子供部屋のアリス
『子供部屋のアリス』原書の表紙画 (1890年初版) | |
著者 | ルイス・キャロル |
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絵 | ジョン・テニエル |
カバー デザイン | E・ガートルード・トムソン |
国 | イギリス |
言語 | 英語 |
ジャンル | ファンタジー |
出版社 | マクミラン |
出版日 | 1890年(1890年の文学 ) |
出版形式 | 印刷物 (単行本) |
ページ数 | 72頁 |
改作:映画「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」 |
『子供部屋のアリス』(英:The Nursery "Alice" )[1]は、1890年にマクミラン社から刊行されたルイス・キャロルの著作。キャロルの児童小説『不思議の国のアリス』(1865年)を、キャロル自身が「0歳から5歳」の幼児向けに短く翻案したもので[2]、『不思議の国のアリス』の特徴である言葉遊びやパロディなどを押さえ、子供に語りかけるような易しい文体で書き直されている。原著に使われたジョン・テニエルの白黒の挿絵から20の場面を選び、テニエル自身が子どもに見やすいよう絵を拡大して彩色を施し、なかには描き下ろしたものも含む[3]。ただし表紙絵[4]はテニエルではなく、キャロルの友人のE・ガートルード・トムソン[5]が手がけた。
キャロルがマクミラン社に「幼児向けのアリス」の企画をもちかけたのは1881年であり、1889年に印刷されるものの、刷りあがった色が派手すぎるとして出版を止めさせている。印刷に失敗したこの版は、原著『不思議の国のアリス』のときと同じくアメリカに輸出された。
アリスの姿
[編集]キャロルが認めた色調子の版は、『アリス』シリーズ発刊から実に四半世紀を経た1890年に売り出される。印刷は腕の良さで評判のエドマンド・エヴァンス[注 1]に依頼し、この作品でアリスの姿が初めてカラーで読者に紹介された。この本でキャロルは青いワンピースに真っ白なエプロン姿ではなく、アリスに黄色いワンピースを着せて青い縁取りのある白いエプロンを重ね青い長靴下をはかせた。同年、著者が発案した切手入れにもその姿を刷らせて製品化する[6]。
キャロルは単に物語の語数を減らし、内容を幼児向けに易しくするだけではなく、まるで子どもに本を読んで聞かせながらページの挿絵を指して尋ねるように、物語の途中で著者から読者に質問が発せられる[注 2]。たとえば体が大きくなったアリスの挿絵のあとに、子猫より小さくなるのと天井に頭をぶつけるほど背が伸びるのと「あなた」はどちらがよいか[8]と問いかける。またダッシュという子犬には、元の小説にない逸話を6章に加筆したり[9]、チェシャ猫が登場する9章の挿絵に小さく描かれた「きつねのてぶくろ」という花の名前について説明したりする[10]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ ビアトリクス・ポターが水彩画の色調を忠実に再現してほしいと『ピーターラビットのおはなし』初版を頼んだ相手が、印刷職人エヴァンスである[6]。エヴァンスは腕の立つ木版印刷の彫版師でケイト・グリーナウェイを見出したほか、ランドルフ・コールデコット、ウォルター・クレインの挿絵を木版多色刷りによる精巧な印刷で再現し人気を博した。国立国会図書館のデジタルコレクションで鑑賞できる[7]。
- ^ 『不思議の国のアリス』を1音節の単語のみで翻案した A・L・バート著 "Alice's Adventures in Wonderland Retold in Words of One Syllable" と対照すると、ルイスが幼い読者に向けて凝らした工夫が見える。
出典
[編集]- ^ “1865 - present: Macmillan has been sending readers to Wonderland since 1865”. aliceinwonderland150.com. 2020年1月13日閲覧。
- ^ “The Nursery Alice” (英語). The British Library. 2020年1月13日閲覧。
- ^ “The nursery "Alice" の全フォーマットとさまざまな版”. WorldCat.org. 2020年1月13日閲覧。
- ^ (英語) The nursery 'Alice'. p. Front cover 1 2020年1月13日閲覧。
- ^ Cohen & Wakeling (2003), pp. 229–231.
- ^ a b “Children's literature”. The British Library. 2020年1月13日閲覧。
- ^ “オンライン閲覧ができるエドマンド・エヴァンスの挿絵入り児童書”. 国立国会図書館オンライン | National Diet Library Online. 2020年1月13日閲覧。
- ^ “II How Alice grew tall” (英語). The nursery 'Alice'. p. 8 (18) 2020年1月13日閲覧。
- ^ “VI The dear little puppy” (英語). The nursery 'Alice'. pp. 22-23 (32-33) 2020年1月13日閲覧。
- ^ “IX The cheshire-cat” (英語). The nursery 'Alice'. pp. 35-36 (45-46) 2020年1月13日閲覧。
参考文献
[編集]この節で示されている出典について、該当する記述が具体的にその文献の何ページあるいはどの章節にあるのか、特定が求められています。 |
- Cohen, Morton Norton; Wakeling, Edward (01 September 2003) (English). Lewis Carroll & his illustrators: collaborations and correspondence, 1865-1898 (New ed.). Ithaca, New York: Cornell University Press. pp. 349.
- Stoffel, Stephanie Lovett (01 February 1997) (English). Lewis Carroll in wonderland : the life and times of Alice and her creator. DISCOVERIES (ABRAMS) (1st ed.). New York City: Harry N. Abrams. pp. 175.
- ISBN 0810928388, ISBN 978-0810928381, OCLC 476649864.
- ステファニー・ラヴェット・ストッフル著 著、高橋宏 訳、笠井勝子 監修 編『「不思議の国のアリス」の誕生─ルイス・キャロルとその生涯』創元社〈「知の再発見」双書 73〉、1998年2月10日(原著1997年2月1日)、174頁 。
- ISBN 4-403-03025-4、ISBN 978-4-403-03025-3、NCID BN0902075X、OCLC 673338306、国立国会図書館書誌ID:000001911516。
- 『子供部屋のアリス』(新版)、2003年11月7日(原著1987年3月1日)、114頁 。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 英語圏の情報
- 原書 The nursery "Alice" containing twenty coloured enlargements from Tenniel's illustrations to "Alice's adventures in Wonderland" の全ページ (1890年版) (フロリダ大学図書館)
- 日本語圏の情報
- 『子供部屋のアリス』オンラインテキスト
- 『えほんのアリス』:新字新仮名 - 青空文庫(大久保ゆう訳)