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居飛車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
将棋 > 将棋の戦法 > 居飛車

居飛車(いびしゃ)は、将棋における戦法の二大分類の一つ。序盤において、初形で右翼にある大駒の飛車を定位置(先手は2筋、後手は8筋)のまま据えて戦うこと。これに対して序盤で飛車を中央より左に展開する指し方は振り飛車と呼ばれ、将棋における戦法は大きく分けてこの2つに分類される。

対する相手の指し方により、両対局者が共に居飛車を採用する相居飛車と、振り飛車を相手にする対振り飛車(対抗型)に大別される。

概要

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序盤において飛車を初期位置である2筋(後手の場合は8筋)、あるいはその周辺の右翼に配置して戦うという、振り飛車に比べると自然な発想の戦法である。飛車を3筋(後手番では7筋)や4筋(後手番では6筋)に振る袖飛車右四間飛車なども、一般的には振り飛車ではなく概ね居飛車として大別される事が多い。玉の囲いには主に相居飛車で用いられる矢倉・雁木・左美濃(対抗形でも見られる)、対抗形において用いられる急戦調の舟囲い・elmo囲い、持久戦の構えである穴熊やミレニアムなどがある。

かつては一目散に美濃囲いに組むだけで戦える振り飛車に比べると、分岐が多く覚えるべき定跡が多いとされアマチュアには敬遠されがちだったが、21世紀に入って角交換系振り飛車や振り飛車対策としての相振り飛車の登場など振り飛車も戦術が多様化するようになってからは一概にそうとも言えなくなっている。またプロ間では居飛車も振り飛車も区別せず指しこなすオールラウンダータイプが増加している他、近年では居飛車模様の出だしから玉を右辺に移動し、飛車を最下段に引いて左辺に展開する例も多い右玉など、従来の「居飛車」と「振り飛車」の枠に捕らわれない指し方も広く指されるようになっている。

相居飛車

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相居飛車は双方が駆け引きをしながら相手の駒組に歩調を合わせて自分の駒組をすることになることが多く、その結果として相居飛車の最序盤で先手・後手が初手から互いに損のない手を指していくと、大きく分けて矢倉・角換わり・相掛かり・横歩取りのいずれか、あるいはそのバリエーションと言える形に分かれることが多い。これに加えて角換わりが通常の角換わりと、後手番が通常より早い段階で角交換を挑む後手番一手損角換わりとに大別される場合、さらに近年流行を見せている雁木囲いも加えた大きく6つに大別して分類される事もある[1]。なおいずれにも分類できない戦型は、単に相居飛車力戦等として一括りに呼称される例も見られる。

相居飛車四大戦型
戦型名 矢倉戦 角換わり 相掛かり 横歩取り
飛車先 銀将で受けて矢倉囲いを目指す[2] 銀将(角交換前は角行)で受ける 受けずに相互に歩交換を仕掛ける 受けずに相互に歩交換をする
角道 開けたらすぐ銀将などで閉じる[3] 開けて角交換をする しばらく開けない[4] 開けて歩兵を横の飛車で取らせる
最序盤の例
△持ち駒 なし
987654321 
       
  
       
         
        
       
 
△持ち駒 角
987654321 
 
       
  
        
        
       
 
       
  
△持ち駒 歩
987654321 
 
      
  
        
        
         
 
       
 
△持ち駒 歩2
987654321 
 
       
   
        
         
       
   
       
 

これらの戦型ごとに様々な戦法が開発されている。相居飛車の戦法には、その戦型ならば先手でも後手でも採用可能なものもあれば、先手のみあるいは後手のみの戦法もある[5]

矢倉戦や角換わりでは、銀将金将を縦に並べて相手の飛車先をしっかり受け止める矢倉囲い系統の囲い[6]を左翼に構築し、ここに玉将を囲うことが多い[7]。一方、相掛かりや横歩取りでは、飛車先を受けないために急に戦いが始まることに加えて、飛車先交換を終えて自由になった相手の飛車が縦横無尽に走って様々な場所から攻撃を仕掛けてくるため、玉将を中央付近に置いたまま自陣全体を素早く守れる中住まい系統の囲いが使用されることが多い。

対振り飛車

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振り飛車に対して、居飛車側としては、簡易な囲いのままですぐに攻め込む急戦か、振り飛車側と同等あるいはそれ以上に固い囲いを築いてから攻め込む持久戦かを選択できる。急戦については、振り飛車側の飛車を振る筋に応じて様々な戦法がある。持久戦の場合はどのように攻めるかではなくどのように固く玉将を囲うかに主眼が置かれることになるので、守りの戦法たる囲いの名前がそのまま狭義の戦法の名前となる。

△四間飛車 なし
987654321 
    
     
 
      
        
    
     
    
    
△向かい飛車 なし
987654321 
    
      
  
    
        
       
 
     
    

囲いについては、居飛車側も振り飛車側も飛車と反対側(居飛車は左翼、振り飛車は右翼)に玉将を移動し、相手の飛車が横から攻めてくるため、横からの攻めに強い形の囲いを構築するのが一般的である。居飛車側の囲いは、急戦ならば固くはないが短手数で囲える舟囲い系統の囲い、持久戦ならば手数はかかるが固い穴熊系統の囲いが選択されることが多い。振り飛車側の囲いは、短手数で囲えて固い美濃囲い系統の囲いが主に使われる。この他、居飛車側が美濃囲いを構築する左美濃や振り飛車側が穴熊囲いを構築する振り飛車穴熊などもある。

居飛車の戦法

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相居飛車

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対抗型

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  • 対向かい飛車

居飛車の囲い

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相居飛車

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  • 矢倉・角換わりの囲い
    • 矢倉囲い系統:金矢倉、銀矢倉、総矢倉、片矢倉(天野矢倉・半矢倉)、へこみ矢倉、菱矢倉、流れ矢倉、菊水矢倉(しゃがみ矢倉)、富士見矢倉、土居矢倉、高矢倉、角矢倉、矢倉穴熊、カブト囲い
    • その他:雁木囲い右玉カニ囲い

対抗型

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  • 急戦
    • 舟囲い系統:舟囲い(7九銀型・6八銀型・5七銀右型(菱囲い)・5七銀左型)、箱入り娘、セメント囲い、二枚囲い、elmo囲い、変形矢倉、居飛車金無双

居飛車党

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居飛車を主に採用する棋士は「居飛車党」と呼ばれる。

主な居飛車党の棋士

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脚注

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  1. ^ 【増補改訂版】将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編 (マイナビ将棋BOOKS) [ 上野裕和 ] 2018
  2. ^ 矢倉戦という名称は元々両対局者が矢倉囲いを完成させて戦っていたことに由来する。しかし、現在では相手の矢倉囲いを阻止するための戦法が進歩した結果、最序盤が従来の矢倉戦と同様の進行(飛車先を受けるために銀将を上がり角道を止める)であっても実際に両者が矢倉囲いを構築しない(できない)ことが多い。このような場合も一般的には矢倉戦の戦型に含める。また、矢倉囲いは矢倉戦に限って現れるということもなく、例えば角交換をしてから矢倉囲いを構築した場合には角換わりの戦型に分類される。
  3. ^ 先手が5手目に7七銀と上がることで角道を閉じると同時に飛車先も受けることができる(いわゆる矢倉旧24手組)。一時期、5手目にまずは歩兵で角道を閉じておき、飛車先を受ける銀将を後回し(もちろん最終的には受ける)にする駒組(いわゆる矢倉新24手組)が流行した。しかし、居角左美濃急戦戦法が考案されて以降は矢倉新24手組で矢倉囲いに組むことは極めて困難になり、再び矢倉旧24手組が定跡となっている。
  4. ^ 最序盤は閉じたまま進行するが、最終的には角行の活用のために角道を開けるのが普通である。なお、最初から角道を開けた横歩取り模様から横歩を取らずに相掛かりになることもある。
  5. ^ 一例を挙げれば、角換わり早繰り銀戦法は先手でも後手でも使える戦法だが、横歩取り8五飛戦法は後手のみが使える戦法である。
  6. ^ なお、角換わりでは角交換がされているため、通常の矢倉囲いとは異なり右金を二段目にとどめて角行の打ち込みを警戒するカブト矢倉や平矢倉などの形が頻繁に使われる。また、矢倉戦では銀将の代わりに角行で飛車先を受ける雁木囲いが使われることもある。
  7. ^ 左翼で飛車先を受けつつあえて玉将を右翼に配置する右玉が使われることもある。

参考文献

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  • 塚田泰明監修、横田稔著『序盤戦! 囲いと攻めの形』、高橋書店、1997年
  • 原田泰夫 (監修)、荒木一郎 (プロデュース)、森内俊之ら(編)、2004、『日本将棋用語事典』、東京堂出版 ISBN 4-490-10660-2
  • 上野裕和、2018、『将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編(増補改訂版)』、マイナビ出版

関連項目

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