた[[東京大学]]出身の研究者が、2016年に日本にHIROTSUバイオサイエンスというベンチャー企業を設立した。線虫を用いた癌検査キット「N-NOSE」を販売し、2023年までに50万人分を売り上げた。N-NOSEのCMには[[NHK紅白歌合戦|紅白歌合戦]]で何年も司会を務めたような有名女優が出演した。HIROTSUバイオサイエンスは[[三井住友海上火災保険|三井住友海上]]や[[第一生命保険|第一生命]]などの大手保険会社とも業務提携した。[[藤沢市]]や[[松山市]]はN-NOSEをふるさと納税の返礼品にした。一方、N-NOSEは、[[厚生労働省]]による保険適用は受けていない。

2021年12月に[[週刊文春]]<ref>{{Cite web|和書|title=「尿一滴でがんがわかる」で話題 線虫がん検査「精度86%」は問題だらけ |url=https://bunshun.jp/articles/-/50574 |website=文春オンライン |access-date=2023-09-22 |last=「週刊文春」編集部}}</ref>がN-NOSEへの疑義を配信した。HIROTSUバイオサイエンスは反論を記したプレスリリースを発表した<ref>{{Cite web|和書|title=プレスリリース |url=https://hbio.jp/news/2021/12/12%e6%9c%8819%e6%97%a5%e4%bb%98%e9%80%b1%e5%88%8a%e8%aa%8c%e3%81%ae%e5%a0%b1%e9%81%93%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/ |access-date=2023-09-22 |language=ja}}</ref>。2023年9月には[[NewsPicks|Newspicks]]<ref>{{Cite web|和書|title=虚飾のユニコーン |url=https://newspicks.com/user/20173/ |website=NewsPicks |access-date=2023-09-22}}</ref>がN-NOSEへの疑義を複数回配信した。Newspicksは、2023年の日本がん検診・診断学会総会において、HIROTSUバイオサイエンスに意図的に送付された10人の癌患者の検体が全て陰性と判定されたという学会発表を紹介していた。HIROTSUバイオサイエンスは反論を記した長文のプレスリリースを発表し、10人の癌患者の検体の偽陰性の原因は「標準化変換」という機構に因ると説明した<ref>{{Cite web|和書|title=プレスリリース |url=https://hbio.jp/news/2023/09/20230919/ |access-date=2023-09-22 |language=ja}}</ref>。救急医の木下喬弘はこの説明の問題点をnoteで指摘した<ref>{{Cite web|和書|title=手を洗う救急医Taka |url=https://note.com/mph_for_doctors/n/nf0fced47fc7f |website=note(ノート) |date=2023-09-20 |access-date=2023-09-22 |language=ja}}</ref>。2023年9月29日、HIROTSUバイオサイエンスはNewspicksの社員等に対して名誉毀損訴訟を行うことを発表した<ref>{{Cite web|和書|title=株式会社ユーザベースを被告とした民事訴訟について |url=https://hbio.jp/news/2023/09/20230929/ |access-date=2023-10-02 |language=ja |publisher=HIROTSUバイオサイエンス}}</ref>。2023年10月1日、[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP事件]]後に毎日新聞からNewspicksに異動していた須田桃子は、癌検査キットへの疑義をまとめた動画をYouTubeで配信した<ref>{{Citation|和書|title=【スクープ】世界初の「線虫がん検査」、衝撃の実態を徹底取材 解説:須田桃子|year=|url=https://www.youtube.com/watch?v=BdvISQJczUs|language=ja-JP|access-date=2023-10-02}}</ref>。

疑義の報道以降もHIROTSUバイオサイエンスは活発に活動を行い、[[岐阜市立東長良中学校]]、尾花沢市立[[尾花沢中学校]]<ref>{{Cite web |title=HIROTSUバイオサイエンス {{!}} 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 |url=https://hbio.jp/news/2024/10/20241003/ |access-date=2024-10-28 |language=ja}}</ref>、[[普連土学園中学校・高等学校|普連土学園中学校]]<ref>{{Cite web |title=HIROTSUバイオサイエンス {{!}} 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 |url=https://hbio.jp/news/2024/07/20240724/ |access-date=2024-10-28 |language=ja}}</ref>、[[創価中学校・高等学校|創価中学校]]<ref>{{Cite web |title=HIROTSUバイオサイエンス {{!}} 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 |url=https://hbio.jp/news/2024/06/20240621/ |access-date=2024-10-28 |language=ja}}</ref>、愛知県[[豊橋市立牟呂中学校]]、[[東海市立富木島中学校]]<ref>{{Cite web |title=HIROTSUバイオサイエンス {{!}} 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 |url=https://hbio.jp/news/2024/06/20240617/ |access-date=2024-10-28 |language=ja}}</ref>、富山県[[片山学園中学校・高等学校|片山学園中学校]]<ref>{{Cite web |title=HIROTSUバイオサイエンス {{!}} 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 |url=https://hbio.jp/news/2024/03/20240304/ |access-date=2024-10-28 |language=ja}}</ref>、千葉県[[佐倉市立志津中学校]]、千葉県[[木更津市立木更津第一中学校]]、愛知県[[豊田市立上郷中学校]]、岐阜県[[大垣市立西中学校]]、岐阜県[[岐阜市立加納中学校]]<ref>{{Cite web |title=HIROTSUバイオサイエンス {{!}} 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 |url=https://hbio.jp/news/2023/10/20231002/ |access-date=2024-10-28 |language=ja}}</ref>などから中学生を受け入れて教育を行った。[[文響社]]の[[うんこドリル]]と提携し、がん検診についての冊子を全国の小学校に無償配布した<ref>{{Cite web |title=HIROTSUバイオサイエンス {{!}} 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術 |url=https://hbio.jp/news/2023/03/%E3%80%8C%E3%81%86%E3%82%93%E3%81%93%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%AB%E5%81%A5%E5%BA%B7%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%81%A8%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%88%B6%E4%BD%9C%E3%81%AB%E5%8D%94/ |access-date=2024-10-28 |language=ja}}</ref>。

須田桃子のNewspicksの記事は、2024年8月に[[江川紹子]]、[[有働由美子]]、[[塩田武士]]らが選考する調査報道大賞で奨励賞を受賞した<ref>{{Cite web |title=2024年 調査報道大賞・発表|報道実務家フォーラム |url=https://j-forum.org/award2024-winner/ |website=j-forum.org |access-date=2024-10-30 |language=ja}}</ref>。

須田桃子はNewspicksを退職したことを2024年11月4日に発表した。
|}
|}


== 参考:特許権・特許明細書における捏造 ==
* [[サミュエル・ジョージ・モートン]] - 西欧人種の優越性と他民族支配の正当化を目的として、頭蓋骨容積の人種間比較データを捏造し発表<ref>ヒトの遺伝学 Gordon Edlin著 東京化学同人(日本語版)1992 ISBN 4807903632</ref>。
[[特許]]の審査においては基本的に書面主義が採られており、書類上の一貫性が保たれていれば、発明の実施可能性や記述の科学的な正確性について、[[査読]]や[[追試]]などによる検証は行われない。このため、金銭・利益優先で「架空のデータ」を用いた出願などの問題行為がまかり通ってしまっているとの指摘がある{{refnest|group="注"|特許においての争点は新規性であり、データの正確性でないこと。またそのために不正確であったり捏造データを用いた出願が横行し、それによって学会・産業界がデータの再現性をめぐる混乱を来たすことが指摘されている<ref name=huiir2007>[http://www.iir.hit-u.ac.jp/iir-w3/Mr%20Morioka_IIR-Decennial-Symposium_2007.03.04-05.pdf 知的財産からみたライフサイエンス分野の知識創造と活用のありかた] 味の素(株)知的財産センター 森岡一 2007年3月5日{{リンク切れ|date=2012年12月}}</ref>。}}。
* [[ジョン・ロング]]

* ヴィジェイ・ソーマン
これらの検証は、特許の審査においては書類上その発明が実施可能と認められない場合([[特許法]]36条)や、発明の実施可能性について第三者からの情報提供があった場合(特許法施行規則13条の2)に行われ、特許法194条には、その手段として、有識者への調査依頼なども定められている。また、より一般的には、特許が認められた後において、第三者が発明の実施可能性を理由として特許無効の[[行政審判|審判]]を提起した際に行われる。さらに、刑事上は、虚偽の記載などの[[詐欺]]行為によって特許を受けた場合には、いわゆる特許詐欺罪に問われ、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる(特許法197条)。特許詐欺罪は特許審査官を欺罔する罪であり、国家的権威・機能の阻害から保護することが立法の目的<ref>特許庁編「工業所有権法逐条解説第15版」P.485</ref>である。
* [[松本和子]] - 研究費の不正受給が指摘された<ref>[http://www.47news.jp/CN/200607/CN2006070401002717.html 早大不正で分析化学会調査 松本氏、東工大委員も辞任] 47NEWS</ref>。

出願する上で重要となるのは、多くの観点からの請求項を含む[[特許請求の範囲]](クレーム)や、上位概念的な請求項から実施例に対応した請求項まで多段階にわたる特許請求の範囲を、出願時に作成することである。

幅の広いクレームを作成することによって、より権利範囲の広い特許を取得することができるため、実際には実験を行っていない範囲についてまで実施例として記載するなど、明らかに科学的手法を逸脱した記述の体裁が積極的に採用されることがある{{要出典|date=2012年12月}}<ref group="注">例えば、実際にはある素材の組成として物質Aを20〜30%含む場合しか実験していないのに、10〜50%含む場合も実施例として記載することにより、権利範囲を拡張することがある{{要出典|date=2012年12月}}。</ref>。また、技術的な詳細の機微(ノウハウ)を可能な限り隠匿することで追従者の追跡を遅らせる意図から、実際には実験を行っていないにも関わらず、利用可能性のある要素すべてを網羅したり、数値範囲を広く記載するケースもある{{要出典|date=2012年12月}}<ref group="注">例えば、ある素材を焼成するのにA元素にB元素を[[ドーパント]]として利用する場合、B元素を隠匿する目的で同族元素を列挙したり{{要出典|date=2012年12月}}、ドープ量の比率を0.1〜30.0%、より適切には0.3〜10.0%などと実態を可能な限り把握されない工夫がなされる{{要出典|date=2012年12月}}。</ref>。

科学や学術論文の執筆の領域では、公表時点で[[捏造]]や[[改竄]]が問題になる。したがって、特許出願と同様の感覚で不正なデータを含む論文を公表した場合、科学の世界では科学の世界なりの処分が下る。ただし、近年、実験データを捏造して特許を出願した大学の研究者が処分された例なども出てきており、特許出願であるからデータの捏造が認められるという感覚は通用しなくなってきている<ref>[https://web.archive.org/web/20080518204139/http://innovation.nikkeibp.co.jp/mailbn/20061122-00.html 産学連携と知財戦略 第11回「明細書におけるデータ捏造問題」] 先端技術事業化メールマガジン 第94号、日経BP社 産学連携事務局、2006年11月22日</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
372行目: 499行目:
{{Reflist|2}}
{{Reflist|2}}


== 研究不正問題を扱った書籍 ==
== 参考文献 ==
総論的な内容の和書のみを記す。個別の事件に焦点を当てた書籍は上の具体例の表の脚注にある。
* {{Cite book|和書|author=酒井シヅ、三浦雅弘、アレクサンダー・コーン|title=科学の罠―過失と不正の科学史|publisher=工作舎|date=1990|isbn=4875021682|ref=harv}}
* W.ブロード、N.ウェイド 『[[背信の科学者たち]]』牧野賢治訳、講談社、2014年(原著は1982年)。ISBN 978-4062190954 … 紀元前から現代までの海外の有名事例を挙げながら、研究不正の一般論をも記述した古典。
* {{Cite book|和書|author=山崎茂明|title=科学者の不正行為―捏造・偽造・盗用|publisher=[[丸善]]|date=2002|isbn=4621070215|ref=harv}}
* 『[[背信の科学者たち]]』
:* {{Cite book|和書|author=W.ブロード、N.ウェイド|title=背信の科学者たち|editor=牧野賢治 訳|publisher=[[化学同人]]|date=1988|isbn=475980160X|ref={{Sfnref|背信の科学者たち|1988}} }}
:* {{Cite book|和書|author=W.ブロード、N.ウェイド|title=背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか|editor=牧野賢治 訳|publisher=[[講談社]]|series=ブルーバックス|date=2006|url=http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2575353|isbn=4-06-257535-3|ref={{Sfnref|背信の科学者たち|2006}} }} - 前掲書の改訂版。新書判化に際して旧版より幾分割愛されたものの、訳者によって原著刊行後のミスコンダクト(不正行為)の事例がフォローされている。
:* {{Cite book|和書|author=W.ブロード、N.ウェイド|title=
背信の科学者たち|editor=牧野賢治 訳|publisher=[[講談社]]|date=2014|isbn=4062190958|ref={{Sfnref|背信の科学者たち|2014}} }}
* {{Cite book|和書|author=李成柱|title=国家を騙した科学者―「ES細胞」論文捏造事件の真相|publisher=牧野出版|date=2006|isbn=4895000958|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=村松秀|title=論文捏造|publisher=[[中央公論新社]]|series=中公新書ラクレ|date=2006|isbn=4121502264|ref=harv}}
* {{Cite journal|title=Japan's Universities Take Action|author=Dennis Normile|journal=[[サイエンス|Science]]|volume=315|number=5808|pages=26|year=2007|month=January|url= http://dx.doi.org/10.1126/science.315.5808.26 |ref=harv}}
* {{Cite journal|title=Japanese TV show admits faking science|author=David Cyranoski|journal=[[ネイチャー|Nature]]|volume=445|pages=804-805|year=2007|month=February|url= http://dx.doi.org/10.1038/445804a |ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=福岡伸一|title=世界は分けてもわからない|publisher=[[講談社]]|series=[[講談社現代新書]] 2000|date=2009-07-20|isbn=978-4-06-288000-8|url=http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2880008|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|title=実は医学論文の七割が再現不能 - 小保方捏造を生んだ科学界の病理|author=中山敬一|journal=[[文藝春秋]]|volume=92|number=7|pages=94-103|date=2014-06|url=http://ci.nii.ac.jp/naid/40020050722|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書
|title=(STAP細胞事件の真相)座談会 組織のあり方、国際競争、研究者の倫理観 不正はなぜ防げなかったのか|author1=[[佐倉統]]|author2=[[片瀬久美子]]|author3=[[八代嘉美]]|journal=[[中央公論]]|volume=129|number=1567|pages=50-60|date=2014-06|url=http://ci.nii.ac.jp/naid/40020051489|accessdate=2014-05-22|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author=W.ブロード、N.ウェイド|title=背信の科学者たち―論文捏造、データ改ざんはなぜ繰り返されるのか|editor=牧野賢治 訳|publisher=[[講談社]]|date=2014|url=http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2190958|isbn=978-4062190954|ref={{Sfnref|背信の科学者たち|2014}} }} - 前掲書の復刊版。訳者によって、[[刺激惹起性多能性獲得細胞|STAP細胞]]事件などの最新事例がフォローされている。


*科学朝日編『スキャンダルの科学史』朝日新聞社、1989年。ISBN 978-4022560711 … 19世紀後半から20世紀前半に起きた日本の有名事例を列挙してまとめたもの。
== 関連項目 ==
*酒井シヅ、三浦雅弘、アレクサンダー・コーン『科学の罠―過失と不正の科学史』工作舎、1990年。ISBN 978-4875021681
* [[疑似科学]]
*山崎茂明『科学者の不正行為―捏造・偽造・盗用』丸善、2002年。ISBN 978-4621070215
* [[研究倫理]]、[[盗用]]、[[改ざん]]、[[捏造]]、[[盗用検出]]
*石黒武彦『科学の社会化シンドローム』岩波科学ライブラリー、2007年。ISBN 978-4000074711
* [[実験ノート#知的財産権等の法的な問題と実験ノート|知的財産権等の法的な問題と実験ノート]]
*Kathy Barker『アット・ザ・ヘルム―自分のラボをもつ日のために』メディカルサイエンスインターナショナル、2011年。ISBN 978-4895926805 … 研究室運営の指南書。不正の問題に関係する部分がある。
* [[米国研究公正局]]、[[11jigen]]
*田中智之、小出隆規、安井裕之『科学者の研究倫理 化学・ライフサイエンスを中心に』東京化学同人、2018年。ISBN 978-4807909476 … 研究活動と研究倫理を解説した教科書。21世紀に起きた不正事件の解説も一部含む。
* [[背信の科学者たち]]


== 研究不正問題を扱ったサイト ==
== 外部リンク ==
*[https://sites.google.com/site/integrity0lifesciences/ 誠実な生命科学研究のために] 京都薬科大学の田中智之教授らが、研究不正問題を考えるための情報を集約しているサイト
* {{Cite web|url=http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-18-t995-3.pdf|title=科学における不正行為とその防止について|publiseher=[[日本学術会議]]|format=PDF|accessdate=2014-07-09}}
*[https://www.jst.go.jp/kousei_p/ 研究公正ポータル]  国立研究開発法人 [[科学技術振興機構]]による公的ポータルサイト
* {{Cite web|url=http://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/index.html|title=研究倫理委員会|publisher=MBSJ 特定非営利活動法人 [[日本分子生物学会]]|accessdate=2014-07-07}}
*[https://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/forum.html 日本分子生物学会 研究倫理フォーラムの開催など] [[日本分子生物学会]]が毎年行っている研究倫理フォーラムへのリンク
*[https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/research/ethics/index.html 東京大学 科学研究行動規範] [[東京大学]]が毎年行っている研究倫理セミナーへのリンク
*[https://confidenceinresearch.elsevier.com/ Confidence in research] [[エルゼビア|エルゼビア社]]がコロナ禍を契機にして始めた科学の信頼性に関するプロジェクトのサイト


== 研究不正問題を扱ったフィクション ==
{{科学哲学}}
* [[今ここにある危機とぼくの好感度について]] (2021年)
* [[白い濁流]] (2021年)


== 関連項目 ==
* [[偽装]]
* [[権威に訴える論証]]
* [[御用学者]]
* [[エビデンス (医学)]]
* [[サラミ出版]]
* [[ソーカル事件]]
* [[不満研究事件]]

{{科学哲学}}
{{科学技術研究}}
{{DEFAULTSORT:かかくにおけるふせいこうい}}
{{DEFAULTSORT:かかくにおけるふせいこうい}}
[[Category:科学における不正行為|*]]
[[Category:科学における不正行為|*]]
[[Category:アカデミック・スキャンダル]]
[[Category:不正行為]]
[[Category:詐欺]]
[[Category:詐欺]]
[[Category:捏造]]
[[Category:捏造]]

2024年12月4日 (水) 02:08時点における最新版

科学における不正行為(かがくにおけるふせいこうい、: scientific misconduct)とは、科学学問としての規範や、研究を行う際に守るべき研究倫理基準に対し、違反する行為のことを指す。研究不正(けんきゅうふせい)ともいう。

定義

[編集]

ランセット誌では以下の定義が紹介されている[1]

  • デンマーク の定義:科学的メッセージの改竄(かいざん)や歪曲をもたらす故意または重大な過失。科学者に誤った信用や注目が与えられること。
  • スウェーデンの定義:データの捏造による意図的な研究プロセスの歪曲。他の研究者の原稿や出版物からのデータ、文章、仮説、方法の盗用。その他の方法での研究プロセスの歪曲。

よくある誤解

[編集]

再現性の欠如との混同

[編集]

再現性の欠如はしばしば研究不正として捉えられるが、これは別個の概念である[2]。但し、再現性がありコアデータのインパクトも大きい論文の場合、研究不正が看過されることはある。例えばメンデルの遺伝法則の論文は統計学的に疑問視されていたことがあるが[3]、疑問視されていた最中においても賞賛された[4]。また、日本の衆議院では、2015年の匿名Aの事件の際に、研究不正の調査に再実験が含まれ得るとの答弁が文部科学省の政務官からなされている[5]。文部科学省が2006年に作成した研究不正調査についてのガイドラインにも、再現性を示す機会を保障するとの記載が含まれている[6]

論文撤回との混同

[編集]

日本における研究不正の深刻さが、Retraction Watchが作成する個人別撤回論文数ランキング[7]の上位の大半が日本人であることを根拠に主張されていることがしばしばある[8][9][10][11][12][13][14][15][2][16][17][18][19][20][21]。しかしながら、論文が撤回される理由は研究不正だけではない。また、不正論文を撤回することは、不正論文を看過することより倫理的に望ましい行為である。撤回論文数が多くなる国を目指すべきという考え方もある[22]。撤回論文数のランキングの解釈は慎重に行わなければならない[23]

分類

[編集]

捏造、改竄、盗用の3つは英語の頭文字をとってFFPと呼ばれ、研究不正の中でも特に重大なものと考えられている[25]

産総研の夏目徹は、捏造は(1)ボトムアップ出来心型、(2)ボトムアップ確信犯型、(3)トップダウン恫喝型、(4)トップダウン洗脳型の4つに大別できるとの分析を分子生物学会で披露し、話題となった[26][27]

頻度

[編集]

2002年にアメリカ国立衛生研究所がアンケートを行ったところ、33%の人が過去3年間に何らかの不正行為をしたことがあると回答した[28]。2013年の日本分子生物学会のアンケートでは、10.1%の人が所属研究室で研究不正を目撃したことがあると回答した[29]

近年登場した論文工場[30]捕食雑誌[31]により、原理的にはこの世の100%近い論文が完全な虚偽論文になる可能性がある。日本分子生物学会の欧文誌では、2020年の時点で投稿論文の過半数が論文工場由来と推定されている[32][33]

捏造・改竄・盗用

[編集]

エリザベス・ビクは、20,000報の論文を目視した結果、4%の医学論文に不自然な改変や重複使用が疑われる画像データを見つけたことを2016年に発表した[34][35]。疑惑画像が見つかる確率が最も低い国は日本だった[35]

二重投稿

[編集]

2008年のNature誌の記事では、発表論文の1%程度が二重投稿との推計が紹介された[36]

ギフトオーサーシップ

[編集]

2020年~2021年に行われた調査によると、貢献のない論文の著者になった自覚があると回答した研究者の割合は、米国では約55%、欧州では約69%であった[37]

再現性の欠如(参考)

[編集]

2012年、製薬企業アムジェンが調べたところ、有名なガン研究の論文の89%に再現性が無かった[38]

2015年、有名な心理学の論文のうち再現が取れたのは39%という報告がなされた[39]

2021年、ガン研究の有名論文53報に掲載された193個の実験のうち半分以上の実験について再現を確認できなかったという報告がなされた[40][41][42]。実験条件を問い合わせても著者から協力が全く得られない割合は32%であった。

深刻さ

[編集]

研究不正問題の深刻さについては、肯定的な意見と否定的な意見が存在している。

肯定的

[編集]
  • 2013年の日本分子生物学会のアンケートでは、97.5%の人が研究不正は大きな問題だと思うと回答した(「ライフサイエンスにおいて、研究不正は大きな問題だと思いますか?」という質問に対して、81.6%が「そう思う」、15.9%が「ある程度そう思う」)[29]
  • 2015年1月30日、文部科学大臣下村博文は、「STAP細胞論文をはじめとする研究不正、これは科学技術に対する国民の信頼を揺るがす問題であると深刻に受け止めております」と記者会見で述べた[43]

否定的

[編集]

原因

[編集]

2013年の日本分子生物学会のアンケートでは、個人に原因があると考える人と構造に原因があると考える人がほぼ同数であった[29]

ドナルド・クレッシーによると、組織が絡んだ犯罪は、「機会(実行を可能にする機会・手段)」「動機(実行に至った事情)」「正当化(自らを納得させる理由付け)」 の3つの要素が満たされた時に起こる。研究不正の場合、このうち動機については「publish or perish」と呼ばれる研究者の過酷な競争に原因があるとする見方がある[48]。近年、特に日本では大学改革が行われた2004年以降、大学や研究者は、暗闇の中で一筋の光を見つけていくような[49]知的で自由なものから、発表論文のメトリクスで定量的に評価される産業的な監視対象[50][51][52][53]に変質しているのである。

査読に原因があるとする見方がある。論文業績が重視されるに従い査読が研究者の生殺与奪を決定するようになったため、査読のやり取りは、新しく生まれた知見を真剣に討議できる知的な楽しみから、生計を維持するための奴隷的な作業になった。研究室主催者の意向が実際には査読者の意見ということも多くなった。査読者のコメントによって研究不正が誘導され得るため、リバイス時は捏造のリスクが上がる[54][55]。2022年にeLife誌が査読過程におけるリジェクトの廃止を発表したこと[56]は、この原因を取り除くことにつながる可能性がある。

製薬企業等の特定の組織から研究費を受け取る場合、研究者はその特定の組織が有利になる論文を発表する傾向があると言われている(詳しくは利益相反を参照のこと)。Tansa(旧ワセダクロニクル)らが作成している製薬マネーデータベース『YEN FOR DOCS』[57]は、1割程度の学会理事が多額の金銭を製薬会社から受領していることを明らかにしている[58]

告発と調査

[編集]

松澤孝明による数十カ国の分析によると、告発の受付と調査を担う研究公正システムは、タイプ1「調査権限を有する,国として立法化された集権システム」、タイプ2「研究資金配分機関や個々の機関とは異なる,監督のための法律によらない組織からなるシステム」、タイプ3「独立した研究公正監督組織やコンプライアンス機能がないシステム」の3つに分類される[59]。例えば米国はタイプ1を採用しており、研究公正局などが疑義の連絡や告発を受け付けて調査を行う。現状の日本はタイプ3を採用している。

日本の場合

[編集]

告発先

[編集]

不正の疑義に関する調査は研究者が所属する大学や研究機関が実施するのが原則である[60]。文部科学省や日本学術振興会などにも告発の受付窓口があるものの、告発文書を大学や研究機関へ回付するだけに留まる。

調査のプロセス

[編集]

まず告発された研究機関内の研究者で構成される予備調査委員会により調査がなされる。本格的な調査が必要と判断された場合に限り、外部有識者を交えた本調査委員会が組織される。本調査で不正が認定された場合、研究機関は文部科学省及び研究資金配分機関に当該調査結果を報告するものとされている。

論点・問題点

[編集]

タイプ3を採用していることによって、次の2つの問題が発生している:(1)調査の限界、(2)利益相反。

【調査の限界】
[編集]

日本の大学や研究機関は、警察のような捜査権は有していない。そのため、被告発者の善意がなければ不正の証拠は提出されない。例えば東京大学分子細胞生物学研究所の事件では、最後まで調査に非協力的であった人たちは不正を認定されなかった[61]。このような本末転倒な状況を解決するため、捜査権を持つ警察が関与するべきという意見もある[62]。一方、あるノーベル賞受賞者は「証拠(実験ノート)を出さなければ不正とみなす」という意見を2014年の国会で述べた[63]。証拠を出さないことをもって不正を認定することの法的妥当性については懸念もあるが[64]、認定は可能との判例も地方裁判所で1例ある[65][66]

【利益相反】
[編集]

告発を受けた研究機関には、不正を認定すれば自らの評価が悪化するという利益相反がある[67]。例えば、告発を受けた大学・研究機関内部の研究者で構成される予備調査委員会が「論文の結論には影響しない軽微なものであるため不正はなかった」「掲載済みの論文に対する不正の疑いに関する調査は、当機構(研究機関)ではなく掲載した学術誌が責任をもって行うべき」といった解釈を行い、本調査を実施しなかった事例が2020年にあった[68]。このような利益相反の問題を解決するには、米国の研究公正局のような第三者機関の設置、すなわちタイプ3のシステムからの脱却が必要である。第三者機関は警察[62]でもよいかもしれない。日本でも第三者機関についての議論は行われてきたが[69][70]、「国の関与を強めると研究現場が萎縮する」とする意見も根強く、第三者機関の設置はこれまで見送られている[71]文科省幹部は匿名Aの事件の際に「(第三者機関が設置されても)告発が増えれば対応しきれない」とも述べている[71]

対策

[編集]

米国では1970年代半ばに研究不正が社会問題になったため、1980年頃から対策が進められてきた[72]。一方、日本では研究不正が表沙汰になることは最近まであまりなかった[5]。2013年のNature誌の記事においては、科学技術振興機構が研究不正を認定した数が1957年の設立以来ゼロであることが批判されていた[73]。そのような状態だった昔に比べれば、現状把握と対策が今の日本で行われていることは間違いない。一方、文科省の職員が、対策の方法に悩んでいることや、現状を深刻に見ていることが報道などで明らかにされている[74][75]。すなわち、現在の日本の対策は、十分効果があると評価されているわけではない。

教育

[編集]

研究倫理教育は世界各国で行われている[76]。日本では、STAP事件を契機として、公的研究費を用いる研究者に対して受講が義務化された。公正研究推進協会(APRIN)という研究倫理教育を考える一般財団法人も設立された[77]。しかしながら、日本分子生物学会で研究倫理教育を担当していた東京大学分子細胞生物学研究所の研究室において大量の不正論文が見つかった事件[47][78][79]を踏まえると、研究倫理教育で防止できるとは考えにくい。事実、事態を受けて研究倫理教育をさらに強化していた渦中の東京大学分子細胞生物学研究所で、2016年に2件目の大きな不正事件が発覚した[80]。しかし、現在も有志は教育手法の模索を続けている[81][82]

実験ノートやデータの保管の義務化

[編集]

実験ノートをしっかり書き、それを管理することが防止につながるとする意見がある。日本学術会議は、研究活動を記録した実験ノート、論文等を発表する根拠となった文書・数値・画像等、研究に関わる資料等を原則10年間保存することを義務づけるガイドラインを2015年に提唱した[83]

処罰

[編集]

国により異なるが、刑事による収監[84][85]医師免許剥奪[86][87][88]が行われる場合もある。中華人民共和国では死刑も定められている[89]。日本では死刑は定められていないが(関係者が自死したケースは複数存在する[90])、不正が公に認定された場合は何らかの人事処分と公的研究費申請資格の停止が一般に行われている。STAP事件のようにメディアに盛んに報じられた場合は、大きな社会的制裁を受ける。

評価方法の改革

[編集]

論文の定量的な評価に基づいている研究者の評価体系を、別のものへと変更する試みが欧州では始まっている[91]

エリザベス・ビクは、研究の評価体系を、再現性が確認された実績に基づくものに移行する必要があると主張している[92]。背景には、人工知能の利用拡大[93]によって、このままでは人間が真贋を見抜けない虚偽論文に学術界が占有されるという危機がある。

対策への苦言

[編集]

研究不正への対策が進むと若手研究者などが萎縮しチャレンジ精神が失われるという意見もある[94]

周囲の研究不正に気付く方法

[編集]

キャリアの浅い人が業界の慣行と研究不正を区別することは、一般的には難しい[95]。多くの場合、かなりの時間が経ってから気付くことになる。

出版後査読の役割を果たしているPubPeerには、多数の論文について疑惑の指摘を含めたコメントが掲載されている[96]。PubPeerを著者名や論文のタイトルで検索し、コメントの内容を吟味して判断することは可能かもしれない。

Retraction Watchは撤回論文のデーターベースを作っている[97]。検索し、論文の様態や撤回の理由を吟味して判断することは可能かもしれない。

巻き込まれた時の心構え

[編集]

弱い立場の大学院生やポスドクが研究不正に巻き込まれ、追試も出来ないような状態になると、過失がなくても多大な損害を受ける。もっとも大きな影響は、他人と協力することや科学全般についての絶望といった心の傷であると言われる[98]白楽ロックビルによると、政府や大学は、巻き込まれた大学院生やポスドクに対する手当や対応基準を用意していない。周辺の教員が個々に対応しているのが現状である[99]

The Lab[100]という研究不正に巻き込まれることを疑似体験できる米国の教材において、どのような選択肢を選んでも大学院生にはハッピーエンドがないことを科学技術振興機構は認めている[101]

仮に所属研究室の不正に気付いた場合は、研究室の運命を左右する問題を一人で背負うことは危険であるので、研究不正行為が行われている場から離れた後に信頼できる機関に情報提供することが望ましいとされる[102]。研究室から離れるには、研究不正を訴えるより人間関係の悪化を訴える方が容易と言われる[95]

内部告発は報復される危険性を伴う。告発により被告発者以外の組織構成員も被害を被る可能性があるため、報復する動機を持ち得るのは被告発者だけではない。純粋な被害者であっても、加害者の濡れ衣を着させられる可能性はある。データを捏造する人間や組織が無実の人の罪を捏造しない保証はない。

研究不正の疑惑がある研究室であっても、意義ある研究活動は可能かもしれない。例えば、疑惑が公に指摘されたり、論文撤回が行われたりしている研究室からノーベル賞の成果が生まれている例は多数存在する[103][104][105][106][107][108][109][110][111][112][113][114][115]

研究不正事件に巻き込まれてもキャリアが完全に閉ざされるわけではない。東京大学の研究不正事件に巻き込まれて博士号が取り消された学生が5年後に再び博士号を取得した例もある[116]

具体例

[編集]

全てを列挙することは現実的ではないので、(1)自殺者を含む死者を出した事件、(2)10名以上の健康被害を出した事件、(3)金銭的な影響が100億円を超える事件、(4)複数の国の複数の主要報道機関から数ヶ月以上記事が出稿された事件、(5)20報以上の論文に関わる事件、(6)過去に類似例のない事件、(7)極端に不適切な事後対応が行われた事件、(8)政府の政策や研究制度の変更を促した事件をここでは取り上げる。最終的に不正が認定されなかった事件を含む。

尚、お茶の水女子大学名誉教授の白楽ロックビルは、世界各国の研究不正の情報を日々収集し更新する巨大なデータベース[117][118]を作成している。

時期 事件名
関係者名
研究所
大学
事件内容
1909年 ピルトダウン人事件 1909年から1912年にかけてイギリスでチャールズ・ドーソンによって旧石器時代の人骨が"発見"され、「ピルトダウン人」と名づけられたが、捏造された偽造化石の可能性が当初から疑われていた。1953年に初めて偽造と判明した。
1926年 サンバガエル捏造事件 オーストリアの遺伝学者パウル・カンメラー英語版は、19世紀初頭にラマルクが唱えた用不用説を証明するために、サンバガエルを水中で交尾させることで婚姻瘤の発現が見られることを発表。ところが、他の研究者の検証によって婚姻瘤がカエルの足に着色することによる捏造だったことが判明。カンメラーは自らを陥れるための陰謀だと主張したが受け入れられず、ピストル自殺した[119]

ネオ・ラマルキズム」の項も参照。

1953年 DNAの二重らせん構造 ロザリンド・フランクリンの上司のモーリス・ウィルキンズは、フランクリンが得たDNAX線写真photo51」を、フランクリンに知らせることなくジェームズ・ワトソンに見せた。ワトソンは写真に写る黒い十字の模様がらせん構造を示していることに瞬時に気づき、フランシス・クリックと共にDNAの二重らせん構造のモデルをNature誌に直ちに発表した[120]

ワトソンとクリックとウィルキンズは1962年にDNAの構造の解明によってノーベル賞を受賞した。フランクリンは1958年に卵巣がんで死亡していた。 ワトソンは1968年の著書でフランクリンの写真をこっそり見たことを明かし、作家のアン・セイヤーなどから盗用であるとの非難を浴びた[121][122]

1974年 サマーリン事件 メモリアル・スローン・ケタリング癌研究所英語版 ウィリアム・サマーリンが、ネズミの皮膚にマーカーペンで黒い点を複数描き、皮膚移植が成功したかのように見せかけた[123]
1980年 アルサブティ事件 イラクからヨルダンを経てアメリカ合衆国へ留学した医師エリアス・アルサブティは、テンプル大学に研究職のポストを得るものの成績が振るわず失職。その後、ジェファーソン医科大学へ移籍したが、そこで実験データの捏造が発覚。大学を追われいくつもの研究機関を転々とするものの、その際に無名の学術雑誌に掲載されていた論文を多数盗用し別の無名の学術雑誌に投稿することを繰り返した。そのうち60数件が実際に掲載されアルサブティの実績となってしまったものの、アルサブティの技能の拙さに不審を感じた同僚研究者の調査や元の論文著者の抗議から事態が発覚。医師免許を剥奪された[87]
1981年 スペクター事件 コーネル大学 コーネル大学の大学院生マーク・スペクター (Mark Spector) は、ガン発生のメカニズムについて新発見をしたと発表。指導教授エフレイム・ラッカー英語版の指導の下スペクターは次から次へと成果を挙げたものの、実験データの不自然さと追試が成功しなかったことから実験データの捏造が発覚。論文が撤回されたばかりか経歴詐称までも判明し、スペクターは退学処分となった[124]
1981年 クローンマウス事件 ジェネーブ大学カール・イルメンゼードイツ語版アメリカジャクソン研究所のピーター・ホッペは、1977年にハツカネズミの体細胞から細胞核移植によってクローン生物を生成することができると発表。これまで哺乳類では不可能といわれていたクローンが、哺乳動物でも可能ということで世界的に反響をもたらしたが、他の実験者による再現実験では成功せず、さらにイルメンゼーがデータを故意に操作していたとの内部告発もあり、1981年にイルメンゼーの一連の研究は「捏造とは断定できないものの、信頼性に重大な疑問が残る」という調査結果を発表。イルメンゼーへの研究助成は打ち切られ、その後大学の職を辞する事となった。この事件以降、一時的にクローン生物研究は世界的に下火となった。
1986年 ボルティモア事件 マサチューセッツ工科大学 免疫学者テレザ・イマニシ=カリがデータを捏造したと部下が告発したが、イマニシの属していた研究室の主宰者だったデビッド・ボルティモア(ノーベル賞受賞者)がその告発を受け入れなかった。一度は有罪とされたが、再審査においては「証拠は見つからなかった」として告発は却下された。

この事件で真相究明が難航したことが、アメリカ合衆国の研究公正局 (ORI) の前身となった機関である科学公正局の設立のきっかけとなったとも言われることがある。

1992年 異常なオーサーシップ 有機元素化合物研究所 露・モスクワの有機元素化合物研究所 (IOC) の研究員は、10年間で948本もの論文の「共著」になっている。これは「IOCの施設を利用する見返りとして、IOCの人間を共著者に入れるのが慣習化していた」ことによるものであった。この件で研究員は1992年にイグノーベル賞を受賞した[125]。ギフトオーサーシップの究極的な例として取り上げられることがある。
1994年 ピアース事件 イギリスの産科医師ピアース (Malcolm Pearce) が、臨床例を捏造して、それをもとに論文を作成し、自身が編集委員を務める英国産科婦人科学会誌に発表した。編集委員長を論文共著者としていたが (= gift authership)、その編集委員長が辞任した[126]

英国が科学者による不正行為の対策に本格的に取り組むきっかけとなったともいわれる。

1997年 ヘルマン・ブラッハ事件 ウルム大学・リューベック大学 フリードヘルム・ヘルマンドイツ語版とマリオン・ブラッハ (Marion Brach) が、1988年から1996年の間に発表した細胞成長に関する37論文で、デジタル画像の捏造やデータ操作・偽造が行われたことが、両者の研究スタッフからの内部告発によって発覚。ヘルマンとブラッハは詐欺の容疑で起訴されたが、結局援助されていた資金を返還することで和解した[127]

ヘルマンとブラッハの研究はドイツ研究基金とドイツ癌研究援助基金から多額の資金援助を受けていたこともあり、5年後に発覚したベル研シェーン事件を含めてドイツ科学界に大きな影響を及ぼした[128]

1998年 MMRワクチン捏造論文事件英語版 ロイヤル・フリー病院 アンドリュー・ウェイクフィールドの「新三種混合ワクチン予防接種自閉症になる」という論文が『ランセット』に掲載された。12人の子供の患者を対象に研究し、「腸疾患」と「自閉症」と「三種混合ワクチン」が関連した新しい病気「自閉症的全腸炎(autistic enterocolitis)」を発見したと報告した。この論文掲載に対して『ランセット』は激しい批判に晒された。
2004年2月に『ランセット』は、同論文の一部撤回を発表し、2010年に『ランセット』は、この論文を正式に撤回した[129][88]

イギリスアメリカ合衆国カナダオーストラリアニュージーランドにおいて、ワクチン接種が激減、麻疹 に感染する子供が増加した。
アンドリュー・ウェイクフィールドは、イギリスの医師免許剥奪の懲戒処分を受けた。

2000年 旧石器捏造事件 東北旧石器文化研究所 東北旧石器文化研究所の副理事長が30年ほど前から発見していた旧石器が捏造であったことが、毎日新聞の2000年11月5日朝刊掲載のスクープによって暴露された[130][131][132][133]

発覚の影響は大きく、歴史の検定済教科書の記述削除を余儀なくされた。

2002年 ベル研究所の事件 ベル研究所 ベル研究所研究員が作成した、2000年から2001年にかけて『サイエンス』誌に掲載された論文10編および『ネイチャー』誌掲載の論文7編が全て捏造であることが判明し、全て撤回された。研究員はこの一件でベル研究所を解雇され、コンスタンツ大学からは博士の学位を剥奪された[134]

NHKの村松秀らがこの事件について作成した番組[135]は、多くの国際賞(バンフ・テレビ祭最優秀賞、アメリカ国際フィルム・ビデオ祭クリエイティブ・エクセレンス賞、アルジャジーラ国際テレビ番組制作コンクール銅賞)と科学技術映像祭・文部科学大臣賞を受賞した。

2002年 ヴィクトル・ニノフ バークレー研究所 1999年に最重元素(超ウラン元素)が発見されたとしていた研究の実験データが偽造されていたと判明し、論文を撤回[136]
2005年 大阪大学医学部論文不正事件 大阪大学 2005年6月に、作られたはずのノックアウトマウスが存在しなかったため、Nature Medicine誌の論文が撤回された。大阪大学は、筆頭著者の大学院生を実行犯と認定し、監督者の教員2名を停職処分にした。停職処分を受けた教員の1名が大学院生から600万円の金銭を受け取っていたことも調査過程で明らかになっていた。大学院生は教員2名に損害賠償を求める裁判を起こしたが、敗訴した[137]

尚、処分を受けた教員の1名が責任著者を務めるScience誌の論文が、再現が取れなかったとして2007年10月に撤回された。このScience誌の論文には、Nature Medicine誌の論文の不正で実行犯と認定された筆頭著者は関与していなかった。Science誌の論文の撤回の際には、大阪大学医学部の教授会において、責任著者の退職を求める怒号が飛び交った[要出典]

また、この責任著者や、Nature Medicine誌の筆頭著者を実行犯と認定した調査委員会の委員長は、後に匿名Aによる論文大量不正疑義事件で複数の論文について告発を受けた[138][139]

2005年 東京大学工学部のRNA研究室の事件 東京大学 教授の2人の部下、K1とK2が異常なペースでRNAに関する論文を発表していた。教授は2人のことを強く信用していた[26]。しかし、サンプルの譲渡を依頼されると「冷蔵庫が爆発した」という理由で断るなどしていたため[要出典]、業界では疑惑が長らく囁かれていた[140]。Nature誌の論文でHes1遺伝子を同名の別の遺伝子と取り違えていたこと[141]は疑惑を決定的にし、日本RNA学会が東京大学に調査を依頼した。K2が反証として提示したABIのシークエンサーのデータが、データ作成当時はABIから販売されていなかったはずの新しいバージョンのソフトウェアを用いて作られたものであったことなどから、2006年3月に「データは偽造された可能性が高い」とされた[142]

この不正行為から東京大学は教授とK2を懲戒解雇したが[143]、教授は解雇は不当として東京大学と裁判で争った。一審・二審ともに教授側の責任を認め「解雇は妥当」と結論付けた[144]。尚、K1は調査の時点で東大の外部に異動しており、調査対象にはなっていない。

2005年 ES細胞論文不正事件 ソウル大学 黄禹錫(ファン・ウソク)が行っていたクローン胚ES細胞研究に疑義が発生。2006年1月に調査委員会により捏造だと断定され、論文は撤回された[145]

黄禹錫は研究助成金など8億3500万ウォン(約6500万円)を騙し取ったと認定され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。

捏造が認定されたものの、NT-1株についての物質特許とES細胞の作成方法について、2011年カナダ2014年アメリカで特許が成立している。なお、韓国ではNT-1株の存在が認められておらず、訴訟が続いている[146]。後の検証でES細胞の作製と世界初となるヒトの単為生殖に成功していたことは認められたが、論文が不正であり、論文に記された作成に至る経過とは関係なく偶然できた物と検証されたため、世界初の業績であるとはみなされていない[147]

2006年 Jon Sudbø ノルウェー・ラジウム病院 口腔癌に関するJon Sudbøらの医学論文において、偽造データが使われていたことが判明[148][136][86]
2006年 大阪大学大学院生命機能研究科 大阪大学 助手を含む複数の共同論文著者らは、研究データを教授に改竄され、そのデータを含む論文を投稿されたと指摘した。助手はその後、毒物のアジ化ナトリウムを飲み自殺した。論文の不正は認定され、教授は懲戒解雇された。公開された調査報告書には教授が自殺した助手に宛て送っていたEメールが掲載されており、そこには「図9は、ご指摘の通り私がデータを捏造しました」などの生々しい文面が含まれていた[149]

この事件は日本分子生物学会で研究不正問題に関するシンポジウム[150]が開かれる契機となった。

2006年 政府要職者の不正 早稲田大学 研究費の大量流用が行われた。内閣府の総合科学技術会議議員や文部科学省の研究不正防止を検討する委員会主査代理などの要職も務めていた者の事件であったことから、この事件は国の研究資金の管理が厳しくなる大きな契機となった。
2007年 鹿児島大学医学部第三内科 鹿児島大学 鹿児島大学医学部の助教が発表した論文について、その論文を掲載した米国の学術誌から疑義の照会が2007年9月3日に届いた。助教は11月1日に自殺した。鹿児島大学は、助教が14本の論文で改ざんを行ったことを2008年5月16日に発表した[151][90]
2007年 東北大学助教 東北大学 2007年10月22日、鹿児島大学出身の東北大学助教の論文に不正が疑われるデータがあることが2ちゃんねるの「『どーすればなくなるか?捏造。』【参十三報目】」の430番目のレスで指摘された[要出典]

助教は2008年の細菌学会黒屋奨学賞を受賞した。受賞直後に疑義の指摘が学会員から細菌学会へなされた。細菌学会は16報の不正の疑いを認め、文科省と東北大学に伝達した。

東北大学は助教を2009年12月に懲戒解雇し、助教は東北大学を訴えた。仙台地裁は、助教の仮処分申請を受け、2010年5月14日に助教の解雇を無効とし、賃金の仮払いを命じる決定を出した。裁判官は「従前の実験データと類似したデータが、事後の実験でも得られることがあり得る。実験データを流用した不正行為の真偽は不明」と指摘し、また助教の再実験の申し出を東北大学が拒否したことは問題があったと認定した[152]

しかし結局1審の裁判で助教は敗訴した。控訴審でも判決は覆らず、懲戒解雇の取り消しと1000万円の慰謝料の支払いは認められなかった[153]

2018年に博士号の取り消しが行われた[154]

2007年 東北大学総長 東北大学 東北大学の総長に対して研究不正の疑義が内外から寄せられ[155]、様々な調査が行われたが、総長が自ら辞職することはなかった。東北大学の総長は告発した教授に対して名誉毀損の訴訟を起こした。
2010年 自称宇宙飛行士候補 東京大学宇宙航空研究開発機構 東京大学大学院工学系研究科の助教の経歴詐称、業績の捏造、剽窃が判明した。東大史上初の学位取り消しと懲戒解雇相当の処分が下された[156]

この事件の追及は主に11jigenにより行われた。これから2014年までの約5年間に日本で発生し公になった研究不正事件の発覚と告発の大半は11jigenが関与したものである。

2010年 琉球大学教授 琉球大学 修士論文や博士論文の発表会における学生の他律的な言動を見れば、何かが起きていることは誰もが容易に認識できる状態であった[要出典]。しかし大学は放置し、論文が出ていることをもって表彰すらしていた。

論文が投稿された学術誌から2010年3月に指摘を受け、同大学は4月に調査委を設置した。38編の論文について不正があるとの調査結果が発表され、教授は8月に一旦懲戒解雇処分となった。しかし、その後の訴訟の結果、和解が成立し解雇処分は無効となった。また、内部調査では不正ではないとされていた琉球大学学長自身が共著として名を連ねていた論文が、外部調査委により不正と認定され、内部調査の在り方へ疑念が広がった[157]

撤回された論文が博士号の根拠となっていた元学生については、博士号の取り消しが検討された。琉球大学は2011年1月12日に一部の元学生の博士号取り消しの方針を固め、2011年1月21日に文部科学省に連絡した。文部科学省は、方針を再考するよう琉球大学に促した。琉球大学は、2011年3月に、論文を訂正すれば博士号を取り消さない方針を決定した[158]

11jigenは前所属の長崎大学に別の論文の告発を行い、長崎大学は不正を認定した。解雇処分無効後の琉球大学の再雇用は長崎大学が不正を認定した論文を根拠に行われたので、11jigenは琉球大学はこの教授の再処分ができるはずだと2013年7月26日に主張した[4]。後に教授は科研費申請資格の停止処分を受けた。

2012年 東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野 東京大学 2011年の年末から2012年の年初にかけて、2ちゃんねるの「捏造、不正論文総合スレ4」と「捏造、不正論文総合スレ5」に、東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野が発表した20報以上の論文に不正が疑われるデータが掲載されていることが書き込まれた[159][160]11jigenが告発を行った。この研究室は、生命科学の業界では最も多くの公的予算を獲得していた研究室の一つであり、日本分子生物学会で若手を対象とした研究倫理教育をも担当していたため[150]、日本分子生物学会では非常に大きな問題になった[78][79][161]。東大の調査は3年に及び、最終的に33報の不正行為を2014年12月26日に認定した[47]。不正行為の認定にあたって、東大総長は自らをも処分した[162]。研究室の出身者が異動していた筑波大学や群馬大学でも関連して調査や処分が行われた。この事件は東大史上最悪の不祥事と呼ばれる[163]

2024年6月に発刊された生化学誌[164]の紙冊子において、2024年11月の日本生化学会大会で行われる核内受容体のシンポジウムで核内情報研究分野の主催者がオーガナイザーを務めることが記載された。一方、日本生化学会大会のホームページ[165]ではその記載が伏せられている。

2012年 172本の麻酔論文 東京医科歯科大学筑波大学東邦大学 東邦大学の准教授が発表した論文212本のうち172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を日本麻酔科学会が2012年に発表した。准教授は同年2月に東邦大学を諭旨免職処分となり、同年8月には日本麻酔科学会も自主的に退会した[166]

リトラクションウォッチ」によると、この准教授は、撤回論文数の個人別ランキング[7]で長らく世界1位であった。2023年7月に同じく麻酔科のドイツ人に撤回論文数を抜かれ世界2位となったことがリトラクションウォッチから発表された[167]

2012年 大規模な査読偽装 東亜大学校 韓国、釜山の東亜大学校教授が、論文を科学雑誌に投稿した際に、自身が管理できるようにしていた偽名科学者のメールアドレスを査読者の連絡先として推薦し、自分自身で査読し受理させるという前代未聞の研究不正が発覚した。合計35報の論文が撤回された[168][169]
2013年 ディオバン事件 京都府立医科大学東京慈恵会医科大学滋賀医科大学千葉大学名古屋大学 バルサルタン(商品名ディオバン)というノバルティスファーマが販売していた降圧剤についての臨床試験の論文が、京都府立医科大学東京慈恵会医科大学千葉大学名古屋大学滋賀医科大学から同時期に別々に発表された。一部の論文はディオバンが他の降圧剤に比べて脳卒中の割合等を大きく下げるというような画期的なデータを含んでいた。桑島巖は当初よりこの論文の内容を憂慮する発言を学会でしていたが[170]、大きな動きは起こることなく、ディオバンは論文の恩恵を受けたまま1兆円を超える売り上げを上げた。しかしながら、由井芳樹が論文データの統計的な不自然さをLancet誌で指摘したのをを契機として[171]、5つの大学のいずれの論文にも不正があることが判明し、また、いずれの論文の作成にもノバルティスファーマの社員が関わっているという利益相反の問題が発覚した[172][173]

この一連の不正論文によって安価な降圧剤が使われなくなったため、日本の医療費は数百億円~数千億円が無駄になったと言われる。ノバルティスファーマは国庫への返金や還元は行っていない。

ノバルティスファーマの社員は厚生労働省から刑事告発を受け、刑事裁判が行われた。社員が改ざんをしたことは認定されたが、告発の対象である薬事法違反に関しては無罪となった。論文の責任著者たちへの刑事告発は行われていない。

千葉大学を除いて論文の責任著者は引責した。千葉大学は、東京大学に異動していた論文の責任著者を処分するよう東大に勧告したが[174]、東大はこの責任著者の処分を行わず[175]、2023年6月13日には教育研究評議会において責任著者に名誉教授の称号を授与することを決定した[176]

毎日新聞の河内敏康と八田浩輔は、この事件についての一連の報道によって日本医学ジャーナリスト協会賞を受賞した。

千葉大学の論文の責任著者が出した別の基礎研究の論文についても、11jigenによって告発が行われた[177][178]

2014年 学長による報復懲戒解雇疑惑 岡山大学 2014年2月10日、岡山大学病院に勤務する教授らが執筆者となっている2006年発表のステロイドホルモンに関する論文についての不正を、同大学医歯薬学総合研究科の教授2人が学内の調査委員会に告発したことが週刊ポストに掲載された[179]。この論文には当時の岡山大学長が関わっていた。調査委は実際に切り貼りがあったと確認したにもかかわらず、本来必要となるデータと照合しないまま不正なしと判断し、文部科学省のガイドラインに則して調査結果は公表しなかったことが、2016年1月4日付の毎日新聞の報道で発覚した[180]。そして、告発をした2名の教授は懲戒解雇の処分をされた[181]。解雇は「論文不正があった」と記者に情報提供を行うなど大学の名誉や信用を傷つけた点や部下の教員にハラスメントを行ったとして、停職9か月の懲戒処分にするなどの点から大学教授に必要な適性を欠いていることから解雇となった。なお本件は裁判となったが、裁判所は大学側の訴えを認め、解雇された教授2人の地位保全は棄却しており、法的には「報復」と断定できない。

文部科学省のガイドラインでは、論文に不正がなかったと判断した場合は調査結果の公表はしないと定められており、大学側はそれに沿っての対応であった。この点は調査が所属機関に有利になるよう進められる、あるいは、杜撰な調査で不正が見逃されるなどしたとしても外部からの検証が困難になる問題点が指摘された[182]

岡山大学は、2023年の別件の論文不正疑惑では被疑者の不正を認定し、懲戒解雇にしたため[183][184][185][186]、研究不正を認定しない大学というわけではない。

2014年 STAP細胞事件 理化学研究所ハーバード大学東京女子医科大学 2014年1月末にSTAP研究が発表され、論文の筆頭著者は一夜にして時代の寵児になった。しかしながら、数週間後には様々な論文不正の疑義が発覚し、11jigenが決定的な不正の証拠を3月9日に指摘し、騒動の末、論文は撤回された。この騒動はメディアで極めて盛んに取り上げられ[187]、理化学研究所に関連する法案の提出延期や理化学研究所のセンターが解体される事態にまで発展した。NHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」が放送された直後の8月5日に、筆頭著者を指導した論文の共著者の一人自殺を遂げた。

毎日新聞の須田桃子はこの事件の取材過程を記した書籍[188]を出版し、大宅壮一ノンフィクション賞科学ジャーナリスト大賞を受賞した。筆頭著者は書籍「あの日」を出版し、自身の不正を否定した。自殺をした共著者の妻である未亡人は、STAP細胞が本当はあるというのであれば筆頭著者は小説を書く前に実験をしてほしいと述べた[189]

11jigenはこの事件における自身の活動の反響の大きさに戸惑い、引退を検討していることを読売新聞で表明した[190]

2014年 早稲田大学博士論文不正問題 早稲田大学 STAP事件の騒動の最中、STAP細胞論文の筆頭著者の早稲田大学博士論文の背景の数十ページが海外の公的文書のほぼ完全な剽窃であることを11jigenが2014年3月11日に見つけた。これを契機として、11jigenは早稲田大学先進理工学研究科の他の多数の学生の博士論文においても同様に大量の盗用剽窃が行われていることを2014年3月中に発見した。このため早稲田大学は、先進理工学研究科280本の博士論文の調査を行った[191]。早稲田大学は、62件の学位論文を訂正したが、STAP細胞論文の筆頭著者以外の学位の取り消しは行わなかったことを発表した[192]
2015年 匿名Aによる論文大量不正疑義事件 札幌医科大学東北大学東京慈恵会医科大学東京大学東京医科歯科大学慶應義塾大学日本大学金沢大学名古屋大学京都大学京都府立医科大学大阪大学大阪医科大学近畿大学関西医科大学徳島大学九州大学杏林大学立命館大学広島大学長崎国際大学宮城県立病院機構宮城県立がんセンター・国立感染症研究所国立病院機構京都医療センター理化学研究所 日本全国の様々な研究機関から発表された約80本の医学系の論文において、不正な人為的加工や流用などが疑われる画像データが掲載されていることが、2013年の日本分子生物学会年会のために開設されたウェブサイト「日本の科学を考える」の「捏造問題にもっと怒りを」というトピック[4]のコメント欄に、「匿名A」を名乗る人物によって、2014年12月30日から2015年1月3日の間に相次いで指摘された。2015年1月6日には同様の趣旨の匿名告発が文部科学省に対して文書で行われた。

2015年1月9日から報道が始まり、STAP事件よりはるかにスキャンダラスかつ重大な事件に発展する可能性も言及された[193]。衆議院でも議論が行われた[5]

最も多い28本の疑義が指摘された大阪大学は、責任著者が別の論文捏造事件で懲戒解雇された1本の論文を除く27本について予備調査を行い、1本については疑義を否定し、7本については不注意による誤使用と判断し、残りの19本については「データが残っていないため不正の事実が確認できず、これ以上の調査は困難」として調査を打ち切った[194]。12本の疑義が指摘された東京大学は、予備調査の結果、全ての論文について不正行為が存在する疑いはないと発表した[195]

参議院議員の櫻井充は、参議院議長への質問主意書において、東京大学は調査の内容を全く明らかにしていないと指摘した。また、調査責任者は被告発者と親しい医学部の研究者が務めたという情報を明らかにした[196]

「匿名A」は研究不正に関する匿名掲示板で以前から知られた存在だった[193][4]11jigenが過去に告発してきた論文の少なくとも一部は、匿名Aがオリジナルの疑義の指摘を匿名掲示板で行ったものと推測される[197][要出典]

「匿名A」は、大阪大学医学部は疑惑の画像が見つかる確率が他と比較して異常に高かったと主張した[193]

2015年 セラノス事件 セラノス社 スタンフォード大学を中退した19歳の女性が2003年にベンチャー企業をシリコンバレーに設立した。自社で開発した小型診断器により1滴の血液で200種類の病気の診断が安価にできると主張し、会社の時価総額は一時期1兆円を超えた。しかし、2015年に社員による内部告発がWall Street Journalに掲載され、血液検査に信憑性がないことが明らかとなった[198][199]。2018年に会社は解散し、社長および社長と恋人関係にあった幹部は起訴された。社長は禁固11年の判決を受けた。
2016年 Ordinary_researchersによる東京大学への論文不正疑義事件 東京大学 2016年8月末に、東京大学が医学系の論文不正の予備調査を行なっていることが報道された。2016年9月20日に、東京大学は、捏造及び改ざんの疑いがあるという匿名の申立てが2016年8月にあった6名の22報の論文について、本格的な調査を行なうことを明らかにした[200]

2017年8月3日、東京大学は、分子細胞生物学研究所の5報の論文を不正と認定し[80]医学部の論文については全て不正なしと一行だけ記載した文書を公開した[201][202]。調査報告書の全文は、大部分が黒塗りの状態で後日公開された[203]

東京大学の池上徹は、分子細胞生物学研究所の助教が研究不正とはやや言い難いデータを基に処分されたことは、医学部が全て不正なしとされたことと比較すると不合理であると2018年の分子生物学会で主張した[204]

2017年 東北地方太平洋沖地震及び熊本地震等の地震波データ捏造問題 大阪大学など 2017年9月27日、土木学会のホームページに突如記事が掲載された[205]。内容は、大阪大学准教授らが2016年に米国地震学会誌Seismological Research Lettersに論文発表した熊本地震の波形データについて重要な匿名の情報提供があり、深刻に受け止めて公的な対応を検討しているというものだった。

2019年1月26日、東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の地震波データについても不正をしていた疑いが強いことが報じられた[206]

2019年3月15日、大阪大学は調査結果を公表し、5報の論文に捏造や改ざんなどの不正行為が認定された[207]。調査中に准教授が死亡したため、北海道南西沖地震阪神大震災等を扱っていた残りの論文については判定留保又は判定不能となった。

2017年 骨粗鬆症予防のガイドライン 弘前大学 弘前大学の教授が筆頭著者である14報の論文に不正が認定された[208]。教授は自殺した[209]。撤回論文数は100報を超えている[210]。論文は骨粗鬆症予防のガイドラインにも影響を与えるものだった[211]
2017年 マイクロプラスチックの研究 ウプサラ大学 マイクロプラスチックが稚魚に影響の成長に悪影響を与えるというScience誌の論文に不正が認定された。この論文はマイクロプラスチックを規制する根拠になっていた[212]
2019年 ハルデン原子炉 ノルウェーエネルギー技術研究所 1990年から2005年の間にハルデン原子炉で行なった核燃料試験の結果が捏造されていたことが2020年5月に発表された[213]。この捏造データの調査が開始されたことは、日本の原子力規制委員会も2019年8月には把握していた[214]。2019年1月の原子力規制委員会の記者会見では、ハルデン原子炉の廃止が突然決まったことについて海外でも危機感を持たれていることが報告されていた[215]

2021年10月14日に原子力規制委員会で行われた第50回技術情報検討会において、安全性についての大きな影響はないという見解が示された[216]

2020年 パンデミック発生時における治療薬の臨床試験 サージスフィア社 2020年の新型コロナウイルスのパンデミック当初、ドラッグリポジショニングによる治療薬の探索が世界各地で行われた。その過程で、米国サージスフィア社などが、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、イベルメクチン等の薬剤の効果を調べた論文を2020年5月にNew England Journal of Medicine誌Lancet誌などの著名な雑誌等に掲載した。米国大統領がヒドロキシクロロキンを予防薬として飲んでいると発言したこともあり、論文は大きな注目を集め、これらの薬剤の投与が広く行われた。しかし、2020年5月末に一部の専門家からサージスフィア社に対する疑義が表明され[217]、2020年6月には、ガーディアン誌が、サージスフィア社がアダルトコンテンツのモデルを含む10人程度の従業員からなる小さな会社であり、データの信用性が疑わしいことを報道した[218]。これを受けて論文は撤回された[219][220][221][222]
2020年 肺がんの臨床試験 大阪大学国立循環器病研究センター 2015年から行われていた「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP(ハンプ)投与の多施設共同ランダム化第Ⅱ相比較試験(JANP study)」の根拠となる論文に不正があったことが2020年08月18日に発表された[223]。この論文の筆頭著者については、大量訂正の問題が過去に指摘されていた[224]。2021年に捏造と改ざんが認定され、論文は撤回された[225]。JANP studyは中止され、10件の健康被害が確認された[226]
2020年 前年のノーベル賞受賞者2名への大量疑義 ジョンズ・ホプキンズ大学オックスフォード大学 2020年のノーベル賞ウィークの最中、2019年のノーベル医学生理学賞受賞者2名の60報以上の論文に不自然な酷似画像等があることがPubPeerで指摘された[227][111]。ノーベル賞の受賞対象となったScience誌の論文[228]に対しても指摘があった。

2022年10月22日、17報の論文が撤回されたことが報じられた[229]

2020年 学術誌が圧力をかけられ論文撤回 エルゼビア社 肝臓病を患った24歳の女性が服用していたハーバライフ社のサプリメントに有害物質が含まれていたという論文がエルゼビア社の雑誌から2018年に発表された。著者には非がなかったが、圧力をかけられたエルゼビア社は論文を撤回した[230][231]
2022年 17歳の新入生の告発による学長の辞任 スタンフォード大学 ジャーナリストの両親のもとに生まれたテオ・ベーカーは、スタンフォード大学に入学した直後の2022年の秋に、スタンフォードの学長についてPubPeerに疑惑が出ていることを卒業生の先輩から教えてもらった[232]PubPeerの指摘は2015年頃から始まっていた。テオ・ベーカーは調査を行い、2022年の11月末に、学長が2000年頃からScience誌やCell誌などに発表した神経科学に関する論文の疑惑について、Stanford Daily誌に記事を書いた[233]。スタンフォード大学は学長の就任前にこの疑惑を検討しており、学長はScience誌に訂正を依頼したが、Science誌はミスによりその訂正を掲載しなかったとされている[234]。Genentech社が2009年のアルツハイマーに関するNature誌の論文について2011年に社内で検討し虚偽のデータを発見していたことも2023年2月に報じられた[235]。2023年7月に、ノーベル賞受賞者を含むScientific Panelistによる調査結果[236]と、学長の辞任が発表された(教授の地位には留まる)[237]。テオ・ベーカーはこの報道でジョージ・ポルク賞を受賞した。テオ・ベーカーは、ロサンゼルス・タイムズのインタビューにおいて、シリコンバレー最大手の弁護士事務所を介した脅迫を受けたことや、作業に1000時間以上を費やしたこと、エリザベス・ビク以外の大半は実名ではサポートしてくれなかったこと、大学の学業にも励んでいることを明らかにした[238]

テオ・ベーカーは、2023年の夏はドイツに滞在し、ウクライナとの戦争に使用する武器をロシアに提供している企業について追及を行っている[232]

2022年 インカレ査読不正 福井大学千葉大学金沢大学浜松医科大学 ムーンショットと呼ばれる内閣府の大型研究費を獲得していた福井大学教授は、査読誌に投稿した複数の論文について、査読者になりえる千葉大学教授、金沢大学教授、および浜松医科大学教授に査読コメントの草稿を提供していた。その草稿は、福井大学教授が論文の複数の共著者に指示して書かせていたものだった。千葉大学教授、金沢大学教授、および浜松医科大学教授は、その草稿を利用して査読誌に査読コメントを回答していた[239]
2023年 宇宙飛行士の不正隠蔽 筑波大学宇宙航空研究開発機構 宇宙航空研究開発機構(JAXA)所属の宇宙飛行士が代表者を務める大型研究事業(科研費新学術領域研究)において、データの捏造が行われていたことが2022年に報道された。報道当初においては、論文化がなされていないデータの捏造であり、特定不正行為には当たらないと説明されていた。しかしながら、2023年に、一部のデータが筑波大学から論文として発表されていたことが発覚した[240]
2023年 首脳陣への疑義の多発 国立循環器病研究センター 2023年に、以下の国立循環器病研究センターの幹部6人について、合計41報(重複除く)の論文不正疑惑が岩澤倫彦などによって報じられた[241][242][243][244]
  • 理事長
  • 理事(ナンバー3)
  • 創薬オミックス解析センター長(理事長特任補佐)
  • 副所⻑(告発直後にロンドン大学に異動)
  • 副院長
  • 副院長(弁膜症センター長)

尚、国立循環器病研究センターは、この6人の疑惑とは別に、元室長の研究不正について2023年6月に懲戒解雇相当の処分を行っていた[245]。また、この表で上述されている2020年に発表された肺がんの臨床試験の不正についても、別の元室長に2021年3月に懲戒解雇相当の処分を行っていた[246]。すなわち、短期間に不正や疑惑の報道が高位職に多発している。

上昌広は、大阪大学医学部循環器内科において20年前から不正行為が受け継がれていた可能性を指摘した[242]

2023年 線虫を用いた癌検査キット HIROTSUバイオサイエンス 線虫嗅覚研究でNature誌に論文[247]を発表するなどしていた東京大学出身の研究者が、2016年に日本にHIROTSUバイオサイエンスというベンチャー企業を設立した。線虫を用いた癌検査キット「N-NOSE」を販売し、2023年までに50万人分を売り上げた。N-NOSEのCMには紅白歌合戦で何年も司会を務めたような有名女優が出演した。HIROTSUバイオサイエンスは三井住友海上第一生命などの大手保険会社とも業務提携した。藤沢市松山市はN-NOSEをふるさと納税の返礼品にした。一方、N-NOSEは、厚生労働省による保険適用は受けていない。

2021年12月に週刊文春[248]がN-NOSEへの疑義を配信した。HIROTSUバイオサイエンスは反論を記したプレスリリースを発表した[249]。2023年9月にはNewspicks[250]がN-NOSEへの疑義を複数回配信した。Newspicksは、2023年の日本がん検診・診断学会総会において、HIROTSUバイオサイエンスに意図的に送付された10人の癌患者の検体が全て陰性と判定されたという学会発表を紹介していた。HIROTSUバイオサイエンスは反論を記した長文のプレスリリースを発表し、10人の癌患者の検体の偽陰性の原因は「標準化変換」という機構に因ると説明した[251]。救急医の木下喬弘はこの説明の問題点をnoteで指摘した[252]。2023年9月29日、HIROTSUバイオサイエンスはNewspicksの社員等に対して名誉毀損訴訟を行うことを発表した[253]。2023年10月1日、STAP事件後に毎日新聞からNewspicksに異動していた須田桃子は、癌検査キットへの疑義をまとめた動画をYouTubeで配信した[254]

疑義の報道以降もHIROTSUバイオサイエンスは活発に活動を行い、岐阜市立東長良中学校、尾花沢市立尾花沢中学校[255]普連土学園中学校[256]創価中学校[257]、愛知県豊橋市立牟呂中学校東海市立富木島中学校[258]、富山県片山学園中学校[259]、千葉県佐倉市立志津中学校、千葉県木更津市立木更津第一中学校、愛知県豊田市立上郷中学校、岐阜県大垣市立西中学校、岐阜県岐阜市立加納中学校[260]などから中学生を受け入れて教育を行った。文響社うんこドリルと提携し、がん検診についての冊子を全国の小学校に無償配布した[261]

須田桃子のNewspicksの記事は、2024年8月に江川紹子有働由美子塩田武士らが選考する調査報道大賞で奨励賞を受賞した[262]

須田桃子はNewspicksを退職したことを2024年11月4日に発表した。

参考:特許権・特許明細書における捏造

[編集]

特許の審査においては基本的に書面主義が採られており、書類上の一貫性が保たれていれば、発明の実施可能性や記述の科学的な正確性について、査読追試などによる検証は行われない。このため、金銭・利益優先で「架空のデータ」を用いた出願などの問題行為がまかり通ってしまっているとの指摘がある[注 1]

これらの検証は、特許の審査においては書類上その発明が実施可能と認められない場合(特許法36条)や、発明の実施可能性について第三者からの情報提供があった場合(特許法施行規則13条の2)に行われ、特許法194条には、その手段として、有識者への調査依頼なども定められている。また、より一般的には、特許が認められた後において、第三者が発明の実施可能性を理由として特許無効の審判を提起した際に行われる。さらに、刑事上は、虚偽の記載などの詐欺行為によって特許を受けた場合には、いわゆる特許詐欺罪に問われ、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる(特許法197条)。特許詐欺罪は特許審査官を欺罔する罪であり、国家的権威・機能の阻害から保護することが立法の目的[264]である。

出願する上で重要となるのは、多くの観点からの請求項を含む特許請求の範囲(クレーム)や、上位概念的な請求項から実施例に対応した請求項まで多段階にわたる特許請求の範囲を、出願時に作成することである。

幅の広いクレームを作成することによって、より権利範囲の広い特許を取得することができるため、実際には実験を行っていない範囲についてまで実施例として記載するなど、明らかに科学的手法を逸脱した記述の体裁が積極的に採用されることがある[要出典][注 2]。また、技術的な詳細の機微(ノウハウ)を可能な限り隠匿することで追従者の追跡を遅らせる意図から、実際には実験を行っていないにも関わらず、利用可能性のある要素すべてを網羅したり、数値範囲を広く記載するケースもある[要出典][注 3]

科学や学術論文の執筆の領域では、公表時点で捏造改竄が問題になる。したがって、特許出願と同様の感覚で不正なデータを含む論文を公表した場合、科学の世界では科学の世界なりの処分が下る。ただし、近年、実験データを捏造して特許を出願した大学の研究者が処分された例なども出てきており、特許出願であるからデータの捏造が認められるという感覚は通用しなくなってきている[265]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 特許においての争点は新規性であり、データの正確性でないこと。またそのために不正確であったり捏造データを用いた出願が横行し、それによって学会・産業界がデータの再現性をめぐる混乱を来たすことが指摘されている[263]
  2. ^ 例えば、実際にはある素材の組成として物質Aを20〜30%含む場合しか実験していないのに、10〜50%含む場合も実施例として記載することにより、権利範囲を拡張することがある[要出典]
  3. ^ 例えば、ある素材を焼成するのにA元素にB元素をドーパントとして利用する場合、B元素を隠匿する目的で同族元素を列挙したり[要出典]、ドープ量の比率を0.1〜30.0%、より適切には0.3〜10.0%などと実態を可能な限り把握されない工夫がなされる[要出典]

出典

[編集]
  1. ^ “Handling of scientific dishonesty in the Nordic countries”. Lancet 354 (9172): 57–61. (July 1999). PMID 10406378. https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(98)07133-5/fulltext. 
  2. ^ a b 研究不正と歪んだ科学 STAP細胞事件を超えて. 日本評論社. (2019.11). ISBN 978-4-535-78767-4. OCLC 1130748385 
  3. ^ Fisher, R.A. (1936). “Has Mendel's work been rediscovered?”. Annals of Science 1 (2): 115–137. doi:10.1080/00033793600200111. https://hdl.handle.net/2440/15123. 
  4. ^ a b c d 捏造問題にもっと怒りを 日本の科学を考える 2016年12月6日閲覧。メンデルについての記述は、近藤滋の2013年7月30日のコメントにある。
  5. ^ a b c 第189回国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号 衆議院 2015年5月19日 2022年11月20日閲覧.
  6. ^ 4 告発等に係る事案の調査:文部科学省”. www.mext.go.jp. 2023年3月7日閲覧。
  7. ^ a b The Retraction Watch Leaderboard” (英語). Retraction Watch (2015年6月16日). 2022年12月15日閲覧。
  8. ^ 学術研究フォーラム 第7回学術シンポジウム 科学研究のよりよき発展と倫理の確立を目指して」(日本学術振興会学術システム研究センターの黒木登志夫相談役の資料)”. www.jsps.go.jp. 日本学術振興会 (2015年11月27日). 2022年12月15日閲覧。
  9. ^ 黒木登志夫『研究不正 - 科学者の捏造、改竄、盗用』中公新書、2016年4月。ISBN 978-4-12-102373-5OCLC 948050482https://www.worldcat.org/oclc/948050482 
  10. ^ Researcher at the center of an epic fraud remains an enigma to those who exposed him” (英語). www.science.org (2018年8月17日). 2022年12月15日閲覧。
  11. ^ サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン(榎木英介) - 個人”. Yahoo!ニュース (2018年8月22日). 2022年12月15日閲覧。
  12. ^ 日本は「科学論文の捏造大国」とみられている”. 東洋経済オンライン (2018年9月19日). 2022年12月15日閲覧。
  13. ^ 相次ぐ論文不正 背景に研究費獲得への焦りか 京都大不正”. 毎日新聞. 2022年12月15日閲覧。
  14. ^ ネイチャー誌が糾弾~日本発最悪の研究不正が暴く日本の大学の「不備」(榎木英介) - 個人”. Yahoo!ニュース (2019年6月26日). 2022年12月15日閲覧。
  15. ^ 日本が世界トップの論文不正大国になってしまった理由”. ダイヤモンド・オンライン (2019年9月2日). 2022年12月15日閲覧。
  16. ^ 日本で研究不正がはびこり、ノーベル賞級研究が不可能である理由”. Newsweek日本版 (2020年10月28日). 2022年12月15日閲覧。
  17. ^ 大石久和 (2021年2月1日). “【多言数窮】|(株)時評社”. www.jihyo.co.jp. 2022年12月15日閲覧。
  18. ^ 大規模研究不正ふたたび〜医学界は自浄能力を示せるか(榎木英介) - 個人”. Yahoo!ニュース (2021年5月29日). 2022年12月15日閲覧。
  19. ^ 科学の森:国民の安全脅かす「研究不正」 倫理向上願いサイト開設8年”. 毎日新聞. 2022年12月15日閲覧。
  20. ^ 研究不正 | 中国新聞デジタル”. 研究不正 | 天風録、中国新聞デジタル (2022年11月28日). 2022年12月15日閲覧。
  21. ^ 『あなたの知らない研究グレーの世界』中外医学社、2023年11月6日、13頁。ISBN 978-4498148482 
  22. ^ 2018年 日本分子生物学会 ワークショップ 3AW-14 生命科学分野における実践的研究倫理教育を目指して オーガナイザー池上徹、原田英美子(演者の一人がフロアから述べた意見)”. 日本分子生物学会. 2022年11月6日閲覧。
  23. ^ 国際競争時代の研究公正 (『研究不正と歪んだ科学: STAP細胞事件を超えて』出版記念シンポジウム)中村征樹の総合討論での発言”. カセイケン(一般社団法人科学・政策と社会研究室) (2020年1月15日). 2022年11月6日閲覧。
  24. ^ 前田なお『本当の声を求めて 野蛮な常識を疑え』青山ライフ出版(SIBAA BOOKS)、2024年。 
  25. ^ 中村, 征樹; ナカムラ, マサキ; Nakamura, Masaki (2011-12-25). “研究不正への対応を超えて : リサーチ・インテグリティ・アプローチとその含意”. メタフュシカ 42: 31–46. doi:10.18910/23321. https://hdl.handle.net/11094/23321. 
  26. ^ a b 2008年12月 日本分子生物学会 若手教育シンポジウム 記録全文 『今こそ示そう科学者の良心2008 -みんなで考える科学的不正問題-」”. 分子生物学会 (2008年12月9日). 2022年10月30日閲覧。
  27. ^ 「研究不正4つのパターン」捏造を目にした研究者が明かす(AERA 2014年6月23日号掲載)”. AERA dot. (アエラドット) (2014年6月18日). 2022年11月19日閲覧。
  28. ^ Martinson, Brian C.; Anderson, Melissa S.; de Vries, Raymond (2005-06). “Scientists behaving badly” (英語). Nature 435 (7043): 737–738. doi:10.1038/435737a. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/435737a. 
  29. ^ a b c 第36回日本分子生物学会・年会企画 アンケート 集計結果”. 日本分子生物学会. 2020年11月10日閲覧。
  30. ^ Else, Holly; Van Noorden, Richard (2021-03-23). “The fight against fake-paper factories that churn out sham science” (英語). Nature 591 (7851): 516–519. doi:10.1038/d41586-021-00733-5. https://www.nature.com/articles/d41586-021-00733-5. 
  31. ^ Grudniewicz, Agnes; Moher, David; Cobey, Kelly D.; Bryson, Gregory L.; Cukier, Samantha; Allen, Kristiann; Ardern, Clare; Balcom, Lesley et al. (2019-12). “Predatory journals: no definition, no defence” (英語). Nature 576 (7786): 210–212. doi:10.1038/d41586-019-03759-y. https://www.nature.com/articles/d41586-019-03759-y. 
  32. ^ 湯浅 達朗 (2021年12月3日). “組織的にニセ論文を「製造」しているpaper mill”. 日本分子生物学会. 2022年11月23日閲覧。
  33. ^ NewsPicks編集部 (2022年1月24日). “驚きの論文工場。中国発「フェイクペーパー」が増殖中”. NewsPicks. 2022年11月20日閲覧。
  34. ^ Problematic images found in 4% of biomedical papers Nature News 22 April 2016 2016年12月9日閲覧
  35. ^ a b Bik, Elisabeth M.; Casadevall, Arturo; Fang, Ferric C. (2016-07-06). Sibley, L. David. ed. “The Prevalence of Inappropriate Image Duplication in Biomedical Research Publications” (英語). mBio 7 (3): e00809–16. doi:10.1128/mBio.00809-16. ISSN 2161-2129. https://journals.asm.org/doi/10.1128/mBio.00809-16. 
  36. ^ Mounir Errami, Harold Garner (2008). “A tale of two citations”. Nature 451: 397-399. https://doi.org/10.1038/451397a. 
  37. ^ Singh Chawla, Dalmeet (2023-01-05). “Unearned authorship pervades science” (英語). Nature. doi:10.1038/d41586-023-00016-1. https://www.nature.com/articles/d41586-023-00016-1. 
  38. ^ Wadman, Meredith (2013-08-01). “NIH mulls rules for validating key results” (英語). Nature News 500 (7460): 14. doi:10.1038/500014a. http://www.nature.com/news/nih-mulls-rules-for-validating-key-results-1.13469. 
  39. ^ Collaboration, Open Science (2015-08-28). “Estimating the reproducibility of psychological science” (英語). Science 349 (6251). doi:10.1126/science.aac4716. ISSN 0036-8075. PMID 26315443. https://science.sciencemag.org/content/349/6251/aac4716. 
  40. ^ Errington, Timothy M; Denis, Alexandria; Perfito, Nicole; Iorns, Elizabeth; Nosek, Brian A (2021-12-07). Rodgers, Peter; Franco, Eduardo. eds. “Challenges for assessing replicability in preclinical cancer biology”. eLife 10: e67995. doi:10.7554/eLife.67995. ISSN 2050-084X. https://doi.org/10.7554/eLife.67995. 
  41. ^ Mullard, Asher (2021-12-09). “Half of top cancer studies fail high-profile reproducibility effort” (英語). Nature 600 (7889): 368–369. doi:10.1038/d41586-021-03691-0. https://www.nature.com/articles/d41586-021-03691-0. 
  42. ^ More than half of high-impact cancer lab studies could not be replicated in controversial analysis” (英語). www.science.org. 2022年2月5日閲覧。
  43. ^ 下村博文文部科学大臣記者会見録(平成27年1月30日):文部科学省”. warp.ndl.go.jp. 2023年8月19日閲覧。
  44. ^ https://twitter.com/madam0523/status/460766449884078080”. Twitter. 2023年8月21日閲覧。
  45. ^ itest.5ch.net”. 5ちゃんねる. 2023年8月21日閲覧。
  46. ^ itest.5ch.net”. 5ちゃんねる. 2023年8月21日閲覧。
  47. ^ a b c 論文不正は止められるのか ~始まった防止への取り組み~”. NHK クローズアップ現代+ 2015年3月10日(火)放送. 2019年11月19日閲覧。
  48. ^ 井山弘幸・金森修『現代科学論 科学をとらえ直そう』(初)新曜社、2000年、81頁。ISBN 4-7885-0740-4 
  49. ^ 馳浩文部科学大臣記者会見録(平成27年10月7日):文部科学省”. warp.ndl.go.jp. 2022年11月18日閲覧。 “(馳浩文部科学大臣の発言)目の前にある経済成長に資するとか短期的なものではなくて、長期的な視野に立った世界的な発明でありますし、それは後世に伝わるものであるという評価をいただいていると思います。この地道な、「地道にこつこつ」というのはどこかで聞いたことがありますけれども、研究者の皆さんは、本当に、暗闇の中で一筋の光を見つけていくような、時には大胆な、その論を研究によって、実験によって裏打ちするような途方もない御努力の中での、もしかしたらみんながみんな成果を挙げることはできないけれども、たった一つの成果が本当に世界のために、人類のために、宇宙のために役に立つというのがノーベル賞の一つの評価でありますから(中略)また今、研究されている方々にも、大変であり、本当に先の見えない研究かもしれませんが、必ず遠くに、きっと成果を得ることができて、それは誰かのためになると、そんな考え方といったものを、科学技術研究開発の行政においては、その志をしっかり研究者の皆さんには持っていていただきたいです。”
  50. ^ Research Integrity and Article Retractions with Dr Marie Soulière” (英語). ScienceTalks (2022年3月14日). 2022年12月8日閲覧。 “I remember clearly in the interview I had with a higher researcher who was supposed to make a decision on the application, and at the end, his final comment was, your application is really great, but you have not published in Nature or Science, so I don’t think you will get that fellowship.”
  51. ^ 大学10兆円ファンド、有力論文「5年1000本」を選考基準”. 日本経済新聞 (2022年11月15日). 2022年11月18日閲覧。
  52. ^ 日本医療研究開発機構 中長期目標 : 健康・医療 - 内閣府”. www8.cao.go.jp. 2022年11月18日閲覧。 “(国立研究開発法人日本医療研究開発機構の中長期目標<令和4年7月6日変更>の10ページ) 令和6年度までの成果目標(KPI)を以下のとおり設定する。(中略)研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 400件 (国立研究開発法人日本医療研究開発機構の中長期目標<令和4年7月6日変更>の12ページ) 令和6年度までの成果目標(KPI)を以下のとおり設定する。(中略)研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 900件 (国立研究開発法人日本医療研究開発機構の中長期目標<令和4年7月6日変更>の13ページ) 令和6年度までの成果目標(KPI)を以下のとおり設定する。(中略)研究成果の科学誌(インパクトファクター5以上)への論文掲載件数 400件”
  53. ^ 歳出改革部会(令和4年11月14日開催)資料一覧”. 財務省. 2022年11月18日閲覧。 “(資料2「文教・科学技術」の26ページ目)研究開発費に対して注目度の高い論文(Top10%論文)の数が少なく、論文の生産性が主要先進国に比べて低水準となっており、研究開発の投資効果の引上げが課題。”
  54. ^ 柳田充弘(文化勲章受章者). “研究不正をさせないためのラボの条件 | 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ”. 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ. 2022年11月15日閲覧。
  55. ^ 日本分子生物学会 若手教育シンポジウム 2007年『‐今こそ示そう科学者の良心‐みんなで考える科学的不正問題‐』”. 日本分子生物学会. 2022年11月16日閲覧。 “(加藤の発言)論文が通る前は、危ないですよね。リバイスで論文が来てということと、あと、それはだからボスもすごく気をつけなきゃいけないし、やっている本人もちゃんと考えなきゃいけないと思うんですけど。”
  56. ^ Else, Holly (2022-11-03). “eLife won’t reject papers once they are under review — what researchers think” (英語). Nature. doi:10.1038/d41586-022-03534-6. https://www.nature.com/articles/d41586-022-03534-6. 
  57. ^ 製薬マネーデータベース YEN FOR DOCS”. 製薬マネーデータベース YEN FOR DOCS. 2022年11月22日閲覧。
  58. ^ 講師謝金、学会理事1割に集中 「処方ゆがむ恐れ」 医師NGO調査”. 毎日新聞 (2019年6月22日). 2022年12月10日閲覧。
  59. ^ 松澤孝明「諸外国における国家研究公正システム(2) 特徴的な国家研究公正システムモデルの比較分析」『情報管理』第56巻第11号、国立研究開発法人 科学技術振興機構、2014年、766-781頁、CRID 1390001205508341376doi:10.1241/johokanri.56.766ISSN 0021-7298 
  60. ^ 「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日 文部科学大臣決定)”. 文部科学省. 2021年1月10日閲覧。
  61. ^ 国際競争時代の研究公正 (『研究不正と歪んだ科学: STAP細胞事件を超えて』出版記念シンポジウム) 榎木英介の発言”. カセイケン(一般社団法人科学・政策と社会研究室) (2020年1月15日). 2022年10月21日閲覧。
  62. ^ a b 1‐3‐2.研究ネカトは警察が捜査せよ! | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月6日閲覧。
  63. ^ 小保方晴子の呪い…iPS山中教授に飛び火した「データ捏造疑惑」実験ノートも不備”. J-CAST テレビウォッチ (2014年5月2日). 2022年11月6日閲覧。
  64. ^ 小川 明 (2015年2月9日). “研究不正の防止や対応の強化で議論百出(2015年2月5日に日本学術会議が主催した学術フォーラム「科学研究における健全性の向上」の取材記事)”. Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」. 2022年11月6日閲覧。
  65. ^ sskdlawyer (2022年10月20日). “研究活動の不正、論文不正を理由とする懲戒解雇-立証責任の所在はどのように理解されるのか - 弁護士 師子角允彬のブログ”. 弁護士 師子角允彬のブログ. 2022年11月19日閲覧。
  66. ^ sskdlawyer (2022年10月21日). “研究不正に対する調査協力義務 - 弁護士 師子角允彬のブログ”. 弁護士 師子角允彬のブログ. 2022年11月19日閲覧。
  67. ^ 「諸外国の研究公正の推進に関する調査・分析業務 成果報告書」(平成30年度 文部科学省 委託事業)”. 文部科学省. 2021年1月10日閲覧。
  68. ^ 「チバニアン」GSSP申請論文における特定不正行為の告発と、その後の研究機関の回答について”. 古関東深海盆ジオパーク推進協議会. 2021年3月19日閲覧。
  69. ^ 八田, 浩輔 (2013年12月12日). “研究不正:自浄期待は「理想論」 日本分子生物学会が防止策を議論”. 毎日新聞. オリジナルの2013年12月24日時点におけるアーカイブ。. http://scienceandtechnology.jp/archives/2036 
  70. ^ 2013年 分子生物学会理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」6.まとめ、今後の課題と次のアクション”. 日本分子生物学会. 2022年11月18日閲覧。
  71. ^ a b 不正防止へ、みえぬ有効策 ネットで指摘増える 「STAP論文」1年朝日新聞 竹石涼子、野瀬輝彦、合田禄 2015年1月29日 2022年11月19日閲覧
  72. ^ 小竹雅子「米国の大学における研究倫理教育の制度化過程を辿る:1980年代以降の主要な変化とその要因を中心として」『研究 技術 計画』第37巻第3号、研究・イノベーション学会、2022年11月、371-383頁、CRID 1390857063658341248doi:10.20801/jsrpim.37.3_371ISSN 0914-7020 
  73. ^ “A record made to be broken” (英語). Nature 496 (7443): 5–5. (2013-04). doi:10.1038/496005a. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/496005a. 
  74. ^ AERA 2013年8月26日号「急増する大学論文不正と研究者の競争激化」』朝日新聞出版https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=15203 
  75. ^ 日本分子生物学会 2013年 理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」セッション 4. 研究不正を防ぐ研究費配分システム”. 日本分子生物学会 (2013年12月4日). 2022年11月19日閲覧。
  76. ^ 海外の教材(THE LAB以外) │ 研究公正ポータル │ 国立研究開発法人 科学技術振興機構”. 研究公正ポータル. 2022年12月10日閲覧。
  77. ^ 公正研究推進協会 | APRIN”. 2022年11月22日閲覧。
  78. ^ a b 「論文不正問題に関する早急な情報開示の要望書」”. 日本分子生物学会 (2012年11月8日). 2022年11月13日閲覧。
  79. ^ a b 緊急フォーラム「研究不正を考える -PIの立場から、若手の立場から-」全文記録 分子生物学会(2012.12.11)(PDF 330KB) 2016年12月6日閲覧
  80. ^ a b NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~ NHK 2017年12月10日
  81. ^ 原田英美子、池上徹. “ポストコロナ時代の研究倫理教育 ─効果的な遠隔講義の立案に向けて. 日本の科学者 Vol.56 No.5 May 2021”. 日本科学者会議. 2022年11月20日閲覧。
  82. ^ 原田 英美子. “2018年11月30日 日本分子生物学会ワークショップ 生命科学分野における実践的研究倫理教育を目指して 研究不正問題の包括的理解と 実践的な解決法の探索”. researchmap.jp. 2022年11月20日閲覧。
  83. ^ 科学研究における健全性の向上について 平成27年(2015年)3月6日 日本学術会議
  84. ^ エリック・ポールマン(Eric T. Poehlman)(米) | 白楽の研究者倫理” (2018年2月2日). 2020年11月10日閲覧。
  85. ^ ドンピョウ・ハン(Dong-Pyou Han)(米)改訂 | 白楽の研究者倫理” (2015年7月15日). 2020年11月10日閲覧。
  86. ^ a b ヨン・スドベ (Jon Sudbø) (ノルウェー)改訂 | 白楽の研究者倫理” (2018年5月15日). 2020年11月10日閲覧。
  87. ^ a b エリアス・アルサブティ (Elias Alsabti)(米) | 白楽の研究者倫理” (2018年10月12日). 2020年11月10日閲覧。
  88. ^ a b アンドリュー・ウェイクフィールド (Andrew Wakefield)(英)改訂 | 白楽の研究者倫理” (2018年4月15日). 2020年11月10日閲覧。
  89. ^ “研究不正を犯したら~死刑もある中国、おとがめなしの日本(榎木英介) - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース 個人. https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/808f49922f12bd7343456e11af4d38e111566796 2020年11月10日閲覧。 
  90. ^ a b 1‐5‐9.研究ネカトで自殺者をだすな!”. 研究倫理(ネカト、研究規範). 白楽ロックビル. 2019年5月4日閲覧。
  91. ^ 論文の査読「自作自演」 新たな研究不正発覚、遠い根絶への道(写真=共同)”. 日本経済新聞 (2023年3月2日). 2023年3月7日閲覧。
  92. ^ Bik, Elisabeth (2022年10月29日). “Opinion | Science Has a Nasty Photoshopping Problem” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. オリジナルの2022年10月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221031020644/https://www.nytimes.com/interactive/2022/10/29/opinion/science-fraud-image-manipulation-photoshop.html 2022年11月4日閲覧。 
  93. ^ AI Holds Potential to Support Ethical Principles in Hematology—but There’s a Dark Side”. web.archive.org. The American Journal of Managed Care (2022年6月11日). 2022年11月22日閲覧。
  94. ^ 研究不正「基盤むしばむ」 首相、総合科技会議で対策指示”. 日本経済新聞 (2014年4月14日). 2022年11月5日閲覧。
  95. ^ a b 田中智之 (2021). “「研究不正」を見つけたら……”. 現代化学 604: 30-33. 
  96. ^ 1‐5‐6 パブピア(PubPeer) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月23日閲覧。
  97. ^ Retraction Watch Database”. retractiondatabase.org. 2022年11月4日閲覧。
  98. ^ When Your Supervisor Is Accused of Research Misconduct” (英語). The Scientist Magazine®. 2020年11月6日閲覧。
  99. ^ 白楽ロックビル (2020年11月5日). “7-64 ネカト被災者 | 白楽の研究者倫理”. 2020年11月7日閲覧。
  100. ^ The Lab”. 国立研究開発法人科学技術振興機構. 2020年11月10日閲覧。
  101. ^ 「The Lab: Avoiding Research Misconduct」の体験”. 日本分子生物学会2018年年会. 2020年11月10日閲覧。
  102. ^ 田中智之・小出隆規・安井裕之 (2018-06-08). 科学者の研究倫理. 東京化学同人. pp. 99. ISBN 978-4807909476 
  103. ^ Katsnelson, Alla (2010-09-23). “Nobel-winning brain researcher retracts two papers” (英語). Nature. doi:10.1038/news.2010.489. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/news.2010.489. 
  104. ^ “京大 山中教授が自身の論文巡り会見”. NHK. (2014年4月28日). オリジナルの2014年5月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140501050729/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140428/k10014091181000.html 2022年8月28日閲覧。 
  105. ^ 論文9本に捏造や改ざん、熊本大院教授らの不正認定:朝日新聞デジタル”. web.archive.org (2015年3月22日). 2022年11月13日閲覧。
  106. ^ マイケル・ロスバッシュ(Michael Rosbash)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月13日閲覧。
  107. ^ ルイ・イグナロ(Louis Ignarro)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月13日閲覧。
  108. ^ Wang, Jishu; Shinkura, Reiko; Muramatsu, Masamichi; Nagaoka, Hitoshi; Kinoshita, Kazuo; Honjo, Tasuku (2008-01-04). “Identification of a specific domain required for dimerization of activation-induced cytidine deaminase”. The Journal of Biological Chemistry 283 (1): 660. doi:10.1016/S0021-9258(20)71425-0. ISSN 0021-9258. PMID 18210667. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18210667/. 
  109. ^ マーティン・エヴァンズ(Martin Evans)(英)ノーベル賞受賞者 | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月13日閲覧。
  110. ^ Jaakkola, Panu; Mole, David R.; Tian, Ya-Min; Wilson, Michael I.; Gielbert, Janine; Gaskell, Simon J.; Kriegsheim, Alexander von; Hebestreit, Holger F. et al. (2001-04-20). “Targeting of HIF-α to the von Hippel-Lindau Ubiquitylation Complex by O 2 -Regulated Prolyl Hydroxylation” (英語). Science(PubPeer). https://pubpeer.com/publications/4A1C3DA72976E304A92E8F4523E752. 
  111. ^ a b グレッグ・セメンザ(Gregg Semenza)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  112. ^ 化学:フランシス・アーノルド(Frances Arnold)、インハ・チョ(Inha Cho、조인하、曹仁河)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月13日閲覧。
  113. ^ 化学:フレイザー・ストッダート(Fraser Stoddart)(米)ノーベル賞受賞者 | 白楽の研究者倫理”. 2023年10月4日閲覧。
  114. ^ ブルース・ボイトラー(Bruce Beutler)(米)ノーベル賞受賞者 | 白楽の研究者倫理”. 2023年10月4日閲覧。
  115. ^ ロバート・レフコウィッツ(Robert Lefkowitz)(米)、マイルズ・ハウスリー(Miles Houslay)(英) ノーベル賞受賞者 | 白楽の研究者倫理”. 2023年10月5日閲覧。
  116. ^ 藤木亮次『次世代シーケンサーによる遺伝子解析の精度保証に関する研究』東京大学、2020年3月3日。doi:10.15083/0002004215https://doi.org/10.15083/00020042152022年10月24日閲覧 
  117. ^ 白楽の研究者倫理 | ネカト(ねつ造・改ざん・盗用)・クログレイ・性不正(含・セクハラ)・アカハラ・・・白楽ロックビルのバイオ政治学”. 2022年11月22日閲覧。
  118. ^ 鳥井真平 (2022年3月18日). “「ネカト許さない文化を」 告発続ける75歳 日本は研究不正大国”. 毎日新聞. 2022年3月20日閲覧。
  119. ^ パウル・カンメラー(Paul Kammerer)(オーストリア) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  120. ^ Watson, J. D.; Crick, F. H. C. (1953-04). “Molecular Structure of Nucleic Acids: A Structure for Deoxyribose Nucleic Acid” (英語). Nature 171 (4356): 737–738. doi:10.1038/171737a0. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/171737a0. 
  121. ^ 『ロザリンド・フランクリンとDNA―ぬすまれた栄光』草思社、1979年6月1日。 
  122. ^ 「二重らせん」のワトソンとクリックを告発する理由 | MRのための読書論 | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 2022年12月8日閲覧。
  123. ^ ウィリアム・サマリン(William Summerlin)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  124. ^ マーク・スペクター(Mark Spector)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  125. ^ 『イグ・ノーベル賞』、マーク・エーブラハムズ。阪急コミュニケーションズ。
  126. ^ マルコム・ピアース(Malcolm Pearce)(英)改訂 | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  127. ^ フリートヘルム・ヘルマン(Friedhelm Herrmann)、マリオン・ブラッハ(Marion Brach)(独) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  128. ^ 藤井基貴、山本隆太「ドイツにおける研究倫理への取り組み(1) : 「DFG 提言」(1998)および「補遺」(2013)の検討を中心に」『静岡大学教育学部研究報告. 人文・社会・自然科学篇』第64巻、2014年7月1日、113–130頁、CRID 1390853649734028544doi:10.14945/00007855ISSN 1884-3492 
  129. ^ “英医学誌、自閉症と新三種混合ワクチンの関係示した論文を撤回”. AFPBB News (フランス通信社). (2010年2月3日). https://www.afpbb.com/articles/-/2690341?pid=5270873 2013年1月18日閲覧。 
  130. ^ これが石器を埋める現場”. web.archive.org. 毎日新聞 (2000年12月5日). 2022年11月17日閲覧。
  131. ^ 隠された事実を暴き、歴史の歪曲正す | ジャーナリズムの軌跡 過去の受賞作を振り返る”. ジャーナリズムの力(日本新聞協会). 2022年11月17日閲覧。
  132. ^ yamatetsu1441. “旧石器捏造事件 発覚(2000年11月5日:毎日新聞)”. YAMATETSU物語. 2022年11月17日閲覧。
  133. ^ 閼伽出甕 特集:「旧石器発掘ねつ造」事件”. www2m.biglobe.ne.jp. 2022年11月17日閲覧。
  134. ^ 村松秀『論文捏造』中央公論新社、Tōkyō、2006年。ISBN 4-12-150226-4OCLC 676031339https://www.worldcat.org/oclc/676031339 
  135. ^ NHK BSドキュメンタリー『史上空前の論文捏造』(2004年。有機物高温超電導の事件を扱った50分の番組。論文捏造の数と撤回論文の数の相関を断じるような間違った主張を含んではいる。村松秀著『論文捏造』の元。2005年にはNHK-BS1 ハイビジョン特集で90分に拡大したものを放送。)
  136. ^ a b 石黒武彦『科学の社会化シンドローム』p.8
  137. ^ 重秋, 菊地「我が国における研究不正(ミスコンダクト)等の概観 : 新聞報道記事から(その2)」『埼玉学園大学紀要. 人間学部篇』第10巻、2010年12月1日、283–296頁、CRID 1050564287951803264 
  138. ^ 記者会見でも決着つかぬJ-ADNI事件「不都合な真実」 旧帝大でまたも不正が発覚 集中 Medical Confidential 2015年2月 (8巻2号 pp.25-27) 2022年11月23日閲覧
  139. ^ amitohyama. “障がいを持つ子供たちの野球教室が開催されました”. 桜吹雪. 2022年11月16日閲覧。
  140. ^ yanagidamitsuhiro (2006年1月28日). “なぜデータ捏造をするのか | 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ”. 生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ. 2022年11月6日閲覧。
  141. ^ “Retraction Note to: Hes1 is a target of microRNA-23 during retinoic-acid-induced neuronal differentiation of NT2 cells” (英語). Nature 426 (6962): 100–100. (2003-11). doi:10.1038/nature02141. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/nature02141. 
  142. ^ 日本 RNA 学会から再現性に疑惑が指摘された論文に関する最終調査報告”. 東京大学. 2020年11月10日閲覧。
  143. ^ NHKクローズアップ現代『揺らぐ科学の信頼~東大・論文ねつ造疑惑~』(2007年)
  144. ^ “元教授解雇、二審も支持 「助手の実験、確認怠る」”. 47NEWS. (2010年11月24日). オリジナルの2010年11月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20101127173606/http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010112401000944.html 2014年1月17日閲覧。 
  145. ^ 国家を騙した科学者―「ES細胞」論文捏造事件の真相』Sonju I, 成柱 李, 淵弘 裴、牧野出版、2006年10月。ISBN 4-89500-095-8OCLC 1006961547https://www.worldcat.org/oclc/1006961547 
  146. ^ “論文ねつ造した韓国人学者のES細胞 米国で特許取得”. 聯合ニュース. (2014年2月11日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20140211002600882 
  147. ^ Williams, Christoper (August 3, 2007). “Stem cell fraudster made 'virgin birth' breakthrough”. The Register. 2007年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月3日閲覧。
  148. ^ ノルウェーでも研究論文の捏造問題が浮上 先見創意の会
  149. ^ 不正行為があった疑いのある2論文に関する調査報告書 大阪大学大学院生命機能研究科 研究公正委員会”. 大阪大学. 2020年12月5日閲覧。
  150. ^ a b 若手教育シンポジウム - 日本分子生物学会”. www.mbsj.jp (2007年). 2022年10月18日閲覧。
  151. ^ stochinai. “鹿児島大学の事件”. 5号館を出て. 2022年11月17日閲覧。
  152. ^ 須藤唯哉 (2010年5月18日). “<東北大>論文データ転用で助教の解雇は無効 仙台地裁”. 毎日新聞 
  153. ^ 【魚拓】河北新報 東北のニュース/「東北大の判断は適正」元助教の控訴棄却 解雇無効訴訟”. ウェブ魚拓. 2022年11月17日閲覧。
  154. ^ 博士学位の取消しについて”. 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-. 2022年11月18日閲覧。
  155. ^ 東北大総長おやめください―研究不正と大学の私物化. 社会評論社. (2011). ISBN 978-4-7845-1481-6. OCLC 752004793. https://www.worldcat.org/oclc/752004793 
  156. ^ 元東京大学工学系研究科助教に係る論文の不正行為に関する調査報告について
  157. ^ 沖縄タイムス:琉大論文不正:“ドタバタ劇”に募る不信(2011年6月30日)
  158. ^ 重秋, 菊地「我が国における研究不正(ミスコンダクト)等の概観 : 新聞報道記事から(その7)」『埼玉学園大学紀要. 人間学部篇』第16巻、2016年12月1日、131–144頁、CRID 1050001337998345088 
  159. ^ インターネットにおける論文不正発覚史 田中嘉津夫, Journal of the Japan Skeptics, 24号, 4-9 (2015)
  160. ^ 特集 不正の構図 医療タイムス No.2123 pp.7 2013年9月2日 2016年12月6日閲覧
  161. ^ 理事会企画フォーラム「研究公正性の確保のために今何をすべきか?」開催報告 - 日本分子生物学会”. www.mbsj.jp (2013年12月3日). 2022年10月18日閲覧。
  162. ^ 記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告( 最終 )」の実施について 平成26年12月26日 2016年12月6日閲覧
  163. ^ 「ペテン師」だらけの東大医学部”. 【公式】三万人のための総合情報誌『選択』- 選択出版 (2013年8月). 2022年10月20日閲覧。
  164. ^ 公益社団法人 日本生化学会 » Blog Archive » 「生化学」誌96巻3号電子版発刊のご案内”. 2024年7月10日閲覧。
  165. ^ プログラム - 第97回日本生化学会大会” (2024年4月16日). 2024年7月10日閲覧。
  166. ^ 元会員の論文捏造に関する理事会声明
  167. ^ Marcus, Author Adam (2023年7月12日). “The new retraction record holder is a German anesthesiologist, with 184” (英語). Retraction Watch. 2023年7月15日閲覧。
  168. ^ Retraction count grows to 35 for scientist who faked emails to do his own peer review Retraction Watch
  169. ^ ヒュンイン・ムン(문형인、Hyung-In Moon)(韓国) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  170. ^ (2)第二部 対談 ─由井芳樹 × 桑島 巖(司会) [特別企画:ディオバン事件 問題点と教訓を考える]|Web医事新報|日本医事新報社”. www.jmedj.co.jp (2016年6月18日). 2022年10月18日閲覧。
  171. ^ Yui, Yoshiki (2012-04-14). “Concerns about the Jikei Heart Study” (English). The Lancet 379 (9824): e48. doi:10.1016/S0140-6736(12)60599-6. ISSN 0140-6736. PMID 22500880. https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)60599-6/abstract. 
  172. ^ 偽りの薬 バルサルタン臨床試験疑惑を追う』Toshiyasu Kawachi, Kosuke Hatta, 敏康 河内, 浩輔 八田、毎日新聞社、2014年11月。ISBN 978-4-620-32282-7OCLC 900809554https://www.worldcat.org/oclc/900809554 
  173. ^ TBS報道特集『相次ぐ論文不正!ある医師の証言・・・データ改ざんの背景を探る』(2013年)
  174. ^ 臨床研究「VART study」に関する国立大学法人千葉大学 研究活動の不正行為対策委員会最終報告”. 千葉大学 (2014年7月15日). 2022年11月7日閲覧。
  175. ^ 臨床研究「Valsartan Amlodipine Randomized Trial」に関する調査結果概要”. 東京大学. 2020年11月9日閲覧。
  176. ^ 令和5年度名誉教授の称号授与”. 東京大学. 2023年7月9日閲覧。
  177. ^ 〈クスリの闇第4弾!〉「疑惑の降圧剤バルサルタン」&「保険診療費」に群がった学者を直撃 FRIDAY 講談社 2013年6月14日号 2016年12月6日閲覧
  178. ^ Husten, Larry (2013年5月10日). “Suspicions Raised About Another Japanese Cardiovascular Researcher” (英語). Forbes. 2022年11月22日閲覧。
  179. ^ 製薬会社と医学部の癒着 現役国立大学教授が実名で現状告発”. NEWSポストセブン (2014年2月10日). 2022年11月12日閲覧。
  180. ^ 論文不正 告発に生データ見ず「適正」 岡山大調査委 毎日新聞 2016年1月4日
  181. ^ 炎上岡山大学~研究不正疑義申し立てた教授が解雇される(榎木英介) - Yahoo!ニュース”. Yahoo!ニュース 個人. 2020年11月6日閲覧。
  182. ^ 岡山大論文 「シロ」判定 文科省指針では公表不要 毎日新聞 2016年1月4日
  183. ^ 研究所元職員による研究活動上の特定不正行為及び倫理指針不適合について”. 国立循環器病研究センター (2023年3月24日). 2023年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
  184. ^ 岡山大学・神谷厚範教授 がんの論文で捏造113か所 実験に使われたマウスは13分の1以下”. TBS・JNN NEWS DIG. RSK山陽放送 (2023年3月24日). 2023年3月30日閲覧。
  185. ^ 岡山大教授が論文で捏造113カ所 調査に「データは地震で壊れた」”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社 (2023年3月24日). 2023年3月30日閲覧。
  186. ^ “論文捏造で教授懲戒解雇 岡山大、本人弁明せず”. 産経新聞. (2023年4月17日). https://www.sankei.com/article/20230417-S3DH24JMENLATIPMH3BHHRPT64/ 2023年4月17日閲覧。 
  187. ^ 座談会「最先端研究どう伝える STAP報道の現場から」(PDF 4.5MB) 日本記者クラブ会報 2014年11月10日第537号
  188. ^ Suda, Momoko、須田桃子『捏造の科学者 STAP細胞事件』文藝春秋、Tōkyō、2014年。ISBN 978-4-16-390191-6OCLC 915457148https://www.worldcat.org/oclc/915457148 
  189. ^ (2ページ目)「STAP細胞はありましたか」小保方女史へ笹井未亡人からの代表質問”. デイリー新潮. 2022年11月12日閲覧。
  190. ^ 読売新聞朝刊 2014年4月2日
  191. ^ 合田禄 (2014年4月7日). “早稲田大、博士論文280本を調査 不正の疑い指摘受け”. 朝日新聞. オリジナルの2014年5月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140501063251/http://www.asahi.com/articles/ASG4735VTG47ULBJ004.html 2022年3月7日閲覧。 
  192. ^ 博士学位論文の訂正について 早稲田大学先進理工学部 2017年3月27日 2017年9月29日閲覧
  193. ^ a b c 【超STAP事件】日本の学会は捏造論文だらけ!大スキャンダルに発展か 「むしマガ」Vol.272 2015年1月11日
  194. ^ すっきりしないけど、阪大疑惑論文の調査打ち切り”. archive.ph. 産経新聞. 2022年11月14日閲覧。
  195. ^ インターネット上で指摘のあった論文の画像データに係る調査結果について 東京大学 2015年7月31日
  196. ^ 東京大学の研究不正の調査のあり方に関する質問主意書 参議院 2016年10月12日
  197. ^ https://twitter.com/lemonstoism/status/553562288804753408”. Twitter. 世界変動展望 (2015年1月9日). 2022年11月22日閲覧。 “そういえば近年の研究不正のオリジナルの指摘は匿名A氏が多い。2013年のバルサルタン事件の頃に2chのスレがネオになってから、ほとんど匿名A氏が指摘している。”
  198. ^ BAD BLOOD シリコンバレー最大の捏造スキャンダル 全真相』Miwa Seki, Yuko Sakurai, John Carreyrou, 美和 関, 祐子 櫻井、集英社。ISBN 978-4-08-786126-6OCLC 1243300383https://www.worldcat.org/oclc/1243300383 
  199. ^ 企業:血液検査(Blood tests):セラノス社(Theranos)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  200. ^ 匿名による申立て事案にかかる本調査への移行について 東京大学広報室 2016年9月20日
  201. ^ 記者会見「22報論文の研究不正の申立てに関する調査報告」の実施について 東京大学 2017年8月1日 2017年8月17日閲覧
  202. ^ 論文不正の告発を受けた東京大学(3) 告発通りに図版の誤りはあったが…… Yahoo news 詫摩雅子 2017年8月14日 2017年8月17日閲覧
  203. ^ 22報論文に関する調査報告 東京大学 2018年3月17日閲覧
  204. ^ 3P-0804 生命科学分野における研究不正事案の分析 何が不正行為なのか”. 日本分子生物学会. 2020年11月10日閲覧。
  205. ^ 熊本地震本震の臨時観測公開データの問題について 土木学会地震工学委員会のホームページ (2017年9月27日) 2017年9月29日閲覧
  206. ^ 元准教授、東日本大震災も不正か 熊本地震で捏造指摘”. 東京新聞 TOKYO Web (2019年1月26日). 2019年1月29日閲覧。
  207. ^ 研究活動上の特定不正行為に関する調査結果について”. 大阪大学 (2019年3月15日). 2019年3月16日閲覧。
  208. ^ 研究活動の不正行為に関する調査結果について”. 弘前大学 (2017年11月15日). 2022年11月15日閲覧。
  209. ^ Tide of lies”. Science. 2022年11月16日閲覧。
  210. ^ 「撤回論文数」世界ランキング | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月15日閲覧。
  211. ^ サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン(榎木英介) - 個人”. Yahoo!ニュース. 2022年11月15日閲覧。
  212. ^ ウウナ・ロンステット(Oona M. Lönnstedt)(スウェーデン)改訂 | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  213. ^ 企業:データねつ造(data fabrication)、ハルデン原子炉(Halden reactor)(ノルウェー) | 白楽の研究者倫理” (2020年8月30日). 2020年11月10日閲覧。
  214. ^ 原子力施設等におけるトピックス (令和元年7月29日~8月18日)”. 原子力規制委員会. 2020年11月11日閲覧。
  215. ^ 原子力規制委員会記者会見録(平成31年1月23日(水)14:30~)”. 原子力規制委員会. 2020年11月11日閲覧。
  216. ^ 第50回技術情報検討会”. 原子力規制委員会. 2022年9月8日閲覧。
  217. ^ James Watson on the behalf of 182 signatories (2020-05-28). An open letter to Mehra et al and The Lancet. https://zenodo.org/record/3865253#.YNs92pj7TIX. 
  218. ^ Surgisphere: governments and WHO changed Covid-19 policy based on suspect data from tiny US company” (英語). the Guardian (2020年6月3日). 2021年6月29日閲覧。
  219. ^ 政治化された「エビデンス」 新型コロナ研究不正疑惑の波紋 | 欧州ニュースアラカルト | 八田浩輔”. 毎日新聞「政治プレミア」. 2021年6月29日閲覧。
  220. ^ 新型コロナ 英文誌での論文撤回 ここから私たちが学ぶべきこと(忽那賢志) - Yahoo!ニュース”. Yahoo!ニュース 個人. 2021年6月29日閲覧。
  221. ^ PillerJun. 8, Charles (2020年6月8日). “Who’s to blame? These three scientists are at the heart of the Surgisphere COVID-19 scandal” (英語). Science | AAAS. 2021年6月29日閲覧。
  222. ^ サパン・デサイー(Sapan Desai)(米) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  223. ^ 研究活動上の特定不正行為に関する調査結果について”. 大阪大学. 2020年11月6日閲覧。
  224. ^ McCook, Author Alison (2018年8月7日). “A 2015 PNAS paper is six pages long. Its correction is four pages long.” (英語). Retraction Watch. 2020年11月6日閲覧。
  225. ^ 国立循環器病センター調査報告書”. 2021年2月2日閲覧。
  226. ^ 不正論文もとに臨床研究、参加した患者に影響は?阪大”. 朝日新聞. 2021年2月2日閲覧。
  227. ^ Schneider, Leonid (2020年10月7日). “Gregg Semenza: real Nobel Prize and unreal research data” (英語). For Better Science. 2020年11月6日閲覧。
  228. ^ Jaakkola, Panu; Mole, David R.; Tian, Ya-Min; Wilson, Michael I.; Gielbert, Janine; Gaskell, Simon J.; Kriegsheim, Alexander von; Hebestreit, Holger F. et al. (2001-04-20). “Targeting of HIF-α to the von Hippel-Lindau Ubiquitylation Complex by O 2 -Regulated Prolyl Hydroxylation” (英語). Science 292 (5516): 468–472. doi:10.1126/science.1059796. ISSN 0036-8075. https://www.science.org/doi/10.1126/science.1059796. 
  229. ^ Else, Holly (2022-10-21). “Dozens of papers co-authored by Nobel laureate raise concerns” (英語). Nature. doi:10.1038/d41586-022-03032-9. https://www.nature.com/articles/d41586-022-03032-9. 
  230. ^ eliesbik, Author (2020年12月20日). “Paper about Herbalife®-related patient death removed after company threatens to sue the journal” (英語). Science Integrity Digest. 2022年11月5日閲覧。
  231. ^ 無罪:シリアック・フィリップス(Cyriac Philips)(インド) | 白楽の研究者倫理”. 2022年11月12日閲覧。
  232. ^ a b Bonos, Lisa (2023年7月30日). “Meet the student who helped boot the president of Stanford” (英語). Washington Post. ISSN 0190-8286. https://www.washingtonpost.com/media/2023/07/28/theo-baker-stanford-president-tessier-lavigne/ 2023年8月4日閲覧。 
  233. ^ Stanford president’s research under investigation” (英語). The Stanford Daily (2022年11月29日). 2022年12月8日閲覧。
  234. ^ Stanford misconduct probe of president stumbles as new journal launches inquiry” (英語). www.science.org. 2022年12月8日閲覧。
  235. ^ Review found ‘falsified data’ in Stanford President’s research, colleagues allege” (英語) (2023年2月17日). 2023年2月25日閲覧。
  236. ^ Report of the Scientific Panel of the Special Committee of the Stanford University Board of Trustees”. Stanford University. 2023年7月21日閲覧。
  237. ^ Saul, Stephanie (2023年7月19日). “Stanford President Will Resign After Report Found Flaws in His Research” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2023/07/19/us/stanford-president-resigns-tessier-lavigne.html 2023年7月19日閲覧。 
  238. ^ Q&A: How this Stanford freshman brought down the president of the university”. Los Angeles Times (2023年7月21日). 2023年7月24日閲覧。
  239. ^ 金沢大、浜松医大の元教授も関与 福井大査読偽装、計6本に”. 毎日新聞 (2022年12月20日). 2023年1月14日閲覧。
  240. ^ 古川宇宙飛行士の研究で筑波大が論文発表、「不正なし」に異論”. 毎日新聞. 2023年1月14日閲覧。
  241. ^ ケン・スズキ(Ken Suzuki、鈴木 憲)(英、日本) | 白楽の研究者倫理”. 2023年8月4日閲覧。
  242. ^ a b 岩澤倫彦・週刊ポスト. “「心臓病の最高権威」に研究論文の改ざん疑惑 最新AIが見抜いた阪大研究者たちの「画像加工・再利用」の手口”. NEWSポストセブン. 2023年7月21日閲覧。
  243. ^ 岩澤倫彦・週刊ポスト. “「心臓病の最高権威」国循・大津欣也理事長に研究論文捏造・改ざん疑惑、直撃取材に語ったこと”. NEWSポストセブン. 2023年7月21日閲覧。
  244. ^ 心臓病の最高権威「国立循環器病研究センター」幹部6人に論文不正疑惑“画像の使い回し”か(NEWSポストセブン)”. Yahoo!ニュース. 2023年9月29日閲覧。
  245. ^ 日本放送協会. “国立循環器病研究センター元室長 懲戒解雇相当の処分に|NHK 関西のニュース”. NHK NEWS WEB. 2023年7月21日閲覧。
  246. ^ 国循の元室長ら、論文不正で処分”. 日本経済新聞 (2021年3月31日). 2023年7月21日閲覧。
  247. ^ “Corrigendum: The Ras–MAPK pathway is important for olfaction in Caenorhabditis elegans” (英語). Nature 432 (7017): 653–653. (2004-12). doi:10.1038/nature03169. ISSN 1476-4687. https://www.nature.com/articles/nature03169. 
  248. ^ 「週刊文春」編集部. “「尿一滴でがんがわかる」で話題 線虫がん検査「精度86%」は問題だらけ”. 文春オンライン. 2023年9月22日閲覧。
  249. ^ プレスリリース”. 2023年9月22日閲覧。
  250. ^ 虚飾のユニコーン”. NewsPicks. 2023年9月22日閲覧。
  251. ^ プレスリリース”. 2023年9月22日閲覧。
  252. ^ 手を洗う救急医Taka”. note(ノート) (2023年9月20日). 2023年9月22日閲覧。
  253. ^ 株式会社ユーザベースを被告とした民事訴訟について”. HIROTSUバイオサイエンス. 2023年10月2日閲覧。
  254. ^ (日本語)『【スクープ】世界初の「線虫がん検査」、衝撃の実態を徹底取材 解説:須田桃子https://www.youtube.com/watch?v=BdvISQJczUs2023年10月2日閲覧 
  255. ^ HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術”. 2024年10月28日閲覧。
  256. ^ HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術”. 2024年10月28日閲覧。
  257. ^ HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術”. 2024年10月28日閲覧。
  258. ^ HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術”. 2024年10月28日閲覧。
  259. ^ HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術”. 2024年10月28日閲覧。
  260. ^ HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術”. 2024年10月28日閲覧。
  261. ^ HIROTSUバイオサイエンス | 線虫がん検査に関する世界最先端の線虫行動解析技術”. 2024年10月28日閲覧。
  262. ^ 2024年 調査報道大賞・発表|報道実務家フォーラム”. j-forum.org. 2024年10月30日閲覧。
  263. ^ 知的財産からみたライフサイエンス分野の知識創造と活用のありかた 味の素(株)知的財産センター 森岡一 2007年3月5日[リンク切れ]
  264. ^ 特許庁編「工業所有権法逐条解説第15版」P.485
  265. ^ 産学連携と知財戦略 第11回「明細書におけるデータ捏造問題」 先端技術事業化メールマガジン 第94号、日経BP社 産学連携事務局、2006年11月22日

研究不正問題を扱った書籍

[編集]

総論的な内容の和書のみを記す。個別の事件に焦点を当てた書籍は上の具体例の表の脚注にある。

  • W.ブロード、N.ウェイド 『背信の科学者たち』牧野賢治訳、講談社、2014年(原著は1982年)。ISBN 978-4062190954 … 紀元前から現代までの海外の有名事例を挙げながら、研究不正の一般論をも記述した古典。
  • 科学朝日編『スキャンダルの科学史』朝日新聞社、1989年。ISBN 978-4022560711 … 19世紀後半から20世紀前半に起きた日本の有名事例を列挙してまとめたもの。
  • 酒井シヅ、三浦雅弘、アレクサンダー・コーン『科学の罠―過失と不正の科学史』工作舎、1990年。ISBN 978-4875021681
  • 山崎茂明『科学者の不正行為―捏造・偽造・盗用』丸善、2002年。ISBN 978-4621070215
  • 石黒武彦『科学の社会化シンドローム』岩波科学ライブラリー、2007年。ISBN 978-4000074711
  • Kathy Barker『アット・ザ・ヘルム―自分のラボをもつ日のために』メディカルサイエンスインターナショナル、2011年。ISBN 978-4895926805 … 研究室運営の指南書。不正の問題に関係する部分がある。
  • 田中智之、小出隆規、安井裕之『科学者の研究倫理 化学・ライフサイエンスを中心に』東京化学同人、2018年。ISBN 978-4807909476 … 研究活動と研究倫理を解説した教科書。21世紀に起きた不正事件の解説も一部含む。

研究不正問題を扱ったサイト

[編集]

研究不正問題を扱ったフィクション

[編集]

関連項目

[編集]