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「復活祭」の版間の差分

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{{redirect|イースター}}
{{出典の明記|date=2013年5月}}
{{Infobox Holiday
{{告知|提案|抜本的修正}}
|holiday_name = 復活祭
{{Redirect|イースターバニー|準惑星の旧仮称|マケマケ (準惑星)}}
|type = キリスト教
[[ファイル:Auferstehung Christi.jpg|thumb|right|キリストの[[復活 (キリスト教)|復活]]、[[:de:Meister von Meßkirch|マイスター・フォン・メスキルヒ]]画]]
|longtype =
{{jesus}}
|image = Czechowicz Zmartwychwstanie.jpg
'''復活祭'''(ふっかつさい)とは、[[キリスト教]]の[[典礼暦]]における最も重要な祝い日で、[[十字架]]にかけられて死んだ[[イエス・キリスト]]が三日目に[[復活 (キリスト教)|復活]]したことを記念する。「[[復活 (キリスト教)|復活]]の[[主日]]」、あるいは英語で「'''イースター([[:en:Easter|Easter]])'''」とも言われる。[[正教会]]では「イースター」よりも「'''[[パスハ]]'''」の呼称の方が好まれる。
|caption = 『[[復活 (キリスト教)|復活]]』({{仮リンク|シモン・チェホヴィッチ|pl|Szymon Czechowicz}}画、[[1758年]])。復活した[[イエス・キリスト]]が弟子達の前に現れている場面が描かれている。
|official_name =
|nickname = 復活節、復活の主日、イースター、パスハ
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|date = [[春分日]]後の最初の[[満月]]の次の[[日曜日]]<br />[[コンプトゥス]]による移動祝日
<!-- 年によって該当する日が違う場合 -->
|date{{#time:Y|last year}} = {{unbulleted list
| {{#invoke:Easter|Calculate|{{#time:Y|last year}}|method=Western|format=[[n月j日]]}}(西方教会)
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|relatedto = [[過越祭]]、[[受難週]]、[[四旬節]]、[[光明週間]]<br />{{unbulleted list|[[赦罪の主日]](49日前)|[[灰の水曜日]](46日前)|[[枝の主日]](7日前)|[[聖木曜日]](3日前)|[[聖金曜日]](2日前)|[[聖土曜日]](前日)|[[キリストの昇天#昇天祭|昇天祭]](40日目)|[[ペンテコステ|聖霊降臨]](50日目)}}
}}
'''復活祭'''(ふっかつさい、{{lang-el|Πάσχα}}、{{lang-la|Pascha}}、{{lang-fr|Pâques}}、{{lang-en|Easter}}、{{lang-de|Ostern}}、{{lang-ru|Пасха}})は、[[キリストの磔刑|磔刑にされて]]死んだ[[イエス・キリスト]]が三日目に[[復活 (キリスト教)|復活]]したことを記念・記憶する、[[キリスト教]]においては最も重要とされる祭<ref name="nagoya">[[正教会]]の出典:[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/paschapr.htm 正教会の復活祭 2003年復活祭フォトレポート]([http://www.orthodox-jp.com/nagoya/ 名古屋ハリストス正教会]){{リンク切れ|date=2021年4月}}</ref><ref name="RC">[[カトリック教会]]の出典:[http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/memo/lent.htm 四旬節 断食(大斎・小斎) カーニバル]([[カトリック中央協議会]])</ref><ref name="NSU">[[聖公会]]の出典:[http://www.nskk.org/tokyo/bishop/2008/0803/index.html 復活祭を迎える]([[日本聖公会]] 東京教区 [[主教]] 植田仁太郎)</ref><ref name="dai910">プロテスタントの出典:『[[キリスト教大事典]]』910頁、教文館、昭和48年9月30日 改訂新版第二版</ref><ref name="сцт">[http://days.pravoslavie.ru/Life/slovar2336.htm {{lang|ru|Пасха + Словарь церковных терминов + Православный Церковный календарь}}](正教会:教会用語辞典){{ru icon}}</ref><ref name="RCCE">[http://www.newadvent.org/cathen/05224d.htm CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Easter]([[カトリック百科事典]]){{en icon}}</ref>。


==概要==
{{Main2|[[正教会]]の復活祭([[パスハ]])|復活大祭}}
多くの教派で特別な礼拝([[典礼]]・[[奉神礼]])が行われるほか、様々な習慣・習俗・行事がある。


[[正教会]]では[[現代ギリシア語|ギリシャ語]]から「'''パスハ'''<!--関連とはいえ曖昧回避-->」とも呼ぶ<ref>[http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/yougoshuu.htm 正教会用語集] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20110430152416/http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/yougoshuu.htm |date=2011年4月30日 }} ([http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/ 大阪ハリストス正教会] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20100727161833/http://www.sutv.zaq.ne.jp/osaka-orthodox/ |date=2010年7月27日 }})</ref><ref group="注釈">「パスハ」表記の大本はギリシア語である。{{lang-el|Πάσχα}}は、[[古典ギリシア語]]再建からは「パスカ」と転写し得るが、現代ギリシア語では「パスハ」。新約時代以降のギリシア語の発音はアクセントやイ音化、各種子音の発音等、かなり現代ギリシア語に近くなっていた。正教が優勢な地域における[[スラヴ]]系言語、[[ルーマニア語]]等における、ギリシア語に由来する教会関連の語彙の発音は、中世以降のギリシア語発音に則っている。</ref>。[[カトリック教会]]では「'''[[復活 (キリスト教)|復活]]の[[主日]]'''」<ref name="RCfu">[http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/tenrei/fukkatsusesu.htm 典礼解説 復活節]([[カトリック中央協議会]])</ref>とも呼ばれ、[[聖公会]]などでは「'''復活日'''」(ふっかつび)<ref name="dai910" /><ref>[http://www.nskk.org/province/seikoukai.html 日本聖公会 日本聖公会とは]</ref><ref group="注釈">「祭」の表記が[[教会暦]]において頻繁に使われる教会([[正教会|正教]]、[[カトリック教会|カトリック]]など)では「復活祭」の表記が使われ、「祭」と位置づけられ呼ばれるが、「祭」の表記が比較的もしくはあまり使われない教会([[聖公会]]、プロテスタントなど)では「復活日」という表記が一般的であり、「祝日」といった説明がなされる。プロテスタントの参照元である『[[キリスト教大事典]]』でも項目名は「復活日」となっていて、その説明冒頭において「祝日」としており「祭」とは書かれて居ない。</ref>や、英語から「'''イースター'''」とも呼ぶ<ref>[http://www.jbts.ac.jp/news.php?eid=00034 News & Topics]([[日本聖書神学校]])</ref><ref>[http://www.ag-j.org/main/activity.html 教団活動]([[日本アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団]])</ref>。「'''復活節'''」(ふっかつせつ)は、[[西方教会]]において復活祭からの一定期間を指す用法の他、プロテスタントの一部で復活祭(復活日)当日を指す用法がある<ref name="kunitachi">[http://www.kunitachi-seisho.com/meeting.html 日本キリスト改革派国立聖書教会]</ref>。
復活祭は基本的に「[[春分]]の日の後の最初の[[満月]]の次の[[日曜日]]」に祝われるため、年によって日付が変わる[[移動祝日]]である。[[2011年]]の復活祭は[[西方教会]]も[[東方教会]]も同日であり[[4月24日]]であるが、年によっては[[東西教会]]で復活祭を祝う日は異なる事も多い。


{{For2|[[正教会]]の復活祭"パスハ"|復活大祭}}
== 名称と起源 ==
[[英語]]・[[ドイツ語]]・[[ポーランド語]]以外のヨーロッパ諸言語における「復活祭」という言葉は、すべて{{lang-el|Πάσχα}}([[古典ギリシア語]][[再建]]音:パスカ、[[現代ギリシア語]]転写:パスハ)に由来しており、その言葉も元をたどれば、[[アラム語]]の「パスハ(pascha)」で、これは[[ユダヤ教]]の「[[過越]](すぎこし)の祭り」を表す「ペサハ」(Pesach)という[[ヘブライ語]]の言葉から来ている。つまり、キリスト教の復活祭がユダヤ教の「過越の祭り」から生まれた祝い日であることを示している。[[ギリシャ正教会]]で[[復活大祭]]を「パスハ({{lang|gr|Πάσχα}})」と呼ぶのは勿論のこと、[[ロシア正教会]]・[[ロシア語]]でも復活大祭はヘブライ語・ギリシャ語起源の「パスハ({{lang|ru|Пасха}})」と呼ばれ、[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]でも復活大祭をパスハと呼ぶ。[[カトリック教会]]においても[[イタリア]]などの[[ラテン系]]の国では「パスカ」({{lang-la|Pascha}})、[[スペイン語]]ではパスクワ(Pascua)の呼称が一般的である。


基本的に「[[春分]]の日の後の最初の[[満月]]の次の[[日曜日]]」に祝われるため、年によって[[日付]]が変わる[[移動祝日]]である。日付は変わるものの、必ず日曜日に祝われる。キリスト教が優勢な国においてはその翌日の月曜日も休日にされていることがある。欧州における主要株式・債券市場は、復活祭の前の[[聖金曜日]]、復活祭後の月曜日に休場する<ref>[http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKDNDS0UQVI901.html 3月29日、4月1日の欧州金融市場は休場-復活祭前後の祝日 - Bloomberg] 2013年8月1日閲覧</ref>。
一方、復活祭を表す英語「イースター({{lang|en|Easter}})」およびドイツ語「オーステルン({{lang|de|Ostern}})」は[[ゲルマン神話]]の春の女神「エオストレ(Eostre)」の名前、あるいは[[ゲルマン人]]の用いた春の月名「エオストレモナト(Eostremonat)」に由来しているといわれる。[[8世紀]]の教会史家[[ベーダ・ヴェネラビリス]]はゲルマン人が「エオストレモナト」に春の到来を祝う祭りをおこなっていたことを記録している。実際、復活祭の習慣の中には、このゲルマン人の祭りに由来すると思われるものもある。たとえば、復活祭に色をつけた卵を配る[[イースター・エッグ]]や多産の象徴である[[ウサギ]](イースターバニー)が復活祭のシンボルとされていることがそうであると考えられる(「[[習合]]」を参照)。
あるいは、卵は殻をやぶって雛が生まれることから復活を表し、うさぎは(特に岩うさぎ)その目が、月を思い起こさせ、月は欠けて見えなくなっても、また新月から三日月、そして満月となることからやはり復活を表すものとして、キリストの復活のシンボルとされている。


[[東方教会]]と[[西方教会]]とでは日付の算定方法が異なるため、日付が異なる年の方が多い<ref group="注釈">[[春分の日]]の扱いが異なること、正教会では復活祭を[[ユダヤ教]]の[[過越]]とともに祝わないという古い規定をそのまま守っていること、これら二つの違いが[[東西教会]]間にある。</ref><ref>[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/msj3.htm#date 復活祭の日付の問題]([http://www.orthodox-jp.com/nagoya/ 名古屋ハリストス正教会])</ref>。
[[ギリシア神話]]の神々の信仰が盛んだった[[シチリア]]では、復活祭の伝統行事の中に死から蘇るキリストと[[ハーデース]]から帰還する[[ペルセポネー]]の習合と、[[デーメーテール]]や[[アドーニス]]信仰の名残りが見られる<ref>Carol Field. Celebrating Italy. Harper Perennial, 1997年。410頁</ref>。


== 日付 ==
== 日付 ==
{| class="wikitable floatright" style="margin: 0.5em 0.5em 0.5em 0.5em"
{{main2|計算方法|コンプトゥス}}
{| class="wikitable" style="float:left; margin: 0 0 1em 1em"
|-
|-
| colspan="3" style="text-align:center; background-color:Lavender" |'''復活祭の日付<br />2011年-2025年'''<ref>[https://www.assa.org.au/edm Easter Dating Method - Calculate the Date of Easter Sunday]</ref><ref>[http://www.antiochian.org/date-pascha-coming-years Date of Pascha in Coming Years | Antiochian Orthodox Christian Archdiocese]</ref>
|+align=center|'''復活祭の日付、2000年-2020年'''
|-
|-
! 年 !! [[西方教会]] !! [[東方教会]]
! 年 !! [[西方教会]] !! [[東方教会]]
|-
! 2000年
| [[4月23日]] || [[4月30日]]
|-
! 2001年
|colspan=2 align=center| [[4月15日]]
|-
! 2002年
| [[3月31日]] || [[5月5日]]
|-
! 2003年
| [[4月20日]] || [[4月27日]]
|-
! 2004年
|colspan=2 align=center| [[4月11日]]
|-
! 2005年
| [[3月27日]] || [[5月1日]]
|-
! 2006年
| [[4月16日]] || [[4月23日]]
|-
! 2007年
|colspan=2 align=center| [[4月8日]]
|-
! 2008年
| [[3月23日]] || [[4月27日]]
|-
! 2009年
| [[4月12日]] || [[4月19日]]
|-
! 2010年
|colspan=2 align=center| [[4月4日]]
|-
|-
! 2011年
! 2011年
94行目: 82行目:
! 2022年
! 2022年
| [[4月17日]] || [[4月24日]]
| [[4月17日]] || [[4月24日]]
|-
! 2023年
| [[4月9日]] || [[4月16日]]
|-
! 2024年
| [[3月31日]] || [[5月5日]]
|-
! 2025年
|colspan=2 align=center| [[4月20日]]
|}
|}
復活祭は[[移動祝日]]であり、もともと[[太陰暦]]にしたがって決められた日であったため、[[太陽暦]]では年によって日付が変わる。[[グレゴリオ暦]]を用いる西方教会では、復活祭は3月22日から4月25日の間のいずれかの日曜日、[[ユリウス暦]]を用いる東方教会では、グレゴリオ暦の4月4日から5月8日の間のいずれかの日曜日に祝われる。国によってはキリスト教の習慣に従って翌日の月曜日も休日にすることがある。
復活祭は[[移動祝日]]であり、もともと[[太陰暦]]にしたがって決められた日であったため、年によって[[太陽暦]]で日付が変わる。[[グレゴリオ暦]]を用いる[[西方教会]]では、毎年3月22日から4月25日の間のいずれかの[[日曜日]]、[[東方教会]]では、グレゴリオ暦の4月4日から5月8日の間のいずれかの日曜日に祝われる。
{{For2|計算方法|コンプトゥス}}


復活祭を祝う日付をいつにするかについては、古代に論争を経て、325年の[[第1ニカイア公会議]]で統一されるに至ったが、16世紀に[[西方教会]]において[[グレゴリオ暦]]が採用されてから、[[正教会]]と西方教会で日付が異なるという現象が起きるようになり、議論が続いている。
もともとは復活祭はユダヤ教の過越の祭りと同じ日に祝われていたと考えられている。過越の祭りは[[ユダヤ暦|ユダヤ教の暦]]で「ニサンの月の14日」に固定されている。しかしキリスト教がユダヤ教から離れ、各地に広まっていく中で、復活祭をいつ祝うかということで2世紀頃から論争が起こることになった。これを「パスカ論争」という。
{{Main|復活日論争}}


== 名称の語源 ==
すなわち小アジアの教会はユダヤ教以来の伝統に従ってニサンの月の14日をパスカ(復活祭)として祝っていたため、平日に祝われることもあった。一方、[[ローマ]]をはじめ多くの教会ではイエスが復活した日曜日を主イエスの日として優先するため、復活祭(パスカ)も復活の日である「ニサンの月の14日の後の最初の日曜日」に祝う習慣であった。初期キリスト教では、各地方に根付いた習慣は排斥されることがなく、論争の過程でも、むしろそれぞれの地方の慣習と伝承を尊重することが勧告されたが、やがてどちらか一方に統一しようという動きが強まった。
=== パスハ、パスカ、パスクワ ===
[[英語]]・[[ドイツ語]]・[[ポーランド語]]等以外の多くのヨーロッパ諸言語における「復活祭」という言葉は、{{lang-el|Πάσχα}}([[古典ギリシア語]][[再建]]音:パスカ、[[現代ギリシア語]]転写:パスハ)に由来しており、その言葉も元をたどれば、[[アラム語]]の「パスハ(pascha)」で、これは[[ユダヤ教]]の「[[過越]](すぎこし)の祭り」を表す「ペサハ」({{lang|he-latn|Pesach}}) という[[ヘブライ語]]の言葉から来ている<ref name="RCCE" /><ref name="1911CE">[http://www.1911encyclopedia.org/Easter Easter(The 1911 Classic Encyclopedia)]</ref>。つまり、キリスト教の復活祭が[[旧約聖書|旧約]]時代の「過越の祭り」を雛形とした祝い日であることを示している<ref name="RCCE" /><ref name="1911CE" /><ref>[https://www.huffpost.com/entry/pascha-the-new-passover_b_3140989 V. Rev. Fr. Anastasios Gounaris: Pascha: The New Passover]</ref>。


[[ギリシャ正教会]]で[[復活大祭]]を「パスハ({{lang|el|Πάσχα}})」と呼ぶのは勿論のこと、[[ロシア正教会]]・[[ロシア語]]でも復活大祭はヘブライ語・ギリシャ語起源の「パスハ({{lang|ru|Пасха}})」と呼ばれ、[[日本ハリストス正教会|日本正教会]]でも復活大祭をパスハと呼ぶ<ref>[https://web.archive.org/web/20060925152031/http://www.geocities.jp/ynicojp2/pascha.html ニコライ堂での復活大祭(パスハ)の予告]</ref>。[[カトリック教会]]においても[[ラテン民族|ラテン系]]の国では「パスカ」({{lang-la|Pascha}})、イタリア語、[[スペイン語]]ではパスクワ ({{lang|it|Pasqua}}, {{lang|es|Pascua}}) の呼称が一般的である。
[[325年]]におこなわれた[[第1ニカイア公会議]]は小アジアの教会の主張を退け、全教会で復活祭を同じ日曜日に祝うことを決議した(この公会議の文書資料は残されていない)。そこで、復活祭を決定する権限は誰にあるのかという問題が起こってきた。公会議はとりあえず[[アレクサンドリア]]の教会に復活祭の日付の決定をゆだねている。なぜなら当時アレクサンドリアが地中海世界でもっとも学問の盛んな都市だったためである。


[[エイレナイオス]]や[[テルトゥリアヌス]]は「パスハ」を、ギリシャ語の動詞「苦しむ」({{lang-el|πάσχω}}<ref group="注釈">古典ギリシャ語再建音:パスコー、現代ギリシャ語転写:パスホ</ref>)に関連付け、[[イエス・キリスト]]の受難と結びつけて解釈したが、この誤りは彼らが[[ヘブライ語]]を知らなかったため生じた。[[アウグスティヌス]]はその語源説明の誤りを正した<ref name="1911CE" />。
アレクサンドリアの教会では、復活祭は「(ユリウス暦でいうところの)3月21日以降で最も早い(太陰暦の)14日の次の日曜日」に祝う習慣であったため、東方の教会は第1ニカイア公会議の決定に従ってこのアレクサンドリア方式を採用した。しかし、この決定方法は非常にわかりにくいものだったので中世になるとこれが「復活祭は春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」という表現に変化していった。


=== イースター、オスターン ===
一方西方のローマ教会は6世紀までは独自の方法で復活祭を算出していたが、アレクサンドリアの教会の手法を(ローマで用いられていた)[[ユリウス暦]]に適応させる方法が[[ディオニュシウス・エクシグウス]]によって編み出されたことでようやくその決定法を採用することになった。イギリスやフランスなどの各地でも当初はローマ式の方法が採用されていたが、やがてディオニュシウスの方法が採用され、ようやく復活祭の日付がヨーロッパの全キリスト教会で統一されることになった。しかし、16世紀になって西欧社会が[[グレゴリオ暦]]を採用したことで、ユリウス暦を用いつづけた東方教会との間で再び復活祭がくい違うという現象が起こるようになった。
復活祭を表す英語「イースター ({{lang|en|Easter}})」およびドイツ語「オスターン ({{lang|de|Ostern}})」は[[ゲルマン神話]]の春の女神「エオストレ ({{de|Eostre}})」の名前、あるいは[[ゲルマン人]]の用いた春の月名「エオストレモナト ({{de|Eostremonat}})」に由来しているともいわれる。[[8世紀]]の教会史家[[ベーダ・ヴェネラビリス]]がこれに言及し、ゲルマン人が「エオストレモナト」に春の到来を祝う祭りをおこなっていたことを記録している<ref name="1911CE" />。ただしこの説も確実ではない<ref name="dai910" />。


== 復活祭に連動する教会暦・礼拝・典礼・奉神礼 ==
[[1997年]]に[[シリア]]の[[アレッポ]]でキリスト教諸派の代表が集まっておこなわれた世界キリスト教協議会では復活祭の日付の確定法の再検討と全キリスト教における復活祭の日付の統一が提案された。この問題は現在でも協議が続けられているが、いまだに統一には至っていない。
復活祭([[復活大祭]]、復活日)は教会暦において、移動祭日と呼ばれ<ref name="HO39">ホプコ、小野 p39</ref>(移動祝祭日<ref name="RCkanazawa">[http://www.kanazawa.catholic.ne.jp/calendar-gyouji-index.html 横浜・カトリック金沢教会-カレンダー]</ref>もしくは移動祝日<ref name="senri">[https://web.archive.org/web/20150914031105/http://homepage3.nifty.com/st_peter/cln/ 教会のこよみ Catholic Calendar _ Senri New Town Catholic Church]</ref>とも)、最も重要な祭り(祝日)と位置づけられるとともに<ref name="nagoya" /><ref name="RC" /><ref name="NSU" /><ref name="dai910" /><ref name="сцт" /><ref name="RCCE" />、復活祭によって教会暦における他の移動祭日(移動祝祭日、移動祝日)が決められる。


=== 大斎(四旬節) ===
ある人々は復活祭の日付が移動することや教派によって日付が異なることの不便を解消するため、思い切って月齢と復活祭を切り離すことを提案している。たとえば4月の第二日曜日に固定するなどの意見が出されているが、まだ広範な支持を受けるまでには至っていない。
{{Main|大斎 (正教会)|四旬節}}
[[正教会]]、[[カトリック教会]]、[[聖公会]]、[[ルーテル教会]]においては、復活祭(復活大祭、復活日)の前にイエスの荒野での試みや十字架の受難を記念する「40日間」が設けられている。ラテン語で {{la|Quadragesima}}、英語では古ドイツ語の「断食」を語源とする {{en|Lent}} と標記されるが、日本語においては四旬節(カトリック、ルーテル他)、大斎節(たいさいせつ、日本聖公会)、大斎(おおものいみ、正教会)のように呼び名が異なる。また、開始日や数え方も教派ごとに違いがある。


カトリック教会、聖公会、ルーテル教会などの[[西方教会]]では、四旬節は復活祭の46日前にあたる[[灰の水曜日]]に始まる<ref name="senri" /><ref name="ACsapporo">[http://www.sapporo-michael.org/topics/%E5%A4%A7%E6%96%8E%E7%AF%80%E3%82%92%E8%BF%8E%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%AB%E3%81%82%E3%81%9F%E3%81%A3%E3%81%A6/ 大斎節を迎えるにあたって | 日本聖公会北海道教区 札幌聖ミカエル教会]</ref><ref name="LCtokyo">[http://tokyo-lutheran.com/?cat=27 東京ルーテルセンター教会 教会暦]</ref>。カトリック教会では主の晩さん([[聖木曜日]])の夕べの[[ミサ]]の前までを四旬節とするが<ref name="senri" />、聖公会、ルーテル教会では復活日前日までを四旬節とする<ref name="ACsapporo" /><ref name="LCtokyo" />。復活祭前の一週間は「聖週」「受難週」等と呼ばれ、教会暦の中で非常に重要な位置を占めている。復活祭前の日曜日は[[枝の主日]](復活前主日、[[棕櫚の主日]]など)と呼ばれ、重要な主日のひとつとされている<ref name="senri" /><ref name="LCtokyo" />。
西方教会において、最も早く復活祭が祝われる可能性がある日は(グレゴリオ暦の)3月22日である。これは最も近くでは1818年にそうなっていた。次にこの日が復活祭になるのは2285年のことである。逆に最も遅い日は4月25日である。最も近くでこの日が復活祭となったのは1943年のことであり、次は2038年になる計算である。


ルーテル教会以外の[[プロテスタント]]([[改革派教会]]、[[メソジスト]]、[[バプテスト教会|バプテスト]]など)にも、教義又は伝統的に四旬節を取り入れている教派があるが<ref>[http://www.nishitani-church.jp/blog/2010/02/2010221.html#more 「あなたがたはわたしを何者だと言うのか」ウイリアム・モーア2010.2.21 - 西谷伝道所](日本キリスト改革派伊丹教会西谷伝道所)</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20140905231407/http://www.geocities.jp/fmc_machida/cn30/message20110320.html 町田福音キリスト教会(日本フリーメソジスト教団) » 2011年3月20日]</ref><ref>[http://biyo-c.org/verbi.html 教会用語ミニ辞典]([[日本基督教団]] 尾陽教会)</ref><ref name="mizuho">[http://mizuho-church.info/archives/koramu/0903.html 宗教法人 日本バプテスト連盟 瑞穂キリスト教会]</ref>、概して現代のプロテスタントには四旬節をはじめとする教会暦にあまりこだわらない傾向がある。他方、プロテスタント内でも四旬節の意義を見直そうとする意見もある<ref name="mizuho" />。
== 典礼暦における位置づけ ==
[[ファイル:ResurrectionYaroslavlSchool.jpg|thumb|150px|right|『主の復活』の[[イコン]]。上方に[[イエス・キリスト|キリスト]]が復活した情景、下方にキリストが[[アダム]]の手を取り人々を地獄から引き上げる情景([[キリストの地獄への降下‎|地獄降り]])。主・神であるキリストにより、旧約の時代の人々にまで遡って[[復活 (キリスト教)|復活]]の生命が人類に与えられたという[[正教会]]の伝承に基づいている。[[17世紀]]・[[ヤロスラヴリ]]のもの。]]
伝統的教会では、復活祭の前に40日の準備期間として[[四旬節]]が置かれる。ただし、この40日には日曜日を含めない。[[カトリック教会|カトリック]]など西方教会では、四旬節は[[灰の水曜日]]に始まり、主の晩さん(聖木曜日)の夕べのミサの前まで続く。[[正教会]]では四旬節を[[大斎 (東方正教会)|大斎(おおものいみ)]]ともいう。数え方は若干西方と異なり、日曜日および土曜日を含めず、復活祭の7週前の主日である断酪の主日([[赦罪の主日]])の日没後から始まり、復活祭前の水曜日(聖大水曜日)に終わる。なお[[聖公会]]でも四旬節を大斎と呼ぶが、読みは「たいさい」である。大斎節(たいさいせつ)とも言う。


正教会においては、大斎(おおものいみ)は復活祭の7週前の主日である断酪の主日([[赦罪の主日]])の日没後から始まり<ref>[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/gospel.htm#yurushi み言葉に立ちどまる] (名古屋ハリストス正教会)</ref><ref name="HO41">ホプコ、小野 p41</ref>、[[エルサレム入城の日|聖枝祭]]前日の「ラザリのスボタ」([[ラザロ]]の土曜日)の前日金曜日に一応の区切りを迎える<ref name="HO47">ホプコ、小野 p47</ref>。ラザリのスボタ、聖枝祭を経て、[[受難週]]がある。それぞれの日を、聖大月曜日、聖大火曜日、聖大水曜日、[[聖木曜日|聖大木曜日]]、[[聖金曜日|聖大金曜日]]、[[聖土曜日|聖大スボタ]]と呼び、毎日特別の礼拝を行い、イエスの[[エルサレム]]入城から受難を経て復活するまでのそれぞれの日を象り記憶する<ref name="HO4957">ホプコ、小野 p49 - p57</ref>。大斎期間中には祈りと食事の節制が行われ<ref>[http://itc.cit.nihon-u.ac.jp/kenkyu/kouennkai/reference/No.37/8_kyouyou/8-010.pdf ギリシャ正教の奉神礼について](中西裕一)</ref>、喜びと浄化の時とされる<ref name="HO41">ホプコ、小野 p41</ref>。
復活祭前の一週間は「聖週間」「受難週」<!--「セマナサンタ」(「聖週間」を意味するイタリア語)-->等と呼ばれ、典礼の中で非常に重要な位置を占めている。まず復活祭前の日曜日は英語でパーム・サンデー(Palm Sunday、「[[ヤシ|椰子]]の日曜日」の意。日本語では[[枝の主日]]、[[聖枝祭]]、復活前主日、[[棕櫚の主日]]、受難の主日など)と呼ばれ、大きな主日のひとつとされている。


=== 復活祭当日 ===
正教会では受難週のそれぞれの日を、[[聖大月曜日]]、[[聖大火曜日]]、[[聖大水曜日]]、[[聖大木曜日]]、[[聖大金曜日]]、[[聖大スボタ]]と呼び、毎日特別の礼拝を行い、イエスのエルサレム入城から受難を経て復活するまでのそれぞれの日を象り記憶する。また西方教会でも、受難の月曜日、受難の火曜日、受難の水曜日、この週の木曜日から土曜日までは特に、[[聖木曜日]](洗足木曜日)、[[聖金曜日]](英語でGood Friday、受難日、受苦日)聖土曜日と呼ばれ、特別の儀式が行われる。多くの教派では復活祭の祝いが始まるのは(ユダヤ暦が日没を一日の始まりとすることから)土曜日の夜からであり、これを復活徹夜祭という。
[[File:Пасхальный крестный ход вокруг покровского собора.jpg|thumb|right|210px|[[正教会]]における[[復活大祭]]の[[十字行]]([[ガッチナ]])]]
カトリックでは「過越の三日間」として、人間にあがないをもたらしたキリストの受難と復活を主の過越の出来事として祝う。「過越の三日間」は主の晩さん(聖木曜日)の夕べのミサから、復活の主日の「晩の祈り」までとし、年間を通した典礼暦の最高頂である。中でも復活徹夜祭を最も重要な祭儀として祝い、この日に入信の秘跡([[洗礼]]、[[堅信]]、[[聖体]])を授けることが伝統的な習慣となっている。
[[File:St. Joseph Oehringen Innenraum-2.JPG|thumb|right|210px|[[カトリック教会]]における[[典礼]]([[エーリンゲン]])]]
[[教会暦]]の区切りは日没頃にある<ref>[http://www.syrian.jp/005-1-1.htm シリア正教の典礼]</ref><ref>[http://www.amagasaki.net/?proc=japaneseslashabout#LITURGY カトリック尼崎教会]</ref>。従って、教会における復活祭の当日は、一般の暦で言う前日晩の「[[復活徹夜祭]]」から始まる。


[[正教会]]における[[復活大祭]]当日における[[奉神礼]]は、一般の暦でいう前夜に始まり、夜半課、[[早課]]、[[一時課]]、[[聖体礼儀]]と続けて行われる。夜半課と早課の間には[[十字行]]が行われる。夜半課、早課、一時課は構造が通常のものと若干異なる上に、普段は[[誦経 (正教会)]]される部分も[[詠隊]]によって歌われる聖歌となる。これらの奉神礼の際、[[ハリストス復活|「ハリストス復活!」「実に復活!」]]という挨拶が繰り返し交わされ、[[パスハの讃詞]]が繰り返し歌われる。またこの祈祷の最中に、復活の生命を象徴する赤く染められた卵が[[成聖]]されて参祷者に配られる<ref>[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/paschapr.htm 正教会の復活祭 2003年復活祭フォトレポート]([http://www.orthodox-jp.com/nagoya/ 名古屋ハリストス正教会])</ref>。
復活祭から始まる季節が「復活節」(カトリック教会・聖公会の用語)・「復活祭期」(正教会の用語)であり、[[ペンテコステ]](聖霊降臨)の日まで7週間続く。

{{See also|パスハ (菓子)|クリーチ}}

[[カトリック教会]]では、キリストの受難と復活からなる{{ill2|過越の聖なる3日間|en|Paschal Triduum}}は、全[[典礼]]暦年の頂点と位置づけられ、復活の祭日は典礼暦年の中で最高位を占める主日であると位置づけられる<ref name="threedayscatholic">[http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/tenrei/sugikoshi3.htm 典礼解説 過越の聖なる三日間]([[カトリック中央協議会]])</ref>。「過越の聖なる3日間」は、始まりを「主の晩さんの夕べのミサ」とし、中心は[[復活徹夜祭]]であり、終わりは「復活の主日の晩の祈り」としている<ref name="threedayscatholic" />。復活徹夜祭は夜から明け方にかけて行われるよう定められている<ref name="threedayscatholic" />。この日、[[イースターエッグ]]が配られる<ref group="注釈">卵が配られる習慣は正教、カトリック、聖公会、プロテスタントに広くみられるが、正教会では「イースターエッグ」とはあまり呼ばれない(先述の通り、復活祭が「イースター」とはあまり呼ばれないため)。ただし日本正教会公式サイトには記述が無いものの([http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/kokoroe05.html])、地方教会のウェブサイトでの用例はある([http://orthodox-hakodate.jp/info/1676.html])。</ref>。また毎年、[[教皇]]から復活祭のメッセージが発表される<ref>[http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/feature/benedict_xvi/bene_message612.htm 教皇ベネディクト十六世の2011年4月24日の復活祭メッセージ(ローマと全世界へ)]</ref>。

[[聖公会]]では、復活日前日に[[復活徹夜祭]](復活日前宵礼拝)、復活日当日には復活を祝う[[聖餐]]式が行われる。また、復活日の聖餐式後に祝会やイースターエッグ配布を行う教会も多い<ref>[http://nskk-kobeshoten.org/news/183 2013年 復活日礼拝・聖洗式・祝会 | 神戸昇天教会 | 日本聖公会神戸昇天教会のブログページ]</ref>。

[[プロテスタント]]諸教会においては、教会暦にあまりこだわらない場合もあるなど<ref name="mizuho" />、内実の多様性から一概に言えない。しかし、特別に復活日(復活祭)を祝う礼拝を行い、正教会、カトリック教会、聖公会と同様、イースターエッグが配られる場合もある<ref>[https://wjelc-awaji.blogspot.com/2013/04/blog-post.html 淡路福音ルーテル教会: 3月31日イースター礼拝と洗礼式がありました]</ref><ref>[http://www.katsutadaichurch.com/2013/03/28/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%A4%BC%E6%8B%9D%E3%81%AB%E3%81%84%E3%82%89%E3%81%A3%E3%81%97%E3%82%83%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%9B/ イースター礼拝にいらっしゃいませ - 日本キリスト改革派 勝田台教会]</ref><ref>[http://kawasaki-baptist-church8.webnode.jp/news/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E7%A4%BC%E6%8B%9D/ イースター礼拝 :: 川崎バプテスト教会]</ref>。

=== 復活節・復活祭期 ===
復活祭から始まる期間が「'''復活節'''」(ふっかつせつ、[[カトリック教会]]<ref name="RCfu" />/ [[聖公会]]<ref>改訂増補日本聖公会祈祷書解説編集委員会『改訂増補 日本聖公会祈祷書解説』5頁、[[日本聖公会]]管区事務所(1994年2月)</ref>/ [[ルーテル教会]]<ref>[http://tokyo-lutheran.com/?cat=27 東京ルーテルセンター教会 教会暦]</ref>の用語)・「'''復活祭期'''」(ふっかつさいき、[[正教会]]の用語<ref>[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/msj3.htm 正教会にわくわくの好奇心を抱いておられる方に]([http://www.orthodox-jp.com/nagoya/ 名古屋ハリストス正教会])</ref>)であり、[[ペンテコステ]](聖霊降臨)の日まで7週間続く。それぞれの教会の[[教会暦]]において、読まれるべき[[聖書]]の箇所や、特別に行われる[[礼拝]]、[[典礼]]、[[奉神礼]]が定められている。

正教会においては、復活祭期には[[ハリストス復活|「ハリストス復活!」「実に復活!」]]との挨拶が信者間で交わされる。復活大祭からの一週間は[[光明週間]]と呼ばれる<ref name="OCJmonoimi">[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/inori04.html 祈り-祭と斎:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref>。この一週間には[[斎]](食品の制限をはじめとする精進)は行われず<ref name="OCJmonoimi" /><ref>[http://www.antiochian.org/fasting-great-lent Fasting and Great Lent | Antiochian Orthodox Christian Archdiocese]</ref>、この一週間に[[奉神礼]]が行われる場合は全て復活大祭と同様の形式で行われる<ref name="HO60">ホプコ、小野 p60</ref>。光明週間は復活大祭翌[[主日]](翌日曜日)である、「[[トマス (使徒)|聖使徒フォマ]]の主日」とも呼ばれる「アンティパスハ(代逾越節)」まで続く<ref name="HO60" /><ref>[http://oca.org/liturgics/outlines/fasting-fast-free-seasons-of-the-church OCA - Liturgics - Fasting & Fast-Free Seasons of the Church]</ref>。

カトリック教会においては、復活節の最初の8日間を「主の復活の8日間」と呼び、この期間内には主日(日曜日)ではない平日でも主の祭日のように祝われる<ref name="RCfu" />。

なお[[プロテスタント]]の一部では、復活祭・復活日当日を「復活節」と呼ぶこともある<ref name="kunitachi" />。


== 復活祭に関する習俗 ==
== 復活祭に関する習俗 ==

===復活祭のあいさつ===
[[File:42.-Old-Russian-Easter-Postcard.jpg|thumb|right|[[ロシア帝国]]で発行された、復活祭を祝う家族が描かれた絵葉書。左上には「[[ハリストス復活|ハリストス復活!]]」と[[教会スラヴ語]]で書かれている。]]
{{See also|en:Paschal greeting#The Paschal Greeting in various languages}}
[[日本]]では、「復活祭、おめでとう(ございます)」、「ハッピー・イースター」({{en|Happy Easter}})などが使われる。[[英語]]の「{{en|Happy Easter!}}」以外に、[[ロシア語]]の「フリーストス・ヴァスクリェース」(キリストは復活した)に対して「ヴァイーストゥヌ・ヴァスクリェース」(まことに復活した)と答える習慣が世界的には比較的広く知られている。

=== 食品 ===
[[ファイル:Święconka wielkanocna.jpg|thumb|right|復活祭に祝福される食品を入れた籠(ポーランド)]]
[[ファイル:Święconka wielkanocna.jpg|thumb|right|復活祭に祝福される食品を入れた籠(ポーランド)]]
[[File:Påskmiddag-Swedish Easter dinner.jpg|thumb|right|復活祭の食卓(スウェーデン)]]
[[File:Påskmiddag-Swedish Easter dinner.jpg|thumb|right|復活祭の食卓(スウェーデン)]]
[[File:Oster-Striezel Zopf Brot Easter breads Kipfel Hasen.jpg|thumb|right|ドイツの復活祭の卵、オスターブロート(復活祭のパン)、オスターハーゼ(ウサギ型のパン)]]

西方教会と東方教会では、伝統的に四旬節および大斎の期間中禁じられていた肉、乳製品、卵(東方教会では魚肉も)が復活祭の日に初めて解禁になるため、復活祭の正餐の食卓にはこれらの動物性食品が並ぶ。また、卵、[[バター]]、乳などをふんだんに使った復活祭独特の[[菓子パン]]や[[ケーキ]]が作られる。家禽を飼っている家庭では、四旬節および大斎の期間中に生まれたために食べられずにたまっていた卵をまとめて消費するという理由もある。
西方教会と東方教会では、伝統的に四旬節および大斎の期間中禁じられていた肉、乳製品、卵(東方教会では魚肉も)が復活祭の日に初めて解禁になるため、復活祭の正餐の食卓にはこれらの動物性食品が並ぶ。また、卵、[[バター]]、乳などをふんだんに使った復活祭独特の[[菓子パン]]や[[ケーキ]]が作られる。家禽を飼っている家庭では、四旬節および大斎の期間中に生まれたために食べられずにたまっていた卵をまとめて消費するという理由もある。


[[ドイツ]]では、[[シュターフラーデン]](Osterfladen)という円形のパンを食べる。パン生地をウサギの形に成形するとオシュターハーゼ(Osterhase)となる<ref>Mimi Sheraton. The German Cookbook. Random House, 1966年。452-453頁</ref>。
[[ドイツ]]では、{{仮リンク|ターフラーデン|de|Osterfladen}}という円形のパンを食べる。パン生地を[[イースターバニー|ウサギ]]の形に成形するとオターハーゼ(Osterhase)となる<ref>Mimi Sheraton. The German Cookbook. Random House, 1966年。452-453頁</ref>。


[[スイス]]の[[ドイツ語]]圏のオスターフラーデンは、[[アーモンド]]と[[レーズン]]の[[タルト]]である<ref>Nika Standen Hazelton. The Swiss Cookbook. Hippocrene, 1998年。164頁</ref>。
[[スイス]]の[[ドイツ語]]圏のオスターフラーデンは、[[アーモンド]]と[[レーズン]]の[[タルト (洋菓子)|タルト]]である<ref>Nika Standen Hazelton. The Swiss Cookbook. Hippocrene, 1998年。164頁</ref>。


[[イタリア]]の復活祭の伝統料理は地方によって異なるが、主菜には[[ラム (子羊)|子羊]]が好まれる。もっとも有名な食品は[[パネットーネ|コロンバ・パスクーレ]](復活祭のハト)という、ハトをかたどった菓子パンであろう。[[パン生地]]に卵を殻ごと入れて焼いた、クッドゥーラ(cuddura)やプッドリーケ(Puddhriche)というパンを作る地域も多い。シチリア島ではペコレッレ(pecorelle)と呼ばれる[[マルチパン]]でできた子羊が食べられる。復活祭の翌日の[[月曜日]]はパスッタ(pasquetta、小復活祭の意)と呼ばれる祝日で、戸外で[[ピクニック]]をする日となっている。
[[イタリア]]の復活祭の伝統料理は地方によって異なるが、主菜には[[ラム (子羊)|子羊]]が好まれる。もっとも有名な食品は[[パネットーネ|コロンバ・パスクーレ]](復活祭のハト)という、ハトをかたどった菓子パンであろう。[[パン生地]]に卵を殻ごと入れて焼いた、クッドゥーラ ({{it|cuddura}}) やプッドリーケ ({{it|puddhriche}}) というパンを作る地域も多い。シチリア島ではペコレッレ ({{it|pecorelle}}) と呼ばれる[[マルチパン]]でできた子羊が食べられる。[[イースターマンデー|復活祭の翌日の月曜日]]はパスクエッタ({{it|pasquetta}}、小復活祭の意)と呼ばれる祝日で、戸外で[[ピクニック]]をする日となっている。


[[ギリシア神話]]の神々の信仰が盛んだった[[シチリア]]では、復活祭の伝統行事の中に死から蘇るキリストと[[ハーデース]]から帰還する[[ペルセポネー]]の習合と、[[デーメーテール]]や[[アドーニス]]信仰の名残りが見られる<ref>Carol Field. Celebrating Italy. Harper Perennial, 1997年。410頁</ref>。
スウェーデンでは、[[ゆで卵]]を[[タイセイヨウニシン|ニシン]]の酢漬けや[[アンチョビ]]などと供する。主菜は家庭によって[[ラム (子羊)|子羊]]の脚または[[サケ]]が供される<ref>Natur och Kultur. The Best of Swedish Cooking. 1995年。159頁</ref>。

スウェーデンでは、[[ゆで卵]]を[[タイセイヨウニシン|ニシン]]の酢漬けや[[アンチョビ]]などと供する。主菜は家庭によって[[ラム (子羊)|子羊]]の脚または[[サケ]]が供される<ref>Natur och Kultur. The Best of Swedish Cooking. 1995年。159頁</ref>。


[[フィンランド]]では、東方教会の影響下にあった[[カレリア]]では[[パスハ (菓子)|パスハ]]を、その他の地域では[[ンミ]](Mämmi)という[[ライ麦]]粉と廃[[糖蜜]]の[[プディング]]を食べる<ref>Beatrice A. Ojakangas. The Finnish Cookbook. Crown Publishers, 1989年。230頁</ref>。
[[フィンランド]]では、東方教会の影響下にあった[[カレリア]]では[[パスハ (菓子)|パスハ]]を、その他の地域では[[ンミ]]({{lang|fi|Mämmi}})という[[ライ麦]]粉と廃[[糖蜜]]の[[プディング]]を食べる<ref>Beatrice A. Ojakangas. The Finnish Cookbook. Crown Publishers, 1989年。230頁</ref>。


[[アイスランド]]では、子羊肉または[[マトン]]の[[燻製]]と、[[米]]または[[オオムギ]]のミルクプディングを食べる習慣があった<ref>Nanna Rögnvaldardóttir. Icelandic Food and Cookery, Hippocrene. 2002年。12頁</ref>。
[[アイスランド]]では、子羊肉または[[マトン]]の[[燻製]]と、[[米]]または[[オオムギ]]のミルクプディングを食べる習慣があった<ref>Nanna Rögnvaldardóttir. Icelandic Food and Cookery, Hippocrene. 2002年。12頁</ref>。


[[ポーランド]]の復活祭の正餐には、ゆで卵、[[ソーセージ]]、乳飲み豚の[[ロースト]]、ハム、おろした[[セイヨウワサビ]]などが並ぶ。デザートには[[マズレク]](mazurek、長方形のケーキ)[[バブカ]](babka、[[クグロフ]]に似た形のケーキ)を食べる<ref>Robert & Maria Strybel. Polish Heritage Cookery. Hippocrene, 2005年。</ref>。
[[ポーランド]]の復活祭の正餐には、ゆで卵、[[ソーセージ]]、乳飲み豚の[[ロースト]]、ハム、おろした[[セイヨウワサビ]]などが並ぶ。デザートには{{仮リンク|マズレク|en|Mazurek (cake)}}や[[クグロフ]]に似た{{仮リンク|ババ・ヴィルカノツナ|pl|Baba wielkanocna}}を食べる<ref>Robert & Maria Strybel. Polish Heritage Cookery. Hippocrene, 2005年。</ref>。


[[アカディア]]には、朝食に[[ゆで卵]]、昼食に卵と[[ハム]]または塩漬け[[豚肉]]、夕食には[[オムレツ]]かフラン([[ホットケーキ|パンケーキ]])に[[メープルシロップ]]かメープルシュガーをつけて食べる習慣があった<ref>Marielle Cormier-Boudreau & Melvin Gallant. A Taste of Acadie. Goose Lane, 1991年。16頁</ref>。
[[アカディア]]には、朝食に[[ゆで卵]]、昼食に卵と[[ハム]]または塩漬け[[豚肉]]、夕食には[[オムレツ]]かフラン([[ホットケーキ|パンケーキ]])に[[メープルシロップ]]かメープルシュガーをつけて食べる習慣があった<ref>Marielle Cormier-Boudreau & Melvin Gallant. A Taste of Acadie. Goose Lane, 1991年。16頁</ref>。


=== イースターエッグ ===
=== イースターエッグ(復活祭の卵) ===
{{main|イースターエッグ}}
{{main|イースターエッグ}}
イースターエッグ、または復活祭の卵とは、復活祭に出される、彩色や装飾を施されたゆで卵である<ref name="FOD">[http://www.thefreedictionary.com/Easter+egg Easter egg - definition of Easter egg by the Free Online Dictionary, Thesaurus and Encyclopedia.]</ref>。
復活祭に殻に鮮やかな彩色を施したり、美しい包装をしたゆで卵を出す習慣である。国や地域によっては、復活祭の際に庭や室内のあちこちに隠して子供たちに探させるといった遊びもおこなわれる。近年では卵だけでなく、卵をかたどったチョコレートも広く用いられている。これはもともとヒナが卵から生まれることをイエスが墓から出て復活したことに結びつけたもの、および冬が終わり草木に再び生命が甦る喜びを表したものといわれている。英語圏やドイツではイースター・バニーが運んでくる(または産む)ものとされているが、フランスやイタリアでは教会の鐘が運んでくるものとされている。


卵は[[大斎]]([[四旬節]])に節制される食品である(ただしこうした断食・節食の習慣は、[[西方教会]]では大幅に簡略化されるかもしくは消滅している)。卵が使われる意義については、見た目には動かない卵から新しい生命が生まれ出ることから、死と復活を象徴しているとされる。赤く染められる事が多いが、その赤い色は[[十字架]]上で流された[[イエス・キリスト|キリスト]]の血の色と、血は生命を表すことから([[レビ記]] 17:11)復活の喜びを表すとされる<ref name="katachi">[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/kokoroe05.html かたち-その他の慣習:日本正教会 The Orthodox Church in Japan]</ref><ref name="RCEaster">[http://www.newadvent.org/cathen/05224d.htm CATHOLIC ENCYCLOPEDIA: Easter]</ref><ref name="hakobura">[http://www.hakobura.jp/deep/2012/12/post-221.html 函館ハリストス正教会の「ウクライナたまご」 - あなたのテーマでディープな函館 - 函館市公式観光情報サイトはこぶら]</ref>。
また、上記のイースターエッグの探し物遊びにちなんで、ソフトウェアの中に開発者がまぎれこませたメッセージ(開発チームスタッフへの謝辞やスタッフロール)のことも「[[イースター・エッグ (コンピュータ)|イースター・エッグ]]」と呼ばれる。


[[ウクライナ]]には表面に模様を描いていく[[プィーサンカ]]と呼ばれる復活祭の卵がある<ref name="hakobura" />。[[ルーマニア]]には卵の表面をビーズで装飾する復活祭の卵がある<ref>[http://orthodox-hakodate.jp/info/1676.html 函館ハリストス正教会 イースターエッグ(紅卵)染め]</ref>。
=== イースター・バニー ===

[[ファイル:Nancy Reagan WH Easter Egg Roll 1981 wave.jpg|thumb|right|[[ホワイトハウス]]から手をふる[[ナンシー・レーガン]]とイースター・バニー([[1981年]])]]
国や地域によっては、復活祭の際に庭や室内のあちこちに隠して子供たちに探させるといった遊びもおこなわれる。
英語圏やドイツでは、ウサギをかたどったチョコレートやパンが作られる。ウサギは多産なので生命の象徴であり、また跳ね回る様子が生命の躍動を表しているといわれる。あるいは、うさぎの目が、月を思い起こさせ、月は欠けて見えなくなっても、また新月から三日月、そして満月となることからやはり復活を表すものとして、キリストの復活のシンボルとされている。

また、上記のイースターエッグの探し物遊びにちなんで、ソフトウェアの中に開発者がまぎれこませたメッセージ(開発チームスタッフへの謝辞やスタッフロール)のことも「[[イースターエッグ (隠し要素)|イースターエッグ]]」と呼ばれる<ref name="FOD" />。

この習慣の起源については様々な説がある。教会の伝承の一つとして、[[マグダラのマリア|マグダラのマリヤ]]が、[[イエス・キリスト|キリスト]]の[[復活 (キリスト教)|復活]]を知らせるために[[ローマ皇帝]]に謁見した際、赤い卵を献上したことに由来するというものがある<ref name="katachi" />。他方、その由来を春の到来を祝う異教に求める見解もある(ただしこの見解をとる教会においても、上述の意義付けは同様である)<ref name="RCEaster" />。

{{See also|プィーサンカ|イースターエッグ (隠し要素)}}

卵の染め方・柄には下記画像に挙げている諸例のほかにも様々なものがあり、各国・各地域内でも多様である。
<gallery mode="packed" height=180px>
File:Pasxalina abga.jpg|最も基本的な、赤一色に染めた復活祭の卵([[ギリシャ]])
File:Oeufs colores.JPG|復活祭の卵([[フランス]])
File:Զատկի հաւկիթներ.JPG|復活祭の卵([[アルメニア]])
File:Ukranian egg.jpg|[[プィーサンカ]]([[ウクライナ]])
File:Romanian easter eggs. Bucharest, Roamnia, Southeastern Europe.jpg|装飾された復活祭の卵([[ルーマニア]])
File:Bg-easter-eggs.jpg|復活祭直後から宗教を問わず祝われる[[シャンム・ナシーム]]の「彩色卵」([[エジプト]])
</gallery>

[[ファイル:Nancy Reagan and Easter Bunnies wave from the State Floor Balcony during the White House Easter Egg Roll on the South Lawn.jpg|thumb|right|[[ホワイトハウス]]から手をふる[[ナンシー・レーガン]]と復活祭のウサギ([[1981年]])]]

=== イースターバニー ===
{{main|イースターバニー}}
上述のイースターエッグは[[東方教会]]・[[西方教会]]を問わない古くからの習慣であるが、[[イースターバニー]]は西欧(西方教会)のみの習慣であり、[[16世紀]]から[[17世紀]]にかけて定着したものである<ref>[http://www.agion-oros.orthodoxy.ru/doc202/zayats.htm {{lang|ru|ЗАЯЦ КАК ПЕРСОНАЖ И АТРИБУТ ПАСХИ У ИНОСЛАВНЫХ}}]</ref>(起源を[[15世紀]]、定着の始まりを[[19世紀]]とする者もいる<ref name="yahoo">[http://voices.yahoo.com/the-origin-history-easter-bunny-15581.html The Origin and History of the Easter Bunny - Yahoo Voices - voices.yahoo.com]</ref>)。

英語圏やドイツでは、ウサギをかたどったチョコレートが作られる<ref name="yahoo" />。ウサギは多産なので豊穣の象徴であるとされる<ref name="RCEaster" />。

===イースターリリー===
{{main|テッポウユリ#イースターリリー}}
[[キリスト教]][[西方教会]]で、またその影響を受けた日本のキリスト教会でも、復活祭に[[テッポウユリ]]を教会の祭壇に飾るなどする習慣があり、これをその英語名から[[イースターリリー]]([[:en:Lilium longiflorum|Easter lily]]=復活祭のユリ)と呼ぶ。

== 日本とイースター ==
[[ルイス・フロイス]]によると、日本での復活祭は[[1564年]]に[[平戸市|平戸]]の[[度島]]([[長崎県]])で行われていた(ルイス・フロイス『[[フロイス日本史|日本史]]』第50章より)。4月2日の復活祭では[[キリシタン]]たちはいちばん上等な着物に身を包み、行列をつくって島内を練り歩いた<!--(浦地区の高台にあった十字架敷石跡まで足を運んだ可能性もある)-->。

また[[1581年]]3月21日にキリシタン大名・[[高山右近]]統治下の[[高槻市|高槻]]で行われた復活祭は、畿内のキリスト教信者1万数千名が集う大規模な祭典であった<ref>[https://www.hokkoku.co.jp/kagakikou/ukon/ukon04.html 北國新聞朝刊 加賀百万石異聞・高山右近(4)2002/02/05付](2020年5月7日閲覧)</ref>。

[[2010年代]]に入った頃、「イースター」(復活祭)の要素を取り入れたイベントの開催や商品展開が各業界で模索され始める。その例として[[東京ディズニーランド]]では毎年4月〜6月期のイベントとして[[2010年]]から「[[ディズニー・イースターワンダーランド]]」([[2014年]]より「[[ディズニー・イースター]]」に改称)を開催<ref>[http://maihama.hateblo.jp/entry/2015/06/22/100000 「ディズニー・イースター」の功罪を考える](舞浜新聞 2015年6月22日)</ref>、また[[ユニバーサル・スタジオ・ジャパン]](USJ)でも[[2013年]]より「ユニバーサル・ イースター・セレブレーション」を開催している<ref>[https://www.usj.co.jp/company/news/2012/1218.html “史上空前の春、はじまる。” 息をのむ興奮、瞬きができないほどの感動 !! 大人も子どもも夢中になる、パーク史上最大のスケールで繰り広げる春イベント!](株式会社ユー・エス・ジェイ:ニュース 2012年12月18日)</ref>。

[[テーマパーク]]のイベント以外でも、[[2011年]]よりイースター限定商品を展開している[[バスキン・ロビンス|サーティワン アイスクリーム]]<ref>[https://news.mynavi.jp/article/20120319-a120/ 盛り上がりを見せ始めたイースター商戦 購買意欲を刺激するかわいいタマゴグッズやイベントが目白押し](マイナビニュース 2012年3月19日)</ref><ref name="sankeibiz_150401">[http://www.sankeibiz.jp/business/news/150401/bsd1504010500004-n1.htm 「イースター商戦」定着狙う 百貨店や菓子業界](SankeiBiz 2015年4月1日)/[http://www.sankei.com/premium/news/150404/prm1504040014-n1.html 東京で拡大する「イースター商戦」](産経ニュース 2015年4月4日)</ref>の他、[[2015年]]時点でイースター[[商戦]]に力を入れる[[百貨店]]や[[菓子]]メーカーが出てきており、イースターは[[クリスマス]]や[[バレンタインデー]]、[[ハロウィン]]に続く第4のイベントとして注目されている<ref name="sankeibiz_150401"/><ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ31HMI_R30C15A3TI0000/ イースター、春祝う TDLでイベント・百貨店で催事](日本経済新聞 2015年3月31日)</ref><ref>[http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/201504/0007883569.shtml イースター商戦白熱 ウサギや卵ちなみ菓子やパン次々発売](神戸新聞NEXT 2015年4月4日)</ref><ref>[https://www.fuji-keizai.co.jp/market/14074.html 伝統的な行事である正月、新たに定着するハロウィーンなどイベントにおける加工食品市場を調査(2014年見込)](株式会社富士経済 2014年10月16日)</ref>。

日本はキリスト教国ではないため、これらのイベントと同様に[[宗教]]的色彩は大幅に薄められている。しかし、[[10月31日]]という[[季節]]イベントの少ない時期に行われる、商売閑散期のハロウィンと比べると、イースターはちょうど[[サクラ|桜]]([[ソメイヨシノ]])の[[花見]]、[[卒業]]・[[入学]]、歓送迎会シーズンに当たり、それらに合わせて既存の販売促進イベントも集中するため、<!--時間と出費等がかさみ-->イースター商戦が入り込む余地が少ないことに加え、前述の3つのイベントにはない日付が毎年変動し、宗派によって日付も違う要素もあり<ref group="注釈">ちなみに日本のイースターでも一般的に採用されている西方教会の日付の場合、日本の[[会計年度]]の始まりである[[4月1日]]を挟んで毎年変動するため、復活祭が1回ある年度だけでなく、2回ある年度(2015年度)、1回もない年度(2016年度)が混在する([[#日付|上表]]参照)。</ref>、イースターイベントが日本では定着しない一因となっている<ref>{{cite news | author = | url = http://www.data-max.co.jp/2013/03/25/post_16449_dm1526_2.html | title = 【流通】「イースター」―日本で定着しない理由 | newspaper = ネットアイビーニュース | date = 2013-03-25 | accessdate =2020-02-26 }}</ref>。

== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
<references group="注釈" />
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
* トマス・ホプコ著・イオアン小野貞治訳『正教入門シリーズ2 奉神礼』西日本主教区([[日本正教会]])2009年8月17日


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commons|Easter}}
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* [[復活大祭]]
* [[復活日論争]]
* [[復活 (キリスト教)]]
* [[復活祭の日付の計算]](コンプトゥス)
* [[復活祭の日付の計算]](コンプトゥス)
* [[教会暦]]
* [[教会暦]]
* [[四旬節]]
* [[商戦]]
* [[パスカ]] - 復活祭に主として東欧諸国で食べられるパン。
* [[過越]]
* [[日曜日]]
* [[エキュメニズム]]
* [[ハリストス復活]]
* [[エパクト]]
* [[エパクト]]
* [[イースター島]] - イースターに発見された事にちなんだ名称であるといわれている。
* [[イースター蜂起]] - 1916年のイースターである4月24日から4月30日にかけて、[[アイルランド]]で発生した反英武装蜂起。
* [[ベシエール]] - イースターに巨大オムレツを作る町として有名。
* [[ショコラ de イースター]]
* [[:en:Quartodecimanism|Quartodecimanism]](14日遵守派)
* [[:en:Quartodecimanism|Quartodecimanism]](14日遵守派)
* [[ナビー・ムーサー]] - アラビア語で預言者モーゼという意味の地名であり、同名のムスリムによる祭祀と巡礼の名前。[[聖金曜日]]の前の金曜日から1週間に渡って執り行われる。同様の祭祀には、エジプトで東方教会の復活祭の次の日から、宗教を問わず祝われる[[シャンム・ナシーム]]がある。イースターエッグに似た卵も作る([[:ar:شم النسيم|アラビア語版]]参照)。
* [[死者の木曜日]] - 卵の木曜日ともいう。[[レヴァント]]のキリスト教徒とイスラム教徒が共に祝う、復活祭時期の木曜日の日。墓参りや、菓子や黄色く塗った卵を配る。
* [[スリランカ連続爆破テロ事件]] - [[2019年]]の「復活の主日」に、[[スリランカ]]の教会などで発生した爆弾テロ事件。


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== 参考文献 ==
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<references />

== 外部リンク ==
* [http://www.esflamenco.com/scripts/news/janews.asp?frmIdPagina=330 セマナ・サンタ(聖週間-復活祭)]

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2024年12月3日 (火) 12:08時点における最新版

復活祭
復活祭
復活』(シモン・チェホヴィッチポーランド語版画、1758年)。復活したイエス・キリストが弟子達の前に現れている場面が描かれている。
別名 復活節、復活の主日、イースター、パスハ
日付 春分日後の最初の満月の次の日曜日
コンプトゥスによる移動祝日
2023年
2024年
2025年
関連祝日 過越祭受難週四旬節光明週間
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復活祭(ふっかつさい、ギリシア語: Πάσχαラテン語: Paschaフランス語: Pâques英語: Easterドイツ語: Osternロシア語: Пасха)は、磔刑にされて死んだイエス・キリストが三日目に復活したことを記念・記憶する、キリスト教においては最も重要とされる祭[1][2][3][4][5][6]

概要

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多くの教派で特別な礼拝(典礼奉神礼)が行われるほか、様々な習慣・習俗・行事がある。

正教会ではギリシャ語から「パスハ」とも呼ぶ[7][注釈 1]カトリック教会では「復活主日[8]とも呼ばれ、聖公会などでは「復活日」(ふっかつび)[4][9][注釈 2]や、英語から「イースター」とも呼ぶ[10][11]。「復活節」(ふっかつせつ)は、西方教会において復活祭からの一定期間を指す用法の他、プロテスタントの一部で復活祭(復活日)当日を指す用法がある[12]

基本的に「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」に祝われるため、年によって日付が変わる移動祝日である。日付は変わるものの、必ず日曜日に祝われる。キリスト教が優勢な国においてはその翌日の月曜日も休日にされていることがある。欧州における主要株式・債券市場は、復活祭の前の聖金曜日、復活祭後の月曜日に休場する[13]

東方教会西方教会とでは日付の算定方法が異なるため、日付が異なる年の方が多い[注釈 3][14]

日付

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復活祭の日付
2011年-2025年
[15][16]
西方教会 東方教会
2011年 4月24日
2012年 4月8日 4月15日
2013年 3月31日 5月5日
2014年 4月20日
2015年 4月5日 4月12日
2016年 3月27日 5月1日
2017年 4月16日
2018年 4月1日 4月8日
2019年 4月21日 4月28日
2020年 4月12日 4月19日
2021年 4月4日 5月2日
2022年 4月17日 4月24日
2023年 4月9日 4月16日
2024年 3月31日 5月5日
2025年 4月20日

復活祭は移動祝日であり、もともと太陰暦にしたがって決められた日であったため、年によって太陽暦での日付が変わる。グレゴリオ暦を用いる西方教会では、毎年3月22日から4月25日の間のいずれかの日曜日東方教会では、グレゴリオ暦の4月4日から5月8日の間のいずれかの日曜日に祝われる。

復活祭を祝う日付をいつにするかについては、古代に論争を経て、325年の第1ニカイア公会議で統一されるに至ったが、16世紀に西方教会においてグレゴリオ暦が採用されてから、正教会と西方教会で日付が異なるという現象が起きるようになり、議論が続いている。

名称の語源

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パスハ、パスカ、パスクワ

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英語ドイツ語ポーランド語等以外の多くのヨーロッパ諸言語における「復活祭」という言葉は、ギリシア語: Πάσχα古典ギリシア語再建音:パスカ、現代ギリシア語転写:パスハ)に由来しており、その言葉も元をたどれば、アラム語の「パスハ(pascha)」で、これはユダヤ教の「過越(すぎこし)の祭り」を表す「ペサハ」(Pesach) というヘブライ語の言葉から来ている[6][17]。つまり、キリスト教の復活祭が旧約時代の「過越の祭り」を雛形とした祝い日であることを示している[6][17][18]

ギリシャ正教会復活大祭を「パスハ(Πάσχα)」と呼ぶのは勿論のこと、ロシア正教会ロシア語でも復活大祭はヘブライ語・ギリシャ語起源の「パスハ(Пасха)」と呼ばれ、日本正教会でも復活大祭をパスハと呼ぶ[19]カトリック教会においてもラテン系の国では「パスカ」(ラテン語: Pascha)、イタリア語、スペイン語ではパスクワ (Pasqua, Pascua) の呼称が一般的である。

エイレナイオステルトゥリアヌスは「パスハ」を、ギリシャ語の動詞「苦しむ」(ギリシア語: πάσχω[注釈 4])に関連付け、イエス・キリストの受難と結びつけて解釈したが、この誤りは彼らがヘブライ語を知らなかったため生じた。アウグスティヌスはその語源説明の誤りを正した[17]

イースター、オスターン

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復活祭を表す英語「イースター (Easter)」およびドイツ語「オスターン (Ostern)」はゲルマン神話の春の女神「エオストレ (Eostre)」の名前、あるいはゲルマン人の用いた春の月名「エオストレモナト (Eostremonat)」に由来しているともいわれる。8世紀の教会史家ベーダ・ヴェネラビリスがこれに言及し、ゲルマン人が「エオストレモナト」に春の到来を祝う祭りをおこなっていたことを記録している[17]。ただしこの説も確実ではない[4]

復活祭に連動する教会暦・礼拝・典礼・奉神礼

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復活祭(復活大祭、復活日)は教会暦において、移動祭日と呼ばれ[20](移動祝祭日[21]もしくは移動祝日[22]とも)、最も重要な祭り(祝日)と位置づけられるとともに[1][2][3][4][5][6]、復活祭によって教会暦における他の移動祭日(移動祝祭日、移動祝日)が決められる。

大斎(四旬節)

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正教会カトリック教会聖公会ルーテル教会においては、復活祭(復活大祭、復活日)の前にイエスの荒野での試みや十字架の受難を記念する「40日間」が設けられている。ラテン語で Quadragesima、英語では古ドイツ語の「断食」を語源とする Lent と標記されるが、日本語においては四旬節(カトリック、ルーテル他)、大斎節(たいさいせつ、日本聖公会)、大斎(おおものいみ、正教会)のように呼び名が異なる。また、開始日や数え方も教派ごとに違いがある。

カトリック教会、聖公会、ルーテル教会などの西方教会では、四旬節は復活祭の46日前にあたる灰の水曜日に始まる[22][23][24]。カトリック教会では主の晩さん(聖木曜日)の夕べのミサの前までを四旬節とするが[22]、聖公会、ルーテル教会では復活日前日までを四旬節とする[23][24]。復活祭前の一週間は「聖週」「受難週」等と呼ばれ、教会暦の中で非常に重要な位置を占めている。復活祭前の日曜日は枝の主日(復活前主日、棕櫚の主日など)と呼ばれ、重要な主日のひとつとされている[22][24]

ルーテル教会以外のプロテスタント改革派教会メソジストバプテストなど)にも、教義又は伝統的に四旬節を取り入れている教派があるが[25][26][27][28]、概して現代のプロテスタントには四旬節をはじめとする教会暦にあまりこだわらない傾向がある。他方、プロテスタント内でも四旬節の意義を見直そうとする意見もある[28]

正教会においては、大斎(おおものいみ)は復活祭の7週前の主日である断酪の主日(赦罪の主日)の日没後から始まり[29][30]聖枝祭前日の「ラザリのスボタ」(ラザロの土曜日)の前日金曜日に一応の区切りを迎える[31]。ラザリのスボタ、聖枝祭を経て、受難週がある。それぞれの日を、聖大月曜日、聖大火曜日、聖大水曜日、聖大木曜日聖大金曜日聖大スボタと呼び、毎日特別の礼拝を行い、イエスのエルサレム入城から受難を経て復活するまでのそれぞれの日を象り記憶する[32]。大斎期間中には祈りと食事の節制が行われ[33]、喜びと浄化の時とされる[30]

復活祭当日

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正教会における復活大祭十字行ガッチナ
カトリック教会における典礼エーリンゲン

教会暦の区切りは日没頃にある[34][35]。従って、教会における復活祭の当日は、一般の暦で言う前日晩の「復活徹夜祭」から始まる。

正教会における復活大祭当日における奉神礼は、一般の暦でいう前夜に始まり、夜半課、早課一時課聖体礼儀と続けて行われる。夜半課と早課の間には十字行が行われる。夜半課、早課、一時課は構造が通常のものと若干異なる上に、普段は誦経 (正教会)される部分も詠隊によって歌われる聖歌となる。これらの奉神礼の際、「ハリストス復活!」「実に復活!」という挨拶が繰り返し交わされ、パスハの讃詞が繰り返し歌われる。またこの祈祷の最中に、復活の生命を象徴する赤く染められた卵が成聖されて参祷者に配られる[36]

カトリック教会では、キリストの受難と復活からなる過越の聖なる3日間英語版は、全典礼暦年の頂点と位置づけられ、復活の祭日は典礼暦年の中で最高位を占める主日であると位置づけられる[37]。「過越の聖なる3日間」は、始まりを「主の晩さんの夕べのミサ」とし、中心は復活徹夜祭であり、終わりは「復活の主日の晩の祈り」としている[37]。復活徹夜祭は夜から明け方にかけて行われるよう定められている[37]。この日、イースターエッグが配られる[注釈 5]。また毎年、教皇から復活祭のメッセージが発表される[38]

聖公会では、復活日前日に復活徹夜祭(復活日前宵礼拝)、復活日当日には復活を祝う聖餐式が行われる。また、復活日の聖餐式後に祝会やイースターエッグ配布を行う教会も多い[39]

プロテスタント諸教会においては、教会暦にあまりこだわらない場合もあるなど[28]、内実の多様性から一概に言えない。しかし、特別に復活日(復活祭)を祝う礼拝を行い、正教会、カトリック教会、聖公会と同様、イースターエッグが配られる場合もある[40][41][42]

復活節・復活祭期

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復活祭から始まる期間が「復活節」(ふっかつせつ、カトリック教会[8]/ 聖公会[43]/ ルーテル教会[44]の用語)・「復活祭期」(ふっかつさいき、正教会の用語[45])であり、ペンテコステ(聖霊降臨)の日まで7週間続く。それぞれの教会の教会暦において、読まれるべき聖書の箇所や、特別に行われる礼拝典礼奉神礼が定められている。

正教会においては、復活祭期には「ハリストス復活!」「実に復活!」との挨拶が信者間で交わされる。復活大祭からの一週間は光明週間と呼ばれる[46]。この一週間には(食品の制限をはじめとする精進)は行われず[46][47]、この一週間に奉神礼が行われる場合は全て復活大祭と同様の形式で行われる[48]。光明週間は復活大祭翌主日(翌日曜日)である、「聖使徒フォマの主日」とも呼ばれる「アンティパスハ(代逾越節)」まで続く[48][49]

カトリック教会においては、復活節の最初の8日間を「主の復活の8日間」と呼び、この期間内には主日(日曜日)ではない平日でも主の祭日のように祝われる[8]

なおプロテスタントの一部では、復活祭・復活日当日を「復活節」と呼ぶこともある[12]

復活祭に関する習俗

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復活祭のあいさつ

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ロシア帝国で発行された、復活祭を祝う家族が描かれた絵葉書。左上には「ハリストス復活!」と教会スラヴ語で書かれている。

日本では、「復活祭、おめでとう(ございます)」、「ハッピー・イースター」(Happy Easter)などが使われる。英語の「Happy Easter!」以外に、ロシア語の「フリーストス・ヴァスクリェース」(キリストは復活した)に対して「ヴァイーストゥヌ・ヴァスクリェース」(まことに復活した)と答える習慣が世界的には比較的広く知られている。

食品

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復活祭に祝福される食品を入れた籠(ポーランド)
復活祭の食卓(スウェーデン)
ドイツの復活祭の卵、オスターブロート(復活祭のパン)、オスターハーゼ(ウサギ型のパン)

西方教会と東方教会では、伝統的に四旬節および大斎の期間中禁じられていた肉、乳製品、卵(東方教会では魚肉も)が復活祭の日に初めて解禁になるため、復活祭の正餐の食卓にはこれらの動物性食品が並ぶ。また、卵、バター、乳などをふんだんに使った復活祭独特の菓子パンケーキが作られる。家禽を飼っている家庭では、四旬節および大斎の期間中に生まれたために食べられずにたまっていた卵をまとめて消費するという理由もある。

ドイツでは、オスターフラーデンドイツ語版という円形のパンを食べる。パン生地をウサギの形に成形するとオスターハーゼ(Osterhase)となる[50]

スイスドイツ語圏のオスターフラーデンは、アーモンドレーズンタルトである[51]

イタリアの復活祭の伝統料理は地方によって異なるが、主菜には子羊が好まれる。もっとも有名な食品はコロンバ・パスクワーレ(復活祭のハト)という、ハトをかたどった菓子パンであろう。パン生地に卵を殻ごと入れて焼いた、クッドゥーラ (cuddura) やプッドリーケ (puddhriche) というパンを作る地域も多い。シチリア島ではペコレッレ (pecorelle) と呼ばれるマルチパンでできた子羊が食べられる。復活祭の翌日の月曜日はパスクエッタ(pasquetta、小復活祭の意)と呼ばれる祝日で、戸外でピクニックをする日となっている。

ギリシア神話の神々の信仰が盛んだったシチリアでは、復活祭の伝統行事の中に死から蘇るキリストとハーデースから帰還するペルセポネーの習合と、デーメーテールアドーニス信仰の名残りが見られる[52]

スウェーデンでは、ゆで卵ニシンの酢漬けやアンチョビなどと供する。主菜は家庭によって子羊の脚またはサケが供される[53]

フィンランドでは、東方教会の影響下にあったカレリアではパスハを、その他の地域ではマンミMämmi)というライ麦粉と廃糖蜜プディングを食べる[54]

アイスランドでは、子羊肉またはマトン燻製と、またはオオムギのミルクプディングを食べる習慣があった[55]

ポーランドの復活祭の正餐には、ゆで卵、ソーセージ、乳飲み豚のロースト、ハム、おろしたセイヨウワサビなどが並ぶ。デザートにはマズレク英語版クグロフに似たババ・ヴィルカノツナポーランド語版を食べる[56]

アカディアには、朝食にゆで卵、昼食に卵とハムまたは塩漬け豚肉、夕食にはオムレツかフラン(パンケーキ)にメープルシロップかメープルシュガーをつけて食べる習慣があった[57]

イースターエッグ(復活祭の卵)

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イースターエッグ、または復活祭の卵とは、復活祭に出される、彩色や装飾を施されたゆで卵である[58]

卵は大斎四旬節)に節制される食品である(ただしこうした断食・節食の習慣は、西方教会では大幅に簡略化されるかもしくは消滅している)。卵が使われる意義については、見た目には動かない卵から新しい生命が生まれ出ることから、死と復活を象徴しているとされる。赤く染められる事が多いが、その赤い色は十字架上で流されたキリストの血の色と、血は生命を表すことから(レビ記 17:11)復活の喜びを表すとされる[59][60][61]

ウクライナには表面に模様を描いていくプィーサンカと呼ばれる復活祭の卵がある[61]ルーマニアには卵の表面をビーズで装飾する復活祭の卵がある[62]

国や地域によっては、復活祭の際に庭や室内のあちこちに隠して子供たちに探させるといった遊びもおこなわれる。

また、上記のイースターエッグの探し物遊びにちなんで、ソフトウェアの中に開発者がまぎれこませたメッセージ(開発チームスタッフへの謝辞やスタッフロール)のことも「イースターエッグ」と呼ばれる[58]

この習慣の起源については様々な説がある。教会の伝承の一つとして、マグダラのマリヤが、キリスト復活を知らせるためにローマ皇帝に謁見した際、赤い卵を献上したことに由来するというものがある[59]。他方、その由来を春の到来を祝う異教に求める見解もある(ただしこの見解をとる教会においても、上述の意義付けは同様である)[60]

卵の染め方・柄には下記画像に挙げている諸例のほかにも様々なものがあり、各国・各地域内でも多様である。

ホワイトハウスから手をふるナンシー・レーガンと復活祭のウサギ(1981年

イースターバニー

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上述のイースターエッグは東方教会西方教会を問わない古くからの習慣であるが、イースターバニーは西欧(西方教会)のみの習慣であり、16世紀から17世紀にかけて定着したものである[63](起源を15世紀、定着の始まりを19世紀とする者もいる[64])。

英語圏やドイツでは、ウサギをかたどったチョコレートが作られる[64]。ウサギは多産なので豊穣の象徴であるとされる[60]

イースターリリー

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キリスト教西方教会で、またその影響を受けた日本のキリスト教会でも、復活祭にテッポウユリを教会の祭壇に飾るなどする習慣があり、これをその英語名からイースターリリーEaster lily=復活祭のユリ)と呼ぶ。

日本とイースター

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ルイス・フロイスによると、日本での復活祭は1564年平戸度島長崎県)で行われていた(ルイス・フロイス『日本史』第50章より)。4月2日の復活祭ではキリシタンたちはいちばん上等な着物に身を包み、行列をつくって島内を練り歩いた。

また1581年3月21日にキリシタン大名・高山右近統治下の高槻で行われた復活祭は、畿内のキリスト教信者1万数千名が集う大規模な祭典であった[65]

2010年代に入った頃、「イースター」(復活祭)の要素を取り入れたイベントの開催や商品展開が各業界で模索され始める。その例として東京ディズニーランドでは毎年4月〜6月期のイベントとして2010年から「ディズニー・イースターワンダーランド」(2014年より「ディズニー・イースター」に改称)を開催[66]、またユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)でも2013年より「ユニバーサル・ イースター・セレブレーション」を開催している[67]

テーマパークのイベント以外でも、2011年よりイースター限定商品を展開しているサーティワン アイスクリーム[68][69]の他、2015年時点でイースター商戦に力を入れる百貨店菓子メーカーが出てきており、イースターはクリスマスバレンタインデーハロウィンに続く第4のイベントとして注目されている[69][70][71][72]

日本はキリスト教国ではないため、これらのイベントと同様に宗教的色彩は大幅に薄められている。しかし、10月31日という季節イベントの少ない時期に行われる、商売閑散期のハロウィンと比べると、イースターはちょうどソメイヨシノ)の花見卒業入学、歓送迎会シーズンに当たり、それらに合わせて既存の販売促進イベントも集中するため、イースター商戦が入り込む余地が少ないことに加え、前述の3つのイベントにはない日付が毎年変動し、宗派によって日付も違う要素もあり[注釈 6]、イースターイベントが日本では定着しない一因となっている[73]

脚注

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注釈

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  1. ^ 「パスハ」表記の大本はギリシア語である。ギリシア語: Πάσχαは、古典ギリシア語再建からは「パスカ」と転写し得るが、現代ギリシア語では「パスハ」。新約時代以降のギリシア語の発音はアクセントやイ音化、各種子音の発音等、かなり現代ギリシア語に近くなっていた。正教が優勢な地域におけるスラヴ系言語、ルーマニア語等における、ギリシア語に由来する教会関連の語彙の発音は、中世以降のギリシア語発音に則っている。
  2. ^ 「祭」の表記が教会暦において頻繁に使われる教会(正教カトリックなど)では「復活祭」の表記が使われ、「祭」と位置づけられ呼ばれるが、「祭」の表記が比較的もしくはあまり使われない教会(聖公会、プロテスタントなど)では「復活日」という表記が一般的であり、「祝日」といった説明がなされる。プロテスタントの参照元である『キリスト教大事典』でも項目名は「復活日」となっていて、その説明冒頭において「祝日」としており「祭」とは書かれて居ない。
  3. ^ 春分の日の扱いが異なること、正教会では復活祭をユダヤ教過越とともに祝わないという古い規定をそのまま守っていること、これら二つの違いが東西教会間にある。
  4. ^ 古典ギリシャ語再建音:パスコー、現代ギリシャ語転写:パスホ
  5. ^ 卵が配られる習慣は正教、カトリック、聖公会、プロテスタントに広くみられるが、正教会では「イースターエッグ」とはあまり呼ばれない(先述の通り、復活祭が「イースター」とはあまり呼ばれないため)。ただし日本正教会公式サイトには記述が無いものの([1])、地方教会のウェブサイトでの用例はある([2])。
  6. ^ ちなみに日本のイースターでも一般的に採用されている西方教会の日付の場合、日本の会計年度の始まりである4月1日を挟んで毎年変動するため、復活祭が1回ある年度だけでなく、2回ある年度(2015年度)、1回もない年度(2016年度)が混在する(上表参照)。

出典

[編集]
  1. ^ a b 正教会の出典:正教会の復活祭 2003年復活祭フォトレポート名古屋ハリストス正教会[リンク切れ]
  2. ^ a b カトリック教会の出典:四旬節 断食(大斎・小斎) カーニバルカトリック中央協議会
  3. ^ a b 聖公会の出典:復活祭を迎える日本聖公会 東京教区 主教 植田仁太郎)
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参考文献

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  • トマス・ホプコ著・イオアン小野貞治訳『正教入門シリーズ2 奉神礼』西日本主教区(日本正教会)2009年8月17日

関連項目

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