読み聞かせ
読み聞かせ(よみきかせ)または読みきかせとは、話者が子どもと共に絵本などを見ながら音読する行為、または単に物語を読んで聞かせることを指すこともある[1]。対象となる子どもは、主に乳幼児期から小学校年齢までのことが多い。
乳幼児期の情操教育・文字の習得などに効果があるという。年齢が上がっても読書への導入としても有効であり、集中して話を聞く訓練にもなりうるため、採用している小学校教諭や、読書の時間と並行し取り入れている学校では、近隣で活動しているボランティアや図書館職員、PTAらにより実施されている[2]。
なお、指宿市立図書館のように高齢者向けに読み聞かせを行う図書館もあり、こちらは小さな活字を読み取りづらくなった人などから評価を受けている[3]。
歴史
[編集]日本では、1896年(明治29年)に巖谷小波が京都の小学校で行った語りの口演童話(こうえんどうわ)がある[4]が、松山鮎子は読み聞かせとの直接の繋がりを明示していない。
第二次世界大戦以後、2つの大きな潮流、読書推進運動と読書教育をそれぞれ核とした運動体が存在、読み聞かせを推進している。具体的には、前者は国内最大規模のグループの出版文化産業振興財団、通称ジェイピックがあり、後者は読書教育の研究グループ、さらに親子読書地域文庫全国連絡会、通称親地連がある。前者については後述するが、後者については以下の説明がある。
1960年に鹿児島県立図書館長であった椋鳩十が提唱した「母と子の20分間読書」運動に端を発するとされ、その親子読書運動を「読みきかせ」と命名して研究や普及に努めたのは1967年に設立された「日本子どもの本研究会」であると、同会に所属した波木井やよいは主張している[5]。
これについて、研究会の増村王子は読み聞かせという言葉自体は以前からあったとしており、研究会内部でも見解の違いはある。
日本では市民活動として、子どもが本に親しみ、読む楽しさを体験できるよう、地域の施設で子どもの本の貸し出しが行われてきた。これは地域文庫と呼ばれ、同じ活動を個人宅で行っていることは家庭文庫と呼ばれる。子ども文庫は両者を指している。こどもの読書に一生を捧げた石井桃子(1907~2008)が、1955年のアメリカから帰国後に村岡花子や土屋滋子たちと「家庭文庫研究会」を結成。自宅の一室を開放し児童図書館「かつら文庫」をひらいた。その活動を綴った『子どもの図書館』(岩波書店、1965年、 ISBN 978-4004121350)が全国的に家庭文庫が普及するうえで貢献した。阿川佐和子も「かつら文庫」に通った一人である。読み聞かせは子ども文庫の活動として行われている。なお1974年に設立された「東京こども図書館」は石井たちの家庭文庫が母体となった。
一方、読書に関するスキルの育成については、主に学校が責任を負っており、公共図書館では乳幼児から小学生を対象とした年齢対象別のサービスである児童サービスがある。
今日では、主に児童サービスの一環としての読み聞かせであるが、それは国連決議に見られる子どもの権利に基づく理念からより[要出典]、子どもの読書量減少、読解力低下に対応するために読書推進、読書環境の整備を目的とした「読書推進運動」の流れが入ってきたものである。
エポックメイキングとなったのは2000年で、この年は「子ども読書年」に当たった。また同じ年にOECDが実施した生徒の学習到達度調査(PISA)の結果公表があった。読解力低下は誰の目にも明らかであった。
学校図書館、公共図書館を含めて子どもの読書環境に関わるあらゆる組織が連携していくという方針により2001年に法律が施行された。「子どもの読書活動の推進に関する法律」である。国や地方公共団体に責務が負わされ、多くの地方自治体は「子どもの読書活動推進計画」を策定した。更に2005年、「文字・活字文化振興法」が制定された。必要な数の公立図書館を設置すること、民間団体を支援すること、学校において司書教諭や学校司書を充実させること、翻訳出版への支援、学術出版物への支援がその具体的な内容である。
1998年には読書推進、読書環境の整備を目的として産学、文壇のトップを揃えて出版文化産業振興財団(JPIC、ジェイピック)が創設された。ジェイピックは読み聞かせのために読書ボランティアを養成し各種のフォーラムを開催した。ここで読書推進運動の中での読み聞かせ運動を始動した。
その中では読み聞かせの有名な専門家による船橋市西図書館蔵書破棄事件も発生した。
読み聞かせと呼ぶかどうかはともかくとして、世界各国の家庭で古くから行われている。1744年にイギリスの出版家ジョン・ニューベリーが初の児童書とされる『小さなかわいいポケットブック』を出版し、その後18世紀に児童書が増えてゆき、読み聞かせができるようになっていった。
効用
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場と相手
[編集]0歳児から中学生まで、本の選択さえあっていれば読み聞かせを喜ぶ。
時間
[編集]- 日中 - 朝の会・昼休み・終わりの会。
- 家庭や保育園での就寝前。
読み方、本の選択、感想を聞くか否か
[編集]この節のほとんどまたは全てが唯一の出典にのみ基づいています。 (2020年4月) |
岡﨑らは、読み聞かせにあたっては大げさに読まず、淡々と読むようにすることをすすめている[7]。これについては、読み手の過度の感情移入は聞き手の想像の余地を狭め、登場人物の印象を操作しかねないためであると指摘されている[6]。また、一語一語はっきりと、子どもに聞きやすく真似しやすいように読む。
選ぶ本が読み聞かせの質をほとんど規定するため、何の本を選択するかは非常に重要であると考えられている[8]。幼児の場合、同じ本を繰り返し読むようせがまれれば、これに応じる。
読み終わったあとに感想を聞くか否かという問いがあるが、感想を聞いたグループと聞かなかったグループに対する本の内容に関するテストを行ったところ、感想を聞いたグループは内容理解に関する項目の得点が高く、聞かなかったグループは想像力に関する項目の得点が高いという傾向がみられる実験結果があるので、目的に応じて感想を聞くかどうかを判断すればよいと言われている[6]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ 「読み聞かせ」『図書館情報学用語辞典 第5版』 。コトバンクより2022年4月25日閲覧。
- ^ 門衛(もんえい)―ここでしか読めない専門家記事のポータルサイト【小学生】上手な読み聞かせのコツ【本選び・読み方・注意点】、閲覧2017年2月16日
- ^ NPO法人本と人とをつなぐ「そらまめの会」 編 2011, pp. 49–50.
- ^ 松山鮎子「口演童話の学校教育への普及過程 : 社会活動における教師の学びに着目して」『早稲田大学大学院教育学研究科紀要 : 別冊』第18巻第1号、早稲田大学大学院教育学研究科、2010年、79-88頁、ISSN 1340-2218。
- ^ 波木井やよい『読みきかせのすすめ - 子どもと本の出会いのために』国土社、1994年、12-13頁
- ^ a b c d 岡﨑ほか 2017, p. 3.
- ^ 岡﨑ほか 2017, p. 3-4.
- ^ 岡﨑ほか 2017, p. 4.
参考文献
[編集]- 岡﨑那菜・鈴見祐悟・宮下寛太・和田多香子「絵本と子どもとの出会い おとなが仕掛けた「読み聞かせ」」『Campus』第211号、全学学類・専門学群代表者会議広報委員会(筑波大学)、2017年1月10日、1-5頁。
- NPO法人本と人とをつなぐ「そらまめの会」 編、種村エイ子 監修 編『私たち図書館やってます! ―指定管理者制度の波を越えて』南方新社、2011年5月1日、149頁。ISBN 978-4-86124-213-7。
関連項目
[編集]- ブックトーク
- ブックスタート
- 紙芝居
- ストーリーテリング - 絵本や書籍を指し示すことはぜず、その物語をいったん話者の中へ入れて、ものがたる手法をとる、別の形の読み聞かせ法。素話(すばなし)ともいう。ビジネス用語としても存在し、事実を解説するだけではなく、ストーリーを織り交ぜたプレゼンテーション法。
- 読み聞かせボランティア
- 読書へのアニマシオン
外部リンク
[編集]- 図書館教育資料(学校図書館と図書館教育・読書指導:魁 SAKIGAKE)
- 読み聞かせをしてみよう!よみっこ - 親として・ボランティアとしての読み聞かせについて
- 教室読み聞かせ・ゲーム・心の話 - 教室での読み聞かせについて
- 児童書四者懇談会作成 手引き「お話会・読み聞かせ団体等による著作物の利用について」(2006年5月12日) - PDF 248KB((社)日本書籍出版協会)