メグスリノキ
メグスリノキ | ||||||||||||||||||||||||
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紅葉したメグスリノキ
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分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Acer maximowiczianum Miq. (1867)[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
メグスリノキ(目薬の木) チョウジャノキ(長者の木) センリガンノキ(千里眼の木) | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Nikko maple |
メグスリノキ(目薬の木[3]・目薬木[4]、学名: Acer maximowiczianum)とはムクロジ科[注 1]カエデ属の落葉高木である。日本固有種。山地に生える。チョウジャノキ、センリガンノキ、ミツバナ、ミツバハナともよばれる[5]。カエデのなかまとしては珍しく、3枚の小葉で1枚の葉を構成する3出複葉が特徴で、秋は赤色に紅葉する。目や肝臓に効能がある木として昔から珍重された。
名称
[編集]和名「メグスリノキ」は漢字で「目薬の木」と書き、目の病気に効能があるとされたことに由来し、樹皮を煎じて洗眼薬としたことからこの名がある[5][6]。別名や地方名では、センジュノキ[4]、チョウジャノキ[3][4]、センリガンノキ[3]、ミツバカエデ[4]、ミツバハナ[4]、メアライノキ[4]ともよばれている。中国名は「毛果槭」[1]。
分布と生育環境
[編集]日本特産で、本州(宮城県・山形県以南)、四国、九州に分布する[6]。宮城県南部が北限ともいわれている[3]。山地に生え[6]、主に標高700メートル (m) 付近に多く見られる[5]。ただし、個体数は少ない[7]。
形態・生態
[編集]落葉広葉樹の小高木[7]から高木で[6]、樹高は5 - 25 mになる[7][5]。樹皮は灰色から灰褐色で滑らかで、縦に細かい筋が入り、のちに割れる[6][8]。若い枝は毛が多い[8]。葉は長さ5 - 13 cm程度で、3枚の小葉からなる3出複葉である[5]。小葉は楕円形で、葉縁に鋸歯があり低くてにぶい[7]。葉柄や葉身の裏側に剛毛が多数生えている[7]。秋になると紅葉して赤色に色づき、紅葉し始めは緑色とサーモンピンクが重なったくすんだ色に染まる[7]。個体や環境によっては、鮮やかな赤色になる[7]。
花期は5月[6]。雌雄異株。春の芽吹きと同時に花が咲き、広い花が枝先に2 - 3個つく[6]。果期は10月[6]。果実は翼果で、長さは4 - 5 cmと大きく毛が密生し[8]、ブーメランのような形をしている[6]。
冬芽は長楕円形で褐色の鱗芽で、芽鱗は縁が色濃く多数が重なり、毛が多い[8]。枝先につく頂芽はよく頂生側芽を伴い、枝の側芽は対生する[8]。葉痕はV字形で、維管束痕はカエデ類としては珍しく5 - 11個ある[8]。
利用
[編集]紅葉が美しさが注目され、まれに庭木として植えられる[7]。
樹皮、小枝、葉は乾燥させたものを煮出して、目と肝臓の調子を整える健康茶に利用する[4]。春から夏のあいだに採取した葉は、生のまま天ぷらにして食べられる[4]。昔から目の病気に使われていた[3]。室町時代から江戸時代初期に評判となり、江戸時代は点眼薬や洗眼薬として用いられた[4]。全国的に知られるようになったが、明治時代以降は西洋医学が浸透して存在が忘れられた[5]。
フジグリーン社がメグスリノキの商品化を行った。創業者の柏倉実が、東京大学の技官山中寅文にすすめられたことが、開発のきっかけという(毎日新聞・栃木版、1996年12月10日「頑張ってます」)。
秩父の札所十三番慈眼寺は、メグスリノキを使った眼茶を販売している[9]。
効用
[編集]樹皮にはロドデンドロール(ロドデノール)やエピロドデンドリン、トリテルペン、タンニン、ケルセチン、カテキンなど多くの有効成分が含まれており、眼病の予防・視神経活性化・肝機能の改善などの効果があることが星薬科大学の研究により実証された[10]。
近年の実験で肝障害防護効果[11]、アルドース還元酵素活性の阻害作用[12]、メラニン産生抑制効果[13]、抗炎症作用[14]など多くの効用が証明されているがいまだ十分な検証が行われているとはいえず効用のメカニズムは解明されていない部分も多い。
民間療法
[編集]薬用とする部位は枝葉で、かすみ目、目の充血、緑内障、肝炎に使われる[3]。
使用する場合は春から夏にかけて採取した樹皮または小枝を日干しし、1日量5 - 10グラム (g) を水600ミリリットル (mL) で半量まで煎じて3回に分けて服用する説[3]、1日量15 - 20 gを水300 mLで3分の1まで煎じて服用する説[15]。これには独特のにおいがあり、慣れていない場合は飲みづらいとされる。
目薬として用いる場合、樹皮を3 - 5 gを煎じた汁で洗う用法や[15]、5 gぐらい砕いたものを茶碗に入れ熱湯を注ぎ、冷めてからその液の中で目を瞬きさせると、かすみ目や目の充血が治癒するという[3]。メグスリノキだけで眼圧が下がる場合が多いといい、また肝炎にも効くといわれている[3]。しかし、どのような体質の人によいかは、はっきりしない[3]。
著名なメグスリノキ
[編集]- 杓子が入メグスリノキ(しゃくしがいりメグスリノキ)
- 福島県喜多方市塩川町字中屋沢、幹周4.1 m、樹高20 m、樹齢300年。2001年に「森の巨人たち100選」に選定[16]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer maximowiczianum Miq. メグスリノキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月19日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acer nikoense Maxim., excl. basion. メグスリノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 貝津好孝 1995, p. 148.
- ^ a b c d e f g h i 篠原準八 2008, p. 105.
- ^ a b c d e f “メグスリノキ(カエデ科)”. 姫路科学館. 2022年3月閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 253.
- ^ a b c d e f g h 林将之 2008, p. 56.
- ^ a b c d e f 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 113
- ^ “埼玉)お守り・お札もポイント還元します 秩父の慈眼寺:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2022年3月8日閲覧。
- ^ “メグスリノキの薬学的研究”. w01www01.hoshi.ac.jp. 星薬科大学. 2022年3月8日閲覧。
- ^ 中村洋、熊沢紀子、太田節子、藤田孝、岩崎泰介、篠田雅人『ラットα-Naphthylisothiocyanate肝障害に対するメグスリノキカルスの防護効果』藥學雜誌 112(2)、115-123、19920225(ISSN 0031-6903)
- ^ 八並一寿、福田栄一、山口康三 他『未病対応食品としての利用が可能なメグスリノキのアルドース還元酵素阻害活性ならびに糖尿病網膜症の改善効果(特集1 第10回日本未病システム学会論文集)』日本未病システム学会雑誌 10(1)、129〜131、2004(ISSN 1347-5541)
- ^ 秋久俊博、赤澤寛行、伴野規博『メグスリノキ樹皮およびヤマモモ樹皮由来環状ジアリールヘプタノイドのメラニン産生抑制効果(特集 最新のメラニン研究と美白剤の開発)』フレグランスジャーナル 36(9)(通号 338)、48〜52、2008/9(ISSN 0288-9803)
- ^ 佐々木陽平、細川友和、南雲清二、永井正博『メグスリノキは眼の薬として有効か?』
- ^ a b 伊澤一男『薬草カラー図鑑』第2巻、1993年、主婦の友社、p196、ISBN 4-07-935311-1
- ^ 高橋弘『巨樹・巨木をたずねて』新日本出版社、2008年10月25日、24頁。ISBN 978-4-406-05175-0。
参考文献
[編集]- 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、148頁。ISBN 4-09-208016-6。
- 篠原準八『食べごろ 摘み草図鑑:採取時期・採取部位・調理方法がわかる』講談社、2008年10月8日、105頁。ISBN 978-4-06-214355-4。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、113頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、253頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 伊沢一男『薬木<メグスリノキ> : 目がよくなる!肝臓病が治る!』マキノ出版、1995年2月。ISBN 4-8376-1086-2。:星薬科大学の研究。
- 「メグスリノキの薬学的研究」(星薬科大学薬用植物園公式webページ、2008年12月4日閲覧)
- 「メグスリノキ」 - ウェイバックマシン(2003年12月14日アーカイブ分)菟田野カエデモミジ資料/写真植物園(2008年12月4日閲覧)
関連文献
[編集]- 李家正文『草根木皮の博物誌』では、メグスリノキの効用に関する記述がある。
- 司馬遼太郎の小説『播磨灘物語』では、戦国時代の武将・黒田如水の祖父がメグスリノキを原料とした目薬を作り、巨万の財をなしたと描かれている。