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イースターバニー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
イースターバニーを描いた1907年の絵ハガキ。発行された地域は不明であるが、英語で書かれており、英語が使われている地域と考えられる。

イースターバニー英語: Easter BunnyEaster RabbitEaster Hare とも)あるいは復活祭のウサギ(ふっかつさいのうさぎ)は、イースターエッグ復活祭で用いられる)を運んでくるウサギのキャラクターである。

西方教会カトリック教会聖公会プロテスタント)における復活祭の風物詩となっている習慣であるが、東方教会正教会東方諸教会)では同様の習慣はない。

同じく復活祭の風物詩であるイースターエッグは東方教会・西方教会を問わず極めて古い時期からの習慣であるが、イースターバニーは西方教会のみにみられる習慣であり、16世紀から17世紀にかけて定着したものである[1](起源を15世紀、定着の始まりを19世紀とする者もいる[2])。

本項では、特に断りの無い場合、西方教会における習慣について詳述する。

起源

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当初はドイツのルーテル教徒から広がったもので、野ウサギが裁判官の役を演じて復活祭の季節の始めに、子供たちが良い子だったか反抗的なふるまいだったかを評価していた[3]

イースターバニーは、しばしば服を着た姿で表現される。伝承によれば、このウサギは、カラフルな卵やキャンディ、ときにはおもちゃをバスケットに入れて子供たちの家に届けるという。祝日の前夜に子供たちに贈り物を届けるという点では、イースターバニーはサンタクロースに似ている。

この慣習についての最初の記述は、1682年ゲオルグ・フランク・フォン・フランケナウによる『 De ovis paschalibus (イースターエッグについて)』である[4] [5]。 ここでゲオルグは、野ウサギが子供たちにイースターエッグを運んでくるというドイツの伝承について触れている。

復活祭当日に行われる礼拝で、特に子供たちへの訓話のために、生きた野ウサギを連れてくるところも多くある[6]

シンボル

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タマゴは生命誕生の象徴であり、ウサギは多産であることから、生命の復活と繁栄を祝うイースターのシンボルとなっている[7][8]

ウサギ

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サンフランシスコ市庁舎前のインフレータブルイースターバニー

ウサギは、中世の西方教会における教会芸術では一般的なモチーフだった。

古代には、ウサギは雌雄同体だと広く信じられており、プリニウスプルタルコスフィロストラトスアイリアノスも同様だった[9][10][11]。 ウサギは処女性を失わずに繁殖することができる、という考え方から、ウサギは聖母マリアと関連付けられるようになり、装飾写本北方ルネサンス絵画で聖母マリアや幼子キリストと共に描かれることも多かった。

また三位一体、すなわちと関連付けられて、三羽のウサギがモチーフとなることもあった。この場合、「三つが一つ、一つが三つ」を表すため、三角形もしくは三羽が連結した輪の形をとるのが一般的である[9][12]。イギリスでは通常、このモチーフは教会の目立つ場所、例えば内陣の屋根や身廊リブ・ヴォールト中央などに現れる。

このことは、教会にとってこのシンボルが重要なことを意味しており、石工もしくは大工の背丁であるという理論に疑いを投げかけるものである[13]

さらに次のような伝承もある。『若いウサギは、友人イエスゲッセマネの園に戻るまでの三日間、心配しながら待っていたが、イエスになにが起こっているのか、ほとんど何も分かっていなかった。 イースターの早朝、イエスはお気に入りの庭に戻り、友である動物に歓迎された。その日の夕刻、祈りのために弟子たちが庭にやってきて、美しいデルフィニウムの小道を見つけた。デルフィニウムは、中心にウサギの形をした花を咲かせていて、その小さくて誠実な生き物の、忍耐と希望を表していた[14]。』

ウサギは多産な種畜である。雌のウサギは、最初の子供がまだお腹の中にいるうちに、次の子供を宿すことができる[15]。この現象は、過剰受胎として知られる。ウサギ目に属する動物は早熟で、一年に何度も出産することができるため、「ウサギのように産む( breed like bunnies )」と表現されることがある。このように、ウサギが豊穣のシンボルとされ、復活祭の民間伝承に取り入れられていったのは、自然なことであった。

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卵を装飾するという古来の習慣の、正確な起源は分かっていない。しかし明らかに、多くの花が春に開花することと、豊穣のシンボルである卵を使うことには関連性がある。花で染色された茹で卵は、家々に春を運ぶのである。東方正教会派のキリスト教信者の多くは、今日でもイースターエッグを赤く染めるのが一般的である[16]。赤は血の色であり、キリストの血による贖い、そして春の生命の再生を確認するのである。卵のいくつかは緑に染められるが、これは長い冬の休眠時期が終わって新しい芽吹きを迎えたことを記念している。

ドイツのプロテスタントは、カトリック教会の習慣を引き継いで、色付けした卵をイースターに食べるが、子供たちに断食させる習慣の継続は望まなかった。カトリック教会では、四旬節の断食期間に卵を食べることは禁忌であり、そのため復活祭の時期にはたくさんの卵が準備されることになる[17]

卵を置くウサギの概念がアメリカに伝わったのは、18世紀のことである。ペンシルベニア・ダッチ区域に住むドイツ移民は、子供たちに「 Osterhase ( Oschter Haws ) 復活祭のウサギ」について語りきかせた[18][19]。「 Hase 」は「 hare (ノウサギ)」の意で、「ウサギ」ではない。 北ヨーロッパの伝承では、「イースターバニー」はノウサギであってウサギではないのである。伝統に従えば、復活祭前に帽子ボンネットの中に作った巣に、色付けされた卵の贈り物を受け取ることができるのは、良い子供たちだけである[20]。1835年ヤーコプ・グリムは、これによく似た内容を持つドイツの神話について書き記した。これらは 復活したゲルマンの女神*エオストレの伝承に由来するのではないかと考えた[21]

他の文化にも、イースターバニーとよく似た伝承が見られる。ドイツ移民により、19世紀後期のスウェーデンにもイースターバニーの概念は伝わったが、その習慣が根付くことはなかった。むしろイースターバニーのスウェーデン語「 Påskharen 」の発音が、「イースターの男」「イースターの魔法使い」を意味する「 Påskkarlen 」とよく似ていたため、20世紀初期に、イースターの魔法使いが卵を持ってくるというスウェーデンの伝統が確立した。イースターの魔法使いは異教の習慣にふさわしいシンボルとみなされ、スウェーデンでは現在も、イースターに子供たちが魔女の仮装をする。

脚注

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  1. ^ ЗАЯЦ КАК ПЕРСОНАЖ И АТРИБУТ ПАСХИ У ИНОСЛАВНЫХ
  2. ^ The Origin and History of the Easter Bunny - Yahoo Voices - voices.yahoo.com
  3. ^ Cross, Gary (2004). Wondrous Innocence and Modern American Children's Culture. Oxford University Press. ISBN 0195348133 
  4. ^ Franck von Franckenau, Georg (1682). Disputatione ordinaria disquirens de ovis paschalibus / von Oster-Eyern. Satyrae Medicae. XVIII. Heidelberg. p. 6. http://www.europeana.eu/resolve/record/09428/16F89A4DE8E09EA88DE2CFDFC5443B4D04B40E1F 18 July 2013閲覧。 
  5. ^ Easter Bunny - What Does He Have To Do With Easter?, occultcenter.com
  6. ^ Smith, Brian. “Holy hare helps out at local church”. Kent State University. 2 April 2013閲覧。
  7. ^ 継夫, 笹井 (2012年4月6日). “春の商戦、次は復活祭? 卵形・ニワトリ形チョコ並ぶ 【大阪】”. 朝日新聞 朝刊 (朝日新聞社): pp. 11 
  8. ^ 加南子, 中林 (2013年3月24日). “春らんまんイースター 仕掛け次々、ハロウィーンに続け”. 朝日新聞 朝刊 (朝日新聞社): pp. 33 
  9. ^ a b Chris Chapman Three Hares Project, What does the Symbol Mean?
  10. ^ Marta Powell Harley. “Rosalind, the hare, and the hyena in Shakespeare's As You Like It”. Shakespeare Quarterly. 2013年12月9日閲覧。
  11. ^ Sir Thomas Browne (1646; 6th ed., 1672) Pseudodoxia Epidemica III:xvii (pp. 162-166)”. 2013年12月9日閲覧。
  12. ^ Three Hares as representation of the Trinity”. Threehares.blogspot.com (2006年2月25日). 2010年6月29日閲覧。
  13. ^ Chapman, Chris (2004年). “The Three Hares Project”. 2008年11月11日閲覧。
  14. ^ Tucker, Suzetta (1998年). “ChristStory Bestiary”. Official House Rabbit Society Home Page. 2 April 2013閲覧。
  15. ^ Lumpkin, Susan; John Seidensticker (2011). Rabbits: The Animal Answer Guide. JHU Press. ISBN 0-8018-9789-0. p. 122.
  16. ^ How To Dye Red Eggs with Onion Skins for Greek Easter by Nancy Gaifyllia from Your Guide to Greek Food on About.Com Accessed April 9, 2008
  17. ^ Shrove Tuesday Pancakes! by Bridget Haggerty - Irish Culture & Customs, World Cultures European, paragraph 5 line 2 refers to the catholic custom of abstaining from eggs during Lent. Accessed 3/1/08
  18. ^ Gruß vom Osterhasen: Oschter Haws Song : GERMAN WORLD MAGAZINE”. Germanworldonline.com (2011年4月23日). 2013年3月31日閲覧。
  19. ^ Easter on the Net - The Easter Bunny”. Holidays.net. 2013年3月31日閲覧。
  20. ^ Easter Symbols from Lutheran Hour Ministries. Accessed 2/28/08]
  21. ^ Grimm, Jacob (1835). Deutsche Mythologie (German Mythology); From English released version Grimm's Teutonic Mythology (1888)

関連項目

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  • イースタービルビー英語版 - オーストラリアではウサギが外来種で駆除対象であるため、ウサギに似た在来種の有袋類ビルビー英語版をモデルにしたイースタービルビーを使ったウサギ駆除・在来生物保護活動が行われる。

外部リンク

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